一一一 60 一一 (東京女医大回第22巻第2号頁60−66昭和27年5月) (特 別 掲 載)
尿中無機燐排出に關する研究(第一ee)
東京女子医科大学内科教室(圭任 三神美和敏授)一 国立公衆衛生院栄養生化学部(準出順吉鄭技官)助手内1藤7aみ
ナイ hウ(受付昭和27年2月20日)
1.健康入並びに二・7三の疾患の尿中無機燐排出の
時間的,逐日的変動について
緒 言 人体に於ける無機燐の排泡に関してPeter and Van Slyke,騨井・Mathison等の丈献がみられ る。私は生体内燐代謝の研究のために,健康人並 びに二,三の疾患について尿中に排出される無機 燐の一日量,及び時刻別排出量の変動を測定し, 更に二,三の実験条件を与えて観察し7こ。’実 験 方 法
日常の研究業務に従事する男女22名を対象とし,あ ilの儘の状態を醐察する為に食事は別に規定しないで, 何でも任意に摂取させ,其内2名に就て9日聞ありの儘 の逐日変動を測定した。叉健譲入の普通生活状態に於け る尿申無機燐排出量:の時間変動をみるために,健;康男女 医学研究隼6名を撰び必要に応じ2日以上排尿の度毎 に測定した。次に2,3の疾患例に就七は本病院に入院 中の患者60名に就て1日排出量,時聞排出量を測定じ, 必要に応じ逐日変動を観察した。又一定時刻に於ける尿 中無機燐の時間排出量を見る為に,公衆衛生院男女講習 生27名,某工場労務者10名,結核患者18名につき観察 した。猶尿量と無機燐排串量との関係をみる為に健康者 並に2,3の患者に水試験を行った。 測定方法は尿中無機燐はBe三LDoisy法,.血中燐1貝1定 は]Denig6S法によった。 の範囲,80%が0.51∼0.65gの範囲で正規分布 直線上にある。 逐日変動は多くは0.2g程度,最大限0.3g以 内である。種タなる状態の結核患者では無機的一 日排出量は(搬25∼0.82g℃正規分布直線上にあ 健康者の尿中P1日排出量の逐日変動(9)、 ミ日 第一例 第一例
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ・12 13 14数.一塊,蚤・排・旧婚諾瞬・量
1390 840 1470 1340 1490 2120 1800 1415 1077 1012 2!30 705 1306 O.72 つ.63 0.59 0.59 σ.6望 O.57 0.55 0.52 0.56 0.52 0.48 0.45 0.45 1400 2010 2130 1580 エ830 1920 2210 1860 1610 O.58 0.58 0.64 0.52 0.53 0.51 0.43 0.56 0.51実 験 威 績
1) 健康者の尿中無機燐一日排出量は ⑰.43∼ 0.729,平均0.549,全例の60%が0.51(・0.609 る。症状安定せる例に於て逐日変動は0.5g程度, 何れも健康者に比べ大幅な増減がある。健康者の 最低値以下を示しナ:例はすべて腸結核症を合併し 殊に下痢を伴なつtこ例であっアこ。 2) 尿中無機燐排出量は採尿時刻により変化が ある。健康者の普通生活に側ては一一日中の最大排一18一
一61一
浸潤性肺結核症の尿中P1日排出量の 逐日変動(9) 日 第 一 例 第 二 例一膝趨1・排瞳翫劃塁・量
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 .12 13 14 1080 1420 1578 王268 1364 1480 1912 19工2 1720 1020 1138 1020 1138 1480 O.64 0.44 0.52 0.47 0.49 0.80 0.53 0.79 0.47 0.33 0.71 0.77 0.34 0.70 1450 1 0.61 エ058 1 0.76 1640 0。73 1880 I O.59 1 1522 1 0.61 138。{。.53 三873i。.61 167。i。.6313751。.68
1’470 0.49 138⊂〕 0.5916321G・57
149。1。・64152310・82
第1図健康者の尿中無機燐排出量の時間変動 300 60 200 dO 1 /00 20麟
4 8 /2 4 6 /2 4 肘刻 第2図肺結核患者の尿中無機燐排出量の時間変動 30060 200d ノ0020oo
難
〔コ日中P an夜閻P 一尿量 a8 f2 48 /2 4 珊六 出量は夜間から起庫時にかけて高く,i豊間に低い 値を示したσ種々なる疾患に於ては極めて複雑な 時間変動を示し,健康者の如く夜間から起床時に かけて高い事も,何時に特に高いと云う現象もな く,叉疾患特有な差異はみられない。 3) 健康者,労務者,結核患者の多数について 這々同時刻に於ける時間排出量をみると全く不定 であるが,腸結核症殊に下痢を伴う者は例外なく 極めて低値を示しt二。 4).起床時の尿に就て,0.1g区分で分布をと ると,健康者は高値に患者は低溶に頻度の山を生 じ,これを統計的に観察すると健康面の起床時に 高く5%乱丁の危険率を以て有意の差を示したG 、5)健康者に水試験を行った場合に尿量に伴う 無機燐時闘排出量の増加はみとめられない。二, 三¢!疾患の際に水試験を行りた場合にも,尿量増 加に伴う無機燐時間排出量の増加はみられなかつ 7こ。 考 察 次に以上の実験成績を総括して老察し7こい。種 々な状態の結核患者では,尿中無機燐一日魚串量 .ゴ ヘ健康者に比べその変動限界に大幅な増減を示し ナこ。.このうち特に尿中無機燐一日排出量及び時間 排出量に極端な減少を示したものは殆どすべて腸 結核症を合併し,下痢を伴なつ7こものである。し 7こがつてこれらの場合・は頻回の下痢によって多量 の消化液が再吸牧される事なしに失われ血中無機 燐限界を保持するtこめに尿中排泄量が減少する5 のと考えられる。叉アチドーヂスの時には尿中に 排出される燐は組織の有機燐の分解によって生す るものと言えられているから,結核症でアチドー ヂスが長びけばこの方の限界からも尿中無機燐撲 出量が減退して来る事が考えられる。又一方に於 て下痢を伴わない結核患者で尿中無機燐排出量の 極度の減少をきたすものがある。これらの症例は 結核症の末期症状を呈しているもので,食餌とし て燐酸を摂取することが極めて少ないか,叉は全 然とらないものであるのに,血液特に血漿中の無 機燐が全然減少してない事から見て,このような 場合組織中の有機燐が血液中に絶えず流入してい る事が想像され,この状態で尿中無機燐量を正常 に保つことは出来ないのであろうと老えられる。 一一一 19 一一 62 一一 次に結核患者で尿中無機燐一日排出量の増ヵ口を 来したものについては,燐含有量の比較的多い食’ 餌と脂肪に富む結核食の影響により,腸からの燐 の吸牧を増加し従ってこれが尿中無機燐排出量増 加の根本的な要因をなしている事が考えられる。 叉肺臓に障碍があるとガス交換の障碍によって動 脈血のCO2過剰,及び血液のpHの低下が引き 鉛こきれるために体内緩衝剤としての燐酸が多量 尿中にi排出される事も一因をなすことであろう。 日常生活状態に於ける時間変動について,Pe・
ters and Van slykeは尿中無機燐の最大排出量
は午後四時から五心であると云っているが,私の 実験では夜間から起床時にかけて高信 日中に言 値をとる日露変動を示しアこ。この現象に対して睡 眠の影響をみるために徹夜して同じ実験を行つナこ 所,矢張り夜間より起床時にかけて高く,日中に 低い値を示し,この現象が睡眠の為でない事を知 つナこ。呉は早朝覚醒時に尿量の増加をみ.とめてい るが私の実験では尿中無機燐の日週変動は尿量に より決して影響されるものではない事が認められ る。巳中と夜間の活動条件の相違が尿中無機燐の N週変動を惹起するのではないかの疑問lll対して は,夜間に日中と同v一一一A条件の運動を行っても,叉 日中に相当激しい運動を行っても,周期の大勢を 変化ざす事は出来す,矢張ウ夜間に高い値を示し すこ(第窮鼠)。この事実により運動の有無に関係の ない事を知つナこ。、 高度な発汗を伴う高温環境で,日中実験を行い 著明な尿中無機燐排出量の減少をみとめても(第 W篇)矢張り同様に日中夜聞の変動大勢を変化さ す事は出来ない。夜間食餌摂取により,叉日中二 三の薬剤投与により一時的な尿中無機燐排出量の 変動を認めても,隔週変動の大勢を変化さす事は出
来ないoIleters and Van Slyke・Gollwitzer Meierは血液中の燐濃度の日中夜間の変化が尿中 無機燐二二量に直接影響を与えると云っている。 私はこの間の関係を明かにする為に,日中,夜間 起床時と3回採血し血液中の各燐二二の測定を行 ったが,その結果血液:申の燐濃度には日週変動の ない事を知っナこ。これに依って血液中の燐濃度を 一定に保つ為に尿中無機燐排出量は腎臓機能によ り調節されるものと推定されるσ 要 約 1).健康者の尿中無機燐一一日排出量は 0.43∼ 0。729,平均0.549である0 2) 種々なる状態の結核患者の尿中無機燐一一日 排出量は0.25∼0.82gで健康者に比して大幅に 増減し7こ。 3) 腸結核症殊に下痢を伴うものは極端な低回 を示し之は長期に亘るアチドーヂスの結果組織有 機燐の枯渇と腸内容物喪失の影響と考えられる。 4)尿中無機四時間排出量は採尿時刻により変 動があるσ健康者では夜閥及び起床時に高く,三 間に低く酸塩基平衡の生理的変動によるものと思 われる。種々なる有三者では複雑な時間変動を示 し,夜間から起廉時に高い四丁何時に特に高いと 云う事もなく,叉疾患特有な変動もみとめられな い0 5) 健康者,労務者,結核患者多数について略 ft同時刻に採尿し時間排出量をみると全く不定で ある。 6)水試験を行うと無機燐の時間排出量は尿量 に伴って変動しない。 交 敵
1) Peters and・Van Slyke : Quantitative clini− cal chemistry lnterpretation Vol. 1,1109,1937
2)薩 井:生化学実験法,定量篇,昭15 3) Mathison:Biochem. 」. 4, 274, 1908..・9 ” 、4) 須 藤:医イヒ学自勺微量量則定法,3版,51{げ55, 臼召 12
5)吉 州:貝新医学35巻, 1号,昭23,1 6)Peters and Van Slyke:1)同上
7) GoEiwitzer−Meier, Kl, a’nd Kroetzcher Chr:Biochem. Z. 154, 82s 1924
8)呉:目律神経系,昭22
9)三川・臨床医化学,馬345,H召’24