児 童 の 思 考 を 促 す 国 語 科 学 習 指 導 複式学級における学習活動を通じてー 高度学校教育実践専攻 教員養成特別コース 坪 内 久 直 1 研究の動機 筆者は, 1年次の9月から行ってきた実 習をとおして,子どもの思考を促す授業を 行いたいという考えをもつようになった。 思考を促すということは,授業の中で児 童が持っている先行経験や既習の学びを生 かすことや物事の根拠を考えること,多様 な意見交流によって違う視点からの考えに 触れさせることなどを通して,新たな思考 による理解が生じることであると考えた。 その中でも国語科の授業で思考を促す学習 指導の手立てについて調べ,授業で実践す ることでどのような効果を生むのかを研究 したいと考えたことが本研究の動機である。 2年次の実習では5年と 6年の複式学級 のクラスに配属されることとなった。通常 学級と比べ少人数・異学年の児童など,昨 年とは違う点が多い。そこで昨年の経験を 踏まえ,複式学級における児童の思考を促 す国語の学習指導にはどのようなものがあ るのかについて追究したいと考えた。 2 研究の目的と方法 本研究では,次の 2点について追究する ことを目的とする。 第1に,児童がもっている先行経験や既 習の学びを生かすことや物事の根拠を考え ること,多様な意見交流によって違う視点 実習責任教員 実習指導教員 実習指導教員 一 彦 也 光 伸 達 下 原 村 木 藤 端 からの考えに触れさせることなどを通して, 新たな思考を促すための教師の学習指導の 手立てについて研究する。 第2に,思考を促すことのできる学習指 導を取り入れた授業実践を行い,教師のは たらきかけから思考が促されたかを検討し, そのよさを明らかにすることを目的とする。 以上に述べたようなことから,思考を促 す学習指導の手立てについて,以下の3つ の観点から方法をまとめた。 (1)思考を促すための発問・言葉がけ ①児童の既習の知識を踏まえた先行経験と 結び付けて考えられることで,
r
自分の生活 にかかわりがある」という必要感を児童が もち,思考を促すような発聞をする。 ②学習のねらいや言葉の意味,物語につい て,意見や情報を選択・整理する発問を設 定し,児童の思考の広がりと深まりを促す。 ③なにげない児童のつぶやきを拾い,r
なぜ そう思ったの」と全体に発問する。児童の 侃.IJから湧いた内的な疑問についてみんなで 思考し,学習の理解と整理を図る。 (2 )思考を促すための話し合い・グループ 活動①複式学級の間接指導について,児童が主 体になり学習し,教材について今まで、に知 ったことや見つけたこと,考えた事をグル ープになって話し合う。問題解決や新たな 間いを見つけられる学習交流の場を設定す ることで,他者の考えのよさに触れ,自分 の思考を深める。 間接指導とは,一方の学年に教師が指導 をしている(このことは直接指導と言う) 時,他方の学年が自主的に自分たちの学習 を進めていく活動のことである。または, その活動についての事前の指導や環境設定 のことを表す。 ②複式学級で2学年の合同授業を行い,異 学年交流を通してグ、ループで、互いの考えを 伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展 させられるような活動を取り入れた間接指 導について追究する。 (3 )思考を促すための教材開発 ①児童が教材について学ぶため,思考する 内容について,視覚的に理解できるような ヒントカードや,間接指導を児童が主体的 に行うことのできるメッセージカードを作 成する。 ②内容に即して児童の思考の流れに沿うよ うな構成や主たる考えを自分の生活につな げ,視点が広がっていく思考を深められる ようなワークシートを作成する。 授業実践については,以下の 4固に分け て行った。 ア.6月 16日「敬語 (5年)J
r
漢字の形と 音・意味 (6年)J イ 11月 4日「秋の言葉を感じよう (5,6 年合同)Jワ
11月 29日「わらぐつの中の神様 (5 年)Jr
海の命 (6年)J エ.12月8日「わらぐっの中の神様(5年)J 「海の命 (6年)J 実践した授業の記録映像や資料をもとに 児童の思考がどのように促されたかを分析 し,成果と課題を明らかにする。 3 分析と考察 以下, 4つの実践を分析・考察して,研 究の内容にあった成果と課題が見えた主な 分析を記す。 (1)思考を促すための発問・言葉がけ ①アの項で実践した「わらぐっの中の神様」 で,r
大工さんがおみつさんのことを好きに なったのはいつかjという発問において「会 った瞬間Jという意見の児童が多かった時 に「それって見た目でおみっさんのことを 好きになったってことかな」と問い返しを 行うことで,児童がもう一度物語の流れを 追い,大工さんがおみっさんの人柄やわら ぐっに込められた思いなどを知って好きに なったということを思考することができた。 ②エの実践では,r
わらぐつの中の神様」 の物語のよさや特色を,感想文として発表 する活動では,事前に発問によって発表す る時に気を付けることや感想を発表する 時の視点について,児童の思考が促され, 考えを発表する姿が見られた。 そして,挙手した児童から順に感想文を 発表し,他の児童に感想、を述べさせた。他の児童の感想文について,よかったところ や自分も取り入れたいところなどについて 思考が促され,
r
自分と似ているところJr
自 分も真似したいところJなど一つの視点に 限定されない感想を発表していた。しかし 途中から「自分も真似したいJという視点 での感想が多くなっていっており,違う視 点での感想を発表していくよう声かけをす べきだ、った。 ③アの「漢字の形と音・意味」の実践では, 漢字のへん「月(にくづき)Jについて学習 するときに教師が「服」を例に挙げ「月(っ きへん)Jという形は同じだが,読み方と意 味は違うものがあることを考えさせる発聞 をした。そこで児童は「っきへんだと思う」 と発表したが,その根拠を教師が説明して しまったロ「どうしてそう思ったのJr
へん の意味を間違えないようにするにはどうし よう」など児童にさらに考えさせ,発表を 促すような問い返しをすべきであった。 ④エの「海の命」での実践では,太ーの考 えの変化について意見を発表した時に,r
な ぜそう思ったの」と根拠を問う発問で,児 童の「なぜ自分はこう思ったのか」という 思考が促され,教科書や自分の経験,登場 人物の心情など,様々な要素に思いを巡ら せ,r
自分を振り返って考えを発表するJと いうことについて,r
自分」の部分を強く表 現することができた。 (2)思考を促すための話し合い・グループ 活動 ①アの5年「敬語Jの授業では尊敬語と謙 談話の会話文の役割演技を行った。事前に 教師による説明が不十分であり,児童が役 割演技をどのようにして行うのか理解でき ず,ワークシートの会話文を敬語に直す活 動のみに留まっていた。間接指導の時間に 児童が活動の内容を把握できる教師の働き かけ,その後の直接指導の時間に役割演技 を発表させるといった手立てが必要で、あっ た。 ②エの6年「海の命Jでは,間接指導で第 五場面での太ーとクエの遜遁から太ーのク エに対する考えがどのように変化していっ たかを,ワークシートを活用して考えた。 机間指導を通して,児童のワークシートの 進行を見ていくと,太一の考えの変化を理 由を交えてしっかりと考え,書きすすめて いる児童が見られた。また,理由を書けず にいる児童には,太一の気持ちが変わった 部分を示し,思考を促した。 (3 )思考を促すための教材開発 ①ウの 5,6年合同「秋の言葉を感じようJ の実践で,r
秋の日はつるべ落とし」という 言葉について,バケツとひもを用いてつる ベ落としの動きを児童に実演して見せた。 そのことで,つるべ落としという表現には 「日がすぐに沈んでいく様子」を表す意味 があることを児童がイメージできるよう促 した。つるべ落としの実演を見た後で,児 童から「日がすぐに落ちるj ということを 表しているという発言が出たが,その発言 を周りの児童に共有させることは不十分で あった。教師が実演するのではなく,児童 に実演させることで,より実感をもってつるべ落としと日が沈む様子をつなげて考え を促すための材料や,何について思考する られるようにし,昔の人の秋の季節の表現 べきかを把握して臨むことができた。 の仕方について思考を深めるべきであった。 ⑤自分の考えを持っていても周りの目を気 ②ウの6年「海の命」での授業で登場人物 にして発表できない児童に対して,児童か の生き方・考え方を思考する活動の中で, らの挙手を待つよりも,そういった児童を 短冊を使ってブ、レーンストーミングを取り 見取って指名することで新たな考えを引き 入れた。児童が物語の登場人物に対して抱 だし,他の児童の思考を促すことができた。 いたイメージや考え方に対する意見を短い 文に書き一覧表にして並べることで,どの ような考えの持ち主なのか,どのような生 き方をしているのかという思考へつなぐき っかけになった。 4 成果と課題 (1)成果 ①意見を発表する時に