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慣 れない環境 における姿勢制御

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Academic year: 2021

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慣 れない環境 における姿勢制御

朝 長 昌 三

PosturalControlintheStrangeEnvironment ShozoTOMONAGA

ヒ トの姿勢制御系 は, 中枢神経系が前庭器官 ・体性感覚器官 ・視覚器官 などの種 々の感 覚器か らの情報 を統合 ・処理 し,多数 の筋肉を駆動 させ ることによ って身体 を安定化 させ

る制御系で ある

姿勢 を維持 させ るための情報 のなかで も,特 に視覚情報 の姿勢維持 のために果 たす役割 は重要 と考 え られ,視覚情報 を さまざまに変化 させ た場合 の身体動揺,特 に重心動揺 に関 す る研究 が数多 く行われて きた (Edwards,1946;WapnerandWitkin ,1950 ;中 田, 1983;朝長,1994,1995)。 これ らの研究 の多 くは実験室 とい う限定 され た, しか も床面 が安定 した場所で, また重心動揺 を測定す る平衡機能計 の検 出台 も安定板 を用 いて行 われ て きた。

朝長 (1997)は,航海中の揺 れ る船上 とい う不安定 な床 の上で, しか も船上生活 に不慣 れな被壌者が どのよ うに姿勢 を コ ン ト‑ルす るかを開眼条件お よび開眼条件での重心動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 および動揺面穂か ら検討 し,次 のよ うな結果 を得 た。

①平均速度,平均加速度,移動距離 および動揺面積 のすべて において閉眼条件 の方が開眼 条件 よ りも大 であ った。②開眼条件 において も閉眼条件 において も,左右動揺の平均速度, 平均加速鼠 移動距離 の方が前後動揺 よ りも大 であ った。③船 の ロー リングの大 きさと, 重心動揺 との間 には強 い相関関係 があ った。④ ロー リングの周波数 と,重心動揺 の左右方 向 との間 に強 い相関関係があ った。⑤ ピッチ ングの周波数お よび大 きさと,重心動揺 との 間 に強 い相関関係 があ った。

本研究で は,上述 の結果のなかで も,特 に,開眼条件 において も閉眼条件 において も, 左右動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 の方が前後動揺 よ りも大であ った とい う結果 を さ らに吟味す るために,被験者 を船側 に向か って直立 させ た とき,左右動揺 の大 きさと 前後動揺 の大 きさが どのよ うに変化す るかを検討す ることを目的 と した。

方 法

重心動揺 の測定 は,Fig.1に示 したよ うな システムを用 いて行 った。 垂心動 揺 は正三 角形3点支持 の平衡機能計 (lGOOl, 日本電気三栄社) を用 いて測定 した。 検 出台 か ら の出力 は, オムニエース (RT 3200, 日本電気三栄杜) とデータレコーダ (R‑61,TEAC 社) に入力 された。船体 の動揺 はジャイ ロ (TRB‑8B,東京航空計器社)か らデータレコー

(氏‑61,TEAC杜) に入力 された。

被験者 は船首方 向を向 き (以後,0方 向 と略す る),検 出台上 に軽 を接 し足尖 を45度 に

(2)

Fig.1 実験装置の概要

開 いて直立 し,両状肢を体側 に接 した姿勢 を とった。検 出台上での被験者の重心動揺が安 定 した ことを, オムニエースに描かれ る動揺 のⅩ一方向 (左右動揺) とY一方向 (前後動 揺) の軌跡 によって確認 した後,記録 を始 めた。

まず,開眼で眼前1.5mに設置 された (+)印の固視点 を凝 視 させ た時 の動揺 を デー タ レコ‑ダに記録 し, これを

O‑開眼条件」 における重心動揺 と した。次 に閉眼状態 での 動揺を記録 し, これを

0‑開眼条件」 における垂心動揺 とした。

O‑開眼条件」 と

0‑開眼条件の組み合わせを1ブロックとして3ブロックを行 っ た後,平衡機能計を船首 に対 して90度回転 させた (以後,90一方向 と略 す る)。 そ こで被 験者 に対 して,今度 は船側 に向か って直立す るように指示 し, まず開眼状態 における重心 動揺 を測定 した。 これを 「90‑開眼条件」における重心動揺 と した。次 に開眼状態 におけ る重心動揺 を測定 し, これを 「90‑閉眼条件」における重心動揺 と した。 これ らの条件 に つ いて も3ブロック行 った。各被験者 に対 して1日に6ブロックの測定 を行 った。実験 日 数 は9日であ った。

被験者 は,健常 な水産学部3年生 の男子学生2名 と女子学生2名の計4名であ った。

重心動揺の解析 は, まずデータ レコーダか ら出力 され た動揺 をA/D変換 した後, 「重 心動揺解析 プログラム (日本電気三栄杜)」によって左右動揺 と前後動 揺 の時系列記録 と して計測 し,各方向に関す る平均速度,平均加速度,および移動距離, そ して動揺面積 を 求 めることによって分析 した。解析 プログラムのサ ンプ リング タイムは50msで, 取 り込 み時間 は51.2秒であ った。

船体 の動揺 は, データレコーダか ら出力 された ロー リングとピッチ ングの 「トータルパ ワー」 を,「重心動揺解析 プ ログラム」 によって解析 した.

(3)

結 果

各条件 における重心動揺 に関 して は次 のよ うに分析 した。各被験者 に対 して, 1日につ き 「0‑開眼条件」,「0‑閉眼条件」,「90‑開眼条件」 および 「90‑閉限条件」 における 重心動揺 を各3試行行 ったので,各条件 における平均速度,平均加速度,移動距離,動揺 面積 についての3試行 の平均値 を各被験者の1日の代表値 と した。次 に,4人 の被験者の 各条件 におけるそれぞれ1日の代表値の平均値 を,4被験者 の各条件 における1日の代表 値 と し, これ ら9日間の代表値 につ いてt一検定 を行 い,以下のような結果を得 た。

1

. 「

0‑開眼条件」

(1)平均速度

(9 左右動揺>前後動揺 (t‑5.368,P<.01)

② 左右動揺 および前後動揺 の平均速度 と,船体 の動揺 との間 には相関関係 はなか った。

(2)平均加速度

(む 左右動揺>前後動揺 (t‑4.989,p<.01)

(塾 左右動揺 および前後動揺 の平均加速度 と,船体の動揺 との間 には相関関係 はなか っ

た 。

(3)移動距離

① 左右動揺>前後動揺 (t‑5.159,p<.01)

② 左右動揺および前後動揺 の移動距離 と,船体 の動揺 との間 には相関関係はなかった。

(4)動揺面積

動揺面積 と船体の動揺 との間 には相関関係 はなか った。

以上 のよ うに,開眼状態 で船首 に向か って直立 した場合,左右動揺の方が前後動揺 よ り も大であった。 また重心動揺 は船体 の動揺 とは相関関係 はなか った。

2.「0‑開眼条件」

(1)平均速度

(D 左右動揺>前後動揺 (t‑3.531,p<.01)

② 左右動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.535)。 (2)平均加速度

① 左右動揺 ‑前後動揺 (t‑1.372,

p >

.05)

② 左右動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.559)。 (3)移動距離

(》 左右動揺>前後動揺 (t‑2.918,p<.05)

② 左右動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.539)。 (4)動揺面積

動揺面積 と船体の動揺 との間 には相関関係 はなか った。

以上のように,開眼状態で船首 に向か って直立 した場合,左右動揺 の方が前後動揺 よ り も大であ ったが,平均速度 と移動距離 には統計的 に有意 な差が あ った ものの,平均加速度 には差がなか った。 また左右動揺 とピッチ ングとの間に比較的強い相関関係 があ った。

3.「90‑開眼条件」

(1)平均速度

① 左右動揺<前後動揺 (t‑7.444,p<.01)

(4)

② 左右動揺 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.506)0

③ 前後動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.543)0 (2)平均加速度

(9 左右動揺<前後動揺 (t‑5.663,p<.01)

② 左右動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.530)。

③ 前後動揺 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.568)。 (3)移動距離

(D 左右動揺<前後動揺 (t‑6.755,p<.01)

② 左右動揺 と船体 の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.509)。

③ 前後動揺 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.575)0 (4)動揺面積

① 動揺面積 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.529)0 以上のように,開眼で船側 に向か って直立 した場合,前後動揺の方が左右動揺 よりも大 であ り,統計的に も有意 な差があ った。 また重心動揺 とピッチ ングとの間 に比較的強 い相 関関係があ った

4.「90‑開眼条件」

(1)平均速度

(》 左右動揺<前後動揺 (t‑10.453,p<.01)

(診 前後動揺 と船体 の ピッチ ングとの間に比較的強 い相関関係があ った (r‑.520)0

(2)平均加速度

(D 左右動揺<前後動揺 (t‑8.576,p<.01)

② 前後動揺 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (r‑.503)0 (3)移動距離

① 左右動揺<前後動揺 (t‑10.256,p<.01)

② 前後動揺 と船体の ピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関係があ った (∫‑.511)(4) 動揺面積

(》 動揺面積 と船体の動揺 との間 には相関関係 はなか った。

以上 のよ うに,開眼で船側 に向か って直立 した場合,前後動揺の方が左右動揺 よ りも大 で,統計的 にも有意 な差があ った また前後動揺 とピッチ ングとの間 に比較的強 い相関関 係があ った。

考 察

本研究の 目的 は,航海中の揺 れ る船上で開眼状態および開眼状態 にあるとき,左右動揺 の平均速度,平均加速度,移動距離 の方が前後動揺 よ りも大であ ったという結果をさらに 吟味す るために,被験者 を船側 に向か って直立 させたときの左右動揺の大 きさと前後動揺 の大 きさが どのよ うに変化す るかを,重心動揺の平均速度,平均加速度,移動距離および 動揺面積か ら検討す ることであ った。

1.船首 に向か って開眼および開眼状態で直立 した場合の重心動揺

船首 に向か って直立 した場合,開眼条件 において も閉眼条件において も,垂心動揺のⅩ一 方向の平均速度,平均加速度,移動距離の方がY一方向の動揺 よりも大であ った (1997)。 床面が安定 した状態では,一般的 に,前後動揺の方が左右動揺 よりも大 きい, とされてい

(5)

(1993)0

本研究 において も,左右動揺 の方が前後動揺 よ りも大 であ った。川崎 ら (1992)は,人 間の船体運動 に対す る応答特性‑の影響 に関 して研究を行 い,Y一方向 (体側方向) につ いては人間の制御機構が良好であ り, Ⅹ一方向 (背 一胸方向) については入力の小 さいと きには制御 に要す る反応時間が不定であるか, または制御機構 に弱点があるだろうとした。

川崎 らの結果か らすれば,船首方向に向か って直立 した場合, そ こで,重心動揺 と船体 の 動揺 との関係 につ いて検討 した。開眼条件 における重心動揺 と船体 との間 には相関関係 は なか ったが,閉眼条件 における左右動揺の平均速度および平均加速度 と,船体 の ピッチ ン グとの間に比較的強 い相関関係があ った. この ことは,視覚情報を遮断 した閉眼状態では 視器以外の感覚器 によって姿勢 を コ ン トロール しなければな らな くな り, その結果,船体 の動揺 に随伴 したのだろ うと考 え られた。 しか しなが ら, なぜ重心動揺 の左右動揺が船体 の ロー リングではな く, ピッチ ングなのか について は今後の課題であ る

2.船側 に向か って開眼および開眼状態で直立 した場合 の重心動揺

船側 に向か って直立 した場合,開眼条件 において も開眼条件 において も前後動揺 の平均 速度,平均加速度および移動距離 の方が左右動揺 よ りも大であ った。重心動揺の前後動揺 の方が左右動揺 よりも大であるとい うことは,重心動揺 の前後動揺が船体の ロー リングに 随伴 している結果 と考 え られ るが,統計的には,重心動揺 は船体の ピッチ ングとの間 に比 較的強 い相関関係があ った。

川崎 ら (1992)は,人間の船体運動 に対す る応答特性への影響 に関 して研究を行い,Y一 方向 (体側方向) について は人間の制御機構が良好であ り, Ⅹ一方向 (背 一胸方向) につ いては入力 の小 さいときには制御 に要す る反応時間が不定であるか, または制御機構 に弱 点があるだろうとした。川崎 らの結果か らすれば,船首方向に向か って直立 した場合,制 御機構が良好である体側方向の左右動揺 をよ り大 き く動揺 させ ることとによって姿勢 を う ま くコ ン トロールさせているといえ る。 それに対 して,船側方向に向か って直立 した場合 は,制御機構 に弱点があるとされ る背 一胸方向をよ り大 きく動揺 させ ることによって姿勢 を コ ン トロールさせていることになる。

本研究で得 た結果か らは,船首 に向か って直立 した場合 は重心動揺 の左右方向を,船側 に向か って直立 した場合 は重心動揺 の前後方向をよ り大 きく動揺 させ ることによって姿勢 を コン トロールさせているとい うよ うに,船体の ロー リングと同方向の重心動揺 をより大 きく動揺 させ ることによって,姿勢 を制御 していると考 え られた。

要 約

本研究 は,航海中の揺 れる船上で,船首および船側 に向か って直立 した場合,姿勢 をど のようにコン トロールさせ るかを重心動揺の平均速度,平均加速度,移動距離および動揺 面積か ら検討す ることを 目的 と した。結果 は以下の通 りであ った。

1.船首 に向か って直立 した場合,左右動揺の平均速度,平均加速度,移動距離 の方が, 前後動揺 よりも大であ った。

2.船側 に向か って直立 した場合,前後動揺の平均速度,平均加速度,移動距離 の方が, 左右動揺 よりも大であった。

3.船首 に向か って閉眼条件の下で直立 した場合,重心動揺 と船体の ピッチ ングとの間に

(6)

比較的強い相関関係があ った。

4.船側 に向か って直立 した場合,垂心動揺 と船体の ピッチ ングとの間に比較的強 い相関 関係があった。

参考文献

Edwards,A.S.1946Bodyswayandvision.JournalofExperimentalPsychology,36,

526‑536.

川崎潤二 ・天下井清 ・木村暢夫 ・甫善本司 1992船体運動に対す る人間の応答特性 日本航海学会 論文集,87号,79‑88。

中田英堆 1983視覚障害者の直立姿勢保持能力 姿勢研究,3(1),1‑70

朝長呂三 1993視覚情報 による姿勢制御の練習効果 長崎大学教養部紀要 人文科学青,第34巻,

1,25‑34

朝長昌三 1994視覚情報 による重心動揺の安定性 長崎大学教養部紀要 人文科学貸,第35巷,辛 1号,1‑20。

朝長呂三 1995重心動揺の反応時間 とパーソナ リテ ィ 長崎大学教養部紀要 人文科学貸,第3

2,139‑146

朝長昌三 1997 船上における姿勢制御 長崎大学教養部鼻己要 人文科学青,第38巷,第1,217‑

226

Wapner,S.,& Witkin,H.A.1950Theroleorvisualfactorsin themaintenanceof body‑balance.Am.J.Psychology,63,385‑408.

参照

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