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貴金属ナノ粒子を用いた生体分子分析方法の高感度化 利用統計を見る

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貴金属ナノ粒子を用いた生体分子分析方法の高感度

著者名(日)

竹井 弘之

雑誌名

工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

33

ページ

71-74

発行年

2011

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002088/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

Enhancement of Biomolecular Detection Techniques with Aid of Noble Metal Particles 竹井 弘之*          1.はじめに  臨床検査の分野においては、長年ペプチド、蛋白質等 の生体分子の検出がルーチン的に行われてきているが、 2000年のヒトゲノムプロジェクトの終了以降、基礎科

学の分野においてはマイクロチップを用いたDNA、

RNAの測定が一般的になり、プロテオミクスにおいて はタンパク質の網羅的測定技術の開発が急務となってき ている.また、臨床検査の分野においても、バイオマー カーの数を数種類から数十種類以上に増やすことによ り、診断精度の向上の試みがなされている1).特に癌に 関しては、抗体医薬の登場により治療できる癌が増えて いる反面、高価な抗体医薬を有効活用するためには、的 確な診断が必須である.  多種類のバイオマーカーを同時に検出する際、必要な サンプル量、試薬量を低減し、コストを抑制する必要があ る.密接に関連する技術分野としてマイクロフルイディク スが発展して来ている.半導体デバイスの製造で培われ てきた微細加工技術を転用して、微量液体のハンドリング を可能とする技術分野である.一部のシステムにおいては、 1μ1未満の液体が扱える様になっており、複数バイオマ ーカーを同時に測定するのに適した系と言える(図1). この技術を普及させる為には、幾つかの課題を解決する 必要がある.その一が検出方法の高感度化である.サン プルの容量の減少による、信号のS/N比の劣化を防ぐた めには、検出原理を根本的に見直す必要がある.        2.表面増強法について  本小論においては、表面増強効果による光学的検出方 法の高感度化について触れる.最も良く知られた表面増 強効果は、表面増強ラマン分光法である.ラマン分光法 により化学物質を構成している化学結合の振動スペクト ルを取得でき、化学物質の同定が可能である.ラマン分 光法のメリットとしては、(1)水の吸収の影響を受けな い、(2)ガラス容器内の物質を測定できるといった面が ある反面、散乱断面積が極めて小さく、信号強度が低い といった弱点も有する.しかし、70年台初頭に表面増強 ラマン現象が発見された.銀表面を電気化学的に処理し てナノスケールの微細構造を形成し、吸着させたピリジ ンのラマン分光を行ったところ、散乱断面積が数桁以上 増大した.主たる原因としては照射により微細構造近傍 で形成される近接場光(局在した非伝搬光)の強力な電 場を介する励起とされている(図2)2・3).

従来の測定

麟翁醸・

VS.

表面増強測定

・検体         ◎近接場

    図2 表面増強効果の概念図

蹴冨圃、

ナ雛』

   陣闇】掲ば 知}◎θ●↓↓

一壁

 P《●←聞叩一  培ぬ由      *迅速な診断      グルコース      コレステロール      薬物乱用      感染症      心臓パイオマーカー

     *徹量検体      負荷の低減      *救急医療

1的確な診断

‘‘       77Quality of care 図1 マイクロチップと健康管理  表面増強効果はラマン分光以外の光学的分析法に対し ても有効である.Lakowiczらは表面増強蛍光法につい て長年研究を進めている.銀微粒子近傍に存在する蛍光 色素が励起されることによる100倍弱の増強効果が報告 されている41.蛍光色素が金属表面に直接吸着している と消光されることから、10nm弱のギャップが存在しな くてはならなく、測定が若干難しくなる5).近赤外分光 においても増強効果が見いだされており、触媒表面にお ける化学反応の分析等に威力を発揮している6).さらに、 局在表面プラズモンと呼ばれる現象が非標識型分子間相 互作用測定に利用されているが7)、ここでは酵素を用い た比色法の高感度化への適用について説明する. *生命科学部 生命科学科

(3)

貴金属ナノ粒子を用いた生体分子分析方法の高感度化     3.表面増強効果の実用化について 3.1 ナノ粒子の作製方法  増強効果を利用するためには、貴金属ナノ構造の作製 手法が重要である.様々な方法による作製方法が試みら れており、シリコンやガラス基板の上に金を蒸着し、加 熱でアニーリングすることにより金ナノ粒子を形成した り、金属コロイドを基板表面に吸着する方法もある.さ らに、電子描画システムを利用して、ナノスケールの貴 金属微小パターンを基板の上に作製することも可能にな ってきている.これらの構造を用いた増強効果に関する 報告は多々あるが、不均一性、低い再現性、数週間程度 の寿命等が本分析方法の普及を妨げている8).  これらの問題を解決するための基本的な概念を説明す る.単分散のラテックスもしくはシリカ微粒子を基板上 に吸着し、真空蒸着により貴金属を微粒子上に形成する 方法である9).微粒子を高密度に吸着するために、塩濃 度による微粒子間斥力の制御に注目した.斥力を抑制す ることにより吸着密度を高めると同時に、二層以上の微 粒子層の形成を防ぐために、わずかながらの残留斥力が 必要である.基板としては金等の表面エネルギーが高い 物質が適している.微粒子を乾燥し、金属を蒸着するだ けで金属ナノ微粒子が得られる.図3は、微粒子構造の 模式図(a)、および典型的なサンプルの走査型電子顕微 鏡写真(b,c)を示す.図3(d)で示される様に、比較 的大面積のサンプルも容易に形成できる.(1)微粒子の 粒径および蒸着厚を制御することにより物性を自由に制 御できる、(2)真空蒸着もしくはスパッタリングが可能な 元素に適応可能であるといったメリットが挙げられる. silver (a)

^

gold

図3 ナノ粒子の形成法と形態 3.2 表面増強比色法  比色法はさまざまな簡便な臨床検査に用いられてい る.例えば、インフルエンザの検査で用いられるイムノ クロマトアッセイが挙げられる.発色の様子を裸眼で判 定できる、簡便でありながら比較的高感度であることが、 幅広く用いられている理由である.  発色の原理は色々あるが、ここではアルカリフォスファ ターゼにNBT/BCIP等の基質を加え、生成する不溶性 色素をモニターすることを指す.我々は金ナノ粒子とこ の発色法を組み合わせることにより、増感が可能である ことを見出した.金ナノ粒子を可視光で照射すると、粒 子内部の自由電子が共鳴的に振動することから顕著な吸 収スペクトルを示す.吸収極大波長および吸光度は、微 粒子の粒径、金の蒸着厚に依存すると同時に、近傍の屈 折率にも依存する.したがって、金ナノ粒子の表面にあ る物質が吸着すると、色が変化することになる1°・11).変 化量は吸着物質の屈折率および吸着量に依存し、例えば アルカンチオールの単分子層が形成されると、極大吸収 波長が数nmほど変化する.そこで、アルカリフォスファ ターゼの反応により同程度の生成物が金ナノ粒子表面に 吸着しても、吸収極大波長が変化することになる.厚さ 数nm程度の色素層を直接モニターすることは困難であ るが、金ナノ粒子の光学特性を用いることにより検出が 可能になる.図4には、アルカリフォスファターゼで修飾 された二次抗体を用いたサンドイッチアッセイのイメージ 図を示す.

躍、

不溶性生成物

ジr万N

堆積した不溶性生成物

図4 酵素反応による不溶性生成物の堆積  現時点では金ナノ粒子の最適化を行っている段階であ ることから、アルカリフォスファターゼを金ナノ粒子表 面に直接物理吸着している.飽和量の基質を添加するこ とにより吸収スペクトルの変化をモニタリングしている. タングステンハロゲンランプからの光を光ファイバーで導 き、金ナノ粒子表面からの反射光をオーシャンフォトニク ス社製の小形分光光度計USB4000で取り込んでいる.  図5には、金ナノ粒子の吸収スペクトルの変化(上) と、対照実験として金薄膜表面に吸着した酵素の反応を 示す(下)。対照実験においても変化は生じるが、金ナ 東洋大学工業技術研究所報告 一72 一

(4)

ノ粒子を用いた方が吸光度の変化量が4倍ほど増大して いることが分かる12).粒径100nm前後の粒子に、厚さ 15から20nmの金を蒸着したものが、良好な特性を示 す.今後の課題としては、先にも述べた様にサンドイッ チアッセイを構築して、検出限界およびダイナミックレ ンジの確認を行うことにある.ダイナミックレンジが従 来の比色法と比較して拡大されれば、適応範囲が拡大す ることが期待される. 25  2 1、5 き  1 ●5  0  硯 11m■Cour8・Cha㎎pe Of the Sρ6ctrum  (25nen Aロ武x200D画此㎜) △O,D=0.8  O.5  0A  O3

9

 0.2  0.1

 0

 400

㎜ 剛

 ︵ 珊長  波 ㎜ 蜘 AUP ReacUon en Plane Au F勘n

△OD.=0」9

500   600   700   800   900   1000     波長(㎜) 図5 酵素反応に対する金ナノ粒子の応答 3.2 表面増強ラマン分光法  次に、表面増強ラマン分光法の結果を示す.表面増強 比色法においては抗原抗体反応を用いてタンパク質もし くはペプチド等の抗原を検出することになるが、ラマン 分光のターゲットは低分子となる.最終的には、ホルモ ン等の分泌物質の検出を想定しているが、現段階におい てはrhodamine 6Gと呼ばれる色素を用いて、銀ナノ粒 子の評価を行なっている.粒径が50から150nmシリカ 粒子を主に用いており、厚さ80nm前後の銀を蒸着して いる.  図6に銀ナノ粒子以外の表面を用いた対照実験の結果 を示す.用いた装置は堀場製作所/Yvon Jobin製のHR 800顕微ラマン分光器であり、測定条件は次の通りであ る(励起波長:514.5nm、励起光強度:50μW、露光 時間:3×5秒、アパチャーサイズ:300μm).対照 表面は、一一番左が裸のシリカ粒子、一・番右側が金薄膜で ある.右から一二番目は銀薄膜である.シリカ粒子の下の 金薄膜の有無は影響なく、銀ナノ粒子の存在が増強効果       銀{80㎜}         N  金薄聴20蝋}

,99,。堕.堕讐竺…竺・

信号強度 シリカ粒子{100nm) 唄 r 220000 ・15000 ・10000 ・5000 ・ ∧ 1  0 @1250 “∼0    1450 1550 1650

ラマンシフトcm’1 図6 表面増強ラマン効果における比較実験 に絶大なる貢献をしていることが分かる.  表面増強効果においては、個々の微粒子の形状のみな らず、微粒子間の“ホットスポット”と呼ばれるギャッ プが重要な役割を担っていると考えられている13).微粒 子間に数nmから10 nm程度のギャップが形成されてい ると近接場の強度が顕著に高まることが、有限差分時間 領域(Finite Difference Time Domain:FDTD)法に より求められている.本方法によって形成された微粒子 は“ホットスポット”の観点からも非常に有望である. 例えば二つの微粒子がダイマーとして存在している場 合、入射光の電磁波成分のベクトル方向に依って、ギャ ップを含めてダイマー近傍で形成される近接場光の強度 およびパターンは大きく影響を受けるとされる.       4.結論  本小論においては、貴金属ナノ粒子を用いることによ りさまざまな光学的分析法を高感度化できることを示し た.基となるノウハウは、シリカもしくはポリスチレン 微粒子の単層膜の形成方法である.高密度かつ均一な単 層膜を作製し、真空蒸着もしくはスパッタリングにより 金もしくは銀を微粒子の.Lに形成するだけである.  アルカリフォスファターゼを用いた比色法において は、変化量が4倍強増大した.これは0.D.(吸光度)に よる測定であるが、図5(上)を見ると吸収極大波長が長 波長側にシフトしていることが分かる.吸収ピークを近 似して波長を算出することにより、吸光度測定と比較し てさらに高精度の測定が可能になることが示唆される.  表面増強ラマン分光については、明らかに増強効果が 見られている.銀ナノ粒子の“賞味期限”の評価に着手 しており、三か月程度の安定性が達成できる見込みが得 られている.検出限界の評価には着手しているが、低濃

(5)

貴金属ナノ粒子を用いた生体分子分析方法の高感度化 度の分子を如何にして銀ナノ粒子表面上で濃縮させるか が、課題である.  今後の課題としては、これら分析方法をマイクロチッ プに組み込むことが挙げられる.それぞれの分析法にお いてサンプル処理のプロトコールが異なることを考慮し てマイクロチップを設計しなくてはならない.具体的な 技術開発の方向性としては、(1)検出領域の微小化、(2) 複数バイオマーカーの同時検出を目的とした二次元アレ ー化、(3)複数分析方法による同時解析、(4)コストお よびサイズ等、システム全体の最適化設計が挙げられる. 参考文献 1)P.Fortina, LJ. Kricka, D.J. Graves, J. Park, T. Hyslop,   F.Tam, N. Halas, S. Surrey and S. A. Waldman l   ApPlications of nanoparticles to d三agnostics and thera−   peutics in colorectal cancer, Trends in Biotech., VoL 25,   pp.145−152 (2007) 2)R.G. Freeman, K.C. Grabar, K.J. Allison, R.M. Bright,   J.A. Davis, AP. Guthrie, M.B. Hommer, M.A. Jackson,   P.C. Smith, D.G. Walter and M.J. Natan:Self−assem−   bled metal colloid monolayers−an approach to SERS   substrates, Science, Vol.267, pp.1629−1632 (1995) 3)K.Kneipp, Y. Wang, H. Kneipp, L.T. Perelman, L   Itzkan, R.R. Dasari and M.S. Feld:Single molecule   detection using surface−enhanced Raman scattering   (SERS),Phys. Rev. Lett.t Vol.78, pp.1667−1670 (1997) 4)JR. Lakowicz, C,D. Geddes,1. Gryczynski, J. Ma[icka, Z.   Gryczynskit K. Aslan, J. Lukomska, E. Matveeva, J,   Zhang, R. Dadugu and J. Huang:Advances in sur−   face−enhanced fluorescence, J. Fhlorescence, Vol.14,   pp.425−441 (2004) 5)T.Yamaguchi, T. Kaya and H. Takei:Characterization   of cap−shaped silver particles for surface’enhanced fluo−   rescence effects, AnaL Biochem., Vol.364, pp.171−179   (2007) 7)H.Takei and M. Himmelhaus, in:Progress in Nano−   Electro−Optics III, Springer, Berlin (2005) 8)F.Ni and T.M. Cotton:Chemical procedure for   preparing surface−enhanced Raman−scattering active   silver films, Anal. Chem., Vol.58, pp.3159−3163(1986) 9)H.Takei:Surface−adsorbed polystyrene spheres as a   template for nano−sized metal particle formation:opti−   cal properties of nano−sized Au particles, J. Vac. Sci.   TechnoL B. VoL IZ pp.1906−1911(1999) 10)U.Kreibig and M. Vollmer, Optical Properties of Metal   Clusters, Springer, Heidelberg(1995) 11)M.Himmelhaus and H. Takei:Cap−shaped gold   nanoparticles for an optical biosensing, Sensors and   Actuators B, VoL 63, pp.24−30 (2000) 12)H.Takei and T. Yamaguchi:Acombinatorial   approach toward fabrication of surface−adsorbed metal   nanoparticles for investigation of an enzyme reaction,   Phys. Chem. Chem. Phys.t Vol.12, pp.4505−4514(2010) 13)H.Wang, C. S. Levin and N J. Halas:Nanosphere   arrays with controlled sub−10−nm gaps as surface−   enhanced Raman spectroscopy substrates, J. Am.   Chem. Soc., Vol.127, pp.14992−14993(2005) 6)M.Osawa:Surface−enhanced infrared absorption,   Top. AppL Phys., Vol.81, pp.163−187(2001) 東洋大学工業技術研究所報告

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参照

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