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保育者を目指す学生の「自分への気づき・自分づくり」への試み

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Academic year: 2021

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(1)

井 裕紀子

は じめに 筆者の短大では、平成

1

4

年度 に共同研究プロジェク ト (私学研修福祉会助成研究) とし て 「地域のニーズを生かす教育課程編成の試み

と題する教育研究 を行 った。 この研究は 地域が本学

2

年間の保育士養成期 間で どの ような資質や能力、技術 を持 った人材の養成 を 望 んでいるかを明 らかにす るものであった。調査方法は質問紙法 により、本学の実習先の 幼稚園、保育所

1

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2

園 を対象 に回答 を求めた。そ こで注 目すべ き点は、 "学生 に身につけ て もらいたいこと"の設問 に対 して、 1位の 「保護者 とのコミュニケーシ ョンが図れる」 が、2位の 「字 を丁寧 に書 く」、3位の 「ピアノ伴奏がで きる」 に大差 をつけた とい うこと である。 さらにこの結果 をアクシ ョンリサーチ法 により調査協力者 にフィー ドバ ックし感 想 を求めた。その結果保育者 を目指す学生 には、人間関係づ くりの築 き方 とそれに関する 基礎的な事柄 について学ぶ ことの重要性が求め られた。 この調査では、対人関係が希薄化 している現代社会 には、人間関係づ くりが困難な学生 や若い保育者たちが多 くなっていることが浮 き彫 りにな った。 保育現場 において保育者 と、 子 ども、保護者、地域間にどの ような関係が築かれているかは "保育の質"にまでお よぶ 重要なことである。今回は、保育者 を目指す学生たちが、子 どもだけでな く広 く良い人間 関係 を築 くためには どの ような訓練が必要であるかについて考 えてみた。

目 的

筆者が担当す る保育内容総論

Ⅰ (1

年次、前期、演習科 目)では、模擬的な保育場面 を 設定 しての保育実践 を行 っている。 この授業では、学生が保育者や子 どもの双方の立場 に たってみる体験 をし、子 どもの気持 ちや動 きに添 った保育内容の組み立て方や保育者 とし て配慮すべ き事項 について学習す る。 そこで本研究は、この授業で実施 している絵本の読み聞かせの場面 を通 して 「自分 はど の ように見 えるか」、さらに「保育者 として どの ように自分づ くりをす るか」、す なわち、「自 分-の気づ き

か ら 「自分づ くり」への過程 を明 らかにすることを目指 した。なぜ ならこ のことは、地域社会が求めるより良い人間関係 を築 くための力 (社会的スキル)のベース として不可欠 と考 えたか らである。.

(2)

方 法 本短期大学、幼児教育科

1

年生

4

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人 を対象 に学生 自身が絵本の読み聞かせ をしている姿 を

VTR

に収録 した。次 に、その

VTR

視聴 を通 して (

1)

「自分への気づ き

∼自分 は ど の ような人間に見 えるか∼ (2)「自分づ くり

∼保育者 として自分 をどうつ くるか∼につ いて自由記述 をさせた。

結 果

(1)

「自分- の気づ き

∼自分 は どの ような人間に見 えるか∼では、①声 ・話 し方 ②表 情 ③全体的印象 ④保育技術 に大別 された。 (∋声 ・話 し方 について ・声が小 さく言いたいことや話の内容が伝 わ りに くい。 ・声の トーンが低 く印象が暗い。 ・声が "ぐにゃぐにゃ" していて聞 き取 りに くい。 ・自分があの ような声 を出 しているのか と驚 き少 し嫌だった。 ・話 し方 に抑揚や覇気がな く聞 きづ らい。暗い感 じが した。 ・話す とき語尾の 「ます

「です

」を強調 しす ぎていた。 ・話す語尾があが っていた り聞いていて心地悪かった。 ・声の大 きさは とて もよか った。 ②表情 について ・笑顔が ぎこちな く心か ら笑 っていない○ ・普段 は明る くしているつ もりだが、集中す ると表情がかた くなつて しまうo ・笑顔がな く冷たい感 じがす るO . ③全体的印象 について ・緊張のあま り恐い雰囲気 をか もし出 している。 ・緊張 していた と思 うが暗い印象 だった。 ・説得力が まった くな く冷たい人 とい う感 じがす る。

(3)

・親近感が持 てない。 ・聞 き手 とコミュニケーシ ョンを しようとい う感 じがない。 ・絵本 を読んでいる自分 を見 ていて全 く面 白さを感 じなかった。 ・恥ずか しが り屋でモジモジ している人間に見 えた。 ・照れや恥ずか しさを隠すためだ と思 うが、話す ときやた らと体が動いて落ち着 きが ない。 ・動作の一つ一つが とて も独特だ と言われることが よくあるが、ビデオを見 てそれが よく分かった。 ・客観的に自分 を見 ると自分が思 っている印象 と違い、新たな発見があった。 ・恥ずか しいので、途中で笑 うな ど照れ隠 しをしていたが、見ている人はわけが分か らず、 自分で見ていて 「馬鹿だな

-」

と感 じた。 ・自分では明る く元気 な先生 とい うつ もりで実践 を したが、実際には思 ったよりも声 が小 さく、お とな しく優 しい雰囲気 をか もしだ していた。 ④保育技術 について ・読み方が単調で盛 り上が りがない。次 にどんな話がつづ くのか期待感が持てない。 ・読むペースが早い。聞 き手が絵 を楽 しむ時間がな く、落ち着いて見 られない。 ・目線が下 を向いていた り、絵本 ばか り見 ていた り、また淡々 と自分のペースで絵本 読みを進めて しまい、聞 き手の反応 を全然意識 していない。 ・絵本 を読み開かせているとい うより、読 むことに必死で絵本 を隠 しているように見 え、絵本 自体の楽 しさが伝 わってこなかった。 ・絵本が聞 き手全体 に見 えるように配慮 していない。 ・話の最後 になると読み方が早口になるように聞こえた。 ・ページのめ くり方がた どた どしい。 ・ページをめ くるのが早い。 ・絵本 を縦 にして読む部分 をそのまま横 に して読 んでいた。 ・絵本 を持つ手が不安定で ぐらつ き見 に くかった。 ・導入は、手遊 びをした りして雰囲気づ くりをすればよかった。 ・読み終わった後、聞 き手 に感想 を聞いた方が よかった。 、′ (2)「自分づ くり

∼保育者 として自分 をどうつ くるか∼では、①相手 との対応 に関わる 事柄 ②笑顔の大切 さに関わる事柄 ③全体的印象 に関わる事柄 ④保育技術 に関わる

(4)

事柄 に大別 された。 (∋相手 との対応 に関わる事柄ついて ・人 と目を合わせて話すのが苦手 だが、 目を合わせ て話 しをす ることで相手の気持 ち を感 じた り相手 に気持 ちを伝 えた りすることがで きる。 た くさんの人 と信頼 を築 く 上で も相手 と目を合わせて話す ことを大切 に したい。 ・声が低 く暗い印象 を与 えて しまいがちなので、なるべ く明る く話せ るように心がけ たい。 ・相手の話 を聞 く時はうなずいた り、共感 した り、受け答 えの声 にも表情 をつけた ら よい と思 う。 ・相手の言葉 をよ く聞 くように し "この人なら信頼で きる、安心で きる" とい うオー ラを出せた らと思 う。 そのためには自分か ら心 を開いて子 どもたちの全 てを受け止 めてあげな くてはいけない・。 ・相手の立場や気持 になれるのが人 と接す る職業の基本 だ と思 うので、相手の気持 を 受け止め理解するよう心がけたい。 (参笑顔の大切 さに関わる事柄 について ・笑顔がすぼらしい人間にな りたい。 ・笑顔でいると声の トー ンも明る くな り印象が よくなるので、笑顔 を常 に心がけたい.I ・作 り笑いではな く、心か ら相手 を和 ませ ることがで きる笑顔がで きた らと思 う。 ・自分は取 っ付 きに くい雰囲気 を出 していると思 うので、 もっと相手か ら寄 って きて もらえるような雰囲気 に自分 をつ くりかえることがで きた らと思 う。 そのためには まず、常 に 「笑顔

でいることが大切 だ と思 う。 ③全体的印象 に関わる事柄 について ・もっと自分 に自信 を持 ってハ キハ キ と元気良 く子 どもたちに語 りかけられる人間に な りたい。 ・ぐにゃぐにゃした態度 は自分で見 ていて もとて も気持が よい ものではな く、保護者 を不安 にさせ るもので もあると思 う。 もっとテキパキ、ハ キハキ とした言動 ・行動 が とれるようにしたい。 ・取 っ付 きに くいイメージは人 と関わる上でマイナスに しかならない0 ・いつ も笑顔 を心がけ、親 しみの持 てる人柄でいるべ きだ と思 うが、反面悩み を相談

(5)

された ときな どは、笑顔 とは違 って真剣 に対応 し、頼 りがいがある と思われる雰囲 気が持 てた らよい と思 う。 ・冷静 さが必要 な時 もそれは表出せず表情 を豊かに したい。 ・自分の心情 を表現するとき、言葉 だけでな く表情で も表現で きるように したい。 ・体が ごつ く圧迫感があるので もう少 しやせたい。 (彰保育技術 に関わる事柄 について ・声 に抑揚 をつけて話 した り、子 どもの目線で考 え、恥ずか しがることな く実践で き るようにな りたい。 ・周囲に気 を配 りなが ら行動で きるように したい。 ・もっと保育者 を演 じなければならない と思 う。 ・とにか く 「恥ずか しい」 とい う気拝 を捨 てなければならない と思 う0 ・落ち着いて行動で きるようにな りたい。 ・人前 にでることが苦手で、緊張 しやすい タイプなので改善 したい。 ・子 どもたちを引 き付 け られるよう導入の手遊 びなどをた くさん身に付 けたい。 ・人前で落ち着いて自然 に話す ことがで きるようにな りたい。そのためには人前 に立 つ経験 をもっと積 んでい きたい。 ・話す時は早口にならない ように したい。 ・周囲の人たちを引 き付 け られるような話 し方 を身に付 けたい。

(1)VTRで自己 を見 る体験 は、学生 にとって気恥ずか しく 「ビデオを-度 しか見 られ なかった。」な どの声 も聞かれ、触れた くない ような部分 も存在 していた ように見 える。 しか し、 この体験は自分 に目を向けさせ 「自分への気づ き ・自分づ くり」とい う本研究 のテーマに対 して、有効 な方法であった。 (2)学生の 「自分-の気づ き

は、声 ・話 し方、表情、全体的印象、保育技術 のいず れ もマイナス面の記述が多 く.、厳 しい 自己評価であった。 よい部分の気づ きをも引 き出せ るような指導が必要 と思われる。 「自分-の気づ き」のなかで も、保育技術の内容が最 も多 く、・細部 にわたる気づ きが見 られた。 これは学生の専門技術 を高めたい とい う意欲 を表 している。 ′ (3)学生の 「自分づ くり

は、 自分 に向 き合 うとい う気恥ずか しさを乗 り越 え、真筆 に 自分の課題 を受け止め、 よい対人関係づ くりに繋がる 「自分づ くり」への明確 な指標 を

(6)

導 きだ した。 自分 自身の指標が明確 になることは、 日々の学習や 日常生活 にお よんで、 自分の変容 につながる。 (4)学生の 「自分づ くり

をよ り豊かにするために、Ⅲ結果 (1)の学生の気づ きの内 容 をもとに自分 を知るためのワークシー ト 「☆ 自分の花 を咲かせ よう

☆」

を作成 した。 このワークシー トは、

4

4ページ及び胡ページに記載 してある. これは、今年度の学生の 気づ きを

2

0

項 目に整理 し、それぞれを一つづつ花 びらにして、達成度 によって色 を塗る ものである。総合評価 として花の表情 とコメン トを書 くようにした

。2

0

項 目の花 びらは、 自らの新たな気づ きが加わることにより数 を増 してい く。気づ きが多 くな り、それを克 服 してい くと花 は大 きくな り、色合い も変わってい く。楽 しく自分づ くりに向か うため の-考案である.

(5

)前記 (

1

)か ら

(4

)の考察か ら、 この研究の学習過程 を次の ように図示する。 図

1

「自分への気づ き ・自分づ くり

への学習課程 ・=

1

=

=

く==>

(7)

VTR

視聴を通 し 「自分への気づ き

をする。 ② ワークシー ト 「自分の花 を咲かせ よう

で自分 をチェックする。 ③保育者論 にお よぶ自らの保育者 としての有 り方を考え、保育者 としての保育技術 を向 上 させ ようとする意欲 につなげる。 ㊨ 丑から③の学習から、 「自分づ くり

をイメージする. (9この一連の学習の繰 り返 しを通 して、保育者 としての資質を育み、社会的スキルにつ なげる。 お わ りに

VTR

で自分の姿 を投影するというごく一般的な方法を用いた研究であったが、学生は 保育者 としてよりよい人間関係に繋がる 「自分づ くり」への指標 を得たと感 じる。今後は、 本研究で作成 したり「クシー ト 「自分の花 を咲かせ よう

が、大輪の花になるように学生 自身の気づ きのチェック項 目を増やす作業を進めたい。また、各自が明 らかにした 「自分 づ くり

に近づ くための訓練 を

VTR

を活用 しなが ら積み重ねていきたい。

参考文献

1

)長塚康弘他 r地域のニーズを生かす教育課程編成の試みj新潟中央短期大学 r暁星論叢J第

5

2

号 2α)3年 2)川瀬正裕 ・松本真理子編 r新 自分 さが しの心理学J(ナカニシャ出版 1997年) 3)中村陽書 r対人場面の心理j(東京大学出版会 1983年) 4)森上史朗 ・岸井慶子編 r保育者論の探求j(ミネルヴァ書房 2001年)

(8)
(9)

絵本の読み聞かせ をしている自分 について、次の項 目をチェックしてみ よう。 チェック した結果 を、クリアー してい る場合 は花びらをピンク色 に、 どち らともいえない場合はあ お色 に、クリアー してない場合 は塗 らない、に分けて 「自分の花」 を措 こう。 総合評価 として花の表情 とコメン トを記述 しなさい。 チェック項 目

1

声の大 きさが適切 である。

2

声の トーンはふ さわ しい。

3

声 に抑揚や覇気がある。 4 話 し方が独特でない。 (語尾が強い ・語尾があがるなど。)

5

笑顔が よい。 6 モジモジ していない。 7 落ち着いている。

8

冷たい感 じがない。

9

恐い感 じがない。

1

0

暗い感 じがない。

1

1

照れや恥ずか しさを感 じさせ ない。

1

2

絵本が聞 き手全体 に見 えるように配慮 している。 13 ページをめ くる早 さは適切である。

1

4

読む早 さは適切である。 15 聞 き手の反応 を意識 して読んでいる。

1

6

絵本 を持つ手は安定 している。 17 棒読みになっていない。

1

8

ページをうま くめ くっている。

1

9

導入 を工夫 している。

2

0

姿勢が良い。

参照

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