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入溝山泳におけろ地球化学的探査(第皿報)

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(1)

入溝山泳におけろ地球化学的探査(第皿報)

茨城県高取鉱山の重石鉱床について(その1)一一

自然科学教育研究室 高  瀬  一  男

Geochemlcal Prospecting in the Yamizo Mountain Range, Ibaraki Prefecture(Part豆)

一〇nthe Wolframite Deposit of Takatori Mine(No.1)一一 By KaZUQ TAKムSE

i 緒   論

高取鉱山は古生層の砂岩,粘板岩,チャートの裂罐を充填した石英泳に伴う重石鉱床で,

開発の歴史は古く,佐竹藩,水戸藩の時代には錫鉱として稼行されていたが,現在は荒川 鉱業株式会社が,主として鉄マンガン重石鉱として稼行している。

本鉱床の金属鉱物としては鉄マンガン重石を主体とし,黄銅鉱,黄鉄鉱等が共生してい る。これらを共生する石英鉱豚は極めて複雑多岐にわたつており,これらに対して相当数 の坑道が掘進されている。この複雑な鉱豚の探査は直接掘進によるほか,地質学的,鉱床 学的に検討されているようであるが,筆者はこの際の探査の一助として,坑内水の地球化 学的探査を試みた。

特に本邦においては,重石鉱床を対称としての地球化学的探査は行われてないようであ る。そこで,本研究においては,この鉱床の鉱体関連元素と思われる亜鉛,鉄および硫酸 根等が,本鉱床傑査の指示元素となり得るか否かを検討することを目的として,昭和32年 8月5日より8日までの4日間に亘り,主として本鉱山の赤木毛七番鍾向立入内の坑内水 について分析したものである。また,これと並行して地質調査を行い結果の判定に便なら

しめた。

木研究は昭和32年度文部省科学研究費によつて行つたものである。

この研究に当つて,終始御指導御鞭健を賜つた本研究室の諸先生ならびに本学文理学部 地学教室の先生方に感謝の意を捧げる。なお,現地で種々御便宜を与えられた鉱山長小堀 清氏,同鉱山の職員の方々はじめ,地質調査に御協力を得た茨城県立水戸工業高等学校教 諭中村一夫氏,採水,分析等に御協力を得た本学教育学部学生の四君ならびに宿舎の便を 与えられた茨城県西茨城郡小勝小学校長木村秋三氏に深謝の意を表する次第である。

証位置および交通

(2)

140      茨城大学教育学部紀要 第七号

本鉱山は茨城県西茨城郡七会村および東茨城郡桂村にまたがり,水戸市の西北約30km の地点にあり,常磐線水戸駅より茨城交通電車で上水戸駅にて茨城鉄道に乗換え,石塚駅 下車,当駅より東野バスにて戸の内下車,徒歩約20分で鉱山に達する。また常磐線赤塚駅 より茨城鉄道にて石塚駅下車の方法もある。なお水戸線笠問駅より東野バス塩子行にて戸 の内下車の方法もあるが,前二者の方が便利である。

皿 地   形

本鉱山は八溝山詠中の難足山塊に属し,よく解析された地塊で雨巻山(533m)を最高 とし,高峯山(520m),難足山(431m),高取山(355.9m)がこれにつぎ,他は100柑 300m程度の標高を有する。この山塊は南から北へゆるく傾斜し,全体としてほぼ三角形 を駐する地塊である。

IV地   質

この山塊を構成する地層を岩相ならびに地質構造から河田再代助Dは次のように分類し

た。

皿 伊勢畑層 厚さ2000m 主として粘板岩で,砂岩,チヤートを爽在す る。また有孔虫,蘇虫類の化石を伴う石灰岩を挾む。

難足層群 豆 七会層 厚さ4000川5000m 砂岩と粘板岩の互層よりなる。

1 笠間層 厚さ1400m以上 砂岩と粘板岩の互層でチヤ7トの薄層を 爽在し,紡錐虫の化石を伴う石灰岩を挾む。

本鉱山附近の地質は主として砂岩,粘板岩,チヤートよりなる古生層で,岩相よりみて 前記河田の七会層の上部または伊勢畑層の下部に位置するものと考えられる。また菊地徹,

徳蔵勝治等2)は本地域に分布する岩石を高取系と呼んでいるが,岩相からみて河田の七会 層の上部または伊勢畑層の下部に対比されるものと思われる。本地域に分布すを岩石の一 般的傾向について述ぺると,砂岩は灰色乃至暗緑色であり,主として石英および長石粒よ り成る。この砂岩層には粘板岩,チヤートを爽在する。粘板岩は灰色,暗灰色乃至黒色お        ρ

謔ム緑色のものがある。チヤートは赤色および灰色乃至緑灰色で,極めて硬質のものが多 い・これらの一般走向はNE−SW,30°−80°NWに傾斜する。この地域には断層が多く 複雑な地質構造をなしている。鉱山附近の地質の概要を第1図*に示す。

(3)

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第 1 図  高 取 山 附 近 地

* この図は地質と坑道の投影位置の関係を示している。

V 鉱   床

重石鉱床は七会層の上部乃至伊勢畑層の下部の裂畔を充填した石英泳に伴うもので,砂 岩づ粘板岩中において詠は優勢となるが,チヤートに貫入したものは一般に挾小となる傾 向を示す。今回の探査は主として赤木毛7番麺向立入について行つたので,これらの範囲 にみられる鉱体について考察する。この立入内で観察できる岩相の一般走向は,N45QW,

NE60°に傾斜している。また立入内にみられる石英詠の走向,傾斜,詠の性状等の詳細 については第1表に示す通りである。なお数所に衝上断層がみられ,この一般走向はE一 WでS方向に傾斜しているのが普通である。断層面には角礫,粘土を爽在し,断層に接触 する石英詠には一般に鉄マンガン重石の富鉱体が形成されており,特に断層の西側におい てその傾向が強力となるQ

(4)

142      茨城大学教育学部紀要 第七号

第1表 赤木毛七番鑓向立入内の鉱泳の状態 鉱豚とその

ヨ連測点

走鳳傾斜1       」

一一一??鼈鼈鼈鼈鼈黶

@     一一尼国一一一一

母岩は粘板岩である。平均泳巾0.1mで鉄マンガン重石の含量は

A N−S,W60° 極く少量であるが,硫化物の含有は比較的多い。詠の末端の上下 盤では鉄マンガン重石が比較的多い。

B−3 N28°W, NE45° 母岩は上下盤とも粘板岩である。平均詠巾0.1mで鉄マンガン軍

」石の含有は少ない。母岩の走向,傾斜はN−E,SE40°である。

『一__C−5 N40°W, NE60° 母岩は上下盤とも粘板岩である。平均泳巾O.1で鉄マンガン重石

の含有は少ない

旧平均豚巾0.15mで鉄マンガン重石の含量はやや多い。豚の上下盤

D−11 N45°W, NE25° はホルンフェルス砂岩である。この豚は坑道の西側へ約10mで消

失する。またこの詠の1部は坑内水の流路に接触している。

母岩はホルンフェルス砂岩である。平均豚巾0.05mで鉄マンガン E−17,18 N−S,E25Q 重石の含有は殆ど認められず,硬質の石英のみである。この豚の

1部は測点17の方へ分岐して流路に接している。

母岩はホルンフェルス砂岩である。平均詠巾0.15mで鉄マンガン F−22〜24 N30°W, NE50° 重石の含量はかなり多く,また黄銅鉱,黄鉄鉱の硫化物もかなり

多い。

母岩はホルンフェルン砂岩である。この点には走向E−W,S50°

に傾斜する断層があり,断層面に接近している石英詠には鉄マン G−31 N45°W,SW350 ガン重石の富鉱体が形成されている。断層によつて切られた豚は 2筋に分岐し,断層から遠ざかるにつれて狭小となり,硫化物の 含量が増加する。平均豚巾0.07mである゜

1 母岩はL下ともホルンフェルス砂岩である。平均詠巾0.2mで,

鉄マンガン重石の含量は多く,石英は粗粒な結晶である。豚の上 H−37,38 N20°W,SW45° 下盤に黄銅鉱と鉄マンガン重石を含有する。この鉱詠は坑道の東

1 側3mで消失する。西側では詠巾0.3帽0.6mに肥大し富鉱体とな 驍ェ,約20mの所で断層によつて切られる。

1−51 N50°W,SW68° 平均詠巾0.Imで2本の詠がある。鉄マンガン重石の含有はかな

り多い。

J−66 N3°QW SW6°° P平均泳巾゜・15mで鉄マンガン重石の舗はあまり多くない・

    l

@   i    IK−69,701N50°W, SW80°

妄欝騨難蓼鐙㌔欝黙㌫罵鷺百

特に鉄マンガン重石が優勢である。いわゆる富鉱体が形成されて 1いる。この豚からは水が浸出している。

本鉱山の鉱腺構成鉱物としては鉄マンガン重石,黄銅鉱黄鉄鉱,錫石,硫砒鉄鉱,黄 錫鉱,白鉄鉱,斑銅鉱,磁硫鉄鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱等の金属鉱物を共生するほか,豚石 としては石菟 リシヤ雲母・黄玉,螢石,方解石等であると報告されているが,この調査

(5)

範囲においての金属鉱物は鉄マンガン重石を主体とし,黄銅鉱黄鉄鉱等の硫化鉱物と共 生しているのが普通である。また豚石としては石英を主体とし,時に螢石等を伴うことが ある。この石英1永の豚巾は0・1〜1m程度で平均0.2m内外である。

重石の品位は一般に石英の結晶が粗粒で比較的もろい石英泳において高品位となり,結 晶が粗大または細粒で硬質な豚においては低品位を示す傾向がある。

VI試水採取法

赤木毛七番鑛向立入内を流れる坑内水を坑口側から内側に向つて5mごとに約100cc採 取し,亜鉛,鉄,硫酸根等を分析した。pHは採水と同時に現場で測定した。また坑内の

気温および水温も同時に測定した。

W分析方法

亜鉛,硫酸根,pH等の分析および測定は第1報3)の方法によつた。

鉄についてはチオシアン酸アンモンを用いる比色法によつて定量した。

亜鉛の定量に用いたヂチゾン四塩化炭素溶液の力価は銀を標準として,73.1γAg/ccの濃 度のものである。

V皿分析結果と考察

前述の分析方法によつて得た結果に対して地質学約な観点からの考察をも含めて指示元 素の検討を加えてみる。

赤木毛七番鍾向立入内における鉱泳の位置を明らかにするため,第2図に坑内平面図を 示す。また分析結果を第2表および第3図に示す。なお第3図には結果の考察を便ならし めるため,採水地点と鉱肱位置図もつけ加えた。

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35『  45° ゜        帥゜ z K

  4参「 60°    25     25°   5げ

s霧  ・一伽  〆鰍噛㈱

七巻樋

第2図 赤木毛七番鏑向立入坑内平面図および鉱豚位置図

(6)

144      茨城大学教育学部紀要 第七号

第2表 赤木毛七番鑓向立入内の坑内水分析値

T(°C) Twl(°c)lpH

 So4 高〟^1

  Fe 高〟Y1

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T(°C)

i°C)Tw pH  So4高〟^1   Fe

高〟^1 Zn

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一一

14.8 13.2 5.1 1190 8 218 40 14.2 13.4 4.9 190 15 284

14 13.5 5.1 210 81284 41 14.5 13.4 4.8 190 15 218

一一一一一

q  一

一一

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14 13・515・1 195 8 211 42 14.5 13.4 4.8 200 16 264

1 7 14 13.5  5.2 195 6 1211 43 lI4 13.2 4.9 210 17 437

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1

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14 13.3 5.1 190 7 i  284 46 14.2 13.5 4.8 190 18 211

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14 13.2  5.1 195 8 219 50 i14.5 13.5 5.1 180 20 318

14 13,515.1 195 8 292 51 14 13.5 4.7 190 18 658

1

1 16 14 正4 14.9 190 9 214 52 14.3 13.8 4.9 160 15 291

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一一一 一 一

18 14 14 4.7 170 9 287 54 14.3 13.8 4.7 160 14 287

1 一一一一

…19 13.9 13.5 4.7 170 10 292 55 14.2 13.5 4.7 160 14 500

1

13.9 13.5 4.7 210 13 145 56 14.2 13.5 4.7 150 13 318

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4.7 200 13 439 58 114.2 13.5 4.7 150 15 726

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14 13.2 4.7 170 12 8041 60 「 14.1

13.5 4.9 170 10 658

125 14 13.2−」一.皿『 4.7 180 11 439 61 巨4・1 13.5 4.9 180 10 560

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14 13.2 4.7 170 101284 62il4.1 13.5 4.7 180 13 560

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14 13,2i4.5 160 101584 63  14.1 13.5 4.7 170 15 360 L28 13.2

1  4.6

160 10 380 64 1 14.1 13.3 4.7 170 15 一 292

1  一一P 一一一一

一一 一一 一一一 一一一

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一一一 』一一一

30 14 B.2 4.7 180 13 360 66 正4.1 13.9 5.4 170 13 437

1

31 14 13.2 4.9 170」15 584 67 14 13.2 5.1 1 140 13 380

32 14 13.2 4.9 180 13 435 68 14.1 13.2 4.5i200 15 438

33 14 13.2 4.7 180 13 36・1 69 14.3i13.9 3.5 250 20 658

1 一一w

1  34 14.5 13.2 4.7 180 16 380 70 14.3[14 3.0 1200 150 1170 旨35 14 13.2 4.7 180 15 214! 71 14.3h4.1 5.1 200 20  1 145

1  36

14 13.2 4.7 180 13 129

(7)

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第   3   図 はじめに,この分析結果について総括的な考察をしてみる。

この坑内水の亜鉛,鉄,硫酸根,pH等の含量の変化は第1表および第2表の結果から 考察して,鉱肱の豚勢に影響されることが考えられる。殊にこの立入中最大の鉱肱の存在 する測点No・69・70のK豚附近では,他に比して亜鉛,鉄,硫酸根等の含量が著しく増加

し,これに反してpHが著しく減少することが甚だ顯著である。従つて,これは他の鉱豚 の性状と比較し,これら4成分と豚勢との間に特に密接な関係のあることを意味するもの

と考える。一方,この測点以外で,概して亜鉛,鉄,硫酸根等の含量の変化に平行的関係 が認められる測点はNo・3,11,51等であり,これはB, D,1等の鉱豚からの溶出によ る影響と考えられるが,pHの変化は殆ど認められない。従つて,これらの鉱詠の豚勢は K詠のそれと相異するのではないかと考えられる。また,前二者以外の鉱豚に関連する測 点においては,各成分の含量の変化状態から判断して,B,D,1豚等に属す試料群である

と推定できる。

なお,ここで一成分と鉱詠との間に特に顕著な変化を示すものは,第3図から明らかな ように亜鉛であり,鉱豚附近ではその豚勢に応じて顕著な変化を示すことが認められるQ

(8)

146      茨城大学教育学部紀要 第七号

従つて,亜鉛は鉱体を指示する有力な指示元素と指摘することができる。他方,Kl永に属 する酸性度の強い試料においては亜鉛は勿論,鉄,硫酸根等も有力な指示元素となり得る ことが予想される。

以上から本探査範囲においては,亜鉛,鉄,硫酸根等の含量が平行的に変化し,それが pHの酸性度と平行関係にあるpH35以下の試料群(Dと,亜鉛,鉄,硫酸根は含有さ れるが,主として亜鉛のみが豚勢に密接に関係し,pHとあまり関連性を示さないpH3.5 以上の試料群(豆)があるように考えられる。

これらの結果に類似する研究として,木村健二郎等4)は坑内水の化学的研究の結果から,

亜鉛,銅,鉄等の金属イオンの含量が平行的に変動し,これがpHの酸性度と平行関係に ある試料群(A)と,金属イオンとしては主として亜鉛のみを含み,且つその大小は豚勢 に密接に関係するがpHとはあまり関連性を示さぬ試料群(B)のあることを見出し,(A)

を酸性域または酸化帯(pH 5以下),(B)を還元帯(pH(A)以上)と呼んでいる。

本研究の結果と木村等の結果について比較考察してみる。本探査において筆者の呼ぶ

(D型は金属イオンの含量の変化とpHの酸性度の問に見事な相関が認められることより 木村等の(A)型によく一致することが結論できる。然し,( )型においては金属イオン の含量とpHとはあまり関連性をもたぬが,主として亜鉛のみが顕著に現われることより 一見(1)型は(B)型に対比されるように思われるが,鉄,硫酸根等もかなりの高含量を 示すことから一応(A)型に対比されるか,あるいは両者の中間程度に属するものと推定さ れる。従つて,本研究における試料は豚勢等の関係も考慮して,(1)型は勿論(豆)型 もほぼ(A)型に属する酸化帯試料ということができよう。

次に個々の各成分について考察を加えてみる。

亜鉛は月永勢に応じてその含量の変化が顕著である。即ち,亜鉛含量の増加は測点No.3,

11・23・31・37・52・69・70等において顕著である。これは鉱体の性状からみて直接鉱1永 B,D, F, G, H,1等の影響によるものと解釈できる。これに反して,鉱豚附近であ まり含量の変化が認められない測点No5,18,66等は第1表に示すようにC, E, J等の 鉱肱の性状が,概して貧鉱豚であることに起因するものと考えられる。また測点No.22〜

24,37等において亜鉛含量の増加はF,H鉱肱がそれぞれ分岐し,その延長が坑内水の流 路に接触していることによるものと思われる。ここで特に顕著な変化の認められた測点 No・69・70について詳しく考察する必要があろう。この測点に影響するK鉱豚は通称七番 鍾と呼ばれ,この鑛に対して鍾押し掘進がなされている。この鉱豚の月永rDは0.8拶1mで 破砕された粗粒な石英よりなり,鉄マンガン重石,黄銅鉱,黄鉄鉱等が共晶し,特に鉄マ ンガン重石の優勢な,いわゆる富鉱体である。試料は鉱豚を洗つて浸出する水を採取して

(9)

高瀬:八溝山豚における地球化学的探査(第五報)         147

分析したものである。前述のように亜鉛,鉄,硫酸根の含有はpHの酸性度と極めて顕著 な平行的変化を示した。これは他の鉱豚と比較した結果,その性状の相異によるものと考 えられる。その理由の1つとしては他の鉱豚より硫化鉱物の含量が多いという事実からし て,豚勢による影響と考えられる。以上の考察結果から亜鉛は鉱体を指示する有力な指示 元素である。特にpH35以下の酸性域〔(1)型〕については最も有力な指示元素となるこ

とが予想される。

次に鉱1永に無関係な測点No・58川60附近の亜鉛含量の増加は,前述の傾向からみて鉱体 を洗つた水が,この附近の岩盤の割目または弱所を通つてきてるのではないかと推定され る。従つてこの近傍に鉱体の存在が暗示されよう。

鉄の含量と鉱詠との関係については,亜鉛の場合のように明瞭な関係は認められない。

概括的にみて,鉄の含量の増加は測点No.3,11,31,50,51,69,70等においてみられ る。これは鉱豚B,D, G,1,K等の影響によるものと考えられるが,その含量の変化 はNo51,60,70等を除いてはあまり顕著でない。また鉄は鉱豚附近で含有の低下を示す ことや,鉱詠の存在とは無関係に含量が変化することから,期待し得る指示元素ではない。

然し,鉄は亜鉛とpHとの間に高い相関を示す場合があることから,それに類似する酸性 域〔(1)型〕では鉄も指示元素となり得ることが考えられる。

硫酸根の含量と鉱月永との関係については,鉄の場合より更に明瞭な関係はみられない。

即ち,その含量の増加はB,C, D,1, K等の鉱月永附近の測点において認められるが,

その増加の割合はK鉱1永(No.69,70)を除いてはあまり顕著でない。またこれに反して 鉱豚附近の測点No.18,31,38等ではその含量が低下することなどからみて,期待し得る 指示元素とは認められない。然し, 硫酸根はpH 3.5以下の酸性域においては,亜鉛,鉄,

pH等の間に顕著な相関を示す。従つてこれらの酸性域〔(1)型〕では指示性が認められ

よう。

pHは全般的にみて変動の差が少なく,鉱詠との関係はあまり認められない。ただ測点 No・69,70等について考察するとpHの減少は他の成分の増加に対してよく一致する。従 つて,pHは本鉱床において鉄マンガン重石に伴う硫化鉱物の多い鉱詠に対しては亜鉛,

鉄,硫酸根等とともに指示性が暗示されよう。

IX 結   論

本研究においては鉱体関連元素と考えられる亜鉛,鉄,硫酸根等を定量し,本鉱床探査 の指示元素となるか否かを検討したもので,その結果をまとめると次のようになる。

L 亜鉛は本鉱床の最も有力な指示元素であることが認められた。

(10)

148      茨城大学教育学部紀要 第七号

2・本探査の試料には(1)型および(皿)型のあることが判つた。

       冒

i1)型の試料においては亜鉛は勿論鉄,硫酸根等も有力な指示元素であると思われ

る。

(亜型)の試料においては亜鉛のみが最も有力な指示元素となり,鉄,硫酸根等の指 示性はあまり認められない。

3.本鉱山の坑内探査には1,2の結果を適用して,断層面よりしみだす水または坑道 掘進によつて浸出する水等の分析を行いば鉱体の探査が可能と思われる。

4・本鉱山の坑外探査としては地質状態と鉱1永の特徴から考察して,赤木毛立入通洞よ り以西の地域で沢水等の分析が必要となる。

文    献      1

1)K・Kawada:Sci・Rep・Tokyo Bunrika D aigaku, S ec. C. Vol.2,NQ.15, P.217,(1953).        

2)菊地  徹,徳蔵 勝治 :地質調査訴月報,Vo童.2,No.9,P.416,(1951).

3)高瀬 一男 :茨城大学教育学部紀要,No.6,p.97,(1957).

4)木村健二郎,藤原鎮男,守永健一 :日本化学誰誌,Vo1.72,No.4,p.398,(1951).

      戸

̀bstract

Ageochemical prospecting was carried out at Takatori Mine in Ibaraki prefecture, in August,1957.

The quartz veins in the area contain wolframite, chalcopyrite, pyrite, etc. The elements which contain量n the ores are dissolved in mine water.

 In this report, Zn and SO4 ions contained in water were determined as described

@      3)

垂窒?魔奄盾浮唐撃凵C and Fe ion was determined by colorimetry, 11sing ammonium thiocyanate solution.

As the result of these processes,.inr 高奄獅?@water, Zn ion is the most useful element as an indicator in any case of the pH for the wolframite quartz vein associated with chalcopyrite,

pyrite, etc. On the other hand, Fe and SO4 ions in mine water were useful one as the indicator at the pH 3.50r less.

      「

C

参照

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