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論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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氏 名

学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員

【11】

論 文 内 容 の 要 旨

【背  景】

 潰瘍性大腸炎(以下UC)において、大腸粘膜に限局した原因不明の慢性炎症性腸疾患である。根 本的な治療法は未だ見出されておらず、腹痛や血便といった症状を抑えることにより寛解を得て、ま た寛解を維持することが治療の目標とされている。

 アミノサリチル酸製剤(以下ASA)は大腸粘膜に作用し、炎症を抑える効果があると考えられて おり、古くから使用されている。過去の研究により、高用量のASAでかつアドヒアランスが高いほ ど寛解維持率が高くなることが示されている。しかし内服量が多いと患者の内服のアドヒアランスの 低下をきたし、また高用量を長期間維持することは医療コストがかかるため、可能であればASAの 用量を減量すべきである。しかし現在のところASAを減量する基準については一定の見解は得られ ていない。

 また近年、粘膜治癒を達成することにより、再燃率や入院率を低下させ、また潰瘍大腸炎関連大腸 腫瘍等に対する手術率が低下するという研究結果が示され、臨床的寛解のみでなく粘膜治癒を治療達 成の目標とする考え方が広まってきている。しかし粘膜治癒が得られた際のASAの投与量について も一定の見解は得られていない。

【目  的】

 寛解維持期のUC患者において、ASAの用量を維持すべきか減量すべきかについて検討を行う。粘 膜治癒はASA製剤減量の根拠となるかについて検討を行う。

たか

 橋

はし

 史

ふみ

 成

あき 博士(医学)

甲第690号

平成29年3月7日 学位規則第4条第1項

(内科学(消化器))

Timing for dose-down of 5-ASA depends on mucosal status with ulcerative colitis

(潰瘍性大腸炎における粘膜の状態による5-ASA製剤減量の時期に関 する検討)

(主査)教授 加 藤 広 行

(副査)教授 窪 田 敬 一     教授 今 井 康 雄

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【対象と方法】

 2008年1月から2014年12月において、獨協医科大学病院および足利赤十字病院に通院中のASA単 独、もしくはASAと免疫調節薬(以下IM)の併用にて臨床的寛解期にあり、かつ大腸内視鏡にて粘 膜の評価が得られているUC患者を対象とした。IMを併用している症例は、観察期間中に投与量が一 定の患者を対象とした。臨床的寛解はRachmilewitzのclinical activity index(以下CAI)で4点以下 と定義した。ASAを1年以上同量維持投与した症例、また観察期間中にASAを減量した症例を対象 としたところ、207例が抽出された。ASAの投与量はメサラジン量として3600mg/日以上の投与を高 用量とし、それ以下を非高用量とした。

 内視鏡の判定にはMayo endoscopic subscore(以下MES)を使用し、MES 0またはMES 1を粘膜 治癒とした。内視鏡所見はinflammatory bowel disease(IBD)診療を専門とする3人の内視鏡医に より判定を行い、2人以上で一致したスコアを採用した。大腸の各部位において最も炎症の強い部位 におけるスコアを採用した。計203例を検討可能症例とした。MES 0またはMES 1と判断された症例 は176例であった。また、MES 0とMES 1との間に差があるかを判断するために、MES 0とMES 1と が3人とも一致した症例を抽出したところ、176例中120例が一致した。そのうちMES 0の群は96例、

MES 1の群は24例であった。ASAを同用量継続している群と減量した群に分け比較検討を行った。

次に粘膜治癒が得られている群と得られていない群に分け比較検討を行った。さらに粘膜治癒が得ら れている群をMES 0とMES 1に分け比較検討を行った。再燃をきたしやすい危険因子があるか、年 齢・性別・罹患期間・病変範囲・IM併用の有無・入院歴の有無についても解析を行った。

【結  果】

 ASA継続群と減量群について比較検討を行ったところ、ASA継続群の方が統計的有意差を持って 寛解維持率が高かった(P < 0.001)。次にASA継続群を高用量群と非高用量群とに分けて検討を行っ たところ、非高用量群は減量群と比べて有意差を持って寛解維持率が高かった(P < 0.001)。高用量 群は減量群と比べて寛解維持率が高い傾向は認められたが(P = 0.092)、統計学的有意差は認められ なかった。

 ASA継続群と減量群をそれぞれ粘膜治癒が得られている群(EH群)と得られていない群(NEH群)

とに分けて検討を行った。EH群は176例でありNEH群は29例であった。EH群はNEH群に対し有意差 を持って寛解維持率が高かった(P = 0.020)。またこれらの群をASAの継続と減量にて4群に分けて 検討を行ったところ、EH/ASA継続群とNEH/ASA減量群との間で寛解維持率に有意差が認められ た(P = 0.042)。一方、EH/ASA継続群とNEH/ASA継続群を比較したところ、寛解維持率に有意差 は認められなかった(P = 0.245)。NEH/ASA減量群は4例のみであり、全例において再燃が認めら れた。さらにMES 0とMES 1とについての検討を行った。MES 0群とMES 1群とについて寛解維持 率に差があるかを検討したところ、統計学的有意差が認められた(P = 0.007)。それぞれの群をASA の継続と減量にて4群に分けて検討を行った。MES 0/ASA継続群とMES 0/ASA減量群とでは統計 学的な有意差は認められなかった(P = 0.108)。またMES 0/ASA継続群とMES 1/ASA継続群を比 較しても統計学的な有意差は認められなかった(P = 0.111)。MES 1/ASA減量群は4例しかいなかっ

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たが、観察期間内にその半数において再燃が認められた。粘膜治癒の症例とMES 0の症例において再 燃の有無により2群間比較を行ったが、年齢・性別・罹患期間・病変範囲・IM併用の有無・入院歴 の有無に差は認められなかった。

【考  察】

 今回の我々の検討では、寛解維持期にあるUC患者において、ASAは減量すると同用量を継続す るよりも再燃率が高くなることが示され、臨床的寛解のみではASAは減量すべきではないと考えら れた。また近年、UCの加療の目標として粘膜治癒が推奨されるようになってきている。粘膜治癒と ASAの投与量について、過去の研究と同様に我々の検討においてもEH群の方が寛解維持率は有意 に高かった。しかし、EH/ASA減量群はEH/ASA継続群と比較して寛解維持率が有意に低かった。

WEH/ASA減量群は4例しかいないが、全例において再燃を認めており、粘膜治癒を認めていない 状態でのASAの減量は行うべきではないと考えられた。EH/ASA継続群とWEH/ASA継続群との間 には寛解維持率に有意差は認められず、粘膜治癒が得られていなくでもASAを維持することで寛解 維持が保たれるということが示された。さらに粘膜治癒として扱われることの多いMES 0とMES 1に も差があり、MES 0までの改善を認めてからASAの減量をすべきであると考えられる。

【結  論】

 潰瘍性大腸炎患者において臨床的寛解期や粘膜治癒を認めていた場合であっても、ASAは減量す るよりも継続した方が再燃しにくいため、できるだけ継続することを推奨する。また粘膜治癒の中で もMES 0とMES 1とでは差があるため、MES 0の達成を目指すべきである。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

【論文概要】

 潰瘍性大腸炎(UC)は原因不明の慢性炎症性腸疾患である。アミノサリチル酸製剤(ASA)はUC 加療の第一選択薬として使用されるが、寛解維持期におけるASAの投与量については一定の見解は 得られていない。また粘膜治癒(MH)を治療目標とする考えが広まっているが、粘膜治癒が得られ たUCにおけるASAの投与量についても一定の見解は得られていない。申請論文では寛解維持期にあ り、粘膜の評価が出来ている203例を対象とし、寛解維持期のUC患者におけるASAの投与量につい てMHとの関連性をふまえ検討している。また粘膜治癒は一般的にMayo endoscopic subscore(MES)

の0もしくは1とされており、その差についても検討している。検討の結果、ASA減量群よりも継 続群の方が、非粘膜治癒群よりも粘膜治癒群の方が、寛解維持率は高かった。また、MH/ASA減量 群よりもMH/ASA継続群の方が高い寛解維持率を得られていたが、MES 0/ASA継続群とMES 0/

ASA減量群の間には寛解維持率に有意差は認められず、粘膜治癒のなかでもMES 0とMES 1とには 差があることが示されている。これらの結果から、寛解維持期のUC患者におけるASAの投与量に関 しては、MES 0までの粘膜治癒を認めてからASA減量を検討すべきであると結論付けている。

【研究方法の妥当性】

 申請論文では、複数の施設における多数の患者を対象としており、また複数の内視鏡医により大腸

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内視鏡所見を解析している。適切な検討可能症例の設定と客観的な統計解析を行っており、本研究は 妥当なものである。

【研究結果の新奇性・独創性】

 寛解維持期のUCにおいて、ASAの投与量を減量するか否かについては一定の見解は得られてい ない。申請論文では、複数の施設における多数の症例を用いてASA継続と減量、粘膜治癒の有無、

MES 0とMES 1における寛解維持率の差について検討を行い、粘膜治癒のみでASAは減量すべきで はなく、MES 0までの改善を認めてからASAの減量を考慮すべきであると初めて明らかにした。こ の点において本研究は新奇性・独創性に優れた研究と評価できる。

【結論の妥当性】

 申請論文では、多数の症例を確立された統計学的解析を用いて、各群の寛解維持率の比較を行い、

ASAの減量を検討するタイミングについて検討している。そこから導き出された結論は論理的に矛 盾するものではなく、また消化器病学、消化器内視鏡学など関連領域における知見を踏まえても妥当 なものである。

【当該分野における位置付け】

 申請論文では、寛解維持期にあるUC患者においてASA投与量を減量するべきか否かについて内視 鏡所見との関連を明らかにしている。これはUCの寛解維持治療において必要不可欠であるASAの投 与方法について今後更に検討をしていくために大変意義深い研究と評価できる。

【申請者の研究能力】

 申請者は、消化器病学や消化器内視鏡学の理論と実践を学んだ上で、作業仮説を立て、実験計画を 立案した後、適切に本研究を遂行し、貴重な知見を得ている。その研究成果は当該領域の国際誌へ掲 載されており、申請者の研究能力は高いと評価できる。

【学位授与の可否】

 本論文は独創的で質の高い研究内容を有しており、当該分野における貢献度も高い。よって、博士

(医学)の学位授与に相応しいと判定した。

(主論文公表誌)

Scandinavian Journal of Gastroenterology 51:827-834, 2016

参照

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