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神経有棘赤血球症に関する研究

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Academic year: 2021

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86 別添4

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)

神経変性疾患領域の基盤的調査研究班 (分担)研究報告書

神経有棘赤血球症に関する研究

研究分担者 中村 雅之

国立大学法人鹿児島大学・学術研究院医歯学域医学系・教授

A.研究目的

神経有棘赤血球症 (Neuroacanthocytosis; NA) とは神経症候と有棘赤血球症を併せ持つ病態に 対して包括的に使用される用語であり、その中 核群は(Chorea-acanthocytosis; ChAc)と

McLeod症候群(McLeod syndrome; MLS)で占め られる。両疾患ともに希少であり、ChAcについ ては患者数は世界で1000症例程、MLSは数百 例程度と推定されている。日本人ChAcについ ては100症例以上の報告があり世界の中では日 本人に比較的多い疾患とされている。前年度に 引き続き、我々はChAcの原因であるVPS13A 遺伝子変異とMLSの原因であるXK遺伝子変異 についてコピー数変異 (Copy Number

Variation; CNV) 解析を含めた包括的遺伝子変 異解析を行い、併せて赤血球膜分画を用いた VPS13A遺伝子産物であるchoreinとXK遺伝 子産物であるXK蛋白質のウェスタンブロット 解析による分子的診断を行った。

また、分子診断確定したNA患者に対して自 然史を追跡するために調査票を作成した。ChAc

におけるてんかんの頻度は高く生活機能や予後 の増悪因子として影響すると考えられている。

今回は分子診断が確定したChAcにおけるてん かんについて詳細に調査した。ChAcモデルマウ スはてんかん発作を生ずることは稀であった が、継代中にてんかん発作を頻回に生じる家系 が出現し、そのマウス家系における症状修飾遺 伝因子について解析した。

B.研究方法

NAと臨床診断された患者に対し、文書による 説明と同意を得て血液を採取し、赤血球から赤 血球膜分画、白血球からgDNAを抽出、また RNAを抽出し、cDNAを合成した。また、赤血 球膜分画タンパク質をウエスタンブロット法で 解析し、免疫反応によりchoreinタンパク質と XKタンパク質を検定した。

サンガー法によるシークエンシングによって VPS13A遺伝子とXK遺伝子の全エクソン及び 近傍領域について遺伝子変異解析を行った。

long range PCRを組み合わせてCNV解析を行 研究要旨

神経有棘赤血球症とは神経症候と有棘赤血球症を併せ持つ病態に対して包括的に使用される用語で あ り 、 中 核 群 は 有 棘 赤 血 球 舞 踏 病 (Chorea-acanthocytosis; ChAc)と McLeod 症 候 群(McLeod syndrome; MLS)で占められる。両疾患ともに希少疾患であり、自然史などは明らかにされていない。

前年度に引き続き、ChAcの原因であるVPS13A遺伝子変異とMLSの原因であるXK遺伝子変異に ついてコピー数変異 (Copy Number Variation; CNV) 解析を含めた包括的遺伝子変異解析を行い、併 せて赤血球膜分画を用いたVPS13A遺伝子産物であるchoreinとXK遺伝子遺伝子産物であるXKタ ンパク質のウェスタンブロット解析による分子的診断を行った。今回、ChAc における多彩な精神神 経症状の中でてんかんの症状に着目して調査し、頻度を明らかにし、動物実験において、てんかん誘 発修飾遺伝子変異を同定した。また、自然史を追うための神経有棘赤血球症追跡調査票を作成し、将 来の診療ガイドラインの作成を目指す。

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87 なった。また、発症時と現在の臨床症状につい て比較調査するための神経有棘赤血球症症状追 跡調査票を作成した。研究室が保管している77 名のChAc患者の臨床症状を集計し、てんかん の状況を調査した。また、てんかんを頻回に生 じるChAcモデルマウス家系を用いて全ゲノム 配列解析による遺伝子変異解析を行った。

(倫理面への配慮)

本研究はヒトゲノム・遺伝子解析研究を含むた め、鹿児島大学医学部遺伝子研究倫理委員会で の審査を経て研究を行う承認を得た上で行った

(受付番号第101号)。動物実験に関しては、有棘

赤血球舞踏病モデルマウスに関する遺伝子組換 え動物の取り扱いについては、遺伝子組換え生 物等の使用等の規制による生物の多様性の確保 に関する法律(平成15年6月18日法律第97 号)及び関連する政省令・告示に基づき、鹿児 島大学においてすでに承認を受けた上で行った (承認番号19S024)。神経有棘赤血球症症状追跡 調査票を用いた自然史解析については、今後臨 床研究倫理委員会に申請予定である。

C.研究結果

令和2年度は3例のChAc、1例のMLSを分子 的に診断確定した。それらのうちから3つの新

規VPS13A遺伝子変異を同定した。今回分子的

に診断が確定した3例のChAcのVPS13A遺伝 子変異はexon 16からexon 61に分布してい た。これら3例のChAcの赤血球膜分画の choreinウェスタンブロット解析において choreinのバンドは認めなかった。

また、今回のMLSの赤血球膜分画を用いた XKタンパク質ウェスタンブロット解析ではXK タンパク質のバンドは認めなかった。

追跡調査票は、発症時年齢、初発症状、初診時 と現在の介護度、生活状況、神経学的症候、認 知機能、精神症状について調査項目を作成し た。

ChAc患者77名のうち、てんかんを持つものは 35名 (45.5%) であり、初発症状がてんかん発作 であったものが21名 (27.3%) であった。発作 型に関する詳細情報がある患者12名中、二次性 を含む全般発作が8名 (66.7%) 、詳細不明の意 識消失が2名 (16.7%) 複雑部分発作と部分発作 がそれぞれ1名 (8.3%) であった。発症年齢を 比較すると、てんかん発作有りの群が28.5±7.4 歳、無しが31.3±7.6歳であった。

てんかん発作を頻回に生じるChAcモデルマウ ス家系から、てんかん発作と連鎖する新規遺伝 子変異候補を同定した。ChAc変異と新規変異の 両変異を併せ持つマウスがてんかん発作を頻回 に生じることを確認した。

D.考察

日本人NAの遺伝子変異は多彩である。臨床 症状との関連については横断的な症候では捉え 難いため、神経有棘赤血球症症状追跡調査票を 用いて今後詳細な追跡調査を行う必要がある。

てんかんについては、ChAcでは頻度高く見ら れ、統計学的有意差はないものの、Huntington 病などの他の神経変性疾患同様にてんかん発作 を有すると発症年齢が若年化する傾向を認め た。今回マウスにおいて同定した新規変異は ChAcモデルマウスのてんかんに関する症状修飾 因子であることが示唆され、今後は数を増や し、ヒトChAcにおけるてんかんとの関連を解 析する。

E結論

日本人ChAc患者におけるVPS13A遺伝子変 異は多彩で遺伝子上に幅広く分布する。ChAc患 者の多くは認知機能の低下を含め多彩な精神症 状を有する。今後は今回作成した神経有棘赤血 球症症状追跡調査票を用いて分子診断により診 断が確定した患者の詳細な自然史を追い、将来 の診療ガイドラインの作成を目指す。

ChAcにおいててんかんの頻度は高く発症に影響

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88 する遺伝的修飾因子が存在する可能性が示唆さ れた。マウスにおいて同定したてんかん症状修 飾因子候補遺伝子について、今後はヒトChAc との関連を含めて詳細な解析を行う予定であ る。

G.研究発表 1. 論文発表 なし

2. 学会発表

Arai K, Nagata O, Sakimoto H, Sano A, Nakamura M: Chorein maintains mitochondrial morphology in mouse sperm and interacts with mitochondrial enzyme IDH3A. 10th International Meeting on Neuroacanthocytosis Syndromes, Barcerona, Spain, March 10–12, 2021 (web)

H.知的所有権の取得状況(予定を含む)

1. 特許取得 なし

2. 実用新案登録 なし

3.その他

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