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胃 癌に お け る

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 中 村 雄 一

学 位 論 文 題 名

胃 癌に お け る RCAS1 お よ び FasL の発現と 腫瘍内浸潤リンパ球との関連に関する研究

学位論文内容の要旨

【背景と目的】新規癌関連抗原である、receptor‑binding cancer antigen expressed on SiSo cells (RCASl)は 、 ヒ ト 子 宮 腺 癌 細 胞 株(SiSo)を 免 疫 原 と し て作 成 さ れ たマ ウ ス モ ノク ロ ― ナ ル 抗 体(22‑1‑1抗 体 ) に よ り 認 識 され る 膜 抗 原分 子 で あ る。RCAS1は子 宮 癌 、 卵巣 癌 、 肺 癌 、 大 腸 癌 等 の ヒ ト 癌 組 織 に 高 頻 度 に 発 現 し 、 活 性 化T細 胞 、B細 胞 、NK細 胞 と い っ た 各 種 免疫 細 胞 に アポ ト ― シ スを 誘 導 す るこ と か ら 、癌 細 胞 を 免疫 監 視機構 から回避 させる 役 割 を 担 っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 ま た 、 胃 癌組 織 に お けるRCAS1の発 現 に 関 し て は、 細 胞 質 内の 分 布 様 式の 差 異 が 腫瘍 の 進 展 に関 連 し て いる と の報告 があるが 、腫瘍 内 浸 潤 リ ン パ 球CnLs)の ア ポ ト ― シ ス と の 関 連 性 に つ い て の 詳 細 な 報 告 は な い 。   ― 方 、Fasリ ガ ン ド(FasL)は 細 胞 表 面 レ セ プ タ ー で あ るApo‑1/CD95を 発 現 して い る り ン パ 系細 胞 に 対 しア ポ ト ー シス に よ る 細胞 死 を 惹 起す る 。FasLに より誘 導され るアポ トー シ ス が 免 疫 寛容 の 獲 得 、T細胞 の 活 性 化、 お よ び 免疫 反 応 の 完了 な ど の 役割 を 通 し て免 疫 機 構 の制 御 に 貢 献し ていると されて いる。 各種の ヒト腫 瘍組織 におい てm vivoにお けるFasL の 発 現 が 報 告 さ れ て お り 、 食 道 癌 お よび 胃 癌 で はFasLの発 現 がflLsの アポ ト ― シ スと 関 連していることが示されてきた。

  本 研 究 で は 胃 癌 お よ び 前 癌 病 変 に お け るRCAS1お よ びFasLの 発 現 を検 討 し 癌 の進 展 や 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 関 連 性 に つ い て 検 討 し た 。 更 に 胃癌 に お け るRCAS1発 現とTILsの アポトーシスの関連性についても併せて評価した。

【 対 象 と 方 法 】 胃 癌54例 、 胃 腺 腫5例 、 腸 上 皮 化 生10例 、 正 常 胃 粘 膜5例 を 含 む 組 織標 本 を 対 象 と し た 。 胃 癌 お よ び 胃 腺 腫 の組 織 標 本 は1997年か ら2000年 の 問に 北 海 道 大学 医 学 部 附属 病 院 に て施 行 さ れ た外 科 的 ま たは 内 視 鏡 的切 除 術 に より 、 また正 常胃粘膜 および 腸 上 皮 化 生 の標 本 は 同 期間 に 内 視 鏡的 生 検 に より 得 た も のを 使 用 し た。RCAS1、FasLの 発 現 お よ び 腫 瘍 内 浸 潤 リ ン パ 球 の 程 度 につ い て 、 それ ぞ れ22‑1‑1抗 体 、 抗FasL抗 体お よ び 抗CD45抗 体 を 用 い て 免 疫 組 織 学 的 に 検 討 し 、 ま た ア ポ ト ー シ ス の 検 出 に はTUNEL法 を 用 い た 。RCAS1お よ びFasLの 陽 性 細 胞 率 は 、 各 切 片 の 腫 瘍 細胞1000個 中 の 陽 性反 応 を 示

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した 腫瘍細胞の割合と定義し、発現率のヒストグラムより反応細胞率5%および20%を各々 のカ ットオフ 値として 陽性群 と陰性群 に分類 し、RCAS1およびFasLの発現と臨床病理学 的因 子との関 連を検討 した。 また胃癌 組織のRCAS1陽性 部と陰性部周囲におけるTILsの 浸潤 およびそ のアポト ―シス の定量化に、各々有核細胞数2000個中のCD45陽性細胞数の 割 合 お よ びCD45陽 性 細 胞500個 中 のCD45/TUNEL二 重 陽 性 細 胞 の 割 合 を 用 い た 。

【 結果 】 胃 癌54例 中52例(962) におい てRCAS1の 発現を 、47例(87% )にお いてFasL の発現を認めた。RくニAS1およびFasL陽性例と陰性例との間に臨床病理学的因子の有意な 差異 を認めな かった。 胃癌に おけるR(ニAS1の発現パタ―ンは2通りに分けられ、細胞質 内の 腺腔側に極性を持って顆粒状に染色されるものをPパタ―ン、細胞質内および細胞膜 上に びまん性 かつ顆粒 状に染 色される ものをDパタ ―ンとした。分化型胃癌の39例中19 例(49c70)がPパター ンを示し 、未分化型胃癌の13例中全例がDパターンを示した。RCAS1 陽性 の胃腺腫 および腸 上皮化 生粘膜は全例Pパタ―ンであった。Dパターンを示す胃癌症 例はPパターンを示す胃癌症例と比較し病変が大きくOく0.01)、粘膜下層以深への浸潤が 多くOく0.01)、またりンパ節転移を多く認めたQく0.05)。Cox比例ハザ―ド解析ではこれ らの 臨床因子 のうち組 織型が 最も重要 な因子 であった 。同―切片内でRCAS1陽性部と陰 性部 に明確に 分離可能 であっ た胃癌10症 例の解 析では、RCAS1陽性部においてTILsの数 は減少しOく0.01)、そのアポトーシスの割合は増加していたOく0.01)°―方、FasLの発現 とTII一Sとの関連性については、今回検討した胃癌54症例全てにおいて癌胞巣内でFasL陽 性 細 胞 と 陰 性 細 胞 が 混 在 し て お りRCAS1と 同 様 の 検 討 は 不 可 能 で あ っ た 。

【考 察】本研 究ではRCAS1の発 現が胃癌 および 前癌病変 において高頻度にみられること を示 した。胃 癌におけ る染色 パタ―ンはPパタ―ンとDパタ―ンに分けられ、染色パタ―

ンの 差異は組織型と最も関連していた。RCAS1は分化型胃癌と未分化型胃癌との間の生物 学的あるいは病理発生学的特性の差異に関係している可能性が示唆され、R(ニAS1の分布の 差異が腫瘍の悪性化、進行あるいは免疫細胞の攻撃などの機能の差異に関連しているもの と考 えられた ふまた本 研究で はTILsの浸潤に対するR(ニAS1発現の影響を解析し、RCAS1 の発現がTII一sの浸潤の減少およびTILsのアポト―シスの増加と有意に相関することを示 した 。腫瘍細胞におけるR(ニAS1の発現は、TILsのアポト―シスを誘導することによって 腫 瘍 の 宿 主 免 疫 監 視 機 構 か ら の 回 避 に 寄 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

【結 語】胃癌 においてRCAS1の 発現が腫 瘍の宿 主免疫監 視機構からの回避に寄与してい ることが示唆された。

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学位論文審査の要旨 主査   教授

副査   教授 副査   教授 副査   教授

西 村 正 治 長 嶋 和 郎 浅 香 正 博 秋 田 弘 俊

学 位 論 文 題 名

胃 癌に お ける RCAS1 お よび FasL の発現と 腫瘍内浸潤リンパ球との関連に関する研究

  新 規 癌関 連抗 原で あるRCAS1は 子 宮癌 、卵 巣癌 、肺 癌 、大 腸癌 等の ヒ ト癌 組織 に高 頻度 に 発現 し、 各種 免 疫細 胞にアポトーシスを誘導 することから癌細胞を免疫 監視機構から回避させ る役 割 を担 って いる 可能 性 が示 唆さ れて い る。 また 、胃 癌組 織 にお けるRCAS1の 発現 に関 し ては 、細 胞質 内 の分 布様式の差異が腫瘍の進 展に関連しているとの報告 があるが、腫瘍内浸潤 リン バ球(TILs)のア ポト ーシ スと の 関連 性に ついての詳細な報告はなぃ 。一方、Fasリガンド (FasL)は 細胞 表 面レ セプ ター であ るApo‑l/CD95を 発 現し てい るり ンパ 球系細胞に対しアポト ーシ スに よる 細 胞死 を惹 起し 、食 道 癌お よび 胃癌 で はFasLの 発現 がTILsのアポトーシスと関 連し て いる こと が示 され て いる 。そ こで 胃 癌お よぴ 前癌 病変 に おけ るRCAS1およ ぴFasLの 発 現を 解析 し、 癌 の進 展や臨床病理学的因子と の関連性について検討した 。さらに胃癌における RCAS1発 現 とTILsの ア ポ ト ー シ ス と の 関 連 性 に つ い て も併 せて 評価 し た。 胃癌54例 中52例 (96% ) に お い てRCAS1の 発 現を 、47例(87%) にお いてFasLの 発現 を認 めた 。RCASIおよ び FasL陽性 例と 陰 性例 との 間に 臨床 病 理学 的因 子の 有 意な 差異 を認 めな かった。胃癌における RCAS1の 発現 バタ ーン は 二通 りに 分け られ 、 細胞質内の腺腔側に極性を 持って顆粒状に染色さ れる もの をPバタ ーン 、 細胞 質内 およ ぴ細 胞 膜上 にび まん 性か つ 顆粒状 に染色されるものをD バ タ ー ン と し た 。 分 化 型 胃 癌の39例中19例(49%) がPパタ ーン を示 し 、未 分化 型胃 癌の13 例 全 例 がDパ タ ー ン を 示 し た 。RCAS1陽 性 の 胃 腺 腫 およ び腸 上 皮化 生粘 膜は 全例Pパ ター ン であった。Dバターンを示 す胃癌症例はPバターンを示す胃癌症例に比し病変が大きくQく0.01)ヽ 粘膜下層以深への浸潤が 多く(pく0.01)、またりンパ 節転移を多く認めたQく0.05)。Cox比例ハ ザ ー ド 解 析 で は こ れ ら の 臨 床因 子 のう ち組 織型 が最 も 重要 な因 子で あ った 。同 一切 片内 で RCAS1陽 性 部 と 陰 性 部 に 明 確に 分離 可能 で あっ た胃 癌10症例 の 解析 では 、RCAS1陽性 部に お

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いてTILsの数は減少しQく0.01)、そのアポトーシスの割合は増加していたQく0.01)。一方、FasL の発現とTILsとの関連性については、今回検討した胃癌54症例全てにおいて癌胞巣内でFasL 陽性細胞と陰性細胞が混在しておりRCAS1と同様の検討は不可能であった。以上よりRCASI が分化型胃癌と未分化型胃癌との間の生物学的あるいは病理発生学的特性の差異に関係してい る可能性が示唆され、RCAS1の分布の差異が腫瘍の悪性化、進展あるいは免疫担当細胞への攻 撃などの機能の差異に関連しているものと考えられた。またRCAS1の発現はTILsの浸潤の減 少およぴTILsのアポトーシスの増加と有意に相関しており、腫瘍細胞におけるRCAS1の発現 はTILsのアボトーシスを誘導することにより宿主免疫監視機構からの回避に一部寄与すること が示された。よってRCAS1からTILsを防御することが将来有用な治療戦略となり得るものと 考えられた。

  審査にあたり、副査長嶋教授から1)正常胃粘膜におけるRCAS1の役割について、2)生検 組織での胃癌におけるRCAS1染色の実用性について、3)RCAS1により誘導されるりンパ球の アポトーシスの経路について、副査浅香教授から1)RCAS1の正常胃粘膜と胃癌組織での染色 性について、2)他の正常組織におけるRCAS1の染色性について、3)胃癌におけるRCAS1の 染色パターンと組織型およぴ深達度との関連についての質問があった。次いで主査西村教授か ら1)癌関連抗原以外のRCAS1の機能について、2)RCAS1およぴFasLの陽性率のカットオフ 値について、3)リンバ球とそのアボトーシスの評価方法についての質問があった。また副査秋 田教授から文書にて1)正常胃粘膜に発現するRCAS1のりンバ球に対するアポトーシスの誘導、

2) RCAS1受容体またはそれをコードする遺伝子およぴ下流の情報伝達シグナル、3)RCAS1研 究の今後の展望および将来の応用についての質問があった。申請者はこれらの質問に対して自 験データと文献を引用して概ね適切に解答した。

  この論文は、RCAS1の胃癌における悪性化および進展の有用なマーカーとしての可能性を示 した点、またRCAS1の胃癌における宿主免疫監視機構からの回避への関与を証明した点で高 く評価され、今後広く臨床応用されることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分 な資格を有するものと判定した。

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参照

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