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高速道路無料化の検証

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Academic year: 2021

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高速道路無料化の検証

京都大学経済学部 文世一ゼミナール 石田 洋生 今井 雅裕 旗手 優 福山 剛平

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0.目次

 1.始めに  2.高速道路無料化の流れ  3.現在予測されているプラス面  4.現在予測されているマイナス面  5.各国の高速道路  6.数値分析と予測(瀬戸大橋)  7.無料化による社会的余剰の変化の概算  8.まとめ

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1.始めに

  昨今、高速道路の通行料値下げ・無料化の取り組 みが行われ、マスコミなどでも大きく取り上げられて いる。この無料化に関しては、プラス面、マイナス面 の両方の意見があり、現在も結論づけられていない。      今回は現在の日本の高速道路の概要や各国の高 速道路事情を見ていきつつ、モデルを設定して社会 的余剰の変化の概算をするなどして、高速道路無料 化について色々考察していきたいと思う。

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2.高速道路無料化の流れ

建設開始当初、高速自動車国道は原則建設時の借入金が 返済されるまで無料開放をしない有料道路との位置付けら れていた。このため各路線ごとの借入金がそれぞれの路線 の収益により返済された後は、無料開放される予定だった。  田中角栄内閣によって料金プール制が導入され、全国の高 速道路の収支を合算することとなり、東名高速道路をはじめ とする利用者の多い路線の収益で他の赤字路線の借入金を 返却する状態となった。  赤字国債によって建設費を賄ったこともあり、無料化は度々 先送りへ。

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2.高速道路無料化の流れ

 2001年に小泉内閣となって以降、 日本道路公団を含めた道 路関係四公団の民営化が推進した。しかし特別会計から多 額の補助金、天下り、談合、族議員発生の温床になっていた という日本道路公団の実態が明らかになった。この結果高速 道路の無料開放は断念され、日本道路公団民営化に伴う高 速道路の恒久有料化を決定した。ここで高速道路の無料解 放の可能性は一旦消滅した。  2009年の衆議院議員選挙において、高速道路無料化を公 約に(地方を活性化するとともに、流通コストの削減を図るこ とを目的に)掲げた民主党が圧勝(財源は、道路予算の一部 振り替えと渋滞・環境対策の観点から例外的に徴収する大 都市部の通行料で確保するとする)

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2.高速道路無料化の流れ

 2009年11月15日、前原国土交通大臣は2010年度から実施 される無料化社会実験において、渋滞の増加や二酸化炭素 の排出量増加が懸念されることから「主要都市間を結ぶ基 本路線は除外する」と発言→東名高速道路や名神高速道路 は引き続き料金徴収を継続へ  東京湾アクアラインや本州四国連絡橋についてもフェリーへ の影響が懸念されるため料金割引など無料化以外の施策を 検討する意向  現状は土日祝日の普通車以下を「上限千円」としている現行 の制度を継続、北海道と九州で来年度から無料化を実施し 利用状況や経済効果を見極めるとのこと

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3.現在予測されているプラス面

料金所の人件費の削減、設備費の大幅削減ができ

る(ex ETCがいらなくなる)

利用者の負担減

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4.現在予測されているマイナス面

高速道路での交通渋滞の発生 (特に輸送トラックな どに悪影響)  並行する鉄道/路線バス/フェリーの収益悪化による 廃線/廃業など、交通機関が崩壊する可能性がある税金で負担しなければならない。自動車の利用が増えて、二酸化炭素排出量が増加 する。  一旦無料化にすると、有料化に戻すのは難しい。

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 5.各国の高速道路

◎ドイツ ・速度制限区間と無制限区間 ・基本無料だが、だんだん有料の流れに。現在は手始めに渋滞  の大きな原因となっているトラックに課金を行っている。 ※この衛星を用いた課金システム(トル・コレクト)は、たびたび システム面でのトラブルが発生した。 ◎アメリカ ・有料と無料の両方。ただし有料道路の割合は6%程度と低い 。 ・大都市の中心街の有料道路はさすがに日本並の高額だが、  それ以外はおおむね安価である。

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5.各国の高速道路

◎フランス ・基本有料。ただし都市内高速道路や港湾道路、国境付近の  道路は無料。金額は日本の1/3程度。 ◎イギリス ・基本無料、一部有料区間導入。近年はやや有料化の流れ。 ※高速道路ではないが、ロンドンではロードプライシングを導入。

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5.各国の高速道路

◎中国 ・1988年開通。全長は現在アメリカに次いで世界第2位。 ・建設は国や地方、料金徴収や維持管理などは民間会社が行 う。料金徴収期間 (30年)を定めた上で有料。ただし現行の金 額は高すぎるという批判もある。

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5.各国の高速道路

他の先進国と比較すると、これまでの日本の高速道 路は、基本的に有料である上に、料金が格段に高っ たことがわかる(ただし日本は鉄道やバスといった 代替交通が発達してるので、そのまま比較すること は問題がある)。  ヨーロッパは無料→有料の流れであるのに対し、日 本は完全に逆をいっている。

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

社会的余剰=消費者余剰 + 生産者余剰 生産者余剰=高速道路会社の収入-運営費 ◎民主党の試算 高速道路無料化による社会的余剰の変化は +7兆8000億円と発表されている。 ※ただし、この数字は生産者余剰の変化は計算に  いれられていない。         

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

以下では、「高速道路」と「一般道」の2種類の道路を

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

高速道路の価格をPaからPbに下げる 時間価値を含んだ価格q=p+wt (w:1時間当たりの価値、t:時間) q1=高速道路における価格 q2=一般道における価格 x:交通量

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

青=価格変更前の高速道路会社の収入 茶色=価格変動後の高速道路会社の収入    (=0)

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

高速道路会社の収入と管理費(2007年度) NEXCO中日本:6100億円/1360億円 NEXCO東日本:7010億円/1740億円 NEXCO西日本:6500億円/1830億円 計:1.96兆円/4830億円 (各社のHPより)

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6.無料化による社会的余剰の変化の概算

高速道路 一般道 高速道路料 維持 利用者便益 利用者便益 金収入変化 運営費変化 合計 消費者 1.4 6.3 7.7 高速道路 -2 ?? -2.0?? 一般道 ?? 計 5.7?? 単位 兆円

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

次に、実際に休日ETC1000円が導入された平成21 年3月末以降の瀬戸大橋に関連する3つの交通経路 について検証していく。(高速道路、鉄道、フェリー) ※ただし、高速道路はETC1000円制度が導入されてい る軽自動車および普通車を対象としている。 (数値はすべて四国運輸局のHP、統計情報より引用)

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 20年 度 21年 度 20年 度 21年 度 20年 度 21年 度 4月 5月 6月 利 用 台 数 瀬戸大橋(高速道路) 軽自 動 車 普通 車 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 4月 5月 6月 利 用 台 数 前 年 同 月 比 瀬戸大橋(高速道路) 20年 度普通 車 20年 度軽自 動 車 21年 度普通 車 21年 度軽自 動 車  自動車通行台数の20年度、21年度の比較

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

-1 2 -1 0 -8 -6 -4 -2 0 2 4 0 10 0 0 0 0 20 0 0 0 0 30 0 0 0 0 40 0 0 0 0 50 0 0 0 0 60 0 0 0 0 70 0 0 0 0 80 0 0 0 0 4月 5月 6月 利 用 客 数 前 年 同 月 比 利 用 客 数( 人 瀬 戸 大 橋 線 (J R) 20年 度 21年 度 20年 度 21年 度 -3 0 -2 5 -2 0 -1 5 -1 0 -5 0 5 0 2 0 0 0 0 4 0 0 0 0 6 0 0 0 0 8 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 1 4 0 0 0 0 4月 5月 6月 利 用 者 数 前 年 同 月 比 利 用 者 数 フ ェ リー ( 高松ー宇 野) 2 0年 度 2 1年 度 2 0年 度 2 1年 度  鉄道(JR瀬戸大橋線)、フェリー利用客数の20年度、21年度の比較

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

グラフのように、制度が導入された21年度と20年度 では、利用台数、利用者数が前年比とは大きな違い が出ている。  これを踏まえながら、架空のモデルを作り、高速道路 の料金の変化が社会的余剰にどのように影響を及ぼ すかを検証する。 ※旅客輸送のみを考慮し、貨物輸送はここでは考えな い。

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

 ETC休日1000円割引が導入されたデータを踏まえ、瀬 戸大橋における高速無料化を導入する場合としない場合 について検証する。  ETC1000円が実際に導入された際のデータ(4-6月期) ・自家用車(普通車+軽自動車)      約90万台→約140万台JR  約200万人→約180万人 ・フェリー(宇高航路) 約33万人→約23万人  

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

割引制度を導入しない場合   ここ数年高速道路、JR、フェリーの利用者数はほぼ 横ばいなので、利用者数は変化しないと仮定する。 よって、  ・自家用車(普通車+軽自動車) 約90万台  ・JR 約200万人  ・フェリー(宇高航路) 約33万人

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

計算の簡素化のために軽自動車と普通車の区別を なくし、割引制度導入前の料金は4000円、導入後は 平日2500円、休日1000円で考え、増加した約50万 台はすべて休日の増加分だと仮定する。  この仮定に基づくと1台あたりの通行料金の平均は約 2000円になる。  これより通行料が無料になった場合   自動車 約90万台→約190万台   JR 約 200万人→約160万人   フェリー 約33万人→約13万人        になると考えられる。

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

生産者余剰の変化

– 高速道路会社の通行料収入の減少    4000×90万=36億円 – JRの収入の減少       800×40万=3.2億円 – フェリーの収入の減少       400×20万=0.8億円

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

消費者余剰の変化

– JR利用者 – フェリー利用者 ともに下記グラフのようになり、 利用者の減少による消費者余剰の減少分は、す べて自動車利用の増加分にシフトする。

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

自動車の既存の消費者余剰の増加  4000×90万=36億円

(JRもしくはフェリーから)自動車へシフトまたは新規に発生した消費者余剰4000×100万÷2=20億円

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7.数値分析と予測(瀬戸大橋)

◎まとめ 無料化を導入した場合はしない場合に比べ、3ヶ月間で16億円 の余剰の増加が見込まれる。 (生産者余剰は40億円の減少、消費者余剰は56億円の増加) ※ただし、これは高速道路以外の交通手段が運行本数 を減少させたり、値上げを行わなかった場合である。

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8.まとめ

以上の試算から、経済学的に考えれば社会的余剰が増え るため、瀬戸大橋に限ってみれば、高速道路無料化は行 うべきである。

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8.まとめ

また無料化する場合に、今回渋滞や他の交通機関の 廃止の可能性などのマイナスを計算しなかったが、大 規模な混雑が発生する危険のある大都市部の高速道 路では、無料化は望ましくないだろう。どこまでを有料 にし、どこからを無料化するかといった線引きは、今後 の重要な課題である。また、今回の瀬戸大橋のケース のように、無料化により大きな影響を受ける組織に 対しては、政府の補助が考える必要がある。

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9.出典

・道路整備特別措置法 (http://law.egov.go.jp/htmldata/S31/S31HO007.html) ・ボイスプラス「高速道路無料化政策の愚」 (http://voiceplusphp.jp/opinion/one_minute/053/index.html) ・中国株ドットコム/業界別コラム/高速道路業界 (http://www.chuugokukabu.com/kiji/kiji11.html他) ・四国運輸局HP内統計情報 (http://wwwtb.mlit.go.jp/shikoku/bunya/toukei/index.html) ・政策評価ミクロモデル(著:金本良嗣・蓮池勝人・藤原徹)

参照

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