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文法規則の組織化と学習(?) ―潜在ドメインの発 見―

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

文法規則の組織化と学習(?) ―潜在ドメインの発 見―

著者 高橋 孝二

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 27

ページ 27‑34

発行年 1991‑03‑01

その他のタイトル Grammar Modules and Learnability (VIII) : Discovery of Potential Domains

URL http://hdl.handle.net/10105/6755

(2)

文法規則の組織化と学習(¥D*

m{¥‑ト L f二・・.I*llELl

高 橋 孝 二‥

(英語学教室)

教えることが可能な英語の言語材料を教育するのが「英語科教育」であるとすると、教えるこ とが不条理(absurd)でありながら言語教育の土台を提供することが「教育言語学」の仕事で ある。本論考(Ⅷ)は最新の枠組に立ちながら、学習者に見えて来る美しい構造のシンメトリー が、これまで恩いも及ばなかった構造領域をdomesticなものにする過程の中で獲得される相面 を摘出する。

キーワード'・Potential Domains, Relativized m‑barrier, Syntactic Economy

O.アメリカMITにおける言語獲得(Language Acquisition)の授業(1990、秋学期)は、

S.PinkerとK.Wexlerとによって展開されているが、その内容は次のように要約される。

(1) 統語現象と形態現象との学習可能性(learnability)について経験的に研究するとき、

それが依拠する文法理論は最新のものでなければならない。

・言語の生物学(the biology of language)を志向する過程で、言語能力のどの相面が 生得的神経モジュールを構成し、どの局面が他の認識能力と共有されるかを明らかにし て行く。

・この30年間に行なわれて来た倫理的に許容される実験は間接的で粗野なものであり、そ の科学以前性は今E]の言語理論によって克服される必要がある。

・このとき制約原理群の絶対性と相対性とから言語構造が究められなければならない。

本論考シリーズはこの意味で一定の日付を有していて、その後の枠組の発展によって修正を受 けることはあっても、それぞれの根底は不動のものである。 MITでの展開は、依然としてその はじまりをN.Chomsky (1959)の"Review of Skinner's Verbal Behavior"に求めてそのサー カス・トリック性を排する姿勢を堅持し、現行のGB理論を尊重しながらSyntaxの「成熟」の 問題に及んでいる。

本稿は上述の路線を歩みながら、しかし独自の視点を提供する試みの一つとして、句構造の隔 壁の有無によって学習者がどのように「絶対ドメイン」を獲得して行くのか、その組織化の「力」

を把えようとするものである。そのためには潜在的(すぐに実現する)ドメインの発見が前提作 業となる。

'Grammar Modules and Learnability (Vffl) : Discovery of Potential Domains

**KOji Takahashi, Department of English Linguistics, Nara University of Education

(3)

1. 「適合し得る(compatible)」という概念

構造関係の定義づけには、 ①成分配置図上の(configurational)条件と、 ②統率子(束縛子) としての資格を満足する実質的な(substantive)条件、 ③更に局地性(locality)条件とが明示 される必要がある。この三つの条件のうち②と③は実際に満たされなくとも、 「満たされたであ ろう"could have been satisfied"」という「ライセンス条件」によって代替が可能であり、最 小の完全機能複合体(CFC)が①の分布条件によって発見されれば十分である。

(2) CFCの発見

γは次の要請のいずれかに合致すれば完全な(complete)機能複合体(functional complex) となる。

a. 1が語嚢的主要部(lexical head)に相関するすべてのβ‑役割の付与されているド メイン(domain:範囲)であること。

b. γが語嚢的主要部に相関するすべての文法機能が実現されているドメインであるこ と。

ここでは、束縛接合ドメインの特定に必要とされる主語概念(subject, SUBJECT)や、 NP またはS (‑IP)への言及といった実質的条件は不要となり、更に統率支配ドメインの特定に必 要とされる主要部‑ ([±Ⅴ±N], Agr, T} や、二項問への同一指示のための指標付与(co‑in‑

dexing)といった実質的条件も不要となる。前者の場合、前方照応を必要とする要素αがVP中 にあればαはこの領域でまず統率を受けており、ついで(2)の規定によって求めるドメインがこの 動詞句を含む最小の文であることが分かる。このドメインには常にαが同一指標を与えられるこ とになる主語が投射原理によって認可されているからである。後者の場合、二項間の関係を介入 によって絶ち切るm‑バリアーの相対化によって潜在するドメインが見えてくる。この筋道は① の成分図への条件にひそんでいる。 GBモデルがここで果たす必須の学習概念は次の(3)である。

(3) a.基底で生成される位置(position) b.二分される統御(command)

(3 a)については、 X‑bar理論によって主要部の投射が補部(comlements)をとるはかに、

「分かれ滝」のように指定部(specifier)を分出させるカスケード機能が既に認められている。

上述の主語はSpec‑IPであり(2)のCFCがこの機構に関与していることが予測され、相対化され た最小条件(Minimality : m‑バリアー)の阻止効果もSpec‑Head位置に限定される。 (Spec‑CP としてのCOMPについては後述する。) (3b)の二分化の相は次のように把えられる。今、カ テゴリ‑X、 Yが互いに上位支配(dominate)をしておらず、 Ⅹを上位支配する最初の最大投 射がYをも上位支配するならばそれはm‑commandであり、この制御関係から最大(maximal) という規定を除けばよりきびしい概念としてのc‑commandが得られる。主要部統率はm‑制御 を活用し、先行詞統率はC‑制御を活用する。先行詞によるカスケード的統率は束縛接合でもある。

主要部が機能頬である場合にはmからCへの交換が認められるが、これらは具体例の検討の際 に論じることにする。この章では「適合可能性」の概念が現実に必要な文法情報(単なるル‑ル ではない)を代補する概念規定につながる発見の手順を考えて来たが、普遍的な「ライセンス条

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(4)

件」とは一体どのようなものなのであろうか。

与えられるいかなる文(sentence)もいくつかのレベルから成る差異化された統語表示に結び つけられるが、最大投射は文法項(arguments)、述部(predicates)、演算子(operators)と

して表示のそれぞれの統語レベルで認可される必要がある。個々の単語の語嚢特性が構造的に実 現されることを要求しながら投射原理は表示形式の下限を規定し、他方「完全解釈(Full Inter‑

pretation)」の原理は正当と認められた要素だけを構造的に実現させるという上限の規定を行な う。前者はすべての句構造に主要部位(heads)が存在することを言い、後者は限定されたメカ ニズムに最大投射カテゴリーが属すことを述べていて、両者は潜在的な相補性で結ばれている。

これらの制限画定的な原理が最もよく学習者に見えるのは、 「変形の歴史」を描き出すカスケー ド連鎖が形成されている時である。

(4) C‑Chain‑ (a,,・ ・ ・, a )

ここでα1はこの連鎖リンクの頭としての句であり、この位置には格(Case)が付与される。

α。は尾としてのリンクであり、この位置には中核的意味の素であるβが付与されていて、二つ の素性がα1とα。間で交換される。このドメインはより絶対的ドメインの断片なのであるが、先 述のSpecが関与するならばai‑ maximal projectionであり、主要部位のみの移動であれば

αi‑X である。構造を切り拓くα.を認可するものが(2)のCFCでもあり、 α。を認可する原理 も見出されている。このところを概観しよう。一般に句を取り出すドメインに課せられる条件は CEDから得られる。

(5)取り出し(extraction)領域への制約

句AがドメインBから抽出できるのはBが適切に統率されている時に限られる。

ここで言う「適切統率」がすぐさま理論上の大問題につながることは明らかであるが、ここで は「適合し得る」という概念から接近してみる。空の要素α。がトレースとして認可されかつ同 定されるためには、この上に立って、カスケード鎖の発端が0に支配される目的語(9‑governed object)としての文法関係に立っことが知られればよい。この関係は次のように得られる。

(6) ♂‑統率支配

αがβにβを刻印するゼロ・レベルの範噂であり、かつα、 βが姉妹関係(sisters)にあ るならばαはβを6‑governする。

各々の自然言語は右か左の規範的な(canonical)統率方向をパラメータとして選択していて、

これが主要部の補部(目的語と補語)への関係を決定する。 (文型指導はこの原理の有効性に気 づいていなければならない。) α。‑βのとき、 αの具現例の多くは他動詞と前置詞の場合であり、

これが前述のm‑commandであり、両者は次の再分析の形にまとめられる。

(7) I、,】‑V U>(P)NP]J ‑ [vpV (、′‑り(P)NP]1

主語位置からの取り出しは複雑であるので以下の具体例の検討の中に散逸させることにする。

2.指標の接触クラスターが合図するもの

屈折する前の裸の(non‑fleeted)動詞は、そのVP内の主要部位置からもっとも近くにある属

(5)

折結節INFLの主要部位に引き上げられ、そこで含まれる素性とアマルガム化して呼応する。こ の移動はhead‑to‑headの回路を用いていてⅩ0‑鎖を形成するが、その過程は次のように潜在し ている。

(8) a. Comp‑INFL (Tense) ‑Agr‑V (INFLには格付与能力がある。)

(modals) (do)

b. [c[t U, [V] Agr] T]C]

(8 b)の入れ子形式(abyme)は主題(のに関して不透明性(Opacity)を示していて、

文が時制文から不定詞節に変わるとき普遍性を示す。このβ‑Opacityと前章の相対最小条件 (Relativized Minimality)とが関与し合う潜在ドメインが存在することを明らかにして行こう。

相対化されるm‑バリアーとは、成分配置Ⅹ‑Z‑・Yにおいて、 Zがある種の(of some kind) 潜在的統率性をYに対して持っているならば、その種の(of that kind)統率をXがYに対し て実際上行なえなくなる言語事実を把えた理論化である。このモデル杏(8)に生かすならば、この 回路に0‑鎖が不透明なままで介入することを排除するフィルターが得られることになる.

(9) β基準(Theta Criterion)

(i)各β位置はただ一つの文法項を含む連鎖に帰属する。

匝)各文法項はただ一つの∂位置を含む連鎖に帰属する。

ここでも前章の立論と同じく、現実にβの伝送がなくてもβ‑役割の引き継ぎ(inheritance) で十分である。具体例を観察しよう。

'Who, does he; love t,? (tはWhoのトレース)

ここに形成されたWh‑連鎖にはSpec‑CP/IP間に介入効果が認められるはか、 AgrからTense に移動して屈折したdoesの痕跡が抽象動詞句Iove feの前に介入している。これが交差の現象で ある。ここではWh‑トレースもdoesの痕跡もβに対してともに不透明なままである。

a. 'John, does; not bei happy.

b. Dont be silly!

(8)のアビームはVがβ性を欠いているならば義務的に形成される be/haveがこれにあたり、

(lla)ではbeでなくdoが移動していて、その痕跡と共に後に明示するフィルターに抵触する。

(lib)の命令文ではbeではなくdoがAgrの位置で否定辞を担っているINFL (Tense)はオ ペレータであるから、アマルガムによる一切の痕跡はこの場合生じない。

*The politician! was known; which picture of t, to take.

ここでthe politicianがトレースtlを先行詞統率できないのは途中にknown+enが介在して いるからであり、過去分詞の「主語性」がknown以下のドメインをバリアー化しているのであ る。

'John; is believed that he; likes t,

(12)の非文法性は主文の主語NPが埋め込まれたSpec‑CP位置からのNP移動を行なっているこ とにも起因するが、 (13)ではいずれの制約にも抵触していない(8)のⅤ‑to‑I移動によって主・従 二つのVPのバリアー性が除かれているにもかかわらず胴は非文であるo初期の理論化からは、

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(6)

時制文条件と指定主語条件の二つのOpacityによって説明されるが、この行き方は(1)の方針に 反することになる。 (10)で見た介入効果とはことなるNPトレースへの競合がJohnとhe、 heとt との間に二重のC‑統御として発現している。あるいは(12)のようにbelieved中の受動形態素が下 位のドメインに隔壁を作っているとも考えられる。学習者はこのような妥当性を自ら発見して行

くのであって、誰からも教えられるのではない。

*Who> do you think that fc left early

ここに認められる古典的that一トレース効果も(1)の方針に従わなければならない。 COMPに一 つだけ位置を設定する標準的な分析からは、 [C。、te t'that]が主語位置のトレース(t)を先行詞 統率できないことがc‑commandの不成立から述べられていた。しかし現行の枠組では、 t'が CPC‑S')のspecifierの位置を占めており、 thatがCというhead位置にあるためにc‑com‑

mand関係は影響を受けないことになる。

[cp t' [c↓hat [ip t‑‑

主要部であるthatがIPの指定部位にあるtを統率するかどうかは相対m‑バリアー論からは 問題とならない。先述のように種頬が異なるからである。 (14)の非文に対して(16)が文法性を回復す

ることに注目しよう Spec‑Compがwh‑オペレータやトレースによって充填されるとき、 Comp の空の主要部に何かが起こっている Spec‑CPのSpecにWh一句が関与し、 0がSpec‑IPを統率 する。

a. Who do you think [0 [t left early]] (0はゼロの補文化辞) b. Who 0 [tleft]

通常は活性のない(inert) Compの主要部が適切な主要部統率子へと「変身」を遂げている のが判る。ここに潜在するドメインはどのような関係が成立しているのだろうか。LL(勿論ここで も誰も教えてはくれない。)これまでの「英語教育学」はこの現象の重要性に気づいていない。

文法理論の確立を避けて「経験」だけに頼っていて、 [you think]を「挿入語句」として片づ けるだけである。

実はここに主語位置にからむ特異性がひそんでいるのである。生成理論内でのこれまでの取り 扱い方は、 COMP内での指標の浸透(percolation)ないしは同一指示付与(coindexation)が 前章でのsubstantiveな条件を構成するものと約定されていた。今日ではより広い概念規定とし ての指定部と主部との呼応関係(Spec‑Head agreement)が発見されている。この呼応理論はC (‑0)とSpecとの間にINFLのAgr素性が他動性(transitivity)のネット・ワークによって 送付されるCOMPドメインでの文法関係を把えるものであり、その背景には抽象格(abstract Case)の付与がある。この送付される格素性の起源はアビーム(8)のVであり、このXD‑鎖の Comp (‑C‑)まで移行し、この位置から補文の主語トレースをH‑統率する。このためにはCo が空でなければならない。構文が時制を欠く不定詞節の時には、格素性の起源が主文の動詞に変 更される。 Ⅹ0‑鎖内での素性移行には隣接の条件(Adjacency)がゆるめられる。

a. "How angryヨdid Jolm leave the room t?

b. How intelligent do you consider John t?

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(17b)の選択された(selected)小さな節(Small Clause)はVPの範囲内にあり、 APの 取り出しはそのトレ‑スが動詞の直接投射ドメインで主要部統率されるために可能である。これ に対して(17a)の選択されない付加的(adjunct)小節はこのドメインにないために摘出は許 されない。この現象を別な視点から見ると、 Johnに0を付与しているIeave the room‑VPド メインが介在しているためにJohnへのもう一つの0イr与子(assigner)であるangry‑APが 相対的阻止効果によって移動が妨げられていることが判明する。これは̀8‑minimality'の例

である。

以上(10M17)のデータはいずれも*a, 5, β.という指標(index)の群がり(cluster)を構成し ていて、これが非文法性の原因になっている。これは(8)の8‑Opacityアビームが破壊されるた めであり、二重のC‑制御が正常な二重の呼応 agreement)を阻止しているためであると考えら れる。

3.主語の「あとから」性

IP (‑S)の主語位置を占める構成要素内からの抜き取り移動が非文法的結果につながること はよく知られている。 (「文主語‑の制約」は本論考シリーズ(I)で検討されている。)

・Who,、do you think that [pictures of td will be on sale?

もしこの移動を許すならば、それは主語文法項へのセグメント付加につながり完全機能複合体 (CFC)としてのGF‑eの分割を引き起こして、表示の経済性を支えている制約原理群をおびや 'Mm

前章で得られた'a, 5, βLフィルターは、句構造の主要部位(X‑)と周辺部位(カスケード 化するSpec)とに関与する変形レベルでの相対性の断片を把えるものであり、選択的認識を合

図する「フィルタ‑素」が共通の起原を有するものと考えられた。

本章では、主語の特異性に注目しながら言語獲得の局面を深く理解して行くことにする。

はじめに次の問いを立ててみる。 「主語はどこから来たのだろうか?」文(IP)の基本構造は (19)によって与えられるのが一般である。

[,PNP INFL(Neg) [vp (Adv) V‑]] (INFLはその中味の分離独立を許容する。) この[NP, IP]位置に来る主語の元位置がVPドメインにあるとする仮説では、主題を持っ 主語がD‑構造で小節の配置図にVP付加される。 (この発見には浮遊する定量詞のふるまいが絡 む。)

伽 [vpNP VP]

付加形式eO)は(8)の入れ子形式に酷似している(U tV] Aff] (Aff‑Agr/Tense))。次に元 位置はSpec‑VP (VP‑Spec)ではないかとも考えられる。するとこれはカスケード系に属すこと になる。更に元位置がSpec‑AgrPとして生成されるとすると、 (19)が(2カに取って代わられること になる。

(21) UrrNP 栂Agr" [Tp[tT‑[VP‑ (ここでは否定句(NegP)の位置が問題になる。) しかしこれもカスケードの順序づけに帰せられ、比較文法上の異形にすぎない。

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(8)

次にI[\pe [npまたは*[ォe [eを禁止された主語NPの取り出しに文法がどのような戦略を用い るかを見よう。 (18)のトレースを支えるものは何もない。しかし自然言語は何故このような固有の デザインを施すのであろうか。主語NPはまず文中の他の主要な文法項位置からの変形を優先さ せ、自らは「あとから」常に遅れて個別言語ごとに工夫する。主語位置のトレースの認可には常

に特別なメカニズムが要請され、 Compドメインでの呼応によってCoを統率子に活性化させる 前章での仕組みも、フランス語のque‑qui交替もこの工夫の実例である。ここには「語用論」

的機能文法の入り込む余地はない。主語の「あとから」性は他にも認められる。そればvacuous な変形である。

a. What do you wonder [cp who saw t]? (tはWhatのトレース)

b. "How do you wonder [cp who fixed the car t]? (tはHowのトレース) (22a)でWhatがローカルなSpec‑CPに移動する時に主語はSpec‑IPに留まりこの移動を支 え、 Whatが母体文のSpec位置に移動してからローカルなSpec‑CPに入りWh‑島を形成する。

このようにしてWhoは(What, t)の連鎖に介入することを避けている。空虚な移動はS‑構造 で沈黙する。しかし移動項目が付加詞の場合にはこのWhの島が通過を阻止する。

更に主語NPがSpecを分出してNPドメイン内にA位置を作り、名詞の捕部の連続循環的な A移動を許容さえする。

M a.ホWho did you think that pictures of t were on sale?

b.つWho did you wonder which pictures of t were on sale? (Cf.(12))

前章の(13)に関して初期のOpacity条件に依存すべきでないと述べたが、この背後にひそむ優 れた洞察力は勿論生かさなければならない。主語が指定されている(specified)ということはAI Specとしての主語がA‑照応句に対してその範囲で接合されることを要求して不透明領域を作り、

自らはNP移動の回路となることを意味する。相対m‑バリアーはこの不透明性を統率概念にま で一般化しようとする試みなのである。ここのところを独自に「Opacityのキャリア効果」とし て把えてみる。

指定主語と時制節が主語と主格(nominative)という概念によって代補され得ることを示し たOB体系は、 NIC‑Opacityモデルがピサ理論を経由して今日の境界理論に発展することを約 束していた。変形の「フィルター応答」という経済性は、これを広義に解釈すると、派生成分構 造が同種カテゴリーや異種カテゴリーに由来する成分組織に対して適格条件を求めながら示す統 語上の漬過反応全般を指すが、これらのフィルター機構を限定して究めて行くと、一定の性質を 担った構造変化を不活性化させる因子が存在し、この文法形質が「主格の島条件による不透明性」

であり、従って根文(ルートS)が原始的なフィルター反応系を備えていることが判明してきた のである。主語の「あとから」性は一つの自己トレランス機構であり、変形は自己相似性に対し て敏感に反応する。隔壁素としてのOpacityが操作子として機能するためには、照応句や(8)の アビーム化等に認められるように他の一定要素への関与が必要であり、その他の要素も単純に現 前するわけではなく潜在している。 A‑鎖の途中にA‑Specが発現する時にL位のA‑Specとして の主語はその働きを止める。これは同種カテゴリ‑に自らの不透明性を分割して差し向けている

(9)

のであり、これが「キャリア効果」である。

本稿のむすびとして例外的格付与(ECM)を受ける主語の性質を吟味してみる。次のデータ はECM主語が更にTough移動の適用を受けている例である。

¢ a. 'This task is impossible to believe to have discouraged my aunt.

b. 'This story is too funny to expect to scare the children.

空の演算子(Op)がimpossible/funnyの右にあり、これがbelieve/expectの右にあるEC M主語のトレ‑スを先行詞統率できないでいるのが非文の原因とされるが、それは何故であろ

うか?

表層の主語は常に派生され主題を欠く位置であるが、これとトレースはいずれもA‑Specであ り、途中に介入するOpはA‑Specであるのだから相対m‑バリアーは機能しない。問題になるド メインに焦点を合わせると次のようになる。 (PROは照応性と代名詞性という矛盾した性質を持 つ主語である。)

佃 [cpOp[cC‑ [,PPRO‑ (Cf.

Tough移動の前半はWH移動回路を用いるのだから(Cf, (8))、前述のようにOpはCoを活性 化LCoはPROを統率してしまう。 (PROは原理上governされない。) ECM操作は構文のSpec‑

CPのSpecドワップであるが、このSpecが上位のSpec (‑Op)‑CPに回遊しているとも想像さ れる。 ECM節の主語がWhの島と関わる時に発現する隔壁を、一体誰が教えられるであろう。

普遍文法(UG)だけが'John's PRO, 'my PRO, 'her PRO等の属格のパラダイムと系を成す ことを知っているのである。

References

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参照

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