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大城 英名 * 秋 田大学教育文化学部

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(1)

ロービジョン用教育漢字筆順学習ソフ トウェアの開発とその試用I

大城 英名 * 秋 田大学教育文化学部

氏間 和仁日 愛媛県立松 山盲学校

要 旨 :本研究 の 目的 は, ロー ビジ ョンの児童 が教育漢字 の筆順 を有効 に学 習す るための ソフ トウェアの開発であ る. ロー ビジ ョンの児童 は一人 ひ とり見 え方 が違 うため, それぞ れの視覚特性 に応 じた教材提示 が必要 であ る. そのため,文字 サイズや配色 を 自由に設定 で きる

HTML (HyperTextMarkupLanguage)

CSS (CascadingStyleSheets)

に よ る漢字筆順学習 ソフ トウェアの開発 を行 った.本 ソフ トウェアの試用 の結果,以下 の こと が示 された.個 々の児童 は, 1 ) それぞれの見 え方 に応 じて コ ンピュー タ画面 の文字 サ イ ズや配色 を 自由に設定 で きた,

2)

漢字 の選択 を学年別 お よび画数別 の索 引 か ら漢字 を 自 由に選択す ることがで きた,3)漢字 の筆順 を正確 に記憶 で きるまで, キ ー操 作 に よ り何 度 も繰 り返 し筆順 を確認す る様子 がみ られた, そ して,4)漢字学習 に本 ソフ トウ ェアを 積極的 に利用す る様子 が見 られた. これ らの ことか ら,本 ソフ トウェアが ロー ビジ ョンの 児童 の漢字筆順学習 に活用で きることが示唆 された.

キー ワー ド :ロー ビジ ョン,

HTML

教材,教育漢字,漢字筆順, コ ンピュー タ

は じめ に

小学校 における重要 な読 み書 き指導 の一 つ に漢字 の指導があ る.小学校学習指導要領

(1998)

による と,児童 は小学校

6

年間で

1006

の教育漢字 を学ぶ こ とにな って いる.学年別 の配 当漢字数 をみ ると,

1

学年 で

80

,

2

学 年 で

160

,

3

学 年 で

200

,

4

学 年 で

200

,

5

学年 で

185

, そ して

6

学 年 で

181

, とな って い る. さ らに中学 校 に入 って か ら, 生 徒 は新 た に

1,000

の漢字 を学ぶ ことにな ってい る.

日本 の教科書 の文章 は,通常,漢字仮名交 じり文 で書かれている. したが って,今 日の小学校 におけ

2003年122日受理

IDevelopmentofComputerSoftwareforTeaching StrokeOrderofChineseCharacterstoChildren withLow Vision

*

EimeiOsHIRO,FacultyofEducationandHuman Studies,AkitaUniversity,Akita

**

KazuhitoUzIMA,EhimePrefectualSchoolforthe Visuallmpairments.

252003

る教科学習が一定 の漢字仮名交 じり文 の読 み書 きを 前提 に している以上, もし漢字 の読 み書 きが十分で ない場合, 当然 の結果 と して,全教科 の学習 に遅 れ が生 じて くることが容易 に予想 され る.特 に今 日の 小学校 にお ける一斉指導 で は, あ る学年 で何 らかの 原因で学習が遅 れ生 じは じめ ると,学年 が上 が るほ どに, その困難 さは増 し,教 師や児童本人 の努力 に よ って解決 しえないほどに状況 が悪 くな って くる.

そのため,漢字 の読 み書 きに困難を示す児童の場合, で きるだ け低学年 の時期か ら, その学習 の個別的な 支援 が必要 であ る.

ロー ビジ ョン注 )の児 童 の漢字 の読 み書 きに 目を 向 けてみ ると, これ まで に幾っかの問題 が指摘 され

注)

ロービジョン :従来 は弱視

(partiallysighted)

と呼ばれていたが、最近ではロービジョン

(low vision)

という用語が定着 しつつあるので、本稿ではこの用語を 用いる。ロービジョンの日本語訳 として低視力 という用 語 もあるが、視力以外の視野や色覚、眼球運動等の視機 能とも関連 しているので、 ここではロービジョンという 用語を用いる。

65

(2)

ている.例えば, ロー ビジョンの児童 は,①漢字の 読み ・書 きに困難を示す ことが多 く,特 に画数の多 い漢字 にその ことが顕著 で あ る こと (小 柳 はか,

1969)

,②

3

年生頃か ら漢字の学習 に困難 を示 す傾 向がみ られ ること ( 徳田,

1988)

, ③漢字 の読 みで は,形の似た字や意味の似た字への誤 り等が多 くみ られ ること ( 徳田

,1988)

,④漢字 の書 きで は, 点 画の過不足 ・はね ・とめ ・は らい等 の漢字の細かい 部分の書 き誤 りやが多いこと ( 小柳 はか

,1969;

徳 田,

1988;

中川 ほか

,1990)

, また, ⑤漢字 の字全 体のバ ランスが大 きくくずれ,行やマスか らはみ出 す ことが多 いこと ( 小柳 はか,

1969;

徳 田,

1988;

中川 はか

,1990)

,などである.

このようなロー ビジョンの児童 に対す る漢字の読 み書 きの指導 については, これまでにも種々の指導 法が試み られてお り,それぞれに肯定 され るべ き成 果をあげている.例えば,その指導法の実践を幾つ か挙 げると

,(1)

ドリル ・カー ドを用いた指導法 ( 小 柳,

1971),(2)

漢字の書写力を高 め るため に トレー

シング ・ペーパーを使 って大 きな字か ら小 さな字へ と段階的に,たどり書 きをさせ る指導法 ( 小柳はか,

1969), (3)

漢字の制限を試みた指導法 ( 中川

,1965)

,

(4)

漢字の部首 に着 目させた指導法 ( 沢田,

1966;

拷 田

,1971),(5)

漢字の構成要素 の書字訓練 か らバ ラ

ンスのとれた正 しい字を書 く指導法 ( 中川 ほか,

19 90)

,などである.

ただ, いずれの指導法 に しろロー ビジョンの児童 の場合,視知覚の弱 さに起因 して漢字の読み書 きに 困難を示す場合があるので,そ・ の指導の前提 として, 個々の児童の見え方 に応 じた教材提供の重要性が指 摘 されている.一方, ロー ビジョンの児童の漢字書 写 について,画数の少ない大 きな文字サイズの漢字 については練習効果がみ られるが画数の多い小 さな 文字サイズの漢字では, その書写力 に質的にも時間 的に もあまり向上がみ られなか ったと指摘 されてい る ( 原田はか

,196

7). この ことは, ロー ビジ ョン の児童の漢字の 「 書 き」 については,筆記だけにこ だわ らず, コンピュータ等の活用 も考えるべ き必要 性を示唆 している.

このように, ロー ビジョンの児童の読み書 きにつ いては,個々の児童の視覚特性 に応 じた教材提示や 学習環境の工夫が必要であ り, このニーズに応える ためには, コンピュータ等の情報処理機器の活用を 含めた教材開発や学習環境の整備が大切である. こ

66

の ことを実現す るための方法の一つ として

,HTML (HyperTextMarkupLanguage)とCSS(Cascad‑

ingStyleSheets)

によ って作成 された教材 の提示 とその活用がある.

このような状況の中で,本研究では, ロー ビジョ ンの児童 に対す る漢字学習を支援す るために,個々 の児童の見え方 に応 じた教材提示 ので きる

HTML

教材 による 「 教育漢字筆順学習 ソフ トウェア」を開 発 し,その ソフ トウェアの活用の有効性 と問題点 に ついて検討す ることを目的 とす る.

Ⅱ 教育漢字筆順学習ソフ トウェアの開発

1.

本 ソフ トウェアの特徴

本 ソフ トウェア

(Windows

対応)は,ロービジョ ンの児童が教育漢字の筆順を学習す るために開発 し た もので,その特徴 として,次のような諸点が挙 げ

られる.

(1)HTMLviewer

が組み込 まれているので, 画面 における文字サイズの大 きさや配色を自由に設定 す ることがで きる.

(2)

キー操作 により筆順を一画ずつ進めた り戻 した りす ることがで きる.

(3)

学年別および画数別の

2

種類の索引がある.

(4) 1

年生の漢字 については,漢字が完成 した時点 で音声 による 「 音読み」 と 「 訓読み」で確認す る ことがで きる.

(5)

全ての操作をキーボー ドで行 うことがで きる.

本 ソフ トウェアェアの利用 は,

CD‑ROM

( 図 1 ) によるスタン ドアロンの状態で も, イ ンターネ ッ ト

1

教育漢字筆順学習ソフ ト

秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要

(3)

配信 によ って も可能 で あ る.

2. 必要 な システム構成

1) ‑ ー ドウ ェア は,WindowsOSで可 動 す る コ ンピュー タ.本 システム は,MicrosoftInternet Explorer5.x上 での稼動 が推奨 され る.

2)ソフ トウェアは,今回開発 した 「教育漢字筆順 学 習 ソフ トウ ェア」 で あ る. 本 ソ フ トは

JABA

スク リプ トによ って独 自に開発 された.

3. 画面表示パ ラメータ

本 ソフ トウェアは,図2のよ うに,画面 にお け る

表示文字 サ イズ」 と 「配色」 のパ ラメ ー タが 自由 に設定 で きるよ うにな って い る.文字 サ イズや配色 が設定 で きるの は, ブ ラウザの ステー タスバ ー (ソ フ トの最下部)にHTMLviewerver.specialedition isworking!!と表示 されて い るペ ー ジで あ る. この ペー ジで以下 のキー操作 によ り画面表示 の設定 を行

うことがで きる.

4. 使用法

本 ソフ トウ ェアを立 ち上 げ る と, 図 3の よ うな

小学校教育漢字筆順学 習 ソフ ト

の初 期 画 面 が表 示 され る.使用法 は, 「学年別」 あ るいは 「画数別」

のいずれか の索 引を ク リックす る. あ とは画面 の指 示 に従 って, 当該漢字 を選択 し, スペ ース ・キーを 押す ことによ って漢字 の筆順 を順 次 提 示 して い く.

画面 には当該漢字 の音読 み と訓読 みが表示 され る.

(1)学年別索引

まず 「学年別」 の索 引を ク リックす る.図

4

の よ

2 画面表示変更パラメータ

第25号 2003年

うに, 1学年 か ら6学年 までの漢字 が学年別 に五十 音順 に配列 されて い ることを示 した画面 が表示 され る. ここで,2年生 の 「や〜 よ」をク リックす ると,

5

の よ うに

2

年生 で習 う 「や行」 の音 か らな る漠

3 本ソフ トウェアの初期画面

4 学年別索引の画面

5 漢字の表示画面

67

(4)

6 筆順の初期画面

7筆順 の表示①

字が表示 される.

(2)

スペース ・キーによる筆順の操作

ここで図

5

に表示 された漢字の中か ら, 「友」 と いう漢字の筆順を学習 したい場合, 「友」 を ク リッ クす ると,図 6 の画面が表示 される.画面中央左側 の窓に見本の漢字が表示 され,その右側 には筆順が 表示 される窓がある. また,画面の窓の上 に 「 音読

と 「 訓読み」の読み方が表示 される.

筆順を確認 ・学習 してい くためには, スペース ・ キー ( あるいは上矢印キー)を押 していけば, 図

7

‑10

のように,筆順が一画ずつ順々に表示 されてい く. また下矢印キーを押せば筆順を一画ずつ戻すこ とができる.画面 には教科書体の漢字が表示される.

(3)

画数別の索引

次に

,

「 画数別」の索引について述べ ると, その 基本的な操作 は 「 学年別」の索引で説明 したのと同 様である.

68

8筆順 の表示②

9筆順の表示③

図10 筆順 の表示④

まず,図

11

の 「 画数別」の索引をクリックすると, 図

12

にように,小学校教育漢字が一画か ら二十画ま で画面に表示 される.その画数別選択か ら必要な画 数をク リックすると漢字が表示 される.あとの操作 は

,

「 学年別」の索引で説明 したのと同様である.

秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要

(5)

11‑画数別の索引

荘重EFE

Z E m

12画数別選択の画面

本 ソフ トウェアの試用事例

以下 に, ロー ビジ ョンの児童 および聴覚障害のあ る児童 に本 ソフ トウェアを適用 した事例を取 り上げ, その概略を示す.

1

. 試用研究

(1)

【目的】 ロー ビジ ョンの児童 に対す る本 ソフ ト ウェアの適用可能性 について検討す る.特 にロー ビ ジ ョンの児童が本 ソフ トウェアを利用 して文字 サイ ズや配色 を自由に設定 し, さ らに漢字 の選択 および 筆順 の確認等 を自由に行 うことがで きるか どうかを 検討す る.

【 方法】

1 )対象児 盲学校 に在籍す る小学部 3年生のロー ビジ ョンの児童

2

名である.本児 たちの教科学習力

252003

は学年相応であ り, コンピュータ ・スキルについて はマウス操作 によるホームページの閲覧を行 うこと がで きた. コンピュータのキー操作については,ファ ンクシ ョン ・キーを含 めて操作 ので きるキーが増 え て きている状態であ った.

2)

手続 き 本児 たちの在籍す る学級 で, 国語 お よび自立活動 の時間を利用 して,教師 と児童 とが対 話す る形式で本 ソフ トウェアを用 いた漢字学習が行 われた.漢字 の学習 は,通常,教科書 にな らって新 出漢字 を学んでい くのが一般的で あ るが, 今 回 は, 本児 たちが普段 の生活 の中で遭遇 す る漢字 の中で, 今 日学 びたいとい う漢字 を選択 し, その漢字 の筆順 を学習 し,書写す るとい う形態で学習を進 めた.

【 結果 と考察】

本 ソフ トウェアの活用 に関 して,次 の

3

点か ら結 果 と考察 をす る.すなわち,本児たちが,( 彰個 々の 見え方 に応 じて画面環境 を自由に設定で きるか,②

「 学年別」及 び 「 画数別」 の索 引か ら漢字 の選択 が 容易 にで きるか,③漢字 の筆順 の確認が容易 にで き

るか,である.

1 )文字 サイズや画面配色 の設定 :本 ソフ トウェ アの大 きな特徴 の一つ は,個 々の児童 の見え方 に応

じて文字 サイズや画面 の配色を 自由に設定で きると い うことであ った. これはロー ビジ ョンの児童が視 知覚 の弱 さによって漢字 の読みに困難 さを示す こと

のないようにす るためにとくに重要である.

最初 に,本児 たちに画面 の文字 サイズや配色 の設 定方法 を教示 し, その後,本児 たちに自力で画面環 境 の設定 を行 う練習をさせた. その結果,数回の画 面設定 の練習だけで,本児たちは,① スペース ・キー によ り文字 サイズを決定す るパ ラメータを表示 させ, さ らに実際 に文字 を大 きくした り小 さ くした りす る 上下矢印キーで 自分 の見やすい文字 サイズを選択 ・ 決定す ることがで きた. また,② スペース ・キーに

よ り画面配色 を決定す るパ ラメータを表示 させ, さ らに自分 の見やすい画面配色 にす るための上下矢印 キーで,例 えば,画面 を黒背景 に白文字等 に設定す ることがで きた. これ らの文字 サイズや画面配色 の パ ラメータの設定 を本児 たちが とくに困難 を示す こ とな くで きた ことは,本 ソフ トウェアが操作的に容 易であ った ことを示 している.

2)漢字 の選択 :この ソフ トウェアで は漢字 の選

択法が二通 りあ った.すなわち, 「学年 別」 お よび

「 画数別」 の索引か らの選択である. 今 回 は, 特 に

69

(6)

「 学年別」 の索 引か ら漢字 を選 択 させ る学 習 を させ た. その結果,本児 たちは数回の練習で 1 学年 か ら

6

学年 までの漢字 が 「 学年別」 に, しか も五十音順 に配列 されて いることをす ぐ理解 し, その中か ら漢 字 を選択 し,画面 に表示 させ ることがで きた. この 一連 の漢字選択 は本児 たちにとって と くに難 しい も ので はな く容易 に行 うことがで きた. この ことも本

ソフ トウェアが操作 しやすか ったことを示 している.

3)

漢字 の筆順 の学習 :上述 の手順 で選 択 した漢 字 をスペース ・キーおよび上下矢印キーを操作 して, その筆順 を一画ずつ確認 させ る学習 を させた ( 写真 1 ) . この操作 は非常 に簡単 であ り,本児 たちは漢字 の一画ずつをキー操作 によ り進 めた りあ るいは戻 し た りして,漢字 の筆順 を確認す ることがで きた.漢 字 の筆順 が一画ずつ容易 に確認 で きることか ら,本 児 たちは, 「お もしろい, お もしろ い」 と言 いなが ら漢字 の筆順 を何度 も確認 していた.本児 たちに何

写真

1

本ソフ トを使っての漢字筆順の学習の様子

70

写真

2

漢字書写練習ワークシー ト

度 も筆順 を確認す る様子がみ られたのは,自分のペー スで,漢字 の筆順 を確認 で きることの実感 がで きた か らだ と推測 され る.本 ソフ トウェアによる一連 の 漢字筆順学 習 の後, 特製 の漢字 学 習 ワー ク シー ト ( 写真

2)

を用 いて習 った漢 字 の書字 の練 習 を行 っ た. この書 き練習 の途 中で,漢字の筆順を忘れると, 本児 たちは自発的 に本 ソフ トウェアを用 いて筆順 を 確認す る様子 がみ られた.本児 たちは, これ まで漢 字学習 にあま り関心 を示 さず, また集 中す ることも み られなか ったが,本 ソフ トウェアを活用 しての漢 字学習で は 1 単位時間を通 して積極 的 に取 り組 む様 子がみ られた. この ことは,本 ソフ トウェアが本児 たちの漢字学習 のモチベー シ ョンを一定程度高 め さ せ, その学習を持続 させ るのに有効 に働 いた といえ

る.

以上 の ことか ら, ロー ビジ ョンの児童 に対す る本 ソフ トウェアの有用性 と して示唆 され ることは,① 個 々の ロー ビジ ョンの児童 の見 え方 に応 じて文字 サ イズや画面配色 の設定 が容易 にで きること,② 「 学 年別」及 び 「 画数別」 の索 引か らの漢字 の選択 が容 易 にで きること, また,漢字 の筆順 の確認 も容易 に で きること,③市販 の漢字学習 ソフ トウェアェアは マウス操作 が標準 であ るが,本 ソフ トウェアはキー 操作 が可能 であ り, そのため ロー ビジ ョンの児童 も 容易 に操作で きること,④子 ど もたちの漢字学習の モチベー シ ョンを高 め るのに一定 の役割 を果 たす こ と, などであ った.

【 今後 の課題】

本 ソフ トウェアの筆順 の画面表示 ス ピー ドが少 し 速 い との感想 が本児 たちか らあ ったこ この点 は,吹 の ことを含 めて今後改良 したい. すなわち,①次画 表示速度 の調整,②音声読 み上 げの全漢字への対応,

③画面表示情報 の改善,④漢字詳細情報 の表示, な どである.

2.

試用研究

(2)

【目的】 ロー ビジ ョン以外 の児童 に対す る本 ソ フ トウェアの適用可能性 を検討す るため, ここでは, 聴覚障害 のある児童 を対象 に,漢字学習 における本

ソフ トウェアの活用 の有用性 につ いて検討す る.

【方法】

1 )対象児 難聴通級指導教 室 で 過 1 回通級 に よ る指導 を受 けている4年生 の男児である.本児 の聴 覚 レベル は補 聴 器装 用 で

91‑10

0デ シベルで あ る.

秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要

(7)

音声 によるコ ミュニケー シ ョン (口話中心)が可能 で,会話 のや りとりも比較的 スムーズである.教科 学習力 は学年相応であ った. コンピュー タによるマ

ウス操作やキー操作 も特 に問題 はなか った.

2)

手続 き 通級指導教室 にお いて, 教科 の補充 指導 と しての漢字学習が個別指導の形態で行われた.

一単位時間の授業 は次 の通 りであ った.( 1 ) 導入では, 漢字 のなぞなぞ遊 びを

,(2)

授業の展開で は,絵 カー

ドと漢字 カー ドのマ ッチ ング学習, 偏 と勇 の学 習, コンピュータ絵 カー ドと漢字 カー ドのマ ッチ ング学 習を, そ して

,(3)

授業 のまとめで は,今回習 った漢 字 の書字学習,誤字漢字 の本 ソフ トウェアを利用 し ての筆順学習,再度 の漢字書字学習, とい う流れで あ った.

【 結果 と考察】

本児 は視覚面で は特 に問題がなか ったので,文字 サイズや配色 などの初期設定 は, あ らか じめ授業担 当者 によって見やすい状態 に設定 しておかれた. こ

こで は,本児が本 ソフ トウェアを活用す るに際 して 操作的に容易であ ったか とい う観点か ら結果 と考察

を行 う.

本児が本 ソフ トウェアを実際 に活用 したのは授業 の展開 における漢字 の筆順 を確認 ・学習す る場面 に おいてであ った. その場面 は, ワークシー トでの漠 字書字練習で誤書字 した漢字 を確認す る学習場面で ある.最初 に,授業担 当者が本 ソフ トウェアの使用 法を本児 に,次 のよ うに教示 した.①本 ソフ トウェ アの初期画面 の 「 学年別」 および 「 画数別」 の索引 か ら, マウスおよびキー操作 によ り漢字 を選択す る こと,②選択 した漢字 の筆順 を一画ずつ スペース ・ キーおよび上下矢印キーを操作 して表示 させ確認す ること, の手順で示 した. その後,本児 に数回実際 にその操作 の練習をさせた.

その結果,本児 は本 ソフ トウェアの活用の仕方 を す ぐに理解 し, 自ら漢字 の選択 と筆順 の確認 を行 う ことがで きた.すなわち,①本児 は 「 学年別」及 び

「 画数別」 の索引か ら漢字 を自由 に選択 し, その漢 字 の筆順 をキー操作 によ り確認 す る ことがで きた,

②本児 は今回学習 した漢字以外 の漢字 の筆順 につい て も,例 えば,本児 の名前 の一字である 「 樹」 とい う漢字 を, 自 らその画数 を数 え, そ して初期画面 の

「 画数別」 の索引を開 き, さ らに画数別選択 の画面 か ら

16

画を選択 し, その

16

画の多 くの漢字 の中か ら

「 樹」 とい う漢字 を選択す ることがで きた. そ して,

252003

その筆順 をキー操作 によ り一画ずつ確認す ることが で きた. この ことは,本 ソフ トウェアが本児 の漢字 学習のモチベーシ ョンを高めるのに一定 の役割 を果 た した ことを示 している.

これ らの ことか ら,本 ソフ トウェアが ロー ビジ ョ ン以外 の児童で も,例 えば,聴覚 に障害 のある児童 で も漢字 の筆順 を学習す るのに活用で きることを示

している.

【まとめ】

聴覚障害のある児童が,漢字 の筆順 を学ぶのに本 ソフ トウェアを有効 に活用で きるかどうか検討 した.

その結果,本児が本 ソフ トウェアを活用 して,比較 的容易 に,漢字 を 「 学年別」 および 「 画数別」 の索 引か ら選択 し, その漢字 の筆順 を確認す ることがで きた.本 ソフ トウェアは,聴覚障害 の児童 に とって も有効 に活用で きることが示唆 された.

Ⅳ 総合的考察

本 ソフ トウェアの活用 お よび弱視教育 にお け る

HTML

教材 の開発 の必要性 っ いての観点 か ら, 若 干 の総合的考察 を行 う.

1 .試用事例 の結果か ら,本 ソフ トウ ェアが ロー ビジ ョンの児童 の漢字筆順学習 に有効 に活用で きる ことが示唆 された.特に,ロービジョンの児童にとっ て,文字 サイズや画面配色 の設定 および筆順 の確認 をすべてキー操作 によってで きるとい うことは有効 であ った.何故 な ら, ロー ビジ ョンの児童 にとって マウス操作 と画面上 のポイ ンタを視覚的に連動 させ ることは必ず しも容易でない.この点,本 ソフ トウェ アはすべてキー操作 によ りで きるので ロー ビジ ョン の児童 にとって有用であ った. また,本 ソフ トウェ アはマウス操作 による利用 も可能であるので, ロー ビジ ョン以外 の児童が利用す る場合, それぞれの児 童 の使 いやす さに応 じてマウス操作及 びキー操作 に よる活用 を考 えればよい.聴覚障害児 の事例で はマ ウス操作 による活用であ った.

2.

本 ソフ トウェアは,児童 が教 師 の助 けな しに コンピュータの前で,一人で学習す るとい うタイプ の もので はな く,児童 と教師が コンピュー タの前 に 二人で並んで対話 を しなが ら一緒 に学習す るとい う タイプの ソフ トウェアである. これは教育 と学習が あ くまで も教師 と児童 との間で営 まれ る共同活動で あると理解 し, コンピュータとソフ トウェアは, そ

71

(8)

の協 同活動 を媒介 し, その活動 を助 ける手段 と して 位置づ けた. したが って, この ソフ トウェアは, コ

ンピュー タが児童 の学習過程 を 自動的 に制御す ると い うので はな く,教師 と児童が この ソフ トウェアを 用 いて児童 の学習過程 を制御 し,学習の流れを方向 づ けるよ うにす るとい うものであ る.本 ソフ トウェ アを このよ うな観点か ら活用す ると, よ り有効 な教 材 と して利用す ることがで きる.

3.本 ソフ トウェアは, ロー ビジョンの児 童 の一 人 ひ とりに応 じた教 材提 供 を実現 す るた め に

HTML

教材 と して開発 され た.

HTML

教 材 と して開発 し た理 由は幾 っかあ った. まず,

HTML

教 材 はイ ン ターネ ッ トを介 しての提供が可能 であ る. この こと は,例 えば,作製 された一 つ の

HTML

教 材 を全 国 の弱視学級 および通常 の学級 に在籍 しているロー ビ

ジ ョンの児童 に容易 に提供 で き,共通 に活用で きる とい う大 きな利点 がある. また,

HTML

教材 はロー ビジ ョンの児童生徒 の個 々のニーズに応 じた きめ細 かな教材作製 が可能 であ る. これ はロー ビジ ョンの 児童一人 ひ とりのニーズに応 じた拡大教材 の作製 が 可能 であることを意味 している.通常,拡大教材 を 一つ作製す る場合 で も多 くの時間 とコス トがかかる.

も しそ の教 材 が

HTML

化 され て い れ ば,

HTML

Viewer(民間,2000)とい うソフ トウ ェアを活 用 すれば容易 に拡大教材 を作製す ることがで きる. そ の意味 において,

HTML

教材 はロー ビジョンの児 童 の教材 と して大切 であ る.本 ソフ トウェアが

HTML

教材 と して開発 されたのはその点で も有用であった.

4.本 ソフ トウェアの改善点 と して, 漢字 筆 順 の 一画ずつの画面表示速度が少 し速いということがあっ た. ロー ビジ ョンの児童 たちが表示速度 を 自由に調 整で きるよ うにさ らに改良 を加 え, そのニーズに応

じた ソフ トウェアに したい.

[附記]本研究 は日本特殊教育 学 会 第40回大会 で発 表 した内容 に加筆修正 を加 えた ものである.また, 本研究 の一部 は,科学研究費補助金基盤研究(0(2)

「弱視 児 の個 に応 じた学 習支 援

HTML

教 材 の作 成 と活用 に関す る研究」 (研究代表者 :大城英名)

(研究期間 平成13年度 〜平成15年度)か ら,研究 費 の補助 を受 けた.

参考 ・引用文献

1)猪 田栄子 (1971):能力 の開発 を め ざす漢 字 指 72

導.弱視教育,第9巻第1,10‑13.

2)民間和仁 (2000):拡大教材 作 成 システ ムの提

HTML

教材 と

HT ML

ビュー アで拡 大教 材 を 作成す る試 み. 日本特殊教育学会第38回大会発表 論文集,186.

3)大城英名 ・民間和仁 (2002):小学 校教 育 漢字 筆順学習 ソフ トウェアの開発 とその活用. 日本特 殊教育学会第40回大会発表論文集,293.

4 )

木塚 泰 弘 ・千 田耕 基 ・大 城 英 名 ・中野 泰 志 (1991):ある弱視学級児童 の読 みにおける文脈 の 効果.科学研究費 (一般研究

B)

研究成果報 告 書

全盲 と境界視力児 に対す る読 み書 きの効 果 的 な 指導法 に関す る実際的研究」, 国立 特殊 教 育 総 合 研究所,14‑54.

5)小柳恭治 ・大森毒枝 ・閲芳夫 ・前東孝儀 ・柿原 哲子 (1969):弱視児 の書 写 力 とそ の訓練 効 果 . 弱視教育,第7巻第2,2ト33.

6)小柳照代 (1971):弱視児 の能 力 ・特 性 に応 じ た効果的な ドリルの させ万一漢字 の読 み書 き力 を のばす ためには‑.弱視教育,第9巻第1号 ,1‑ 13.

7)沢 田禎夫 (1966):弱視児 童 に対 す る漢 字 指導 の体系 (その1).弱視教育,第4巻第4号,67‑

7

1.

8)徳 田克 己 (1988):弱視児 の漢字読 み書 き能力.

文化書房博文社.

9)中川貞一 (1965):弱視児 に対 す る文字 指導.

弱視教育,第3巻第3,48‑67.

10)中川紀美子 ・千田純子 ・筒井 いづみ ・上野靖子 ・ 五十嵐信敬 (1990):小学校 にお け る弱視 児 の教 科指導 に関す る実践 的研 究(6)‑ Ⅱ‑② 弱視 児 の漠 字書字指導 の方法一.弱視教育 , 第28巻 第 3号 , 1‑ll.

ll)原 田政美 ・小柳恭治 (1967):弱視 用和 文 タイ プ ライ ター.弱視教育,第5巻第4,72‑76. 12)曲測信彦 ・石川美根子 (1975):低視 力児 にお

ける漢字指導法 につ いての一考察一見 るだ けと見 て ・触 れ る場合 の学習効果 の差異 につ いて‑.弱 視教育,第13巻第 1,10‑14.

Summary

Thepresentpaperreportsontheresultsofuslng computersoftwarethatwasdesignedbythepre‑ sentauthorstohelpchildren with low Vision

秋 田大学教育文化学部教育実践研究紀要

(9)

learntospellChinesecharactersorKanJlinthe correctstrokeorder.Thegreatvariationinthe degreeofimpalrmentamongVisuallyImpaired individualsposesachallengetomanyteachers.To solvethisproblem,twosetsofsoftware(HTML orHyperTextMarkupLanguageandCSSorCas‑ cadingStyleSheets)weredeveloped.Theresults ofuslngthesoftwareonanexperimentalbasis indicatedthat

1

)Studentswereabletoadjustthe colorandsizeoflettersaccordingtothedegreeof theireye‑sight,2)theywereabletoidentifythe lettersaccordingtotheirlevelsofcomplexltyand typesofcompounds,3)theywereabletopractice untiltheyhadfinallymemorizedtheletters,and 4)theywereactivelyinvolvedinthepracticeusing thesoftware.Thepaperconcludeswithseveral suggestionsfortheuseofthesoftware.

KeyWords:LowVision,HTMLMaterials,Kanji (ChineseCharacters),StrokesOrder ofKanji,Computer

(ReceivedJanuary22,2003)

252003年 73

図 6 筆順の初期画面 図 7 筆順 の表示① 字が表示 される. ( 2 ) スペース ・キーによる筆順の操作 ここで図 5 に表示 された漢字の中か ら, 「友」 と いう漢字の筆順を学習 したい場合, 「友」 を ク リッ クす ると,図 6 の画面が表示 される.画面中央左側 の窓に見本の漢字が表示 され,その右側 には筆順が 表示 される窓がある
図 1 1 ‑画数別の索引 荘 重 E F E Z E m 図 1 2 画数別選択の画面 Ⅲ 本 ソフ トウェアの試用事例 以下 に, ロー ビジ ョンの児童 および聴覚障害のあ る児童 に本 ソフ トウェアを適用 した事例を取 り上げ, その概略を示す

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さて,義務教育における習得すべき漢字として現行1, 006 字の「教育漢字」は学年別漢字配

る」ということである。

………Katsunobu M URAMATSU , Hidetomo F UJISHIMA , Mamoru K ANBE and Yoshihiro F UJII …… 159 Research into the Current State and Issues in the Individual Integration of Special

………Yoshio H AYASHI , Shin K AMADA , Kazuhito H OSOKAWA ,   Taku S HIMIZU and Hiroshi M URAKAMI …… 51 A Study on the Effectiveness of Classes Utilizing Regional Resources