臨床心理面接における初期の関係性の様相とその形成のためのかかわりに関する研究 [ PDF
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(2) となるか」ということを検討した。. KJ法を用いた分類をおこなった。. 第1分析では,ロウ・データをもとに,インタビュ. 分類作業の結果,本研究における調査協力者が事例. ーのなかで語られた事例に関して,「関係のとりづら. のなかでおこなった関係をとるためのかかわりは,1. い事例」としてどのような事例が語られているのかを. 1のカテゴリに分類された。また,そのうち8のカテ. 質的に分析した。分析は筆者を含めた評定者3名でお. ゴリに関しては,その性質から「セラピストからの働. こなった。筆者の他の評定者は心理臨床を学ぶ大学院. きかけ」と「クライエントに沿う態度」の2つに分類. 生の男性2名であった。. された。分析の結果はFigure 3に示した。. 分析の結果,面接の初期における関係がとりづらさ. D 考察. の要因として12の要因が抽出され,それぞれの要因. 本研究では「心理臨床家は臨床心理面接における初. は明確に分類できるものではなく,お互いの要因が密. 期の関係性をどうとらえているのか」「心理臨床家は. 接に関わり合っていることが示唆されたため,その関. 初期の関係形成のために具体的にどのようなことをや. 連を視覚的に提示するためにFigure 1を作成した。. っているのか」というふたつの研究課題の検討がなさ. Ⅳ 第2分析. れた。第1分析では心理臨床家の初期の関係性の捉え. 第2分析では,「心理臨床家は臨床心理面接の初期. 方を検討する方法として,実際の事例において関係が. において関係がとれるということをどのようにとらえ. とりづらいと感じる要因について検討をおこなった。. ているか」という研究課題のもと,心理臨床家はどの. また第2分析では,どのような状態をもって関係が取. ような状態をもって関係がとれたと考えているのか,. れたとセラピストが感じるかということを検討するこ. という視点から,その多様な捉え方とそれらの関連に. とで,心理臨床家の初期の関係性の捉え方について検. ついて検討することを第2分析の目的とする。. 討された。第3分析においては,実際の面接場面にお. 第2分析では,ロウ・データをもとに,「関係がと. いて,クライエントと関係をとるためにどのようなか. れるということをどのように捉えているか」という質. かわりをおこなっているかということについて検討が. 問,すなわち質問1に対する回答を中心に,その内容. なされた。いかに本研究で得られた知見をまとめる。. を質的に分析した。分析は筆者を含めた評定者3名で. 第1分析では,面接の場において関係がとりづらい. おこなった。筆者の他の評定者は心理臨床を学ぶ大学. と感じる際の主要因として,セラピストがクライエン. 院生の女性2名であった。. トの見立てを立てられないことと,クライエントがセ. 分析の結果,得られた関係の捉え方に関する34の. ラピストの意図にのってくれないというふたつが示唆. 記述について,カテゴリが再検討され,最終的に16. された。このような要因が生じる背景として,クライ. のカテゴリに分類された。また,それらのカテゴリは. エントの心理的背景や表現手段,またそれによるセラ. さらに,セラピストの感覚,二者の状態,クライエン. ピストのネガティブな内的体験が生じることによって,. トの感覚,の3つの大カテゴリに分類された。また,. 関係の性質が面接に適さないものになる,という過程. いずれのカテゴリも,本研究が心理臨床家へのインタ. が示唆された。. ビューという方法を用いているため,セラピストの視. 第2分析では,クライエントと関係がとれたとセラ. 点から見た要因とした。さらに,分析の結果を視覚的. ピストが感じる際の状態が,クライエントの感覚,セ. に示すため,Figure 2を作成した。. ラピストの感覚,二者の状態という3つの視点から検. Ⅴ 第3分析. 討された。クライエントの感覚においては,クライエ. 第3分析では,「心理臨床家は初期の関係形成のた. ントがセラピストに肯定的感情をもてる,クライエン. めに具体的にどのようなことをやっているのか」とい. トが面接の場を理解する,クライエントが心理臨床的. う研究課題のもと,心理臨床家がどのようなかかわり. 作業ができる,という感覚があることが関係形成に重. によって初期の関係性を築こうとしているかについて. 要であることが示唆された。また,来談動機・治療意. 明らかにすることを目的とした。. 欲があることはこれらの感覚が生じるのに重要な前提. インタビュー調査によって得られたプロトコルのな. であると位置づけられた。セラピストの感覚としては,. かから,「面接の初期において関係をとるためにおこ. クライエントに対して何らかの役に立てるという感覚. なった心理臨床家の行動・かかわり」という視点によ. とそのクライエントと心理臨床的作業ができそうであ. り記述を抽出し,得られた具体的なかかわり方をそれ. る感覚があるかどうかが,クライエントと関係がとれ. ぞれカードにし,大学院生2名(男女各1名)により,. るか,あるいはとれているかを見極めるものとなって.
(3) いることが示唆された。また,二者の状態としては,. 54-64. 信頼関係,相互作用,共通目標,という状況がクライ. 小川幸男(1999):「ラポール(rapport)」形成に関する. エントとセラピストの間に生じているときに,クライ. 一考察 ―クライエントの体験を中心として― 北. エントと関係がとれているとセラピストが感じるとい. 九州大学文学部紀要(人間関係学科) 6, 45-50. うことが示唆された。また,これら二者の状態は,ク. 岡村達也・保坂亨(2000):パーソンセンタード・カウ. ライエントの感覚との関連があることも考察された。. ンセリングにおける「治療的人格変化の必要十分条. 第3分析では,臨床心理面接における初期の関係形. 件」の技法論的展開 第1条件の見直しからプリ−. 成のために心理臨床家がおこなっているかかわりにつ. セラピィ,反射の復権へ 心理臨床学研究 18(3),. いて検討され,クライエントに沿う態度,クライエン. 299-304. トの理解,セラピストの働きかけ,資源の活用,とい. Rogers, C. R. (1957) : The Necessary and Sufficient. う4つが示唆された。また,これらのかかわりは時間. Conditions of Therapeutic Personality Change.. 軸に沿っておこなわれ,それぞれが積み重なっていく. Journal of consulting psychology, 21, 95-103.. 構造であることが考察された。. (「パースナリティ変化の必要にして十分な条件」 伊藤博編訳 ロージャズ全集 第4巻 第6章 岩. 主要参考文献. 崎学術出版社 1966). 遠藤裕乃(1997):心理療法における治療者の陰性感情. 斯波涼介(2002):「ラポール形成」に関する研究の展. の克服と活用に関する研究 心理臨床学研究 15(4), 428-436. 望 東京学芸大学教育相談研究 40, 61-66 下山晴彦(1993):心理療法過程における関係性の研究. 遠藤裕乃(1998):心理療法における治療者の陰性感情. 日本の”気”と”間”を媒介として 心理臨床学研. と言語的応答の構造に関する研究 心理臨床学研究 16(4), 313-321. 究 10(3),4-16 下山晴彦・野島一彦・新田秦生(2002):質的研究にお. 原田杏子(2003):人はどのように他者の悩みを聞くの か ーグラウンデッド・セオリー・アプローチによ. け る ナラ テ ィ ブ の位 置 づ け 人 間 性 心 理学 研 究 20(2), 174-200. る発言カテゴリーの生成ー 教育心理学研究 51,. Table 1 インタビューの構成. 質問1. 「先生が心理臨床をやっていくなかで,関係がとれる,関係がとれないということについて,どのような ことを考えられながらやっていらっしゃいますか」 最初,関係がとりづらいと先生が感じ,それに対して何らかの工夫や配慮をおこなったが,あまり関係が とれないまま,終結・中断となった事例について 「関係がとりづらいと思った点」 「そのとりづらさに対しておこなった工夫や配慮」 「それに対するクライエントの反応」 「そのやりとりのときのセラピストの体験」 「そのやりとりのときのクライエントの体験の推測」. 質問2. 「どのようにしていたら良かったか」 最初,関係がとりづらいと先生が感じ,それに対して何らかの工夫や配慮をおこなったおかげで,関係が とれるようになり,面接過程が進んでいった事例について 「関係がとりづらいと思った点」 「そのとりづらさに対しておこなった工夫や配慮」 「それに対するクライエントの反応」 「そのやりとりのときのセラピストの体験」 「そのやりとりのときのクライエントの体験の推測」 「どのような点が良かったか」.
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鶴見大学紀要 第51号 第3部