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北海道地域に適応した食用きのこの品種育成と      栽培技術の改良

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 原 田 学 位 論 文 題 名

北海道地域に適応した食用きのこの品種育成と      栽培技術の改良

学位論文内容の要旨

  日本におけるきのこ産業 は,特用林産物として主要なものであり,商業生産が行われている。国内 では,シイタケLentinula eあね,工ノキタケFb所mH´fMw′ fゆ館,ブナシメジめpり轡6″鱈朋0陀船 の生産量が多く,北海道に おいても同様な傾向である。 特にブナシメジは,最近の10年間で生産量 が急増し,全国の消費者に 受け入れられた比較的新しいきのニであり,今後も継続した需要が見込め る。タモギタケPセ釘mr恥c0朋Hc印ぬPvar.c加伽啣′Pロmsは国内生産量の90%以上を占める北海道に 特化したきのこであると同 時に,最近では抗腫瘍作用, 血圧降下作用および血糖値 抑制作用等の生 体調節機能が注目されつっ ある。本研究は,これら2種 類のきのこについて,北海道地域に適応した 道産品種の実用性を高める ことを目的とした。

  道内では,タモギタケの生産を開始してから平成7年まで71−l(Pc 71‑1)や76‑5 (Pc:76‑5)といった 品種が使用されてきた。これらに代わる品種として「エルム・マッシュ」の開発および育成をした。まず道 産の新品種として開発したタモギタケ品種「工ルム・マッシュ」について,既存品種と比較しながら培養 および栽培特性を解明した。「エルム・マッシュ」は,既存品種である7111や76‑5に比べて菌糸蔓延速 度が早く,培地のほば全体 に菌糸が蔓延してから,子実 体原基が形成することから,以前に比べて培 養ビンに装着したキャップに,原基が当たり押しっぶされ子実体収量の低下が起こる確率は低くなり,

管理しやすくなった。また ,栄養材の種類に依存して子 実体の形態が変化しやすいといった不安定さ を抱えていた76−5であるが,「エルム.マッシュ」は温度や炭酸ガス濃度といった環境要因により変形 することがあるものの,一 定の条件で比較した場合に, 外観評価として低い漏斗形子実体の発生率は 減少した。

道内で入手しやすいトドマ ツやカラマツは,北海道にお ける蓄積量の多い樹種であるが,「エルム・

マッシュ」の栽培にはカラマツが広葉樹であるダケカンバのおが粉に匹敵するほど適していることを示 した。しかも,フスマによる明らかな増収効果や栽培期間の短縮効果があり,Pc 76‑5のように子実体が 漏斗形になるような形態の不安定さは見られなかった。一方,トドマツはダケカンバやカラマツに比べ て,明らかに生産性の低下が認められ,栄養材の種類による生産性の改善がみられなかったことから,

菌糸成長や子実体形成に対するマイナス作用が大きいことが示唆された。

  次に,「エルム・マッシュ」の栽培に適した広葉樹おが粉の代替材料を検索し,非木質系材料である バガス,ビートパルプおよびクマイザサに着目した。このうち,ビー卜パルプやクマイザサは顕著な増収 効果が示された。各材料の 元素分析結果から,ビートパ ルプはおが粉の約8倍の窒素を含み,クマイ ザサ 葉部 は約11倍 の 窒素 を含 んで い た。 米ぬ かが おが 粉の約12 ‑13倍 の窒素含量であったことを 考慮すると,顕著な増収効 果が確認された材料は窒素含 量が高いことが特徴であった。また,子実体 原基 形成日数に ついて培地水分と米ぬか添 加率を変数とした重回帰分析 において,いずれの材料を

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用い た場合 にも高 い相関 が得ら れた。 子実体 原基形成 を含む 生殖成長は,培地組成により異なる傾 向を示したものの,栄養材の添加率や培地水分により一定の傾向があることから,生殖成長をコントロ ールすることが十分に可能であることを示した。

  一方で,タモギタケと同様に道産の新品種として開発したブナシメジ品種「マーブレ88‑8」について,

既存 品種と 比較しながら培養および栽培特性を解明した。タモギタケの栽培期間が20門前後とかなり 短いが,ブナシメジの標準的な栽培期間は,110目前後である。これは,ブナシメジの特性として,高 品質 かつ高 収量の子実体を得るために,90日程度の培養・熟成工程を必要とするためである。「マー ブレ88‑8」は,既存の品種より短期間で栽培が可能であることを見出した。基本培地を川いて栽培した 結果 ,既存 品種が予想通り90日問の培養・熟成工程を要するのに対して,「マーブレ88‑8」は50 ‑60 口間の培養・熟成工程で十分であることを示した。そして,広葉樹のみならず針葉樹である卜ドマツの おが 粉にお ける栽 培試験 により ,散水 堆積処 理をした おが粉 であれば広葉樹と同様な栽培特性を示 した 。すな わち,生産性低下を招かなかったことは,針葉樹おが粉の積極的な使用が可能であり,実 生産用品種として有利な特性を備えていることが確認された。

次に 増収効 果の高 い栄養 材を検 索する ために ,「マー ブレ88‑8」を50日間培養後に菌かき操作を行 い栽 培した 結果, 増収効 果とと もに品質保持効果がある材料として4種類の栄養材を選抜した。大豆 皮 等 の3種 類は, 米ぬか に対する 置換率 に応じ た増収 効果が 示され た。ウ イスキ 一製造副 産物の1 種類 は米ぬ かに対 して25% 置換し ただけ で,50% の増収 効果を 示し4種 類の栄 養材で最大の増収効 果を 示した 。最大の増収効果を示したウイスキー製造副産物は,カルシウム化合物を主体とする粗灰 分含 量の高 さが特 徴であ った。 そこで ,CaC03を主 成分と する材料3種類を用いて栽培した結果,培 地中 の菌糸 蔓延が 早くな る栄養 成長の 促進作 用,なら びに菌 かき操作を行ってから収穫までの日数 が早 くなる 生殖成長の促進作用が認められ,これらの材料が菌糸活性剤の一種であることを示した。

同時 に,培 地重量 のO.5〜4%とい った少量の添加で10 ‑70%の高い増収効果が得られ,「マーブレ 88‑8」の生産における有用性を示した。

  さらに,培地基材の混合効果を検討するために,おが粉の代替材料としてコーンコブ,コットンハル およびソバガラをおが粉に対して,20%置換することにより「マーブレ88−8」の栽培を行った。いずれの 材料 におい ても,10%を超える増収効果が確認され,おが粉の代替材料としての有用性を示した。そ こで,これまでに効果を確認した材料を組み合せて,より実用性の高い培地を作製することを試みたと ころ ,培地 基材2種 類(お が粉と コーンコブ),栄養材2種類(米ぬかと大豆皮),菌糸活性剤1種類

(オルガKl)を適正な比率で混合することにより,収穫時期の均一性を高めた上で栽培期間を短縮し,

安定した高い増収性を達成した。

  現状ではきのこの品質は外観による評価が主体であるものの,きのこの食味特性を含めた食品とし ての質的評価も重要である。特にブナシメジは,苦味を感じ嫌悪感を持つ人もいることから,苦味の無 い品種や栽培技術が求められている。本研究において,ブナシメジの官能評価により,明らかな品種 問差を確認することができた。そして,旨味および甘味の強度と総合評価には正の相関,苦味の強度 と総合評価には負の相関が示された。評価の高い子実体は,アミノ酸含量が多く,旨味に寄与するア スパラギン酸やグルタミン酸,および甘味に寄与するアラニンが多いことが特徴であった。対照的に,

評価の低い子実体は,アミノ酸含量が低いことが特徴として示された。ブナシメジの苦味は総合評価 の低下,しいては商品性の低下を招くことから,さらなる食味の向上を目指した品種開発あるいは栽培 技術が必要である。そして,他の栽培きのこにも食味評価を導入し,それぞれの食昧特性を明らかに す る こ と に よ り , き の こ の 再 評 価 な ら び に 需 要 の 喚 起 に っ な が る こ と が 期 待 さ れ る . 本研究の 過程で ,それ ぞれの 品種は 実生産 に使用され,それぞれの施設で改良を加えながら実用

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    寺 沢    実 副査    教 授    矢 島    崇 副査   助教授   小島康夫 副査   助教授   玉井   裕

学 位 論 文 題 名

北海道地域に適応した食用きのこの品種育成と      栽培技術の改良

本 論文 は、150ぺ ージ から なり 、35図、45表、 引用 論文107編を 含む邦文論文である。

タ モ ギ タ ケ と ブ ナ シ メ ジ の 育 種 と 人 工 栽 培 技 術 の 改 良 に 関 す る 研 究 論 文 で あ る 。

  国内 にお ける きの こ産 業は ,特 用 林産 物と して 主要 なものであり,商業生産が行われ て いる 。ブ ナシ メジ は, 最近 の10年 間で 生産 量が 急増 し,全国の消費者に受け入れられ た 比較 的新 しい きの こで あり ,今 後 も継 続し た需 要が 見込める。タモギタケは国内生産 量 の90%以 上を 占め る北 海道 に特 化 した きの こで ある と同時に,最近では抗腫瘍作用,

血 圧降 下作 用お よび 血糖 値抑 制作 用 等の 生体 調節 機能 が注目されつっある。本研究は,

こ れら2種類 のき のこ につ いて ,北 海道 地域 に適 応し た道 産品 種 の実 用性 を高 めること を 目的 とし た。

  まず道産の新品種 として品種改良したタモギタケ品種「エルム・マッシュ 」について,

培 養お よ び栽 培特 性を 解明 した。「エルム・マ ッシュ」は,既存品種である71‑1や76一5 に 比べ て 菌糸 蔓延 速度 が早 く, 培地 のほ ば全 体に 菌糸 が蔓延してから,子 実体原基が形 成 する 確 率が 高く なっ た。 また ,栄 養材 の種 類に 依存 して子実体の形態が 変化する不安 定 さを 抱 えて いた7615と一 定の 条件 で比 較し て, 「エ ルム・マッシュ」は 外観評価とし て 低い 漏 斗形 子実 体の 発生 率が 減少 した 。

  「エ ル ム・ マッ シュ 」の 栽培 には ,北 海道 にお ける 蓄積量の多い樹種で あるカラマツ が ダケ カ ンバ のお が粉 に匹 敵す るほ ど適 して いる こと を示した。しかも, フスマによる 明 らか な 増収 効果 や栽 培期 間の短縮効果があり ,76−5のように子実体が漏 斗形になる形 態 の不 安 定さ は見 られ なか った 。

  次に,「エルム. マッシュ」の栽培に適した広葉樹おが粉の代替材料を検 索し,非木質 系 材料 で ある バガ ス, ビー トノVレプおよぴクマイザサに着目した。このう ち,ビートパ ル プや ク マイ ザサ は顕 著な 増収 効果 が示 され た。 各材 料の元素分析結果か ら,顕著な増

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収効果が確認されたビートパルプやクマイザサ葉部は窒素含量が高いことが明らかにな った。また,培地水分と米ぬか添ルロ率により子実体原基形成を含めた生殖成長をコント ロールすることが十分に可能であることを示した。

   道産品種として開発したブナシメジ品種「マーブレ88‑8 」について,培養および栽培 特性を解明した。ブナシメジの標準的な栽培期間は,培養に80 から90 日、発茸に30 日前後と計110 から120 と長期間を要する。「マーブレ88 ―8 」はその培養期間を50 〜 60 日問と約10 月の短縮に成功した。また,散水堆積処理をしたトドマツのおが屑であれ ぱ広葉樹と同等な栽培特性を示すことを明らかにした。

   次に「マーブレ88 ー8 」に適した増収効果の高い栄養材を検索し,4 種の栄養材につい て米ぬかに対する各置換率の増収効果を明らかにした。また,CaC03 を主成分とする材料 3 種類の資材の利用が,培地中の菌糸蔓延を促進する栄養成長の促進作用,ならびに菌 かき操作を行ってから収穫までの日数が短くなる生殖成長の促進作用などを示すことが 認められた。これは、培地重量の 0 .5 〜4 %といった少量の添加で10‑70% の高い増収効果 が得られた。さらに,培地基材の混合効果を検討するために,おが粉の代替材料として コーンコブ,コットンノ丶ルおよびソバガラをそれぞれ混合し栽培を行った結果,10 %を 超える増収効果が確認され,その有用性を示した。そこで,より実用性の高い培地を作 製することを試みたところ,合計5 種類の材料を適正な比率で混合することにより,収 穫時期の均一性を高めた上で栽培期間を短縮し,安定した高い増収性を達成した。

   現状ではきのこの品質は外観評価が主体であるものの,きのこの食昧特性を含めた評 価も重要である。特にブナシメジは,苦味を感じ嫌悪感を持つ人もいること,から,客観 的な評価をした上で,苦味の無い品種や栽培技術を開発することが求められている。本 研究において,ブナシメジの官能評価から,明らかな品種間差を確認することができた。

そして,旨味および甘味の強度と総合評価には正の相関,苦味の強度と総合評価には負 の相関が示された。評価の高い子実体は,アミノ酸含量が多く,旨味に寄与するアスパ ラギン酸やグルタミン酸,および甘味に寄与するアラニンが多いことが特徴であった。

   本研究の過程でそれぞれの品種は,各施設で改良を加えながら実用化された。これに より,本研究の目的が少なからず達成された。

   以上、タモギタケ及ぴブナシメジの育種・栽培技術の開発により、それらの安定した 増収を図ることに成功し、北海道経済の発展に貢献した。

   よって、審査員一同は、原田陽が、博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有

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