デューイ実験学校(Dewey's Laboratory School)に
おける「理科(Science)」のカリキュラムの
特色に関する一考察
−1898 年度の活動に焦点を当てて−
森 久 佳
A Study on the Characteristics of the "Science" Curriculum
of the Dewey's Laboratory School
− Focusing on the Activities during 1898 Year −
Hisayoshi Mori
はじめに
本論は,「デューイ実験学校(Dewey's Laboratory School)」(以下このように,もしくは「実
験学校」とする)
1)における「理科(Science)」のカリキュラムの形態を,1898 年度(1898 ∼
99 年)の実践例を基にして明らかにすることを目的とする。筆者は以前に,デューイ実験学
校の「歴史(History)」部門のカリキュラムの形態を「分化(differentiation)」の視点から明ら
かにした
2)。その成果を基にして,本論では,子どもの成長に応じた「分化」を基調としなが
ら実験学校の「理科」のカリキュラムが構成された形態の解明を試みる。1898 年度の実践例
を主として用いるのは,この時期が実験学校の「発展期(1898 ∼ 1903 年)」
3)の初期にあたり,
カリキュラム開発の特徴をとらえるのに重要で欠かすことができないと考えるからである
4)。
こうしたデューイ実験学校の「理科」のカリキュラムに関する分析は,これまで十分に行わ
れてきたとは言えない。実験学校の実践に関する研究動向は今から 10 年ほど前のタナー(L.
N. Tanner
)の研究
5)により転換点を迎え,以後,より具体的で詳細な実践活動を視野に入れ
た実験学校の分析が行われるようになった
6)。しかし,そうした中にあって,実験学校の「理
科」のカリキュラムに関する研究はほとんど行われていないのが実状である
7)。
以上のような問題意識を背景として,本論はデューイ実験学校の「理科」のカリキュラムを
対象とした考察を行う。本論の構成は次の通りである。まず,デューイ実験学校における「分化」
を基調としたカリキュラムの形態のモデルを,筆者のこれまでの研究成果を基にして提示する
(1 節)。それを踏まえて,次に,実験学校の「理科」のカリキュラムの特徴を 1898 年度(1898
∼ 99 年)に実施されたカリキュラムから明らかにして,それがどのような原理に基づいて構
成されていたのかを検討する(2 節)。そして最後に,「理科」が教科(専門領域)へと分化す
るための基盤とそのカリキュラム構成の過程を明らかにする(3 節)。
なお,本論で用いる史資料は,実験学校の実践を報告した 1898 年度の『実験学校活動報告』
(
Laboratory School Work Reports
,1898-1899
)
8)(以下『報告』とする)と,デューイおよびデュ
ーイ実験学校の教師たちが寄稿した『初等学校記録』
(
Elementary School Record
)
9)が中心となる。
1
.デューイ実験学校のカリキュラムにおける「分化(
differentiation
)」の実際
先に述べたように,筆者は以前にデューイ実験学校の「歴史」部門のカリキュラムの形態を
検討した。そこで明らかにしたことは,次のようなことである。すなわち,デューイ実験学校
の「歴史(History)」の活動は,生活と関わらせることによって「分化」による他の教科(領
域)との結び付きを実現することが意図されていた。そして,実際のカリキュラムは,子ども
の成長段階とその特徴を考慮した構成が目指されていた。このような「歴史」のカリキュラム
は,「社会的オキュペーション(social occupation)」といった「歴史」と「理科」を総合した活
動に包含され,それから,子どもの成長時期に合わせて徐々にその内容が専門化し分化してい
くように工夫されていた。その「分化」の過程を図で示したものが図 1
10)である。
図 1
幼児教育段階の「家庭・近隣の事象を中心に扱う活動」は,6 歳段階で「社会的オキュペー
ション」活動へと移行する。そして,7 歳段階以降は,「歴史」部門と「理科」部門に活動領
域が「分化」し,それに伴い,子どもの活動内容も「分化」していった。言い換えれば,「社
会的オキュペーション」活動は,言わば「歴史」と「理科」を総合した内容を中心とする活動
領域であり,
「歴史」部門と「理科」部門へと活動領域が「分化」する基盤でもあった。そして,
成長段階に応じて,デューイ実験学校の各部門とその活動内容は「分化」し,専門化していっ
たのである
11)。
以上のことを踏まえて,次節以降では,デューイ実験学校の「理科」のカリキュラムを分析
する。
2
.「理科」部門のカリキュラム
(1)「理科」部門のカリキュラムの実際とその特徴
まず,1898 年度に実施されたカリキュラムを示したものが表 1 である。
生理学 家庭・近隣 の 事 象 を 中 心 に 扱 う活動 社 会 的 オ キ ュ ペ ー ション(歴史 ・ 理科) 歴史 理科 歴史 理科 ・ ・ 動植物 物理 化学 子どもの 成長 4・5 歳 (幼児教 育段階) 6 歳 7 歳以降 地理 料 理 織 物・ 裁 縫工作 料理 織物・裁縫 工作 料理 織物・ 裁縫 工作
表 1 「理科」部門のカリキュラム(1898 年 10 月∼ 1899 年 6 月)
A=アンドリュー(K. Andrews)/ H= ヒル(M. Hill)/ C= キャンプ(K. B. Camp)/ M= ムーア(A. Moore)
/ R= ロジャース(Rogers)
<サブ・プライマリー∼グループⅢ>
サブ・ プライマリー グループⅠ グループⅡ グループⅢ 家庭について 【自分と他人の家 庭/家庭と家事と 基にしたゲーム/ 家具を荒毛の紙で 再現/家族に関す る物語(→粘土, 絵の具,紙の使用) /住居と家庭の必 要性(→プレイハ ウス製作)】 サンクスギビング の準備 【その精神/ゼリ ー調理/トウモロ コシ/厚紙による 小皿製作/歌,デ ィ ナ ー バ ー テ ィ ー】 クリスマスの準備 【ごっこ遊び(→ 繰ります関連商品 を扱う店の店員, 客)】 家庭の暖房 【家を暖かくする 方法(ストーブ, 暖炉)(→模型製 作(石炭バケツ, シャベル),ごっ こ遊び)/家庭の 明かり(→ランタ ン・ロウソク製作, ゲーム,ランプと 関わる詩/ランタ ンの問題の議論/ ランプ製作(スプ ール,焼き串,テ ィ ッ シ ュ ペ ー パ ー)ランプのある 通りの工作)】 衣料 【ベッド用品/衣 料輸送の劇化,ご っこ遊び】 移送 【歩道/登下校/ 通 り / 石 炭 列 車 ( → ご っ こ 遊 び ) /陸橋,鉄道線路 /手紙/ 動植物 【夏の間に見たも のについて話し合 い→庭製作の計画 (栽培する球根の リスト作成)→球 根(オランダにつ いての学習(気候, 土壌など))/小 麦/箱庭(パンジ ー・アサガオ→種 子の成長のための 条件/球根の成長 観察)】 黒人(エチオピア 人) 【アフリカの動植 物( ゴ リ ラ・ 類 人 猿 → 進 化 の 概 念(人類との類似 点)→自分たちと 黒人の生活の比較 (有利な点・不利 な点)→議論→図 画(黒人の家屋, 動物))/黒人の 性質・伝説・迷信】 種子 エスキモー 【生活様式・衣食 住,人種の類型, イグルー作製,ハ ン ド ワ ー ク, エ ク ス カ ー シ ョ ン (フィールド博物 館)】 日本人 【位置確認(地球 儀),自然,米栽培, 家屋,植物,ハン ドワーク,エクス カーション(ウォ ーカー博物館)】 中国人 【生活様式(北京), 万里の長城,ハン ドワーク】 ジャワ人 【位置確認(地球 儀),ジャワの動 動植物(A) 【夏の間に見たも のについて話し合 い→庭製作の計画 (栽培する球根の リスト作成)】 種子 【トウワタ/エク スカーション(伝 播 の 最 中 で あ る 種 子 の 発 見 ) / 読み方(『植物と そ の 子 孫 た ち 』 (Plants and TheirChildren))/ガマ (観察による描写 →産毛)】 球根 【植木鉢で栽培(い くつかは水の中で 育てる→根の先端 の性質)】 動植物 【冬の習慣(樹木, タンポポ,カエル, 魚)/樹液に関す る議論(→池と湖 の凍結→氷の浮力 →小川や池の動物 →樹液が流れる理 由/冬眠→冷血・ 暖血動物)】 料理本制作 【ブックカバー】 米 【生の米とフレー ク状の米の重さの 比較(→算数)/ 雪を溶かす(空気 のスペース→フレ ークの間のスペー ス)】 トウモロコシ 【種子(植木箱で 栽培)】 金属 【 銅 の ト レ イ / 豆,エンドウの栽 培(植木鉢)/金 原始時代 【「歴史」と結び付 く(斧と槍の先端, 釣り針,洞窟)/ 水の沸騰(熱した 石を使って)/洞 窟の模型製作】 時間 【日,月,年の分 割/昼と夜/週と 月/季節の繰り返 し】」 クリ 【焼いて沸騰(沸 騰した方とシリア ルと比較)/熱の 作用】」 家屋の藁葺き 【ヤナギの主枝終 了→藁葺き/皮と 樹皮】 模型製作(村の丘) 動物 【読み方(『Jungle Book』)】 金属 【ワイヤーを熱し て,端をハンマー で叩く/加熱・溶 解(火と風,空気 の供給)/鉛の溶 解(砂と粘土の雛 型に注ぐ)/分業 の 必 要 性 / 鉱 石 から銅の分離(吹 きざお利用)/粘 土模型(鉛の鏃の 鋳造)/鋳型,雛 型 の 製 作 ) / 地 図/模型製作(粘 土皿/小麦を挽く /紙で動物の切り 抜き/羊毛の糸巻 き)】 種子 【 ガ マ( 観 察 に よ る 描 写 ) / Russian thistle(→ 伝播の方法)】 歴史のブックカバ ー製作 エクスカーション 【多年草の植物】 動植物(A) 【冬の習慣(樹木, タンポポ,カエル, 魚)/樹液に関す る議論(→池と湖 の凍結→氷の浮力 →小川や池の動物 →樹液が流れる理 由)】 ガーデニング 【庭に必要な物の リスト作成/ニン ジン,レタス栽培 /苗木の性質/エ ク ス カ ー シ ョ ン ( ト ン ボ の 幼 虫 ) /ツタ系の植物/ 植木鉢の植物のた めのラベル作成】 模型製作 【 斧 と 槍 の 先 端, 釣り針,洞窟/水 の沸騰(熱した石 を使って)/模型 製作(砂と粘土で 皿を製作)/家屋 の藁葺き(→ヤナ ギの主枝・皮と樹 皮)】 家屋の藁葺き(H) 【藁葺き/皮と樹 皮】 粘土 【鋳型,雛型のせ いサック】 金属 【銅のトレイ(測 量,切り分け,金 槌で打つ)】
サブ・ プライマリー グループⅠ グループⅡ グループⅢ イースター 大掃除 【プレイハウスの 掃 除( → 掃 除 道 具)】 手仕事 【大工/靴職人/ パン職人】 夏休みについて 植物,コーヒー豆, 香辛料/ジャワプ リント(藍染めの 実験)】 インディアン 【生活様式,ハン ドワーク,エクス カーション(ワシ ントンパーク)/ 粘土皿製作】 属の特性(銅のト レイを熱する→空 気の結合)/算数 (算数ゲーム/四 角形,三角形)/ 模型製作(銅のト レイ)】 庭作業 【栽培する植物の リスト作成/根に ついての学習(土 壌との関わり→栄 養分と湿気との関 係)/熱水と冷水 ( 栄 養 分 の 溶 解 ) /水と栄養分(種 子→胚→苗木と比 較)/工作(から ざお→工作室)/ 種子(子葉→有胚 乳(アサガオ)と デンプン系(エン ドウ,豆))/エ ンドウ(根の性質 → 苗 木 ) / ニ ン ジ ン, レ タ ス 栽 培(苗木)/雑草 の性質について話 し合い/エンドウ (巻き毛→ヒョウ タン,アサガオ, キュウリ,スイカ ズラ)/茎/ツタ 系の植物/植木鉢 の植物のラベル作 成/庭作業/発根 (rooting) す る 植 物(ウルシ)】 料理 【昼食会の準備(→ 算数)】 算数 【貨幣(ドルの両 替)】 ガーデニング 【植物の移し変え /巻き毛/登る方 法(黒板に描写)】
<グループⅣ∼グループⅥ>
グループⅣ グループⅤ グループⅥ グループⅠと同じ 種子 【伝播の方法(媒 介(風と動物)/ トウワタの種子/ 作業記録(風に吹 かれる種子と動物 に運ばれる種子を 図画) 編物 【roffea の染色(丸 太 に 入 れ る → 記 録)】 月 【月相(黒板の図 を利用→原因,変 化 す る 時 間 の 議 論)】 銅 【打ち延ばす(柔 らかくするために かまどで熱する温 度)→色を塗る】」 動物 【家畜(豚,犬)】 ポテト 【水分の割合を調 べる(すりおろし ポテト→サンプル →計算→記録/デ ンプン(穀粒の発 見→料理方法→デ ンプンの変化→顕 微鏡で調べる→コ ーンスターチの穀 粒 ペ ー ス ト・ 粘 液)→水との関係 →セルロースの分 離→料理方法の議 論→水を加える→ 焼く,揚げる)】 時間 【時間を告げる(計 測方法→ロウソ ク,水時計など→ 時計とローマ数字 による告げ方)】 時間 【大陸と海洋(昼 と夜の原因,季節 の変化→時間の分 割→年,月→満月 矢印地球の公転→ 時間の告げ方)/ 昼と夜の長さ(太 陽 光 線 の 角 度 → 季 節 の 変 化 → 北 極,南極,温帯, 熱 帯 の 動 植 物 / 月(moon) の 相 → 1 年の日数→掛 け算)/異なる季 節(異なる地域の 国々→日中の長さ →影の動き/地中 海沿いの気候→月 相/時計製作)/ 地球のさまざまな 地域(日中の長さ の違い/動植物に ついて議論/絵と 物語)】 気候 【近接した国々(水 分の影響→部屋の 中の水分と温度→ 球根の水分→水と 土壌に対する太陽 の影響→砂と水を 使った実験→温度 計製作)/温度計 製作(アルコール, 種子 【アメリカマンサ ク,ガマ,クレマ チス(図画→測量 /記録のカバー→ 自らのデザイン→ 種子)/記録(ブ ックカバー)/雑 草(播種→栽培さ れた植物と野生の 植物,雑草の比較 →雑草の有害性→ 記 録 作 成 → 成 長 時 に 加 わ る 重 さ (土?空気?)→ 壷を使った実験→ トウモロコシ,豆 →発芽の観察) 動物 【動物の名前(黒 板 に 記 す → 読 み 方)】 読み方 【『The Song of Life』】 種子 【観察(栄養分→ 子葉)/豆の苗(付 加的な重さについ ての議論→記録作 成(所有格,アポ ストロフィ))/ 栄養分摂取(空気 の重さ→実験(水 で満たした試験管 →塩分→記録作成 →大きな声で読む →読み方))/成 長する植物(気体 の放出→実験(水 の入ったコップ) →空包)/ 4 つの タイプ(カボチャ, トウモロコシ・小 麦・ライ麦,エン ドウ・豆,マツ) を図画(種子と子 葉の形の関係)/ 発芽中の種子の気 体(エンドウ→ワ セリン塗る→記録 作成)/二酸化炭 素→比較実験→動 植物の需要→記録 作成/豆の苗(種 子の膨張→珠孔の 役割→記録作成】 原始時代(H) 【「歴史」と結び付 く(斧と槍の先端, 釣り針,洞窟)/ 水の沸騰(熱した 石を使って)/洞 窟の模型製作】 砂地図 【 ハ ド ソ ン 川 周 辺,ニュージャー ジー,デラウェア (植民地当時の動 物についての話し 合い)/地理(地 域名のつづり→地 域の物理的特徴→ 植民地の地図)】 ※ ヴァージニア 【砂地図(場所の 比較→緯度と経度 (地球儀))/地図 (樹木と動物)/ シカゴからリッチ モンド,ヴァージ ニ ア の マ イ ル 数 (同緯度の州)/ 河川の周辺地域, アトランティック 海岸の異なる海抜 /最初の定住者が 見つけた地域の種 類,生活のために 行われたことの議 論/貨物運搬距離 /東海岸(土地の 傾斜→地図(アパ ラチア山脈の西部 海岸沿い))】 銅 【手入れ】 温度計製作 【準備段階につい て議論/管の測量 /球部作製】 温度計製作 【アルコールをメ チルオレンジで色 付け/雪解け(凝 固点の判明)/記 録作成/融点測 定】 気圧計製作 【水銀を用いる理 由 を 議 論 → 水 銀 (水,アルコール の沸点の違い→実 験→水銀の揮発性 を発見)/アルコ ールの沸点(水と 比較)/管の長さ /記録作成(温度 計製作過程) 天気 【気温,空気圧と 風の方向,大気の 状態などの記録を とる(公式の天気 報告と比較)/気 圧計の図画/アメ リカの天気図(統 計(気圧の高低) →晴れの時は高気 圧,曇りや雨は低 気圧と結論)/気 温の比較(同緯度 のアメリカの観測 所→緯度以外の天 候に影響を与える 条件を理解)/同 緯度にある実験観 測所のリスト作成 (気温の違いの理 由と気候に影響を 与える要因を議論 →海抜→イングラ ンドとニューイン グランドの海流→ 暖流と寒流→天気 図(緯度,経度の 学習))】 蚕 【オスとメスの図 画】 鉱物 【石灰岩,花崗岩 /塩酸を使ったテ スト/破片(結晶 構造)/層化】 体積 【石,木材→水に 沈めて量る/重さ と体積の関係(メ ートル法)/水に 沈 め ず に 量 る 方 法(木材の測量→ 実験結果の比較→ 鉄製の船ができる 理由→銀の硬貨と 模 造 品 の 比 重 発 見)】 圧力 【空気圧(一片の スズと羽根,風船, 鳥の飛行,船漕ぎ など→押上げポン プ,水撃ポンプ, 安全弁,液圧プレ スなどの応用を知 る)】 理科用語(account の継続)グループⅣ グループⅤ グループⅥ 水銀→温度の尺度 の理解→アラビア 数字)】 昆虫箱 【図表作成(工作 室)】 銅 【好きな形に切り 分ける/銅のトレ イ,ボウル】 呼吸(湿度→呼吸 →記録作成→気体 の種類(石灰水を 使う)→二酸化炭 素→記録) 銅 【鉱山地域,有用 性についての話し 合い(水の作用→ 酸化)】 (A & C) 種子 【栄養分の調達(子葉→アサガオ,ウリ, マツぼっくり,豆,小麦→調べて図画) /算数(種子にかかる費用)】 昆虫箱製作(工作室) 庭作業 【タマネギ,植木 (→呼吸)/気体 /記録作成/豆と エンドウの栽培/ 雑 草 抜 き / 気 体 (植物→酸素と二 酸化炭素→呼吸→ 栄養分製造/根の 性質(酸の存在を 調べる→青色リト マス紙→ツタ系の 植物に興味を抱く →庭と空地を調べ る)→アンモニア) /土壌(酸を注ぐ →記録作成)/タ マネギ,ハツカダ イコン(→昼食会) /豆の栽培(石灰 岩で→記録作成) /ハーブ園】 昆虫箱製作(工作 室) 【ガラスのフレー ム】 (以下 C) 世界 【地球の測量(円, 平行,子午線→大 陸と海洋の面積の 比較)/世界一周 にかかる時間(鉄 道, 蒸 気 船, 帆 船,初期の移送手 段→香港までの距 離)】 陶工ろくろ 【スズ/算数】
<グループⅦ∼グループⅨ>
グループⅦ グループⅧ グループⅨ 昆虫 【イザベリヒトリ ガ,アカスジシン ジュサン,カブト ムシの冬の習慣に 関 す る 議 論 → 記 録/秋の習慣(冬 眠の方法観察(校 庭 ) → Catapillars (イザベラヒトリ ガ の 繭 の 紡 ぎ 観 察)→紡ぎの比較 →記録)/アカス ジシンジュサンの サナギ(蛾との比 較→繭の分類)/ 冬への適応のまと め】」 植物 【動物との関係(昆 虫の食料に対する 適応→嚢状葉植物 (標本)→昆虫の 採集方法→食虫植 物(モウセンゴケ) →土壌の施肥,植 物の胚珠の受精に 関する議論→モウ センゴケの説明記 す)/記録】 植物 【施肥のための多 年草の適応と受粉 に対する植物の適 応(花の本質的部 分の議論→他家受 粉→おしべとめし べ→昆虫と花粉 →図画,図表→ 読み方(ギブソ ンの「Eye Spy」)) /青紫の変則の議 論(エクスカーシ ョン(温室))/ 受粉作用(ダーウ ィン,グレイ→人 類の生命,労働 →腐肉臭のある 植物に関する議 論→記録(受粉 の手法)→読み 方)/他家受粉の 手法(植物の変化 の議論)/サクラ ソウ(図表作成 (おしべとめしべ) →他家受粉→植物 の防衛→昆虫との 関わり)/標本/ 波 【動き,形の描写 (水の粒子の動き ( 上 下? 左 右?) →観察,報告→砂 の形成,海岸に当 たる角度の議論→ 桶(粒子)→岩の 形状,見本→水成 の起源)】 体積 【 重 さ( 空 気 中, 水中の違い→石の 体積(水で満たし た観測桶))/水 に沈めずに量る方 法(木材の測量→ 溢 れ た 水 量 を 計 測)】 ばね 【ばね錠(分解, 組み立て,図解(ば ね仕掛けの機械製 作の準備)→振り 子時計の仕組み調 べ)/適用(ドア の開閉,馬車,ベ ッド,車,バイク) の話し合い】 時計 【 回 転 数( 力 学 ) /振り子の実験(1 分間の振動数→時 計の旋回→振動数 =糸の長さの平方 根に反比例→平方 根 → 黒 板 に 記 す (助けを借りる)) /力学(記録(振 り子の実験))/ ばね(時計→振り 子の長さの計算) /発電所訪問(エ ンジンの馬力の計 算 → 力 学 → 掛 け 算)】 季節・地域 【季節,地球が分 けられる地域(算 数(→円の分割, 角度))/季節の 変 化 と 地 球 の 位 置(模型製作→帯 (Zone)と比較)】 金属 【金(外観描写→ 見本(重さ)→議 論(分布,使用, 入手方法,価値) →溶解/銀→塩化 物(塩酸)→金と 比較(重さ,可塑 性,有用性))/ 銀 → 塩 化 物, 亜 鉛/銅→議論(特 性,用途)→化学 的特性に興味/亜 鉛・鉛→特性(硬 さ,溶解性など) →鉱山】/金属の 溶解/鉱山の位置 (地図)】/スズ, 鉛,亜鉛(鉛の溶 解(水銀)→合金 →金属の特性の違 い→記録(硬さ, 色,溶解性,発見 場所,用途など→ 地図(分布場所)) /鉄(観察(鉄, 鋳鉄,鋼鉄の光沢 と錆の量→鉄の作 用(レールの断面 図)→写真(膨張 した鉄)→「固め る」と「鍛える」)) /議論(鉄と鋼の 相対的な有用性と その関係)】 体積 【物体の体積(水 に浮かべる→ 3 次 元の掛け算)】 地球 【地球儀での山の 高さの計算(ミス・ キャンプと一緒→ 地殻の形成と冷却 / 分 離( 冷 却 過 程で生じる空気, 水,土)→海,盆 地,山の形成→水 の作用→火山,間 欠泉の描写→潮の 干満)】 地球(C) 【大気の流れ(赤 道から極(暖気の 上昇)→冷気→氷 解温度)/大気の 動き(貿易風→記 事(星雲と増殖の 植物(M) 【土地選び(空き 地→見つけた植物 のリスト作成→種 子 の 絵 画 ) / 植 物(土地観察→種 子の数の確定→利 点発見→消失理由 の探索→多年生植 物)/表(土地の 作業結果→種子の 数)/葉(小枝の 観察(葉の並び具 合とその利点)→ 葉の分類→光→静 脈)】 消化(R) 【唾液(デンプン の変化(肉眼,顕 微鏡))/消化(料 理の影響(成分)・ 食物の消化(デン プン系に対する熱 の影響)) (Hu) 気体 【酸素(特性,準 備方法→器具の設 置方法→塩素酸カ リウムの使用(固 体,液体,気体) →調理)/酸素の 発 見 の 歴 史 → 実 験(器具設置,2 人一組)→酸化, 湿 度 の 作 用 / 酸 化(鋼のばね,マ グ ネ シ ウ ム リ ボ ン)/酸化銅(吹 管)/酸化マグネ シ ウ ム( 量 的 測 定)/酸化銅(還 元)/酸化第一鉄 /チョーク,石灰 岩,大理石(発見 場所,用途)/ブ ンゼンバーナーの 原理(酸化マグネ シウム→ウェルズ バハのライト→酸 化物(酸化鉄,酸 化マグネシウム, 酸化カルシウム) /石灰(炭酸ナト リウム,炭酸アン モニウム)→沈殿 物)/チョーク(沈 殿→洗い/モルタ ル・漆喰・石灰(未 消 和 → 二 酸 化 炭 素)/石灰岩,チ ョーク,大理石の 産物(チョークの 溶解→炭酸カルシ ウム→水成動植物 (ポリプ,サンゴ, ハマグリ)→サン ゴ(軟体動物)→ 石灰)/炭酸カル シウム(溶液中の 二酸化炭素の溶解 性→石灰水→ろ過 →酸素,窒素,二 酸化炭素))】 気体 【記録(炭酸カル シウム石の形成) →火打石,石英】 地学 【堆積岩の形成(記 録の整理→地表の 漸進的変化(二酸 化炭素とカルシウ 植物 【種子(伝播の手 法,萌芽の保護: 萌芽(折り畳みの 観察)→発酵の手 法/種子(豆,エ ンドウ,トウモロ コシ)の発芽の手 法→観察(水分吸 収,表皮破裂)→ 根毛(カビとの区 別)→菌類の源(大 気, 水 ) → 水 分 量(乾いた砂,粘 土,腐植土))/ 発芽の観察(種子 の膨張→種皮の破 裂,根の出現→肺 軸(子葉)→新芽 の保護→根のタイ プ(枝分かれ,根 毛 を 作 り 出 す 方 法)→しようの機 能→観察(苗木の ある広場))/実 験(粘土,砂,腐 植土と水との関係 →フィールド(土 壌の確認)→植物 の生長)/子葉の 重要性(実験(エ ン ド ウ, ド ン グ リ)→子葉の中身 (小麦,トウモロ コシ,米)→デン プン→実験(ドン グリ))/苗木(成 長した植物(サポ ートの方法)→栄 養分(土壌,大気) →土壌(化学的構 成要素)→化学的 分析→酸素,二酸 化炭素→栄養分の 製造,消費)】グループⅦ グループⅧ グループⅨ 昆虫からの防衛手 段(→記録)/屋 内と屋外での成長 の違い(湿度→空 気の乾燥→光,熱, 土壌→土地による 違い(砂漠地帯, 熱帯))/地図作 成(生息可能な条 件と土壌を示す→ 多様なタイプの植 物→水分吸収の違 い(砂と粘土)→ 理想的な土壌)】 トウモロコシ 【栽培(南部・北 部→北部 9 日,南 部 12 日→記録→ 砂浜,砂丘で成長 する植物の種類) /作業のまとめ】 (Ⅶ a) 植物 【砂漠の植物/接 ぎ穂(増殖の他の 方法→分類(シダ 植物,オヘビイチ ゴ)→接木の使用) /種子[伝播の手 段(接ぎ穂→根の 切り方)]】 (Ⅶ a) 生理学 【消化(血液の役 割→唾液とデンプ ンの実験の思い出 し→胃の役割→胃 液の効果→対照実 験→記録→チー ズ,乳しょう→ 記録)/実験(デ ンプンと唾液の関 係)】 (Ⅶ b) 生理学 【消化(動植物の 生理学)/胃の内 部の過程(機械 的,化学的→実験 (人工的な胃液→ 牛乳,白身に対す る作用))→腸の 消化(肝臓,すい 臓の役割→消化物 の性質と効果の議 論→消化吸収のル ートの議論→血液 (化学的・物理的 特徴,血球)→凝 固(顕微鏡)→心 臓(循環)の議論 →酸素供給,動脈 血化の議論→肺と 血液中の物質の議 論→呼吸)】 理論))/火山 (クラカトア噴火 (1883 年)・マナ ロア(Manna Loa) →火山の作用(熱 の増加(鉱山,坑 道,穿孔)→液体, 固体,気体の変化 →水(液体から気 体)・鉄(固体か ら液体)→気体の 膨張→火山(粘土) を砂と炭酸ソーダ で混ぜる→塩酸, 次に硝酸))/噴 火(砂,炭酸ソー ダ,硝酸の混合物) →議論(物質に対 する熱の影響)/ 炭酸カルシウムの 形成(堆積岩,動 植物の生活→気体 (酸素,二酸化炭 素)→グループⅨ と同じ原理→植物 の生長(酸素と二 酸化炭素の影響) →器具の組み立 て)/気体(二酸 化炭素/部屋の中 の空気容積(立方 (ヤード・ポンド 法))/振動と振 り子(計算)/算 数(百分率(空気 中の二酸化炭素の 割合→ 10 進法)】 気体(H) 【酸素(塩素酸カ リウム,二酸化マ ンガン→酸素の効 用 / 二 酸 化 炭 素 (酸素と比較(燃 えている木材と硫 黄,相対的な重さ) →ミス・キャンプ の 理 科 の 継 続 )) /二酸化炭素の実 験(石灰水)→記 録】 ムの結合と結び付 けて→地理))/ 土壌の形成(地理 学的変化:熱→物 語(地理学的)/ 概 略 図( 陸 地 と 水):大きな概略 図(岩石,鉱山, 植物,農業用の土 壌))/地図(土 地の資源)/議論 (土地の形状を変 化させる媒介物) /堆積岩・土壌の 形成(二酸化炭素 →二酸化硫黄(漂 白,殺菌,燻蒸消 毒))】 梃子 【長さの割合(指・ 腕(長さ,速さ: 梃 子 の 長 さ( 幾 何))/指・腕(長 さの関連→動きの 速さの比較)/梃 子 の 法 則(Power
arm,weight arm,
力,重さ)/円と 弧) 気体 【二酸化硫黄(気 体の移し変え(フ ラスコ))/不純 物(合金:→しろ め,可溶性金属, 活字合金,はんだ →割合(溶解時間) →融点の違い)】
ここで特徴的なのは,第 1 に,ほぼどのグループでも植物をテーマにした学習が行われてい
ることである。『初等学校記録』にわざわざ植物をテーマにした論文
12)が寄稿されていること
からもわかるように,デューイ実験学校では,植物学習がかなり重要な位置を占めていたと考
えられる。
この論文を記したアンドリュー(K. Andrews)によれば,「生きて呼吸する活動的な植物は,
生物学的法則を描写する唯一のものであると同時に,子どもの最大の興味と共感を駆り立てる
ものである」。そのため,実験学校における「植物学習〔plant study〕は,生理学〔physiology〕
と生態学〔ecology〕の流れに沿ってきた」という
13)。
そして,この学習が扱う領域は,栄養摂取,消化吸収作用,成長,被刺激性といった植物の
生命過程だけでなく,動物や他の植物に対する関係,土壌,湿度,環境的な諸条件が植物に与
える影響,さらには,植物が自らの環境と地理的な諸条件に与える影響も含まれる。また,学
習素材は,季節に適したものや,他の分野でのグループ活動といくらか関連するもの,そして,
あまりに多大な困難を伴わないものが選ばれていたという
14)。
ただし,動物学(Zoölogy)よりも植物学(Botany)に関する作業が実験学校において大き
な割合を占めていた事実は否定できない。こうした植物学習に偏る一面性は,子どもたちが観
察できるような動物を,常に教室で何匹か飼うことで,部分的に補われていたようである
15)。
次に特徴的な点は,各グループの「理科」の活動が,複数の教師の下で行われていたことで
ある。実験学校で「取り上げられる理科の作業〔scientific work〕は,実験的側面〔experimental
part
〕―物理と化学―を強調させている点で,他の学校と主に異なって」おり,
「自然学習〔nature
study
〕―動植物の学習―だけに制限されない」とデューイは述べている
16)。この分類に従うと,
子どもたちが主に実験的側面(物理・化学)と自然学習の 2 つの側面の学習
17)を行うために,
実験学校の「理科」の活動を複数の教師が担当していたと考えられる。
(2)成長段階とカリキュラム
次に,
「理科」部門のカリキュラムと「成長段階」との具体的な関わりを検討する。ここで
は,「コース・オブ・スタディの概略(Outline of Course of Study)」(表 2)を手がかりとする。
時系列的には,表 1 のカリキュラムが実践された後に,表 2 のコース・オブ・スタディの概
略ができたと考えられる。
表 2 「理科」のコース・オブ・スタディの概略(1899 年 6 月)
グループ 概 略 グループⅠ (3 年目・6 歳) 理科 すべての理科と地理は、社会的な興味と密接な関連を保つ。地理は、地方(local)の地理から始まり, それぞれの仕事の場所(locality)から取り組まれる。 グループⅡ (4 年目・7 歳) 理科と地理 一般的、典型的な地理は、狩猟時期や漁業時期の期間における山脈地域,半農と遊牧における平原, 海岸,沿岸生活などのような,仕事(オキュペーション)を自然地理的な諸状況に適用することと 関連している。動植物,鉱山,金属と関連した学習;原始生活において用いられた典型的,機械的, 化学的過程についての学習;溶解,染色,陶器製作などのような典型的過程での実験的な活動、など。 料理と関連する作業では、 1 つか 2 つの要素が孤立している。付随的・観察的作業;植物の成育史についての学習、昆虫の 4 つの一般的な分類、無脊椎・脊椎動物、野生・家畜動物。グループⅢ (5 年目・8 歳) 理科と地理 地球の進化と関連した大規模な物理的な力と過程、そして人類の生活と関連した現在の自然地理学 的構造;人類の住処における動植物との特別な関係、帯(zone)、海流、貿易風のような一般的な気 候と土壌の状況、不毛な土壌と豊かな土壌を生み出す典型的・一般的条件。料理との関連で、野菜 とシリアルにおけるデンプンとセルロースに関する実験的作業。 主要な概念は地理学的なもので、生活の様式が天候、土壌などに適応すること、また、その結果と しての社会的組織も含む。その目的は、(1)ロマンスと冒険のための本能を把握すること、(2)地 理学に通じる道をもたらすこと、(3)ある程度、文化と文明を提供すること;方法;構成、物語り、 実験。 グループⅣ (6 年目・9 歳) 理科と地理 歴史の活動と関連した学習。動植物が含まれ、これらの諸要因が植民地の場所、仕事、資源を決定 付けた限りにおいて、自然地理的に考慮された各植民地の環境、五大湖とミシシッピー峡谷の一般 的な自然の地理、地質学、気候状況は、大西洋岸の植民地における自然地理のための基礎として役 立つ。この年の実験的活動は、開拓時代の単純な産業、植物の土壌に対する関係、動物の土壌に対 する関係といった諸問題が基礎。 グループⅤ (7 年目・10 歳) 理科 産業の成長と結びつく中で、治金(metallurgy)の始まりと、 いくつかの典型的なエンジンの発明・発見。料理の過程の継 続として、食物の消化;循環と呼吸。 体育の活動と関連した筋肉組織に関する一般的な生理学。 無脊椎動物の発達の類型に関する学習。絵画で用いられてき た遠近法の原理を説明するのに十分な法則を提供する。 地理 北米の一般的な自然地理。 (以下省略) グループⅥ (8 年目・11 歳) 理科 星雲理論に関する復習と、地球の冷却に関する物理的変化お よび堆積岩、二次的な岩石の形成、地理的な過去と現在の関 連という一般的な問題に通じる岩石の形成について継続的に まとめる。これは、土壌・天候と結び付いた主な農産物の位 置と、合衆国の鉱物資源の分布とを社会的側面に基づいて明 らかにする。生物学的側面に関しては、動植物の歴史的発達 が現存する類型に関する学習を行うことで非常に一般的に明 らかになる。 電気資源とその使用については、電気ベルや電話、電報のよ うなより単純な活用という形で学習。 地理 理科の活動に必要な自然地理に加 えて、学習したさまざまな生産物の 輸送。 (以下省略) グループⅦ (9 年目・12 歳) 理科 光・熱・電気に対するより低次な形態と関連する単純な方法、 すなわち反射的動作に取り組みながら、感覚・運動のテスト 動植物の生理学についてより特殊化された方法を継続。学校 で行う感覚・運動テストと関連しながら、感覚・知覚の物理 的分析を行う。 電気資源とその活用に関する学習の継続。化学と物理の学習 で、写真が始まる。 地理 ギリシャ史と結びついたヨーロッ パ、アジア、アフリカの地中海沿岸 地方について。 (以下省略) グループⅧ (10 年目・13 歳) 理科 動植物の生理学の活動を継続。特別な感覚器官の適用の流れ に沿って、感覚に関する前年度の活動と、下等動物における 同じ器官の単純な形の復習をしながら;電気の活用に関する 学習の継続は、測量の単純な方法を含む;写真撮影の活動も 継続し、カメラに応用するより一般的な光の一般的法則を扱 う。 地理 ローマ帝国の発展やローマの政治 史に沿いながら、ヨーロッパ、アジ ア、アフリカの自然地理の続き。 (以下省略)
“The University Elementary School: Outline of Course of Study,” 1899,pp.5-12,より筆者が作成
ここでは,当時スクールの教師だったキャンプ(K. B. Camp)が『初等学校記録』に寄稿し
た論文
18)の内容を拠り所として,表 2 のカリキュラムの構成原理を検討してみたい。
キャンプによれば, 初等教育時期における子どもの発達は, 2 つの段階に分けられる。 1 つ
は,子どもが意識的に抽象化でき,それゆえに,系統立てて分類できる時期が終わりとされる。
この時期(4 ∼ 7・8 歳)は便宜的に細分され, 諸活動の時期および経験を獲得する時期とされ
る。その特徴としては,①イメージは,意識的に系統立てることや,それを達成するために目
的と手段を分けることをせずに,子どもによって直接的に実行される,そして,②諸事実と諸
過程は,子どもの生活と直接的かつ親密に結び付いた社会的経験の一部として生じること,が
あげられる。そして,もう 1 つは,分類と公式化(formulation)の時期である
19)。
こうした成長段階の特徴を,具体的に年令別に分けてまとめたのが,表 3 である。
表 3 「理科」のカリキュラムと成長段階との関わり(1900 年)
4・5 歳 ・ 子どもがすることとなる経験の多様性は非常に大きなものなので,限定的な素材を導入するための機会を計画する必要性はほとんどない ・ 唯一のケア→あらゆる諸事実と諸過程に向かう子どもの態度が,自然で直接的であるようにすること 6 歳 ・ 「実物学習(object-study)」 →チョーク,石,木材のような素材が,それを詳細に学習するのに十分正当であるために,子どもの 直の環境において現前することを想定 ・ この時期の後半 →社会的側面:典型的な仕事〔オキュペーション〕 →理科的側面:学習される自然界の力の作用において典型的なものを見出すために,実例の選択では 配慮が為される ・ 動植物に対する子どもの興味 →人類と関わる直接的な結び付きの中にある →自然環境(physical environment)の諸条件は,明確な社会的諸活動のための機会と素材を提供するも のとしてのみ取り上げられる ・ 探求の習慣の確立・(付随的)観察(→子どもの永続的な特性) → ある程度の用途との結び付きを通して,自然現象の観察をもたらすような強化〔reinforcement〕に よって 7 歳 ・ 対象の認識 →諸過程の明確な記憶はまれ(明確な記憶は,目的に対する手段としての過程を,多かれ少なかれ意 識的に系統立てることを伴うときにのみ生じる) ・ 原始時代の仕事〔オキュペーション〕(発見および発明を通して文明の中で行われた進展) →教育的な素材:原始生活のさまざまな段階の諸事実と諸過程は,子ども自身の生活において進行し ている類似の諸過程と直接的に結び付き,また,理解する段階として用いられる時に提供される/ 農業,製材業などのような前年に学習された社会的オキュペーションと子どもの現在の日常経験を, 再検討する中で意識化させる。 →永続的な興味:特殊な目的のために素材を適用する興味が,原始的な過程の中で,(その素材の適用が) 現在的に使用される →着手〔attack〕の方法(素材の特性は,その使用を方向付け影響を与えるものとして考えられている) 8 歳 ・ 冒険心が明確に発達 ・ 大規模な自然的および社会的関連に対する一般的な興味を示し始める ・ 作業の選択:子どもにさまざまな典型的な社会的諸状況を導入するような方法 →探検 → 共同体生活の社会的状況:2,3 の環境の特徴との関連を明らかにするために,比較しながら選ばれ る ・ 地理的に位置付けられた状況と実際の人々の学習(それまでは,子どもたちは初期における共同体の 特徴の中で,自らのオキュペーションに適した場所を選んでいた) →自らが知っているような,一般的な諸状況を描写する実験(自分たちが学習している特別な人々が, 重力や風の流れ,海の流れのような力から作り出した用途と関わっている)を行うことができる ・ 物理的側面:全体としての世界に対する興味が,強い形で現れてくる →地理的設定は,社会的生活と結び付いて考察される ・ 取り上げられるポイント→動植物,貿易風と,生活と関連する大気の特徴を地域的に分布させる ・ 主な目的→社会的な興味を通して限定的な地域を結び付ける一方で,全体としての物理的世界の概念 を打ち立てる 9 歳 ・ 作業に向かう子どもの態度の変化 →技術的側面〔technical side〕すなわち,手段と目的の関係に興味を示し始める →理科における一般化〔generalization〕と専門化〔specialization〕の両方はだいぶ後になって現れてくるが, 探究〔inquiry〕の手法と精神は,この年代で修正され,子どもは,初等教育の第 2 期と呼ばれる時期 へと入り込む。9 歳 ・ 作業に対する子どもの興味は,未だ社会的であり,人間の背景や展望〔horizon〕に依存 →この相互依存や相関〔correlation〕は,素材の選択が,継続的な注意を確保するには,あまりにも狭 すぎて細かすぎるような別の基盤である場合に現れる危険を取り除く ・ 社会的作業:歴史的で地域的 →特定の社会的出来事と密接に関連する実際の状況を含むようになる →理科の作業〔scientific work〕:より詳細になり,いくつかの特別な領域や特別な過程へと明確に限定 されるようになる(これらの過程は,(前年において)用いられた過程の模倣を通して実行する代わ りに,明確な構成〔definite construction〕のための機会を提供) ・ 歴史的作業:湖の地域の探検と,シカゴの設立およびその成長から始まる。これは,ヴァージニアと ニューイングランドの 2 つの典型的な植民地に関する学習によって後追いされる。 ・ 地理〔geography〕は,歴史と結び付いて提供され,学習される植民地の成長と結び付きながら,その 資源と自然地理学的状況に詳細に取り組む。 ・ 実験的作業 →湖の地域の生態学と結び付いて提供されない →いくつかの植民地の産業に関する学習にとっては付随的〔incidental〕 ・ 初めは,諸活動は自分自身のために実行されるが,結果に対する手段として,より意識的に用いられ る →この結果は,その社会的ないしは科学的興味のために,子どもの興味が生じること〔what happens〕 に対して,いずれの場合であろうと,子どもにとって価値あるものとなる →今や,子どもは,「なぜこんなことが起こるのか私に教えて」と尋ねるよりもむしろ,何が生じるの かを見出すために,ある状況を始めるという感覚で,意識的に実験を始める ・ 最初の諸活動を反省しないことと,次の時期のより限定的な専門化〔specialization〕との間の中間 〔midway〕 10 歳 ・ 子どもは法則を意識的に系統立てて,選択的な観点に従って諸事実を分類できるようになる ・ 特定の産業 →理科的側面:ある明確に限定された諸力(それまでは,より広範な地理的状況と結び付いていた) の状況に適用することが最大の利点 11 歳 ・ →子どもは自らのこれまでの経験のすべてを寄せ集めるために,地理的側面に関して有用な基礎とな大陸の成長 るものを取り上げる準備ができている。 12・13 歳 ・ 系統立てと分類に対する興味はまだ生じていない
→理科の主題〔scientific subjects〕における真の中等教育〔secondary education〕は,始まることができ ないが,前年から始まっている実際的な分化〔practical differentiation〕は,その年の間に利点を備えて, さらに進められ得る。 ・ 実際的な考察〔practical consideration〕 →分化が物理的ないしは生物的側面をとるかどうかを決定する →生物的側面:北アメリカの地理的学習の中で,前年度に簡単に与えられたような進化の過程と連 携しながら,動物生活の現存するタイプに関する学習をさらに進めることが,自然な系列〔natural sequence〕 →物理的側面:重力,光,熱,電気といった,いくつかの特別なエネルギー形態を強調するようなや り方で,子どもたちの過去の経験を集める(より技術的な「物理」の学習へと移行)
Camp, “Science in Elementary Education,” pp.156-65,より筆者が作成
このように,デューイ実験学校の「理科」部門のカリキュラムは,「歴史」部門と同様に,
子どもの成長段階が絶えず意識されながら構成されていた。
3
.「理科」における「分化(
differentiation
)」の実際
では,「理科」部門のカリキュラムは,どのようにして専門領域(教科)として分化される
に至ったのだろうか。本節では,この点を明らかにする。
(1)理科における「分化」と地理
この「理科」部門のカリキュラムの「分化」において,重要な位置を占めているのが,「地
理(geography)」である。表 1,表 2,表 3 を見てもわかるように,「地理」は「理科」の一環
で学習されていた。デューイが言うように,デューイ実験学校では「すべての理科の統一性は
地理学〔geography〕において見出され」,「地理学の意義は,人類の仕事〔オキュペーション〕
の永続的な中心地〔home〕として,地球を提示することにある」とされていたのである
20)。
また,デューイは次のようにも述べている。
〔実験学校における理科の作業の〕最初の 2,3 年間は,子どもの観察力を養い,その子どもたちを,動
植物の習慣に対して共感的な興味を抱き,それらを用いることと関連する事柄をよく見るように導く。
それから,作業の中心は地理学的〔geographical〕 ―最も中心となる地球の学習― になる。ここから,す
べての作業が芽生えて〔grow out〕,そしてそこへ戻っていく。
21)このように,「地理」は「理科」を母体として派生していくとされていた
22)。実際に,表 2
を見てみると,最初は「理科」と「地理」が総合されていた活動が,8,9 歳を境に分かれて
いったことがわかる。また,表 1 では,グループⅣ,Ⅴの活動において,「地理」の内容が明
確に現れ始めている。さらに,時には表 4 のように,「自然地理学(Physiography)」という標
題の下で報告されている活動もあった。
表 4 「理科」における「地理」の活動
グループ 活動報告日 活動の標題・内容 関連分野 グループⅣ (8 ∼ 9 歳) 1899/3/3 【自然地理学(標題)】気候における違いと二次的に気候に影響を与える主要なものに関する原因 【地理(自然地理学)】 1899/3/24 【自然地理学(標題)】近接した国々の気候(水分の影響)/球根の水分の蒸発/太陽が水と土壌に与える影響の違いなど 【地理(自然地理学)】 グループⅤ (8 ∼ 8 歳半・ 9 歳) 1898/ 12/2, 12/9 【砂地図】ハドソン川周辺,ニュージャージー,デラウェア(→植民地時代にこれらの地域にいた動物) 【地理】・【歴史】 1899/1/13 【自然地理学(標題)】ヴァージニアの地図の学習 【地理(自然地理学)】【歴史】 ・ 1899/1/27 【自然地理学(標題)】ヴァージニアの樹木と動物を調べた 【地理(自然地理学)】【歴史】 ・ 1899/2/17, 2/25 【自然地理学(標題)】ヴァージニア(河川の周辺地域と大西洋岸の海抜/最初の定住者たちの地域と生活様式など) 【地理(自然地理学)】【歴史】 ・ 1899/4/7 【ヴァージニア】(東海岸/土地の傾斜/アパラチア山脈の西部海岸沿いの地図) 【地理】・【歴史】Laboratory School Work Reports,1898-1899,より筆者が作成
ところが,「地理」は「理科」のみに限定される教科(領域)ではなかった。表 4 のグルー
プⅤの活動では,「ヴァージニア」をテーマにした学習が行われていた一方で,「歴史」部門で
はこの時期,アメリカ史を学習しており,その一環として,ヴァージニアも学習されていた
23)。
また,キャンプ自身も,9 歳頃になると,「地理は歴史と結び付いて提供され,学習される
植民地の成長と結び付きながら,その資源と自然地理学的状況に〔子どもは〕詳細に取り組
む」
24)と述べている。すなわち,
「地理」は「理科」を母体として「分化」する一方で,
「歴史」
とも密接に結び付いていたと考えられる。
(2)理科における「分化」の実際
次に,「理科」と他の教科(領域)との結び付きと実験活動における内容の専門化という 2
つの視点から,「理科」の「分化」の経過を検証してみたい。
まず,「理科」他の教科(領域)との結び付きを記したのが表 5 である。
表 5 「理科」と他の教科(領域)との結び付き
グループ (年齢) 報告日 活動内容 結び付く教科(領域) グループⅡ・Ⅲ (7 ∼ 8 歳) 1898 年10/28 【原始時代】斧と槍の先端,釣り針の模型製作/熱した石による水の沸騰/洞窟の模型製作 【歴史】(原始時代の学習) グループⅡ (7 ∼ 8 歳) 1899 年 1/6~1/20 【金属】銅鉱石(鉱石の溶解方法/炎/鋳造・雛型/銅の分離(吹きざお)/粘土模型など 【歴史】(原始時代<金属>) 1899 年 2/3 【米】料理の課業で確かめた生米とフレーク状の米の比例した重さ(→算数) 【料理】 1899 年 4/7 【からざお製作】 【工作】 グループⅣ (8 ∼ 9 歳) 1898 年 11/4 ∼ 12/9 【ポテト】デンプンの調理(→ペースト・粘液) 【料理】 1898 年 11/18 【roffea】roffea の染色 【編物】 1899 年 4/14, 6/2 【昆虫箱製作】 【工作】 グループⅨ (12 歳(平均)) 1899 年10/21 【酸素の特性・準備】塩素酸カリウムの使用(→酸素の発生) /塩素酸カリウムの固体・液体・気体の状態→気体を熱して 調理する効果の証明 【料理】Laboratory School Work Reports,1898-1899,より筆者が作成
これを見てみると,グループの子どもの年齢が上がるにつれて,他の教科(領域)との結び
付きが明らかな活動が少なくなっているのがわかる。すなわち,「理科」の活動が徐々に専門
化されているということが考えられる。このことを,実践事例を検討することで明らかにする。
[事例 1
]グループⅡ/1899 年 1 月 6 日報告(標題:
「歴史」)/担当教師:キャンプ
(B1-F14)
25)歴史と理科〔science〕の両方の時間をすべて占めた。少しの時間が,この時期についてのディスカッ
ションに,残り時間は,鉄,銅,スズを使った実験とそれらの吟味に費やされた。また,子どもたちが
観察しながら,金属の一般的な特徴をその用途と関連させて明らかにするために,鉛と亜鉛を使った作
業を行った。例えば,強さと硬さのために鉄を用いること,そして,火の耐久である。
子どもたちは,銅やスズ,青銅についてほとんど知らなかった。実験的作業〔experimental work〕で,
子どもたちは銅線を溶かし,熱いうちにそれを強く叩いた。子どもたちはスズを溶かし,そのしずくを
水に入れて冷やしながら,それが球状の形態を示して,その形が水中で冷やされることで保たれている
ことを知った。
〔…中略…〕。これが行われたのは,子どもたちが鉛の弾丸について尋ねたからだ。彼らは,
全員がそれを使ったことがあった。
子どもたちは,金属性の銅を含む銅の鉱石を示され,それが,彼らが石と呼ぶもののなかで最大の金属
を備えた形で見つけられるという話をされた。子どもたちは,人類が他の石から手に入れることができ,
『鉱石』という名称を与えられた金属を含む石を区別した。
[事例 2
]グループⅡ/ 1899 年 1 月 6 日報告(標題:「理科」)/担当教師:ヒル(B1-F14)
歴史と結び付いた金属について取り組んだ。子どもたちは,一片の銅鉱石を調べて,初期の金属時代
の人々が,どのようにして鉱石を溶かしたかを理解した。また,子どもたちは,さまざまな金属のワイ
ヤーを熱して,熱くなった端の部分をハンマーで打った。
[事例 3
]グループⅣ/ 1899 年 3 月 3 日報告(標題:「自然地理学」)/担当教師:キャンプ
(B1-F21)
気候における違いと,気候に二次的に影響を与える主要なものの一般的な原因について取り組んだ。
子どもたちは貿易風について議論し,熱帯からの熱せられた大気とかまどからの大気を比較することに
よって,冷気が熱気を上に押し上げるという考えを示した。子どもたちは,以前に,部屋の通風を追跡
していて,冷気と熱気の流れの方向を見出していた。それから,地球が静止したままだったら風はその
方向に吹くが,もし,地球が回っているのならば,何が生じるだろうかという示唆に対して,1 人の子
どもが,風が〔回っている〕地球の周りにある風の方向を話した。
[事例 4
]グループⅣ/ 1899 年 5 月 5 日報告/担当教師:キャンプ(B1-F27)
〔前略〕子どもたちは,熱がさまざまな物質に与える影響について,また,自分たちが取り組んでき
た物質の固体から液体,気体への変化について学んできた多様な事物を集め始めた。それから,大昔の
地球の様子〔熱ガス,岩石〕について,秋に自分たちが扱った物語に立ち戻った。この点で,私〔キャ
ンプ〕は,この岩石とその周囲にある気体〔ガス〕,そして,現状下での地球との間をある程度結び付
けるために,子どもたちが事物のさまざまな状態について自らが知っている事柄から,どの程度一般化
できるかを知ろうと考えた。
そのため,私たちは高温で燃えると知っている物質のすべてのリストと,単に溶けて形が変わるだけ
だと知っている物質のすべてのリストを作成した。そして,より一般的な標題〔金属,岩,気体,生物〕
の下で単純化され得るものを 1 つずつ消去していくことによって,子どもたちは,「もし物質が最初に
この状態であったならば,自分たちが知っているような生物が現れるのに必要な条件は何か?」という
疑問に取り掛かった。子どもたちは空気や水,土などが,生命の出現のために最も必要な条件であるか
どうかについて議論した。最終的に,子どもたちは,生物にとって不可欠な必要条件が水と空気である
と結論付けた。
[事例 5]グループⅧ/ 1898 年 12 月 2 日報告/担当教師:ヒル(B1-F11)
〔前略〕子どもたちは,鋳造鉄,鋳鉄,鋼鉄の破片を観察して調べて,それぞれの光沢の度合いと錆
の量の違いに気付いた。また,鋼のレールの断面図を見て,鉄の鑢くずに対する膨張した鉄の作用を観
察した。そして,子どもたちは,非常に膨張した鉄のさまざまな種類の断面が載っている写真を見た。「固
めること」と「鍛えること」の異なる過程が与えられ,次週は,鉄のさまざまな種類に対する多様な用途と,
特別な種類が特別な目的のために用いられる理由について話す予定である。
まず,事例 1 と事例 2 のグループⅡの活動では,「歴史」部門と「理科」部門の活動は,毎
回共同で行われてはいなかった
26)。しかし, 1 つのテーマを中心にして,
「歴史」部門と「理科」
部門を統合した活動を行うことのできる素地があったと言える。
その一方で,グループⅧ(事例 5)は金属をテーマとした学習を行っており,この活動は
1898 年度が始まったときからすでに行われていた。この同日の「歴史」部門の報告では,ロ
ーマ史をテーマとした学習を行っており
27),「歴史」部門の活動と密接に関わっていたわけで
はない。すなわち,この金属に関する学習は,「理科」部門において単独で行われており,専
門的な学習を実施していたと考えられる。
そのため,グループⅣ(事例 3,4)の活動は,このように専門化していく間の事例として
位置付けることができる。実際に,表 5 からもわかるように,このグループの活動は,料理
や編物,地理と結び付いた活動を行う一方で,事例 5 のように,「理科」としての専門的な内
容にまで踏み込んだ実践も行っていた。
次に,実験活動の内容の視点から,「分化」の経過を検討する。1898 年度に実施された実験
活動は,次の表 6 の通りである。
表 6 実験活動の内容と教科(領域)区分
グループ (年齢) 報告日 活動内容 (領域)教科 グループⅡ (7 ∼ 8 歳) 1899 年 3/3 【金属の特性】銅のトレイを熱する→黒い薄片の発見 化学 1899 年 3/10 【植物の根】根が水分を吸収する際に,その水分は地中から何を取り込むのかを理解するための実験 植物 1899 年 4/21 【エンドウの苗木】土と水が別々の方向にあるとき,根はどちらに向くかを調べる実験 植物 グループⅢ (8 ∼ 9 歳) 1899 年3/24 【気候】太陽が水と土壌に与える影響の違いを調べる実験(砂と水を使用して) 地学・化学 グループⅣ (8 ∼ 8 歳半・ 9 歳) 1898 年 11/18~12/23 【種子】成長する植物に加わった重さが,地中か空気中のどちらから得られたのかを調べる実験 植物グループⅣ (8 ∼ 8 歳半・ 9 歳) 1899 年 1/27 【種子】植物が空気中から栄養分を摂取することを調べる実験 植物 1899 年 2/3 【空気】空気の重さを調べる実験(← 1899 年 1/27 の実験結果からの疑問) 物理 1899 年 2/17 【植物】気体が生長する植物から放出されるかどうかを調べる実験 植物・化学 1899 年 3/3~3/24 【植物】植物の呼吸を調べるための実験 植物・化学 1899 年 4/7 【豆の苗】珠孔の機能に関する実験 植物 1899 年 4/21~5/12 【植物】日向にある植物から発せられる気体を調べる実験 植物・化学 1899 年 5/19~6/2 【植物】植物の根に酸があるかを調べる実験 植物・化学 グループⅤ (9 ∼ 9 歳半) 1899 年 11/11~12/2 【体積】水を使って,石の体積を測量する実験 物理 1899 年 1/27 【温度計】水銀の揮発性を発見する実験 化学 1899 年 3/24 【温度】黒や白の覆いが人体に与える影響を調べる実験 化学 1899 年 5/12~6/2 【植物】根が成長可能な表面が存在するかどうかを調べる実験 植物 グループⅦ (10 歳(平均)) 1/27,2/31899 年 【振り子】振り子の振動数と時間に対する振り子の長さとの関連を発見する実験 物理 同上(a, b) 1899 年5/12 【生理学】胃液の効果を調べるための実験 生理学 同上(b) 1899 年6/9,16 【生理学】吸う息よりも吐き出された息に炭酸ガスが多く含まれていることを示す実験 生理学 グループⅧ (11 歳(平均)) 2/3~2/251899 年 【気体】酸素を製造する実験 化学 グループⅨ (12 歳(平均)) 1898 年 10/28, 11/11 【気体】鋼のばねとマグネシウムリボンを酸化させる実験/酸化銅の還元の実験 化学 1898 11/23, 12/2 【気体】モルタル,漆喰,石灰と二酸化炭素の関係を調べる実験 化学 1898 年 12/9 【気体】炭酸カルシウムが,二酸化炭素を含む水の中にあるときの溶解性を見出すための実験 化学 1899 年 3/3, 3/24 【気体】二酸化硫黄の発見に関する実験 化学 1899 年 3/24 【合金】合金(不純物)と作る実験 化学 1899 年 4/21 【種子】発芽の手法を確定するための実験 植物 1899 年 5/26 【種子】子葉の役割を見出すための実験 植物