TMI 中国最新法令情報
―(2013 年 1 月号)―
TMI 総合法律事務所
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(2012 年 12 月中旬~2013 年 1 月中旬公布分)
1.中央法規 (1) 企業文書資料の整理・保管範囲及び文書の保管期間に関する規定1 国家文書局 2012 年 12 月 17 日公布 2013 年 2 月 1 日施行 ① 背景 「中華人民共和国文書法」(1996 年改正・施行、以下「文書法」という。)及び「中 華人民共和国文書法実施弁法」(1999 年改正・施行、以下「実施弁法」という。)にお いては、政府機関又は企業団体等が保管義務を負う文書の定義、文書管理機関とその 職責、文書の管理及び利用、公布、法的責任並びにこれらの実施に関連する細則を定 めている。しかし、「文書法」、「実施弁法」のいずれも、政府機関又は企業団体等が保 管すべき文書の範囲及び保管期間については定めていない。 「文書法」第 15 条では、文書保存価値鑑定の原則、文書保管期間の基準並びに文書 廃棄のプロセス及び方法について、国家文書行政管理部門が別途制定すると定めてい るところ、2006 年に「機関文書資料の整理・保管範囲及び文書の保管期間に関する規 定」が公布され、政府機関による文書管理・保管時について指針が示された。今回、 「企業文書資料の整理・保管範囲及び文書の保管期間に関する規定」の公布により、 政府機関と並ぶ、文書管理・保管の重要な主体である民間企業についても、文書管理・ 保管を行う際の範囲及び保管期間に関する明確な基準が示された。本規定は、外商投 資企業を含む中国国内に登記されている企業が運営実務において参照すべき根拠とな る。 ② 主な内容 本規定第 4 条は、企業文書資料の整理・保管の範囲について、次のとおり定めてい る。 (ア)その企業の開発、生産、サービス、経営、管理等の各活動及び基本的な沿革を 反映するもので、その企業の各活動、国家建設、社会の発展及び歴史研究に利 用価値のある文書資料 (イ)その企業の各活動において形成された国家、企業及び従業員の権益保護につい て証明価値のある文書資料 (ウ)その企業が徹底・執行する必要のある関係上級機関・上級単位の文書資料、執 行又は考察する必要のある非所属関係にある単位からの文書資料、社会仲介機 構が発行するその企業に関係する文書資料、親会社及び持株会社が送付する重 要な文書資料 (エ)法律法規が規定する整理・保管すべき文書資料及びその他その企業の各活動に ついて参考価値のある文書資料 本規定第 7 条では、企業文書の保管期間を「永久」又は一定期間(30 年、10 年)と 定めた上で、本規定の附属書である「企業管理類文書保管期間表」において企業管理 1《企业文件材料归档范围和档案保管期限规定》(国家档案局令第 10 号)に関する文書資料の範囲・種類及び保管期間を詳細に規定している。本規定の公布に より、外商投資企業を含む中国に登記されている企業の社内文書管理に関する一連の 内部規定は、本規定に沿って修正する必要性が生じたといえる。 (2) 全国人民代表大会常務委員会によるネットワーク情報保護の強化に関する決定2 全国人民代表大会常務委員会 2012 年 12 月 28 日公布 同日施行 ① 背景 中国では、包括的な個人情報保護法が制定されておらず、現段階において、個人情 報の収集、利用、移転又は第三者への提供等に関する制限は、各部門法に散在してい る個別の法令に従うしかない。中国におけるインターネット上の個人情報の保護につ いては、2011 年 12 月 29 日に工業情報化部が公布した「インターネット情報サービス 市場秩序の規範化に関する若干の規定」3(以下「若干の規定」という。)では、イン ターネットサービス提供者に対してユーザーの個人情報の保護に関する制限を設けて いるものの(第 11 条、第 12 条)、利用者数及び市場規模が年々増大する中国のインタ ーネットユーザーの情報保護のニーズに対応しきれないのが現状である。 本決定は、全国人民代表大会常務委員会により公布された法律に該当し、部門規章 である「若干の規定」の上位法規にあたるため、包括的な個人情報保護法が制定され る前の現段階においては、ネットワーク情報保護の領域でのガイドライン的な役割が 期待されている。 ② 主な内容 本決定では、ネットワークサービス提供者にサービス提供時のユーザー実名登録を 求めており、ネットワークサービス提供者がユーザーにサイト接続サービスを提供し、 固定電話、携帯電話等の契約手続を行い、又はユーザーに情報発信サービスを提供す る場合、ユーザーと契約を締結し、又は提供サービスを確認する際に、ユーザーに真 実の身分情報の提供を要求するものとすると規定している(第 6 条)。 また、本決定第 1 条から第 4 条、第 8 条から第 10 条では、国民の個人電子情報に関 する保護措置を規定しており、第 11 条では、本規定の違反行為に対して、警告、過料、 違法所得の没収、許可証又は届出の取消、ウェブサイトの閉鎖、ネットワークサービ ス業務の禁止等の罰則を設けている。 (3) 全国人民代表大会常務委員会による「中華人民共和国労働契約法」の改正に関する 決定(2012)4 全国人民代表大会常務委員会 2012 年 12 月 28 日公布 2013 年 7 月 1 日施行 ① 背景 中国の労働契約法は 2013 年 7 月 1 日付けで改正される予定であるが、これによって、 中国の労務派遣制度が大きく変わることは必至と考えられる。今回の改正は、主に労 務派遣会社の設立条件の厳格化、派遣労働者の「同一労働、同一賃金」(直接雇用され 2《全国人大常委会关于加强网络信息保护的决定》 3《规范互联网信息服务市场秩序若干规定》(工业和信息化部令第 20 号) 4《全国人大常委会关于修改<中华人民共和国劳动合同法>的决定(2012)》(主席令第 73 号)
た、同じ又は類似する職種の従業員と同レベルの賃金を支給すること)の権利の強調 等のいくつかの指針の下で行われているが、そのうち、今後の雇用実務に大きな影響 をもたらす可能性のあるものは、派遣労働者の受入条件の厳格化であると考える。 これまで殆どの従業員を労務派遣の方式で雇用し、社会保険や人事労務等の管理業 務を担当する従業員を雇用していなかった小規模の外商投資企業においては、これら の業務を担当する従業員を新規に採用するか、又は代行会社に業務委託する等の対応 措置をとらなければならなくなり、人件費等のコストが上がるおそれがある。今後、 外国企業の駐在員事務所を除く外商投資企業を含め、使用者においては、派遣労働者 を受け入れられる職種の範囲及び人数が縮小され、直接雇用に切り替えざるを得なく なる。 なお、直接雇用の場合と比べて、労務派遣においては、容易にリストラを行うこと ができ、終身雇用を回避できる等のメリットがあるといわれることがあるが、労務派 遣会社と使用者との連帯責任、労務派遣会社側からの経済的補償金の負担要求、派遣 打切りの条件の厳格化等、労務派遣会社がその使用者としての責任の殆どを、派遣労 働者を受け入れる企業に転嫁しているのが実情であるため(特に、正規の労務派遣会 社の場合)、今回の法改正により、これまで派遣労働者を受け入れている企業は、派遣 労働者の雇用形態を直接雇用に変更しても、必ずしもリスク又はコストが実質的に増 大することにはならないといえる。 ② 主な内容 現行の「労働契約法」第 66 条では、労務派遣は、「一般に、臨時的、補助的又は代 替的な職務において実施する」と定められているが、適用範囲に「一般に」というぼ かしが入っているうえ、「臨時的、補助的又は代替的」の定義が不明確であるために、 同条は殆ど機能しておらず、職務内容を問わずに自社の殆どの従業員を労務派遣の方 式で雇用している使用者が少なくなく、労務派遣による雇用が広範囲且つ大規模に行 われているのが現状である。 今回の改正では、「臨時的、補助的又は代替的な職務においてのみ実施できる」とし て、適用範囲が限定される旨が明言された上、「臨時的」、「補助的」、「代替的」との文 言について、以下の定義がなされ、派遣労働者を受け入れる前提条件がより明確化さ れた。 (ア)「臨時的」とは、派遣労働者を受け入れるポストの存続期間が半年を超えないこ とを指す。 (イ)「補助的」とは、使用者の主な業務ポストに対してサービスを提供する主要でな い業務のポストを指す。 (ウ)「代替的」とは、既存の従業員が研修又は休暇等の理由で勤務できなくなった場 合に、その代替として一時的に勤務することを指す。 そして、派遣労働者の人数についても、今後、従業員総数に対する派遣労働者数の 割合の上限が別途公布される予定である。 また、労務派遣に対する規制に違反した場合の罰則が強化され、過料の金額が引き 上げられたほか、労務派遣会社のみならず、派遣労働者を受け入れる企業についても、 処罰の対象とすることが明文化された。
2.司法解釈 (1) 最高人民法院による情報ネットワーク伝播権侵害の民事紛争案件審理における法律 適用の若干の問題に関する規定5 最高人民法院 2012 年 12 月 17 日公布 2013 年 1 月 1 日施行 ① 背景 情報ネットワーク伝播権は、著作権者が有する重要な著作権の一部分であり、イン ターネットサービス産業の急成長に伴い、中国全国各地の人民法院が受理する情報ネ ットワーク伝播権関連の案件も年々増加する傾向にある。最高人民法院は、昨年末に 「情報ネットワーク伝播権侵害の民事紛争案件審理における法律適用の若干の問題に 関する規定」を公布し、本年 1 月 1 日より施行することとなった。同規定の公布・施 行により、人民法院の自由裁量権行使の原則、情報ネットワーク及びその伝播権侵害 行為の定義、ネットワークサービス提供者に侵害行為への「教唆」、「幇助」があるか 否かや、ネットワークサービス提供者の「過失」、「知りうる」の要件を構成する場合 の判断基準などが明らかになった。 ② 主な内容 本規定は、ネットワークのユーザー、ネットワークサービス提供者が、権利者の許 諾を得ずに、情報ネットワークを通じて、権利者が情報ネットワーク伝播権を有する 作品、出演、録音録画製品を提供することは、法律、行政法規が別途規定する場合を 除き、情報ネットワーク伝播権を侵害する行為を構成し(第 3 条第 1 項)、ネットワー クサーバーへのアップロード、共有ファイルの設定又はファイル共有ソフトの利用等 の方法により、作品、出演、録音録画製品を情報ネットワークに置き、公衆個人が時 間と場所を選んでこれらをダウンロードし、閲覧し又はその他の方法により得られる 場合、人民法院は、提供行為が行われたと認定する(第 3 条第 2 項)と定めている。 また、本規定は、人民法院は、ネットワークサービス提供者による削除、遮蔽、接 続切断等の必要措置がタイムリーに講じられたか否かを認定する際に、権利者が提出 した通知の形式、通知の正確さ、措置の難易度、ネットワークサービスの性質、作品、 出演、録音録画製品の類型、知名度、数量等の要素に基づき、総合的に判断しなけれ ばならないと定めている(第 14 条)。 (2) 最高人民法院による「中華人民共和国渉外民事関係法律適用法」の適用における若 干の問題に関する解釈(一)6 最高人民法院 2012 年 12 月 28 日公布 2013 年 1 月 7 日施行 ① 背景 2010 年 10 月 28 日に「中華人民共和国渉外民事関係法律適用法」(以下「適用法」 という。)が公布され、2011 年 4 月 1 日より施行された。同法では、渉外民事関係の 適用法に関する一般原則、民事主体別の準拠法適用、渉外婚姻家庭、相続、物権、債 5《最高人民法院关于审理侵害信息网络传播权民事纠纷案件适用法律若干问题的规定》(法释[2012]20 号) 6《最高人民法院关于适用《中华人民共和国涉外民事关系法律适用法》若干问题的解释(一)》(法释[2012]24 号)
権、知的財産権の分野における準拠法の適用について定めている。最高人民法院によ り公布された「中華人民共和国渉外民事関係法律適用法」の適用における若干の問題 に関する解釈(一)(以下「適用法解釈(一)」という。)は、同法に関する初めての司 法解釈であり、中国の人民法院において渉外民事関係の裁判活動を行い、準拠法を確 定する際には、適用法と同様に参照すべき重要な法規定である。 ② 主な内容 適用法解釈(一)では、渉外民事関係について、以下の状況のいずれかに該当する 場合、人民法院は渉外民事関係と認定することができると定めている(第 1 条)。 (ア)当事者の一方又は双方が外国国民、外国法人もしくはその他組織又は無国籍者 である場合 (イ)当事者の一方又は双方の通常居住地が中華人民共和国領域外にある場合 (ウ)目的物が中華人民共和国領域外にある場合 (エ)民事関係の発生、変更又は消滅に関する法的事実が中華人民共和国領域外で発 生した場合 (オ)渉外民事関係として認定できるその他の場合 また、適用法第 4 条によれば、中華人民共和国の法律に渉外民事関係に関する強制 的規定がある場合、当該強制的規定が直接適用される。この点に関して、適用法解釈 (一)では、以下のいずれかの状況に該当し、中華人民共和国の社会公共利益に関わ り、当事者が約定により適用を排除することができず、抵触規定に従う必要がなく、 渉外民事関係に直接適用される法律又は行政法規の規定は、人民法院が適用法第 4 条 に定める強制的規定と認定すると定めている(第 10 条)。 (ア)労働者の権益保護に関わる場合 (イ)食品又は公共衛生の安全に関わる場合 (ウ)環境の保全に関わる場合 (エ)外貨規制等の金融の安全に関わる場合 (オ)独占禁止、アンチダンピングに関わる場合 (カ)強制的規定と認定すべきその他の場合 なお、適用法第 10 条は、外国法を究明できない又は当該国の法律に規定がない場合、 中華人民共和国の法律を適用すると定めているが、「外国法を究明できない」という点 については、適用法解釈(一)第 17 条によれば、当事者による提供、既に中国で発効 した国際条約の規定、国内外法律専門家による提供等の合理的手段によっても外国法 を得られない場合、又は当事者が人民法院の指定する合理的な期間内に正当な理由な く当該外国法を提供しない場合は、「外国法を究明できない」と認定することができる。 (彭涛、莊凌云・中国弁護士)
第
5 回 倒産
1.概要 中国における企業の倒産処理手続は、2007 年 6 月 1 日施行の企業破産法において定めら れている。 同法は、①破産清算、②更生(原文は「重整」)、③和議(原文は「和解」)の 3 つの倒産 手続を定めている。これらの手続は、それぞれ、日本法における、①破産、②会社更生、 ③和議(既に廃止)に類似する。同法は、①から③の倒産手続の総称として「破産」の用 語を用いているが、日本の破産手続に対応するのは①の破産清算である。 ①破産清算は、債務者の財産を換価(売却により金銭化)し、債権者に配当する清算型 手続であり、手続終了後に、債務者の法人格は消滅する。 ②更生と③和議は、債権者の権利内容を変更(減免・期限の猶予等)し、債務者の再建・ 存続を図る再建型手続である。和議は更生よりも手続が簡素で、中小規模の倒産の処理等 に利用されることが念頭に置かれているが、実際にはほとんど利用されていない。 なお、中国においては、現在、個人の破産制度が存在せず、法律上、個人は破産するこ とができない。 2.破産清算 (1) 申立て 破産清算の申立ては、債務者及び債権者に認められている7。申立ては、債務者の住所地 の人民法院に対して行う8。 解散していない債務者の破産清算手続の開始原因(破産原因)は、①期限到来済みの債 務が弁済不能であること9、かつ、②(i)資産が全ての債務の弁済に不足すること(債務超過) 10 又は(ii)弁済能力が明らかに欠如していること11 である12 。債権者が申し立てる場合には、 7 「企業破産法」第 7 条第 1 項、第 2 項 8 「企業破産法」第 3 条 9 債務者が期限到来済みの債務を完済していない場合には、①の要件を満たすと認定される(「『企業破産法』 適用の若干問題に関する規定(一)」第 2 条)。 10 債務者の貸借対照表、監査報告書、資産評価報告書等に債務超過であることが表示されている場合には、 ②(i)の要件を満たすと推定される(「『企業破産法』適用の若干問題に関する規定(一)」第 3 条)。 11 (1)資金の著しい不足又は財産の換金不能等、(2)法定代表者が行方不明で他に財産管理を担当する者がい ない状況、(3)強制執行の不奏功、(4)長期的に赤字で黒字転換が困難であることにより、債務を弁済する手二.連載 中国企業法実務
第三弾:中国における紛争の予防と解決(第
3 回/全 5 回)
第 1 回 2012 年 9 月号 債権の保全・回収 第 2 回 2012 年 10 月号 裁判 第3 回 2012 年 11 月号 仲裁 第 4 回 2012 年 12 月号 労働紛争 第 5 回 2013 年 1 月号 倒産二.連載 中国企業法実務
第三弾:中国における紛争の予防と解決(第
5 回/全 5 回)
第 1 回 2012 年 9 月号 債権の保全・回収 第 2 回 2012 年 10 月号 裁判 第 3 回 2012 年 11 月号 仲裁 第 4 回 2012 年 12 月号 労働紛争 第5 回 2013 年 1 月号 倒産①のみを疎明すれば足り、債務者が②の不存在の疎明責任を負う13。 解散後清算完了前の企業においては、資産が債務弁済に不足する場合には、法律上清算 義務を負う者は、破産清算を申し立てなければならない14 。 (2) 受理 債権者が申し立てた場合には、人民法院は申立てを受けた日から 5 日以内に債務者に通 知する。債務者は、通知の受領日から 7 日以内に異議を申し立てることができる。人民法 院は異議申立期間満了日から 10 日以内に受理するか否かを決定する15。 債権者以外が申し立てた場合には、人民法院は、申立てを受けた日から 15 日以内に受理 するか否かを決定する16。 人民法院は、受理を決定する場合には、同時に管財人を選任する17 。管財人には、関連 部署・機構の人員により構成される清算委員会、又は、人民法院により編成された管財人 名簿に記載のある弁護士事務所、会計事務所、破産清算事務所等もしくはその人員を指定 する18。管財人は、債務者の財産の管理・処分等の職務を行う19。 人民法院は、受理決定日より 25 日以内に知れている債権者に通知し、かつ公告する20。 債権届出期間は、公告日から起算して 30 日以上 3 ヶ月以内の範囲内で定められる21。 受理決定後は、①債務者の個別の債権者に対する弁済は無効となる22、②債務者に対し て債務を負担する者及び債務者の財産を所持する者は、管財人に対して弁済、財産引渡し を行う義務を負う23、③債務者の財産に関係する保全措置は失効し、執行手続は中止され る24等の効果が生じる。なお、破産費用25及び共益債務26は、債務者の財産から随時、優先 的に弁済される27。 (3) 債権の届出・審査 債権者は、債権届出期間内に、管財人に債権の届出をしなければならない28 。 段がない等の場合には、②(ii)の要件を満たすと認定される(「『企業破産法』適用の若干問題に関する規定 (一)」第 4 条)。 12 「企業破産法」第 2 条第 1 項 13 「『企業破産法』適用の若干問題に関する規定(一)」第 6 条第 1 項 14 「企業破産法」第 7 条第 3 項 15 「企業破産法」第 10 条第 1 項 16 「企業破産法」第 10 条第 2 項 17 「企業破産法」第 13 条 18 「企業破産法」第 24 条第 1 項、第 2 項、「企業破産案件における管財人指定に関する最高人民法院の規 定」第 2 条、第 3 条 19 「企業破産法」第 25 条 20 「企業破産法」第 14 条第 1 項 21 「企業破産法」第 45 条 22 「企業破産法」第 16 条 23 「企業破産法」第 17 条 24 「企業破産法」第 19 条 25 債務者の財産の管理、換価及び配当のための費用、管財人の報酬等(「企業破産法」第 41 条)。 26 債務者の財産に対する事務管理により生じた費用、債務者の事業を継続するために支払わなければなら ない労働報酬等(「企業破産法」第 42 条)。 27 「企業破産法」第 43 条 28 「企業破産法」第 48 条第 1 項
管財人は、届出がなされた債権を審査し、債権表を作成した上で、第 1 回債権者集会に 当該債権表を提出して審査を受ける29。債務者又は債権者から債権表に記載された債権に 対して異議があった場合には、当該債権の届出債権者は、債権確定のため、申立てを受理 した人民法院に訴訟を提起する必要がある30。 債権届出を行った債権者は債権者集会に出席し、議決権を行使することができる31。債 権者集会の決議は、原則として、出席した議決権を有する債権者の頭数の過半数が賛成し、 かつ、それらの賛成者の債権額が物的担保のない債権総額の 2 分の 1 以上を占める場合に は決議が採択される32。 (4) 破産宣告 破産宣告とは、人民法院が、破産原因を具備する債務者の破産事実を判定し、破産清算 手続を正式に開始させる司法裁定行為である。破産宣告後、債務者を破産者といい、債務 者の財産を破産財団という。また、人民法院が破産清算の申立てを受理した時点で債務者 が有する債権を破産債権という33。 人民法院は、①破産清算の申立てを受理し、債務者が破産原因を具備することを認定す る場合、②更生を受理・決定したが、更生計画の認可に至らず更生手続を終結し、もしく は更生計画の遂行を途中で終結する場合34、又は、③和議を受理・決定したが、和議の認 可に至らず和議手続を終結し、もしくは、和議の遂行を途中で終結する場合35、破産宣告 を行う。 また、破産宣告前に、①第三者が債務者のために満額担保を提供し、もしくは債務者の ために期限到来済みの債務の全部を弁済した場合、又は、②債務者が期限到来済みの債務 の全部を弁済した場合、破産宣告がなされることなく破産手続は終結する36。 人民法院は、破産宣告日から 5 日以内に債務者及び管財人に送達し、10 日以内に知れて いる債権者に通知・公告する37 。 破産宣告後も、特定財産に対する担保権者は、担保権を実行することができる38。 (5) 換価・配当 管財人は、破産宣告後、債務者の財産の換価計画を作成して債権者集会に提出し、債権 者集会が採択した換価計画に従い39、破産者の財産を換価、売却する40。 29 「企業破産法」第 57 条第 1 項、第 58 条第 1 項 30 「企業破産法」第 58 条第 3 項 31 「企業破産法」第 59 条第 1 項 32 「企業破産法」第 64 条第 1 項 33 「企業破産法」第 107 条第 2 項 34 「企業破産法」第 78 条、第 79 条第 3 項、第 88 条、第 93 条第 1 項 35 「企業破産法」第 99 条、第 104 条 36 「企業破産法」第 108 条 37 「企業破産法」第 107 条第 1 項 38 「企業破産法」第 109 条 39 債権者集会の決議で採択されなかった場合は、人民法院が換価計画を決定する(「企業破産法第 65 条第 1 項」)。 40 「企業破産法」第 111 条
さらに、管財人は、配当表を作成して債権者集会に提出し、債権者集会による採択後41に 人民法院に認可の申立てをし、認可決定を受けた後に配当する42。配当は、破産費用及び 共益債務を優先的に弁済した後、①労働債権43 、②①に該当しない未払社会保険料債権及 び未払租税債権、③一般破産債権の優先順位により行われる44。 最後配当の完了後、管財人の申立てにより、人民法院が破産手続の終結を決定する45。 管財人は、破産手続終結の日より 10 日以内に、破産者の抹消登記手続を行う46。 3.更生 (1) 申立て・受理・更生決定 更生手続の申立ては、破産清算と同様、債権者又は債務者に認められている47。また、 債権者が破産清算を申し立てた場合、人民法院が受理を決定してから破産宣告を行うまで の間は、債務者又は債務者の登録資本の額の 10 分の 1 以上を有する出資者は、対抗的に更 生手続を申し立てることができる48。 更生手続は、解散していない債務者における破産清算手続の開始原因がある場合の他、 債務者が明らかに弁済能力を喪失する可能性がある場合にも行うことができる49。 受理の手続及び効果、債権の届出・審査については、基本的に破産清算手続と同様であ る。但し、更生手続においては、人民法院の認可により、債務者は管財人の監督の下で自 ら財産及び営業事務を管理することができ、その場合は、管財人の職権は債務者が行使す る50。 (2) 更生決定 人民法院は、審査を経て更生の申立が企業破産法上の要件を具備すると認める場合には、 更生を決定し、その旨を公告する51。更生の決定の日から更生手続が終結するまでの期間 (更生期間)中は、債務者の特定財産に対する担保権は原則として行使することができな い52。 (3) 更生計画の作成・認可 債務者又は管財人は、人民法院が更生の決定をした日から 6 ヶ月以内に、人民法院及び 41 債権者集会の2度の決議を経てもなお採択されなかった場合は、人民法院が配当表を決定する(「企業破 産法第 65 条第 1 項」)。 42 「企業破産法」第 115 条、第 116 条第 1 項 43 ①未払賃金債権、②労災による医療費債権等、③従業員の個人口座に振り込まれるべき未払いの基本養 老保険料債権及び基本医療保険料債権、④倒産による従業員解雇の場合に支払いが義務付けられている経 済補償金 44 「企業破産法」第 113 条第 1 項 45 「企業破産法」第 120 条第 2 項、第 3 項 46 「企業破産法」第 121 条 47 「企業破産法」第 7 条第 1 項、第 2 項 48 「企業破産法」第 70 条第 2 項 49 「企業破産法」第 2 条 50 「企業破産法」第 73 条 51 「企業破産法」第 71 条 52 「企業破産法」第 75 条第 1 項
債権者集会に更生計画案を提出しなければならない。但し、債務者又は管財人の請求があ り、正当な理由がある場合には、人民法院は 3 ヶ月間の期間延長を決定することができる53。 更生計画案の作成者は、財産及び営業事務の管理を債務者が行う場合には債務者、管財人 が行う場合には管財人である54。 更生計画案には、①債務者の事業計画、②債権の組分け、③債権の権利変更条項、④債 権の弁済方法、⑤更生計画の遂行期間、⑥更生計画遂行の監督期間、⑦その他債務者の更 生に有利な手段を記載しなければならない55。 人民法院は、更生計画案を接受した日から 30 日以内に債権者集会を招集し、更生計画案 を付議しなければならない。決議は、①債務者の特定の財産につき担保権を有する債権、 ②労働債権、③未払租税債権、④一般債権の組に分かれて行わなければならない。人民法 院は、必要な場合には、一般債権の一部を④とは別に少額債権の組とすることができる。 各組の決議は、当該組の出席債権者の頭数の過半数が賛成し、かつ賛成者の債権額が同一 組の債権総額の 3 分の 2 以上である場合に採択される56。 更生計画案には、出資者の権利を変更する条項を設けることもできるが、その場合には、 出資者の組を設けて、当該権利変更条項について決議を行わせなければならない57。 各組が全て更生計画案を採択した場合には、債務者又は管財人は 10 日以内に人民法院に 対して更生計画の認可を申し立てる。人民法院は、更生計画の適法性を審査の上、申立て を受けた日から 30 日以内に認可の決定を行い、更生手続を終結し、かつ、公告する58。 一部の組が更生計画案を採択できない場合でも、①当該組の構成員の利益が一定程度確 保されており59、②同一組の構成員間で公平で、かつ、債権弁済順位が破産清算における 配当順位に合致しており、③債務者の事業計画に実行可能性がある場合には、人民法院は 申立てを受けた日から 30 日以内に認可の決定を行い、更生手続を終結し、かつ、公告する 60。 更生期間中に、①債務者の経営・財産状況の悪化その他一定の債務者の背信的行為・状 況が存在する場合61、②期限内に更生計画案が提出されなかった場合62、③人更生計画案が 認可されない場合63には、人民法院は更生手続を終結し、かつ債務者の破産を宣告しなけ ればならない。 (4) 更生計画の遂行 更生計画の遂行は債務者が責任を負う。更生計画の認可決定がなされた段階で管財人が 53 「企業破産法」第 79 条第 1 項、第 2 項 54 「企業破産法」第 80 条 55 「企業破産法」第 81 条 56 「企業破産法」第 82 条、84 条 57 「企業破産法」第 85 条第 2 項 58 「企業破産法」第 86 条 59 ①担保付債権の組については、当該担保から全額弁済を受け、弁済の延期により被った損害について公 平な補償を受けることにより実質的な損害を受けないこと、②労働債権の組及び③租税債権の組については 全額弁済されること、④一般債権の組については、配当額が破産清算が行われる場合よりも多いこと。 60 「企業破産法」第 87 条 61 「企業破産法」第 78 条 62 「企業破産法」第 79 条第 3 項 63 「企業破産法」第 88 条
債務者の財産及び営業事務を管理している場合には、債務者がこれらの事務を引き継ぐ。 管財人は、更生計画に定められた監督期間中、債務者による更生計画の遂行を監督する64。 更生計画の遂行が完了した時点から、債務者は、更生計画で減免が定められた債務の責 任を免れる65。 債務者による更生計画の遂行が不能又は不履行に至った場合には、人民法院は、管財人 又は利害関係人の請求を受けて、更生計画の遂行の終結を決定し、かつ債務者の破産を宣 告しなければならない66。 4.和議 和議は、債務者にのみ申立てが認められている67。債務者は、直接申立てを行うことが できる他、債権者が破産清算を申し立てた場合、人民法院が受理してから破産宣告を行う までの間、対抗的に和議手続を申し立てることができる68。和議手続の開始原因は、解散 していない債務者における破産清算手続の開始原因と同じである。債務者は、和議を申し 立てる際に、和議案を提出しなければならない69。 和議手続は、基本的に更生手続に類似するが、更生手続よりも手続が簡略されている。 具体的には、①申立権者70、②債権者集会の手続が単純である点71、③再建計画の作成が不 要である点72、④担保付債権の独立性73、⑤再建プロセスにおける監督が存在しない点74等 において、更生手続と異なる。 人民法院は、審査を経て和議申立てが企業破産法上の要件を具備すると認める場合には、 和議を決定し、その旨を公告する75。 和議案は人民法院により債権者集会に付議され、出席した議決権を有する債権者による 頭数の過半数が賛成し、かつ、賛成者の債権額が物的担保のない債権総額の 3 分の 2 以上 を占める場合には採択される76。債権者集会が和議を採択した場合には、人民法院が認可 の決定を行い、和議手続を終結する77 。 債務者による和議の遂行が不能又は不履行に至った場合には、和議の遂行が終結される 点、和議の遂行が完了した時点から、債務者は、和議で減免が定められた債務の責任を免 64 「企業破産法」第 89 条、90 条 65 「企業破産法」第 94 条 66 「企業破産法」第 93 条第 1 項 67 「企業破産法」第 7 条第 1 項 68 「企業破産法」第 95 条第 1 項 69 「企業破産法」第 95 条第 2 項 70 「企業破産法」第 95 条 71 和議手続においては、債権者を組み分けせず、債権者全体で単一の決議が行われる(「企業破産法」第 97 条)。 72 和議案を提出する必要があるが、再建計画書の提示は求められていない(「企業破産法」第 95 条第 2 項)。 73 担保付債権の債権者人民法院による和議決定時から担保権を実行することができる(「企業破産法」第 96 条第 2 項) 74 和議が決定された時点で、管財人は、更生決定時と同様、債務者に財産及び営業事務を引き継がせるが、 更生の場合と異なり、それ以降の和議の遂行について監督も行わない(「企業破産法」第 98 条)。 75 「企業破産法」第 96 条第 1 項 76 「企業破産法」第 97 条 77 「企業破産法」第 98 条
れる点は、更生手続と同様である78。 [応用編―企業破産法制定の意義] 中国においては、2007 年の企業破産法施行により、外商投資企業等を含む企業法人全 体の破産手続に適用される新破産法制がようやく確立された。それまで長年続いてきた旧 破産法制においては、民間企業(特に外商投資企業)の倒産には適用される法律が存在せ ず、国有企業向けに制定されたルールが借用されていた。このような破産法制の整備の遅 れは、実務における破産制度の定着の遅れにもつながり、民間企業(特に外商投資企業) の側には、中国では破産制度は利用できないものだという考えが形成されてきたといえ る。実際に日本企業の現地法人が巨額の負債を抱えている場合においても、通常はその負 債の多くの部分が親会社からの借入であったり、親会社保証の下に行われた銀行借入れで あったりするので、債務超過状況でも破産処理を行わず、親会社が損失を引き受けて通常 の解散・清算の途を辿るという選択をする企業が圧倒的に多い。 このような実務の状況において登場した企業破産法は、従前の親会社が損失を引き受け て解散する(多くの日本企業)、又は、そもそも赤字会社を解散・清算することなく放置 して夜逃げする(日本以外の外商投資企業においてしばしば見受けられる)という両極端 の選択肢以外の本来の正常な解決ルートに道標を築いたという意味で積極的に評価でき る。 (今村俊太郎・弁護士) 78 「企業破産法」第 104 条第 1 項、第 106 条
三.
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