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仰臥位及び伏臥位から見た新生児の姿勢制御について

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(1)

仰臥位及び伏臥位から見た新生児の姿勢制御につい

著者

臼井 永男, 平沢 弥一郎

雑誌名

放送大学研究年報

4

ページ

107-119

発行年

1987-03-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1146/00007265/

(2)

放送大学研究年報 第4号(ig86)107−119頁 Journal of the University of the Air, No. 4 (1986) pp. 107−119

仰臥位及び腹臥位からみた新生児の

       姿勢制御について 臼 応 永

男・平沢彌一郎

Stndy on Posture Control of Newborn lnfant

      in Supin and Prone Position Nagao Usui and Yaichiro HiRAsAwA

ABSTRACT

   The most fundamental of all humaR postures is an upright position, by which man is essentially distinguished from other forms of animal life. We hypothesize that the primal ability of upright standing undergoes remarkable development from the moment of birth, because the huma” posture changes remarkably in the early stage of human life.    The purpose of this study is to investigate this development of the ability to stand upright.    The subjects were 1) 227 full−term infants less than 48 hours old, 107 boys and 120 girls, and 2) 34 low−birth−weight infants, 20 boys and 14 girls.    Each subject malntaind the supine position and the prone posltion for 60 seconds while naked. Mevement of the center of gravlty and area of contact parts of the body was measured with a pedoscope.    Following findings are obtained from this study.    1) The fiuctuation area, amplitude and time interval of the center of gravity      were measured with the infant supine and prone on glass and on a mat.      The movements of the ihfants were smaller on a mat than on glass. The      movements of the infants were large just after starting the measurement,      both on glass and on a mat, and became sfnaller gradually. .    2) The center of gravity of low−birth−weight infants were higher than those      of fullterm infants.    3) The area of the center of gravity was larger for infants more than 24      hours old than for those less than 12 heurs old.    4) The area of contact parts of the body was on the decrease with hours of      age.    5) The analysis of movement of the center of gravity seems to be the infants      tO VarioロS extomal S宅im登ll. 0 1 は じ め   人間のあらゆる動作の基本は直立姿勢であり,またそれは人間を他の動物と区別する重 要な要素である.この直立姿勢を安定保持する能力を直立能力とよぶ.直立能力を定量的 に評価する学問分野はstasiologyである.われわれはstasiGlogyの立場にたって,接地

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108 臼井永男・平沢琴醇一郎 足瞭面積,重心図などよりみた人間の起立時の姿勢制御や,静止時の重心図パターン,歩 行の重心図学的解明など数々の研究を行ってきた1)2>.  この直立姿勢の基礎は出生後から,成人のように歩行できる2歳頃までにほぼ完成され るものと考えられる.そしてわれわれは小児がどのようにしてこの直立姿勢の基礎を獲得 していくかその過程に関心を持った.  今回はその研究の第一段階として,新生児の仰臥位および腹臥位における重心図学的研 究を行い,2,3の結果を得たのでここに報告する. 2.対象および方法  対象は1981年2月から1983年7月までに,日赤医療センターで出生した正期産男児 107名,女児120名,そして測定可能な低出生体重男児20名,女児14名である.  これらの新生児につき生後48時間以内に仰臥位および腹臥位にて60秒間,Pedoscope 上におき,このときの重心図,身体接着面などを測定した. Microphone Load Control cabinet XY Recorder 鮒     ゲ90 @0000     ● 獅窒 .        Transpare貧t @      91ass pla毛for澱 @         Q︳黛一.e轟tlamp ansducer Da亀a Recorder

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Pedoscope Spotlight transmitter

Fig. 1. Block diagram of measuring system.  測定装置は図1に示すように600×900mmのステーージガラスの四隅にワイヤーストレ インゲージを設置した重心計ピドスコープを使用し,重心の移動および重心点,身体の接 着部位の測定を行った.重心の動きはXY Recorderに記録すると同時にXYのアナロ グデータはデ一望レコーーダに記録した.また新生児の泣き声も同時にデータレコーーダに録 音した.重心点と身体の接着部位は35mmカメラによって撮影し,測定の状況,新生児 の動きをビデオカメラで録画した.  60秒間の測定中XYレコーダに10秒ずつ3回記録を行った.記録した重心図の左右 方向X,上下方向Yの最大幅の積によって重心動揺面積を算出した.35mmカメラによ って撮影した写真を実寸の1/2に焼付け,重心位置と身体接着面積を求あた.重心位置は

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仰臥位及び腹臥位からみた新生児の姿勢制御について 109 頭頂点を0,会陰部,鞍部下端を100として%で求めた(図2).仰臥位における身体接着 面積は高精度テレビカメラを利用した画像処理装置によって求めた.  なお測定はすべて18∼21時の間に行った. o 100

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Fig. 2.       ノ

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110 臼井永男・平沢Pt一一郎 Supine pesitien Prone pasition

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Fig. 3. Recorded every lesec. in 60 sec. □で、ra2  そして両者の共通点は,時間の経過に伴って重心の動きが小さくなっていくことであ る.なおこれらの傾向は,仰臥位と腹臥位の測定順序を変えても同様であった.  これらのアナログデータから,新生児にとって非常に大きな刺激であると思わられるガ ラス面上への素裸での接着も,置かれた直後は激しい抵抗を示すがやがては落着いてくる ことが明らかとなった.  また仰臥位における重心動揺が大きいのは腹臥位に比べて身体を安定保持する機能が劣 っていることによるものであると考えられる。また情緒との関係も否定できない.他の霊 長類あるいは四足動物がそうであるように,ヒトにおいても腹臥位の方が精神的に安定 し,自然な姿勢あるとも考えられる.  いずれにしても仰臥位において,新生児は手足を巧みに使ってバランスをとっている様 子が観察された.不安定なpostureからやがては,自身の最も安心できるpostureを獲i 得した時,重心の動きは静止状態に近づく.  ピドスコ・・一プのステージガラス面の温度は約28QCで,これは室温とほぼ同値である. しかし新生児への刺激は大きく,体温を奪うばかりでなく皮膚から受ける触覚刺激も大き いと思われる.  そこで,ステージの材質によって新生児の動きがどのように変化するのかを調べた.正 期産男女各々6名について,ステージガラス面上にベビーベット用のマットパットを置き シーツをしいた上で仰臥位と腹臥位をとらせてこのときの重心の動きを測定し,ガラス面 上の動きと比較した.  XYレコーダに記録した重心図から, X軸Y軸それぞれの最大幅の積を求め,重心動 揺面積を算出した.図5にその結果を示した.縦軸に10秒間の重心動揺面積をとり,横 軸に仰臥位の1回目,2回目,3回目,及び腹臥位の1回目,2回目,3回目の平均値と標

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仰臥位及び腹臥位からみた新生児の姿勢制御について 111

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Fig. 4. Relationship between state and EGG.

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112 臼井永男・平沢粥一郎 (cm2)  40 一 50一 20 一一 10 一一 D S 十 鮭 A ε M 曲の.り議 。一     工  :[[  皿    工  ■  皿:

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     Supine Prone

Fig. 5. Area of EGG on the glass and on the mat. 準偏差をとった.  仰臥位において,1回目,2回目,3回目のいずれにおいても,マットパッF上の方がガ ラス面上に比べて有意に小さな値を示した.腹臥位においては,2回目の値に両者間に有 意な差がみられた.  ガラス面上での仰臥位において,1回目の値と3回目の値に有意な差を認め,測定開始 直後に比べて後半は重心動揺が小さくなることが判明したが,マット上,および腹臥位で は,明確な差は認められなかった.  次に,データレコーダに記録した左右方向X,正中方向Yの重心図波形について,山 の高さが0.5mm以上の波の高さamplitudeを計測した.図6にその1例を示すが,0∼ 10秒,10∼20秒と10秒毎の平均値をプロットしたものである。黒丸で示されたマット 上では,経時的な変化はほとんどみられない.白丸で示されたガラス面上の値から,時間 の経過に伴って値が小さくなる様子がうかがえる.  図7は,同じ対象について山の高さがO.5 mm Y]上の波のpeak to peakのtime interval の変化を示したものである.X軸, Y軸ともガラス面上の方がマット上に比べて動きの頻

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   Fig. 6. Amplitude of EGG on the glass and on the mat.        sec        kn A MAA/lnteruat

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114 臼井永男・平沢彌一郎 度が高いことがわかる.そしていずれも,時間の経過とともに値が大きくなり,ゆっくり した動きにかわっていく様子が観察される.  このことから,新生児において大きな刺激であると考えられる環境の変化に対しても, かなりの適応性を有することが示唆された.また,これらの波形分析は,新生児の外的刺 激に対する反応の様相をとらえるのに有効な手段であると考えられる. 3.2.出生後,経過時間による変化  新生児男子57名,女子60名の仰臥位における重心動揺面積と,出生後経過時間の関 係を調べた.  図8は,縦軸に重心動揺面積を,横軸に出生後経過時間をとって各々のデーータをプuッ トしたものである.両者の間に1%水準で相関関係が認められた.図中の直線は回帰直線 である.なお重心動揺面積は,3回測定したうちの2回目の値を用いた. (Cm2) 50 40 30 20 10 o e e pa § ⑳ @ ⑧⑧ ② ⑧ 80 ⑤ ⑧    ⑧ ⑧      ②      @      ㊥ ④働⑧⑧ ⑤  ⑧  o  ⑳ ⑳  。⑧⑳ 働④豊⑨      ⑧    ⑧ ⑧       ⑧   8 ⑳8⑳㊨   ⑧ ⑧ 9 O ⑧ ⑧ ⑰ ⑳ ⑨   ⑧ ⑲%⑧ @ ⑧e  ⑧ ⑧ %働 ⑳ ⑧ ②⑧   8  評㊧ ⑦ 夢8  、 ㈱㊤② ⑧ 面% ⑧ ⑳ @ ⑳ ee e e ee ts

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      (hours of age)   Fig. 8. Area of EGG and hours of age (supine).  図9は,同様に腹臥位における重心動揺面積と,出生後経過時間の関係を示した相関図 である.仰臥位と同様1%水準で両者の間に相関関係が認められた.  :Birth shockの解消に伴って新生児の動きが大きくなってくる様相がうかがえる.  次に,正期産男子100名,女子107名について,出生後経過時間を6時間毎に分割して 各々の仰臥位における重心動揺面積の平均値を算出し,生後経過時聞による変化を調べ た.なお重心動揺面積は,3回測定のうちの2回目の値を用いた.  図10の縦軸に重心動揺面積を,横軸に出生後経過時間を6時間毎にプロットした.な お図の右端に,低出生体重児男子20名,女子14名の値をプロットした.  図11は,同様に腹臥位における値をプロットした.仰臥位,腹臥位ともに,時間の経 過とともに動きが大きくなる様相を示している.

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仰臥位及び腹臥位からみた新生児の姿勢制御について 115 (cm2) 25 20 15 10 5 o “ e e e e  0 ●⑤

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      (hours of age) Fig. 9. Area of EGG and hours of age (prone). (cm2)  40 50 Q 2 OOω も.冨﹂く 10 o Supine

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      (houps ot cige)     Fし10  terrn   in歪δ員t.’   Fig. 10. Area of’EGG and hours of age (supine). しBW

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116 臼井永男・平沢彌一郎 (cm2)

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  Full term intant s    s    s   (houps ot age) Fig. 11. Area of H(}G and hours of age (prone). LBW  男子の仰臥位において,生後18∼24時間が4.22 cm2,24∼30時間が13.51 cm2で, 両者の間に1%水準で,また腹臥位においては,生後12∼18時間が355cm2,18∼24時 間が6.73cm2で,両者の間に5%水準でそれぞれ有意な差が認められた.  このことは,生後20時間あたりで姿勢制御の様相に変化があるものとも考えられる. なお女子においては有意な差はみられなかったが男子と同様の傾向を示した.  35m/mカメラによって撮影した写真を実寸の、1/2に焼付けた写真から,重心位置と身 体接着面積を求めた.この写真は,新生児の動きが比較的少ない時に撮影されたものを選 んだ.  重心位置は頭頂点を0,会陰部,磐部下端を100として%で求めた(図2).対象は,男 子57名,女子60名である.117名の平均値と標準偏差は,仰臥位が54.87±2.47%,腹 臥位が55.65±2.49%であった.  図12に,仰臥位における重心位置を縦軸にとって,出生後経過時聞との関係を示した.一 相関係数lrl ・o.050242で,両者の間に相関関係は認められなかった.腹臥位における重 心位置も同様の傾向を示した.  成人の仰臥位における重心位置は腰椎あるいは仙椎付近に,また新生児は,第8∼9胸、 椎ないしは剣状突起付近に位置しており,発育発達とともに重心位置は下方に変移してく ることが想像される.しかし,生後48時間以内ではこのような変化の様相は認められな かった.  なお,低出生体重児男女33名の仰臥位における重心位置は53.31±2.92%,腹臥位は

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仰臥位及び腹臥位からみた新生児の姿勢制御について 117

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      (hours of age) Fig. 13. Area of contact parts of the body and hours of age (supine). 53.82±3.17%であった.正期産児に比べて,仰臥位,腹臥位とも1%の有意水準で重心 位置が頭部に近いことがわかった.  重心位置の計測を行った写真から,仰臥位における身体の接着部位についてトレース し,高精度テレビカメラを利用した画像処理装置によってその面積を求めた.ただし,頭 部の接着面は算出していない.  また出生児身長,体重から以下の式によって体表面積を求め,体表面積に対する身体接 着面積の割合を身体接着面積率として%で求めた.

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ユ18 臼井永男・平沢礪一郎 BSA = w O・473 × HO・6S5 × 95.68 .BSA:体表面積(cm2) rv:体重(kg)H:身長(cm)  男女117名の仰臥位における身体i接着面積は 101.54±31.7cm2,身体接着面積率は 4.54:±1.27%であった.  図13に,仰臥位における身体接着面積率と出生後経過時間の相関関係を示した.両者 の聞に1%レベルで負の相関関係が認められた.身体接着面積についても同様の結果が得 られた.このことは,生後時間の経過とともに,身体の接着面積が減少していくことを意 味している.  出生時筋トーヌスおよび原始反射が減弱しているが,時間の経過とともに出産ショック 期が解消され,段々と全体の筋トーヌスが増加していく.  身体接着面積の減少から,この様相を把握することが可能であると考えられる. 4.考 察  門閥を他の動物と区別する重要な要因は,2本の足の裏で立つこと,言葉を話し,火を 使うことであるとされている,  われわれは以前より成人の直立姿勢,歩行などについてpedoscopeを使用して,重心, 接地足二面より研究を行ってきた1)2).そしてこの研究が進行すればするほど人間のあら ゆる動作の基本である直立姿勢を,小児がどのようにして獲得していくかに関心が持た れ,その第1段階として今回の研究を行った.  重心の動揺面積については,pedoscope上においた直後が大きく,段々と動きが小さく なるという結果を得たが,裸にされた新生児がpedoscopeのガラス面上に置かれると, おどろき,そして段々と適応していくものと思われる.これはBrazeltonのいう新生児が 保有しているhabituationとも考えられる3)4).  Pedoscopeの接着面がガラスなのでその材質により新生児の動きがどう変わるのかの研 究は,有意な差を認めた.ガラス面上に比べてマット上の動きが明らかに小さく,ガラス 面上での仰臥位は,最:初は左右,正中両方向とも速く大きな動きが多いという結果を得 た.しかし慣れるに従ってガラスもマットも同じような傾向にあることがわかった。以上 の結果から,新生児が動力学的面よりもいろいろな優れた能力を持っていることがわかる.  新生児の動きが時間とともに大きくなり,また身体接着面積が小さくなっていくのは, 生後48時間以内であるので,これはbirth shockから抜け出るためと考えられる.前川 らは,48時間以内に70%の新生児は筋トーヌスや反射の面からみて,出産ショック期を 抜け出していたことを報告している.今回の結果は,ζの点からみても大変興味毒るもの といえる. ’なお,重心位置が正期産児より低出生体重児の方がより頭部に近いという今回われわれ が得た結果は,胎児は神経組織の発達が他の臓器に比して一番早く行われるということか らすれば,当然の結果と考えられる.しかし低出生体重児5>6)といってもpreterm AFD, preterm SFD, term SFDに分けられ,各群により頭囲,身長の発達も異なるのでさらに

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仰臥位及び腹臥位からみた新生児の姿勢制御について 玉19 これらの群に分けた重心の研究が必要と考えられる. 5.結 語  正期産正常男児107名,女児120名,そして低出生体重男児20名,女児14名の計261 名の新生児を生後48時間以内にpedoscope上に仰臥位および腹臥位で各々60秒間ずつ置 き,このときの重心点,重心の動き,身体の接着面などについて,XY Recorder, Data Recorderに記録,35 m/mカメラによる撮影などをもとにして分析した.  その結果,低出生体重児は正期産児に比べて重心の位置が高い(より頭部に近い)こと と,新生児の動きが,生後48時聞以内では,時間とともに大きくなっていくことが判明 した.またステージの材質では,マットパットの方がガラス面上より新生児の動きは小さ いが測定60秒の終り頃には両者の差はみられなかった.pedoscopeを用いた測定によっ て,新生児の適応能力の存在を認めた.また今回行った研究方法は,新生児の運動発達を 調べる有効な手段の1つであると考えられた.  稿を終えるにあたり,終始御指導いただいた東京慈恵自記科大学小児科学教室前川喜平 教授,H赤医療センター新生児酔筆松洋先生,東京工業大学桐生武夫教授に深く感謝いた します.  また測定に御協力いただいた東京慈恵会医科大学小児科学教室の横井茂夫先生,副田敦 裕先生,浜野晋一郎先生,前川奈生子先生,ならびに釜中明,和田光晴,柳原啓介の各位 に心より厚く御礼申し上げます. 参 考 文 献 −漏234. くゾ1◎ 平沢彌一郎:Stasiologyからみた左足と右足,神経進歩,24(3):623−633(1980). 平沢彌一郎:直立歩行を支える左足,サイエンス,11(6):32−44(1981). 桐生武夫他:新生児の姿勢制御について,姿勢研究,4(2):89−95(1984)。 臼井三男他:新生児の仰臥位および腹臥位における重心図学的研究,小児料診療,48(5>:863− 868 (1985). 前川喜平:乳児健診の神経学的チェック法,第2版,南山堂,東京,p.11−12(1983). 前川奈生子他:Pedoscopeによる新生児の重心点に関する研究,慈恵医大誌,101,813−819 (1986) . (昭和61年12月23日受理)

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