博 士 ( 農 学 ) フ セ イ ン ア ノ ヽ メ ド イ ル フ セ イ ン ノ 弋 ビ ケ ー ル
学位論文題名
Polymorphic and functional analysis of bovine and water buffaloantiViralA勿ロgeneS
(ウシと水牛におけるウイ少ス抵抗性魃2遺伝子の多型および機能解析)
学位論文内容の要旨
感染症の中でインフルエンザウイルスのように家畜を介してヒトに感染し、生命を 脅かすとともに家畜の生産性にも影響を及ばすことが社会問題となっている。自然免 疫系は、それらウイルスの侵入を感知し排除するために生体が本来そなえているシス テムで、感染防御において重要な役割を果たしている。自然免疫系の中でも、インタ ーフェロン(IFN)によるウイルス感染防御システムは、解明が比較的進んでいる。IFN により発現が誘導される因子のーっに、Mxタンパク質がある。Mxは哺乳類、鳥類、
魚類などに幅広く存在し、おもにRNAウイルスに対して増殖抑制能カを持つ。また、
そ の 細 胞 内 で の 局 在 の 違い が、 機能的 差異 を生 ずるこ とも 報告 され ている 。 ウシに関しては現在までにMxl cDNAのクローニングと塩基配列が決定しており、
染色体上の位置も確認されている。また、ウシMxlタンパク質は、様々なウイルス対 して増殖抑制能カを持つことが明らかにされている。さらに、ウシ個体がウイルスに 感染しているかどうかを、MxlmRNAあるいはMxlタンパク質の発現量を利用して検査 できるという報告もある。ウシMxlタンパク質は、他の動物より品種問でアミノ酸配 列の保存性が高く、このことによルウシ進化過程においてMxl遺伝子が重要な機能を 果たしてきたことが示唆されている。しかし、もうーつのアイソフオームであるMx2 遺伝子については存在が確認されているにもかかわらず、多型および機能解析などの 報告は全く行われてない。そこで本研究は、ウシMx2の多型解析と抗ウイルス活性の 測定を行い、抗病性育種に役立てるための基礎的知見を得ることを目的とした。
最初 に、ウシ11品種由来16頭と水牛1頭由来のMx2cDNAをPCRにより増幅した。
PCR産物である2381bpの塩基配列を決定した結果、ウシ肋口翻訳領域において17箇 所の塩基置換が検出された。そのうちアミノ酸置換は、302と354番地の2箇所であ った。302番地において品種間でGlyとSerの多型が観察された。しかし、354番地 のアミノ酸変異はデータベースのみがIleで、本研究において調べた全ての個体は ―97―
Valで あ っ た 。 検 出さ れた 塩基 置換 によ り、 ウシMx2c DNAは8種 類のgenotypesに分 類 された 。以 上の 結果 によ り、 ウシMx2に はアミノ酸変異が検出されたが、変異数が きわめて少ないことから、Mxlと同様に構造上保存性の高いことが確認された。一方、
水 牛彪昭c DNAに おい て2400bpの塩基 配列 が決定され、ウシの配列と比較したところ 46箇所の 塩基 置換 と、 その うち12箇 所で アミノ酸置換が認められた。また、5 末端 には9bpの挿入変異も検出された。
次 に 、 ウ シMx2遺伝 子の 機能 解析 を行 った 。354番地 のア ミノ 酸がGlyのMx2c DNA とSerで あるMx2c DNA、お よぴ 水牛のMx2c DNAを3T3細 胞に 遺伝子 導入 して、組み換 え 水疱性 口内 炎ウ イル ス(VSV)を用い て感 染実験を行った。その結果、全ての遺伝子 導 入細胞 は、 コントロールと比ベウイルスの増殖を抑制した。したがって、ウシおよ び 水牛Mx2は 、抗 ウイ ルス 活性 を有す るこ とが明らかになった。このことは、げっ歯 類 以外の 哺乳 動物 でfまき わめ てまれ なこ とであり、ウシにおいては2種類のMx1およ ぴMx2ともに坑ウイルス活性を持つことが示された。
Mxタン パク 質には、その発現量によるウイルス抑制能カの違いも示唆されている。
Mx遺伝子 など のIFN誘 導遺 伝子 群のプ ロモ ーターには、シグナル伝達により転写を促 進 するた めの 配列 であ るIFN刺 激応答 配列 (エSRE)の存在が確認されている。近年、
ヒ ト 膨 凹 遺 伝 子 プロ モー ター ではISRE近傍 に存在 する1塩 基置 換が プロ モータ ー活 性 に大き く影 響し 、そ のこ ととC型肝 炎患 者のIFN投与 によ る治療 効果 との問に高い 相 関があ ると いう 報告 もな され てい る。 そこで、ウシMx2遺伝子プロモーター領域の 多 型にっ いて 検討 した 。ウ シMx2のプ ロモ ータ ー領 域を 確認 する ため に、5 RACEを 行 ないそ の産 物をシークエンスすることにより、転写開始点およぴプロモーター領域 を 同 定 し た 。 次 にウ シ5頭 のゲ ノムDNAからPCRで プロ モー ター 領域 を増 幅し、 シー ク エンス を行 なっ た。 その 結果 、19箇所 で塩 基置 換が 検出 された が、ISREなどの重 要 配列に は変 異は 検出 され なか った 。ま た、水牛のMx2のプロモーター領域の塩基配 列 を 決 定 し た と ころ 、ウ シと56箇 所の 塩基 置換と2箇 所の 挿入 変異 が認 められ た。
今 後、こ れら 塩基 置換 を示 したMx2遺 伝子 間でプロモーター活性に差異が検出される か検討する必要がある。
以 上 の よ う に 、 本研 究に おい てこ れま で全 く報告 のな かっ たウ シMx2遺 伝子に 多型 が存在し、それらがともに抗ウイルス活性を持つことを証明することができた。また、
水 牛にお いて も初 めてMx2遺伝 子にっ いて の知見を得ることができ、今後ウシおよび 水 牛 に 関 す る 抗 病 性 育 種 に こ れ ら 遺 伝 子 多 型 の 応 用 さ れ る こと が 期 待 さ れ る 。
学位論文審査の要旨 主査 教授 渡 辺智正 副査 教授 服 部昭仁 副査 准教授 山田 豊
学位論文題名
Polymorphic and functional analysis of bovine and water buffaloantiViralA勿ぼgeneS
(ウシと水牛におけるウイルス抵抗性舷2遺伝子の多型および機能解析)
本 論文 は3章か らな り、図11、表4、引用文献66を含む、総頁数65の英文論文で あり、別に1編の参考論文が添えられている。
感染症の中でインフルエンザウイルスのように家畜を介してヒトに感染し、生命を 脅かすとともに家畜の生産性にも影響を及ばすことが社会問題となっている。自然免 疫系は、それらウイルスの侵入を感知し排除するために生体が本来そなえているシス テムである。自然免疫系の中でも、インターフェロン(IFN)によるウイルス感染防御 システムは、解明が比較的進んでいる。IFNにより発現が誘導されるーっの因子に、
Mxタンパク質がある。Mxは哺乳類、鳥類、魚類などに幅広く存在し、主にRNAウイ ルスに対して増殖抑制能カを持っ。また、その細胞内での局在の違いが、機能的差異 を生ずることも報告されている。
ウシに関しては現在までにMxl cDNAのクローニングと塩基配列が決定しており、
染色体上の位置も確認されている。また、ウシMxlタンパク質は、様々なウイルスに 対して増殖抑制能カを持つことが明らかにされている。さらに、ウシ個体がウイルス に感染しているかどうかを、MxlmRNAあるいはMxlタンパク質の発現量を利用して検 査できるという報告もある。しかし、もうーつのアイソフオームであるMx2について は存在が確認されているにもかかわらず、多型および機能解析などの報告は全く行わ れてない。そこで本研究では、ウシMx2の多型解析と抗ウイルス活性の測定を行い、
将 来 抗 病 性 育 種 に 役 立 て る た め の 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た 。 最初に、ウシ11品種由来16頭と水牛1頭由来のMx2cDNAをPCRにより増幅した。
PCR産物である2381bpの塩基配列を決定した結果、ウシ舷2翻訳領域において17箇
所の塩基置換が検出された。そのうちアミノ酸置換は、302と354番地の2箇所であ った。302番地において品種間でGlyとSerの多型が観察された。しかし、354番地 のアミノ酸変異はデータベースのみがIleで、本研究において調べた全ての個体は Valであった。一方、水牛Mx2c DNAにおいて2400bpの塩基配列が決定されたが、ウ シの配列と比較したところ46塩基置換が検出され、そのうち12箇所でアミノ酸置換 が認められた。以上の結果により、ウシMx2にはアミノ酸変異が検出されたが、置換 数がきわめて少ないことから、Mxlと同様に構造上保存性の高いことが確認された。
次に、ウシMx2遺伝子の機能解析を行った。354番地のアミノ酸がGlyのMx2c DNA とSerであるMx2c DNA、および水牛のMx2c DNAを3T3細胞に遺伝子導入して、組み換 え水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いて感染実験を行った。その結果、全ての遺伝子 導入細胞は、コントロールと比ベウイルスの増殖を抑制した。したがって、ウシおよ び水牛Mx2は、抗ウイルス活性を有することが明らかになった。このことは、げっ歯 類以外の哺乳動物ではきわめてまれに、ウシにおいては2種類のMx1およびMx2とも に坑ウイルス活性を持つことが示された。
Mxタンパク質には、その発現量によるウイルス抑制能カの違いも示唆されている。
Mx遺伝子などのIFN誘導遺伝子群のプロモーターには、シグナル伝達により転写を促 進するための配列であるIFN刺激応答配列(ISRE)の存在が確認されている。近年、
ヒト彪幽遺伝子プロモーターではエSRE近傍に存在する1塩基置換がプロモーター活 性に大きく影響し、そのこととC型肝炎患者のIFN投与による治療効果との間に高い 相関があるという報告もなされている。そこで、ウシMx2遺伝子プロモーター領域の 多型につ いて検討した。ウシ5品種由来9頭のゲノムDNAからPCRでプロモーター領 域を増幅し、シークエンスを行なった。その結果、19箇所で塩基置換が検出されたが、
ISREなどの重要配列には変異は検出きれなかった。また、水牛の膨凹のプロモーター 領域の塩基配列を決定したところ、ウシと56箇所の塩基置換と2箇所の挿入変異が 認められた。今後これら塩基置換を示した膨ロ遺伝子間でプロモーター活性に差異が 検出されることが待たれる。
以上のように、本研究はこれまで全く報告のなかったウシのMx2遺伝子に多型が存 在し、それらが抗ウイルス活性を持つことを証明することができた。また、水牛にお いても初めてMx2遺伝子についての知見を得ることができ、今後ウシおよび水牛に関 す る 抗 病 性 育 種 に こ れ ら の 遺 伝 子 多 型 の 応 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 よって審査 委員一同は、フセインアハメドイルフセインバビケールが博士(農 学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。