• 検索結果がありません。

糖尿病性腎症への

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "糖尿病性腎症への"

Copied!
62
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

糖尿病性腎症への TGF-β1 抑制ペプチド化合物 PI ポリアミドの効果の検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系腎臓内科学専攻

堀越 周

修了年 2018 年

指導教員 阿部 雅紀

(2)

目次

【概要】 ... 1

【緒言】 ... 2

1.末期腎不全における糖尿性腎症 ... 2

2.糖尿病性腎症の発症、進展 ... 3

3.糖尿病性腎症の組織学的変化 ... 3

4. 腎症への TGF-βの関与 ... 4

5. 糖尿病性腎症への TGF-βの関与の報告 ... 5

6. 腎線維化および糖尿病性腎症に於ける micro RNA の関与 ... 5

7. 糖尿病性腎症に於ける、糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークの破 綻 ... 6

8. ピロール・イミダゾール(Pyrrole Imidazole: PI)ポリアミド ... 6

【研究目的】 ... 7

【対象と方法】 ... 7

1.ラット TGF-β1 プロモーターに対する PI ポリアミド及びミスマッチポリア ミドの設計と合成 ... 7

2.実験動物 ... 8

3.メサンジウム細胞の分離、継代培養 ... 8

4.培養メサンジウム細胞の高糖刺激 ... 9

5.培養メサンジウム細胞における TGF-β1 PI ポリアミドの効果の検討 ... 9

6.培養細胞での mRNA の発現測定 ... 10

7.培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の測定 ... 11

8.STZ による 1 型糖尿病モデルラットの作成及び各種ラットの飼育・薬物投 与 ... 11

9.FITC ラベル TGF-β1 PI ポリアミドの腹腔内投与による腎臓内移行の検討 ... 12

10.Wistar ラットの体重、尿蛋白、血糖値、腎機能の測定 ... 12

11.腎組織の組織染色 ... 13

12.糸球体障害指数(Glomerular Injury Scores: GIS)と尿細管間質障害指数 (Tubular Injury Scores: TIS)の評価 ... 14

13.Podocin によるラット腎臓糸球体ポドサイトの免疫蛍光染色 ... 15

14.腎臓組織の microRNA21,23a 発現の評価 ... 15

15.Western blot 法による蛋白発現の定量 ... 16

16.電子顕微鏡での組織変化の評価 ... 16

17.統計解析 ... 17

(3)

【研究結果】 ... 17

1.高糖刺激による TGF-β1 発現 ... 17

2.高糖刺激による形質転換マーカーの発現 ... 17

3 . TGF-β1 PI ポ リ ア ミ ド の 高 糖 刺 激 に よ り 増 加 し た TGF-β1 お よ び Osteopontin 発現への抑制効果 ... 17

4.糖刺激による培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の増加と TGF-β1 PI ポリ アミドの細胞増殖能への作用 ... 18

5.STZ による腎障害 ... 18

6.PI ポリアミドの TGF-β1 抑制作用及び腎臓での局在 ... 20

7.PI ポリアミドによる腎障害に対する効果 ... 20

【考察】 ... 21

【まとめ】 ... 25

【謝辞】 ... 26

【図・表】 ... 27

【引用文献】 ... 50

研究業績 ... 54

(4)

1

【概要】

糖尿病性腎症の病態形成には

Transforming growth factor-β1(TGF-β1)の

関与が知られている。本研究では、TGF-β1のプロモータである

Activator protein-1(AP-1)の結合領域に結合し TGF-β1

の発現を抑制する

TGF-β1 Pyrrole Imidazole( PI)ポリアミド使用し糖尿病性腎症の抑制効果の検討を行っ

た。In vitroの実験としてラット腎メサンジウム細胞に対し

25mM

の高糖刺激

6〜48

時間行い

TGF-β1

の増加を検討した。その結果刺激後

6

時間で最も

TGF-β1

の発現が増加した。同時に、合成型マーカーである

Osteopontin

の発

現も

6

時間以降に増加していた。そこで

TGF-β1 PI

ポリアミドの作用を検討し た結果、

10

-8

M

TGF-β1 PI

ポリアミドは高糖刺激による

TGF-β1 mRNA

現増加を有意に抑制した。また、

Osteopontin

発現に関しては同濃度にて抑制傾 向を示した。次に、高糖刺激におけるラットメサンジウム細胞の増殖能を

Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System

を使用し検討した結果、有意な 増殖能の増加認め、

TGF-β1PI

ポリアミドは高糖刺激による増殖能の増加を有 意に制御した。

In vivo

の実験においては、Wistarラットにストレプトゾトシン

(Streptozotocin: STZ)を投与し、 1

型糖尿病モデルラットを作製した。糖尿病性 腎症の指標として尿蛋白、尿中アルブミン(Albumen: Alb)の定量を行った結 果、コントロール群と比較し

5

週経過時に尿蛋白、尿中

Alb

共に上昇を認め、

11

週後には有意な上昇を認めた。そこで、腎臓組織変化を

Hematoxylin Eosin

染色・

Masson Trichrome

染色で確認したところ、明らかな線維化や結節像は認

められなかったが、糸球体障害指数( Glomerular injury scores: GIS) ・尿細管 間質障害指数( Tubular injury scores: TIS) にて有意な障害が認められた。また、

腎臓組織中の

TGF-β1

の発現及び

Endothelial Mesenchymal Transition

(5)

2

(EndMT)の指標となる microRNA21・ 23a

の有意な上昇も認めた。そこで、

STZ

ラットに対し

1.5×10

-6

M/body/週 2

回の

TGF-β1 PI

ポリアミドの腹腔内投与を 行った。その結果、尿蛋白・尿中

Alb

は有意な変化は認めなかった。腎組織の

GIS・TIS

の比較においてはポリアミド群で有意な抑制効果を認め、Western

blot

法にて腎臓組織中

TGF-β1

の蛋白の発現も抑制された。

microRNA21

23a

においては腎組織中の発現量はミスマッチ群に比べポリアミド群で抑制傾向で あったが有意差は認められなかった。電子顕微鏡でのポドサイトの障害を比較 したところ、 ポリアミド群で足突起の融合やスリット構造の消失の程度が軽度 であった。以上の結果より、高糖刺激によるメサンジウム細胞からの

TGF-β1

発現増加およびメサンジウム細胞増殖促進を

TGF-β1PI

ポリアミドは抑制した。

また、STZ投与による糖尿病モデルラットにおいて誘導された糸球体病変およ び尿細管間質病変を

TGF-β1PI

ポリアミドは抑制した。

TGF-β1PI

ポリアミド は将来糖尿病性腎症の治療薬となりうる事が示唆された。

【緒言】

1

.末期腎不全における糖尿性腎症

現在の日本の高度医療を持ってしても、進行性腎障害を根治する有効な治療 法が無く、現在全国で

32

万人が末期腎不全で透析療法を受け、毎年

3

7

千人 が新たに透析導入となっており、透析療法で年間

2

兆円の医療費がかかり、年 間医療予算の

8%を占めている。透析療法は単に血液浄化であり、慢性腎不全を

起こす腎症の根治的治療の開発が僅々の課題である。糖尿病性腎症は糖尿病に おける三大合併症の一つであり、

1998

年に慢性糸球体腎炎と入れ替わり、透析 導入となる原疾患の首位の座について以来、増加の一途を示していたが、2008 年以降は導入患者の 44%前後で推移している。日本透析医学会による全国調査 では,2014 年の透析導入

36,377

名のうち糖尿病性は

15,809

名と

43.5%を占

(6)

3

める(1)

(図 1)。

2

.糖尿病性腎症の発症、進展

糖尿病では、比較的早期から糸球体基底膜の肥厚が出現し、高血糖による細 胞障害のため足突起の機能異常やアポトーシスによるポドサイトの脱落、血管 内皮障害が生じ、糸球体バリア機能が障害される。また、メサンジウム細胞の 機能異常により、メサンジウム細胞は細胞外基質産生を増加させる。このメサ ンジウム基質の蓄積から糸球体毛細血管が閉塞し、糖尿病に特徴的な結節性病 変を形成し、糸球体硬化に至る。糖尿病性腎症の病変の主体は糸球体障害であ るが、糖尿病性腎症による蛋白尿と腎機能障害は、糸球体病変の進展だけでな く、尿細管障害の進行、及び細動脈硬化症の進展によって増悪する。尿細管障 害は糸球体硬化に伴う二次的な変化に加え、高血糖や多量の蛋白尿にさらされ ることによる直接的な障害によっても惹起され、腎機能低下につながっていく。

(2)。1型糖尿病における糖尿病性腎症の典型的な臨床経過は、微量アルブミン尿 の出現により発症し、未治療であれば年間

10~20%程度のアルブミン排泄量の増

加を生じる。その後、10~15 年で蛋白尿が陽性となる顕性腎症に移行する。顕 性腎症まで病期が進行すると

GFR

が年間

2~20ml/分低下し、半数以上の症例で 10

年以内に末期腎不全に陥ると考えられている。一方、2 型糖尿病では糖尿病 の発症時期が不明であることが多く、糖尿病診断時にすでにアルブミン尿や蛋 白尿が出現していること症例もあるが、臨床経過は

1

型糖尿病とほぼ同様と考 えられている(3)

3.糖尿病性腎症の組織学的変化

腎生検による糖尿病性腎症の組織像では,糸球体のびまん性病変としてメサ ンギウム基質の増生・拡大と糸球体毛細血管壁の肥厚が認められる。結節性病

(7)

4

変は本症に特異性の高い病変であり、典型的な結節は,円形で糸球体毛細血管 係蹄の中心部に形成され、結節の大きさは様々である。同部位の細胞は結節の 周辺に局在する。進行例では,結節は大型となり糸球体毛細血管を閉塞する。

浸出性病変では,糸球体内,ボウマン嚢内ならびに輸出・輸入細動脈壁の硝子 様沈着が認められる。糸球体毛細血管あるいは糸球体外小血管内に血漿蛋白,

脂質およびムコ蛋白からなる成分の浸出がみられる。浸出性病変は,比較的少 ないが糖尿病の早い時期から認められる(4)。糖尿病性腎症早期に糸球体過剰濾 過・肥大を認めるが、このとき糸球体係蹄にて新たな毛細血管の形成、既存の 血管の伸長等の血管新生が観察される。代表的血管新生因子である

Vascular endothelial growth factor (VEGF)

は血管内皮細胞増殖・遊走を促進し、血管 透過性を亢進させる。糸球体にて

VEGF

は主に足細胞にて発現するが、高血糖、

TGF-β、アンジオテンシンⅡにより促進されることが報告されている

(5)。また、

VEGF

は糸球体基底膜 (Glomerular basement membrane: GBM)の構成要素で あるⅣ型コラーゲンα3鎖の足細胞における発現を

TGF-β1

の下流にて促進す ることが報告された。糖尿病性腎症において観察される

GBM

の肥厚ならびに 糸球体濾過障壁障害に

VEGF

が関与する可能性が示唆される(6)

4.

腎症への

TGF-βの関与

TGF-βはほとんどの細胞系に対し増殖抑制に働くが血管平滑筋、メサンジ

ウム細胞、線維芽細胞などの間葉系細胞では増殖刺激を示すことが知られてい る。TGF-βは細胞外マトリックス (Extracellular matrix: ECM)の増生・沈着 を起こす強力な増殖因子であり、フィブロネクチン、コラーゲンタイプ I など

ECM

蛋白が

TGF-βにより産生亢進されることが知られている

(7)

TGF-βに

よる

ECM

蛋白の発現誘導は、速やかな創傷治癒課程の進行に本質的かつ有効な

(8)

5

現象であるが、過剰な

TGF-βの作用が ECM

の沈着を招き、種々の線維化疾患

(糸球体腎炎、糖尿病性腎症、肺線維症、肝硬変症など)の病態形成に関わっ ていると考えられる。傷害血管、腎炎、動脈硬化巣などでは

TGF-βの発現が亢

進し、血管平滑筋細胞やメサンジウム細胞を増殖させ、

ECM

の増生を起こす(8) さらに

TGF-βは結合組織成長因子(Connective tissue growth factor: CTGF)

の発現を強力に刺激する事が知られている。

CTGF

TGF-βと同様に間葉系細

胞の増殖を

ECM

の増生により、糸球体腎炎、線維性疾患に関与している(9)。糖 尿病性腎症を含めた慢性腎臓病では、腎内組織アンジオテンシンⅡは

TGF-β1

の転写活性を亢進し、糸球体メサンジウム細胞増殖、

ECM

増生により糸球体硬 化を起こす。更に

TGF-βは、尿細管上皮の間葉化(Epithelial to mesenchymal transition: EMT)をおこし、また TGF-βの下流に位置する増殖因子 CTGF

の発 現亢進により、間質の線維化を起こす。これら全体で腎障害が進行する(10)

5.

糖尿病性腎症への

TGF-βの関与の報告

糖尿病性腎症において、

TGF-βは高グルコースにより誘導されて ECM

を産

生し、線維化を促進するマスター制御因子である。TGF-βは糖尿病性腎症の腎 臓に蓄積するタンパク質の合成を促進することが知られている(11)。糸球体細胞 中の高グルコースによって

TGF-βが過剰に発現すると、マトリックスタンパク

質の沈着が増加し、糸球体硬化につながる。また、このような過剰発現が起こ ると、ポドサイトのアポトーシスが起こり、フィルターとしての腎臓の機能が 低下してしまう。

6.

腎線維化および糖尿病性腎症に於ける

micro RNA

の関与

腎線維化および糖尿病性腎症の病態において糸球体内内皮細胞が間葉化する

Endothelial mesenchymal transition (EndMT)

と尿細管上皮が間葉化する

(9)

6

EMT

が報告されている。この

EndMT

EMT

には遺伝子発現を制御する

micro RNA

の関与が最近報告され(12)、これら

EMT

および

EndMT

に糖尿病腎症で発 現亢進している

TGF-β1

が関与していると考えられる。EndMT に関与する

microRNA

の 中 で

EndMT

を 促 進 す る 方 向 に 働 く

microRNA

と し て

microRNA21

microRNA23a

が挙げられる。

7.

糖尿病性腎症に於ける、糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークの破綻 最近、糸球体内皮細胞とポドサイトがお互いクロストークしているとの報告(13) がある。ポドサイトは元来多くのサイトカインを含めた分子を産生し、VEGF,

CXC chemokine receptor 4(CXCR4), Tie-2

などに作用し、糸球体内皮細胞機能 を維持する。 糸球体内皮細胞は

Activated protein C

を産生して糸球体内皮機 能を維持している。つまり糸球体内皮細胞に

EndMT

が起こるとポドサイト傷 害がおこり、アルブミン尿や蛋白尿が生じる。

8.

ピロール・イミダゾール(Pyrrole Imidazole: PI)ポリアミド

PI

ポリアミドは、

1996

年にカルフォルニア工科大学の

Peter B. Dervan

らに より

DNA

認識抗生物質より見いだされた

DNA

配列特異的に結合する中分子ペ プチド化合物である。同時期に京都大学杉山はデュオカルマイシン

A

とディス タマイシン

A

が協同的な

DNA

のアルキル化能を有していることを発見し、そ れに基づいてこれまで

PI

ポリアミドを基盤とした様々な機能分子が設計されて いる。合成された

DNA

結合

PI

ポリアミドは、Py/Imペアが

CG、Py/Py

ペア

AT

または

TA、Im/Py

ペアは

GC

を認識し、これにより任意の

DNA

に塩基

特異的に結合し、ターゲット遺伝子プロモーターに結合するよう設計すると、

転写因子の結合を阻害し遺伝子発現を抑制する(図

2)。

PI

ポリアミドの特徴として

i)

転写因子より強力に

2

本鎖

DNA

の結合し、遺

(10)

7

伝子発現を抑制する遺伝子制御薬である。

ii)有機化合物であるため核酸医薬と

違い核酸分解酵素に分解されず細胞や生体内で安定である。iii)Drug delivery

system

なしに細胞の核に取り込まれ、様々な遺伝子をターゲットとして自由に

分子設計できる。このように

PI

ポリアミドは遺伝子制御薬であり、これまで治 療薬の無かった疾患の責任因子に対しても自由に設計でき、核酸医薬の分解性 の欠点がなく、疾病で活性化した転写活性を抑制するため病変のみを抑制し、

副作用の少ない転写活性抑制遺伝子制御薬として期待できる(14-16)

日本大学ではこれまで

TGF-β1

に対する

PI

ポリアミドを分子設計し、ラッ

トの腎症(17,18)、血管再狭窄(19)、腹膜硬化症(20)、角膜損傷(21)、皮膚瘢痕(22)を著明

に抑制する事を報告した。

【研究目的】

本研究では高糖刺激ラットメサンジウム細胞に対する

TGF-β1

のプロモータ ーを制御する遺伝子制御薬 PI ポリアミド効果及び、ストレプトゾトシン惹起性 糖尿病性腎症モデルでの腎症の進展に対する作用につき検討した。

【対象と方法】

1.ラット TGF-β1

プロモーターに対する

PI

ポリアミド及びミスマッチポリア

ミドの設計と合成

本研究に使用した

TGF-β1

を標的とした

TGF-β1 PI

ポリアミド

Dahl

食塩 感受性ラットの研究において強力に

TGF-β1

の抑制効果を認め、

TGF-β1

のプ ロモーターとされる

activator protein-1(AP-1)の結合領域にまたがるように設

計された

PI

ポリアミドを使用した(17)

(図 3)。また、同時に AP-1

の転写結合部 位に結合しないように設計された

PI

ポリアミドをミスマッチポリアミドとし使 用した(図

3)。

これらの

PI

ポリアミドはペプチド合成機

PSSM-8(Shimadzu,

(11)

8

Kyoto, Japan)にて Fmoc

固相合成法で合成し、C18カラム装着

High performance liquid chromatography(HPLC)にて精製した。

2.実験動物

動物実験は、全て日本大学医学部動物実験委員会の指針に従って行った。

Wistar

ラット(雄性

7

週齢)はいずれも日本チャ―ルスリバー株式会社

(Yokohama, Japan)から購入して実験に使用した。臓器摘出の際にはイソフ ルラン吸入麻酔(2-5% in 100%酸素)下で体表を消毒後に腹部を正中切開し、

下大静脈から採血をして失血死とした後に、腎臓を摘出した。(日本大学動物実 験計画承認番号:AP16M11‐1)

3

.メサンジウム細胞の分離、継代培養

ラット腎臓からメサンジウム細胞はシービング法(23)で単離、培養した。ラッ トを麻酔器にてイソフルランで鎮静し、縦切開で開腹し、左右の腎門部で腎動 静脈を結紮・切離し、両側の全腎摘を行った無菌の状態で糸球体が含まれる皮 質を尖刀で切り出し、さらに直径

2~3 mm

大に細断した。細断された組織を

200

メッシュの上に乗せ、注射器の内筒ですりつぶし、上から培養液

(RPMI-1640; Gibco Life Technologies ,

Carlsbad, CA, USA)を注ぎ濾過した。

全ての組織をすりつぶし濾過し、その濾液を

120

メッシュで濾過した。糸球体

120

メッシュを通過できず、メッシュ上に残るため培養液で希釈しながら吸 引して、滅菌チューブに回収した。

2000 rpm

5

分間遠沈し上清を破棄し、

0.1%

コラゲナーゼ(Wako, Osaka, Japan)10 mlを加えた。遠沈後、上清を破棄し、

培養液で洗浄し再び遠沈した。20%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum: FBS:

JRH Bioscience, Lenex, KS, USA)含有 RPMI-1640

にペニシリン

100

単位/ml、

ストレプトマイシン

100

μg/ml、ITS(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を添

(12)

9

加し培養を行った。数日で細胞がフラスコ内でコンフレントになっていること を確認し、培養液を除きリン酸緩衝液(Phosphate-buffered saline: PBS:

Sigma-Aldrich, St.Louis, MO, USA)で 2

回洗浄した後、

Tryple Express

(Life

Technologies)で細胞を剥離・回収し、滅菌フラスコに約 1.0×10⁴ /cm²の密度

で播種し継代培養した。培地の交換は週

2

回の頻度で行い、コンフレントにな る毎に継代培養を繰り返し、5~7継代時の細胞を各実験に使用した。

4.培養メサンジウム細胞の高糖刺激

3

週齢の

WKY

ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、

10%FBS

を添加した正常糖濃度培

Dullbecco’ s Modified Eagle’s Medium (DMEM) Glucose 5.6mM(1000mg/L) (Sigma-Aldrich)37℃で CO₂インキュベーターで培

養し

6

ウェルプレート(2ml / well)に播種し、80%コンフレントになるまで培養 した。

1

枚の

6

ウェルプレートをコントロール(刺激後

0

時間)と残りの

5

枚の

6

ウェルプレートに 高糖濃度

DMEM Glucose 25mM(4500mg/L)

と交換し高糖 刺激を行った。刺激後、

0、6、9、12、24、 48

時間経過したものから

mRNA

抽出を行いリアルタイム

RT-PCR

にて

TGF-β1、Osteopontin、α-Smooth muscle actin(α-SMA)

mRNA

発現の測定を行った。

5.培養メサンジウム細胞における TGF-β1 PI

ポリアミドの効果の検討

WKY

ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、

10%FBS

を添加し た正常糖濃度

DMEM

37℃、5%CO₂の条件下で培養し 6

ウェル プレート

(2ml / well)5

枚に播種し

80%コンフレントになるまで培養した。1枚をコント

ロールとし、2枚のプレートに

PI

ポリアミドを

dimetylsulfoxide(DMSO,

Sigma-Aldrich)を使用し溶解し、最終濃度 10

-8

M、 10

-9

M

になるよう添加した正 常糖濃度

DMEM

を作製した。その培養液を用いて

37℃、5%CO₂の条件下で 3

(13)

10

時間培養し

PI

ポリアミドのインキュベーションを行った。残りは

DMSO

1:1000

となるように正常糖濃度

DMEM

に添加し

37℃で CO₂インキュベーター

にて

3

時間培養した。3時間後に

2

種類の

PI

ポリアミドの濃度に調整した

糖濃度

DMEM

に変更し

1

枚を

DMSO 1:1000

となるように添加した高糖濃度

DMEM

に変更した。6時間後に

5

枚のプレートの細胞を回収し

RT-PCR

法で

TGF-β1、 Osteopontin mRNA

発現の測定を行い

PI

ポリアミドの効果判定を行 った。また、ミスマッチポリアミドについても最終濃度

10

-8

M

に調整し同様の 工程で比較を行った。

6.培養細胞での mRNA

の発現測定

刺激を行った各種細胞の培養液を破棄し

TRIzol Reagent (1559608,Life

Technologies)1ml

を加えピペッティングしエッペンチューブに移した。クロロ

ホルム

200μl

を加え転倒混和し室温で

2~3

分置いた後

4℃で 15000

回転

15

間遠心分離をし、新しいエッペンチューブに上清 400μl を移した。上清液に

2-プロパノール 500μl

を加え転倒混和し

5~10

分置いた後に

4℃で 15000

回転

10

分間遠心分離を行い、沈殿物に

70%エタノールを加え、混和し 4℃で 10000

回転

5

分間遠心し

total RNA

の抽出を行った。抽出した

total RNA

より、混在 する

DNA

を除去するために

1μg

相当の

total RNA

DNase I (18068-015, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)

で処理を行ってから

High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (4368814,Thermo Fisher Scientific)を用いて cDNA

を精製した。

mRNA

の発現は

TaqMan Gene Expression Assays

プライマー/プローブとし

Tgfb1(Rn00572010_m1, Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、

Acta2(Rn01759928_g1, Applied Biosystems)、 Spp1(Rn00681031_m1, Applied

(14)

11

Biosystems)を用いた

リアルタイム

RT-PCR

法で検討を行った。PCR 反応は

7500 Real Time PCR System (Applied Biosystems)

を使用し、

50℃/2

分、

95℃

/10

分で加温後、95℃ /15秒と

60℃/1

分のサイクルを

40

サイクル行った。タ ーゲットの発現はスタンダードを用いた相対定量で求め、

Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(Gapdh)( 4351317, Life Technologies) mRNA

発現を内部標準とし発現量を補正した。

7.培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の測定

WKY

ラットより単離培養したメサンジウム細胞を使用し、96wellプレート

5×10

3

cell/well(100μl/well)となるように 10%FBS

含有正常糖濃度

DMEM

メサンジウム細胞を播種し、37℃、5%CO₂の条件下で

24

時間培養した。次に 培地を

0.2%FBS

含有正常糖濃度 DMEMに置き換えて

24

時間

serum

starvation

を行った。この際、

TGF-β1

に対する

PI

ポリアミドとミスマッチポ リアミドをそれぞれ最終濃度が

10

-8

M

になるように、またコントロールには等 量の

DMSO

を培地に添加した。Serum starvation後、細胞は

10%FBS

含有高

DMEM

で糖刺激を行った。この際にも、PIポリアミドとミスマッチポリア ミドを

10

-8

M

になるように培地に添加した。

24

時間後、

Premix WST-1(Takara Bio, Ohtu, Japan)を 1well

あたり

10μl

ずつ加え、37℃、90分間培養後、マイ クロプレートリーダーを用いて対照波形を

650nm

とし、450nmの波長を測定 し増殖能を測定した。

8. STZ

による

1

型糖尿病モデルラットの作成及び各種ラットの飼育・薬物投与

Makino

等の実験(24)を参考とし、あらかじめ

12

時間絶食させておいた体重

200‐250g

Wistar

ラットに対し、生理食塩水(Otsuka Pharmaceutical, Tokyo,

Japan)0.3ml

に溶解した

STZ(195-15154,Wako,Osaka,Japan) 60mg/㎏を尾静

(15)

12

脈内に単回投与して

1

型糖尿病性ラットを作製した。STZ を投与したラットに おいて、

24

時間後の血糖値を

GLUCOCARD G Black(Panasonic,Tokyo,Japan)

にて測定し、血糖値が

300mg/dl

以上を示したラットを

STZ

群 (n=6) とした。

STZ

群に

TGF-β1 PI

ポリアミド投与したものをポリアミド群 (n=5~6)、ミス マッチポリアミドを投与したものをミスマッチ群 (n=5)

7

週齢の

Wistar

ラッ トをコントロール群(n=5)とし普通餌にて飼育した。

STZ

群には

0.1%酢酸を 1ml

腹腔内投与し、ポリアミド群、ミスマッチ群には

0.1%酢酸 1ml

TGF-β1 PI

ポリアミドまたはミスマッチポリアミドをそれぞれ溶解し腹腔内投与した。投 与量は

1.5×10

-6

M/body/週 2

回となるように投与した。3ヶ月後に解剖を行い、

検体採取を行った。

9.FITC

ラベル

TGF-β1 PI

ポリアミドの腹腔内投与による腎臓内移行の検討

TGFβ1PI

ポリアミド合成時に

FITC

を結合させた

FITC

ラベリング

TGF-

β1PI ポリアミドを合成し

1.5×10

-6

M/body

になるように

DMSO

に溶解したも

のを体重

200g~300g

Wistar

ラットに腹腔内に投与した。1、3、7日後にイ

ソフルラン吸入麻酔(2-5% in 100%酸素)下で腹部を正中切開し、下大静脈か ら採血して失血死させた後に、腎臓を摘出し蛍光顕微鏡にて

TGF-β1 PI

ポリア ミドの腎臓組織内の検討をした。

10.Wistar

ラットの体重、尿蛋白、血糖値、腎機能の測定

体重測定は小動物専用体重計(SHINKO DENSHI, Tokyo, Japan)を用い週

1

回行い、尿量は代謝ゲージを使用し

1

日蓄尿行った。また、尿中蛋白は試薬と してマイクロ

TP-AR (Wako)を使用し、自動分析装置 (7170, HITACHI, Tokyo,

Japan)にてピロガロルレッド法にて週 1

回測定をおこなった。尿中アルブミン

は試薬としてオートワコーマイクロアルブミン (Wako, Osaka, Japan)を使用

(16)

13

し、自動分析装置 (JCA-BM8000シリーズ)にて週

1

回の測定を行った。

ラットの血糖値、血清

BUN、血清クレアチニン、HbA1c

の測定は飼育

1

月後と

3

ヶ月経過したところで全血採血によって行った。血糖値の測定は全血 に試薬としてクイックオートネオ

GLU-HK (SHINO-TEST, Tokyo, Japan)を使

用し自動分析装置 (7180, HITACHI)にて測定した。

HbA1c

も全血を用い、試薬 としてラピディアオート

HbA1c-1 (Fujirebio,Tokyo,Japan)を使用し自動分析装

置(JCA-BM8000シリーズ: JEOL, Tokyo, Japan)にて測定した。血清

BUN・血

清クレアチニンは全血を室温にて

1

時間置き

3000

回転・

5

分遠心分離した血清 を用いた。試薬として血清

BUN

は自動分析用試薬「生研」UN-S (DENKA

SEIKEN, Tokyo, Japan)を、血清クレアチニンは L

タイプワコー

CRE・M (Wako)を使用し自動分析装置 (7180, HITACHI)を使用して測定を行った。

11

.腎組織の組織染色

腎臓の組織変化を確認するためにラットより摘出した腎臓 を

ASP200S (Leica Biosystems, Wetzlar, Garmany)を使用しパラフィン化の処理を行った。

パラフィンブロックにした腎臓組織を

2~4μm

の薄さに切り出しを行った。切 り 出 し た 切 片 に 対 し

New Hematoxylin Solution Type M (Muto Pure

Chemicals, Tokyo, Japan)、 1% Eosin Y Solution

を使用し

Hematoxylin Eosin

(HE)染色を行った。また、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン 1(4034-2, Muto Pure

Chemicals)とワイゲルト鉄ヘマトキシリン 2 (4035-2, Muto Pure Chemicals)の

混合液、第

2

媒染剤 (8141-1, Muto Pure Chemicals)、 0.75%オレンジG液

(4023-2, Muto Pure Chemicals)

マ ッ ソ ン 染 色 液

B (4035-2, Muto Pure

Chemicals)、2.5%リンタングステン酸液 (4018-1, Muto Pure Chemicals)アニ

リン青液 (4020-2,

Muto Pure Chemicals)を使用し Masson Trichrome

染色を

(17)

14

行った。染色後に光学顕微鏡にて組織変化を確認した。

12

.糸球体障害指数

(Glomerular Injury Scores: GIS)

と尿細管間質障害指数

(Tubular Injury Scores: TIS)

の評価

Sabbatini

らの研究(25)を参考にし腎障害のスコア化を行った。スコアリングに

あたり先入観を与えないためブラインド下で腎臓組織の有識者によりのスコア リングを行った。ラット腎臓を

HE

染色及び

Masson Trichrome

染色を行い糸 球体障害の定量化のために

30

個の糸球体をランダムに選び、それぞれの糸球体 の間質占拠率を評価し下記の通りにスコア化した。

GIS

は[(0×n0

+( 1×n1 )+

(2× n2) + (3×n3) + (4×n4)]÷30

で計算した。 尿細管間質傷害の定量化のた めに 20 領域をランダムに選び、線維化の度合いを下記の通りスコア化した。

TIS

は、[(0×n0 )+( 1× n1 )+ (2×n2) + (3×n3) + (4×n4) ]÷20 で計算し た。

1) GIS(a minimum of 30 glomeruli)

0: normal appearance

1: involvement of up to 25% of the glomerulus 2: involvement of 25 to 50% of the glomerulus 3: involvement of 50 to 75% of the glomerulus 4: involvement of 75 to 100% of the glomerulus 2) TIS(20 randomly selected cortical areas)

0: normal appearance

1: involvement of less than 10% of the area

2: involvement of 10 to 30% of the area

3: involvement of 30 to 50% of the area

4: involvement of more than 50% of the area

(18)

15

13.Podocin

によるラット腎臓糸球体ポドサイトの免疫蛍光染色

摘出したラット腎臓を

O.T.C compound (Sakura Fintek Japan, Tokyo,

Japan)を使用して凍結標本を作製し、2~4μm

の薄さで切り出し、乾燥させた

後に

4%パラホルムアルデヒドにて 10

分間固定した。PBS で洗浄後、0.1%

TritonX-100/PBS(Sigma-Aldrich)を用いて 10

分間室温でインキュベーショ ンした。

10% goat serum 1% albumin/PBS

60

分間ブロッキングを行い

PBS

で洗浄後、Anti-Podocin (P 0372, Sigma-Aldrich)を

1%BSA/PBS

1000

倍に 希釈し、室温で

1

時間インキュベーションさせた。2次抗体として

Alexa fluor 488 anti-rabbit IgG(A21441, Invitrogen)を 500

倍希釈し、暗所で

1

時間反 応 さ せ た 。

PBS

で 洗 浄 後 、

4',6-Diamidino-2-Phenylindole (D9542,

Sigma-Aldrich)を超純水で 2000

倍希釈し、5 分間暗所室温で反応させたのち、

Fluoromount G (0100-01, Southern Biotech, Birmingham, AL, USA)で封入し、

蛍光顕微鏡 (IX73: Olympus, Tokyo, Japan)で観察した。

14

.腎臓組織の

microRNA21,23a

発現の評価

前述と同様に

total RNA

の抽出を行い、抽出した

total RNA

10ng

となる よう調整し

TaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kit (4366596, Thermo Fisher Scientific)を使用し cDNA

を精製した。

次 に

TaqMan Gene Expression Assays

プ ラ イ マ ー

/

プ ロ ー ブ と し て

has-miR-21 (000397, Applied Biosystems)、has-miR-23a (000399, Applied

Biosystems)

を使用し

RT-PCR

法で測定を行った。PCR 反応は 7500 Real

Time PCR System (Applied Biosystems)

を使用し、50℃/2 分、95℃/10 分で 加温後、95℃ /15秒と

60℃/1

分のサイクルを

40

サイクル行った。ターゲット の発現は⊿⊿CT 法を用いた相対定量で求め、18S リボゾーム

RNA (4352930,

(19)

16

Applied Biosystems)

を内部標準とし発現量を補正した。

15

Western blot

法による蛋白発現の定量

腎臓での

TGF-β1

蛋白の発現を

Western blot

法にて検討した。RIPA buffer

(08714-04, nacalai tesque, Tokyo, Japan)を用いてタンパク抽出し、Pierce

BCA protein assay kit

(#23225, Thermo Fisher Scientific)にて蛋白定量した。

β-メルカプトエタノールを含むサンプルバッファーでタンパク質抽出液を

95℃、5

分間、熱変性処理を行った。 12.5%ポリアクリルアミドゲルにサンプ

ルを

1

レーンあたり

10μg

アプライし、20-40mA の定電流で電気泳動を行っ た。その後、泳動したゲルは、iblot(IB1001, Thermo Fisher Scientific)にて

PVDF

膜に転写し、5%スキムミルク溶液で

1

時間室温にてブロッキングした。

1

次抗体は

200

倍希釈の

TGF-β1

抗体(sc-146, Santa Cruz Biotechnology ,

Santa, Cruz, CA, USA)を使用し、4℃オーバーナイトでインキュベーションし

た。Tris Buffered Saline With Tween (TBST)で

2

2

回、15

1

回、5

3

回洗浄し、

2

次抗体は

10000

希釈の

Horseradish peroxidase (HRP) conjugated goat anti rabbit IgG

(111-036-003, Jackson Immune Reseach, West Grove, PA,

USA)を用いて室温で 1

時間インキュベートした後、

TBST

2

2

回、15

1

回、5

3

回洗浄した。蛋白質の検出は

Chemi-Lumi One Super(02230-30, nacalai tesque)を使用し、LAS3000(Fuji film, Tokyo, Japan)で撮影した。

また内部標準は

GAPDH

を用い、

rabbit anti GAPDH

(#G9545, Sigma-Aldrich)

を使用した。

16.電子顕微鏡での組織変化の評価

ラットより採取した腎臓を

0.1M

カコジル緩衝液(PH7.4: Gibco)で調整した

2.5%グルタルアルデヒド(Gibco)で一晩固定した。次に、0.1M

カコジル緩衝液

(20)

17

(PH7.4: Gibco)で調整した 1% osmiumtetroxide (Gibco) 2

時間固定し、エタノ ー ル に て 段 階 的 に 脱 水 し た 後

Quetol-812

で 包 埋 し た 。 包 埋 し た 検 体 を

ultramicrotome (ULTRACUT UCT, Leica, Wien, Austria)を使用しダイアモン

ドナイフで薄切した。薄切した切片を

uranyl acetate

leadcitrate

で染色後、

透過型電子顕微鏡 (JEM-1200EX, JEOL, Tokyo, Japan)で組織を観察した。

17

.統計解析

結果は平均値±標準偏差 ( SE ) として表記し、2 群間の比較は

F

検定で

P>0.05

を確認した後、t 検定を行い、P<0.05 を有意とした。また尿蛋白・尿

Alb

の結果や多群間の比較に関しては

EZR

(26)を使用し

Mann-Whitney U

検定と

Kruskal-Wallis

検定で確認し

P<0.05

を有意とした。

【研究結果】

1.高糖刺激による TGF-β1

発現

培養メサンジウム細胞において高糖刺激にて

TGF-β1

の発現が増加するか検 証した。高糖濃度

DMEM

に変更してから

6、9、12、24、48

時間後での

TGF-

β1の発現は

6

時間で

0

時間と比較し有意(P<0.05)に発現の増加を認めた(図

4)。

2.高糖刺激による形質転換マーカーの発現

高糖刺激後

6

時間後に

0

時間と比較し有意 (P<0.01)に合成型マーカー

Osteopontin mRNA

発現が増加した。逆に収縮型マーカーαSMA mRNAの発

現は刺激後

12

時間後に発現が有意(P<0.01)に低下した(図

5)。

3

TGF-

β

1 PI

ポ リ ア ミ ド の 高 糖 刺 激 に よ り 増 加 し た

TGF-

β

1

お よ び

Osteopontin

発現への抑制効果

培養メサンジウム細胞において、高糖刺激により増加した

TGF-β1

PI

(21)

18

リアミドにより抑制できるかを確認した。正常糖濃度

DMEM

をコントロールと し、高糖濃度

DMEM、高糖濃度 DMEM+DMSO、高糖濃度 DMEM+ポリアミ

10

-8

M、高糖濃度 DMEM+ポリアミド 10

-9

M

4

グループを

6

時間刺激した

後の

TGF-β1

の発現頻度を比較したところポリアミド

10

-8

M

濃度で

DMSO

比べ有意(P<0.05)な抑制効果が認められた(図

6)。また、同様に Osteopontin

おいてもポリアミド

10

-8

M

濃度において抑制傾向は認めたものの有意差は得ら れなかった(図

7)。培養メサンジウム細胞において、高糖刺激により増強した

TGF-β1 mRNA

発現に対するミスマッチポリアミドの作用を検討した。その結

果スマッチポリアミドは

TGF-β1mRNA

発現の抑制効果は認めなかった(図

8)。

したがって、TGF-β1 PIポリアミドの

TGF-β1 mRNA

発現への抑制作用は、

PI

ポリアミドによる非特異的作用ではない事が示された。

4

.糖刺激による培養メサンジウム細胞の細胞増殖能の増加と

TGF-

β

1 PI

ポリ アミドの細胞増殖能への作用

Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System

を使用し培養メサンジウム 細胞の細胞増殖能を測定した結果、高糖刺激により有意(P<0.01)に細胞増殖能は 増加した。また、高糖刺激にて増加した増殖能を

10

-8

M

TGF-β1 PI

ポリア ミドは有意(P<0.05)に抑制した(図

9)。

5.STZ

による腎障害

尿量・体重の比較においてコントロール群と比較し

STZ

群では数日で尿量は 有意(P<0.01)に増加を認め、体重はコントロール群と比較し有意(P<0.01)に減少

した(図

10)。蛋白尿・尿中 Alb

の変化についてはコントロール群と

STZ

群の比

較において尿蛋白、尿中

Alb

5

週経過頃より徐々に

STZ

群で増加を認め、11 週経過後では

STZ

群でそれぞれ有意(P<0.01, P<0.05)に増加を認めた(図

11)。

(22)

19

血液データについては当初は週

1

回ほどで採血を行い経時的なデータ収集を 試みたが、STZ 投与ラットは糖尿病発症後著明な高血糖となり、それに伴う血 管内脱水が著明であったため血管の確保、採血が困難であった。そのため

1

月後と

3

ヶ月後の解剖時のみの採血結果の比較となった。コントロール群と比 較し

STZ

群では血糖、HbA1c

1

ヶ月後、3ヶ月後ともに有意(P<0.05)な上昇 を認め継続的な糖尿病であることを確認できた。また、STZ 群においてやや

1

ヶ月後の

BUN

が高い傾向にあったが有意差は無かった。

1

ヶ月後の血清クレア チニンは

STZ

群で低値であった (表

1)。

腎組織障害の評価として

HE

染色にてコントロール群と

STZ

群の

1

ヶ月経過 時と

3

ヶ月経過時の組織的変化を比較した。その結果、STZ群において

1

ヶ月 後、

3

ヶ月後ともに糸球体の腫脹を認めたが、糖尿病性腎症の糸球体に認められ る明らかな結節像や線維化像は認めなかった(図

12)。

糸球体のポドサイト障害の評価としてコントロール群と

STZ

群の

3

ヶ月経過 ラットの腎臓を

Podocin

にて免疫蛍光染色を行った。その結果、コントロール 群と比較し

STZ

群において

Podocin

染色の連続性が途絶え、発現が低下する傾 向が認められた(図

13)。免疫蛍光染色にて変化を認めたため、コントロール群・

STZ

群の

3

ヶ月経過時の腎臓組織障害を、電子顕微鏡を用いて比較した。その 結果、コントロール群と比較すると

STZ

群に

Podocyte

の足突起の融合やスリ ット構造の消失した部分を多く認めた (図

14)。このことから EndMT

も起こっ ている可能性を考え、

EndMT

の指標となる

microRNA21・microRNA23a

の比 較を行った。その結果、コントロール群と

STZ

群の

3

ヶ月経過時の比較におい

microRNA21

23a

発現ともに

STZ

群で有意(P<0.05)な増加を認めた(図

15)。

(23)

20

6

PI

ポリアミドの

TGF-

β

1

抑制作用及び腎臓での局在

PI

ポリアミドの腎臓での局在を確認するため

FITC

ラベリングポリアミドを

1.5×10

-6

M/body

となるように

DMSO

に溶解し腹腔内に投与し投与後

1

日、3 日、7日で腎臓を取り出し蛍光顕微鏡にて

PI

ポリアミドの核内移行性を比較し た。その結果、投与後

1

日後に核内移行性を認め

3

日後に最も核内移行してい た。しかし、

7

日後には核内から排出されていることが分かった(図

16)。この結

果を受け

PI

ポリアミドの投与は、1.5×10-6

M/body

を週

2

回の間隔で行うこと とした。コントロール群、ミスマッチ群、ポリアミド群より

3

検体ずつ選択し、

腎臓組織中の

TGF-β1

の蛋白の発現量を

Western blot

法にて評価した。その結 果、コントロール群と比較しミスマッチ群で有意(P<0.05)に

TGF-β1

の発現量 は増加しており、ミスマッチ群と比較しポリアミド群で有意(P<0.01)に抑制され た(図

17)。

7

PI

ポリアミドによる腎障害に対する効果

ポリアミド群とミスマッチ群の比較においてはポリアミド群

12

週経過時点で の尿蛋白はやや低下傾向だったものの、尿蛋白および尿中

Alb

共に有意な抑制 効果は認めなかった(図

18)。血液データにおいてコントロール群と比較しポリ

アミド群、ミスマッチ群共に高血糖を維持しており

HbA1c

の高値も認めた(表

2)。また、 STZ

群とポリアミド群を比較し血糖値・HbA1cにおいて差はなく

PI

ポ リ ア ミ ド に よ る 血 糖 値 へ の 影 響 は な い と 考 え ら れ た 。 腎 組 織 の

microRNA21・23a

のリアルタイム

RT-PCR

での比較において、ポリアミド群

とミスマッチ群との間に有意差は認めなかった(図

19)。

次に、

HE

染色と

Masson

Trichrome

染色を行い腎臓組織の障害を確認した(図

20)。その結果、明らかな

糸球体結節像などは無いものの

HE

染色にてコントロール群と比較しミスマッ チ群、ポリアミド群では、一糸球体につき

25%~50%前後の障害を示す割合が

(24)

21

多く見受けられた。また、

Masson Trichrome

染色にてコントロール群と比較し ミスマッチ群、ポリアミド群では一視野の尿細管障害の割合が

30%~50%に及

ぶものが多く見受けられた。そこで、ミスマッチ群とポリアミド群

3

ヶ月経過 後の

GIS

および

TIS

の比較を行ったところ、ポリアミド群はミスマッチ群に比 べ、GISでは一糸球体における障害度は

25%までに治まっているものが多かっ

た。また、TISにおいては尿細管間質の障害が

30%までに治まっているものが

多く、尿細管の萎縮も軽度であり、共に有意(P<0.05)に低下した(図

21)。電子顕

微鏡でのポドサイトの障害について

STZ

群・ポリアミド群(週

1

回投与)の

3

月経過時の腎臓組織障害を、電子顕微鏡を用いて比較した。その結果、

STZ

群・

ポリアミド群(週

1

回投与)共に

Podocyte

の足突起の融合やスリット構造の消失 した部分を認めたが、ポリアミド群は

STZ

群と比較すると融合やスリット構造 の消失は軽度であった(図

22)。

【考察】

糖尿病性腎症の腎組織変化の特徴として腎細胞肥大と細胞外マトリックスの 蓄積が挙げられる。TGF-β1 はこの変化に対して中心的な役割を担っており、

TGF-β1

は高糖刺激にてその発現が増強することが知られている(27)。また、高

糖刺激はメサンジウム細胞内の

RhoA / Rho

キナーゼを活性化させ、下流にある

AP-1

を活性し細胞外基質の産生・線維化の促進にかかわっていることが知られ ている(28)。AP-1

TGF-β1

プロモーターを活性化する転写因子である。これ らより、糖尿病性腎症の腎障害の発展に

TGF-β1

及び

AP-1

は深くかかわって いると考えられる。そこで、本研究において、ラットの

AP-1

結合部位に特異的

に結合し

TGF-β1

の発現を抑制するように設計された

PI

ポリアミドを使用し

た。同ポリアミドは

TGF-β1

の関与が明らかな

Dahl

食塩感受性ラットにおい

(25)

22

て、上昇した

TGF-β1

を抑制し腎臓の線維化の抑制効果を認めている(18)。これ らより、同ポリアミドにより糖尿病性腎症腎の発展を抑制できるかを検証する こととした。

In vitro

で、培養メサンジウム細胞の実験において高糖刺激により

TGF-β1

の上昇を認め、また、間葉細胞の合成型マーカーである

Osteopontin

も経時的 な上昇を認めた。細胞増殖能の実験においても高糖刺激により細胞増殖能

WST-1

の増加を認めたことから高糖刺激はメサンジウム細胞の増殖に関与する

ことが分かり、

TGF-β1 PI

ポリアミドにてそれらの抑制効果を認めたことから 糖尿病性腎症におけるメサンジウム領域の増大に対して

TGF-β1 PI

ポリアミ ドの効果の可能性が示唆された。更に、同実験において収縮型形質マーカーで あるαSMAは経時的に減少した。

TGF-β1

の細胞増殖に対する作用は、殆どの 細胞には増殖抑制に働くが、形質が合成型になった間葉細胞には増殖を刺激す る事が知られている。このように、メサンジウム細胞への高糖刺激は

Rho

キナ ーゼによる

AP-1

の発現により

TGF-β1

遺伝子のプロモーター活性化により、

メサンジウム細胞を合成型に形質転換し、Osteopontin発現を増加、αSMA 現を抑制、細胞増殖を促進し、TGF-β1 PIポリアミドは

TGF-β1

遺伝子の転 写を抑制、形質を収縮型に戻し、メサンジウム細胞の増殖を抑制していると考 えられた。したがって

TGF-β1 PI

ポリアミドはメサンジウム増殖を起こす糖尿 病性腎症の糸球体障害に有効であると予想された。

次に、In vivoの実験にて、糖尿病モデルラットの検討を行った。当初、遺伝

2

型糖尿病モデルラットでの使用を検討したが、複数の個体を長期間の飼育 が困難であったため

Wistar

ラットに

STZ

を投与し誘発される

1

型糖尿病モデ ルラットを用いて研究する事にした。STZ糖尿病ラットでは糖尿病発症より

5

週間後で尿中

Alb

および尿蛋白が上昇し、11週間経過でコントロールと比較し

(26)

23

明らかな上昇を認めた。血液データ上明らかな腎機能低下は認めなかった。ま た、コントロール群に比較し

STZ

群において

1

ヶ月時のクレアチニンの値が低 いのは糖尿病により代謝異常が起き体格がコントロール群と比較し

STZ

群にお いて小さくなってしまうことと、著明高血糖により飲水量・尿量ともに著明に 増加するため腎臓での過剰濾過が起きたためと考えられた。

HE

染色や

Masson

Trichrome

染色の結果では典型的な進行した糖尿病性腎症で認められる糸球体

結節像などの組織学的変化は認めなかったものの、メサンジウム細胞の軽度な 増殖や間質の線維化、尿細管の萎縮などの障害は散在していた。これらより、

糖尿病発症から

3

ヶ月程度では軽度な腎障害は起こっているものの糖尿病に特 有の組織学的変化や腎機能低下を示す程の糖尿病性腎症は起きていないと考え られた。しかし、ポドサイトの免疫蛍光染色の結果から

STZ

群においてポドサ イトの連続性が途絶えている部分を認め、アルブミン尿や蛋白尿の出現から糖 尿病の初期段階で起こる基底膜障害やポドサイトの障害が発症していることが 示唆された。また、

EndMT

の促進マーカーとなる

microRNA21・ 23a

の測定の 結果から糸球体内皮細胞の障害も初期段階で起きている可能性が示唆された。

これらより、糖尿病性腎症の初期に糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストー クの破錠が起きている可能性も示唆された。本来であれば

In vitro

の実験にお いて糸球体内皮細胞が高糖刺激により間葉化現象を起こすかを検証し

PI

ポリア ミドの効果を検討するべきである。

Peng

らの報告(29)では培養糸球体内皮細胞を 用いて間葉化現象を

In vitro

で確認している。今後、類似した細胞を検討し

In

vitro

における糸球体内皮細胞とポドサイトのクロストークを検証していきたい

と考えている。

続いて、糖尿病ラットに

TGF-β1 PI

ポリアミドを投与し腎障害への効果を検 討した。当初、Matsuda等の報告に基づき(18)ラットの尾静脈より

PI

ポリアミ

参照

関連したドキュメント

AGE の蓄積により糸球体の. size barrier およびcMge barrier の破綻をきたし,アルブミン尿が出現する.ま た細胞外マトリックスに

サルタン)の糖尿病性腎症の進展抑制効果が報 告されましたが、今回、日本人96名を含むアジ

ザードモデルによる解析が行われた。その結果,エンパグ

ウトマウスを用いた解析によって明らかとなった 15) 。すな わち,BMP4→BMPRⅡ(BMP のⅡ型受容体)→ALK3(BMP のⅠ型受容体)→Smad1 という経路も糖尿病や

トレス産生を亢進させること 7) ,また,この分子機構として NAD (P)H

はじめに 糖尿病性腎症(以下

はじめに 糖尿病性腎症の現状を語るとき 常に話題に上るのは糖

はじめに 糖尿病性腎症に起因する透析療法導入患者数を減じるためには