論文内容要旨
術前糖質・アミノ酸投与が待機的胸腔鏡下食道亜全摘術施行患者の術後カ テコラミンに及ぼす影響
Showa University Journal of Medical Sciences 2016 年 9 月掲載予定 外科系外科学消化器一般外科分野 茂木健太郎
手術侵襲が生体に加わるとストレス反応の結果として異化反応の亢進に より蛋白分解、脂肪分解、グリコーゲン分解、糖新生が促進され、高血糖 がもたらされる。術後の高血糖の持続は創傷治癒遅延や感染症、その他の 合併症のリスクを増大させ、入院期間にも影響を与えるばかりでなく、そ の感染症、合併症を増やす。術後の高血糖は術前の絶飲食により助長され るため、ヨーロッパにおいては術前に炭水化物を経口または経静脈的に投 与することで、術後の高血糖を改善する試みがなされている。しかし術前 からの糖質・アミノ酸投与が術後に及ぼす影響についての検討は少ない。
待機的胸腔鏡下食道亜全摘術を受ける患者を対象に術前に輸液で低濃度 糖加・アミノ酸輸液投与を投与することによる、術前の糖質・アミノ酸投 与が術後の糖代謝に及ぼす影響を検討した。
術前夜夕食後 19 時より手術室入室まで、低濃度糖加・アミノ酸輸液 2000ml を投与する群(GA 群)と、無糖細胞外液補充液 2000ml を投与する群(GAF 群) に封筒法により無作為割付けを行った。
カテコラミンとコルチゾールはそれぞれタンパク質と脂肪を分解するこ とにより糖新生の基材とするため、尿中 3 メチルヒスチジン濃度と血中カ テコラミン分画とコルチゾールを合わせて測定し評価した。またアルギニ ン、リジン、ヒスチジンンの代謝産物である 3 メチルヒスチジンは蛋白合 成に再利用されることなく、尿中に排泄されるため、筋蛋白の代謝回転の 指標として用いられる異化の程度を評価することが可能であり測定した。
グルコース値は両群に有意差は認められなかった。アドレナリンとノルア ドレナリンは共に GAF 群で高値を示した。アドレナリンは 3POD になって 術前とほぼ同様の値に復帰していたが、ノルアドレナリンに関しては 5POD
になっても術前よりも高値で両群ともに経過していた。術後も高度な侵襲 状態が持続している可能性があるが、術後の経過中に GAF 群よりも GA 群 においてアドレナリン・ノルアドレナリン共に低値で経過しており、術前 の糖質・アミノ酸投与が異化抑制に寄与している可能性が示唆された。