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(1)

数学対話

青空学園数学科

2008

11

19

(2)

目 次

1章 高校数学の土台 6

1.1 自然数と数学的帰納法 . . . . 7

1.1.1 自然数の定義 . . . . 7

1.1.2 数学的帰納法 . . . . 8

1.1.3 同型定理と演算 . . . . 10

1.2 実数とは何か . . . . 12

1.2.1 実数の集合は可付番でない . . . . 12

1.2.2 実数の構成と連続性 . . . . 14

1.3 数列の極限と自然対数の底 . . . . 18

1.3.1 数列の極限とはさみうちの原理 . . . . 18

1.3.2 自然対数の底 . . . . 20

1.4 複素数の構成 . . . . 26

1.4.1 教科書の定義 . . . . 26

1.4.2 . . . . 28

1.4.3 複素数の構成(一). . . . 30

1.4.4 複素数の構成(その他) . . . . 32

1.4.5 複素数と図形 . . . . 35

1.4.6 根号について . . . . 39

1.5 方程式と恒等式 . . . . 41

1.5.1 文字を用いて式に表す . . . . 41

1.5.2 定数と変数 . . . . 44

1.5.3 方程式と恒等式 . . . . 45

1.5.4 恒等式の判定法 . . . . 46

1.6 関数 . . . . 49

1.6.1 関数 . . . . 49

1.6.2 合成関数,逆関数. . . . 52

1.6.3 対応 . . . . 54

1.6.4 数列は関数だ . . . . 55

1.7 座標の方法 . . . . 57

1.7.1 座標 . . . . 57

1.7.2 座標幾何のはじまり . . . . 58

1.7.3 関数のグラフ . . . . 60

1.7.4 ベクトルと座標 . . . . 61

1.7.5 平面上の直線 . . . . 63

1.7.6 空間内の平面と直線 . . . . 65

1.8 定積分の定義 . . . . 68

(3)

1.8.1 なぜ「微積分の基本定理」? . . . . 68

1.8.2 定積分の定義 . . . . 69

1.8.3 アルキメデスの方法 . . . . 71

1.8.4 微積分の基本定理. . . . 73

1.9 確率論の基礎 . . . . 75

1.9.1 確率論の始まり . . . . 75

1.9.2 確率の定義 . . . . 78

1.9.3 確率分布と期待値. . . . 83

1.9.4 条件付確率 . . . . 89

1.10 命題と条件 . . . . 93

1.10.1 命題と命題関数 . . . . 93

1.10.2 命題の否定,論理和,論理積 . . . . 96

1.10.3 命題の構成 . . . . 100

1.10.4 数学の論証 . . . . 102

1.11 解答 . . . . 105

2章 方程式と多項式 119 2.1 3次方程式 . . . . 120

2.1.1 ある三次式の因数分解 . . . . 120

2.1.2 根と解 . . . . 121

2.1.3 根の公式とは . . . . 122

2.1.4 三次方程式を解く(その1) . . . . 123

2.1.5 三次方程式を解く(その2) . . . . 125

2.1.6 三次方程式の判別式 . . . . 126

2.1.7 虚数の意義 . . . . 128

2.1.8 カルダノの解法によるまとめ . . . . 129

2.2 4次方程式 . . . . 132

2.2.1 入試問題から . . . . 132

2.2.2 別のbの値なら? . . . . 133

2.2.3 四次方程式の一般的解法(1) . . . . 133

2.2.4 四次方程式の一般的解法(2) . . . . 134

2.2.5 ガロアの生涯 . . . . 135

2.3 117乗根 . . . . 137

2.3.1 17乗根. . . . 137

2.3.2 15乗根の計算 . . . . 139

2.3.3 117乗根 . . . . 139

2.3.4 追加の考察 . . . . 142

2.4 スツルムの定理 . . . . 144

2.4.1 入試問題から . . . . 144

2.4.2 重根の判定 . . . . 145

2.4.3 根の限界. . . . 146

2.4.4 スツルムの定理 . . . . 150

2.5 原始多項式 . . . . 155

(4)

2.5.1 整数係数の整式 . . . . 155

2.5.2 原始多項式 . . . . 156

2.5.3 因数分解のアルゴリズム . . . . 159

2.5.4 代数的整数 . . . . 160

2.6 チェビシフの多項式 . . . . 162

2.6.1 いくつかの入試問題 . . . . 162

2.6.2 チェビシフの多項式 . . . . 163

2.6.3 チェビシフの多項式の応用 . . . . 167

2.6.4 チェビシフの多項式の係数 . . . . 171

2.6.5 さらなる性質 . . . . 173

2.6.6 関連入試問題 . . . . 174

2.7 解答 . . . . 176

3章 座標幾何のひろがり 183 3.1 フェルマ点 . . . . 184

3.1.1 問題の発見 . . . . 184

3.1.2 トレミーの定理 . . . . 186

3.1.3 フェルマ点 . . . . 187

3.1.4 フェルマ点証明の解析的方法 . . . . 189

3.1.5 その他の方法 . . . . 190

3.1.6 ある入試問題 . . . . 191

3.2 シュタイナー楕円 . . . . 192

3.2.1 入試問題の分析 . . . . 192

3.2.2 シュタイナー楕円. . . . 193

3.2.3 一次変換とシュタイナー楕円の特徴付け . . . . 196

3.3 等積四面体と等面四面体 . . . . 199

3.3.1 ある入試問題 . . . . 199

3.3.2 四面体の重心と四面体の平行六面体への埋め込み . . . . 200

3.3.3 四面体の外心と内心 . . . . 201

3.3.4 直辺四面体 . . . . 202

3.3.5 等積四面体と等面四面体 . . . . 205

3.3.6 等面四面体の特徴付け . . . . 208

3.4 包絡線 . . . . 213

3.4.1 はじめに. . . . 213

3.4.2 通過領域と境界の曲線 . . . . 213

3.4.3 計算の実行 . . . . 214

3.5 根軸 . . . . 216

3.5.1 二円の交点を通る円 . . . . 216

3.5.2 二円が交わらないときは? . . . . 217

3.5.3 曲線族と「束」 . . . . 217

3.5.4 一般的に考える . . . . 218

3.6 パスカルの定理 . . . . 221

3.6.1 無限遠点,射影直線,射影平面 . . . . 221

(5)

3.6.2 二次曲線の接線 . . . . 223

3.6.3 パスカルの定理 . . . . 224

3.6.4 特別な場合の演習問題 . . . . 228

3.7 ポンスレの閉形定理 . . . . 230

3.7.1 三つの入試問題の分析 . . . . 230

3.7.2 特別な場合に閉形定理を計算で示す . . . . 234

3.7.3 円の場合を一般的に考える . . . . 249

3.7.4 二次曲線の閉形定理 . . . . 252

3.8 解答 . . . . 261

4章 微分積分の方法 266 4.1 代数学の基本定理 . . . . 266

4.1.1 複素数係数の方程式 . . . . 266

4.1.2 代数学の基本定理の証明 . . . . 270

4.2 関数の展開とオイラーの公式. . . . 273

4.2.1 オイラーの公式 . . . . 273

4.2.2 関数の展開 . . . . 273

4.2.3 オイラーの公式へ. . . . 276

4.2.4 いくつかの話題 . . . . 277

4.3 凸多角形と凸関数 . . . . 279

4.3.1 ある入試問題の別解 . . . . 279

4.3.2 凸多角形. . . . 280

4.3.3 凸関数 . . . . 282

4.3.4 応用問題. . . . 284

4.4 相加相乗平均の不等式の証明. . . . 286

4.4.1 共通の設定 . . . . 286

4.4.2 凸函数の性質を使うもの . . . . 286

4.4.3 特殊な函数を使うもの . . . . 289

4.4.4 数列だけで証明するもの . . . . 294

4.5 カタラン数 . . . . 302

4.5.1 ある入試問題 . . . . 302

4.5.2 カタラン数 . . . . 302

4.5.3 カタラン数の意味. . . . 303

4.5.4 関連入試問題 . . . . 307

4.6 生成関数の方法 . . . . 308

4.6.1 二つの入試問題 . . . . 308

4.6.2 生成関数. . . . 309

4.6.3 生成関数による別解 . . . . 311

4.6.4 カタラン数を生成関数で求める . . . . 312

4.6.5 ある入試問題の一般化への生成関数の活用 . . . . 314

4.7 素数の分布 . . . . 318

4.7.1 素数の分布とは . . . . 318

4.7.2 素数が無数にあることの別証明 . . . . 319

(6)

4.7.3 素数分布の探求 . . . . 323

4.7.4 素数定理. . . . 327

4.8 円周率を表す . . . . 329

4.8.1 円周率に収束する数列 . . . . 329

4.8.2 ビエタの公式 . . . . 332

4.8.3 ウォリスの公式 . . . . 333

4.8.4 関数1+x12 の活用. . . . 335

4.8.5 オイラーの発見した円周率の公式 . . . . 337

4.8.6 ゼータ関数の値 . . . . 341

4.9 懸垂線と双曲線 . . . . 343

4.9.1 懸垂線の方程式 . . . . 343

4.9.2 双曲線関数 . . . . 346

4.9.3 双曲線関数の逆関数 . . . . 349

4.9.4 放物線の弧長 . . . . 350

4.10 惑星は楕円軌道を描く . . . . 351

4.10.1 ケプラーの法則とニュートンの法則 . . . . 351

4.10.2 惑星の運動方程式を立てる . . . . 354

4.10.3 運動方程式を読み解く . . . . 356

4.10.4 参考文献. . . . 366

4.11 解答 . . . . 367

(7)

第 1 章 高校数学の土台

はじめに

青空学園では生徒と教員の自由な討議を最も重視しています.まず自分で考え,わからないこと を整理し質問する.そしてともに考える.『数学対話』はそんな質問と討議の記録をもとに構成し たものです.大きくいくつかの分野に分かれています.

本編『高校数学の土台』は,高校数学の土台になっている基礎概念を掘り下げて考えようとする 内容を集めたものです.

「定理」は一般的な結果です.「補題」は定理の証明に必要な準備的命題です.

「演習問題」は内容の理解を助けるものから,入試問題やその他の大切な問題です.これらは通 し番号になっています.

「例」は対話をすすめる材料となる具体的な例や,試しに解いてみる問題です.「注意」は意味通 りです.これらは節毎に【節番号-番号】の形で番号をつけています. □は証明や解答の終わりを 意味しています.

(8)

1.1 自然数と数学的帰納法

1.1.1

自然数の定義

自然数

南海 「自然数」は,人が成長する過程の最初に習得する数である.

3枚の皿に3個のみかんをひとつずつおいていけば,皿が余ったり,みかんが余ったりすること なくちょうど1枚の皿にみかんが1つずつおける.このような経験のなかから3枚の皿と3個の みかんは何かが「同じ」だ,と気づく.何が同じなのかと考えて,「数」が同じだ,と知っていく.

「3枚の皿」と「3個のみかん」が同じ「3」であることが分かるとき人間は自然数「3」を知る.

このように,個別のものの形や質などに規定された具体的な量から,個別の性質を捨て一般的な

「数」を抽象する力を,人間は長い時間をかけて身につけた.

数の発見は,実際はもっと生産に直結した場で起こったに違いない.毎朝放牧した羊と,夕べに 帰ってきた羊が同じだけあるのかどうか,数を知らなければどのように判断するか.羊が小屋を出 るたびに石をひとつ並べていく.帰ってきたときは,羊が小屋に入るたびに石をひとつ除く.こう してちょうど最後の1頭が戻ったとき最後の石が除かれれば,増減がなかったことがわかる.石を 並べることが長く続いた後,人は数を発見したのだ.

このようにして人間のものになった数が,親から子へと伝えられて,子供は数を身につける.大 人からの伝達の作用によって,人類の長い歴史が凝縮されて,子供のなかで反復されるのだ.

みかんのように数えられるものの個数がつかまれたなら,つぎは「水がバケツに3杯ある」など のように連続量をはかる単位が生まれ,単位の個数として水の量をつかむことができるようになっ たと考えられる.

史織 考えてみれば不思議なことです.

南海 このようにして見いだされた「自然数」は,数えるという行為と一体である.数えるという 行為とは,このものを認識し,その次のものを確認して,自然数によって指示される抽象的な数と の間に対応をつけていく,ということにある.最後に対応した数をその集合の要素の個数と認識す る,ということである.

このことを定式化して自然数を改めて数学の対象として定義しなおす.それが自然数の公理で ある.

ペアノの公理

南海 自然数は,数のなかでもっとも根源的なものであるから,あらゆる数の存在を前提とせず に,構成しなければならない.そしてそれは可能なのだ.近代数学では集合とその構造を定義す ることで,数学としての対象を定義する.それが次に紹介するペアノ(G.Peano,1858-1932)による

「公理」である.

ペアノの公理 次の性質を持つ集合N を考える.

(i) 1という要素がある.

(ii) 集合Nの要素xに対し集合Nの要素x+ 1を対応させる規則が定まっている.

(iii) x+ 1 =y+ 1ならばx=yである.

(iv) 要素x+ 1 = 1となる要素xは存在しない.

(9)

(v) 集合N (i)(ii)(iii)(iv)を満たす最小の集合である.つまり N のどのような真部分集合も (i)(ii)(iii)(iv)を満たさない.

このとき N を自然数の集合といい,N の要素を自然数という.

史織 これは要するに,1が最初で,その後はつねに次の要素があって,それ以外の余分なものは ない集合を自然数という,ということですよね.

このような集合は本当に存在するのですか.

南海 確かに存在する.

{1,1 + 1,(1 + 1) + 1,((1 + 1) + 1) + 1,· · ·}

である.ここで( ) + 1 は,上の公理で作られたN の要素を( )内に記し,さらにそれにii 対応を施すことを意味する.

この公理は,人間の「数える」という行為をそのまま定式化したものであるが,これが自然数論 の基礎となるには色んな検証が必要である.ここでは数学基礎論には立ち入らないが,数学基礎論 では,この公理体系は矛盾が起こらないことが示されている.

さらにこの公理はわれわれの自然数に対する素朴な理解と合致し,同型なものはひとつしかない.

体系に矛盾がないことと,同じ型をしたものがただひとつであること,これで数学研究の対象が 明確に定義できたのである.

無矛盾性の証明は難しい.ここでは数学的帰納法の原理と呼ばれる自然数の基本性質と,それを 用いて自然数の体系はすべて同型であることを示そう.

1.1.2

数学的帰納法

ここで「昇列」を定義する.

N の部分集合K

x∈K x+ 1∈K

が成り立つとき K を「昇列」という.N の要素a を含むすべての昇列の共通部分をK(a)とす る.これはaからはじめて+1の規則で作られた要素だけの集合である.

定理 1

自然数の集合N は,次の性質をもつ.

(i) 1を含む昇列はひとつしかなくN =K(1) である.

(ii) 数学的帰納法の原理自然数の集合N の部分集合M において (i) 1∈M

(ii) k∈M ⇒k+ 1∈M が成り立てばN =M である.

(iii) 1以外のすべての要素 xx=z+ 1となる要素zをただ一つもつ.

(iv) N の任意の空でない部分集合 M には,m M M ⊂K(m) となるものがただひとつ ある.

証明

(10)

(1) 1を含む任意の昇列Kに対し,N においてxx+ 1を対応させる規則をKに制限した規 則を考える.定義より,k∈Kのときk+ 1∈K であるから,これは Kの要素k k+ 1 を対応させる規則となる.この対応の規則によって,K は 自然数の公理(i)(ii)(iii)(iv)を満 たす.N の最小性からN =Kである.よってまた 1を含む昇列はすべて N に一致する.

(2) M 1 を含む昇列である.ゆえに(1)からN =M

(3) N において,aにはじまり+1の操作を繰り返してbに至る系列はただひとつである.二つ あれば,そのいずれかの系列を定めその中にのみ存在する要素をN から取り除いても,N 1を含む昇列となり N の最小性に反するからである. N の要素 a 1 でなく,しかも a=x+ 1 となる要素xが存在しない要素の集合を Qとする.

N0 =N−Q

とする.N0の任意の要素xに対してx+ 16∈Qつまりx+ 1∈N0 である.ゆえにN0 1 を含む昇列であるからN0 =N .つまりQは空集合であり,1 以外で直前の要素の存在し ない要素はない.

次にz6=z0 かつz+ 1 =z0+ 1となるものがあるとする.二つの系列 l : 11 + 1→ · · · →z→z+ 1

l0 : 11 + 1→ · · · →z0→z0+ 1 =z+ 1 が存在し,系列の唯一性に反する.ゆえに直前の要素はただひとつである.

(4) 1∈M ならM =K(1)なので16∈M とする.

R={x|M ⊂K(x)}

とおく.1 R なので R は空でない.a R であるが a+ 1 6∈Rであるような要素a R に存在する.なぜなら,もしなければ R N 自身になる.ところがx ∈N に対して x6∈K(x+ 1)だからx∈NK(x) =∅である.つまり

M ⊂ ∩x∈NK(x) =∅ となってM が空集合になるのである.

M 6⊂K(a+ 1)なのでm∈M, m6∈K(a+ 1) が存在する.つまり m∈K(a), m6∈K(a+ 1)

となりa=m,つまりM ⊂K(m)となるmが存在した.mm0と二つあればm∈K(m0) かつm0 ∈K(m)となり,mからm0 をへてmにいたる系列ができる.mからmにいたる 系列が2つでき,系列がただ一つであることに反する. このように構成された集合N の要素は

1, 1 + 1, (1 + 1) + 1, · · ·, という形をしている.これを表記の簡単のために

1, 2, 3, · · ·

(11)

と書くのである.

史織 なぜ先の定理が数学的帰納法の原理 とよばれるのですか.

南海 数学的帰納法とは次のような証明方法であった.

p(n)を自然数nに関する条件とする.

(1) p(1)が成立する.

(2) p(k)が成立するならp(k+ 1)が成立する.

(3) (1), (2)より, すべての自然数nに対して p(n)が成立する.

南海 数学的帰納法を言いかえると,条件p(n)の真理集合,つまりp(n)が真となるようなn 集合が,自然数全体であることを示すということになる.

史織 集合の記号を用いると条件 p(n)の真理集合M

M ={n|p(n)が成立, n∈N(自然数の集合)}

となります.

自然数の性質によって,M Nと一致するのですね.

数学的帰納法の(1) 1∈M を示している.(2) k∈M ならk+ 1∈M を示している.つ まりM 1を含む昇列なのでM =N (自然数の集合)である.条件が成立するn の集合M 自然数全体となり,すべての自然数 nでなり立つ,つまり(3)の成立がわかる,

これが数学的帰納法です.

南海 そのとおり.

自然数の集合というのは,「1があってkが要素であればk+ 1も要素である」ような集合でいち ばん小さいもの,として特徴づけられる.

このように数学的帰納法が証明の方法として成立するのは,自然数の性質が土台にあるからで ある.

1.1.3

同型定理と演算

南海 自然数の公理を満たすものがいくつもあっては困る.しかし実は一つしかないことが示さ れる.

定理 2

自然数の集合N はすべて同型である.つまり二つの自然数の集合N N0 があるとする.N N0 のあいだの1:1対応f(x)

(1) f(1) = 1

(2) f(x+ 1) =f(x) + 1 となるものがある.

証明 Nn ={1, 2, · · ·, n} N0 への埋め込み(中への同型対応)fn(x)を数学的帰納法で定 める.

(i) n= 1のときf1(1) = 1 とする.

(12)

(ii) fk(x)が定まったとき

fk+1(x) =fk(x) (x= 1, 2, · · ·, k), fk+1(k+ 1) =fk(k) + 1 とする.一対一であることは明らか.

つまり,次のようにfn(x)を構成する.

fk(x)は集合{1,2,…, k}からN0への写像.これができたとき,これを用いて{1,2,…, k, k+ 1}

からN0への写像fk+1(x)を,1,2,…, kに対してはfk(x)と同じ,k+ 1に対してf(k+ 1)(k+ 1) = fk(k) + 1で定める.

このfn(x) (n= 1, 2, 3,· · ·)に対して

f(x) =fx(x) x∈N

と定める.作り方からf(N) N0 における1を含む昇列である.

f(N) =N0 このとき

f(x+ 1) =fx+1(x+ 1) =fx(x) + 1 =f(x) + 1

であるから題意を満たしている.

自然数の和・積

南海 この自然数の集合には,和と積という演算が定義される.

和の定義x, y∈N に対して,x+y を作る演算を次のように定める.

(1) y= 1ならx+y=x+ 1

(2) y >1のとき

x+y= (x+ (y1)) + 1 このときx+y がただ一通りに決まり次の性質を持つ.

(i) 結合法則:(x+y) +z=x+ (y+z) (ii) 交換法則:x+y=y+x

南海 これはゆっくりやればできるので,やってみてほしい.

およそこのようにして,自然数は厳密に定義される.それから有理数が構成され,実数,複素数 と進んでいくのだ.

史織 このようにある意味では単純に定義される自然数が,因数分解をもち,素数というものがあ り,いろんな未解決の問題があるというのは不思議です.

南海 まったく同感.

(13)

1.2 実数とは何か

1.2.1

実数の集合は可付番でない

史織 自然数の集合はよくわかりました.有理数は,分数で表される数として理解できます.しか し,実数はどのようにして構成されていくのかよくわかりません.有理数から無理数を作るのなら x2= 2のような方程式を考えればいいと思うのですが,それでは円周率πや自然対数の底eが出 てきません.確か,これらの数は有理数係数の代数方程式の根にはならないと読んだことがあり ます.

南海 実数を構成するためには,「連続性」を考えなければならない.

日本の高校の教科書では証明なしに次のことが成り立つとされる.

閉区間で連続な関数は,その閉区間で最大値および最小値をもつ.

なぜそんなことが保証されるのか,と考えたことはないだろうか.

史織 当然成り立つものとして考えていますが,確かにこれはその後に習う「中間値の定理」や,

「ロルの定理」,「平均値の定理」の基礎になっています.

南海 ときどき,高校数学の土台になっているのに証明なしに使っていることを,考えてみるのは よいことだ.もちろん,数学の歴史でもはじめから実数について今日のような理解があったわけ ではない.デデキント(Julius Wilhelm Richard Dedekind,1831〜1916)やカントール(Georg Cantor,1845〜1918)らによって実数論や集合論が開拓された.岩波文庫にはデデキントの『連 続性と無理数』の翻訳がある.高校生が読んですべてがわかるわけではないが,しかし読める.デ デキントがどのようなところから実数論を考えていったかよくわかる.

数学は,ある面ではそういう厳密性とは独立に進み,あるときにはその理論を支えるために厳密 性を求めて進み,こうして相互に発展してきた.

連続関数の閉区間における最大値,最小値の存在を保証する根拠となっているのは,実数の連続 性といわれる性質だ.実数の構成についていくつか考えてみよう.

日本の高校でも「集合」の概念は習う.しかし,実際に扱うのは要素の個数が有限である場合が ほとんどだった.

実は,集合は無限集合を考えるとき,面白く不思議なことが起こる.

自然数の集合N ,正の偶数の集合Aという2つの集合を考えよう.

A⊂N, A6=N である.しかし

n∈N に対し 2n∈A

を対応させると,これは N の要素とA の要素の間の1 : 1 の対応だ.つまりN Aの要素は

「同じだけ」ある! 部分が全体と等しい?

無限集合ではこのように部分集合の各要素と全体集合の各要素の間に1 : 1の対応ができること がある.

史織 有理数と自然数の間にも1 : 1対応があるということを聞いたことがあります.対応の仕方 は覚えていません.

(14)

南海 Qを有理数の集合としよう.次のようにすると,N の各要素とQの各要素の間に1 : 1 対応が付けられる.第1象限と第2象限の格子点を(0, 1)から始めて図の矢印のようにとってい く.格子点 (m, n)に対して有理数 m

n を対応させると有理数の列ができる.

0 1 0

2 1 2 1

1 2 1 2

2 2 3 1

3 0 3 → −1

3 → −1 2 → · · · このような有理数の列から既約なものだけを選ぶと,

0 1 1

2 1 1 2

1 2 3 1

3 → −1 3 → −1

2 → · · ·

という有理数の列ができる.すべての有理数はこのどこかに登場する.この列にはじめから順に番 号を打つと,確かに自然数と有理数の間に 1 : 1の対応ができる.

このように自然数と1 : 1 の対応が作れる無限集合を「可付番である」という.

ところが,である.カントールは「実数の集合は可付番でない」ことを示したのだ.カントール は三角関数の級数の研究から集合論を創始.また,位相空間論の基礎を築いた.現代的な数学のは じまりとなったものだ.

それがまた背理法で示されるのだ.

区間[0, 1],つまり 0<=x <= 1を満たす実数の集合が可付番であると仮定する.つまり 0<=x <= 1 を満たす実数全体に番号を付けて次のようにできるとする.

α1, α2, · · ·αn, · · · このような実数αはすべて十進小数で

α= 0.a1a2a3· · ·an· · · と表される.だからそれらに番号が付けられれば順に並べて

α1 = 0.a(1)1 a(1)2 a(1)3 · · ·a(1)n · · · α2 = 0.a(2)1 a(2)2 a(2)3 · · ·a(2)n · · ·

· · · ·

αn = 0.a(n)1 a(n)2 a(n)3 · · ·a(n)n · · ·

· · · ·

(15)

のようにできる.ここにa(j)i j 番目の小数の,小数第i位の数を表している.

この対角線に並んでいる数a(n)n に対して数bn を次のように作る.

bn=

( 1 (a(n)n 6= 1のとき) 2 (a(n)n = 1のとき) こうして作った数bn から小数β を次のように定める.

β= 0.b1b2· · ·bn· · ·

すると 0<=β <= 1である.しかしβ はどのαn とも一致しない.なぜならαn β は第n位が 必ず異なるからである.これはαn 0<=x <= 1を満たす実数の全体という仮定と矛盾した.つ

まり 0<=x <= 1を満たす実数の集合は可付番でないことが示された.この背理法を「カントール

の対角線論法」という.実数は有理数よりこの意味でたくさんあるのだ!

1.2.2

実数の構成と連続性

史織 このカントールの背理法から逆にわかってきました.つまり実数というのは十進法で表した とき,有限小数と無限小数の全体である,ということですね.

南海 大変鋭い.実数を有理数の世界から構成する糸口がここにある.無限小数とは要するに有限 小数でできた数列の極限だ.

史織 今は有理数から実数を構成することが問題なので,有理数からできた数列{an}を考える.

それが収束するときその極限の集合を実数とする.有理数そのものは数列{an}のすべての項をお なじ有理数にしておけばよいので,この集合は有理数を含みます.これで実数が得られる,という のはどうでしょうか.

南海 集合そのものはその通りだ.しかしこの集合が実際に四則演算をもち,それが今までの演算 と同じであることを示すには,もう少し分かりやすく構成しなければならない.

史織 そうか.単に極限をもつというだけでは,同じ値に収束する数列がいくつもあり得る.

南海 そこで次のようにしよう.今有理数の集合Qを基礎にする.

(1) 各項が有理数からなる数列{an}が,任意の正のQの要素cに対して,ある番号n0n > n0

のとき−c < an < cとなるものが存在するとき,an 0と表し,0に収束するという.

(2) an−b→0となるbが存在するとき,an→bと表しanの極限という.極限は存在してもた だ一つであることを示すことができる.

(3) 任意の正のQの要素cに対して,ある番号n0m, n > n0のとき−c < an−am< cとな るものが存在するとき,数列{an}を基本列という.

(4) 有理数bに収束する数列は基本列である.逆に有理数からなる基本列は,有理数に収束する とはかぎらない.そこで集合H を有理数からなる基本列αの集合とする.Hに属する2 の基本列α={an}, β ={bn}an−bn 0のとき,α〜βと書き表す.集合Hにおいて この関係「〜」で結ばれたものを一つの部分集合にまとめ,これを類(class)と呼ぶ.こうし てできる類の集合をRと書き,実数という.

集合Aの要素の間にα〜βという関係で (i) α〜α

(16)

(ii) α〜βならβ〜α (iii) α〜β, β〜γならα〜γ

が成り立つとき,「〜」を「同値関係」という.

同値関係があると,同値なものを「同一視」することができる.同値なものをひとまとめにして しまうのだ.

例えば,整数mnm−n7の倍数になるときm〜nと定めると,これは同値関係だ.そ してこの同値関係で同値なものをひとまとめにすると….

史織 7で割った余りが同じものを一つの集合にするということですね.

南海 それらの集合のことを「同値類」という.この場合は同じ余りの集合なので「剰余類」とも いう.

史織 7k+ 1と書けるものはすべて同値になるので,結局整数の集合が7で割った余りの違いに よって7つの部分集合に分けられます.この部分集合の集合は7つからできていて,余りの集合と 同じです.つまり,剰余類は7つあって,剰余類を集めると7で割った余りの集合と同じものがで きます.

南海 これを,整数を7で割った余りで類に分けるという.類とは部分集合で,7で割った余りが 等しいものからできている.類は7つある.これらの類を01等と,その類に属する要素に上線 を付けたもので表す.

3 = 10 =−4 ={ · · ·, −11, −4, 3, 10, · · · } 要するに7で割って3余る整数の集合だ.

南海 有理数からなる数列の間に定義された先の〜も同値関係である.

史織 基本列の集合を,差が0に収束するとき同値であるとして,この同値関係で同じものを類に まとめると,まとめられた一つ一つの類が実数の一つ一つになるのですね.

南海 基本列の集合Hからこの同値関係で類に分けた類の集合がGだ.α∈Hに対して,α∈G となる.

もちろん,2つの基本列αβが定めるGの要素α, β に対してその和α+βや積αβをどのよ うに定めるのか.またべきαβも定めなければならない.ここではそれはしないが,関心があれば 何か読んでほしい.

これがカントールの方法だ.そして基本列が必ず極限をもつことを「完備性」といい,実数が完 備であることを,実数の連続性という.

史織 どんな参考書がありますか.

南海 いくらでもある.私が高校のときに読みかけたのは,大阪教育大学の黒崎達先生の『必修教 程数学原論』だった.いまこれは槙書店から改訂新版が出ている.

もちろん高木貞治『数の概念』(岩波書店)は古典だ.

史織 実数の定義は違う方法もあるのですか.

南海 デデキントによる「切断の方法」だ.有理数を大小関係で2つに分ける分け方の全体が実数 になる,というものだ.例えば,

2があれば,それより大きい有理数とそれより小さい有理数に 分かれる.

有理数Q2つの集合ABにわかれ,Aの任意の要素aBの任意の要素bの間につねに

a < bが成り立っていれば,ABの境目として実数が定まる.

有理数Q2つの集合ABにわかれ,Aの任意の要素aBの任意の要素bの間につねに a < bが成り立っているとき,これを< A|B >と書いて「切断」と呼ぶ.切断の集合が実数とい うわけだ.

(17)

史織 実数が先にあって有理数の切断があるのではなく,有理数の切断によって実数を定めるので すね.カントールとデデキントの2人の方法で同じものができるのですか.

南海 できる.先に紹介した黒崎先生の本には確か「2つの実数の定義は同値である」ということ が書いてあった.高校生の私にその証明のすべてが理解できたわけではなかったが,「定義の同値 性」ということにひどく感動したのを覚えている.

史織 実数がこのように完備な集合として構成されることがわかりました.実数が完備であるか ら,閉区間で定義された連続関数がつねに最大最小をもつのですね.

南海 そうなのだが,一つ一つの論証を積み重ねるのは簡単ではない.それはここではせずに,結 論の概略のみを述べよう.

先の実数の定義から次のことが成り立つ.

閉区間In= [an, bn] (n= 1, 2, · · ·)において,

(i) In+1⊂In (n= 1, 2, · · ·)

(ii) nが大きくなるとき区間の幅bn−anがいくらでも小さくなる.

このとき,これらの区間に共通な要素がただ一つ存在する.

これを区間縮小法というのだが,実数とはこのような集合としても特徴づけられる.

以下は次のような過程で,閉区間で定義された連続関数に最大値と最小値が存在することが示さ れる.

(1) x0が実数の部分集合Sの集積点であるとは,x0のどれだけ近いところにも,Sの要素が無 数に存在することをいう.実数の部分集合で要素が無数にあり,かつ有界な部分集合には集 積点が存在する.

Sの要素は区間I0= [a, b]の中にあるとする.この区間を2等分するとそのいずれかに Sの要素が無数に存在する.無数に存在する区間をI1とする.I12等分する.そのい ずれかにはSの要素が無数に存在する.無数に存在する側をI2とする.この操作をくりか えす.区間の長さはいくらでも小さくなる.したがってすべての区間に共通な要素x0が存 在する.x0を含む区間I0⊃I1⊃I2⊃ · · ·はいくらでも小さくなる.ゆえにx0のどれだけ 近いところにも,Sの要素が無数に存在する.つまりx0は集積点である.

(2) 実数の部分集合Sが閉集合であるとは,Sのすべての集積点がSに属することである.閉区 間は閉集合である.実数の有界な閉集合Sには最大値と最小値が存在する.

有理数をSのすべての要素より大きい要素からなる部分集合と,その補集合に分ける.

これは有理数の切断なので,実数aがさだまる.a < xなるxSに属さず,x < aなるx で十分aに近いものはSに属する.aSの要素であることを示す.

Sの任意の要素をa0とする.a0 < x < aを中央で2つに分け,aに近い側からa1をとる.

同様の操作をくりかえし数列{an}を定める.途中でaが選べれればaSの要素である.

この数列{an}aとの距離が0に近づくので基本列である.その極限はaでありかつS 閉集合なのでaSの要素である.aが最大値である.最小値も同様.

(3) f(x)を実数の閉区間Iで定義された連続関数とする.f(x)の値域には最大値と最小値が存 在する.

f(x)の値域をJとする

J ={f(x)| x∈I}

(18)

Jは有界閉集合である.なぜか.有界でないとする.したがって 2f(an)< f(an+1) (n= 0, 1, 2, · · ·)

となる無限数列{an}Iに存在する.Iは閉区間だから{an}の集積点はIに属する.その 一つをx0とする.数列{an}の部分列でx0に収束するもの{aln}がとれる.f(x)は連続で あるから

n→∞lim f(aln) =f(x0) ところがf(aln)>2lnf(a0)なのでこれは矛盾である.

実数をJのすべての要素より大きい要素からなる部分集合と,その補集合に分ける.これは 有理数の切断なので,実数bが定まる.(2)と同様にbに収束するJ内の数列{bn}が存在す る.bn=f(an)となる数列{an}をとる.{an}Iにおいて集積点x0をもつ.数列{an} 部分列でx0に収束するもの{aln}をとる.f(x)が連続なので

n→∞lim f(aln) =f(x0)

{bn}は収束列なのでその部分列も同じ極限に収束する.つまりf(x0) =b.

よってb∈JとなりJ に最大値が存在した.最小値についても同様である.

(19)

1.3 数列の極限と自然対数の底

1.3.1

数列の極限とはさみうちの原理

史織 数列{an}, {bn}, {cn}

an< bn < cn (n= 1, 2, 3, · · ·) をみたしている.

n→∞lim an= lim

n→∞cn=α · · ·°1 なら

n→∞lim bn =α · · ·°2

となる.これが「はさみうちの原理」ですが,この証明を次のように考えていました.

an< bn< cnより

n→∞lim an <= limn→∞bn <= limn→∞cn

α <= limn→∞bn<=α つまり

n→∞lim bn=α

でも,「はさみうちの原理」というにしては簡単すぎるし,これで証明になっているのでしょうか.

南海 ともすればこのように考えやすいが,これは「はさみうちの原理」の証明としては不完全だ.

一般に,極限の入った等号°2 は何を意味しているのかといえば 左辺の極限が存在し,その値が右辺に等しい.

ということだ.

史織 すると,私の証明では,数列{bn}が収束すること,極限の存在の証明が抜けているのですね.

でもそれはどのようにして示せばよいのですか.

南海 そういうときは「定義にかえれ」だ.数列{an}が値αに収束するとはどういうことか.

史織 「nが大きくなればanの値がαに近づく」ということです.

南海 「近づく」というのはどういうことか.

史織 「数直線上の距離が小さくなる」,ですか?

南海 そうだ.つまり|an−α|がいくらでも小さくなるということが,数列{an}が値αに収束す るということの定義だ.

史織 でも,「いくらでも小さくなる」が「0に収束する」ということなら,「収束」を定義するのに

「収束」を用いたことにはなりませんか.

南海 うーん.それは鋭い質問だ.「いくらでも小さくなる」といったあいまいな言葉を使わずに 収束することを定義しなければならない.いろんな人もこのようなことを考えた.そこで考え出さ れたのが次のような定義だ.これは「実数の連続性と代数学の基本定理」で同じことが言われてい るのだが,改めて数列「収束」を定義しよう.

数列{an}と数αがある.任意の正の実数²に対して,番号N N < nであるすべてのnについて|an−α|< ²

(20)

となるものが存在するとき, lim

n→∞anが存在し,極限値がαであると定める.

「任意の正の実数²に対して,番号Nで…となるものが存在」というところは「どのような小 さい」正の実数²が指定されても,それに対して,「つねに」番号Nが存在する,ということなの だ.そのような副詞を省いて論理の骨子で言うと先のようになるのだ.

この定義がわかりにくいときは例で考える.数列{an}an = 1 + 1

n とする.これはもちろん 1に収束する.² 1

100 にして,ある番号Nより大きい番号では

|an−α|< 1 100 にせよ,といわれれば,

史織 (少し考え)N = 100ですね.そうか, 1

10000 より小さくしたければN = 10000だ,どんな に小さい²でも,つねに番号Nは存在しますね.

では,an=nsin 1

n1に収束しますが,

|nsin1

n −α|< 1 100 となると,どうなるのでしょう.

南海 いろいろ考えるな.一般には具体的にNを求めるのは簡単でない.

史織 実際にNを求めるということではなく,Nが存在するということで,「収束」を定義するの ですね.

この「収束」の定義って「いくらでも」とか「近づく」とかのよくわからない言葉が入っていま せんね.

南海 そうなのだ.

その代わりに「任意の」という論理の言葉が入る.これがいわゆる²−δ論法というもので,大 学初年に習う解析の最初の関門だが,このように考えれば自然な発想であることがわかる.

史織 今はδではなくN でしたが.

南海 ²−δ論法は次のように lim

x→af(x) =αを定義する.

関数f(x)と数αがある.任意の正の実数²に対して,正の実数δ

|x−a|< δであるxについて|f(x)−α|< ² となるものが存在するとき,極限 lim

x→af(x)が存在し極限値がαであると定める.

史織 これもわかります.

南海 いずれにせよ,このような厳密な定義があるということを知ったうえで,数列{an}が数α に収束するとは,nが大きくなるとき,絶対値|an−α|がいくらでも小さくなることと理解すれば よい.

この定義のもとではさみうちの原理を証明しよう.

条件°1 のもとで,|bn−α|がいくらでも小さくなることを示せばよい.

|bn−α| = |bn−an+an−α|

参照

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