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第105回「市民糖尿病教室」報告

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Academic year: 2021

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◇テーマ『多様化する糖尿病診療』 平成27 年 11 月 21 日(土)佐賀市医師会立看護専 門学校に於いて、第105 回市民糖尿病教室がシンポ ジウム形式で開催され、73 名が参加された。 今回の糖尿病教室のテーマは「多様化する糖尿病 診療」であり、討論会形式で各演者の講演の後、演 者間、参加者との間で、質疑応答が行われた。今回 のテーマは同月に福岡で行われた、日本糖尿病学会 九州地方会のテーマ「多様化する糖尿病診療に向け て」にそった内容になっていた。 歯科医師 小野原昌弘先生からは「糖尿病と歯周 病」について講演があり、糖尿病と歯周病の関連性 や歯周病治療、毎日の歯周病ケアなどについての講 演があった。 薬剤師 友田幸一郎先生からは、糖尿病治療薬の 説明、無自覚性低血糖について、薬の服用方法や管 理について、またお薬手帳の活用などについての講 演があった。 医師 今村洋一先生からは「糖尿病と楽しく付き 合うには」と題しての講演があり、一般の人にも、 わかりやすく糖尿病患者数の増加の原因、日本人の 食事内容の変化や運動量の変化などについての講演 があった。 講演後は演者間で質疑応答を行い、その後、会場 参加者からの質問を受けるかたちで会は盛会に終了 した。会場参加者からの質問では歯周病についての 質問が多くなされ、糖尿病と歯周病についての関心 の高さが伺われた。 今回の糖尿病教室の参加者に行った、第105 回市 民糖尿病教室のアンケート結果からは、市民糖尿病 教室への参加は何回目ですか?の質問には、参加が 初めての参加者が39%と一番多く、二番目に多いの が5回目以上の20%であった。 今回の教室の開催をどのようにして知りました か?の質問には「市報さが」が29%「ちらし」が 31% とほとんど同率であり、今後も市民糖尿病教室への 初めての参加者を増やすための広報活動をどのよう にすれば良いかを検討する必要があると思われた。 【シンポジストの先生方】 「糖尿病と歯周病」 おのはら歯科医院 小野原 昌弘 歯科の三大疾患はむし歯、歯周病、顎関節症です。 そのうちむし歯と歯周病は、お口の中の細菌感染に よって引き起こされる疾患です。お口の中には非常 に多くの種類の細菌がいて、その中には多くのむし 歯菌と歯周病菌が含まれています。バイオフィルム と呼ばれる細菌の塊が、歯のカルシウムを溶かして いくとむし歯になり、歯ぐきを腫らして骨を溶かす と歯周病になります。意外な感じがしますが結核や 敗血症と同じく、むし歯と歯周病は細菌感染症なの です。 もし、お口全体が中程度の歯周病だとすると、歯 周ポケットの総面積は手のひらと同じ大きさになり ます。歯周ポケットは非常に粘膜が薄くなっており、 体内に多くのものを通してしまいます。だから歯周 病だと、口の中に手のひら大の穴が空いていること

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と同じになり、細菌や細菌の代謝物がどんどん体内 に入ってしまいます。このため全身へ悪いものが回 り、感染症心内膜炎や循環器疾患、糖尿病、早産、 低体重児出産、細菌性肺炎などの原因となります。 歯周病が糖尿病を悪化させるメカニズムはどのよ うなものでしょうか?歯周病では、歯ぐきに強い炎 症があります。ここから出てきた炎症物質が血液中 に入ると、インスリンが効きにくくなり血糖が落ち なくなり、糖尿病が悪化します。逆に歯周病は、糖 尿病の「第6の合併症」ともいわれます。糖尿病だ と、高血糖となり感染しやすくなり、炎症がひどく なり、歯周病が悪化します。つまり、お互いがお互 いを悪くしていく負の連鎖にはまり込みます。糖尿 病と歯周病を良くしていくには、この負の連鎖を断 ち切らなければなりません。 このように糖尿病と歯周病は、お互いに悪影響を 及ぼし合っています。では、糖尿病を治療すれば歯 周病がよくなるのでしょうか?逆に、歯周病を治療 すれば糖尿病が改善するのでしょうか?結論から言 えば、糖尿病治療によって歯周病が良くなり、歯周 病治療によって糖尿病が良くなります。ただし、一 方だけ治療するのは片手落ちで、両方治療しないと 効果的ではありません。糖尿病の治療を頑張ってい るのになかなか良くならない時は、歯周病を疑って みてください。 歯周病は、糖尿病を含め全身の健康に害を与えて います。世界的にも重要疾患として注目を集めてい ます。しかし、歯周病は炎症があるに痛くないとい う特徴を持ち、そのため長期間放置されることも多 いのです。歯がぐらぐらで噛めないなどの自覚症状 が出てきても、病気が進行していて治療は手遅れと いう事もことも多い、とても怖い病気なのです。ま た平成 23 年の歯科疾患実態調査から、日本人の約 70%の人が歯周病にかかっていることが分かります。 このように歯周病は特別な病気ではなく、ありふれ た病気なのです。お口の中に症状を感じていなくて も、知らず知らずのうちに歯周病は進んでいます。 まずは、歯石取りと歯みがきに歯科医院へいらっし ゃってください。 【講演風景】 「多様化する糖尿病診療」 佐賀記念病院 日本糖尿病療養指導士 薬剤師 友田幸一郎 糖尿病の治療は食事療法、運動療法、そして薬物 療法によって血糖を正常化し合併症の発症や進展を 予防することが目的です。この中で薬物療法は食事 療法・運動療法を行なっても血糖コントロールが不 十分な場合に開始されます。 薬物療法に用いられる糖尿病の治療薬は 1920 年 代にインスリンが初めて発売されてから現在までに 注射剤ではインスリンとGLP-1 受容体作動薬、内服 薬では作用の違いによって 7 つの分類の薬が使用さ れています。これらの薬剤から個々の病態に合わせ た薬が選択され、必要に応じて 2 剤、3 剤併用され る場合があります。 薬物治療を続けていく上で気を付けなければいけ ない主な副作用として低血糖があります。低血糖症 状の初期症状である冷汗や手の震えなどが発現した 場合はすぐにブドウ糖やブドウ糖を含む飲料を摂取 するようにしてください。特に自動車の運転をする 場合には必ずブドウ糖を携帯するようにしましょう。 また、低血糖症状を繰り返すうちに、初期症状が発 現せずめまいや意識消失などを引き起こす無自覚性 低血糖には特に注意しなければいけません。無自覚 性低血糖を起こさないためには普段から低血糖を起

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こさないことが大事です。 次に薬の服用方法について、糖尿病の治療薬には 用法が食前や食後、食直前といった指示があり服用 のタイミングが多くなってしまうことがあります。 このことが飲み忘れの原因となっている場合があり ます。そこで服用のタイミングを少なくすることで 飲み忘れを減らすことができるかもしれないので、 服用のタイミングをまとめられるものは食直前にま とめてもらうように医師や薬剤師に相談してみてく ださい。 また、現在使用されている薬の中には飲みやすさ を工夫したものや、作用時間を長くしたものが発売 されています。その中には水無しでも服用できる口 腔内崩壊錠(OD 錠)や携帯に便利な OD フィルム などがあり、作用時間を長くしたものには1回の服 用で効果が1週間持続する薬剤もあります。 薬の管理について飲み忘れや自己判断で中止した などの理由でたくさん薬が余っているということは ないでしょうか。医師は検査結果が悪ければ薬が効 いていないと判断され、量が増えたり新しい薬が追 加されたりする場合があります。家に薬の余りがあ る場合は病院や薬局に持っていき医師・薬剤師に相 談してください。使える薬がある場合は処方日数を 調整してもらうことで窓口での自己負担の軽減にも つながります。 そして、薬剤師からのお願いですが医療機関にか かる時はお薬手帳を持参しましょう。お薬手帳は各 医療機関で処方された薬の内容や、これまでに経験 した副作用の情報など記録しています。薬剤師は調 剤をするときにお薬手帳で副作用歴や薬の重複など がないかを確認しています。また、緊急に病院を受 診した際や、災害時などではとても有用な情報源と なりますので、ぜひ活用してください。 最後に、薬物治療を安全に続けて行くためには薬 を自己判断で中止や変更せずに指示された用法を守 ることが重要です。薬の用法や管理について気にな ることがあればいつでも薬剤師に相談してください。 「糖尿病と楽しく付き合うには」 あおぞらクリニック 院長 今村洋一 1,なぜ、糖尿病患者さんが増えているのか? 糖尿病の患者さんは、日本でも世界全体をみても 増え続けています。ではなぜ、増え続けているので しょうか?日本の場合について考えてみましょう。 まずは、若者が魚を食べなくなったことがあげら れます。また、自動乾燥機、自動洗濯機、自動湯沸 し器など便利な電化製品ができて、身体を動かさな くなったのも一因でしょう。 さらに、ファーストフードやコンビニで手軽に食 べ物を調達できるようになったこともその理由の1 つでしょう。 2,なぜ、糖尿病は治療しなければならないのでしょうか? 多くの場合、糖尿病は自覚症状がありません。自 覚症状がない病気の治療を継続することは、非常に 困難を伴います。実際、ご自身が糖尿病でありなが ら、定期通院をしていない患者さんは40~59 歳まで ですと約半年の患者さんしか通院していないといっ た調査結果もあります。 しかし、血糖値が高いと失明や、足の切断、人工 透析になる確率が血糖値の上昇に伴って、高まって いきます。また平均寿命も糖尿病の患者さんでは、 10~15 年短いといった統計結果もあります。 3,では、どうすればよいのでしょうか? まず大切なことは、ご自身が糖尿病であるなら、 通院することです。実際、医療現場では酷い合併症 の患者さんの多くは、糖尿病を指摘されていても放 置していたか、あるいは糖尿病の治療を中断した患 者さんです。 4,大切な食事療法 次に、今、ご自身が糖尿病のお薬を飲んでいるか、 いないかに関わらず大切なことは食事療法です。お ぼえていただきたいことは、「食事の際は、まず野菜

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を最初に全部食べきる」こと「食べ物が口の中にあ る時は、飲み込むまで次を押し込まない」ことです。 実際に野菜を最初に全部食べきった方が、同じカロ リーの食事でも血糖値の上昇が抑制されていること が証明されています。 5,治療の目標値は(大切なHbA1c) では、治療の目標値はどこにおけばよいのでしょ うか?血糖値はその日の食事や運動、また食事前か 後かといった多くの因子が絡み合って、1日のうち でも、すごく変動しています。ですから治療の1つ の目安とはなりますが、それだけでは十分ではあり ません。 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、採血時から 1~2 か 月間の平均の血糖値を示すといわれています。また、 糖尿病の合併症はHbA1c が 7%を越えると、発症頻 度が高まることが知られており、治療の目標値は、 HbA1c を 7%未満にすることが第1目標になるでし ょう。また、ご高齢の患者さんであれば、ご自分の 年齢の1/10 を HbA1c の一つの目安にするのもよい でしょう。(例えば75 歳の方であれば、7.5%になり ます) 6,最後に 糖尿病は現在の医学では完治することは難しく、 一生付き合っていかなければならない病気です。一 方で、他の人と競争する病気でもありません、焦ら ず、自分のペースで、主治医の先生とよく相談して、 これからの療養生活を送っていただけと幸いです。 【血糖検査】 【尿糖検査】 【モデル食の展示】

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