レー ザ ー 溶 接 の条 件 が 純 チ タ ンプ レー トの 変 形 に及 ぼす 影 響
池 山 丈 二
InfluenceofIrradiationConditionsonDeformation ofPureTitaniumFramesinLaserWelding
Joji IKEYAMA
Recentlylaserweldingbegantobeappliedtojoiningmetalframesasasubstitute forconventionalsolderingmethodindentistry.However,someproblemssuchasgenera‑
tionofweldingdefectsanddeformationofmetalframesstillremaininthelaserwelding method.Thepurposeofthisstudyistoinvestigatetheinfluenceoflaserwaveformsand jointformsonthedeformationofpuretitaniumframesinlaserwelding.Asexperimen‑
talspecimens,puretitaniumplatesintheshapeof3×10×30mmwerefabricated,then thejointregionofthosespecimenswaspreparedtohavefivevariousform.Acoupleof thespecimensweregottenbuttedagainsteachotherfortheirjointregionstocontact eachotherandoneofthemwasembeddedinplaster.Laserwasirradiatedtothejoint areawithtwotypesofwaveforms.Afterthelaserwelding,thedeformationofspecimens weremeasuredwithastereomicroscope.
Theresultswereasfollows
1.Thedeformationofthespecimenweldedbytheirradiationwiththemainpulse alonewasgreaterthanthatweldedbytheirradiationwiththemainpulseand subsequentrelativelyweakpulse.
2.Thedeformationofthespecimenwithbevelededgesonbothsidesofthejoint regionwassmallerthanthatofthebutt‑jointedspecimenandthespecimenwith abevelededgeononesideofthejointregion.
3.Themeltingareaofthelessdeformedspecimenswentthroughthejointregion whereasthatofthemoredeformedspecimensdidnotreachthebottomofthejoint
region.
Keywordslaserwelding,deformation,1aserwaveform,jointform
諸 言
歯 科 補 綴 領 域 で ブ リ ッジ や 部 分 床 義 歯 な ど の製 作 に あ た り,金 属 フ レ ー ム 同 士 を接 合 す る必 要 が
あ る場 合,従 来 主 に鍼 着 法 が 用 い られ て きた 。 し か しな が ら,鑛 着 法 は金 属 フ レ ー ム 同 士 の 正 確 な 位 置 の 固 定 や,鍼 着 用埋 没 と い っ た 煩 雑 な操 作 が 必 要 で,ま た精 確 に行 うた め に は熟 練 した技 術 も 受付:平 成22年12月15日,受 理
奥羽 大 学 歯学 部 歯科 補 綴 学 講座 (指導:嶋 倉道 郎 教授)
平成23年2月1日 DepartmentofProstheticDentistry,OhuUniversity, SchoolofDentistry
(Director:Prof.MIC1110SHIMAKURA) (1)
レー ザ ー溶 接 法 は鑛 着 法 に比 較 す る と,① 作 業 用模 型 上 で 直 接 操 作 で き る た め,埋 没 な ど の 煩 雑 な操 作 が 省 け て 簡 便 で あ る。 ② 接 合 部 に鑛 な どの 異 種 金 属 を介 在 させ な い た め,腐 食 され に く く機 械 的 強 度 に も優 れ る。 ③ 微 小 範 囲 に レ ーザ ー の エ ネ ル ギ ー を集 中 させ る た め,周 囲へ の 熱 影 響 が 少 な い 。 と い っ た利 点 を有 す る。 しか し レ ー ザ ー 溶 接 を行 っ た場 合,ポ ロ シ テ ィや ク ラ ッ ク と い っ た 溶 接 欠 陥 が 生 じた り,金 属 フ レ ー ム 同 士 の位 置 関 係 が 微 妙 に狂 っ た りす る とい っ た 問題 点 も指 摘 さ
れ て い る8〜16)。
溶 接 欠 陥 の 発 生 や 金 属 フ レ ー ム の変 形 は,金 属 の種 類 や レ ー ザ ー の 照 射 条 件,接 合 部 の 表 面 性 状 や形 態 の 違 い とい っ た 多 くの 因 子 が影 響 して い る。
そ こで 精 確 な レー ザ ー溶 接 を行 うた め の 条 件 を 探 る た め,本 研 究 は金 属 フ レ ー ム の 変 形 に 着 目 し, レ ー ザ ー の 波 形 と接 合 部 の 形 態 の 違 い が 金 属 フ レー ム の 変 形 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て検 討 した 。
断面が垂直
断 面 の上 下1/3に45° の 角 度 でベ ベ ル を付 与
図24種 類 の 溶 接 用試 料
断面 の上1/3に45° の 角 度 で ベベ ル を付 与
断 面 の上 下1/3に ラ ウン ド型 のベ ベ ル を付与
材料 と方法 1.実 験 器 材
溶 接 用 試 料 は 既 製 のJIS第2種 純 チ タ ン板 を 切 断 加 工 して 作 製 した 。 レ ー ザ ー 溶 接 に はNd:
YへGレ ー ザ ー 溶 接 機ML2150‑A(ミ ヤ チ テ ク ノ ス)を 使 用 した 。 変 形 量 の 測 定 と 断面 の 観 察 に は 実 体 顕 微 鏡SMZ800(ニ コ ン)を 使 用 した 。
2.実 験 方 法 1)試 料 の 作 製
まず 厚 さ3㎜ のJIS第2種 純 チ タ ン 板 を10×
30×3mmの 大 き さ と な る よ う に 切 断 し,そ の 短 辺 の 片 側 の 断 面 が 垂 直 に な る よ う に,耐 水 ペ ー パ ー で#1500ま で 面 だ し,研 磨 を 行 っ て 溶 接 用 試 料 を作 製 した(図1)。
次 に この 試 料 を図2に 示 す よ うに,そ の ま ま の
図35種 類の接合部の形態
もの,垂 直 な 断 面 の 上1/3(1mm)に45° の 角 度 で ベ ベ ル を付 け て 削 合 した も の,断 面 の 上 下1/3 共(1mm>に45° の ベ ベ ル を付 け て 削 合 した もの, 断 面 の 上 下1/3共(1mm)に ラ ウ ン ド型 の ベ ベ ル を付 け て削 合 した もの の4種 類 を準 備 した 。
これ ら試 料 の 処 理 した 断 端 同士 を溶 接 す る こ と と し,接 合 部 の 形 態 の違 い に よ り以 下 の5条 件 の 試 料 を準 備 した(図3>。
① 接 合 部 の形 態 が 垂 直 な ま ま の もの(以 下,バ ッ トジ ョイ ン トと略 記)。
② 上1mmに45° の ベ ベ ル を付 与 した もの(以 下,上45° ベ ベ ル と略 記)。
図6レ ー ザ ー照 射 順 と位 置 図4溶 接 用 ブ ロ ック
図7変 形量 の測定
図5照 射 した レー ザ ーの 波形
図8各 接合部の角変形量
③ 下1mmに45° の ベ ベ ル を付 与 した もの(以 下,下45° ベ ベ ル と略 記)。
④ 上 下1mm共 に45°の ベ ベ ル を 付 与 した もの (以下,上 下45°ベ ベ ル と略 記)。
⑤ 上 下1mm共 に ラ ウ ン ド型 の ベ ベ ル を付 与 し た もの(以 下,上 下Rベ ベ ル と 略 記)。
これ らの 断 端 同 士 を付 き合 わせ て 接 着 剤 で 仮 固 定 した も の を,各 条 件 に つ き10個 ず つ 用 意 した 。
さ ら に接 合 部 の レ ー ザ ー 照 射 面 に は,光 反 射 率 を お さ え る 目的 で 平 均 粒 径50μmの ア ル ミナ サ ン
ドブ ラ ス ト処 理 を行 っ た 。
次 に超 硬 質 石 膏 を用 い,図4に 示 す よ うに 仮 固
定 した試 料 の 片 方 は 動 か な い よ う に約 半 分 を超 硬 質 石 膏 に埋 没 し,も う一 方 は 自由 に動 く状 態 と し て 石 膏 面 に 載 る よ う溶 接 用 ブ ロ ッ ク を作 製 し た。
この 時,自 由 な試 料 反 対 側 断端 と石 膏 ブ ロ ック の 端 の 面 が 一 致 す る よ う に調 整 し,ま た接 合 部 の 下 部 は レー ザ ー溶 接 時 に 超 硬 質 石 膏 の 影 響 を避 け る た め に,石 膏 面 と の 間 に間 隙 を設 け た。
石 膏 が 硬 化 した ら仮 固 定 の 接 着 剤 を取 り除 き, 試 料 を元 の 位 置 に戻 して 石 膏 面 か らの浮 き上 が り が 無 い こ と を確 認 した 後,ユ ー テ ィ リテ ィ ワ ック ス で 再 度 仮 固 定 し,レ ー ザ ー溶 接 を行 っ た 。
図9‑1溶 接 部 の 断 面(バ ッ トジ ョ イ ン ト) 図9‑4溶 接 部 の 断 面(上 下45°ベ ベル)
図9‑2溶 接 部 の 断 面(上45° ベ ベ ル) 図9‑5溶 接 部 の断 面(上 下Rベ ベ ル)
図9‑3溶 接 部 の 断 面(下45° ベ ベ ル)
2)レ ー ザ ー 溶 接
レ ーザ ー の 照 射 条 件 は,予 備 実 験 の 結 果 か らス ポ ッ ト径 を0.6mmに 固 定 し,波 形 は 出 力2.8kW, パ ル ス 幅5msの 単 純 波 形(以 下,付 加 パ ル ス 無
し と略 記)と,単 純 波 形 の 直 後 に 出 力 が 半 分 の 1.4kW,パ ル ス 幅 は 同 じ5msの 付 加 パ ル ス を 追 加 した もの(以 下,付 加 パ ル ス有 り と略 記)の2
種 類 と し た(図5)。 そ れ ぞ れ の 波 形 を5個 ず つ の溶 接 用 ブ ロ ッ ク に照 射 した。
レー ザ ー照 射 は ブ ロ ッ ク上 方 か ら垂 直 に,接 合 面 の 幅 の 中 央 部 お よ び 両 端 か ら1mmの3か 所 と
し,こ の 順 で 照 射 を行 っ た(図6)。
3)変 形 量 の 測 定
レー ザ ー溶 接 後 の変 形 は,固 定 して い な い 側 の 試 料 断 端 の浮 き上 が り量 を実 体 顕 微 鏡 を 用 い て 距 離 で 計 測 し,得 られ た 数 値 と試 料 の 長 さか ら以 下 の 式 を用 い,角 度 に 変 換 して ミ リラ ジ ア ン(mrad) で表 した(図7)。
8=arctan(y/1)(rad)
(θ:変 形角y:浮 き上 が り量1:試 料 の長 さ) な お 計 測 は1試 料 に つ き 中央 部,両 端 か ら1mm の3か 所 で行 い,各 条 件 の 変 形 量 は5個 の ブ ロ ッ ク の 平 均 値 で 求 め た 。
統 計 処 理 は 接 合 部 の 形 態 と レー ザ ー波 形 の 二 つ を 要 因 と して 二 元 配 置 分 散 分 析 で 有 意 性 を確 か め た 後,Tukeyの 多重 比 較 を行 っ て 検 討 した 。
4)断 面 の観 察
一 部 の 試 料 に つ い て は変 位 量 を測 定 した 後 溶 接 部 を破 断 し,溶 接 部 断 面 の様 相 を実 体 顕 微 鏡 で観 察 した 。
結 果
1.レ ー ザ ー 溶 接 に よ る 変 形 量
レ ー ザ ー 溶 接 後 の 各 試 料 の 角 変 形 量 を 図8に 示 す 。
付 加 パ ル ス 無 し の 照 射 条 件 で は,接 合 部 の 形 態 が バ ッ ト ジ ョ イ ン ト で10.49±2.03mrad,上45°
ベ ベ ル で11 .40±1‑45mrad,下45° ベ ベ ル で10.62
±1.52mrad,上 下45° ベ ベ ル で8.53±1.27mrad, 上 下Rベ ベ ル で6.96±1.72mradを 示 し た 。 一 方, 付 加 パ ル ス 有 りの 照 射 条 件 で は,バ ッ ト ジ ョ イ ン
ト で9.24±2.54mrad,上45° ベ ベ ル で10.49±
2.02mrad,下45° ベ ベ ル で9.25±2.26mrad,上 下 45° ベ ベ ル で6.98±1.74mrad,上 下Rベ ベ ル で 5.59±1.76mradを 示 し た 。
最 も変 形 が 大 き か っ た の は,レ ー ザ ー 波 形 が 付 加 パ ル ス 無 し で,接 合 部 の 形 態 は 上45° ベ ベ ル で あ っ た 。 ま た,最 も変 形 が 小 さ か っ た の は,レ ー ザ ー 波 形 が 付 加 パ ル ス 有 り で,接 合 部 の 形 態 は 上 下Rベ ベ ル で あ っ た 。
レ ー ザ ー 波 形 の 違 い に よ る 変 形 量 を み る と,い ず れ の 接 合 形 態 に お い て も 付 加 パ ル ス 有 り の 方 が 付 加 パ ル ス 無 し よ り も 小 さ な 値 を 示 し た 。
接 合 部 の 形 態 の 違 い に よ る 変 形 量 を 比 較 し て み る と,上45° ベ ベ ル が 最 も 大 き な 値 を 示 し,バ ッ トジ ョ イ ン ト と 下45° ベ ベ ル が こ れ よ り わ ず か に 小 さ な 値 で,さ ら に 上 下45° ベ ベ ル,上 下Rベ ベ ル の 順 に 小 さ く な っ た 。
二 元 配 置 分 散 分 析 を 行 っ た 結 果,レ ー ザ ー 波 形, 接 合 部 の 形 態 ど ち ら の 因 子 に つ い て も 危 険 率1%
以 下 で 差 の 有 意 性 が 認 め ら れ た が,交 互 作 用 は 認 め ら れ な か っ た 。Tukeyの 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ,接 合 部 の 形 態 で は 上 下45° ベ ベ ル お よ び 上 下Rベ ベ ル の2種 類 が 他 の3種 類 の 形 態 に 比 較 す る と,危 険 率1%以 下 で 有 意 に 低 い 値 を 示 し た が, バ ッ トジ ョ イ ン ト,上45° ベ ベ ル,下45° ベ ベ ル の
3種 類 の 問 で は 有 意 差 は 認 め られ な か っ た 。 ま た 上 下Rベ ベ ル は 上 下45° ベ ベ ル よ り も 危 険 率5%
で有 意 に低 い値 を示 した 。 2.溶 接 後 試 料 断 面 の 観 察
レ ー ザ ー 溶 接 後 の 試 料 断 面 の 様 相 を 図9‑1〜
9‑5に 示 す 。 全 て の 照 射 条 件 で キ ー ホ ー ル 型 の 溶 解 様 式 を 示 し,溶 け込 み 深 さ は約1.5mm程 度 で あ っ た。 ま た 付 加 パ ル ス 無 し と付 加 パ ル ス 有 りで, 溶 け込 み深 さ に ほ とん ど差 は認 め られ な か っ た。
変 位 量 が 小 さ か っ た上 下45°ベ ベ ル お よ び 上 下 Rベ ベ ル の 試 料 断面 で は,一 回 の レ ー ザ ー 照 射 で 試 料 の 上 面 か ら底 部 まで 貫 通 して 溶 融 して い る の が 認 め ら れ た が(図9‑4,9‑5),他 の3種 類 の 形 態 の 試 料 に お い て は,一 回 の レ ー ザ ー 照 射 で は試 料 の 途 中 まで しか 溶 融 せ ず,底 部 ま で は 貫 通 して い な か っ た(図9‑1〜9‑3)。
考 察
歯 科 に お け る レ ー ザ ー溶 接 は既 に1970年 代 か ら研 究 が 開 始 され,溶 接 部 の 強 度 や 金 属 組 織 につ い て 報 告 が な され て い る8〜10,17〜20)。レ ー ザ ー は 発 振 媒 質 の 種 類 に よ り分 類 され る が,歯 科 技 工 の領 域 で メ タ ル フ レ ー ム 同 士 を溶 接 す る た め の レ ー ザ ー 溶 接 機 に は,Nd:YAGレ ー ザ ー が使 用 され て い る 。
レー ザ ー溶 接 は,前 述 の よ う に従 来 の 鑛 着 法 に 比 較 す る と非 常 に 簡 便 で あ る た め,歯 科 技 工 の 分 野 で か な り普 及 しつ つ あ る。 しか しな が ら瞬 間 的 に金 属 を溶 解,凝 固 させ て 接 合 す る こ とが,ポ ロ シ テ ィや ク ラ ッ ク な ど,溶 接 欠 陥 の 発 生 や,フ レ ー ム の 変 形 の 原 因 と な り う る。 実 際 に 精 度 と強 度 を 兼 ね 備 え た レー ザ ー溶 接 を行 う こ とは 容 易 で は な く,術 者 の 経 験 に 頼 っ て い る の が 現 状 で あ る。 そ こで,誰 も が容 易 に精 確 な レ ー ザ ー 溶 接 が で き る よ うに す る た め に は,溶 接 欠 陥 の 発 生 や フ レ ー ム の 変 形 を極 力 少 な くす る レ ー ザ ー の 照 射 条 件 と, 接 合 部 の 条 件 を設 定 す る必 要 が あ る。
1、 実 験 方 法 につ い て
材 料 で あ る金 属 の選 択 に あ た っ て は,レ ー ザ ー 溶接 の 容 易性 を重 視 した 。 歯 科 臨 床 で は,保 険 診 療 に も採 用 され て い る金 銀 パ ラ ジ ウ ム合 金 が よ く 使 用 され て い る。 しか し こ の合 金 の 主 成 分 で あ る Ag,Auな ど の 貴 金 属 は,光 吸 収 率 が 低 く熱 伝 導 率 が 高 い。 レ ーザ ー溶 接 は,金 属 表 面 で 吸 収 され
金 属 と して も期 待 され て い る こ と か ら,本 実 験 の 材 料 と して 選 択 した 。
レー ザ ー溶 接 に よ る金 属 フ レ ー ム の変 形 につ い て は,工 業 界 で も検 討 され て い る21,22)。歯 科 に お い て も,高 い 精 度 が 要 求 され るた め,今 まで に い
くつ か 変 形 に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て き た2,5,7,11〜
13,15,20,23〜25)
。 しか しそ の 多 く が 一 枚 の金 属 プ レ ー ト を用 い て,そ の 中 心 付 近 に レー ザ ー を照 射 し た後, プ レ ー トの 変 形 を測 定 した もの で あ り,実 際 の 臨 床 に お け る方 法 と は 異 な る。 そ こで 今 回 は,実 際 に金 属 フ レ ー ム を接 合 す る こ と を想 定 して 二 枚 の 純 チ タ ン板 同 士 を突 き合 わせ,接 合 部 に レ ーザ ー を照 射 した 後,試 料 の 角 変 形 に つ い て検 討 し た。
レー ザ ー溶 接 の 良 否 は照 射 す る レ ー ザ ー 側 の パ ラ メ ー タ ー と,溶 接 され る金 属 側 の パ ラメ ー タ ー の 相 互 作 用 に よ り影 響 を受 け る と され て い る26)。
レ ー ザ ー側 の パ ラ メ ー タ ー の う ち,波 長 や 発 振 形 態 な どは機 械 固 有 の もの で あ り,出 力 や パ ル ス幅 な ど は術 者 が 変 え る こ との で き る も の で あ る。 ま た 金 属 側 の パ ラ メ ー タ ーで は,光 吸 収 率 や 熱 伝 導 率 な ど は金 属 固有 の もの で あ り,表 面 粗 さや 接 合 部 の 形 態 な ど は術 者 が 変 え る こ との で き る もの で あ る。 今 回 の 実 験 で は こ の可 変 パ ラ メ ー タ ーの う ち,フ レー ム の変 形 に 及 ぼ す 影 響 が大 きい と考 え られ る,レ ー ザ ー の 波 形 と接 合 部 の形 態 に着 目 し て 条 件 設 定 を行 っ た 。
レ ー ザ ー 照 射 に よ る 金 属 の 溶 解 様 相 は,レ ー ザ ー の エ ネ ル ギ ー 密 度 に よ り影 響 を受 け る。 レ ー ザ ー の エ ネ ル ギ ー 密 度 は,出 力,パ ル ス 幅,ス ポ ッ ト径 の三 つ の 要 素 に よ って 決 定 され る 。 そ こ で 今 回 は レー ザ ーの 照 射 条 件 を設 定 す る に あ た り,溶 け込 み深 さ につ い て 予 備 実 験 を行 い,試 料 の 厚 さ の 約 半 分 の 溶 け 込 み 深 さが 得 られ る照 射 条 件 を,
メ イ ンパ ル ス と して 設 定 した 。
を行 っ た 実 験 で も,条 件 は 異 な る もの の メ イ ンパ ル ス の直 後 に弱 い パ ル ス を付 加 した波 形 で 溶 接 し た試 料 が,メ イ ンパ ル ス の み の 波 形 で 溶 接 した 試 料 よ り も,角 変 形 は小 さか っ た24)。そ こで レ ー ザ ー の 照 射 条 件 と して メ イ ンパ ル スの み の 単 純 波 形 と,
メ イ ンパ ル ス の直 後 に そ の 半 分 の 出 力 の パ ル ス を 付 与 した 波 形 の2種 類 を設 定 した。
接 合 部 の 形 態 も レ ー ザ ー 溶 接 後 の フ レ ー ム の 変 形 に影 響 を及 ぼ す 因 子 で あ る。 従 来 この 変 形 を少 な くす る方 法 と して,一 回 の レ ー ザ ー 照 射 で上 部 か ら底 部 まで 貫 通 して 溶 融 で き る よ う に,接 合 部 の 上 下 に ベ ベ ル を付 け て厚 さ を薄 く した 開 先 形 態 が 推 奨 され て い る7)。しか しな が ら実 際 に接 合 部 の 形 態 が,レ ー ザ ー溶 接 後 の フ レー ムの 角 変 形 に ど の よ うな 影 響 を及 ぼ して い るの か,詳 細 に検 討 した研 究 は 見 当 た ら な い 。 そ こで 今 回 の 実 験 で は, 接 合 部 の 厚 さを変 え る と共 に,同 じ開 先 形 態 で も 削 合 す るベ ベ ル の形 を変 え る こ と に よ り,計5種 類 の 接 合 形 態 を設 定 し比 較 検 討 した 。
2.結 果 につ い て
レー ザ ー 波 形 の 違 い に よ る角 変 形 量 をみ る と, い ず れ の 接 合 形 態 に お い て も付 加 パ ル ス有 りの 方 が 付 加 パ ル ス無 し よ り も有 意 に小 さな値 を示 した 。
レ ー ザ ー溶 接 に よ る フ レー ムの 変 形 は,瞬 間 的 に溶 け た 金 属 の急 激 な凝 固 収 縮 と応 力 集 中 に よ る 影 響 が 大 き い と 言 わ れ て い る2,5,11,12)。メ イ ンパ ル ス だ け の 単 純 波 形 で は,レ ー ザ ー照 射 後 に凝 固 収 縮 や 応 力 集 中 の影 響 が そ の ま ま現 れ,変 形 量 も大 き くな っ た の で は な い か と考 え られ る。 一 方 メ イ ンパ ル ス の 直 後 に 付 加 パ ル ス を追 加 した 波 形 で は, 溶 け た金 属 が 凝 固 す る 時 に,わ ず か な 時 間 で は あ
る が メ イ ンパ ル ス よ り弱 い レ ーザ ー が 照 射 され て い る た め,そ の 間 凝 固収 縮 や 応 力 集 中 が 緩 和 され, 変 形 が わ ず か に抑 制 され た の で は な い か と推 察 さ
れ る 。
菊 地 らは,印 加 電 圧 が180vの 場 合,厚 さ1mm の試 料 で は変 形 に 対 して パ ル ス波 形 の 影 響 は 認 め
られ な い と述 べ て い る25)。た だ この 実 験 は,一 枚 の金 属 プ レー トに レー ザ ー を照 射 した 後,た わ み 量 を測 定 した も の で あ り,実 際 の溶 接 と は異 な る。
ま た パ ル ス波 形 の 全 て が キ ー ホ ー ル 型 の 溶 解 様 式 を示 して い る わ け で は な い た め,結 果 も異 な っ た もの と考 え る。
ま た柿 本 らは,突 合 せ 継 手 部 の レ ー ザ ー 溶 接 に お い て,矩 形 波 の終 了 部 に付 加 的 な 出 力 を段 階 的 に与 え る こ と に よ り,ポ ロ シ テ ィの 発 生 を防 止 で き る と 報 告 して お り28・29),付加 パ ル ス の 追 加 は フ レ ー ム の 変 形 抑 制 だ け で な く,溶 接 欠 陥 発 生 の 防 止 に も有 効 な手 段 で あ る と考 え られ る。
接 合 部 の 形 態 の 違 い で は,上 下45°ベ ベ ル お よ び 上 下Rベ ベ ル の 開 先 形 態 が,バ ッ トジ ョイ ン ト, 上45°ベ ベ ル,下45° ベ ベ ル の3種 類 の 形 態 よ り変 形 が 少 なか っ た。 この 理 由 と して は,ま ず 溶 け込 み 深 さが 関 係 した の で は な い か と推 測 され る。 溶 接 後 の試 料 断 面 の 観 察 か ら分 か る よ う に(図9‑1
〜9‑5) ,全 て の 試 料 で 溶 解 様 式 は キ ー ホ ー ル 型 と な っ て い る が,溶 け込 み 深 さは 約1.5mm程 度 で あ る た め,バ ッ トジ ョ イ ン ト,上45° ベ ベ ル, 下45°ベ ベ ル の 形 態 で は,金 属 が底 部 まで 溶 解 し
て い ない 。 そ の た め 凝 固 収 縮 時 に溶 解 した 上 部 だ け が 接 合 部 に 引 か れ る こ とに な り,角 変 形 量 が 多 く な っ た の で は な い か と 考 え られ る。 一 方 上 下 45°ベ ベ ル お よ び 上 下Rベ ベ ル の 開 先 形 態 で は, 溶 融 部 が 表 面 か ら底 部 ま で 貫 通 して い る 。 し た が って 凝 固収 縮 時 に全 体 が 水 平 的 に 引 かれ る こ と に な り,反 対 側 断 端 の 浮 き上 が り量 す な わ ち 角 変 形 量 が少 な くな っ たの で は な い か と推 察 され る。
ま た 同 じ厚 い 試 料 で も,バ ッ トジ ョイ ン トお よ び 下45°ベ ベ ル に比 較 す る と,上45° ベ ベ ル の 方 が, さ らに 開 先 形 態 で も上 下Rベ ベ ル よ り も上 下45°
ベ ベ ル の 方 が 角 変 形 量 が 大 き くな る傾 向 を示 し た。
これ は レー ザ ーが 入 射 す る部 位 の形 態 の 違 い に よ る もの と考 え られ る。 す なわ ち レー ザ ー の 入 射 部 に45°の ベ ベ ル を付 与 した 形 態 で は,接 合 断 面 だ け で な くベ ベ ル 面 の一 部 も溶 解 され,凝 固 時 に収 縮 して 引 か れ る こ とに な る。 した が っ て接 合 部 の
レ ー ザ ー 入 射 角 が90°に 近 い 面 の 試 料 よ り も,斜 め45Qの ベ ベ ル 面 の 試 料 の 方 が,わ ず か に 引 か れ る 量 が 多 くな って,角 変 形 量 に 現 れ た もの と推 測 され る。
ま と め
精 確 な レ ー ザ ー 溶 接 を行 うた め の 条 件 を探 る た め,レ ー ザ ー の波 形 と接 合 部 の 形 態 の 違 い が金 属 フ レ ー ム の 変 形 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て検 討 し,以 下 の 結 論 を得 た 。
1.レ ーザ ー 溶 接 に よ る純 チ タ ン板 の 変 形 量 は, メ イ ンパ ル ス 単 独 の 波 形 を照 射 した 試 料 よ り も, メ イ ンパ ル ス に 付 加 パ ル ス を追 加 した波 形 を 照 射
した試 料 の 方 が 少 な か っ た 。
2.レ ー ザ ー 溶 接 に よ る純 チ タ ン板 の 変 形 量 は, 接 合 部 の 形 態 を 上 下 に ベ ベ ル を つ け て 厚 さ を1 mmと 薄 く した 開 先 形 態 の 試 料 が,バ ッ トジ ョイ
ン ト,上45° ベ ベ ル,下45° ベ ベ ル3種 類 の 形 態 の 試 料 よ り少 な か っ た。 ま た 同 じ開先 形 態 で も,上 下Rベ ベ ル の 試 料 が 上 下45°ベ ベ ル の 試 料 よ り も 変 形 量 は少 な か っ た。
3.変 形 量 の 少 な い 開 先 形 態 の 試 料 断面 を観 察 す る と,レ ー ザ ー照 射 に よ る溶 融 部 が 上 部 か ら底 部 まで 貫 通 して い た の に 対 し,他 の 試 料 で は 溶 融 部 が底 部 ま で 達 して い な か っ た。
以 上 の こ とか ら,精 確 な レ ー ザ ー溶 接 を 行 う た め に は,メ イ ンパ ル ス に 弱 い付 加 パ ル ス を 追 加 し た波 形 の レー ザ ー を 照 射 す る の が 望 ま しい 。 ま た 接 合 部 は,一 回 の レー ザ ー照 射 で 上 部 か ら底 部 ま で 溶 解 で き る よ うに,厚 さを薄 く した 開 先 形 態 と し,さ らに 照 射 面 は レ ーザ ー の 入 射 角 が で き る だ け直 角 に 近 く な る形 態 が よ い と考 え られ た 。
謝 辞
稿 を終 え るに あ た り,ご 懇 篤 な る御 指 導 と御校 閲 を賜 り ま した奥 羽 大学 大 学 院 歯学 研 究 科,嶋 倉道 郎 専 任 教授 に深 甚 の謝 意 を表 します 。 また,本 研 究 に お いて 御 協 力 を いた だ き ま した 奥 羽大 学 歯 学 部歯 科 補 綴 学講 座 の 先生 方 な らび に,ミ ヤチ テ ク ノ ス株 式 会社,末 廣 一貴 氏 に厚 く御 礼 申 し 上 げ ます 。
本 論 文 の 主 旨 は第48回 奥 羽 大 学 歯 学 会(平 成21年11月 郡 山市)に て 発表 した。
へ の 応 用.QE別 冊 歯 科 用 レ ー ザ ー ・21世 紀 の 展 望 パ ー ト1;228‑2312001‑
4)篠 崎 照 泰,都 賀 谷 紀 宏:日 本 に お け る 歯 科 レ ー ザ ー 溶 接 の 現 状.QDT別 冊 チ タ ン の 歯 科 技 工 Part2;199‑2082002.
5)李 元 植:チ タ ン の レ ー ザ ー 溶 接 に お け る レ ー ザ ー 光 の 作 用.QDT別 冊 チ タ ン の 歯 科 技 工 Part2;209‑2182002.
6)南 里 嶽 仁:歯 科 に お け る レ ー ザ ー 溶 接34年 の 変 遷 と 臨 床 経 過.日 レ 歯 誌17;20‑252006.
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9)南 里 嶽 仁:加 工 用 レ ー ザ ー の 歯 科 補 綴 へ の 応 用 (第4報)レ ー ザ ー 溶 接 の 基 礎 的 研 究 一 溶 接 時 の 雰 囲 気 と 溶 接 部 の 問 題 点 一.補 綴 誌21;282‑
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10)柿 本 和 俊:金 銀 パ ラ ジ ウ ム 合 金 の レ ー ザ ー 溶 接 に 関 す る 基 礎 的 研 究 一 第3報 機 械 的 性 質 に 影 響 を 与 え る 因 子.補 綴 誌32;62‑731988。
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13)李 元 植,前 原 聡,宮 崎 隆:省 力 化 を 目 的
と し たNd:YAGレ ー ザ 溶 接 装 置 の 歯 科 技 工 へ の 応 用 に 関 す る 研 究(第2報)照 射 順 設 定 に よ る 影 響 に つ い て 。 歯 材 器19(35回 特 別 号);100 2000.
14)Lee,WS.,Miyazaki,T,andShimakura,M.:A basicstudyonlaserbeamweldingoftitanium platesusingaNd:YAGlaserwelderwith
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15)都 賀 谷 紀 宏,篠 崎 照 泰,末 瀬 一 彦:歯 科 領 域 に お け る レ ー ザ ー 溶 接 の 応 用(第4報)溶 接 変 形 を 抑 制 す る た め の 照 射 条 件.歯 材 器20(38回 特 別 号);452001.
16)柿 本 和 俊,藤 岡 宗 之 輔,井 上 太 郎,岡 崎 定 司,小
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20)南 里 嶽 仁:加 工 用 レ ー ザ ー の 歯 科 補 綴 へ の 応 用 (第2報)レ ー ザ ー 溶 接 の 基 礎 的 研 究.補 綴 誌19;
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22)猪 瀬 幸 太 郎,李 在 翼,中 西 保 正,金 裕 哲:レ ー ザ を 用 い た す み 肉 溶 接 で 生 じ る 溶 接 変 形 ・残 留 応 力 の 特 徴 と 高 精 度 予 測 の 一 般 性 の 検 証 溶 接 学 会 論 文 集26;61‑6611:
23)菊 地 久 二,佐 藤 孝 明,黒 谷 知 子,若 島 満,椎 名 芳 江,赤 司 幸 勇:レ ー ザ ー 溶 接 機 の パ ル ス 波 形 が 変 形 量 に 及 ぼ す 影 響.歯 材 器26;1242007.
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25)菊 地 久 二,黒 谷 知 子,平 口 久 子,掛 谷 昌 宏,深 瀬 康 公,廣 瀬 英 晴,米 山 隆 之:レ ー ザ ー 溶 接 に お け る パ ル ス 波 形 が 変 形 に 及 ぼ す 影 響 日 大 歯 学83;111‑1152009.
26)都 賀 谷 紀 宏,篠 崎 照 泰,末 瀬 一 彦:歯 科 領 域 に お け る レ ー ザ ー 溶 接 の 応 用(第1報)一 溶 接 パ ラ メ ー タ ー.歯 木オ器18;1521999.
27)都 賀 谷 紀 宏:歯 科 用 金 属 の レ ー ザ ー 溶 接 の た め の パ ル ス 波 形 制 御(第2報)追 加 レ ー ザ ー パ ワ ー の 大 き さ の 影 響.歯 材 器23;622004.
28)柿 本 和 俊,小 石 同 亮,福 岡 哲 郎,亀 水 忠 宗,井 上 太 郎,岡 崎 定 司,小 正 裕:パ ル ス 波 形 抑 制 に よ る レ ー ザ ー 溶 接 欠 陥 の 防 止 キ ー ホ ー ル 挙 動 と ポ ロ シ テ ィの 発 生.歯 材 器24;762005.
29)柿 本 和 俊,小 石 同 亮,福 岡 哲 郎,亀 水 忠 宗,井 上 太 郎,岡 崎 定 司,小 正 裕:パ ル ス 波 形 抑 制 に よ る レ ー ザ ー 溶 接 欠 陥 の 防 止 一 突 合 せ 継 手 溶 接 に つ い て 一‑歯 材 器25;4072006.
著 者 へ の 連 絡 先:池 山 丈 二,(〒963‑8611)郡 山 市 富 田 町 字 三 角 堂31‑1奥 羽 大 学 歯 学 部 歯 科 補 綴 学 講 座
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