糖尿病性腎症への TGF-β1 抑制ペプチド化合物 PI ポリアミドの効果の検討
日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系腎臓内科学専攻
堀越 周
修了年 2018 年
指導教員 阿部 雅紀
目次
【概要】 ... 1
【緒言】 ... 2
1.末期腎不全における糖尿性腎症 ... 2
2.糖尿病性腎症の発症、進展 ... 3
3.糖尿病性腎症の組織学的変化 ... 3
4. 腎症への TGF-βの関与 ... 4
5. 糖尿病性腎症への TGF-βの関与の報告 ... 5
6. 腎線維化および糖尿病性腎症に於ける micro RNA の関与 ... 5
7. 糖尿病性腎症に於ける、糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークの破 綻 ... 6
8. ピロール・イミダゾール(Pyrrole Imidazole: PI)ポリアミド ... 6
【研究目的】 ... 7
【対象と方法】 ... 7
1.ラット TGF-β1 プロモーターに対する PI ポリアミド及びミスマッチポリア ミドの設計と合成 ... 7
2.実験動物 ... 8
3.メサンジウム細胞の分離、継代培養 ... 8
4.培養メサンジウム細胞の高糖刺激 ... 9
5.培養メサンジウム細胞における TGF-β1 PI ポリアミドの効果の検討 ... 9
6.培養細胞での mRNA の発現測定 ... 10
7.培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の測定 ... 11
8.STZ による 1 型糖尿病モデルラットの作成及び各種ラットの飼育・薬物投 与 ... 11
9.FITC ラベル TGF-β1 PI ポリアミドの腹腔内投与による腎臓内移行の検討 ... 12
10.Wistar ラットの体重、尿蛋白、血糖値、腎機能の測定 ... 12
11.腎組織の組織染色 ... 13
12.糸球体障害指数(Glomerular Injury Scores: GIS)と尿細管間質障害指数 (Tubular Injury Scores: TIS)の評価 ... 14
13.Podocin によるラット腎臓糸球体ポドサイトの免疫蛍光染色 ... 15
14.腎臓組織の microRNA21,23a 発現の評価 ... 15
15.Western blot 法による蛋白発現の定量 ... 16
16.電子顕微鏡での組織変化の評価 ... 16
17.統計解析 ... 17
【研究結果】 ... 17
1.高糖刺激による TGF-β1 発現 ... 17
2.高糖刺激による形質転換マーカーの発現 ... 17
3 . TGF-β1 PI ポ リ ア ミ ド の 高 糖 刺 激 に よ り 増 加 し た TGF-β1 お よ び Osteopontin 発現への抑制効果 ... 17
4.糖刺激による培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の増加と TGF-β1 PI ポリ アミドの細胞増殖能への作用 ... 18
5.STZ による腎障害 ... 18
6.PI ポリアミドの TGF-β1 抑制作用及び腎臓での局在 ... 20
7.PI ポリアミドによる腎障害に対する効果 ... 20
【考察】 ... 21
【まとめ】 ... 25
【謝辞】 ... 26
【図・表】 ... 27
【引用文献】 ... 50
研究業績 ... 54
1
【概要】
糖尿病性腎症の病態形成には
Transforming growth factor-β1(TGF-β1)の
関与が知られている。本研究では、TGF-β1のプロモータであるActivator protein-1(AP-1)の結合領域に結合し TGF-β1
の発現を抑制するTGF-β1 Pyrrole Imidazole( PI)ポリアミド使用し糖尿病性腎症の抑制効果の検討を行っ
た。In vitroの実験としてラット腎メサンジウム細胞に対し25mM
の高糖刺激を
6〜48
時間行いTGF-β1
の増加を検討した。その結果刺激後6
時間で最もTGF-β1
の発現が増加した。同時に、合成型マーカーであるOsteopontin
の発現も
6
時間以降に増加していた。そこでTGF-β1 PI
ポリアミドの作用を検討し た結果、10
-8M
のTGF-β1 PI
ポリアミドは高糖刺激によるTGF-β1 mRNA
発 現増加を有意に抑制した。また、Osteopontin
発現に関しては同濃度にて抑制傾 向を示した。次に、高糖刺激におけるラットメサンジウム細胞の増殖能をPremix WST-1 Cell Proliferation Assay System
を使用し検討した結果、有意な 増殖能の増加認め、TGF-β1PI
ポリアミドは高糖刺激による増殖能の増加を有 意に制御した。In vivo
の実験においては、Wistarラットにストレプトゾトシン(Streptozotocin: STZ)を投与し、 1
型糖尿病モデルラットを作製した。糖尿病性 腎症の指標として尿蛋白、尿中アルブミン(Albumen: Alb)の定量を行った結 果、コントロール群と比較し5
週経過時に尿蛋白、尿中Alb
共に上昇を認め、11
週後には有意な上昇を認めた。そこで、腎臓組織変化をHematoxylin Eosin
染色・
Masson Trichrome
染色で確認したところ、明らかな線維化や結節像は認められなかったが、糸球体障害指数( Glomerular injury scores: GIS) ・尿細管 間質障害指数( Tubular injury scores: TIS) にて有意な障害が認められた。また、
腎臓組織中の
TGF-β1
の発現及びEndothelial Mesenchymal Transition
2
(EndMT)の指標となる microRNA21・ 23a
の有意な上昇も認めた。そこで、STZ
ラットに対し1.5×10
-6M/body/週 2
回のTGF-β1 PI
ポリアミドの腹腔内投与を 行った。その結果、尿蛋白・尿中Alb
は有意な変化は認めなかった。腎組織のGIS・TIS
の比較においてはポリアミド群で有意な抑制効果を認め、Westernblot
法にて腎臓組織中TGF-β1
の蛋白の発現も抑制された。microRNA21
・23a
においては腎組織中の発現量はミスマッチ群に比べポリアミド群で抑制傾向で あったが有意差は認められなかった。電子顕微鏡でのポドサイトの障害を比較 したところ、 ポリアミド群で足突起の融合やスリット構造の消失の程度が軽度 であった。以上の結果より、高糖刺激によるメサンジウム細胞からのTGF-β1
発現増加およびメサンジウム細胞増殖促進をTGF-β1PI
ポリアミドは抑制した。また、STZ投与による糖尿病モデルラットにおいて誘導された糸球体病変およ び尿細管間質病変を
TGF-β1PI
ポリアミドは抑制した。TGF-β1PI
ポリアミド は将来糖尿病性腎症の治療薬となりうる事が示唆された。【緒言】
1
.末期腎不全における糖尿性腎症現在の日本の高度医療を持ってしても、進行性腎障害を根治する有効な治療 法が無く、現在全国で
32
万人が末期腎不全で透析療法を受け、毎年3
万7
千人 が新たに透析導入となっており、透析療法で年間2
兆円の医療費がかかり、年 間医療予算の8%を占めている。透析療法は単に血液浄化であり、慢性腎不全を
起こす腎症の根治的治療の開発が僅々の課題である。糖尿病性腎症は糖尿病に おける三大合併症の一つであり、1998
年に慢性糸球体腎炎と入れ替わり、透析 導入となる原疾患の首位の座について以来、増加の一途を示していたが、2008 年以降は導入患者の 44%前後で推移している。日本透析医学会による全国調査 では,2014 年の透析導入36,377
名のうち糖尿病性は15,809
名と43.5%を占
3
める(1)
(図 1)。
2
.糖尿病性腎症の発症、進展糖尿病では、比較的早期から糸球体基底膜の肥厚が出現し、高血糖による細 胞障害のため足突起の機能異常やアポトーシスによるポドサイトの脱落、血管 内皮障害が生じ、糸球体バリア機能が障害される。また、メサンジウム細胞の 機能異常により、メサンジウム細胞は細胞外基質産生を増加させる。このメサ ンジウム基質の蓄積から糸球体毛細血管が閉塞し、糖尿病に特徴的な結節性病 変を形成し、糸球体硬化に至る。糖尿病性腎症の病変の主体は糸球体障害であ るが、糖尿病性腎症による蛋白尿と腎機能障害は、糸球体病変の進展だけでな く、尿細管障害の進行、及び細動脈硬化症の進展によって増悪する。尿細管障 害は糸球体硬化に伴う二次的な変化に加え、高血糖や多量の蛋白尿にさらされ ることによる直接的な障害によっても惹起され、腎機能低下につながっていく。
(2)。1型糖尿病における糖尿病性腎症の典型的な臨床経過は、微量アルブミン尿 の出現により発症し、未治療であれば年間
10~20%程度のアルブミン排泄量の増
加を生じる。その後、10~15 年で蛋白尿が陽性となる顕性腎症に移行する。顕 性腎症まで病期が進行するとGFR
が年間2~20ml/分低下し、半数以上の症例で 10
年以内に末期腎不全に陥ると考えられている。一方、2 型糖尿病では糖尿病 の発症時期が不明であることが多く、糖尿病診断時にすでにアルブミン尿や蛋 白尿が出現していること症例もあるが、臨床経過は1
型糖尿病とほぼ同様と考 えられている(3)。3.糖尿病性腎症の組織学的変化
腎生検による糖尿病性腎症の組織像では,糸球体のびまん性病変としてメサ ンギウム基質の増生・拡大と糸球体毛細血管壁の肥厚が認められる。結節性病
4
変は本症に特異性の高い病変であり、典型的な結節は,円形で糸球体毛細血管 係蹄の中心部に形成され、結節の大きさは様々である。同部位の細胞は結節の 周辺に局在する。進行例では,結節は大型となり糸球体毛細血管を閉塞する。
浸出性病変では,糸球体内,ボウマン嚢内ならびに輸出・輸入細動脈壁の硝子 様沈着が認められる。糸球体毛細血管あるいは糸球体外小血管内に血漿蛋白,
脂質およびムコ蛋白からなる成分の浸出がみられる。浸出性病変は,比較的少 ないが糖尿病の早い時期から認められる(4)。糖尿病性腎症早期に糸球体過剰濾 過・肥大を認めるが、このとき糸球体係蹄にて新たな毛細血管の形成、既存の 血管の伸長等の血管新生が観察される。代表的血管新生因子である
Vascular endothelial growth factor (VEGF)
は血管内皮細胞増殖・遊走を促進し、血管 透過性を亢進させる。糸球体にてVEGF
は主に足細胞にて発現するが、高血糖、TGF-β、アンジオテンシンⅡにより促進されることが報告されている
(5)。また、VEGF
は糸球体基底膜 (Glomerular basement membrane: GBM)の構成要素で あるⅣ型コラーゲンα3鎖の足細胞における発現をTGF-β1
の下流にて促進す ることが報告された。糖尿病性腎症において観察されるGBM
の肥厚ならびに 糸球体濾過障壁障害にVEGF
が関与する可能性が示唆される(6)。4.
腎症へのTGF-βの関与
TGF-βはほとんどの細胞系に対し増殖抑制に働くが血管平滑筋、メサンジ
ウム細胞、線維芽細胞などの間葉系細胞では増殖刺激を示すことが知られてい る。TGF-βは細胞外マトリックス (Extracellular matrix: ECM)の増生・沈着 を起こす強力な増殖因子であり、フィブロネクチン、コラーゲンタイプ I などの
ECM
蛋白がTGF-βにより産生亢進されることが知られている
(7)。TGF-βに
よる
ECM
蛋白の発現誘導は、速やかな創傷治癒課程の進行に本質的かつ有効な5
現象であるが、過剰な
TGF-βの作用が ECM
の沈着を招き、種々の線維化疾患(糸球体腎炎、糖尿病性腎症、肺線維症、肝硬変症など)の病態形成に関わっ ていると考えられる。傷害血管、腎炎、動脈硬化巣などでは
TGF-βの発現が亢
進し、血管平滑筋細胞やメサンジウム細胞を増殖させ、ECM
の増生を起こす(8)。 さらにTGF-βは結合組織成長因子(Connective tissue growth factor: CTGF)
の発現を強力に刺激する事が知られている。
CTGF
はTGF-βと同様に間葉系細
胞の増殖をECM
の増生により、糸球体腎炎、線維性疾患に関与している(9)。糖 尿病性腎症を含めた慢性腎臓病では、腎内組織アンジオテンシンⅡはTGF-β1
の転写活性を亢進し、糸球体メサンジウム細胞増殖、ECM
増生により糸球体硬 化を起こす。更にTGF-βは、尿細管上皮の間葉化(Epithelial to mesenchymal transition: EMT)をおこし、また TGF-βの下流に位置する増殖因子 CTGF
の発 現亢進により、間質の線維化を起こす。これら全体で腎障害が進行する(10) 。5.
糖尿病性腎症へのTGF-βの関与の報告
糖尿病性腎症において、
TGF-βは高グルコースにより誘導されて ECM
を産生し、線維化を促進するマスター制御因子である。TGF-βは糖尿病性腎症の腎 臓に蓄積するタンパク質の合成を促進することが知られている(11)。糸球体細胞 中の高グルコースによって
TGF-βが過剰に発現すると、マトリックスタンパク
質の沈着が増加し、糸球体硬化につながる。また、このような過剰発現が起こ ると、ポドサイトのアポトーシスが起こり、フィルターとしての腎臓の機能が 低下してしまう。6.
腎線維化および糖尿病性腎症に於けるmicro RNA
の関与腎線維化および糖尿病性腎症の病態において糸球体内内皮細胞が間葉化する
Endothelial mesenchymal transition (EndMT)
と尿細管上皮が間葉化する6
EMT
が報告されている。このEndMT
とEMT
には遺伝子発現を制御するmicro RNA
の関与が最近報告され(12)、これらEMT
およびEndMT
に糖尿病腎症で発 現亢進しているTGF-β1
が関与していると考えられる。EndMT に関与するmicroRNA
の 中 でEndMT
を 促 進 す る 方 向 に 働 くmicroRNA
と し てmicroRNA21
とmicroRNA23a
が挙げられる。7.
糖尿病性腎症に於ける、糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークの破綻 最近、糸球体内皮細胞とポドサイトがお互いクロストークしているとの報告(13) がある。ポドサイトは元来多くのサイトカインを含めた分子を産生し、VEGF,CXC chemokine receptor 4(CXCR4), Tie-2
などに作用し、糸球体内皮細胞機能 を維持する。 糸球体内皮細胞はActivated protein C
を産生して糸球体内皮機 能を維持している。つまり糸球体内皮細胞にEndMT
が起こるとポドサイト傷 害がおこり、アルブミン尿や蛋白尿が生じる。8.
ピロール・イミダゾール(Pyrrole Imidazole: PI)ポリアミドPI
ポリアミドは、1996
年にカルフォルニア工科大学のPeter B. Dervan
らに よりDNA
認識抗生物質より見いだされたDNA
配列特異的に結合する中分子ペ プチド化合物である。同時期に京都大学杉山はデュオカルマイシンA
とディス タマイシンA
が協同的なDNA
のアルキル化能を有していることを発見し、そ れに基づいてこれまでPI
ポリアミドを基盤とした様々な機能分子が設計されて いる。合成されたDNA
結合PI
ポリアミドは、Py/ImペアがCG、Py/Py
ペアは
AT
またはTA、Im/Py
ペアはGC
を認識し、これにより任意のDNA
に塩基特異的に結合し、ターゲット遺伝子プロモーターに結合するよう設計すると、
転写因子の結合を阻害し遺伝子発現を抑制する(図
2)。
PI
ポリアミドの特徴としてi)
転写因子より強力に2
本鎖DNA
の結合し、遺7
伝子発現を抑制する遺伝子制御薬である。
ii)有機化合物であるため核酸医薬と
違い核酸分解酵素に分解されず細胞や生体内で安定である。iii)Drug deliverysystem
なしに細胞の核に取り込まれ、様々な遺伝子をターゲットとして自由に分子設計できる。このように
PI
ポリアミドは遺伝子制御薬であり、これまで治 療薬の無かった疾患の責任因子に対しても自由に設計でき、核酸医薬の分解性 の欠点がなく、疾病で活性化した転写活性を抑制するため病変のみを抑制し、副作用の少ない転写活性抑制遺伝子制御薬として期待できる(14-16)。
日本大学ではこれまで
TGF-β1
に対するPI
ポリアミドを分子設計し、ラットの腎症(17,18)、血管再狭窄(19)、腹膜硬化症(20)、角膜損傷(21)、皮膚瘢痕(22)を著明
に抑制する事を報告した。
【研究目的】
本研究では高糖刺激ラットメサンジウム細胞に対する
TGF-β1
のプロモータ ーを制御する遺伝子制御薬 PI ポリアミド効果及び、ストレプトゾトシン惹起性 糖尿病性腎症モデルでの腎症の進展に対する作用につき検討した。【対象と方法】
1.ラット TGF-β1
プロモーターに対するPI
ポリアミド及びミスマッチポリアミドの設計と合成
本研究に使用した
TGF-β1
を標的としたTGF-β1 PI
ポリアミドDahl
食塩 感受性ラットの研究において強力にTGF-β1
の抑制効果を認め、TGF-β1
のプ ロモーターとされるactivator protein-1(AP-1)の結合領域にまたがるように設
計されたPI
ポリアミドを使用した(17)(図 3)。また、同時に AP-1
の転写結合部 位に結合しないように設計されたPI
ポリアミドをミスマッチポリアミドとし使 用した(図3)。
これらのPI
ポリアミドはペプチド合成機PSSM-8(Shimadzu,
8
Kyoto, Japan)にて Fmoc
固相合成法で合成し、C18カラム装着High performance liquid chromatography(HPLC)にて精製した。
2.実験動物
動物実験は、全て日本大学医学部動物実験委員会の指針に従って行った。
Wistar
ラット(雄性7
週齢)はいずれも日本チャ―ルスリバー株式会社(Yokohama, Japan)から購入して実験に使用した。臓器摘出の際にはイソフ ルラン吸入麻酔(2-5% in 100%酸素)下で体表を消毒後に腹部を正中切開し、
下大静脈から採血をして失血死とした後に、腎臓を摘出した。(日本大学動物実 験計画承認番号:AP16M11‐1)
3
.メサンジウム細胞の分離、継代培養ラット腎臓からメサンジウム細胞はシービング法(23)で単離、培養した。ラッ トを麻酔器にてイソフルランで鎮静し、縦切開で開腹し、左右の腎門部で腎動 静脈を結紮・切離し、両側の全腎摘を行った無菌の状態で糸球体が含まれる皮 質を尖刀で切り出し、さらに直径
2~3 mm
大に細断した。細断された組織を200
メッシュの上に乗せ、注射器の内筒ですりつぶし、上から培養液(RPMI-1640; Gibco Life Technologies ,
Carlsbad, CA, USA)を注ぎ濾過した。
全ての組織をすりつぶし濾過し、その濾液を
120
メッシュで濾過した。糸球体 は120
メッシュを通過できず、メッシュ上に残るため培養液で希釈しながら吸 引して、滅菌チューブに回収した。2000 rpm
で5
分間遠沈し上清を破棄し、0.1%
コラゲナーゼ(Wako, Osaka, Japan)10 mlを加えた。遠沈後、上清を破棄し、
培養液で洗浄し再び遠沈した。20%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum: FBS:
JRH Bioscience, Lenex, KS, USA)含有 RPMI-1640
にペニシリン100
単位/ml、ストレプトマイシン
100
μg/ml、ITS(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を添9
加し培養を行った。数日で細胞がフラスコ内でコンフレントになっていること を確認し、培養液を除きリン酸緩衝液(Phosphate-buffered saline: PBS:
Sigma-Aldrich, St.Louis, MO, USA)で 2
回洗浄した後、Tryple Express
(LifeTechnologies)で細胞を剥離・回収し、滅菌フラスコに約 1.0×10⁴ /cm²の密度
で播種し継代培養した。培地の交換は週2
回の頻度で行い、コンフレントにな る毎に継代培養を繰り返し、5~7継代時の細胞を各実験に使用した。4.培養メサンジウム細胞の高糖刺激
3
週齢のWKY
ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、10%FBS
を添加した正常糖濃度培Dullbecco’ s Modified Eagle’s Medium (DMEM) Glucose 5.6mM(1000mg/L) (Sigma-Aldrich)37℃で CO₂インキュベーターで培
養し6
ウェルプレート(2ml / well)に播種し、80%コンフレントになるまで培養 した。1
枚の6
ウェルプレートをコントロール(刺激後0
時間)と残りの5
枚の6
ウェルプレートに 高糖濃度DMEM Glucose 25mM(4500mg/L)
と交換し高糖 刺激を行った。刺激後、0、6、9、12、24、 48
時間経過したものからmRNA
の 抽出を行いリアルタイムRT-PCR
にてTGF-β1、Osteopontin、α-Smooth muscle actin(α-SMA)
のmRNA
発現の測定を行った。5.培養メサンジウム細胞における TGF-β1 PI
ポリアミドの効果の検討WKY
ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、10%FBS
を添加し た正常糖濃度DMEM
で37℃、5%CO₂の条件下で培養し 6
ウェル プレート(2ml / well)5
枚に播種し80%コンフレントになるまで培養した。1枚をコント
ロールとし、2枚のプレートに
PI
ポリアミドをdimetylsulfoxide(DMSO,
Sigma-Aldrich)を使用し溶解し、最終濃度 10
-8M、 10
-9M
になるよう添加した正 常糖濃度DMEM
を作製した。その培養液を用いて37℃、5%CO₂の条件下で 3
10
時間培養し
PI
ポリアミドのインキュベーションを行った。残りはDMSO
を1:1000
となるように正常糖濃度DMEM
に添加し37℃で CO₂インキュベーター
にて
3
時間培養した。3時間後に2
種類のPI
ポリアミドの濃度に調整した 高糖濃度
DMEM
に変更し1
枚をDMSO 1:1000
となるように添加した高糖濃度DMEM
に変更した。6時間後に5
枚のプレートの細胞を回収しRT-PCR
法でTGF-β1、 Osteopontin mRNA
発現の測定を行いPI
ポリアミドの効果判定を行 った。また、ミスマッチポリアミドについても最終濃度10
-8M
に調整し同様の 工程で比較を行った。6.培養細胞での mRNA
の発現測定刺激を行った各種細胞の培養液を破棄し
TRIzol Reagent (1559608,Life
Technologies)1ml
を加えピペッティングしエッペンチューブに移した。クロロホルム
200μl
を加え転倒混和し室温で2~3
分置いた後4℃で 15000
回転15
分 間遠心分離をし、新しいエッペンチューブに上清 400μl を移した。上清液に2-プロパノール 500μl
を加え転倒混和し5~10
分置いた後に4℃で 15000
回転10
分間遠心分離を行い、沈殿物に70%エタノールを加え、混和し 4℃で 10000
回転5
分間遠心しtotal RNA
の抽出を行った。抽出したtotal RNA
より、混在 するDNA
を除去するために1μg
相当のtotal RNA
をDNase I (18068-015, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)
で処理を行ってからHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (4368814,Thermo Fisher Scientific)を用いて cDNA
を精製した。mRNA
の発現はTaqMan Gene Expression Assays
プライマー/プローブとし てTgfb1(Rn00572010_m1, Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、
Acta2(Rn01759928_g1, Applied Biosystems)、 Spp1(Rn00681031_m1, Applied
11
Biosystems)を用いた
リアルタイムRT-PCR
法で検討を行った。PCR 反応は7500 Real Time PCR System (Applied Biosystems)
を使用し、50℃/2
分、95℃
/10
分で加温後、95℃ /15秒と60℃/1
分のサイクルを40
サイクル行った。タ ーゲットの発現はスタンダードを用いた相対定量で求め、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(Gapdh)( 4351317, Life Technologies) mRNA
発現を内部標準とし発現量を補正した。7.培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の測定
WKY
ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、96wellプレート に5×10
3cell/well(100μl/well)となるように 10%FBS
含有正常糖濃度DMEM
で メサンジウム細胞を播種し、37℃、5%CO₂の条件下で24
時間培養した。次に 培地を0.2%FBS
含有正常糖濃度 DMEMに置き換えて24
時間serum
starvation
を行った。この際、TGF-β1
に対するPI
ポリアミドとミスマッチポ リアミドをそれぞれ最終濃度が10
-8M
になるように、またコントロールには等 量のDMSO
を培地に添加した。Serum starvation後、細胞は10%FBS
含有高 糖DMEM
で糖刺激を行った。この際にも、PIポリアミドとミスマッチポリア ミドを10
-8M
になるように培地に添加した。24
時間後、Premix WST-1(Takara Bio, Ohtu, Japan)を 1well
あたり10μl
ずつ加え、37℃、90分間培養後、マイ クロプレートリーダーを用いて対照波形を650nm
とし、450nmの波長を測定 し増殖能を測定した。8. STZ
による1
型糖尿病モデルラットの作成及び各種ラットの飼育・薬物投与Makino
等の実験(24)を参考とし、あらかじめ12
時間絶食させておいた体重200‐250g
のWistar
ラットに対し、生理食塩水(Otsuka Pharmaceutical, Tokyo,Japan)0.3ml
に溶解したSTZ(195-15154,Wako,Osaka,Japan) 60mg/㎏を尾静
12
脈内に単回投与して
1
型糖尿病性ラットを作製した。STZ を投与したラットに おいて、24
時間後の血糖値をGLUCOCARD G Black(Panasonic,Tokyo,Japan)
にて測定し、血糖値が300mg/dl
以上を示したラットをSTZ
群 (n=6) とした。STZ
群にTGF-β1 PI
ポリアミド投与したものをポリアミド群 (n=5~6)、ミス マッチポリアミドを投与したものをミスマッチ群 (n=5) 、7
週齢のWistar
ラッ トをコントロール群(n=5)とし普通餌にて飼育した。STZ
群には0.1%酢酸を 1ml
腹腔内投与し、ポリアミド群、ミスマッチ群には0.1%酢酸 1ml
にTGF-β1 PI
ポリアミドまたはミスマッチポリアミドをそれぞれ溶解し腹腔内投与した。投 与量は1.5×10
-6M/body/週 2
回となるように投与した。3ヶ月後に解剖を行い、検体採取を行った。
9.FITC
ラベルTGF-β1 PI
ポリアミドの腹腔内投与による腎臓内移行の検討TGFβ1PI
ポリアミド合成時にFITC
を結合させたFITC
ラベリングTGF-
β1PI ポリアミドを合成し
1.5×10
-6M/body
になるようにDMSO
に溶解したものを体重
200g~300g
のWistar
ラットに腹腔内に投与した。1、3、7日後にイソフルラン吸入麻酔(2-5% in 100%酸素)下で腹部を正中切開し、下大静脈か ら採血して失血死させた後に、腎臓を摘出し蛍光顕微鏡にて
TGF-β1 PI
ポリア ミドの腎臓組織内の検討をした。10.Wistar
ラットの体重、尿蛋白、血糖値、腎機能の測定体重測定は小動物専用体重計(SHINKO DENSHI, Tokyo, Japan)を用い週
1
回行い、尿量は代謝ゲージを使用し1
日蓄尿行った。また、尿中蛋白は試薬と してマイクロTP-AR (Wako)を使用し、自動分析装置 (7170, HITACHI, Tokyo,
Japan)にてピロガロルレッド法にて週 1
回測定をおこなった。尿中アルブミンは試薬としてオートワコーマイクロアルブミン (Wako, Osaka, Japan)を使用
13
し、自動分析装置 (JCA-BM8000シリーズ)にて週
1
回の測定を行った。ラットの血糖値、血清
BUN、血清クレアチニン、HbA1c
の測定は飼育1
ヶ 月後と3
ヶ月経過したところで全血採血によって行った。血糖値の測定は全血 に試薬としてクイックオートネオGLU-HK (SHINO-TEST, Tokyo, Japan)を使
用し自動分析装置 (7180, HITACHI)にて測定した。HbA1c
も全血を用い、試薬 としてラピディアオートHbA1c-1 (Fujirebio,Tokyo,Japan)を使用し自動分析装
置(JCA-BM8000シリーズ: JEOL, Tokyo, Japan)にて測定した。血清BUN・血
清クレアチニンは全血を室温にて1
時間置き3000
回転・5
分遠心分離した血清 を用いた。試薬として血清BUN
は自動分析用試薬「生研」UN-S (DENKASEIKEN, Tokyo, Japan)を、血清クレアチニンは L
タイプワコーCRE・M (Wako)を使用し自動分析装置 (7180, HITACHI)を使用して測定を行った。
11
.腎組織の組織染色腎臓の組織変化を確認するためにラットより摘出した腎臓 を
ASP200S (Leica Biosystems, Wetzlar, Garmany)を使用しパラフィン化の処理を行った。
パラフィンブロックにした腎臓組織を
2~4μm
の薄さに切り出しを行った。切 り 出 し た 切 片 に 対 しNew Hematoxylin Solution Type M (Muto Pure
Chemicals, Tokyo, Japan)、 1% Eosin Y Solution
を使用しHematoxylin Eosin
(HE)染色を行った。また、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン 1(4034-2, Muto Pure
Chemicals)とワイゲルト鉄ヘマトキシリン 2 (4035-2, Muto Pure Chemicals)の
混合液、第2
媒染剤 (8141-1, Muto Pure Chemicals)、 0.75%オレンジG液(4023-2, Muto Pure Chemicals)
マ ッ ソ ン 染 色 液B (4035-2, Muto Pure
Chemicals)、2.5%リンタングステン酸液 (4018-1, Muto Pure Chemicals)アニ
リン青液 (4020-2,Muto Pure Chemicals)を使用し Masson Trichrome
染色を14
行った。染色後に光学顕微鏡にて組織変化を確認した。
12
.糸球体障害指数(Glomerular Injury Scores: GIS)
と尿細管間質障害指数(Tubular Injury Scores: TIS)
の評価Sabbatini
らの研究(25)を参考にし腎障害のスコア化を行った。スコアリングにあたり先入観を与えないためブラインド下で腎臓組織の有識者によりのスコア リングを行った。ラット腎臓を
HE
染色及びMasson Trichrome
染色を行い糸 球体障害の定量化のために30
個の糸球体をランダムに選び、それぞれの糸球体 の間質占拠率を評価し下記の通りにスコア化した。GIS
は[(0×n0 )+( 1×n1 )+
(2× n2) + (3×n3) + (4×n4)]÷30
で計算した。 尿細管間質傷害の定量化のた めに 20 領域をランダムに選び、線維化の度合いを下記の通りスコア化した。TIS
は、[(0×n0 )+( 1× n1 )+ (2×n2) + (3×n3) + (4×n4) ]÷20 で計算し た。1) GIS(a minimum of 30 glomeruli)
0: normal appearance
1: involvement of up to 25% of the glomerulus 2: involvement of 25 to 50% of the glomerulus 3: involvement of 50 to 75% of the glomerulus 4: involvement of 75 to 100% of the glomerulus 2) TIS(20 randomly selected cortical areas)
0: normal appearance
1: involvement of less than 10% of the area
2: involvement of 10 to 30% of the area
3: involvement of 30 to 50% of the area
4: involvement of more than 50% of the area
15
13.Podocin
によるラット腎臓糸球体ポドサイトの免疫蛍光染色摘出したラット腎臓を
O.T.C compound (Sakura Fintek Japan, Tokyo,
Japan)を使用して凍結標本を作製し、2~4μm
の薄さで切り出し、乾燥させた後に
4%パラホルムアルデヒドにて 10
分間固定した。PBS で洗浄後、0.1%TritonX-100/PBS(Sigma-Aldrich)を用いて 10
分間室温でインキュベーショ ンした。10% goat serum 1% albumin/PBS
で60
分間ブロッキングを行いPBS
で洗浄後、Anti-Podocin (P 0372, Sigma-Aldrich)を1%BSA/PBS
で1000
倍に 希釈し、室温で1
時間インキュベーションさせた。2次抗体としてAlexa fluor 488 anti-rabbit IgG(A21441, Invitrogen)を 500
倍希釈し、暗所で1
時間反 応 さ せ た 。PBS
で 洗 浄 後 、4',6-Diamidino-2-Phenylindole (D9542,
Sigma-Aldrich)を超純水で 2000
倍希釈し、5 分間暗所室温で反応させたのち、Fluoromount G (0100-01, Southern Biotech, Birmingham, AL, USA)で封入し、
蛍光顕微鏡 (IX73: Olympus, Tokyo, Japan)で観察した。
14
.腎臓組織のmicroRNA21,23a
発現の評価前述と同様に
total RNA
の抽出を行い、抽出したtotal RNA
が10ng
となる よう調整しTaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kit (4366596, Thermo Fisher Scientific)を使用し cDNA
を精製した。次 に
TaqMan Gene Expression Assays
プ ラ イ マ ー/
プ ロ ー ブ と し てhas-miR-21 (000397, Applied Biosystems)、has-miR-23a (000399, Applied
Biosystems)
を使用しRT-PCR
法で測定を行った。PCR 反応は 7500 RealTime PCR System (Applied Biosystems)
を使用し、50℃/2 分、95℃/10 分で 加温後、95℃ /15秒と60℃/1
分のサイクルを40
サイクル行った。ターゲット の発現は⊿⊿CT 法を用いた相対定量で求め、18S リボゾームRNA (4352930,
16
Applied Biosystems)
を内部標準とし発現量を補正した。15
.Western blot
法による蛋白発現の定量腎臓での
TGF-β1
蛋白の発現をWestern blot
法にて検討した。RIPA buffer(08714-04, nacalai tesque, Tokyo, Japan)を用いてタンパク抽出し、Pierce
BCA protein assay kit
(#23225, Thermo Fisher Scientific)にて蛋白定量した。β-メルカプトエタノールを含むサンプルバッファーでタンパク質抽出液を
95℃、5
分間、熱変性処理を行った。 12.5%ポリアクリルアミドゲルにサンプルを
1
レーンあたり10μg
アプライし、20-40mA の定電流で電気泳動を行っ た。その後、泳動したゲルは、iblot(IB1001, Thermo Fisher Scientific)にてPVDF
膜に転写し、5%スキムミルク溶液で1
時間室温にてブロッキングした。1
次抗体は200
倍希釈のTGF-β1
抗体(sc-146, Santa Cruz Biotechnology ,Santa, Cruz, CA, USA)を使用し、4℃オーバーナイトでインキュベーションし
た。Tris Buffered Saline With Tween (TBST)で2
分2
回、15分1
回、5分3
回洗浄し、2
次抗体は10000
希釈のHorseradish peroxidase (HRP) conjugated goat anti rabbit IgG
(111-036-003, Jackson Immune Reseach, West Grove, PA,USA)を用いて室温で 1
時間インキュベートした後、TBST
で2
分2
回、15分1
回、5分3
回洗浄した。蛋白質の検出はChemi-Lumi One Super(02230-30, nacalai tesque)を使用し、LAS3000(Fuji film, Tokyo, Japan)で撮影した。
また内部標準は
GAPDH
を用い、rabbit anti GAPDH
(#G9545, Sigma-Aldrich)を使用した。
16.電子顕微鏡での組織変化の評価
ラットより採取した腎臓を
0.1M
カコジル緩衝液(PH7.4: Gibco)で調整した2.5%グルタルアルデヒド(Gibco)で一晩固定した。次に、0.1M
カコジル緩衝液17
(PH7.4: Gibco)で調整した 1% osmiumtetroxide (Gibco) 2
時間固定し、エタノ ー ル に て 段 階 的 に 脱 水 し た 後Quetol-812
で 包 埋 し た 。 包 埋 し た 検 体 をultramicrotome (ULTRACUT UCT, Leica, Wien, Austria)を使用しダイアモン
ドナイフで薄切した。薄切した切片をuranyl acetate
とleadcitrate
で染色後、透過型電子顕微鏡 (JEM-1200EX, JEOL, Tokyo, Japan)で組織を観察した。
17
.統計解析結果は平均値±標準偏差 ( SE ) として表記し、2 群間の比較は
F
検定でP>0.05
を確認した後、t 検定を行い、P<0.05 を有意とした。また尿蛋白・尿Alb
の結果や多群間の比較に関してはEZR
(26)を使用しMann-Whitney U
検定とKruskal-Wallis
検定で確認しP<0.05
を有意とした。【研究結果】
1.高糖刺激による TGF-β1
発現培養メサンジウム細胞において高糖刺激にて
TGF-β1
の発現が増加するか検 証した。高糖濃度DMEM
に変更してから6、9、12、24、48
時間後でのTGF-
β1の発現は6
時間で0
時間と比較し有意(P<0.05)に発現の増加を認めた(図4)。
2.高糖刺激による形質転換マーカーの発現
高糖刺激後
6
時間後に0
時間と比較し有意 (P<0.01)に合成型マーカーOsteopontin mRNA
発現が増加した。逆に収縮型マーカーαSMA mRNAの発現は刺激後
12
時間後に発現が有意(P<0.01)に低下した(図5)。
3
.TGF-
β1 PI
ポ リ ア ミ ド の 高 糖 刺 激 に よ り 増 加 し たTGF-
β1
お よ びOsteopontin
発現への抑制効果培養メサンジウム細胞において、高糖刺激により増加した
TGF-β1
をPI
ポ18
リアミドにより抑制できるかを確認した。正常糖濃度
DMEM
をコントロールと し、高糖濃度DMEM、高糖濃度 DMEM+DMSO、高糖濃度 DMEM+ポリアミ
ド10
-8M、高糖濃度 DMEM+ポリアミド 10
-9M
の4
グループを6
時間刺激した後の
TGF-β1
の発現頻度を比較したところポリアミド10
-8M
濃度でDMSO
に比べ有意(P<0.05)な抑制効果が認められた(図
6)。また、同様に Osteopontin
に おいてもポリアミド10
-8M
濃度において抑制傾向は認めたものの有意差は得ら れなかった(図7)。培養メサンジウム細胞において、高糖刺激により増強した
TGF-β1 mRNA
発現に対するミスマッチポリアミドの作用を検討した。その結果スマッチポリアミドは
TGF-β1mRNA
発現の抑制効果は認めなかった(図8)。
したがって、TGF-β1 PIポリアミドの
TGF-β1 mRNA
発現への抑制作用は、PI
ポリアミドによる非特異的作用ではない事が示された。4
.糖刺激による培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の増加とTGF-
β1 PI
ポリ アミドの細胞増殖能への作用Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System
を使用し培養メサンジウム 細胞の細胞増殖能を測定した結果、高糖刺激により有意(P<0.01)に細胞増殖能は 増加した。また、高糖刺激にて増加した増殖能を10
-8M
のTGF-β1 PI
ポリア ミドは有意(P<0.05)に抑制した(図9)。
5.STZ
による腎障害尿量・体重の比較においてコントロール群と比較し
STZ
群では数日で尿量は 有意(P<0.01)に増加を認め、体重はコントロール群と比較し有意(P<0.01)に減少した(図
10)。蛋白尿・尿中 Alb
の変化についてはコントロール群とSTZ
群の比較において尿蛋白、尿中
Alb
は5
週経過頃より徐々にSTZ
群で増加を認め、11 週経過後ではSTZ
群でそれぞれ有意(P<0.01, P<0.05)に増加を認めた(図11)。
19
血液データについては当初は週
1
回ほどで採血を行い経時的なデータ収集を 試みたが、STZ 投与ラットは糖尿病発症後著明な高血糖となり、それに伴う血 管内脱水が著明であったため血管の確保、採血が困難であった。そのため1
ヶ 月後と3
ヶ月後の解剖時のみの採血結果の比較となった。コントロール群と比 較しSTZ
群では血糖、HbA1cは1
ヶ月後、3ヶ月後ともに有意(P<0.05)な上昇 を認め継続的な糖尿病であることを確認できた。また、STZ 群においてやや1
ヶ月後のBUN
が高い傾向にあったが有意差は無かった。1
ヶ月後の血清クレア チニンはSTZ
群で低値であった (表1)。
腎組織障害の評価として
HE
染色にてコントロール群とSTZ
群の1
ヶ月経過 時と3
ヶ月経過時の組織的変化を比較した。その結果、STZ群において1
ヶ月 後、3
ヶ月後ともに糸球体の腫脹を認めたが、糖尿病性腎症の糸球体に認められ る明らかな結節像や線維化像は認めなかった(図12)。
糸球体のポドサイト障害の評価としてコントロール群と
STZ
群の3
ヶ月経過 ラットの腎臓をPodocin
にて免疫蛍光染色を行った。その結果、コントロール 群と比較しSTZ
群においてPodocin
染色の連続性が途絶え、発現が低下する傾 向が認められた(図13)。免疫蛍光染色にて変化を認めたため、コントロール群・
STZ
群の3
ヶ月経過時の腎臓組織障害を、電子顕微鏡を用いて比較した。その 結果、コントロール群と比較するとSTZ
群にPodocyte
の足突起の融合やスリ ット構造の消失した部分を多く認めた (図14)。このことから EndMT
も起こっ ている可能性を考え、EndMT
の指標となるmicroRNA21・microRNA23a
の比 較を行った。その結果、コントロール群とSTZ
群の3
ヶ月経過時の比較におい てmicroRNA21
・23a
発現ともにSTZ
群で有意(P<0.05)な増加を認めた(図15)。
20
6
.PI
ポリアミドのTGF-
β1
抑制作用及び腎臓での局在PI
ポリアミドの腎臓での局在を確認するためFITC
ラベリングポリアミドを1.5×10
-6M/body
となるようにDMSO
に溶解し腹腔内に投与し投与後1
日、3 日、7日で腎臓を取り出し蛍光顕微鏡にてPI
ポリアミドの核内移行性を比較し た。その結果、投与後1
日後に核内移行性を認め3
日後に最も核内移行してい た。しかし、7
日後には核内から排出されていることが分かった(図16)。この結
果を受けPI
ポリアミドの投与は、1.5×10-6M/body
を週2
回の間隔で行うこと とした。コントロール群、ミスマッチ群、ポリアミド群より3
検体ずつ選択し、腎臓組織中の
TGF-β1
の蛋白の発現量をWestern blot
法にて評価した。その結 果、コントロール群と比較しミスマッチ群で有意(P<0.05)にTGF-β1
の発現量 は増加しており、ミスマッチ群と比較しポリアミド群で有意(P<0.01)に抑制され た(図17)。
7
.PI
ポリアミドによる腎障害に対する効果ポリアミド群とミスマッチ群の比較においてはポリアミド群
12
週経過時点で の尿蛋白はやや低下傾向だったものの、尿蛋白および尿中Alb
共に有意な抑制 効果は認めなかった(図18)。血液データにおいてコントロール群と比較しポリ
アミド群、ミスマッチ群共に高血糖を維持しておりHbA1c
の高値も認めた(表2)。また、 STZ
群とポリアミド群を比較し血糖値・HbA1cにおいて差はなくPI
ポ リ ア ミ ド に よ る 血 糖 値 へ の 影 響 は な い と 考 え ら れ た 。 腎 組 織 の
microRNA21・23a
のリアルタイムRT-PCR
での比較において、ポリアミド群とミスマッチ群との間に有意差は認めなかった(図
19)。
次に、HE
染色とMasson
Trichrome
染色を行い腎臓組織の障害を確認した(図20)。その結果、明らかな
糸球体結節像などは無いものの
HE
染色にてコントロール群と比較しミスマッ チ群、ポリアミド群では、一糸球体につき25%~50%前後の障害を示す割合が
21
多く見受けられた。また、
Masson Trichrome
染色にてコントロール群と比較し ミスマッチ群、ポリアミド群では一視野の尿細管障害の割合が30%~50%に及
ぶものが多く見受けられた。そこで、ミスマッチ群とポリアミド群3
ヶ月経過 後のGIS
およびTIS
の比較を行ったところ、ポリアミド群はミスマッチ群に比 べ、GISでは一糸球体における障害度は25%までに治まっているものが多かっ
た。また、TISにおいては尿細管間質の障害が30%までに治まっているものが
多く、尿細管の萎縮も軽度であり、共に有意(P<0.05)に低下した(図21)。電子顕
微鏡でのポドサイトの障害についてSTZ
群・ポリアミド群(週1
回投与)の3
ヶ 月経過時の腎臓組織障害を、電子顕微鏡を用いて比較した。その結果、STZ
群・ポリアミド群(週
1
回投与)共にPodocyte
の足突起の融合やスリット構造の消失 した部分を認めたが、ポリアミド群はSTZ
群と比較すると融合やスリット構造 の消失は軽度であった(図22)。
【考察】
糖尿病性腎症の腎組織変化の特徴として腎細胞肥大と細胞外マトリックスの 蓄積が挙げられる。TGF-β1 はこの変化に対して中心的な役割を担っており、
TGF-β1
は高糖刺激にてその発現が増強することが知られている(27)。また、高糖刺激はメサンジウム細胞内の
RhoA / Rho
キナーゼを活性化させ、下流にあるAP-1
を活性し細胞外基質の産生・線維化の促進にかかわっていることが知られ ている(28)。AP-1 はTGF-β1
プロモーターを活性化する転写因子である。これ らより、糖尿病性腎症の腎障害の発展にTGF-β1
及びAP-1
は深くかかわって いると考えられる。そこで、本研究において、ラットのAP-1
結合部位に特異的に結合し
TGF-β1
の発現を抑制するように設計されたPI
ポリアミドを使用した。同ポリアミドは
TGF-β1
の関与が明らかなDahl
食塩感受性ラットにおい22
て、上昇した
TGF-β1
を抑制し腎臓の線維化の抑制効果を認めている(18)。これ らより、同ポリアミドにより糖尿病性腎症腎の発展を抑制できるかを検証する こととした。In vitro
で、培養メサンジウム細胞の実験において高糖刺激によりTGF-β1
の上昇を認め、また、間葉細胞の合成型マーカーである
Osteopontin
も経時的 な上昇を認めた。細胞増殖能の実験においても高糖刺激により細胞増殖能WST-1
の増加を認めたことから高糖刺激はメサンジウム細胞の増殖に関与することが分かり、
TGF-β1 PI
ポリアミドにてそれらの抑制効果を認めたことから 糖尿病性腎症におけるメサンジウム領域の増大に対してTGF-β1 PI
ポリアミ ドの効果の可能性が示唆された。更に、同実験において収縮型形質マーカーで あるαSMAは経時的に減少した。TGF-β1
の細胞増殖に対する作用は、殆どの 細胞には増殖抑制に働くが、形質が合成型になった間葉細胞には増殖を刺激す る事が知られている。このように、メサンジウム細胞への高糖刺激はRho
キナ ーゼによるAP-1
の発現によりTGF-β1
遺伝子のプロモーター活性化により、メサンジウム細胞を合成型に形質転換し、Osteopontin発現を増加、αSMA発 現を抑制、細胞増殖を促進し、TGF-β1 PIポリアミドは
TGF-β1
遺伝子の転 写を抑制、形質を収縮型に戻し、メサンジウム細胞の増殖を抑制していると考 えられた。したがってTGF-β1 PI
ポリアミドはメサンジウム増殖を起こす糖尿 病性腎症の糸球体障害に有効であると予想された。次に、In vivoの実験にて、糖尿病モデルラットの検討を行った。当初、遺伝 的
2
型糖尿病モデルラットでの使用を検討したが、複数の個体を長期間の飼育 が困難であったためWistar
ラットにSTZ
を投与し誘発される1
型糖尿病モデ ルラットを用いて研究する事にした。STZ糖尿病ラットでは糖尿病発症より5
週間後で尿中Alb
および尿蛋白が上昇し、11週間経過でコントロールと比較し23
明らかな上昇を認めた。血液データ上明らかな腎機能低下は認めなかった。ま た、コントロール群に比較し
STZ
群において1
ヶ月時のクレアチニンの値が低 いのは糖尿病により代謝異常が起き体格がコントロール群と比較しSTZ
群にお いて小さくなってしまうことと、著明高血糖により飲水量・尿量ともに著明に 増加するため腎臓での過剰濾過が起きたためと考えられた。HE
染色やMasson
Trichrome
染色の結果では典型的な進行した糖尿病性腎症で認められる糸球体結節像などの組織学的変化は認めなかったものの、メサンジウム細胞の軽度な 増殖や間質の線維化、尿細管の萎縮などの障害は散在していた。これらより、
糖尿病発症から
3
ヶ月程度では軽度な腎障害は起こっているものの糖尿病に特 有の組織学的変化や腎機能低下を示す程の糖尿病性腎症は起きていないと考え られた。しかし、ポドサイトの免疫蛍光染色の結果からSTZ
群においてポドサ イトの連続性が途絶えている部分を認め、アルブミン尿や蛋白尿の出現から糖 尿病の初期段階で起こる基底膜障害やポドサイトの障害が発症していることが 示唆された。また、EndMT
の促進マーカーとなるmicroRNA21・ 23a
の測定の 結果から糸球体内皮細胞の障害も初期段階で起きている可能性が示唆された。これらより、糖尿病性腎症の初期に糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストー クの破錠が起きている可能性も示唆された。本来であれば
In vitro
の実験にお いて糸球体内皮細胞が高糖刺激により間葉化現象を起こすかを検証しPI
ポリア ミドの効果を検討するべきである。Peng
らの報告(29)では培養糸球体内皮細胞を 用いて間葉化現象をIn vitro
で確認している。今後、類似した細胞を検討しIn
vitro
における糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークを検証していきたいと考えている。
続いて、糖尿病ラットに