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アンチセンス法を指向した諸性質の解析 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 伊 藤 高 範

学 位 論 文 題 名

5 ー (N 一 アミノヘ キシル) カルノヾモイル‑2 ‑O − メチルウリジンを含むオリゴヌクレオチドの合成と

アンチセンス法を指向した諸性質の解析 学位論文内容の要旨

近 年 、難 治 性 疾 患 に対 す る 新 し い試 み と し て 、遺 伝 子 治 療 法 が注目 されて いる。 対象と なる 先天性 疾患 やウ ィルス 疾患、 末期癌 など は、い ずれも 発症に 遺伝子 発現 が深く 関与し ている ことが知られている。中で も ア ンチ セ ン ス 法は 病因と なる遺 伝子 配列が 既知の 時、そ れに 対する 薬剤を 論理的 に設計 でき ること から 注目を集めている。

1 ,新規アンチセンス分子の設計と合成

本研 究では アンチ センス法を指向した新規オリゴヌクレオチドとして、5‑(N‑ アミノヘキシル)カルバモイル基 および2 ‐〇−メチル基を導入したウリジン誘導体(NUm ユニット)を含むオリゴヌクレオチド(NUm オリゴマー)を 合成 した。 途中得 られた 合成 中間体 のNMR カップ リング 定数 よルヌ クレオ シド糖 部の立 体配 座を調 べたとニ ろ 2 ー 〇 ‐ メ チ ル 基 の 導 入 に よ り 3 ‑endo 型 配 座 を 優 先 し て と っ て い る ニ と が 判 っ た 。 2 .NUm オリゴマー/RNA ニ本鎖の熱力学的安定性

   次 に RNA に対 す る 親 和 性を 二 本 鎖 の 50 % 融解温 度(T …値 )の測 定より 調べ た。そ の結果 、NUm オリゴ マ ー は 修 飾 体 残 基 の 導 入 数 が 2‑5 個 の 時 に 修 飾体 導 入 数 の 増加 に 伴 っ て ニ本 鎖 が 安 定 化す る 傾 向 が 見 ら れた(約2 ℃/修飾体)。一方、2 ‐〇.メヂル基を持たない5 ー(N‑ アミノヘキシル)カルバモイルウリジン(NU ユ ニツ 卜)を 含むNU オ リゴ マーと RNA と の二本 鎖のT ー値 測定を 行っ たとこ ろ、同 様の傾 向を 示した 。そこで5 位 末 端 ア ミ ノ 基 が RNA と の ニ 本 鎖 形 成 に 及 ぼす 効 果 を 調 ぺる た め 、 NUm オ リ ゴ マ ー/RNA ニ本 鎖 の Tn1 値 に 対 する 塩 濃 度 の影 響を調 べた。 する と5 位 置換 基の導 入によ り、塩 濃度 のT ー 値に 与える 影響が 減少し て いる ことが 判った 。この こと からNU ー オリゴ マー /RNA 二本鎖 の安 定性に 5 位 末端ア ミノ基 の静電 的効 果が大 き な 影響 を 与 え てい ること が示唆 され た。ま た二本 鎖の溶 液中 での高 次構造 をCD ス ペク卜 ルから 調べた 。 NUm オ リ ゴ マ ー /RNA 二 本 鎖 で は NUm ユ ニ ッ ト の導 入 数 の 増 加に 伴 っ て A 型二 本 鎖 構 造 に 近付 く 傾 向 が 観 察されたが2 ―〇_メチル基のみを有するUm オリゴマーでT ー値との相関を示さなかったことから、2 ‐〇,メチル 基 の 導 入 は RNA と の 二 本 鎖 構造 を A 型 に 近付 け る 傾 向 はあ る も の の 、 ニ本 鎖 安 定 化 には 関 与 し な いこ と が明かとなった。

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(2)

3.ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性

  ア ン チ セ ン ス 分 子 を 静 脈 投 与 す る 際 、 問 題 と な る の は3 ‐ エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ に よ る 加 水 分 解 で あ る 。3 − エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ と し てsnake venom phosphodiesterase (SVPD)を 用 い てNUmオ リ ゴ マ ー の エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 評 価 し た と こ ろ 、 天 然 型DNAと 比 較 し て100倍 以 上 の 高 い 抵 抗 性 を 示 し た 。 ま たNUmユ ニ ッ ト の5位 ア ミ ノ 基 を ア セ チ ル 化 し た オ リ ゴ マ ー で も 高 い 抵 抗 性 を 維 持 し て い た こ と か ら 、NUmオ リ ゴ マ ー に お け る3 ― エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 は 主 に5位 置 換 基 の 立 体 障 害 に よ る も の で あ る こ と が 明 か と な っ た 。   細 胞 内 で は エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ に よ る 加 水 分 解 も 憂 慮 さ れ る 。 そ こ でDNaseIを 用 い てNUmオ リ ゴ マ ー の エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 調 べ た と こ ろ 、NUmユ ニ ッ ト の 導 入 数 が4個 以 上 の 時 に 高 い エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 示 し た(16‑30倍 ) 。 一 方 、NUオ リ ゴ マ ー で は 殆 ど 抵 抗 性 を 示 さ ず 、Umオ リ ゴ マ ー で8倍 程 度 の 抵 抗 性 を 示 し た 。 よ っ てNUmオ リ ゴ マ ー に お け る エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 は2 ‐ 〇 ‐ メ チ ル 基 の 影 響 が 大 き い ニ と が 示 唆さ れ た 。

4.RNaseH活 性 誘 導 能

  RNaseHはDNA/RNAニ 本 鎖 を 基 質 と しRNAの み を 切 断 す る エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ で あ る 。NUmユ ニ ツ 卜 は 2 ‑O‑メ チ ル 基 を 有 し て い る が 、DNA鎖 側 の 全 て に2 ― 〇 ‐ メ チ ル 基 を 導 入 す る とRNaseHはRNAを 切 断 し な く な る 。 し か し オ リ ゴ マ ー 内 部 に 連 続 し たDNA残 基 部(gap)が あ る とRNAは 切 断 さ れ る よ う に な る 。 そ こ で (NUmユ ニ ッ ト を 含 む2 ‐ 〇 − メ チ ル オ リ ゴ リボ ヌ ク レ オ チ ド ) ― (DNA) ― (NUー ユニツ 卜を 含む2 .〇 ‐メチ ルオ リゴ リポ ヌ ク レ オ チ ド ) な る サ ン ド イ ッ チ 構 造 を 持 っ オ リ ゴ マ ー(gapmer)を 用 い て 、 内 部 に 何 個 のDNA残 基 を 導 入 す れ ぱRNAが 効 率 的 に 切 断さ れ る か 調 べ た 。DNA導 入 数(gap数 ) が3ま た は4個 の 時はRNAの 切 断 は

非 常 に 遅 か っ た 。 し か し な が らgap数 が5個 以 上 で は 効 率 的 に 切 断 反 応 が 進 行 す る こ と が 明 か と な っ た 。 NUmユ ニ ッ ト を 含 むgapmerは こ の も の を 含 ま な ぃgapmerと 比 べ て 、RNAの 効 率 的 切 断 に よ り 多 く のgap数 が 必 要 で あ っ た 。 こ の こ と か らRNaseHの 切 断 反 応 に 対 す る5位 置 換 基 の 影 響 が 推 測 さ れ た 。 そ こ で 切 断 反 応 の 速 度 論 的 解 析 を 行 っ た と こ ろ 、5位 末 端 ア ミ ノ 基 はRNaseHの 基 質 認 識 に は 影 響 を 与 え な ぃ も の の 酵 素 の触 媒 回 転 に 大 き な 影 響 を もた ら す こ と が 判 っ た 。

5.X線 結 晶 構 造 解 析

NUー ユ ニ ッ ト を 含 む Dickerson型DN}VDNA二 本 鎖 のX線 結 晶 構 造 解 析 を 行 っ た 。 二 本 鎖 全 体 の 構 造 は 未 修 飾 の ニ 本 鎖 と 大 差 は 見 ら れ な か っ た 。 し か し5位 置 換 基 は 結 晶 中 で 固 定 化 さ れ て お ら ず 、 非 常 に 柔 軟 な 構 造 を と っ て い る こ と が 明 か と な っ た 。 ま た ヌ ク レ オ シ ド 糖 部 立 体 配 座 の 解 析 か ら 予 想 さ れ た 通 り 、 ニ 本 鎖 中 でNUmユ ニ ツ 卜 は 実 際 に3 ‑endo型 配 座 を と っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。5位 置 換 基 は5 端 方 向 に は 自 鎖 と 、3 端 方 向 に は 相 補 鎖 の り ン 酸 基 と そ れ ぞ れ 静 電 相 互 作 用 が 可 能 な3A程 度 ま で 伸 長 が 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 こ れ ら の 構 造 的 特 徴 を 基 にNUユ ニ ッ ト を 含 むDNA/RNAニ 本 鎖 モ デ ル を 構 築 し 、 そ の 構 造 を 検 討 し た 。DNA/RNAモ デ ル で も5位 ア ミ ノ 基 は り ン 酸 基 と 静 電 相 互 作 用 可 能 な 距 離 ま で 接 近 が 可 能 で あ っ たこ と か ら 、RNAとの 二 本 鎖 の 熱 的 安 定 性 に 及 ぼす5位 置 換 基 の 効 果 が 裏付 け ら れ た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    松田    彰 副査   助教授   周東   智 副査   助教授   神谷浩之 副査   助教授   森岡弘志

学 位 論 文 題 名

5 ―(ルーアミノヘキシル)カルノヾモイル―2 ―〇−

メチルウリジンを含むオリゴヌクレオチドの合成と      ア ン チ セ ン ス 法 を 指 向 し た 諸 性 質 の 解 析

   近 年 、難 治性 疾患 に対 す る新 しい 試み と して、遺 伝子治療法が注目されてい る。中でもアンチ セン ス 法は 病因 とな る遺 伝 子配 列が 既知 の 時、それ に対する薬剤を論理的に設 計できることから 注目 を 集め てい る。 伊藤 高範は、以下のように、ア ンチセンス法への応用を念頭 に5‑(N‑ アミノヘ キシル)カルバモイル‐2 ‐〇.メチルウリジンを含むオリゴヌクレオチドを合成し諸性質の解析した。

1 .新規アンチセンス分子の設計と合成

   本研究ではアン チセンス法を指向した新規オ リゴヌクレオチドとして、5 ‑(N‑ アミノヘキシル)カ ルバモイル基およ び2 ―〇‐メチル基を導入したウリジン誘導体(NUm ユニット)を含むオリゴヌクレ オチ ド (NUm オリ ゴマ ー) を合成し、 NUm ユニットが3 ‑endo 型配座を優先してと っていることを明 らかにした。

2 , NUm オリゴマー/RNA 二本鎖の熱力学的安定性

  RNA に対する親和 性を二本鎖の 50 ゲ。融解温 度(T 。値)の測定より調ぺた。その結果、NU 。オリゴ マー は 修飾 体残 基の 導入 数が2‑5 個の時に修飾体導入 数の増加に伴って二本鎖が 安定化する傾向が 見られた(約2 ℃/修飾体)。一方、2 ‐〇‐メチル基を持たない5‑(N‑ アミノヘキシル)カルバモイルウ リ ジ ン (NU ユ ニ ッ ト ) を 含 むNU オリ ゴマ ー とRNA との 二 本鎖 の T カ値 測定 を行 った と ころ 、同 様 の傾 向 を示 した 。そ こで 5 位 末端 ア ミノ 基が RNA との 二本 鎖形 成 に及 ぽす効果を 調べるため、NUm オリ ゴ マー /RNA 二本 鎖の T ー 値に 対 する 塩濃 度の影 響を調べた。すると5 位置換 基の導入により、

塩濃 度 のT ー 値 に与 える 影響が減少していることを示 した。また二本鎖の溶液中 での高次構造をCD ス ペ ク ト ル か ら 調 べ た 。 NUm オ リゴ マー /RNA 二 本鎖 では NUm ユニ ット の 導入 数の 増加 に伴 っ てA

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型 二 本 鎖 構 造 に 近 付 く 傾 向 が 観 察 さ れ た が2 ‐ 〇 ― メ チ ル 基 の み を 有 す るUmオ リ ゴ マ ー でTー 値 と の 相 関 を 示 さ な か っ た こ と か ら 、 2 ‐ 〇 ‐ メ チ ル 基 の 導 入 はRNAと の 二 本 鎖 構 造 をA型 に 近 付 け る 傾 向 はあ る もの の 、二 本 鎖安 定化 に は関 与 しな い こと を 明か にし た 。

3. ヌ クレ ア ーゼ 抵 抗性

  3 ‐ 工 キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ と し てsnake venom phosphodiesterase (SVPD)を 用 い てNUmオ リ ゴ マ ー の エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 評 価 し た と こ ろ 、 天 然 型 DNAと 比 較 し て100倍 以 上 の 高 い 抵 抗 性 を 示 し た 。 ま た NUmユ ニ ッ ト の5位 ア ミ ノ 基 を ア セ チ ル 化 し た オ リ ゴ マ ー で も 高 い 抵 抗 性 を 維 持 し て い た こ と か ら 、NUmオ リ ゴ マ ー に お け る3 ― エ キ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 は 主 に5位 置 換 基 の 立 体 障 害 によ る もの で ある こ とを 明か に した 。

  DNaseIを 用 い て NU。 オ リ ゴ マ ー の エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 調 べ た と こ ろ 、 NU。 ユ ニ ッ ト の 導 入 数 が4個 以 上 の 時 に 高 い エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ 抵 抗 性 を 示 し た (16‐30倍 ) 。 一 方 、NUオ リ ゴ マ ー で は 殆 ど 抵 抗 性 を 示 さ ず 、 U。 オ リ ゴ マ ー で 8倍 程 度 の 抵 抗 性 を 示 す こ と を 確 認 し た 。 4.RNaseH活 性誘 導 能

  RNaseHは DNA爪 NA二 本 鎖 を 基 質 と し RNAの み を 切 断 す る エ ン ド ヌ ク レ ア ー ゼ で あ る 。 (NUー ユ ニッ ト を含 む2 _〇 , メチ ルオ リ ゴリ ボ ヌク レ オチ ド) ‐ (DNA) − (NUー ユニ ット を 含む2 ‐ 〇. メ チル オリ ゴ リ ボ ヌ ク レ オ チ ド ) な る サ ン ド イ ッ チ 構 造 を 持 つ オ リ ゴ マ ー (gapmer) を 用 い て 、 内 部 に 何 個 の DNA残 基 を 導 入 す れ ば RNAが 効 率 的 に 切 断 さ れ る か 調 ぺ た 。 そ の 結 果 、 gap数 が 5個 以 上 で は 効 率 的 に 切 断 反 応 が 進 行 す る こ と が 明 か と な っ た 。 切 断 反 応 の 速 度 論 的 解 析 を 行 い 、5位 末 端 ア ミ ノ 基 は RNaseHの 基 質 認 識 に は 影 響 を 与 え な い も の の 酵 素 の 触 媒 回 転 に 大 き な 影 響 を も た ら す こ と を 示し た 。

5.X線 結 晶構 造 解析

  NUー ユ ニ ッ ト を 含 む Dickerson型 DN〜DNA二 本 鎖 の X線 結 晶 構 造 解 析 を 行 っ た 。 二 本 鎖 全 体 の 構 造 は 未 修 飾 の 二 本 鎖 と 大 差 は 見 ら れ な か っ た 。 し か し5位 置 換 基 は 結 晶 中 で 固 定 化 さ れ て お ら ず 、 非 常 に 柔 軟 な 構 造 を と っ て い る こ と が 明 か と な っ た 。 ま た ヌ ク レ オ シ ド 糖 部 立 体 配 座 の 解 析 か ら 予 想 さ れ た 通 り 、 二 本 鎖 中 でNUー ユ ニ ッ ト は 実 際 に3 ‐endo型 配 座 を と っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 DNMRNAモ デ ル で も 5位 ア ミ ノ 基 は り ン 酸 基 と 静 電 相 互 作 用 可 能 な 距 離 ま で 接 近 が 可 能 で あ っ た こ と か ら 、 RNAと の 二 本 鎖 の 熱 的 安 定 性 に 及 ぽ す5位 置 換 基 の 効 果 が 裏 付 け ら れ た 。

   以上の結果は,アンチセンス法の基礎研究において極めて重要な知見であり,薬学博士の学位を 授与するに値するものと判断した。

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