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フランクフルト水素ステーション(Infraserv Höchst)
訪問先 Infraserv Höchst (Infraserv GmbH & Co. Höchst KG)
住所:C 526, Industriepark Höchst, 65926 Frankfurt am Main, Germany
訪問日時 2008 年 1 月 8 日(火)10:00∼12:30 対応者 Dr. Heinrich Lienkamp
Department Head, Process Engineering Business Unit Energies and Utilities
Achim Boening, Diplom-Ingeieur
Project Manager, Process Engineering Business Unit Energies and Utilities
Dr. Ashok K. Rastogi
(retired, and rejoined to Infraserv Höchst)
(1) Infraserv Höchst の概要
• Infraserv Höchst(Infraserv GmbH & Co. Höchst)は、旧 Höchst の流れを汲 む企業で、ヘキスト工業団地(Industriepark Höchst)のインフラ供給・管理・ 運営を行っている。 - 旧 Höchst は 1923 年に設立されたドイツ最大の総合化学会社であるが、1998 年に旧 Rhône-poulenc(仏)と合併したことを機に、企業グループに分割し た。ヘキスト工業団地のインフラ部門はInfraserv Verwaltungs GmbH とな り、後にInfraserv Höchst となった。 - 現在の従業員は 1900 人(Infraserv Höchst グループ全体では 2700 人)。 - 現在の Infraserv Höchst の株主を図 6-1 に示す。 図 6-1.Infraserv Höchst の株主構成
• Infraserv Höchst がヘキスト工業団地で提供しているインフラサービスを図 6-2 に示す。 図 6-2.Infraserv Höchst が提供しているインフラサービス スチーム 薬品製造規範 の支援 排出権取引 素材 電力サポート 工場マネジメント コンサルティング 天然ガス 産業ガス 水 電力 配電網サポート 水マネジメント 発電コンサルティング 冷熱 アウトリーチ 天然ガス供給 発電マネジメント パイプラインサ ポート
(2) Zero Regio の概要 • Zero Regio は、欧州の第 6 次フレームワークプログラ ムの中で実施されている燃料電池自動車デモンスト レーションである。図 6-3 • デモンストレーション拠点はドイツ フランクフルト とイタリア北部マントヴァの2 ヶ所(図 6-3、表 6-1)。 表 6-1.Zero Regio ステーションの概要 フランクフルト水素ステーション マントヴァ水素ステーション 総面積 4,000 m2 17,000 m2(図 6-4) オープン 2007 年 6 月 11 日 2007 年 9 月 21 日 導入車両 Daimler F-Cell 5 台(2 台導入済) FIAT Panda 3 台 供給水素 ・高圧水素(35 MPa、70 MPa) ・液体水素 ・高圧水素(35 MPa) 水素源 工場で生産した副生水素を高圧パイ プライン輸送 オンサイト生産(2008 年初旬開始予定) -CPO 改質触媒、20 Nm3/時 -認可に時間がかかり計画が遅れている -当初は水素をトレーラ輸送し、移動式水 素充填装置(AP100)を使用 その他 太陽光発電8 kW を設置 太陽光発電16 kW を設置 フ フラランンククフフルルトト マ マンントトヴヴァァ 図 6―3.Zero Regio の拠点
(3) ヘキスト工業団地における水素供給システム ① 水素製造
• Infraserv Höchst は、ヘキスト工業団地(Industriepark Höchst)内の水素需 要のために水素を製造・供給している(図 6-5)。
- 水銀法による電気分解(カ性ソーダ、塩素の生産)の副生水素を用いている。 - 工場団地内の水素需要家のために、低圧水素 0.2 bar(20 kPa)、6 bar(0.6
MPa)と高圧水素 225 bar(22.5 MPa)をパイプラインで供給している。 - 水素トレーラ用に 250 bar(25 MPa)水素を供給している。充填設備は、5
台のトレーラを同時に充填可能。
• 今回の Zero Regio デモンストレーションのために、新たに 900 bar(90 MPa) までの高圧システムを設置した(図 6-6)。
- 水素の昇圧は 3 段階で行われている。副生水素(70 mbar)はまずレシプロ コンプレッサ(Sulzer 製)3 台にて 6 bar に加圧され、低圧タンクに貯蔵さ れる。この低圧水素は6 bar パイプラインで水素需要家に供給されている。 - 続いてレシプロコンプレッサ(Sulzer 製)2 台にて 250 bar(25 MPa)に加 圧され(容量1200 Nm3/時)、バッファタンクに貯蔵される。この高圧水素
は、22.5 MPa パイプラインで水素需要家に供給されている。また、250 bar (25 MPa)水素として、水素トレーラへの充填も行っている。
- 250 bar(25 MPa)水素を用いて、Linde 製イオニックコンプレッサにて 900 bar(90 MPa)水素を製造している。この 900 bar(90 MPa)水素は専用の パイプラインで工業団地の外にある充填ステーションに供給されている。 イオニック コンプレッサ 1 基 (90 MPa に昇圧) 低圧コンプレッサ 3 基 (0.6 MPa に昇圧) 水素トレーラ用 充填設備 5 台まで同時 充填可能 バッファタンク (30 MPa) 高圧コンプレッサ 2 基 (25 MPa に昇圧) パイプライン経由で 水素タンク(25 MPa 用) 低圧水素 タンク 10,000 Nm3 水素製 造設備 (副生)
図 6-6.ヘキスト工業団地における水素供給システム(水素フロー) 副生水素 水素トレーラ用 充填設備 5 台まで同時充填可能 6 bar パイプ ラインへ 水素タンク (225 bar 用) 高圧コンプレッサ 2 基 (25 MPa に昇圧) 低圧コンプレッサ 3 基(6 bar に昇圧) イオニック コンプレッサ 1 基 低圧 水素 タンク 0.2 bar パイプラインへ パイプラインへ 225 bar 水素ステーション (工業団地外) バッファタンク (30 MPa) パイプライン (100 MPa) 水素タンク (22.5 MPa 用) イオニック コンプレッサ 1 基
② イオニックコンプレッサ • イオニックコンプレッサ(Linde 製)20は、レシプロコンプレッサのピストンを 不揮発性のイオン液体21で代用したものである(図 6-7)。 • 水素流量は 900 Nm3/時(1.335 kg/分)。消費電力は 45 kW。 • イオニックコンプレッサの圧縮比は 3 倍であるため、一旦 30 MPa に昇圧し、 その後イオニックコンプレッサで90 MPa まで昇圧を行っている。 図 6-7.イオニックコンプレッサ
20 Ionic Compressor:Linde が Daimler とともに開発した準等温圧縮型高圧コンプレッサ。
21 イオン液体(ionic liquid)は常温域(‐30∼300℃)で液体として存在する安定な無機化合物(塩)。 液面の上昇 (水素の圧縮) 液面の下降 (水素の吸気) ピストンの移動による イオン液体の押し出し・吸引 高圧水素 (900 bar) 低圧水素 (200∼300 bar) イオン液体ミスト の回収 バッファタンク (300 bar) パイプライン (100 MPa) イオニック コンプレッサ
③ 水素パイプライン • 水素パイプラインは全長 1.7 km で、高圧水素の製造サイトから、ヘキスト工業 団地外の水素充填ステーションまで設置されている(図 6-8)。 - 水素内圧は公称 1000 bar(100 MPa)。 - パイプはステンレス製(欧州規格 1.4462)で、内径 18 mm、外径 33.7 mm である。パイプは溶接で接続されているが、水素リークがないように設計さ れている。またカーブ部分では、継ぎ手ではなく、曲げ加工で対応している 部分もある。 - 高圧水素の製造サイトに近い部分は地上部に、水素充填ステーションに近い 部分は地下埋設されている。地下埋設パイプはPE スリーブで覆われている。 図 6-8.1000 bar(100 MPa)水素パイプライン 1000 bar(100 MPa)水素パイプライン(地上部) 公称圧力 900 bar(90 MPa) ステンレス製(欧州規格 1.4462) 内径 18 mm、外径 33.7 mm サポート用フレーム 地上部 地下埋設部
(4) フランクフルト水素充填ステーション ① 水素充填ステーション外観 • 水素充填装置は、ヘキスト工業団地の南ゲートのすぐ外にある、一般のガソリ ンスタンド(Agip)の一角に設置された(図 6-9)。 - 水素充填ステーションは 2006 年 11 月 17 日に開所した。 - 総面積は約 4000 m2。 - ステーションは一般の人も使用するため、PR 効果が高い。通常のガソリン、 ディーゼルとともに、水素の価格も表示している。 - 供給水素は、高圧水素(35 MPa と 70 MPa)と液体水素である。またステー ションには太陽電池8 kW が設置されている。 図 6-9.フランクフルト水素充填ステーション 70 MPa 充填スタンド 35 MPa 充填スタンド 液体水素 充填スタンド 水素価格の表示 (9.349 ユーロ/kg=1495 円/kg) 注:70 MPa水素価格は間違って 表示されているとのこと。
② ディスペンサ
• 35 MPa ディスペンサでは充填ノズルは右側面、70 MPa ディスペンサでは充填 ノズルは左側面に設置されている(図 6-10)。
- 35 MPa 充填ノズルは WEH 製、70 MPa 充填ノズルは Walther 製。
- 35 MPa 充填ノズルにはホースが 2 本あり、1 本は脱圧用である。70 MPa 充 填ノズルのホースは 1 本だけだが、これはディスペンサ側で充填・脱圧を切 り替えているためである。
- 70 MPa 充填ノズルには、General Hydrogen 製赤外線通信装置が組みこまれ ている。 • 70 MPa 充填ではプレクールを実施している。充填時間は 3 分以内を実現(次 頁参照)。 図 6-10.水素充填用ディスペンサ(35 MPa、70 MPa) 70 MPa ディスペンサ ディスペンサ 35 MPa 緊急離脱 カプラ 緊急離脱カプラ 充填ノズル 充填ノズル ディスペンサの水素 充填量・価格の表示 (9.349 ユーロ/kg=1495 円/kg)
③ 水素の供給関連のシステム(プレクール) • パイプラインから送られてきた水素は、電気式冷却装置によって−20℃に冷却 される22(図 6-11)。 - 今後、−40℃まで冷却温度を下げる予定である。 - 水素タンク(バッファタンク)は設置していない。パイプラインからの水素 を直接冷却し、そのままディスペンサに供給している(パイプライン自体が タンクの役割を果たしている)。パイプライン中の水素量は45 kg 程度23であ るので、容量的には十分である。 • 冷却された水素は、地下を通ってディスペンサに送られる。地下のパイプは断 熱材でカバーされているが、充填ノズルでの水素温度は−9.5℃程度24。 - ディスペンサ直前で二手に分かれて、一方が 70 MPa ディスペンサに、一方 が35 MPa ディスペンサに接続されている。35 MPa ディスペンサにはプレ ッシャレギュレータが設置されており、35 MPa に減圧されている。 図 6-11.ステーションにおける水素の供給関連のシステム 22 訪問時は、70 MPa 充填ディスペンサが稼動していなかったため、プレクールも行われておらず、 パイプの凍結などは見られなかった。 パ パイイププラライインンよよりり デ ディィススペペンンササへへ 電 電気気式式 冷 冷却却装装置置 シ シャャッットトダダウウンン 用 用ババルルブブ 熱 熱交交換換器器 パ パーージジ用用窒窒素素 パイプライン より 電気式冷却装置 熱交換器 水素タンクは設置せず (オプション) 35 MPa 70 MPa 電 電気気式式 冷 冷却却装装置置 パ パーージジ用用窒窒素素
④ コミュニケーション、アースなど • 現状では、70 MPa にコミュニケーション用ラインは設置されていないが、取 り付けは可能(図 6-12)。 • アースは、充填ノズルで行っている。また地面の電気抵抗値が十分な値にある ことを確認している。 • 水素充填スタンドやキャノピーには、水素センサーを設置していない。 - ディスペンサ筐体内に水素センサーを設置しており、それで十分と判断。TV モニターは設置されているが、ガソリンスタンドで一般的なセキュリティ用 である。 • ディスペンサも、上部(エレクトロニクス部分)と下部(水素供給層部分)で 独立した設計になっており、水素の漏れ(下部)がエレクトロニクス部分(上 部)には影響しないように設計されている。 - 車両の衝突によって変形したディスペンサも、水素供給部分(ディスペンサ の下部)のみ交換する予定である。 図 6-12.コミュニケーション、アース関連機構 水 水素素供供給給部部分分 エ エレレククトトロロニニククスス部部分分 デ ディィススペペンンササ上上部部ののキキャャノノピピーー ( (水水素素セセンンササーーはは設設置置せせずず)) ク クリリアアラランンスス2200ccmm コミュニケーショ ン用ケーブル (準備中) 緊急離脱 カプラ
⑤ 充填ステーションの利用方法 • 充填のスタイルは、セルフ充填を目指している。 - 現状では、利用者はカウンターにて事前登録に人物かどうかを確認している が、将来的には、通常のガソリンと同様に、充填後に料金を払うだけの手順 にしたい。 - 米国などで採用されているような ID カードシステムの導入は考えていない。 できるだけ、既存のガソリンと同じ感覚で充填できることを目指している。 • 水素価格は、ガソリンに連動して設定されている。 - ガソリン自動車と同じ距離(例.100 km)だけ走行できる水素量を計算し、 ガソリン価格に換算している。製造コストを反映しているわけではく、意図 的に設定された価格である。 - 水素とガソリンの走行距離(燃費)の比較は、Daimler の A Class を元に試 算している。 ⑥ 液体水素充填設備 • 液体水素は、敷地内で製造しているわけではなく、Linde がトレーラで運んで きている(図 6-13 左)。 • 液体水素の充填用ディスペンサは、基本的には Linde の技術を用いている(図 6-13 右)。 図 6-13.液体水素供給設備と液体水素ディスペンサ
⑦ アクシデント事例 • これまでの運用でのアクシデント事例を表 6-2 に示す。 • 2007 年春に一般車両が 70 MPa 充填ディスペンサに衝突し、下部(水素供給装 置部分)の外壁がへこんだ。しかし水素漏洩などの事故は起こらなかった。 - 安全面では問題なかったが、正常に稼動することのシステム確認にむしろ手 間がかかるため、水素供給装置部分全体を交換することにした。 - 一般車両の衝突による破損は想定していなったため、保険上の問題(修理費 の負担)の解決に10 ヶ月を要した。なお、ディスペンサの価格は約 10 万ユ ーロ程度である。 表 6-2.これまでの運用におけるアクシデント事例 アクシデント個所 問題 コンプレッサ ・冷却水のフィルタの目詰まり
→メンテナンスで対応
・高圧による水フィルタのハウジングの破壊→ハウジングの交換
・水冷却装置の故障 ・コンプレッサのセイフティバルブの故障(低圧側(33 MPa)の 安全バルブが開放したときに、水素圧で高圧側のバルブが 外れた)→接続の再確認
充填ステーション ・コントロールシステムで電気的問題発生 ・水素ディスペンサで、窒素が高濃度化(スタートアップ時の 不適切なパージによる)→パージの追加
・窒素供給の不十分によるディスペンサの停止→窒素供給系の独立化、システムの最適化
・70 MPa ステーションのアクシデント(一般車両が衝突。しか し水素のリークはなし)→ディスペンサの交換
⑧ 水素ステーションの運用評価結果 • 水素ステーションのコンポネントの稼働率はほぼ 99%であった(表 6-3)。な お、70 MPa ディスペンサはアクシデントのために交換する予定である。 • エネルギー消費量では、圧縮天然ガスのほぼ倍のエネルギー効率を示した(表 6-4)。 表 6-3.水素ステーションのコンポネントの稼働率 稼働率 非稼働日 事故回数 稼働率(日あたり) コスト コンプレッサ、 パイプライン 45 日 5 87% 6500 ユーロ プレクール、 ディスペンサ 3 日 3 99% 3500 ユーロ 70 MPa ディス ペンサ 2007 年春 より休止 (交換にかかわる保険の協議中) 表 6-4.エネルギー消費量の比較 エネルギー消費量の比較 燃料 圧縮天然ガス 高圧水素 圧縮にかかわるエネル ギー消費 0.035 kW電/kWh (20 kPa→30 MPa) 0.124 kW電/kWh (7 kPa→70 MPa) 車両のエネルギー効率 73.75 kWh/100km (CNG 内燃) 35.66 kWh/100km (燃料電池) 全エネルギー効率 76.33 kWh/100km 40.08 kWh/100km • 現在、以下の評価を進めている。 - 水素品質: コンプレッサ前後での水素品質の比較、特に水銀とイオン液体のコンタミネ ーションに注意している(水銀電極法を用いているため)。 - コンプレッサの効率 - パイプライン材質に関するテスト
(5) ディスカッション
① 水素ステーション利用車両
• Zero Regio では、Daimler 製の F-Cell が 5 台使用される予定である。現状では、 2 台が稼動している。 - F-Cell は 5 台のうち、1 台のみが 70 MPa 充填に対応している。 - GM もまもなく 70MPa 対応車を欧州に導入する予定である。 - 液体水素は、BMW の Hydrogen 7 用である。 - 現状では、十分な水素利用自動車がない。フランクフルト近辺で水素利用バ スを 200∼300 台規模で導入する計画もあり、水素需要の増大に期待をして いる。 ② プレクール • プレクールは、現状では−20℃であるが、充填時間の短縮のために−40℃まで 冷却することを考えている。 • プレクールにおける温度シミュレーションは、Linde(ウィーン)が開発したソ フトを用いている。
7 Daimler
(Sindelfingen)
訪問先 Daimler AG
住所:73230 Kirchheim / Teck, Sindelfingen, Germany
訪問日時 2008 年 1 月 9 日(水)10:00∼13:00
対応者 Ronald Grasman, Diplom-Ingeieur (T.H.)
Manager,
Strategic Energy Products & Fuel Cell Market Devvelopment
Christian Klein
Project Coordinator,
Strategic Energy Products & Fuel Cell Market Development
Martin Schwab
Electronics Solutions, Energy Management MB-technology GmbH (1) Daimler の概要 • Daimler25は世界13 位26の自動車メーカーである。 - 2006 年の自動車生産台数は 204 万台である27。 • ジンデルフィンゲン(Sindelfingen)は、シュトゥットガルト(Stuttgart)の 南西20 km にある市で、Daimler の生産拠点のひとつである。 - ジンデルフィンゲン工場では、主に E クラス、C クラス、CL クラス、CLS クラス、S クラス、Maybach を生産している。 - ジンデルフィンゲン工場では新型 FCV(B-Class)も生産している(前の世 代のFCV はラシュタット工場(Rastatt)で生産していた)。 25 1998 年以来の Chrysler との合併を 2007 年 5 月に解消、Chrysler 部門を投資会社に売却するとと もに、10 月には社名を「Daimler」に変更した。 26 2006 年の生産台数ランクは以下のとおり。
1 位:GM、2 位:トヨタ、3 位:Ford、4 位:Volkswagen、5 位:ホンダ、6 位:PSA Peugeot、 7 位:日産、8 位:Chrysler、9 位:Renault、10 位:現代、11 位:Fiat、12 位:スズキ、13 位: Daimler。
(2) 水素充填に対する考え方 ① 70 MPa への期待 • 世界中で水素・燃料電池プロジェクトが実施されており、東京はそのセンター のひとつである。 • 充填では 70 MPa が新たな標準になりつつある。その場合、プレクールは不可 欠である。 ② 水素充填の現状 • 現状の水素ステーションでは、最終的な水素充填量(State of Charge:SOC) に大きなばらつきがあり、最適充填量(95∼100%)の充填を満足している水素 ステーションはない(図 7-1)。また多くの場合、充填時間は 3 分以上である。 図 7-1.水素充填の現状 世界各地の水素充填ステ ーションの水素充填量 世界各地の水素充填ステ ーションの水素充填時間
• 高圧水素の充填時には水素ガスの温度上昇によって、充填量が少なくなるため、 これを補うような充填方法が必要となる(図 7-2)。 • 充填後に、タンク内の水素温度 15℃、70 MPa で 100%充填を達成するために は、水素充填時の水素温度に応じて充填圧力を調整する必要がある。 - 例えば、充填時の車載タンク温度の上限を 85℃(車載水素タンクの許容温度 上限)とし、タンク冷却後(15℃)で 100%充填を達成するためには、充填 時の最終圧力を87.5 MPa に設定する必要がある(図 7-3)。 図 7-2.水素充填における圧力・温度上昇の例 (Type III タンク、水素プレクール:−30℃、外気温 20℃) 図 7-3.最終充填状態(15℃、70 MPa / 35MPa)で 100%充填を達成するため の、水素充填温度と水素充填圧力の関係
③ Daimler の充填戦略 • 図 7-4 に、水素温度補償を考えた一般的な充填プロセスを示す。温度補償を行 わない場合は、最大で20%の充填量不足が発生する。 図 7-4.一般的な充填プロセス • 水素充填ステーションが気体水素の形態で水素を貯蔵している場合は 3 段階の カスケード昇圧を行い、プレクールを行うことになる。また、液体水素の形態 で水素を貯蔵している場合はクライオコンプレッサを用いるので、基本的にプ レクールは不要である(図 7-5)。 図 7-5.充填ステーションでの水素貯蔵方法とプレクールの必要性 充填の開始 充填ノズルの結合 圧力パル ス車両タンクの初期圧力の測定 目標圧力(Ptarget)の計算 目標圧力(Ptarget)までの充填 充填の終了
• Daimler では、プレクールの有無による充填時間の影響を研究した(図 7-6)。 - プレクールを実施した場合は、外気温がどのような温度であっても、3 分以 内で100%充填が可能である。 - プレクールを実施しない場合は、外気温の上昇とともに、100%充填に必要な 充填時間が増大する。外気温が40 度の場合は、充填時間は 1 時間もかかるこ とになる。 図 7-6.外気温と充填時間の関係(プレクールの有無の影響)28
• Daimler は、充填ノズルに赤外線通信インターフェイス(Refueling Data Interface:RDI)を採用するのが好ましいと考えている(図 7-7、WEH 製 TK17 の例)。 - センサーする対象は圧力、水素温度、満充填/停止シグナルである。そのため、 充填の目標圧力を事前に設定する必要がなくなる。 - 充填を 100%SOC で停止することが可能であり、より正確でより安全な重点 が可能である。 図 7-7.赤外線コミュニケーション付充填ノズル
④ 70 MPa 充填戦略の設定 • 充填時の外気温に関係するシミュレーション結果(充填パラメータ)を図 7-8 に示す。 図 7-8.外気温に関係するシミュレーション(充填パラメータ) • 3 分以内の充填を達成するためには、プレクールが必要である。プレクールを 行わない場合、充填時間は最大60 分かかる。 • 正確な充填のためには、赤外線通信インターフェイス(Refueling Data Interface:RDI)の採用が必要である。 - RDI を採用しない場合、最終充填量は 75∼100%となる。RDI を採用した場 合、最終充填量は98∼100%となる。 • プレクールを採用した充填戦略と、RDI を用いることで 3 分以内に車両に充填 することが可能となる(水素量が10 kg 以上必要なバスの場合は、より時間が かかる)。 ・ ガスの最高温度は、プレクールによって決定する。 ・ プレクール温度は、外気温によって決まる。 ・ 外気温が-15 度以下の場合は、プレクールは不要。 ・ 3 分以内の充填は、圧力差(Ramp Rate)によって可能。 ・ 小型タンクと大型タンクを同時に充填。 外気温と求められるプレクール温度の関係 外気温と、昇圧速度の関係
(3) Daimler の敷地内の水素充填装置(見学) ① 水素供給設備
• 水素供給設備は 2002 年の技術であり、近々最新の設備に変更する予定(図 7-9)。 - 低圧水素タンク(1.3∼3 MPa)の容量は 200 m3。
- 加圧は 2 段階(1.3∼3 MPa → 35 MPa、35 MPa→85 MPa)。
• プレクールを実施している(プレクール温度−23.3℃、ノズル時点で−14℃)。 ② 水素ディスペンサ • ディスペンサは、1 台に 35 MPa 用ノズルと 70 MPa 用ノズルが設置されてい る(図 7-9)。 - 35 MPa 用ノズルは通常の WEH 製ノズルである。 - 70 MPa 用ノズルは WEH 製 TK 17。一般のガソリン用ノズルと同じような ガン形状を採用している(ユーザーの違和感を少なくするため)。 - 70 MPa 充填にはプレクールを採用している(−23.3℃、ノズルでの温度は− 14℃)。 - 充填フローレートは 60 g/秒。 - 車両の停止位置には導電性のよいアスファルトを採用しており、アースは不 要である(バスのように大型の車両の場合にはアースの設置が必要)。 - 緊急離脱カプラを採用。 プレクール Linde 10.6L (直径 25.4×5.5 mm) 1,312 bar 35 MPa 充填ノズル 充填ノズル70 MPa 水素カードル 33 MPa 低圧水素タンク (13∼30 bar) コンプレッサ Linde H2 450-20-20HB (∼45 MPa) コンプレッサ Linde H2 850-20-20HB (∼85 MPa) アフター クーラー
(4) ディスカッション • 高圧圧力に関しては、100 MPa まではスチールで十分と考えている。おそらく、 Linde がより詳しく研究しているはずだ。 • 70 MPa 充填に関わる規制: - イタリアでは、水素の高圧充填は難しい。これまでに高圧ガスの充填では 20 MPa までしか認められていない。 - 現状では、フランスでは水素ステーションの設置が認められてない。 - イタリアや日本はまず規制ありきであろうが、ドイツでは研究開発を過剰に 制限するような規制はない。ドイツの産業界は規制当局と非常によい関係を 築いており、新規の技術に関しても、十分な理解が得られている。 • ドイツでは、ドライバー自身が水素を充填できる。もちろん必要なトレーニン グは行っている。
8 Ludwig-Bölkow-Systemtechnik
GmbH
(LBST)
訪問先 Ludwig-Bölkow-Systemtechnik GmbH(LBST)
住所:Daimlerstrasse 15, 85521 Ottobrunn/ Germany
訪問日時 2008 年 1 月 10 日(木)10:00∼12:20 対応者 Reinhold Wurster, Dipl.-Ing.
Project Manager Hydrogen
Dr. Ulrich Bünger, Dr.-Ing.
Senior Scientist
Hubert Landinger, Dipl.-Ing. (FH)
(1) LBST の概要
• LBST(Ludwig-Bölkow-Systemtechnik)は、ドイツのシンクタンクであり、 将来のエネルギーや交通システムを研究している。
- Dr. Ludwig Bölkow によって 1982 年に設立された。設立当初は NPO の形態 であったが、1998 年にビジネス部門を一般企業の形態とした。 - 最大の株主は TÜV SÜD(47%)で、Ludwig-Bölkow 財団(12%)が続く。 あとは社員を含め個人が所有している。 - 現在、特に再生可能エネルギー、エネルギー効率、温室効果ガスの削減、水 素の導入、燃料電池、化石燃料の将来性が主な研究分野である。 • 水素の研究は、欧州=ケベック水力水素パイロットプロジェクト(Euro-Québec Hydro-Hydrogen Pilot Project:EQHHPP)29から携わっている。
(2) 欧州の水素・燃料電池政策の現状 ① EU の水素・燃料電池政策の流れ
• EU の水素・燃料電池政策の流れを図 8-1 に示す。
- 2002 年に「水素・燃料電池に関するハイレベルグループ(High Level Group on Hydrogen and Fuel Cells:HLG)」が、2003 年 6 月にビジョンレポート 『水素エネルギーと燃料電池:未来へのビジョン(Hydrogen energy and fuel cells - a vision for our future)』30をとりまとめた。
- ハイレベルグループはビジョンレポートの中で、欧州の水素・燃料電池 R&D を強化するために、「欧州水素・燃料電池技術プラットフォーム(European Hydrogen and Fuel Cell Technology Platform:HFP)」の設置が提言され た。 - 2004 年 1 月に、欧州水素・燃料電池技術プラットフォーム(HFP)が設置さ れた(第一回総会)。 - 2004 年∼2005 年にかけて「戦略的研究アジェンダ(SRA)」と「実施戦略 (DS)」が作成された31。両文書は、2005 年 3 月の第二回総会で承認された。 - 2005 年 6 月∼10 月にかけて両文書を統合する作業が行われた。 - 2006 年 10 月の第 3 回総会で「実行プラン(Implementation Plan)」が承 認された。
- 欧州の水素ロードマップを研究する HyWays EU-H2-Roadmap が完成した。
- HFP の提言を受けて、「ジョント技術イニシアティブ(Joint technology Initiative:JTI)」32という官民パートナーシップのコンセプトが提示され、 現在は「ジョイント・アンダーテイキング(Joint Undertaking:JU)」と いう名称・組織形態での設置がすすめられている(後述)。 図 8-1.EU の水素・燃料電池政策の流れ 31 SRA は今後 10 年間における欧州での重要研究テーマを検討したもの。DS は実際の実施戦略や必要 となるプロジェトを提案し、2020 年までのロードマップ「Snapshot 2020」をまとめたもの。
② ジョイント・アンダーテイキング(共同実施機関) • 官民パートナーシップである「ジョント技術イニシアティブ(Joint technology Initiative:JTI)」は、法的には「ジョイント・アンダーテイキング(Joint Undertaking:JU)」という名称・組織形態で設置がすすめられている。 - ジョイント・アンダーテイキング(Joint Undertaking:JU)は、欧州連合 条約第 171 条に基づいて設置された正式な欧州の組織である。設置期間は 2008∼2013 年(場合によっては 2017 年まで)である。 - エネルギー、交通、材料、環境分野の JU の総予算は 4 億 7000 万ユーロ(当 初の 7 億ユーロから縮小)。この予算はマッチングファンドで、民間から最 低でも同額のR&D 資金が提供されることが条件(官民で 50:50 になること が原則)。 - JU は欧州連合本部があるブリュッセルに設置される。また JU には、LBST のような研究機関も参画する(研究機関が参画のための代表組織を設立する)。 - JU は、今後欧州議会の承認を経て、正式に設置される予定である。 • JU は、欧州 R&D プログラムのオープンさ、透明性を高めるために設置された。 - JU の組織を表 8-1 に示す。意思決定は、エクゼクティブ委員会で行う。な お決定は合意を重視し、できるだけ3/4 以上の合意を目指す。 - 欧州委員会は、欧州連合全体や他の分野との連携・調整が必要な事項、フレ ームワークプログラム全体に係わる事項、予算関連事項に関しては、拒否権 を与えられることが検討されている。 • JU で実施するプログラムの予算は、組織運用コスト、R&D 助成とも、できる だけ官民で半分ずつ負担する。 - 欧州では、燃料電池プロジェクトでは、インフラと車両の両方が R&D 助成 をうけることができる。 - 最初の R&D テーマ募集は、当初の予定通り 2008 年 5 月に予定されている。 表 8-1.ジョイント・アンダーテイキングの組織 エクゼクティブ委員会 (運営組織) 企業から6 名、欧州委員会から 6(5)名、研究組 織から1 名が参加。 アドバイザリ委員会 ・欧州連合のメンバー国のハイレベル代表 ・学界 コンサルティブ委員会 (未定)
• 2008 年∼2013 年における、JU の予算(予定)を図 8-2 に示す。 - 6 年間の予算は、総額 4 億 7000 万ユーロ。分野では、自動車分野と定置用分 野に多くの予算を配分する。 図 8-2.水素・燃料電池分野の JU の予算規模(2008∼2013 年) • HyWays33の研究では、水素・燃料電池産業が成熟した場合に、欧州が世界に出 遅れると2030 年には約 50 万人分の雇用が海外に流出してしまう。欧州がリー ドをとるならば、逆に50 万人の新規雇用が生れると予想される(図 8-3)。 図 8-3.水素・燃料電池産業の将来の雇用
(3) ディスカッション
① 水素貯蔵・充填のトレンド
• 35 MPa で十分だという議論はあるが、35 MPa から 70 MPa への増加によって、 得られる利便性は増大する。 - 小型の燃料電池自動車ならば、現状でも 400 km 以上走行できる。また Concawe34でも35 MPa でエネルギー効率の研究を行っている。 - コストと利便性を比較するならば、35 MPa から 70 MPa への増加によって、 得られる利便性(コスト効率、充填時間の短縮)は大きく増大する。 - 現状で、多くの自動車メーカー(Daimler、GM、Ford、トヨタ)が 70 MPa 充填を推進している。また Shell などの石油会社も 70 MPa 充填ステーショ ンをニューヨークなどで展開している。 • 安全性への懸念はあるが、CNG(20 MPa)の実例を考えれば、70 MPa 充填で の安全性は社会的には大きな問題とならない。 - 世界で最も CNG 普及率が大きいのはアルゼンチンであるが、高圧ガスに起 因する事故事例は少ない。 - 安全面では、35 MPa でも 70 MPa でも危険率はさほど変わらない。また水 素の漏洩と引火の可能性と影響でも、両者に大きな差はない。 - 20 MPa の CNG 自動車でも死亡事故は発生しうる。要は、社会がどのような 利便性とリスクのバランスを許容するかどうかである。 • 燃料電池自動車の水素車載技術は、高圧タンクが主流になろう。 - 液体水素の可能性はない。現状で、BMW のみが液体水素貯蔵を主張してい るが、かつての Daimler(Daimler-Benz)の車載メタノール改質のように、 1 社しか採用しないシステムは、システムメーカーとしても魅力がない。 - BMW が液体水素にこだわるのは、水素内燃関自動車が航続可能距離の点で 燃料電池自動車に劣るためである。また BMW が水素内燃機関の研究を行っ ているのも、燃料電池技術では他社に競合できないためである。 ② 最適な水素充填圧力 • LBST の研究(Daimler の委託研究)では、航続距離 600 km での最適水素車 載圧力は50∼55 MPa であった。それ以上の圧力では、タンク肉厚が増大し、 その結果としてシステム全体としてのコスト効率、利便性が低下する。
③ 70 MPa に関する各国の状況 • 欧州における 70 MPa 充填の受け入れ状況に関しては、70 MPa タンク搭載自 動車の規制と、70 MPa 充填ステーションに関する規制とを分けて考える必要 がある。 • 水素搭載自動車に関しては、各国別に型式認証が必要な場合があった。しかし 2009 年からは、全欧州的に型式認証が統一化されるので(global technical regulations:gtr)、技術的には 70 MPa タンク搭載自動車を自国の規制を根拠 に排除することはできなくなる。よって70 MPa タンク搭載自動車における問 題はなくなる。 • 一方、70 MPa 充填ステーションの設置に関しては、各国(各地域)で状況が 異なる。 - イタリアはそもそも 20 MPa 充填設備(CNG 用)しか認められていない。2007 年より一種類の燃料(モノフューエル)の充填設備であれば35 MPa まで認 められることになったが、それでも複数の燃料を一緒に充填できる設備では これは適用されない。よってマントヴァのZero Regio ステーションの開所が 大幅に遅れる原因となっている。 - フランスでは、規制上に明記されている範囲でしか運用できない。短期間(3 年程度)ならば例外的に認められることがあるが、それ以上の期間や常設の 高圧水素充填ステーションの建設は難しい。 - 結論として、ドイツ、英国、スペイン、北欧では 70MPa 水素充填設備の設置 は可能である。しかし、イタリア、フランスでは設置は困難である。 • EC の第 6 次フレームワークプログラム(6th Framework Programme:FP6) の「HyApproval」では、水素ステーションの設置・運用に関わる知見を集合し たハンドブックを作成した。しかし、これはあくまでも知見の集積であり、欧 州各国において高圧水素充填ステーションの設置を可能とさせるようなもので はない。 ④ 高圧水素の配管材料に関して • ドイツでは、1975 年以来 CNG 自動車の運用を行っており、その安全管理・運 用に対して十分な経験がある。 • 充填ノズルやカプラなどの故障や問題は、運用面で解決できることが多いが、 運用者はとかく材料の問題に帰結したがる。
⑤ 最適な水素源に関して • 現在 LBST では、ドイツにおける最適な水素パスウエイに関して研究を行って いる。これは、全欧州的な水素パスウエイ研究「HyWays」を下敷きにした研 究である。 • 将来の最適な水素源に関しては、LBST は欧州水素協会やドイツ水素協会から よく同じような質問や研究を受けている。 - 基本的には、化石エネルギーはどれも生産ピークの問題があり(LBST の推 測では、石油ピークは2016 年ごろ、天然ガスピークは 2020 年ごろ、石炭ピ ークは2035 年ごろ)、CCS(Carbon Capture and Storage)を採用するにして も量的な面で問題がある。よって、水素を天然ガスや石炭から作ることは問 題である。 - バイオマスからの水素製造は、食物と競合するので問題外である。 - 結局長期的に我々が依存できるエネルギーは、再生可能エネルギーしかない。 - エネルギー利用の形態を考えるならば、一次エネルギーを電力に変換する必 要がある。その上でも、再生可能エネルギー(風力、太陽光)で発電し、オ フピーク電力や余剰電力を用いて水素を製造することで、エネルギーを貯蔵 するのが好ましい。 • エネルギー効率の点では、天然ガス由来水素で水素燃料電池自動車を走らせた 場合の効率は、ディーゼル自動車のエネルギー効率と大差ない。温室効果ガス 削減の点からは、天然ガス由来水素の燃料電池自動車は、ディーゼル自動車に 対して優位性がある。 ⑥ 水素・燃料電池の大規模デモンストレーションの必要性 • Daimler(Daimler-Chrysler)は、これまでに 60 台以上の FCV・FC バス デ モンストレーションを実施してきた。Daimler 以外の自動車メーカーは、FCV は開発中の技術であり、技術開発のためには量は不要、との立場であったが、 大規模なデモンストレーションによって、充填などの運用上の経験(ベストプ ラクティス)をつんだ。結局は Daimler の考え方が正しかった。現在 GM も Equinox の大規模デモンストレーションを予定している。 ⑦ 欧州とドイツの水素・燃料電池政策の関係 • ドイツのように、EU の枠ではなく、独自の国の政策として R&D を行う欧州の 国も増えている。ドイツの水素・燃料電池R&D の総額は 10 年間で7億ユーロ
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Air Liquide DTA (Sassenage)
訪問先 Air Liquide (Division des Techniques Avancées:DTA) 住所:2, Rue de Clémencière - B.P. 15 - 38360, Sassenage, France
訪問日時 2008 年 1 月 11 日(金)11:00∼15:15 対応者 Adamo Screnci
Vice President Sales and Marketing
Laurent Allidières
Development, Technologies & Innovation Department H2 Energy Group Cecilia Fouvry Sales Manager (1) Air Liquide の概要 • Air Liquide は、世界第 1 位の工業ガス会社である(表 9-1)。 - Air Liquide は、1902 年に空気の液化に成功したジョルジュ・クロード (Georges Claude)と、実業家のポール・デロルム(Paul Delorme)によっ て設立された。1907 年には、酸素の製造で日本に進出している35。 - 2004 年にドイツの化学会社 Messer Griesheim を、2006 年にはドイツのエ ンジニアリング会社Lurgi を買収した。 - 2007 年に、日本エア・リキードとジャパン・エア・ガシズ36が統合し、日本 エア・リキード株式会社となった。 表 9-1.Air Liquide の概要 売り上げ 110 億ユーロ(2006 年) 注:うち80%はフランス国外から 従業員 約40,000 人(うち 50%は欧州) 顧客数 約100 万 営業拠点 世界75 カ国 知的所有権 特許数8,800 件 R&D 拠点 世界8 ヶ所(米国、ドイツ、フランス、日本) エンジニアリング拠点 世界 6 ヶ所(米国、カナダ、フランス、ドイツ、中国、インド、日本) 知的所有権 特許数8,800 件
• Air Liquide の売り上げの構成を図 9-1 に示す。また Air Liquide の世界でのプ レゼンスと進出年を図 9-2 に、アジアでの売り上げ推移を図 9-3 に示す。
図 9-1.Air Liquide の売り上げ
(2) Air Liquide DTA の概要
• Air Liquide DTA(Division des Techniques Avancées)は、フランス サスナ ージュ(グルノーブル)に位置する高度技術部門である。 - 1962 年に低温研究センターとして設立された。その後、フランス/欧州や米国 NASA の航空宇宙プログラム、また CERN(欧州原子核研究機構、スイス) などの科学プロジェクトに参画している。 - 従業員は 350 人。主たるビジネス分野は、低温科学分野、航空宇宙産業分野、 水素エネルギーである(図 9-4)。 - 水素エネルギーに関しては、高圧水素輸送、車載用液体水素タンク、燃料電 池(Axane)に関する研究開発を行っている。 - 水素エネルギーに関するビジネスの内容を表 9-2 に示す。
図 9-4.Air Liquide DTA のビジネス分野
表 9-2.水素エネルギーに関するビジネスの内容 水 素 貯 蔵 、 輸 送分野の装置 水素充填ステーション(液体・気体) ・ 充填ステーションの新コンセプト ・ 2000 年以降、26 ヶ所の液体水素、高圧水素充填ステ ーションを建設 車載用液体水素タンク ・ BMW、GM 用 ・ 1983 年以降、50 台を試作 水素関連試験 ・ 機械的、熱的テスト、振動テスト、動的テスト EU プロジェクトの企画・参画 主な対象分野 自動車用アプリケーション
(3) Air Liquide の水素エネルギーへの取り組み ① 水素エネルギーへの取り組みの歴史 • Air Liquide の水素エネルギーへの取り組みの歴史を図 9-5 に、また現在の水素 研究に関わるアクティビティを図 9-6 に示す。 図 9-5.Air Liquide の水素エネルギーへの取り組み 図 9-6.Air Liquide の水素研究に関わるアクティビティ(世界)
② 水素の生産と供給 • Air Liquide は世界に 200 ヶ所の水素生産プラント(集中型水素生産)を持ち、 年間の生産量は30 億 m3以上である(図 9-7)。 • Air Liquide は分散型水素製造装置も展開している(例.小型水電気分解装置[5 ∼120 m3/h]、小型水蒸気改質装置[100∼1000 m3/h]、小型メタノール改質装置[200 m3/h 以上])。 図 9-7.Air Liquide の水素生産プラント • Air Liquide では、液体水素トレーラ(40,000 m3)やチューブトレーラー(20 MPa、2,500∼6,600 m3)を1000 台以上所有している。 • 水素液化プラントをフランス、ケベック、フランス領ガイアナ、日本に有して いる。 - 仏ヴァジエール(Waziers)の液化プラントは 10 トン/日の液体水素を生産し、 欧州の液体水素生産の50%を占めている(図 9-8)。生産した液体水素の一 部は、パイプライン(7500 Nm3/時、10 MPa)にて供給されている。
• Air Liquide は世界で 12 ヶ所の水素パイプライン(総延長 1700 km)を有して いる。
- 特に欧州(ベネルクス 3 国とフランス)では、世界最大の水素ネットワーク を構築している(図 9-9)。
③ 車載水素タンクに関する研究
• Air Liquide は Messer37を吸収合併し、液体水素タンクの開発体制を統合した。
- 1980 年以降、両社合わせて 50 台の液体水素タンクを試作した。Messer が開 発した、欧州最初の液体水素タンクを図 9-10 に示す。
- Air Liquide の新型液体水素タンクの水素貯蔵密度は 15%で、DOE の貯蔵目 標をはるかにしのいでいる(図 9-11)。 38 図 9-10.Messer が開発した、欧州最初の液体水素タンク 図 9-11.新型の液体水素タンクと、DOE の貯蔵目標での位置づけ 37 欧州では主に Air Liquide、Messer、Linde が車載液体水素タンクの研究開発を行ってきた。また3社は、 ・ 欧州「EIHP2」 プロジェク トの一環で開発 ・ 2004 年に試作 ・ 液体水素貯蔵量:12 kg ・ 水素供給能力: 20 kg/時 ・ BOG 保持期間:3 日間 (BOG 排気まで) ・ BOG 気化率:3%/日 ・ スチール製 ・ 空重量 120 kg ・ 水素貯蔵密度 9wt% ・ BOG 気化率 3%/日)(変わらず) ・ 液体水素貯蔵量 12 kg(変わらず) ・ アルミニウム製(40%小型化) ・ 空重量 66 kg(+ケーブル 2 kg) ・ 水素貯蔵密度 15wt%
④ 充填ステーションに関する取り組み • 2000 年以来、世界で 26 ヶ所の水素充填ステーションを設置した(図 9-12)。 - 欧州 CUTE プロジェクトでは、ロンドン、ルクセンブルク、マドリッドの水 素ステーションを担当している。 - そのほかに日本、中国、米国、シンガポールで水素ステーションを展開して いる。 図 9-12.Air Liquide が世界で展開している水素充填ステーションの例
North Buena Vista Road ステーション(シンガポール)
CUTE ルクセンブルクステーション 【性能】 ・3×42 kg/日(35 MPa)∼10 分 ・燃料電池バス 5000 時間の運 用をサポート ・パートナー:Shell 【プロセス】 ・チューブトレーラによる水素供 給(20 MPa) ・メンブレンコンプレッサ(11 kW)にて 42 MPa に昇圧、バ ッファタンクに貯蔵(夜間) ・カスケード方式にて車両に充 填 CUTE マドリッドステーション 【性能】 ・2003 年 5 月にオープン ・3×42 kg + 25 kg /日 (35 MPa)∼15 分 ・CITYCELL プロジェクトと CUTE プロジェクトのために建設(現在 は HyFleet:CUTE 用に稼動) 【プロセス】 ・チューブトレーラによる水素供給 (20 MPa)、オンサイト改質 ・トレーラからの直接充填後にメン ブレンコンプレッサ(130 kW)に て昇圧充填 【性能】 ・2005 年秋にオープン ・6×1.7 kg/日(35 MPa∼5 分) ・サイトの運営:BP ・セルフ式(充填でもコミュニケーション なし)
・CaFCP の仕様に準じ、Air Liquide でアップデート 【プロセス】 ・オンサイトで電気分解(5Nm3 /h) ・メンブレンコンプレッサ(11 kW)にて 42 MPa に昇圧、シリンダに貯蔵 ・カスケード充填後に、窒素ブースター を使用 ・チャレンジビバンダムで技術実証 川崎ステーション(25 MPa、35 MPa) ・メタン改質(50 m3 /h)
⑤ モバイル充填ステーション • Air Liquide は、モバイル充填ステーションを開発した。 - 35MPa 充填用モバイル充填ステーション(図 9-13)に続いて、35MPa 充填 と70MPa 充填の両方が可能なモバイル充填ステーション(図 9-14)を開発 した。この新型モバイル充填ステーションは、すでに商業化されている。 図 9-13.35MPa 充填用モバイル充填ステーション ・ 35MPa で 3 分以内。 ・ 車両と通信可能(ケーブル式) ・ フィルター:1μm ・ コンタミネーションフリー ・ 充填ノズルは WEH TK15 を採用 ・ マニュアル運用(自動安全装置あり) ・ プレクールなし ・ コンプレッサ:窒素あるいは空気 ・ AXANE Fuel Cell で稼動可能
・ 2004 年のチャレンジビバンダムで、17 台 の FCV と 1 台の FC バスを充填した実績 あり(2004 年 10 月)
・ 設置に要する時間:4 時間∼2 日間 (状況による)
・ PED 97/23/EC、ATEX 94/9/EC ・ 水素はトレーラ等で供給(20 MPa) ・ 自動車メーカーに応じた設計が可能 チャレンジビバンダム 2004 にて (2004 年 10 月、上海) 欧州水素燃料電池技術プラットフォーム総会にて (2005 年 3 月、ブリュッセル) ・ 70 kg/日の充填が可能。 Slow fill:FC バス 2 台/日の充填が可能 Fast fill:FCV 15 台/日の充填が可能 (70 MPa、35MPa) ・ 自動運転 ・ パッケージ化されており、設置後 2 時間で 充填運用可能。 ・ 水素はトレーラで供給 ・ バッファタンク:45MPa、85MPa ・ カスケード充填(プレクールあり) ・ チャレンジビバンダム 2006 で実証済み ・ 独自仕様の充填プロセス/アルゴリズムと、 プレクール用熱交換器を採用 ・ レンタル可能
⑥ デモンストレーションへの参画 • Air Liquide は、GM の北米での FCV デモ ンストレーションのために、ポータブル式 急速充填システム(70MPa)5 台を供給す る(図 9-15)。 - 充填システムは、DTA にてデザインし、 米国で開発される。2008 年4月から運用 開始の予定。 図 9-15.GM の FCV デモンストレーション
• Air Liquide は、カナダの「Hydrogen on the Hill」デモンストレーション(オ ンタリオ州オタワ)に参画している。 - Ford の水素内燃自動車(H2ICE)3 台によるデモンストレーションである。 内燃自動車は30kg の水素を搭載し、240 km を走行する。 • GM の燃料電池フォークリフトプロジェクトに参画している。 - これは、一般のフォークリフトを水素燃料電池式に改造して運用するもので、 Phase I では 20 台を、Phase II では 100 台以上を運用する予定である。 - Air Liquide は、Phase I では 35MPa 充填ステーション(70kg/日)を供給し
た。またPhase II では、液体水素充填ステーション(300 kg/日)を供給する。 • デラウエア大学の水素燃料電池バスプロジェクに参画している。第一段階では、 21 フィートバス(35MPa 高圧水素 16 kg を搭載し、20 kW 燃料電池で駆動) を運用する。2007 年 2 月から運用が開始されている。 • Air Liquide は、2010 年の冬季オリンピックでの燃料電池バスデモンストレー ションのために、BC トランジットに充填ステーションを 3 台供給する。 - モバイル充填ステーション: 50 kg/日(35 MPa) - ビクトリア充填ステーション: 250 kg/日(35MPa) - ウィスラー充填ステーション: 1000kg/日(35MPa)
• Air Liquide が参加しているフランスのプロジェクトを表 9-3 に、EU のプロジ ェクトを表 9-4 に示す。
表 9-3.Air Liquide が参加しているフランスのプロジェクト 名称 水素エネルギーの展開(Horizon Hydrogène Energie) 目的 持続可能な水素エネルギーのビジネスモデルの開発 予算 約2 億ユーロ
期間 7 年間 他のパー
トナー
Axane、Helion (Areva)、Alfa Laval Vicarb、Imphy Alloys、
Raigi and Alphaplast、Institut de Soudure、CEA、INERIS、CNRS 現状 European Concurrence General Directorate39からの承認まち
表 9-4.Air Liquide が参加している EU のプロジェクト FP5(第 5 次フレームワークプログラム) CryoPlane(液体水素の航空機用貯蔵システムの開発) EIHP 1&2(車載水素貯蔵システム(高圧、液体)の開発) ・ Air Liquide は欧州における最初の液体水素タンクの開発を実施。 BioHydrogen(バイオリアクタから製造された水素の精製技術の開発) CUTE(燃料電池バスの実証実験) ・ ルクセンブルク、ロンドンのステーションの開発を担当。ルクセンブルクでは、 CUTE プロジェクトの中でも、最大の運用実績を達成。 FP6(第 6 次フレームワークプログラム) HyFleet:Cute(燃料電池バス、水素内燃機関バスの実証実験) ・ Air Liquide はフルパートナー。ステーションの最適化を実施。 HyApproval(欧州における水素ステーションの許認可プロセスの統一化に関するプロ ジェクト) ・ Air Liquide はリーディングパートナー。 HyVolution(バイオリアクタからの水素の製造・精製に関するプロジェクト) HyLights(交通分野の水素・燃料電池プロジェクトのコーディネーション、実用化 の加速が目的) Celina(航空機用の水素・酸素貯蔵システムの安全性評価) StorHy(自動車への水素車載システムの開発プロジェクト)
・ Air Liquide は、Pressure Vessel サブプロジェクト、Cryogenic Storage サ ブプロジェクトのリーダー。
(4) 見学の内容
① 水素テストセンター
• Air Liquide DTA の水素テストセンターの設備概要を図 9-16 に示す。
図 9-16.Air Liquide DTA の水素テストセンター
② 水素研究設備 • モバイル充填装置は、チャレンジビバンダ ム2007(2007 年 11 月)で使用するために、 上海に持っていった(図 9-17)。 • 現在、Type IV の 70MPa タンクでの水素透 過実験を実施中(欧州StorHy プロジェクト の一環)。 • BC トランジットのデモンストレーション で使用予定の水素クライオコンプレッサ (スイスCRYOMEC 社製)をテスト中。 図 9-17.水素ディスペンサ(解体中)と 水素タンク(20 MPa Type II タ
③ 研究ラボ
• 液体水素や液体窒素中での、材料(ステンレス、アルミ、コンポジット材など) の変化を測定している。
10 まとめ
欧米では70MPa ステーションの建設・運用が進められているため、JHFC 水素ス テーションの70MPa 化を進めるにあたり、先行する欧米のステーションの設備や運 用状況の調査を行った。JHFC 水素インフラ関係者による海外の水素ステーションの 調査は初めてである。 10月に米国、1月に欧州の70MPa 水素ステーション及びステーション関連企業 9ヶ所を訪問調査した。米国調査はJHFC の水素ステーション運営企業と自動車メー カーの実務担当者が参加し、欧州調査はこれらの実務担当者に加えて水素インフラの 動向や技術調査のため燃料電池実用化推進協議会及び日本産業・医療ガス協会からも 参加があった。 (1)米国調査 米国では、70MPa を運用中のカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)水素ステ ーション、70MPa 設備を設置しているワシントン DC Shell 水素ステーション、そし てロサンゼルス近郊のカリフォルニア州南海岸大気保全管理区(SCAQMD)、ロサン ゼルス空港 BP 水素ステーション、水素インフラではトップクラスの実績を持つ Air Products & Chemicals (Allentown)の5ヶ所を訪問した。・ カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)水素ステーションは、70MPa の充填を 行っているパブリックの水素ステーションである。このステーションは駐車場の 一角に設置され、システムの監視は遠隔で実施されている。70MPa はコンプレッ サから直接充填する方式であり、プレクール設備が設置されている。水素の漏れ はシステム各部の圧力モニターとマスフローのモニターで判断できると考えてお り、水素センサーやガスセンサーはステーションには設置されていない。70MPa は車両とのコミュニケーションが必要と考えている。充填は35MPa ではセルフ充 填であるが、70MPa では管理者が立ち会っている。2007 年 2 月に 70 MPa 充填 装置が設置され8 月までに 30 回の充填が行われている。 ・ ワシントン DC Shell 水素ステーションはガソリンスタンドに併設された水素ス テーションである。このステーションでは液体水素貯槽が地下に設置されている。 70MPa の設備は準備されているがまだ充填は行われていない。70MPa は水素タ ンクからの充填とブースタからの直接充填の両方が可能となっている。 ・ カリフォルニア州南海岸大気保全管理区(SCAQMD)は敷地内に水素充填設備を 保有しており今後は70MPa 充填への対応も検討しているとのこと。ロサンゼルス 空港BP 水素ステーションは将来を考え建屋の屋上に水素タンクを設置している。 ・ Air Products & Chemicals は、世界で 70 の水素ステーションプロジェクトに参
(2)欧州調査
欧州では、70MPa を運用中の Infraserv Höchst のフランクフルト水素ステーション、 Daimler (Sindelfingen)、70MPa のモバイル水素ステーションを開発している Air Liquide DTA (Sassenage)、ドイツのシンクタンクでエネルギーや交通システムを研究 し欧州の水素・燃料電池の政策や実証試験に詳しい Ludwig-Bölkow-Systemtechnik GmbH(LBST)の4ヶ所を訪問した。 ・ フランクフルト水素ステーションはガソリンスタンドに併設されたパブリックの 水素ステーションである。水素は Höchst 工業団地で製造され、1.7km のパイプ ラインにより90MPa で供給されており、90MPa の昇圧にはコンタミネーション の問題がないとされるイオニックコンプレッサが使用されている。ステーション に水素タンクはなくパイプラインから送られてきた水素を冷却してディスペンサ へ供給している。充填ノズルには通信デバイスが設置され、最新のコミュニケー ションケーブルを準備中。ディスペンサ筐体内に水素センサーを設置しておりそ れで十分と判断し、ディスペンサ上部のキャノピーには水素センサーを設置して いない。充填は現時点では利用者を確認しているが、セルフ充填を目指している。 昨年の春に一般の車両がディスペンサに衝突し外壁がへこんだが水素漏れはなし。 なお、このような破損は想定していなかった。
・ Sindelfingen は Daimler の生産拠点のひとつであり、70MPa の水素充填設備が 設置されている。充填では70MPa が新たな標準となりつつありプレクールが不可 欠である。また正確な充填のために通信は必須である。
・ Air Liquide DTA の Sassenage は 70MPa のモバイル充填装置を保有しているが、 1月の訪問時は上海に持っていったとのことで見学は出来なかった。なお、この 充填装置は液体窒素を冷媒とするプレクール設備を備えている。 ・ Ludwig-Bölkow-Systemtechnik GmbH(LBST)では欧州の水素ステーションの規 制の説明があり、ドイツ、英国、スペイン、北欧では70MPa 水素充填設備の設置 は可能であるが、現時点ではイタリア、フランスでは設置は困難であるとのこと。 (3)まとめ 欧米の3ヶ所のパブリックの70MPa 水素ステーションを中心に合計9ヶ所を訪問 調査したが、設備面からみるとどのステーションも70MPa では充填する水素のプレ クールや車両とのコミュニケーションは必要であるとして設備の設置又は設置の準 備が進められている。安全面では、特に水素漏洩の考え方は自己責任の考えが見られ る。なお、運用面から見ると対象となる70MPa 車が少ないことからまだ充填回数は 少ないのが実情である。 この調査により欧米の70MPa 水素ステーションの設備面、安全面、運用面につい ての考え方を把握することができた。今後行われる70MPa 実証試験にこれら考えを 反映することにより、実証試験をより有効に行うことが可能となる。
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