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視覚化された感情によるコミュニケーションの改善に関する研究
- 視覚表現を用いた感情のメタ体験の提案 -
A Research on Improvement of Communication by Visualized Emotional Information
- Proposal of Meta Experience of Emotion Using Visual Representation -
概要 : 本論文は、自らが無意識のうちに行っている感覚や行動を対象化し認識すること、意識的に反復することをメタ体験と定義し、メタ 体験を促す視覚表現手法によるコミュニケーションの改善を提案するものである。今日、インターネットやその他様々なメディアの登場に より、写真や動画、音声など、言語以外の手段でのコミュニケーションが発展する一方、情報やコミュニケーションの質、人のコミュニケー ション能力の低下が指摘される。この要因の一つとして、理想的なコミュニケーションモデルにおいて無視されてきた曖昧な情報に着目し た。現在、多くの研究で、身体情報や物質的感覚の伝達を通してより深いコミュニケーションが試みられている。本研究では、これまで言 語が担ってきた自己反省的な役割を、感情の視覚化という手法を用いて新たに付加することを提案した。脳波を視覚的表現である色に変換 する装置による実験と、コミュニケーション中の感情に関して行ったアンケート調査から、感情のメタ体験が自分の感情や思考を知る上で 効果的な手法であり、コミュニケーションの改善につながり得る新たな表現手法であるという結果が得られた。また、この手法は人と人と のコミュニケーションだけでなく、言語の使用が困難な場合に効果的であることから、今後の展望として、動物とのコミュニケーションを 望む人のためのコミュニケーションデバイスへの応用について言及した。
キーワード:メタ体験、身体情報の視覚化、共感演出
Keywords: meta experience, visualization of body information, empathy production method
1. はじめに
今日、インターネット社会において、写真や動画など 言語以外の手段でのコミュニケーションが発展し、情報 やコミュニケーションの質、人のコミュニケーション能 力の低下が指摘されるようになった。
この要因の一つとして着目したのが、感情の存在であ る。理想的なコミュニケーションモデルは、情報が送り 手から受け手へと移動する線的なものでされるが、ここ では受け手の反応が無視されてきた。
本研究の目的は、感情の視覚化によってメタ体験を促 し、共感を演出することでコミュニケーションの改善を 実現するものである。
2. コミュニケーションにおけるメタ体験
本論文では、自らが無意識のうちに行っている感覚や 行動を対象化し認識すること、意識的に反復することを メタ体験と定義する。コミュニケーションにおいて、こ れまでは言語がこのメタ体験を促す役割を担ってきた。
本研究においてコミュニケーションという語を用いる とき、最も根本的な型である人と人との対話型会話、パー ソナル・コミュニケーションのことを示すものとする。
コミュニケーションを情報伝達と捉える理想的なモデル と、現実のコミュニケーションとしての社会学モデルを 比較すると、次の表のようになる。
ここでは常に、情報の意味は受け手によって決定され る。人の感覚が脳の処理を通したものであるが故に、情 報は極めて曖昧なものであり、感情の存在はコミュニ ケーションにおいて極めて重要なものである。
3. 感情とコミュニケーションに関する研究
まず、感情とは、思考から生じるもの、脳内でのみ生 じる心的な現象のことであるが、これは感情や身振り手 振り等の身体に現れる。コミュニケーションに関する研 究、主に遠隔地での情報伝達及び共有に関する研究にお いて、伝達対象の主となる情報以外の要素、空気や場を いかに共有できるかが課題とされる。ここでは、アバター やシルエットを用いた人気の演出、振動や温熱感覚の伝 達、身体感覚の共有等によって、コミュニケーションの 改善が試みられてきた。これらは直接的に感情を扱うも のではないが、身体や物理的感覚を通して、間接的に感 情の存在へとアプローチするものであるといえる。
理想的なコミュニケーション 社会学モデル 基礎構造
意味の決定
情報のキャッチボール 記号を媒介にした相互作用 送り手の意図 受け手の反応 表 1 コミュニケーションモデルの比較
5113E005-0 今泉 真生 IMAIZUMI Mao
指導教員 長 幾朗 教授 Prof. CHOH Ikuro
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4. 脳波の視覚表現によるメタ体験の提案
脳波センサーワイヤレスヘッドセットの MindWave Mobile からリアルタイムに計測される脳波の数値を PC ヘ入力し、プロジェクターに接続されたドーム型のディ スプレイ上で色として出力する装置を制作した。色は興 奮しているときの赤からリラックスしているときの青ま で連続的に変化する。この作品を第 16 回東京大学制作 展にて展示した際、鑑賞者の行動観察とインタビュー調 査を行った。
本作品では2人以上での状況を想定し、一人に脳波計 を装着させた状態で、会話をするなどランダムな外部刺 激を受けられる状態においた。脳波を視覚表現に置き換 え、鑑賞者自身がその変化を観察しながらコミュニケー ションするという体験は、新たな気づきを与えられるこ とがわかった。
ここでは、脳波そのものが感情を示しているわけでは なく、重要なのは、脳波を視覚的な表現に置き換え、そ のイメージを再び認識させることによって、鑑賞者に自 らの感情のメカニズムを辿るというメタ体験を与えるこ とであった。
5. メタ体験によるコミュニケーションの改善
コミュニケーション中の感情に関するアンケート調査を 行った。テーマを「相手の感情について」「自分の感情に
図 1 ディスプレイ部分の内部及び色変化の様子
ついて」「共感について」の三つに大別し、選択式と記述 式の 18 項目を設置した。この調査から、感情と思考が深 く結びついている感じていることが確認できた。また、自 然な相手との共感があるとき、良いコミュニケーションだ と感じられるという結果が得られた。以上の結果から、メ タ体験を実際のコミュニケーションに用いる際に有効な方 法としての提案をまとめた。
6. 本研究の成果と課題
以上の実験と調査から、視覚化表現を用いた情報の付 加がメタ体験を促すこと、感情のメタ体験が良いコミュ ニケーションにとって効果的であり、次のコミュニケー ションにつながり得る新たな表現手法であるという結果 が得られた。
これを、実用的なコミュニケーションデバイスとして 利用するために、環境とウェアラブルデバイスの二つの 側面から有効性を考察した。また、視覚表現を用いたコ ミュニケーションは、特に言語の使用が困難な場合にお いて有効だといえる。したがって、今後の展望としては、
人のための動物とのコミュニケーションデバイスへの応 用について考察し、提案をまとめた。
7. 結論
本論文の結論は、以下の 3 点にまとめられる。
1) 身体感覚を視覚表現に置き換えることによって、自分 の感情や思考を内省的かつ客観的に見るという感覚を得 られる。
2) 視覚表現を通じた感情のメタ体験は、情報の送り手、
受け手共に、無意識レベルでの感情に関して新たな気づ きを与える。
3) 視覚表現を用いたメタ体験の付与という手法は、共感 の演出によるコミュニケーションの改善という点でも効 果的である。
また、本研究での制作およびアンケート調査は視覚に焦 点を絞ったものであったため、他の感覚を考慮しない結果 となったが、今後は他の感覚も含めて検討する必要がある だろう。
参考文献
1) 土佐尚子「カルチュラル・コンピューティング」NTT 出版 , 2009
2) G・H・ミード「精神・自我・社会―社会的行動主義者の立場から」稲葉三千男、滝沢正樹、
中野収訳 , 青木書店 , 1973
図表 1) 今泉 , 2015 2) 今泉 , 2014