博 士 ( 工 学 ) 清 野 知 之
学 位 論 文 題 名
CdTe 半 導 体 放 射 線 検 出 器 に 対 す る エネルギースベクトルの時間変化抑制に関する研究
学位論文内容の要旨
半導体放射線検出器琺シンチレータ検出器と比較して小型化が容易でエネルギー分解能が優れて いる。そのためPET(Positron EmissionTbmography)やSPECT(SinglePhotonEImssionComputed Tomography)教ど核医学診断装置に半導体検出器を適用することで装置の高性能化が期待できる。
しかし従来用いられてきたSiやGeはそれぞれガンマ線阻止能が低い、低温冷却が必要、顔どの 問題があり核医学診断装置用には適してい教い。近年、阻止能が高く室温使用可能を半導体検出器 材料としてCdTeが着目され、特性改善や量産技術が研究されてきた。しかしCdTeではポーラリ ゼーションと呼ぱれる分極現象が生じ、室温で数十分程度使用するだけでエネルギー分解能悪化や ピークシフトをど経時変化が生じる問題があり、実用化の面で最大の障害とをっている。本研究は CdTb検出器用のバイアス電圧制御回路および信号読出し回路の改良によってポーラリゼーション 現象克服を図るべく検討を行ったものである。
本論文は6章で構成されている。
第1章は序論として、核医学診断装置に従来のシンチレータでは教く半導体検出器を搭載するこ との利点を論じた。半導体検出器は小型化が容易でエネルギー分解能が良好という特長を有し、核 医学診断装置に使用することで空間分解能向上や散乱線ノイズ低減が期待できる。CdTeの利点や 問題 点を検討 し、最大の課題であるポーラリゼーション現象に関してその概要を示した。
第2章では、ポーラリゼーション現象の抑制方法としてバイアスリフレッシュ法を検討した。
ポーラリゼーション現象はCdreの恒久的劣化では教く、バイアス電圧を一旦オフすれば特性は回 復する。バイアスリフレッシュ法はこの点に着目し、バイアス電圧を周期的かつ短時聞オフして CdTe検 出 器を 連 続 使用 す る 方法 で あ る。4mmx7.5mmxlmm厚 のCdTe素子4枚を 積層した PET用検出器を温度35℃、バイアス電圧500Vにて用いる場合、リフレッシュ間隔5分、バイア スオフ時間0.5秒のりフレッシュ条件を適用するとェネルギースペクトルの時間変化が抑制でき、
それが少教くとも5時間継続することを確認した。なお同じ検出器にバイアスリフレッシュ法を適 用し教いとエネルギースペクトルは30分程度で顕著に変化してしまぃ、本方法の有効性は明白で あった。また電圧変化により生じるサージ電圧を極力抑制し、かつ電圧変化時間の短縮を図って定 電 流 素 子を 用 い た電 圧 直 線変 化 型 のバ イ ア スリ フ レ ッ シュ 回 路 を考 案 し 適用 し た 。 第3章ではりフレッシュ時のデッドタイムを無視できる程度ヘ短縮するてとと動作温度範囲の拡 大とを目的とし、バイアス電圧を高速でオンオフする高速バイアスリフレッシュ法を検討した。第 2章で用いたバイアスリフレッシュ回路をべースにバイアス電圧立ち上がり・立ち下がりを100ms から約1msへと短縮した回路と、さらに10斗sまで短縮した回路との2種類のりフレッシュ回路
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を設計・製作した。また バイアス電圧の高速変化に 伴うサージ電圧によるプリアンプ回路損傷を防 止するため、新たにダイ オードによる保護回路を追 加した。リフレッシュ間隔5分ではェネルギー 分解 能安 定に 必 要教 オフ 時間 は10msであ った が、 リ フレ ッシ ュ間隔を30秒 に短縮すればオフ時 間も2msに短 縮可 能で あ るこ とが わか った 。 さら にり フレ ッ シュ 間隔 を1sとす る とオ フ時間を 100psと して もポ ーラ リ ゼー ショ ン抑 制は可能で あった。す教わちりフレッ シュ間隔とバイアス オフ時間とは相関があり 、バイアスオフ時間を短縮 しをければ教ら顔い場合はりフレッシュ間隔を 短縮すればポーラリゼー ションは抑制可能であるこ とがわかった。結局、測定の欠落が問題と教ら 放い デッ ドタ イ ムの 目標 を100ms以下 と設定し、 これを達成した。また使用 温度範囲の拡大を目 的に 検討 を行 い 、リ フレ ッシ ュ 間隔10s、バイア スオフ時間10msのりフレッ シュ条件を適用する こと で60℃と いう高 温においてもェネルギースペ クトルの時間変化が抑制で き、それが少をくと も5時間は継続すること を確認した。
第4章 ではSPECT顔 ど低 入射 レ ート で用 いる 装置 に おい て有 利と教る、マ トリクス読出し対応 の高 速バ イア スリフ レッシュ回路を検討した。マ トリクス読出しではCdTe検 出器の低圧側のみ教 らず高圧側からも信号を 読み出すため、バイアス抵 抗および結合コンデンサが必要と顔る。そのた めバイアス電圧の切替え 時間がこれらの時定数以下 に短縮でき教いという問題が生じた。そこでバ イア ス抵 抗と 並列に ダイオードクランプ回路を接 続し、さらにプリアンプ入 力側にコンデンサお よび 保護 回路 を追加 するをど、回路構成を工夫す ることでバイアスリフレッ シュ高速化の限界を 克服した。一方、リフレ ッシュ時にプリアンプは飽 和してデッドタイムがバイアスオフ時間より大 幅に大きく顔っているこ とが判明したため、これを 短縮可能顔プリアンプ回路を新たに設計・製作 した 。保 護回 路のダ イオードがりフレッシュ終了 後もノイズを継続して発生 させる問題は不可避 であ った が、 実 用上 問題 と綏 ら をい20keV以 下の ノイ ズレ ベ ルとデッドタイ ム100ms以下とを両 立できることを示した。 結局、マトリクス読出しに おいても高速バイアスリフレッシュが可能と顔 り、リフレッシュ高速化 の限界を打破する回路の開 発に成功した。
第5章 では ポー ラリ ゼ ーシ ョン 現象 のメカニズ ムに関して、CdTe内部にお ける電荷分布の時間 変化モデルを示して他の 研究者の結果も含めその妥 当性を論じた。In/CdTe/Pt構造の素子ではバイ アス 電圧 を連 続 印加 する とCdTeが負 に帯 電す ると と もにPt側 にホールが蓄 積してPt付近の電界 強度が低下し、ホール収 集効率が低下してエネルギ ー分解能が悪化する。これがさらに進行すると Pt付 近の 電界 はゼロ とぬルホール蓄積領域がCdTe結晶内へと拡大していき、 ピークシフトおよび 有感 領域 滅少 を もた らす 。キ ー と極 るの はPt直下 のTe酸 化物 がp型半 導体 とし て 振る 舞うこと で、これにより同じCdrre結晶を使用するPtK:d瓲田t構造の素子でポーラリゼーションが生じ社い ことも矛盾社く説明でき る。またポーラリゼーショ ンの原因と教る結晶欠陥は、 欠陥準位をEとす るとバイアスオン時にはexp(E瓜T)に比例する時定数で負イオン化が進行し、オフ時にはホール密 度に反比例する時定数で 再結合する。これらの関係 からポーラリゼーション進行時間に対して極め て短いバイアスオフ時間 でイオン化の解消が可能で あることをど、バイアスリフレッシュ法がポー ラ リ ゼ ー シ ョ ン 抑 制 に 有 効 で あ る メ カ ニ ズ ム を 説 明 す る こ と が で き た 。 第6章では本研究の成 果を総括するとともに、今後 の展望を示した。
以 上、 本論 文はCdTe半導体放射線検出器の最大 の問題であったポーラリゼ ーションの抑制に関 して検討したものである 。本研究の成果は従来の品 質のCd1、e検出器を用い、バイアス電圧制御回 路および読出し回路の工 夫によルバイアスリフレッ シュ法を適用してポーラリゼーション抑制を実 現で きた てと である 。そのため今後は急速にCdTe検出器の核医学診断装置へ の搭載や、放射性物 質探知装置誼どへの適用 が進むことが期待される。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 鬼柳 善明 副査 教授 住吉 孝 副査 教授 古坂 道弘 副査 准教授 富岡 智
学 位 論 文 題 名
CdTe 半 導 体 放 射 線 検 出 器 に 対 す る エネルギースペクトルの時間変化抑制に関する研究
半導体放射線検出器はシンチ レータ検出器と比較して小 型化が容易で、エネルギー分解能が優 れ ている。そのため半導体検出 器をPET(Positron Emission Tomography)やSPECT(Single Photon Emission Computed1、omography)社どの核医学診断装置に適用することで、これらの装置の高性 能 化 が期 待で きる 。し か し従来 半導体検出器として用いら れてきたSiやGeは問題があり 核医学 診 断装置に適しているとは言い 難い。近年、阻止能が高く室温使用可能を半導体検出器材料として CdTeが特 性改 善や 量産 技 術を中 心に研究されてきた。しか しCdTeではポーラリゼーショ ンと呼 ば れる分極現象が生じ、短時間 でェネルギー分解能悪化やフォトピークシフトをどの経時変化が生 じ る問題があった。本研究はCdTe検出器とともに使用され るバイアス電圧制御回路および信号読 出 し 回路 の改 良に よル ポ ーラ リゼ ーシ ョ ン現 象の 克服 を図 る べく 検討 を行 ったもので ある。
第1章は序論として、核医学診 断装置に従来のシンチレー タではをく半導体検出器を搭 載する こ との利点を論じている。また 、CdTeの利点やその問題点 を検討し、最大の課題であるポーラリ ゼ ーション現象に関してその概 要を示している。
第2章では、ポーラリゼーシ ョン現象を抑制する方法としてバイアスリフレッシュ法を検討して い る。ポーラリゼーション現象 はエネルギースベクトルの 経時変化をもたらすが、これはCdTeの 恒 久的劣化ではをくバイアス電 圧を一旦オフすれば特性は回復する。バイアスリフレッシュ法はバ イ アス電圧を周期的かつ短時間 オフしをがらCd1、e検出器 を継続的に使用する方法である。CdTe 素 子4枚 を 積 層 し たPET用CdTe検 出 器 を用 い、 温度35℃、 バイ アス 電圧500Vに て、 リフ レッ シ ュ間隔5分、バイアスオフ時 間0.5秒のりフレッシュ条件にてエネルギースベクトルの時間変化 が 抑 制可能であることを見出し 、少教くとも5時間は継続し て安定であることを確認して いる。
第3章では、バイアス電圧を高速でオンオフする高速バイアスリフレッシュ法を検討している 。 目 的はりフレッシュ時のデッド タイムを無視できるレベル まで短縮することと、動作温度範囲の 拡 大 であ る。 バイ アス 電 圧の立 ち上がり・立ち下がりを100msから約1msへと短縮してい る。さ ら に 回路構成を変えてバイアス 電圧立ち上がり・立ち下がり 時間を10此sまで短縮したり フレッ シ ュ回路も製作している。また バイアス電圧の高速変化に伴うサージ電圧によってプリアンプ回路 損 傷の可能性が生じたため、新 たにダイオードによる保護回路を追加し、リフレッシュ間隔5分で
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は 必要 顔 オフ 時間 は10msで あ った が、 リフ レッ シ ュ間 隔を30秒 に 短縮すれば2msのオフ時間で も ポー ラ リゼ ーシ ョンを抑制できること を示している。さらにオフ 時間を100usとした場合でも りフレ ッシュ間隔をIsとすれぱポー ラリゼーション抑制は可能 でありことを示した。すをわちり フレッ シュ間隔とバイアスオフ時間 とは相関があり、バイアスオフ時間を短縮する場合はりフレッ シュ間 隔も短縮すればポーラリゼー ションは抑制可能であることがわかった。最終的に、リフレッ シ ュ時 の デッ ドタ イムを無視できる時間 としてその目標を100ms以下 とし、これを達成した。ま た 使用 温 度範 囲の 拡大を目的に60℃にお ける特性安定化を検討した 。リフレッシュ間隔10s、バ イ アス オ フ時 間10msの 設定 で60℃ にお いて もエネルギースペクトル の時間変化を抑制できるこ とを見 出している。
第4章 ではマトリクス読出しに対 応した高速バイアスリフレッ シュ回路を検討している。マトリ ク ス読 出 しはSPECT教ど低入射レートで 用いる装置の低コスト化に有 効を方法である。マトリク ス読出 しではCdTe検出器の高圧側・ 低圧側の両側から信号を読 み出す必要があるが、バイアス電 圧のオ ンオフ時間が高圧側のバイア ス抵抗と結合コンデンサと の時定数以下には短縮できをいと いう課 題が生じた。バイアス抵抗と 並列にクランプ回路を接続し、さらにコンデンサ間に保護回路 を設ける回路構成を考案し、′ヾイアスリフレッシュ高速化の阻害要因を克服している。一方、リフ レッシ ュ時にプリアンプは飽和が持 続してデッドタイムがバイ アスオフ時間より大幅に伸びてい ること が判明した。そのため大き極 時定数を持た顔いプリアンプ回路を新たに設計・製作し、実用 上 問題 と をら をい20keV以 下の ノイ ズ レベ ルとデッドタイム100ms以 下とを両立できることを示 した。
第5章で はポ ーラ リ ゼー ショ ン現 象 の進 行お よび 抑制 の メカ ニズ ムに関して検討した。CdTe 内 部に お ける 電荷 分布 の時 間 変化 モデ ルを 示し 、 その 妥当 性を 論 じて いる 。通 常使 用 される In/CdTe/Pt構造の素子ではバイアス 電圧の連続印加によりCdTeが負に帯電、Pt側にはホールが蓄 積し、Pt付近の電界強度が低下する 。そのためPt側のホール収 集効率が低下しエネルギー分解能 が悪化 する。さらにPt側のホール蓄 積が進行するとPt側の電界 はゼロと誼ってホール蓄積領域が CdTe結 晶内へと拡大し、このことが ピークシフトおよび有感領 域減少をもたらす。ここでキーと を るの はPt直 下のTe酸 化物 がp型半 導 体と して 振る 舞う こ とで あり 、これにより同じCdTe結晶 を使用 するPt/CdTe/Pt構造の素子で はポーラリゼーションが生 じをいことも矛盾をく説明できる ことを 示している。次にバイアスリ フレッシュ法に対する理論的検討を行った。ポーラリゼーショ ンの原 因とをる結晶欠陥は、欠陥準 位をEとするとバイアスオン 時にはexp(E/kT)に比例する時定 数で負 イオン化が進行し、オフ時に はホール密度に反比例する時定数で再結合する。これらの関係 からポ ーラリゼーション進行時間に 対して極めて短いバイアスオフ時間でイオン化の解消が可能で あ る こ と を ど 、 バ イ ア ス リ フ レ ッ シ ュ 法 の メ カ ニ ズ ム の 説 明 に 成 功 し て い る 。 第 6章 で は 本 研 究 の 成 果 を 総 括 す る と と も に 、 今 後 の 展 望 を 示 し た 。 以上 要するに、本論文はCdTe半導 体放射線検出器の最大の問 題であったポーラリゼーションの 抑制に 関して検討し、従来の品質のCdTe検出器を用いてバイア ス電圧制御回路および読出し回路 の工夫 によルポーラリゼーション抑 制を実現したものであり、放射線計測工学に対して大きを貢献 を し た も の で あ り 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 値 す る と 認 め る 。
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