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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:松井 沙莉

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:MicroRNA-223 regulates inflammatory cytokine production in human gingival fibroblasts

(マイクロRNA-223はヒト歯肉線維芽細胞での炎症性サイトカインの合成を調節する)

審査委員:(主査)日本大学教授 博士(理学) 吉垣 純子

(副査)日本大学教授 歯学博士 松島 潔

(副査)日本大学教授 歯学博士 小方 頼昌

歯周病は、歯周病原菌に起因する感染症であるが、環境および宿主因子が、歯周病の発症と進 行に大きく影響する。歯周炎局所での慢性炎症は、持続的な炎症性サイトカインの産生を引き起 こし、好中球、マクロファージおよび線維芽細胞からのマトリックスメタロプロテアーゼやプロ スタグランジンの産生を誘導し、破骨細胞の活性化や歯周組織の破壊に関与すると考えられる。

microRNAmiRNA)は、細胞内に存在する長さ約22塩基のノンコーディング RNAで、遺伝 子の発現調節機能を有し、様々な疾患に関係することが報告されている。歯周炎の発症と進行へ

miRNAの役割を解明するために、炎症性歯肉と非炎症性歯肉から抽出した全RNAを使用した

miRNAマイクロアレイを行い、炎症性歯肉で発現が増加または減少するmiRNAの検索を行った。

さらに、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)での炎症性サイトカイン遺伝子発現に対する miRNA の影 響について解析を行った。

歯肉剥離掻爬手術およびインプラント2次手術時に得られた炎症性および非炎症性歯肉から全 RNAを抽出し、miRNAマイクロアレイを行った結果、炎症性歯肉で最も発現が増加した 3つの miRNAは、miR-150miR-223およびmiR-200bであった。一方、発現が減少した3つのmiRNAは、

miR-379miR-199a-5pおよびmiR-214であった。miR-223は、血小板から分泌され、終末糖化産 物により誘導される血管内皮細胞のアポトーシスを引き起こし、ガン、炎症、2 型糖尿病、リウ マチ、自己免疫性疾患等に関与することから、歯周病への関与が示唆される。そこで、miR-223 発現プラスミドをHGFに導入し、IL-1β1 ng/ml)またはTNF-α10 ng/ml)で24時間刺激後、

RNAおよびタンパク質を抽出した。炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6miR-223 標的遺伝子であるIκB kinase αIKKαおよびmitogen-activated protein kinase phosphatase 5MKP-5 の遺伝子発現レベルをリアルタイムPCRで、タンパク質発現レベルをELISAまたはWestern blot 法で検索した。

歯肉線維芽細胞(HGF)をIL-1βまたはTNF-αで刺激すると、IL-1βIL-6mRNA量は増加 し、miR-223を過剰発現させると、IL-1βIL-6mRNA量はさらに増加した。HGFでのIL-1β IL-6 mRNA量は、IL-1βまたはTNF-α刺激で増加し、miR-223インヒビターを導入すると、

IL-1βおよびIL-6mRNA量は減少した。HGFIL-1β刺激しmiR-223を過剰発現させると、IL-1β およびIL-6タンパク質の顕著な増加が認められた。

miR-223の標的遺伝子であるMKP-5mRNA量は、miR-223を過剰発現させると減少したが、

(2)

IKKαmRNA量は、miR-223を過剰発現しても変化しなかった。しかし、Western blotの結果か ら、miR-223を過剰発現させるとIKKαのタンパク質量は減少した。一方、miR-223を過剰発現さ せるとリン酸化p38 MAPKのタンパク質量は増加した。

以上の結果から、miR-223 IKKαの発現を、mRNAの分解ではなく、翻訳阻害のプロセスで 発現を抑制すると考えられた。IL-1βTNF-α刺激で増加したIL-1βおよびIL-6の発現が、miR-223 の作用でさらに増加したのは、miR-223NF-κBの活性を抑制するIKKαp38 MAPKの活性を

抑制するMKP-5を阻害したためと考えられた。

miRNAマイクロアレイによる解析の結果、炎症性歯肉でmiR-150miR-223およびmiR-200b 発現増加が認められたmiR-223は、歯肉線維芽細胞での炎症性サイトカイン(IL-1βおよび IL-6 の発現を誘導し、歯周病の発症および進行に関与すると考えられる。miRNAと歯周炎の発症および進 行のメカニズムを解明することは、新規の歯周病の診断や治療法の開発に役立つと考えられ、歯周治 療の発展に大きく寄与するものである。

よって本論文の著者は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平成27年12月24日

参照

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