日本小児循環器学会雑誌 14巻4号 567〜568頁(1998年)
〈研究会抄録〉
第10回浜松小児循環器談話会
期 日 会 場 世話人
平成10年2月7日(土)
アクトシティ コングレスセンター 伊熊 正光
1.当科における総肺静脈還流異常症の診療状況 聖隷浜松病院小児循環器科
瀬口 正史,西尾 公男,横山 岳彦 同 心臓血管科 酒井 章 1994年から1997年までの4年間に内臓錯位症候群を 伴わない8例のTAPVRを経験した.入院日齢は日齢
0から52日で,手術日齢は4日から55日であった.PS 合伴,COA合併がそれぞれ1例ずつあった.7例に手
術を行い,術前のCOAに伴うductal shockとMOF
を合併した1例,術後のPVOによる1例の2例を
失った.羊水吸引症候群合併例ではECMO施行前に TRPVA(IIa)の診断ができなかった.術後のPVOで 失った1例(Ia)では,治療の困難さを痛感させられた.2.溶血性尿毒症症候群(HUS)を呈した川崎病4 カ月男児例
浜松医科大学小児科
横地 智子,伊熊 正光 浜岡総合病院小児科
田宮 貞人,中西 俊樹 川崎病経過中に著明な血小板減少を来した4カ月男 児例を報告した.入院時よりアスピリン30mg/kg/d,
パナルジン4mg/kg/d内服開始.ベニロンlg/kg/d(3 日間)投与するも著効せず,ヴェノIH 2g/kg/d(1口)
投与にて速やかに解熱を認めた.後遺症は残さなかっ た.全身浮腫著明,低Alb血症認め, chest X−pにて 心拡大あり,ブミネート,ラシックス併用にて対処し た.plt 2.6万まで低下したため, plt 5u輸血行った.
以後80.1万をピークに徐々に低下し正常化した.経過 中,腹痛,下痢,浮腫,尿量低下,plt↓,貧血,赤血 球fragmentation,尿検査にて蛋白尿,血尿を認めてお
り,川崎病に軽症の溶血性尿毒症症候群(HUS)を合 併したと思われた.なお便培養にて病原性大腸菌0−
157,Yersinia等の菌は証明されなかった.我々の症例
別刷請求先:(〒431−3124)浜松市半田町3600 浜松医科大学小児科 伊熊 正光
は重症化こそしなかったが,川崎病にHUSを合併す る可能性もあり適確な対応が必要と思われた.
3.γ一グロブリン大量療法に反応の悪かった川崎
病の1例
聖隷三方原病院小児科
早川 聡,山本 彩香,安田 和志 三木 真,渡辺めぐみ,大木 茂 和田 力也,岡田 真人
症例は1歳11カ月の女児.平成9年11月19日より発 熱,4病日に眼球結膜充血,口唇発赤,頸部リンパ節 腫脹が出現し川崎病の疑いにて入院.7病日にRisk Score Xが陽性となり,γ一グロブリン1g/kgを2日問 投与した.その後主要徴候は改善傾向だったが,37℃
前半の熱が続いていた.13病日頃より眼球結膜充血,
口唇発赤が再度出現し冠動脈の拡張も認めたため,γ一 グロブリン1g/kgを追加投与した.冠動脈は最大径8
mm弱まで拡張したが退院の時点で4mm前後であっ
た.
4.3.の追加 ガンマグロブリン大量療法にても 冠動脈瘤認めた男児例
浜松医科大学小児科
勅使川原圭希,伊熊 正光 症例は8カ月男.入院時(第2病日)肝機能障害あ
り,第3病日には症状(不定形発疹,発熱,結膜充血,
口唇発赤,手足腫脹)が出現してきたため,川崎病と 診断,ヴェノIH lg/kg投与した.いったん解熱した が体温37℃前後続き,CRP 1台が持続していた.第12 病日に心エコーにて冠動脈瘤の出現あり,γ一globulin の投与量,回数について考慮すべき1例であった.
5.静岡県での川崎病の最近の動向について(全国 調査と比較して)
(浜松医科大学小児科関連病院症例検討会)
共立湖西総合病院小児科
福岡 哲哉,西田 光宏 自治医科大学公衆衛生学教室 柳川 洋 第13回(93,94)及び第14回(95,96)川崎病全国
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調査において,静岡県の症例のみを検討する機会を得 たので報告した.症例数は第13回,第14回共に348名で あった.男女比,月別患者数は全国調査とほぼ同様な 傾向がみられた.定型例,不定型例,容疑例の割合も 同様であった.γ一グロブリン使用量は,第13回全国調 査では,200mg/kg 5日間使用例が最多数であったの
に対し,静岡県では400mg/kg 3日間,5日間使用例が 多く,第14回では400mg/kg 5日間使用例が倍増し,1 日投与量が1,000mg/kg以上の症例が約14%みられ
日小循誌 14(4),1998 た.全国的なγ一グロブリン投与量の変化に先行する傾 向がみられた.また,γ一グロブリン未使用例での後遺 症例が年々減少しており,静岡県では特にその傾向が 強く,投与の症例が適確に選ばれてきているものと思 われた.問題は,全国調査と同様に,γ一グロブリン使 用症例の後遺症率が変わりないこと,1歳未満,高年 齢の後遺症率,及びγ一グロブリン不応の症例の動向に 変化がみられないことが,今後の課題であると思われ
た.
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