パネルディスカッション デザインの哲学
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(2) 受け継いでいかなければならないと思っております。. レッチワースについての研究とガーデンシティ舞多聞のプロ. 私が新入生に語ってきた芸術工学の位置づけですが、それ. ジェクト. は、芸術文化、アートとデザイン、科学と技術といったこと. ここからは芸術工学の実践についてお話ししたいと思いま. を、人間、歴史、社会をベースにしながら融合させようとする. す。私の専門は都市計画、建築デザインですが、芸術工学の実. ものです。. 践に至るまでに一つのプロジェクトがありました。 これはガーデンシティのレッチワース(イギリス)について の研究です。2011年にまとめたものですが、それ以前の調査 である2001年9月11日と比べてどのような時代の変化があっ たのか述べました。例えば、生活において量より質が上がった のか、風土の魅力や地域の固有性をデザインに取り入れられた 芸術工学概論Ⅱ(デザインと表現) 第1回 芸術工学とは 齊木崇人 . 芸術・文化 Art and Culture . 科学・技術 Science and Technology . 芸術工学 . Arts and Design . . . 人間・歴史・社会 Human History and Society . 図1 人間を中心とする情報̶環境の全範囲 文献2. 神戸芸術工科大学の理念 . エベネザー・ハワード(1850~1928)は理想のコミュニティを求めて 「明日ー真の改革への平和な道」を著し、 「田園」と「都市」の両者を生かした「ガーデンシティ」を提案した。. 図2 芸術工学の工房における計画、設計、試作の実習. 芸術工学の実践するアカデミック・アクティビティー. 空撮の際に搭乗したセスナ機. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 23.
(3) 新・田園都市マトリックス 国際会議(つくば・神戸). 2001"13#9 . のか、コミュニティの問題は改善したのか、さらには自ら再生 するプログラムがデザインされていたのか、ということをまと めました。 2001年に筑波と神戸で開催された国際会議 “New Garden City International Conference 2001” でこれを公表しまし た。従来の都市計画ではあまり検討されなかった、生活のマ ネージメントやコミュニティの問題を芸術工学の視点から捉え 直した実践例が、「ガーデンシティ舞多聞」のプロジェクトで. す。. 24. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017.
(4) Sustainable design process for the "Machi-‐zukuri” Takahito SAIKi 齊木崇人 ∞(infini<)型・まちづくりサスティナブル・デザインプロセス . 2011.7.29 . 長期の 計画行動 . ・遅れ ・タイムラグ . Long-‐term planned ac<on . 現場を 体験する . ・体験的方法 Experien<al approach . ・発見・きづき. Field experience . Discovery, Realize . 2 事実を 把握する . 1. 計画行動 . 5. <対症療法> Allopathy. 仮説する . 実践する. 課題の解決力 . hypothesis on the community (The "Machi-‐zukuri"). Ability of iden<fying the problem . 6. Short-‐term planned ac<on . まちづくりを . 問題の発見力 . Grasp the present situa<on . Delay Time lag <本質的解決を目指す> ・解決への Intrinsic resolu<on プログラム 計画の組み合わせ Program for the resolu<on 短期の Plan Combina<on . Implement. Ability to solve the problem ・仮説の実現 . 3. ・課題への 圧力を共有 . Share the pressure on the issues . 課題の 設定 . Task seSng . 4. Realiza<on of the hypothesis. 8. ・ビジョンの共有 ・公開と共有 実践後の検証 Shareing the vision Open to / share Verifica<on of the with the public hypothesis. 7 ・失敗 Failure. これは UR から神戸芸術工科大学に委託するかたちで展開さ. たちの刻々と変化する地球環境や社会の動向に鋭敏に反応して. れました。すでに10年ほど人が住んでおり、街の全体はほぼ. 仮説を立て、事実を把握して課題を設定し、ときには仮説を修. 完成に至っておりますが、芸術工学の視点がなかったらこのよ. 正し、長期・短期の計画を組み合わせながら実践し、失敗も含. うなコミュニティは生まれなかったでしょう。. めてそれを検証する。そして、再び新たな仮説を立案するとい. ここでは、まずコミュニティを作り、その活動の中で様々な. う持続的なデザインプロセスなのです。. デザインを検討、実現し、環境、建築、モノ、暮らしを融合さ せながら今に至っています。. 少し整理すると、「問題の発見力」と「課題の解決力」がつ. さらにはこれからの住宅ゾーンの計画のために展覧会を開催. ねにインフィニティー型になっていて、ループ状に「解決への. し、あるべき姿をみなさんとともに模索しながら第二次のプロ. プログラム」や「課題の設定」といった事柄が動き続けている. ジェクトを展開してゆきます。. のです。デザイン、アート、メディアを含む教育や実践的体験. この経験を通じて議論したことは、芸術工学では仮説が大切. の中ではこのプロセスを私たちが共有しなければなりません。. だということです。現場を体験し、事実を把握し、課題を設定. ただし、ひとつ大切なことは、このような活動を展開する. するという文法を私たちが持っていたことが重要でした。これ. 人々がどのようなマインドを持っているかということです。そ. はレッチワースの実践のように既存の集落や町並みに問題を発. こで、どのような人材を育てるべきか、ということも議論して. 見してきたことによって身についたものだったのです。その後. きました。例えば、人を思いやることや総合的な思考体験と. 国の政策により UR の事業への関わりは解消される予定だった. いったことが大切です。さらに、夢を持ち続ける意思があるか. のですが、学術的な研究に終わらずに「ガーデンシティ舞多. どうかも大切です。つまり、実践や実験を積み重ねる力がある. 聞」で実践するチャンスをいただいたわけです。ガーデンシ. かということです。複数の専門領域と協調したり地域社会と地. ティのような長期的なデザインの視点から、調査でおわらず、. 球社会に貢献したりするような意識も必要です。. まさに実践し、実現して検証し、次の仮説を準備していくこと が重要です。 このことから考えても、吉武泰水先生が想定した新しいデザ インの方法が思い起こされます。すなわち、芸術工学とは、私 デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 25.
(5) 私が出会った「芸術工学会」のクリエイティヴな人々のま. ております。. なざし. 最後になりますが、芸術工学から得られた課題を、私たちが. 1. <人を思いやるこころ>. 抱えている課題を、実際に進めているものも含めて提示したい. 多様な学生・教員・職員(年令・男女・弱者・国籍)等の実. と思います。たとえば、さきほど瀬戸内海の話をしましたが、. 態を把握し「人間最優先」の観点から教育・研究・社会貢献活. 陸と海の固有の生態系を活かし、育てるデザインは可能か。ま. 動・大学運営を思い描いている。. たは適切な人口規模で利用されたものやエネルギーを活用後に. 2. <総合的な思考体系>. 回収し、元の生産地に戻すようなデザインは可能か。さらには. 複雑な問題の中で際立った部分、相反する部分を把握し、分. 食の生活習慣から健康維持や向上をはかるデザインはできるの. 析・考察し、既存のしくみを改善しつつ、まったく新しい「総. か。それから、多様な居住世代、すなわち多様な世代や職能が. 合的な解決策」を創出している。. 社会貢献に参画するデザインは一体どのように展開されるの. 3. <夢を持ちつづける意志>. か。さらに豊かな文化生態が貧しい文化生態を支援するような. 未来を見る解決志向。制約を乗り越えてより良い解決策を一. デザインは可能なのか。身近な素材や技術、環境を資源とする. つ一つ実践している。. デザインとは具体的にどのようなモデルなのか。さらにデザイ. 4. <実験を積み重ねる実践力>. ンされた道具の進化に人間をつなぐデザインは生まれてゆくの. 「新しい方向に向う創造的な方法」を模索し、制約を徹底的. か。このような課題を私たちは共有しています。これらの中に. に調査し、乗りこえる仮説実験を繰りかえしておこなってい. はすでに実行しているものもあり、実際に地域の中で展開され. る。. ていますが、未解決の課題が見えてきたものもあります。. 5. <複数の専門領域と協調する能力>. 芸術工学会は社団法人になっていますが、日本学術会議では. 「学際的に協力しあう集団」が、複雑性が増した問題や課題. 哲学の領域で認定されています。今年の五月にはヘルシンキの. を協調して解決している。. アールト大学で、この中にも一緒に参加してくださった方が. 6. <地域社会と、地球社会に貢献する意志> . おられますが、国際学会を開催しました。また、芸術工学会. 世界に開かれたグローバルネットワークと、地域社会に貢献. の会員は「クムルス」(Cumulus)の国際学会に認定されてお. する意志を持っていることなどに纏めることができます。. り、参加することができます。常にグローバルな視点を持ちな がら、学会の領域を超えて議論する場をさらに作ってゆき、次. デザイン都市・神戸. 世代を担う方々に裾野を広げてゆかねばならないと思っていま. 最近のことになりますが、私は神戸市が取り組むプロジェク. す。. ト「デザイン都市・神戸」の統括監を2年前まで4年間務めて. 本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうござい. いました。市の現状を「ところ」の課題、「いとなみ」の課題、. ました。. 「もの」の課題として整理し、「デザイン都市・神戸」創造会議 を「KIITO」(きいと プロジェクトにともなって建設された 施設)で開催してきました。ここでも問題を発見するループと 実践するループを連動させながら話し合いを行なっています。 ただ、非常に多様な市の課題を私たちの力でどのように抽出 し、何を実践し、さらに失敗を含めて次の時代に手渡すかとい う大きな課題が目の前にあると考えています。 このようなプロセスを経て、神戸という市街、土地、場所 を、自然生態、地形、山、温泉、さらには瀬戸内海を含めて計 画の上に重ねてゆき、その型を見据えつつ、コミュニティの単 位を捉え直したり場所の特性を読んだりするような議論や実践 を行なっています。 また、この取り組みを通じて、神戸市だけではなく瀬戸内海 を作っている河川を含めた一つのエコロジカルなユニット(自 然生態系の単位)が存在することもわかってきました。私たち はここに新しいコミュニティを発見できるのではないかと思っ. 26. デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017.
(6) 凡例 :紺の文字と赤の文字:『デザイン都市・神戸』の課題と役割と仮説 2015.3.25 (齊木)資料1 :黒の文字:「デザイン都市・神戸」創造会議 2015.8.28第5回・(齊木)資料2 : 緑の文字:「デザイン都市・神戸」創造会議 2016.3.22第7回・(齊木)資料3 :青の文字:「デザイン都市・神戸」創造会議2016.7.16第8回・(齊木)資料4 . B 空間 × 人−都市の新たな区間利用− 空き家・人・空地をつなぐプロジェクト 仲人のいるハブをつくる(嘉名・山下) . 齊木崇人 資料1 . 平成28年度第2回「デザイン都市・神戸」 創造会議 資料4・齊木崇人 2016.7.16 . E デザイン都市神戸と瀬戸内海 瀬戸内海サミットを開催・ゴミ箱を宝箱に KIITOを拠点に瀬戸内海域の 多様な人々を迎え、 居心地のよい五感を刺激するまち神戸へ (服部) . 未来の姿を実験的に可視化する(嘉名) プロジェクトを恒常的に実施(嘉名) 東遊園地の活性化(福岡) A 映像メディアによるリアルタイムの情報発信 市民生活の質向上を目指す 三宮に簡易スタジをつくり若者が運営し神戸のライブ情報を提供する ベンチャー、NPO、等の新しい実験的 プラットホーム (脇浜) ものの所有からサービスへ(福岡) サービスを支援する(福岡) 人々を迎えるシェアード・エコノミー(矢崎) 仲間で気軽に音楽を(福岡) 神戸暮らし体験事業(矢崎) 都市格を引き上げる 世界で指折りの美しさと リーディング事業の優先化(岩田) 暮らしやすさを誇る街に(矢崎) 交通拠点と既存交通機関の ネットワーク基盤の調整(岩田) 「住まう暮らし」の魅力に特化した街(星加) 質の高い観光体験ができる街(岩田) 親しみ易いコベリンコミュニティー 心地よい健康な街(岩田) ・サイクルをめざして(高濱) 医食同源 健康な食を神戸から(岩田) C 自転車のまちKOBEを創造する . ICTシステムで自転車レーン・チャリンウベ サイクルマラソン (網本) . D 創造的人材・起業家を育成する プロが起業プログラムを開発・実践・発信 (横山) 自らの環境を自らつくる(岩田) BE KOBE 定住者を増やす(岩田) 神戸ビーフ・パン・紅茶など既存の資源を 暮らしのデザインに生かす(星加) F 農と福祉の社会的課題を解決する産官学連携 子供達に未来を教える教育を(大月・福岡・星加) ふれあい商品の魅力向上(星加) 廃材に新しい価値を・子供sozoP(大月) 障碍者に寄り添う支援をプログラムするKIITOと大学の連携 ファッション美術館・ライブラリーを活用する 社会的な弱者にやさしい街(大谷) クラウド農業コミュニティーの情報発信で後継者を増やす(福井) プロモーションを図る(星加) 多様な文化と多様な下町芸術祭(大谷) G ワカモノの都市−若者が成長できるまち− クリエイティブな人が育ち住み続ける街(島田・岩田) デザインのチカラ展(青木) 若手建築家を育てるトークイベント(島田) 市職員をコミュニティーサービスデザインへ(山崎) 安く住み、集える場所があり、排他的にならない、 若者主体のまち、価値を更新でき見守られるまち。(槻橋) 市庁舎空間の見直し(島田・高濱) 地域づくりコミュニテーづくり研修(山崎) . . デザイン学研究特集号 special issue of japanese society for the science of design Vol.24-2 No.94 2017. 27.
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