自然科学班報告(1)
北海道北部の森林流域における生物地球化学プロセスモデルの適用
柴田英昭(北海道大学)・大手信人(東京大学)・佐藤冬樹(北海道大学)
・
勝山正則(総合地球環 境学研究所)・吉岡崇仁(京都大学)森林生態系の生物地球化学プロセスは時空間的に大きな変動を示すことから、プロセ スモデ
、
ルを用いたシミュレーション研究は、さまざまな自然および人為撹乱下における生 物一非生物相互作用系を含む物質循環過程を理解する上で非常に有用である。
実測値と予 測値との比較に基づきながら解析を進めることで、フィールドでの実測の難しい生態系パ ラメーターの推定や、環境変化に対する生物地球化学プロセスの時系列変化を将来予測す ることが可能である。
とりわけ、生態系の窒素や炭素や水の動態は密接な相互関係のもと に変動する傾向が知られているので、地球温暖化に対する森林生態系の炭素固定機能や、大気汚染の増大に対する生態系の水質保全機能、森林伐採に伴う阿川水質変化などを解明 するためには、生態系内の炭素 ・窒素 ・水リンケージを含んだ、モデルを使用することが重 要である
。 PnET‑CN
モデ、
/レ(Ab e r e t aL 1997
;図‑ 1 )
は森林生態系の水、炭素、窒素の相互 作用を予測するためのシミュレーションモデルで、
ある。
葉の窒素含有率と最大光合成速度 との関係に基づいた樹木生理過程を中心として構成されているPnE T ‑ CN
モデルは、月単位 での純一次生産量や土壌窒素無機化速度、土壌からの窒素溶脱速度を予測することができ る。
本研究では北海道北部に位置する北海道大学雨龍研究林を対象に
PnET
モデ、ノレを適用し、その有用性や問題点、改善点について検討を行った。雨龍研究林の林相は天然の冷温帯針 広混交林であり、部分的に択伐施業やごくまれな台風被害の影響を受けている。気候は冷 温帯から亜寒帯の移行帯に位置しており、年間降水量は約
1̲400mm
、年平均気温2 ̲ 5
0C
で ある。
また、年降水量のほぼ半分は降雪として供給されている。
雨龍研究林内の実験流域において、月別の気候データ(日最高気温、日最低気温、降水量、
光合成有効放射量
( PAR))
および大気窒素沈着( N0 3 .
およびNH 4 + )
を入力変数としてPnET
モ デルを用いた河川N0 3
・濃度のシミュレーションを行った。2 0 0 3 ' " ' ‑ ' 2 0 0 4年にかけて実測さ
れた河川水N0 3
・濃度は、融雪出水時にピークが認められ、月別濃度平均値は約1 ' " ' ‑ ' 1 2 μ
mol L "
1の間で変動していた。PnE T ‑ CN
モデルは実測の河川│水N0 3 .
濃度の季節変動をおおむね予測することができたものの、積雪期間はやや過大評価を、融雪時の濃度ピーク後に はやや過小評価をする傾向があった。大気窒素沈着の積雪への蓄積と放出を組み込んだ修 正
PnET
モデ、ルを用いると、河川│水N0 3 .
濃度予測が改善され、実測値の季節変化を有意に 説明することができた(図‑ 2
,P<O.O
l)。
また、PnET
モデ、ルを用いて、森林伐採が河川│水N0 3
・濃度変化に及ぼす影響について予測したところ、伐採後の濃度上昇レベルや、伐採前 のパックグラウンド濃度への回復時間は森林伐採の土地面積割合に大きく影響されること が示された。さらに、河川N0 3 .
濃度の予測値と実測値の季節変化を比較すると、土壌から 河川へのN0 3 .
流出に時間的な遅れがあることが示唆され、土壌から河川にかけての水文プロセスを考慮に入れたモデルの修正が必要で、あると考えられた。
文献
A b e r , J . O . , S . V . O l l i n g e r , a n d C . T . Or i s c o l l ( 1 9 9 7 ) : Modeling n i t r o g e n s a t u r a t i o n i n f o r e s t e c o s y s t e m s i n
r e s p o n s e t o l a n d u s e a n d a t m o s p h e r i c d e p o s i t i o n . Eco l o g i c a l M o d e l l i n g , 1 0 1 : 6 1
・7 8 .
自然科学班報告(1)
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炭素/窒素 1 1 水
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