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木下正義 はじめに

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193

比較法制研究(国士舘大学)第22号(1999)193-212

《論説》

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討

一均等条項を拡大する立法改正試案の構想一

木下正義

はじめに

1均等待遇条約の採択と文書の形式 2111号条約発展のILO活動と促進援助

(1)均等条約促進のILOの活動

(2)均等条約・勧告の促進援助

3加盟国の差別排除の責任と立法例・排除の状況

(1)加盟国の差別排除の責任

(2)ILOの調査による加盟国の立法例・差別排除の状況 4人権規約に内包する国際基準と労基法の均等条項の見直し構想

(1)人権規約に内包する国際労働基準

(2)労基法上の均等条項の見直し構想 むすび

はじめに

国連総会によって世界人権宣言が採択されて以来,すでに50年が経過し,

人権と国際労働基準の関係は幾度となく議論され,国際労働基準は人権宣言 が採択される以前から,国際的に高く評価されてきたのである。ILO条約 および勧告は度合が異なるが,人権を促進し保護することに貢献してきた。

近時世界経済のグローバール化と競争の激化にともなうネオリベラリストの 規制緩和論の傾向から,人権と国際労働基準の主要な要素を再検討すること が,ニコラス・パルチコス欧州人権裁判所判事により提Ⅱ昌されていることを (1)

契機として,本稿はわが国が未批准のILO111号条約採択の経緯の展開を通 して,同条約を発展させるILOの活動と促進援助について概括的に素描し,

ついで加盟国の差別排除の責任と加盟国の立法例などについて吟味し,さら

(2)

に人権規約に内包する国際労働基準と現行労基法の均等条項の見直しについ て,若干検討を加えるものである。

1雇用・職業差別条約の採択と文書の形式

雇用.職業差別111号条約の成立は,1958年42回ILO総会において第4議 題として,差別待遇委員会から「雇用および職業の分野における差別待遇」

111号条約・勧告案に非本土地域に適用する条項を付加して討議がなされた。

オランダ政府顧問は本条約案に男女同一報酬が含まれているが,国内におけ る男女間の賃金格差が除去される理由で反対を表明し,また委員会の多くの 労働者委員は,非本土地域に適用する決議が委員会によって拒否された理由 で棄権したが,イギリスの使用者顧問を除き多数の政府代表および顧問は条 約案に賛成し,提案された条約案は30次本会議で,雇用および職業における 差別待遇の条約.勧告の最終採択について,条約は賛成189,反対24,棄権 13,勧告は万場一致で採択された。 (2)

なおつぎに,ILO111号条約の形式と構成について本条約は,前文および 1条から6条(批准手続の最終条項を除く)によって簡潔に構成し,極めて 網羅的にすべての差別を禁止しており,かなり一般`性をもった人権条項であ る。また勧告は前文で条約を補足する形式をとり,1項・2項・3項からな る。すでに論述されているように,本条約1条は差BlI待遇の意味,雇用.職 (3)

業の意味について,1項,2項で詳細に規定している。2条は各種差月Iを雇 (4)

用と職業の面において禁止し,採用における差別,採用後の差別や職業につ いて,機会及び近東待遇(例えば,職業訓練の差別なども含む)を促進する 国の方針を明にすることを確認している。第3条は,条約の適用をうける加 盟国は同条(a)~(f)の各号について,国内事情及び`慣行に適した方法により,

おこなうことを確認している。第4条は,国家の安全を脅かす行為に関与し ている者の除外規定について,限定的に解釈されねばならないのか,条約・

勧告適用専門家委員会の見解であるとし,公的利益など ̄般的な形で国家の

安全を定義しているような場合は,政治的意見による差別にあたるおそれが

(3)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)195

十分にある点カゴ注目される。 (5)

(1)NValticos,“Internationallabourstandardsandhumanrights”:Appro‐

achingtheyear2000,InternatianalLabourReview,voL137,(No.2,31998),

P,135.

(2)労働省「42回国際労働機関総会報告書」79~80頁。

(3)中山和久「教材国際労働法」79頁。

(4)吾郷眞-「国際労働基準法一ILOと日本・アジアー」77頁。

(5)吾郷眞-「前掲」77頁。

2111号条約発展のILO活動と促進援助

前項の展開についで本項は,均等条約を発展せしめるILOの活動と同条 約・勧告の促進および援助について概要を素描する。

(1)均等条約促進のILOの活動

ILOは1989年以来,均等条約に関する活動および国運や他の組織により, (6)

企てられた諸活動の一般的な調査,またこの分野におけるILOの計画を発 展させることを持続してきた。人種差別の分野における事例では,南アフリ カ共和国に関するILOの活動があり,およそ30年間これらの活動は,アフ リカ人種制度の反対闘争に集中した。1964年の会議で,同共和国の人種差別 反対行動に関する宣言や行動計画を採択したが,いくつか起った原因も改善 した。1993年ILO理事会は行動宣言を保留したが,南アフリカは行動計画 を受けいれ積極的に変更し修正した。また理事会は,完全な民主主義への移 行と人種差別政策の効果を克服するにあたり,アフリカを援助するILOの 支援に対し,1993年に行動計画を是認した。さらに,女子に対する機会均等 (7)

および待遇の特別な保護策に関する専門家会議が,1989年10月に開催された。

とくに会議では,女性のために適用する男女間の均等待遇を保障する方法に

関して,保護策を再検討することを力説したが,この目的は社会集団の態度

や実施にあたり,基本的な変化がある場合にのみ達成することが可能である。

(4)

この傾向は女性の夜業に関して,極度に保護することを考慮し,また不必要 に女'性に有利な雇用機会を制限するため,女`性の夜業に関する基準の再検討 に反映されている。しかし組合組織強化が早い時期に,女'性の健康に対して 過度な苦痛や有害のある労働条件から,主として女性を保護することを確認 した。現在の風潮は,男女間の均等を促進することに最も大きい重要性を与 えている。男女間の雇用均等分野のなかで,この傾向の顕著な事例は,女」性 の夜業に関する基準を再検討することが企てられた活動がある。1990年国際 労働総会では,1948年の女性の夜業に関する89号条約を改正する原案を-増 柔軟にさせるため,1990年夜業に関する171号条約,178号勧告が採択されて,

夜業に必要な男女労働者に保護を与え,また妊娠期間中の女性や出産・分娩 後の母性に対し,すみやかに特BIの規定を設けた。 (8)

(2)均等条約・勧告の促進援助

①ILO111号条約・勧告の促進

ILO理事会は,4年に一度特別報告の手続きを導入することにより,条 約を批准しない加盟国内状況の定期的な調査を認め,批准を促進することを 望んだ。この決定は,1977年の総会で人権に関する決議案が採択されてうけ いれられた。とりわけ総会では,非差別待遇が国際労働憲章の基本原則であ り,かつすべての加盟国に対して,憲章義務の一部を構成するその促進に関 してリコールした。この決定にしたがって,条約の批准を確認する方法や憲 章から生じる一般的な義務に注目すべきである。条約の批准記録は別表統計 1,2に示したとおりであり,1958年6月に総会で111号条約・勧告を採択 (9)

し,1960年に効力が発行した。120加盟国は条約を批准したが,53ヵ国はい

まだ批准していない。政府による特別報告書や提出した報告書で提供された

情報に基づく記載では,9ヵ国が近い将来条約の批准を予測し,ある加盟国

は批准の可能性を検討しており,また二つの加盟国は,批准を妨げる大きな

経済的困難がないことを考慮している。しかしながら,ほかの加盟国は批准

に対して,手続をとることができなかったことを正式に表明し,また加盟6

(5)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)197

ヵ国は条約の批准を遅延する経済的困難を表明した。さらに,加盟3ヵ国か ら批准を妨げる障害が言及され,他の加盟6ヵ国は,別の理由で批准を予想 することがなかった。1995年3月社会発展の世界サミットにおいて,採択し た宣言のなかに組みいれられた労働者の基本的権利を,維持促進する活動計 画にしたがい,言及しておく必要がある。理事会は,加盟国がいまだ批准し ていない基本的人権に関するそれらのILO条約に対して,カロ盟国政府から (10)

要請されている`情報に基づき,報告書の提出を事務総長が求めることを,

1995年3月262回会議で決定した。

②ILOによる条約・勧告を採択する援助

ILO事務局の積極的な協力政策によって,助言機関を目標にした方式で,

とくに基本条約のさらに効果的かつより完全な履行の構成要素のために,援 助を展開してきた。ILO事務局により提供された技術援助の長期形態の1 (11)

つは,国内労働立法の立案と存在する立法の修正を援助している。豊富な事 例もあるが,事務局は,専門委員会が究明した若干重要な例に言及するだけ にとどめ,1994年ILO事務局は,エジプト共和国労働規程(theEgyptian LabourCode)の修正のために,たえまない技術援助を提供した。効果的 な技術援助につき,この分野の潜在的な障害は,立法修正の方法が極端に導 入期間の長いときがあり,三者主義の活力がない状況における社会的パート ナー間で合意が不十分なこともありうる。1990年来ボリビア共和国における 一般労働法典の草案修正に対し,ILO事務局の技術援助で作成された場合 がある。しかし,労働者および使用者連合間の意見聴取がなく,援助が普及 した事実にもかかわらず,立法の草案修正に依然としてとりいれていない。

さらに,有効な立法の具体的な改正の採択について合意をえるため,加盟国 政府は,労働組合および使用者団体と討議を行った。技術援助は,ILO111 号条約の原則にしたがって,常に立法採択の結果に関係している加盟国の要 請に基づき,提供したことを強調する必要がある。ILO事務局による特定 (12)

加盟国内の雇用状況の調査もしくは,評価を実行するための技術的および物

質的援助は,さらに条約の効果的な適用により生じることもある。例えば,

(6)

マリ共和国は,有害で不健康な労働および深夜労働に反対し,基本的に女性 や児童保護に焦点を向け,女性および児童労働を評価する計画は,とくに ILO111号条約に関して,とりわけ教育や職業訓練,雇用や職業,また労働 条件の分野における均等待遇に対する男女の機会均等に関して,状況のより 明白な事情を収集した統計資料によって,可能にすることが必要であるとし ている。またILO事務局は,実質的に条約適用のなかで直面する経済的に 困難な問題に気づいて,これらの問題を解決する支援を望み,加盟国政府の 要請により技術援助を提供する。条約を適用するにあたり直面した問題を,

1995年6月ILO総会の開期中に専門委員会で討議されたとき,ブラジル政 府は,国内立法で条約をよりよく適用するために,三者国内セミナーシリー ズの開始と,近年導入した立法および条約に規定されている原則の社会的パ ートナー意識の向上のために,事務局で計画している特定の援助を要請した。

条約の原則およびそれらの適用意識を促進する政策の一部として,事務局は 教育目的に関して,雇用における機会均等や待遇を促進するため,個々の事 例いかんにより,政・労・使三者の地域セミナーまたは小地域セミナーを定 期的に開催するにいプこった。とりわけ,ILO活動のもうひとつの援助形態 (13)

は,例えば,オーストラリア政府により,資金が調達されたナンビア共和国 の差別撤廃措置に対する計画指針に対応している。同国は憲法で非差別待遇 の原則を実施するため,また雇用の均等分野における人種差別政策(post‐

apart-heid)を達成するため,この共和国を援助する計画と労働立法で実行 する技術援助が成立している。

(6)GeneralSurveybytheCommitteeofEexpertsontheApplicationofCon‐

ventionsandRecommendationsonequalityinemploymentandoccupation

(referredtointhepresentstudyastheGeneralsurveyofl988),ILO75thSes‐

sion,1988,paras3‐8and9-lO.

(7)ILO,EqualityinEmploymentandOccupation,1996.ILO,Geneva,p3.

(8)ILO,ibid.,p4.

(9)ILO,ibid.,pp7~8.

1959年から1995年における加盟国を条約批准の累積統計別表1.2で示した。

(10)ILO,轡EqualityinEmploymentandOccupation”ReportⅢ(partAB),I、‐

(7)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討 (木下)199

tableL Cumu1ativetotalofmemberStateshavingratifiedtheConvention

Progresslonofratification

14, 140

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table2. AImualnumberofmemberStateshnvingratifiedtheConvention Progresslonofratification

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九○-二三四五六七八九○一二三四五六七八九○-二三四五六七八九○一二三四五

(8)

ternationalConference83rdSession,1996.ILO,Geneua,pp、47~55.

(11)ILO活動の中心は基準設定,技術協力,調査研究であり,技術協力活動の沿 革とその内容,技術協力活動の推移,また国際労働基準の限界と技術協力の問題 については,吾郷眞-「前掲」19頁,139頁以下,秋田成就編「国際労働基準とわ が国の社会法」12-13頁で解説されている。

(12)ILO,ibid,p,93.

(13)ILO,ibid.,p93

3加盟国の差別排除の責任と立法例・排除の状況 前項の展開についで本項は,加盟国の差別排除の責任および主要加盟国の 立法例と実務的状況について,概括的に解説を加えておく。

(1)加盟国の差別排除の責任

専門委員会は,加盟国がすべて条約批准の効果的な規定を作成することが 必要であり,かような行動をとることは,憲章19条(5)(d)に基づきILO加盟 国に責任をリコールさせ,法律および実務上効果的に条約の実施規定を作成 する責任があり,また事実上十分かつ厳格に適用する法律が重要であるとし,

ILO111号条約3条(a)(b)に基づき,批准する加盟国に課せられる責任をとく に強調する。雇用および職業における差別待遇の排除をめざす政策の実行に あたり,使用者と労働団体の協力を求めること,またそのような政策を支持 して規定を設けること,またその政策に矛盾する成文規定や行政実務を廃止 もしくは修正し,また政府権限の直接支配に基づく雇用に対し,政策を適用 (14)

することである。条約で明確に示す原則を国内レベルにおける実行に対して 障害を明らかにするため,立法の発展を達成するのみならず,なによりも実 際に条約の適用をみきわめることが必要である。また考慮すべき事項は,と くに条約に含まれている原則を実行する国内条件に関する適切な国内政策,

例えば,実行可能な活動,差別撤廃措置や専門機関の活動を通して,均等待

遇を積極的に促進する重要性を考慮すべきである。ILO事務局による技術

援助は,とくに諮問機関や実行可能な助言の形で相互に合意協力し,条約で

規定した保障の履行に関して,障害や不安を克服するため援助することがで

(9)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)201

きる。

(2)ILOの調査による加盟国の立法例・差別排除の状況

①差別排除の立法事例

条約は国家として国内憲法,法律や労働規程,非差別法もしくは人権法,

規則,判例法,団体協約などで実施することが可能であり,いくつか規制す るレベルがある。111号条約は3条で確立した枠組の範囲で示す保障を規制 することを,加盟国に委ねている。専門委員会は,条約で規定した原則に対 し,効力を付与するために規定を採択した場合をつねに考慮し,それらは差 BlI条約1条1項(a)で明確に記述したすべての差別理由を含めるべきであると (15)

し,ポーランド共和国における労働規程の改正案は,労使関係のなかで,性,

年令,人種,国籍,宗教,政治的信条,もしくは労働組合員であることに基 づく差別を,1990年以降進めてきた条約の適用に必要な立法改正の一部とし て,明確に禁止すべきである事例をうけいれ,この必要条件が満たされるな らば,差別条約1条1項(b)で規定するように書き加えてもよいとした。すで に専門委員会は,加盟国の基本法のなかで,差別のない保障は十分でないこ とを強調してきたように,例えば,ガーナ共和国新憲法は,性別,人種,皮 膚の色,民族の血統,信条や社会的,経済的地位を理由に,すべての差別を 禁止するのみならず,しかもまた,主に人種,生来の身分,政治的信条,皮 膚の色,性別,職業,宗教。信条に関する個々の記載事項に基づき,異なる 人種に別の待遇を与えることを差別であると定義づけているが,それは加盟 国が,生来の身分,出生環境,民族の血統,性別や宗教観,信条や信仰を理 由に差別や偏見を禁止するように規定しているこの解明が,有益であること を是認した。さらに委員会は,モロッコ共和国憲法について,法の前の平等,

表現の自由,教育の権利,公共部門の職業や任務に対する平等のアクセスな

ど,平等の一般条件の保障だけでは条約に対し,効果を与えるには十分でな

いことを強調し,憲法や労働規定,他の特別立法で雇用および職業における

機会均等や待遇を明確に保障すべきであり,また条約が意図するあらゆる活

(10)

動分野におけるすべての理由に基づく差H1を禁止するとした。 (16)

なお,いくつかの加盟国が,憲法条項以外の立法改正または条約にしたが い,さらにそれを有効に適用することや条約を導入するために,新たな立法 を採択する過程にある。例えば,オーストラリア共和国が,1993年労使関係 法の改正条項で人種,皮膚の色,」性別,性差別,年令,身体障害,結婚状況,

家族の扶養責任,妊娠,宗教,政治的信条,国民的血統,社会的素質に基づ き,差別を防止することや除去するために支援することを表明することは,

現在立法が望ましい目標のひとつに含めている。1986年111号条約の原文が 人権機会均等法にあわせ付帯条項のなかに複写しているが,例えば,ニュー ジランドにおける人権法は,委員会が促進する政治的信条に含まれている差 別の理由を,禁止したリストと同じ形式で採択しており,1999年度末まで,

この差別理由で適用することを義務づけていないとしている。これに対し,

ニュージランド労働組合評議会(theNewZealandCouncilofTrade)は,

「1991年雇用契約法に含まれない人権法により,禁止された差別に多くの理 由がある事実は,雇用関係を規制する基本的な立法に基づく除外に重要な意 味がある。実際の適用にとって,差別の非合法的な理由を適用することは,

人権法が一般法として十分でないかもしれないが,雇用関係を規制する基本 的な立法にこのような欠陥があるので,特別法の原則にしたがい一般法の例 外を設定するにあたり,なお重要なことは直接また即時に条約の適用を保障 するため,雇用関係を支配する特別立法や団体協約に規定することで,差別 理由を禁止することが好ましくない」と表明している。専門委員会は,オー ストラリアにおける1991年資本地域差別法(theAustralianCapitalTerit‐

oryDiscriminationAct)について,使用者の家庭内で家事業務を行う労 働者の人員採用は,法の適用範囲から免除されるが,家事労働者はあらゆる 他の面において,立法で十分な保護をうけており,また多くの加盟国では,

家事労働者,農業労働者などある種の労働者は,差別立法の範囲から除外さ

れていることに注目すべきであるとし,とくに差別行為に対する制裁規定に

ついては,効果のある差別の禁止を設け,またすこしでも特定の行為を規制

(11)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)203

する対象が均等でない場合に,私的部門における差別行為に対し,制裁を適 用することを認め刑罰を立法で規定する傾向が増加している事例,さらにフ ランスの刑罰規定およびオランダの1991年刑事規程137(f)条は,人種,宗教 (17)

または宗教的信条,性別または性別性向を理由に,差別行為に関与する誰れ にも3ヵ月の懲役または,罰金を課することができると規定し,同じく新規 定429の4条は,上記の理由に基づき,誰れもが仕事を行うにあたり,個人 的な差別行為に対し,2ヵ月の懲役または罰金を課することができる立法例 を明記している。ILOは国際法と国内法の関係について,国際協定や条約 が国内法をしのぎ,広範に行われていることを明確に規定している国内憲法 について,この憲法条項の特質は,国内法制における国際法の優位を単に確 立することは,条約適用のために重要であるカゴ,しかし,条約に規定されて (18)

いる原則を履行するために,とくに国際法の観点から条約は,すべて自動執 行的条約は含まない事実を考慮し,国内立法の導入によって,全く加盟国を 免除することがない態度を表明している。

②差別排除の状況

条約に準拠する適切な国内法は必要であるが,しかし,条約にてらして効 果のある原則のアウトラインの適用に関する条件は十分ではなく,事実上多 くの困難が起ることもありうる。いくつかの困難は,もっぱら立法内容に関 係するかもしれない視点から委員会は,事実上雇用機会均等を促進するため,

直接国が管理する公共部門の雇用のみならず,私的部門における雇用とも関

係があるので,機会均等に関する私的部門の使用者の義務は,立法あるいは

団体交渉のいずれかをとおして主張されうるが,条約の必要条件にふさわし

い保護を与える団体協約が必要であり,またかような協約で条約を履行する

立法がある場合,差別的な実施に関して,立法の効果を徐々に弱めることは

ないとし,ニュージーランドの1991年雇用契約法について,あらゆる集団的

方法に関して,個別交渉の優位を保護しているが,とくに機会均等に関する

義務をわずらわしいと考え,履行義務に反対する使用者に対し,大きな免責

(12)

が与えられている立法内容から,個別契約による制度は,ある状況において 個人の苦情条件に含まれる差別に対する全体の保護範囲について,有効な利 用方法を徐々に害することがあり,差別的な決定が与えられるのは,明らか に能力と価値の客観的な評価により,はるかにたやすくまぎらわしている状 況に着目し,ガーナー共ポロ国憲法191(b)条は,差別を排除することや均等待 (19)

遇を促進すること望む加盟国は,企業内の職場規則およびサーキュラーズ (Circulars)を採択するにあたり,教育計画,および条約に規定された原則 を履行する立法の適用を,正確で効果的に保障する基本的な情報についても,

独創性と創造」性を発揮することができることを示唆している。また男女間の 格差平等を達成する目的を遂行するため,多くの加盟国で増加している性差 別の変更態度は,性差別の反対集団により達成された教育水準のなかで向上 するように指導しているが,必ずしも職業の可能性にてらして即時改善をも たらすものではないとし,さらにカナダ連邦公共事業における女性の雇用均 等に関し,協議団体による女性の職業発展のために多様な訓練,労働と家族 生活の均衡を保持する必要性についての調査や現在の経済的危機にあたり,

女`性がまつさきに失業の打撃をうけている状況,さらにまた,1993年ポーラ ンドが経済再編成のために大規模なレイオフを行ない,女性失業者が53パー セントに達した事実を明にし,女性労働者が育児休暇中の雇用終了の理由に かかわりなく,妊娠や出産休暇中に告知なくして雇用契約を終了させること ができないのであるが,企業精算,倒産に関係がある場合には,雇用終了手 続に関して,労働組合と協議しなければならないのである。ポーランドの労 働規程は,精算や破産の場合を除き,女性の育児休暇中集団的一時解雇,ま たは個別的な雇用契約終了について,労働組合がこれについて反対した場合 でも,雇用終了は許されない状況を明にしている。 (20)

最後に委員会は,1994年パート労働175号条約l(d)条にしたがい,経済的,

技術的,構造的理由のために,通常の労働時間が集団的,一時的に減少する ことにより,一時的失業によって影響をうけたのはフルタイム労働者であり,

パート労働者とは考えられない点を強調し,差別的である事態の範囲を十分

(13)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)205

に判断することができるようにするため,また女性の雇用状況がどのくらい であるかを調べることができるようにするため,委員会が統計調査を行うこ とが重要である点を指摘している。

(14)ThispositionwasalsoemphasizedbytheCommitteesetuptoexamine therepresentationsmadebytheTradeUnionAssociationofBohemia,Mora-

viaandSlovakiaandbytheCzechandSlovakConfederationofTrade Unionsunderarticle24ofthelLOConstitutionallegingnonobservanceby theaecノM"dSJozノα々FMemノルP"McoftheDiscrimination(Employment andOccupation)Convention,1958(No.111),oノッブαα/B"肋吻,Supplementl,

VoLLXXV,1992,SeriesB,para、97.Thepointwasreinforcedinalaterrepresn‐

tationconcerningtheCzecノzRGPzUMconthesamesubject・Seethereportof theCommitteesetuptoexaminetherepresentationmadebytheTrade UnionAssociationofBohemia,MoraviaandSilesiaunderarticle24ofthe lLOConstitutionallegingnon-observancebytheCZechRePWMcofConven-

tionNo、111,ILOdocumentGB264/16/2(Novemberl995).

(15)GeneralSurveyofl988,para、58,andCommentsoftheCommitteeofExp‐

erts.

(16)ILO,EqualityinEmploymentandoccupationl9961LO,Geneva,p、81 (17)フランスの刑罰規程416.3条のもとで,差別理由に基づく人員採用の拒否は罰

金または刑事罰を課することができると規定している。ILQEqualityinEmploy‐

mentandoccupation’1996,ILO,Geneva,p、82.

(18)Self-executingprovisionsinintemationaltreatiesarethosewhichmay beapplieddirectlywithouttheratifyingstatehavingtoadoptlegistation togiveeffecttotheprovisionConcerned.

(19)ガーナー共和国憲法191(b)条は,公共事業の職員が解雇され,または免職にな り,あるいは地位の降格または別な方法で,正当理由がなく罰することはないと 規定しているが,「正当の理由がない」という表現は,条約の適用に関して明確に する必要があり,「他の重大な理由」のために解雇する公務員の授権条項は,条約 にしたがって解釈しなければならないのであり,また直接,間接的に差別の違法 な形式に基づいた解雇を保護することに適しない点について明記している。

ILO,EquolityinEmploymentandOccupation,1996.ILO,Geneva,p、83.

(20)ILO,EqualityinEmploymentandOccupation,1996.ILQGeneva,p、86.

(14)

4人権規約に内包する国際基準と労基法の 均等条項の見直し構想

本項では人権規約に内包する国際労働基準の類似性の展開をとおして,労 働基準法3条の均等条項の見直し構想について素描する。

(1)人権規約に内包する国際労働基準

世界人権宣言に含まれる経済的,社会的および文化的権利と市民的および 政治的権利はどちらも人権の一部分であり,1966年国連総会で長期の論議を 重ね,双方とも本質的な違いがないのである。1997年1月現在137カ国はA 規約である「経済的,社会的および文化的権利に関する国際規約」を採択し,

また'40カ国はB規約である「市民的および政治的権利に関する国際規約」

を採択してきた。市民的および政治的権禾Iの分野において,人権に明確な影 (21)

響を与えている国際労働基準は,強制労働の廃止,結社の自由,差別撤廃条 約である。とりわけ,1930年強制労働を禁止する29号条約は,植民地域にお ける個人の自由を保護するために採択されたのであるが,第2次大戦後1951 年以降国連とILO委員会による合同調査が行われ,1957年強制労働の特定 形態を除去するために,新たに強制労働に関する条約が採択された。この条 約は新たに結社の自由の精神を生みだし,強制手段による強制労働や労働者 の動員に対する実質的な保護,経済発展の目的およびスト参加の報復として の懲罰,あるいは人種的な形態やその他差別待遇の形態に対して保護が企て られ,また市民的および政治的権利に関する国際規約で,威力的な強制労働 を禁止したのである。ついで,市民的および政治的権利と経済的および社会 的権利にまたがる「結社の自由」がILOで検討され,第2次大戦の終結後,

1948年「結社の自由および団結権の保護」に関する87号条約が採択され,現

在(1995年)120カ国でこの条約を採択している。さらにまた差別禁止につ

いても,1958年「雇用および職業についての差別待遇」111号条約が採択さ

れ,同勧告は人種,皮膚の色,性,宗教,政治的信条,国民的出身,社会的

(15)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)207

身分にもとづいて行われるすべての差別,除外または優先して雇用や職業に おける機会や均等待遇を破る禁止規定をもりこみ,国際労働基準が大衆の自 由と市民的および政治的権利を非常に広範囲にわたり,保護するために貢献 した。なお労働権に関するかぎり,国際労働基準と人権の類似性は,経済的,

社会的および文化的権利に関する国際規約においてとくに明確であり,男女 同一報酬(ILO100号条約・国際規約7条),職業上の安全・健康(国際規約 7条),週休・労働時間の制限や休日手当(ILO14号条約,51号条約,国際 規約7条),社会保障の権利(ILO42号条約,102号条約,121号条約,国際 規約9条),母性の保護(ILO3号条約,103号条約,国際規約10条),児童 (22)

および年少者の保護と援助(ILO33号条約,59号条約,90号条約,78号.79 号条約,138号条約,国際規約10条)などの条約・規約が含まれている。国 際労働基準は全体として,国際規約に含まれる原則をより具体的詳細な方法 で,国家的レベノレで実践的に実施する手段を提供する。とりわけ国際労働基 (23)

準に含まれる人権条項は普遍的な性格を有し,国際規約は国連総会で承認さ れ,国際労働総会で採択された条約は全体で6.500以上受理されており,人 権に関する結社の自由,強制労働の禁止,差別待遇の廃止条約は大体127カ 国で批准しているが,国際文書を批准する国家はしばしばそれを実行するこ とを怠り,監督機関による活動がいかに綿密な効果が生じても,国際基準を 完全に遵守することが不可能であり,また国際基準が国際地域社会の総意と 慣行を無条件に確実に反映していると結論づけることができない論評カゴ注目 (24)

される。

(2)労基法上の均等条項の見直し構想

ILO111号条約は基本的人権を擁護するため,職業訓練をうけること,雇

用されること,職業につくことについて,人権,皮膚の色,性,宗教,政治

的信条,国民的出身,または社会的出身に基づくあらゆる形態の差別を禁止

しており,現在127か国が批准している基本条約である。わが国は憲法14条

で基本的人権として「法の下の平等」を規定し,この条項の授権により労基

(16)

法3条は労働条件について,国籍,信条,社会的身分を理由とした差別を禁 止し,同法4条は女性であることを理由に賃金について差別を禁止している。

労基法3条,4条はいずれも罰則をもって差別を限定禁止しているが,多種 類の差別について有効ではなく,男女差別禁止の不十分さから,男女雇用機 会均等法が立法イヒするにいたったことは周知のとおりである。とりわけ下記 (25)

の判例から111号条約を批准するためには,判断を変更しなければならない 点が指摘されているが,判決の骨子を記述し構想を展開する。

A信条を理由とした最高裁判決

三菱樹脂事件(最高裁大法昭48.12.12判民集27巻11号1536頁)の判断は憲 法学,労働法学の立場から論評されており,①人権規定の範囲について「憲 法14条,19条およびその他の自由権的基本権は,もっぱら国または公共団体 と個人との関係を規制するものであり,私人相互の関係を直接規律すること を予想するものではない」とし,人権規定の第3者効力を一般的に否定した。

②企業の自由と思想・信条の自由の関係について,憲法22条,29条におい て財産権の行使,営業その他広く経済活動の自由,人権が保障されている視 点から「企業者は経済活動の一環として,契約締結の自由を有し,自己の営 業のため労働者を雇用するにあたり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる 条件で雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り原則として 自由にこれを決定することができるのであって,企業者が特定の思想,信条 を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも,当然に違法とす ることはできない」とし雇入れにおける思想差別の積極的な合法を是認し,

憲法14条の平等規定は「私人のこのような行為を直接禁止するものではな く」信条による労働条件の差別を禁じる労基法3条は「雇入れ後における労 働条件についての制限であって,雇入れそのものを制約する規定ではない」

また「思想,信条を理由とする雇入れの拒否を直ちに民法上の不法行為とす

ることができないことは明らかであり,その他これを公序良俗違反と解すべ

き根拠も見出すことはできない」と判断し,労基法3条は,「労働条件」に

ついては,信条による差別を禁止するにとどまり「採用」にあたっては,信

(17)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)209

条による差別は禁止されていないと結論づけた。最高裁は試用期間を終えた 段階で本採用を拒否されていることは,純粋な採用差別ではなく,雇用に接 近した労働条件の最大の変更として,労基法3条違反の問題になるにもかか わらず,原審は憲法解釈を誤ったものとして,破棄.差戻したが理論上問題 が残され,差別の範囲を拡大しなければならないことも指摘されているとお

りである。

B憲法14条を基調とした労基法3条,職安法3条の差別禁止規定 労働者保護,雇用保障の領域に属する労基法,職安法の均等条項は,どち らも憲法14条の法意を具体化したものである。すでに論評されているように 憲法14条1項は,自由権的基本権として「すべて国民は法の下に平等であっ て,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社 会的関係において差別されない」と規定している。この条項の趣旨は,市民 を身分的拘束カユら解放し,近代市民社会の法原理に立脚したものである。こ (26)

の基本原理は,法的人格の自由平等を前提とする近代社会関係において不可 欠であり,現実の生産活動の場において,労使の経済的,社会的力量の優劣,

使用者の前近代的な意識から,労働契約の合意という形式をとり,実際には 使用者の悪意によって全労働者の労働条件を意識的,無意識的に労働者の待 遇について,差別が行われてきた。労基法3条は前近代的な差別を禁止し,

労働者の平等な取扱を確保することが,労働者の基本的人権の尊重と生存権 を保障するために,不可欠の基礎となることを明確にしたものである。

とりわけ労基法3条は,憲法14条の歴史的性格と同様の立場で労使関係に 具体化しようとするものであり,憲法14条と労基法3条は不可分の関係にあ り,労基法3条は憲法14条と同じ立法精神で,その適用範囲を労働条件に限 定している。労使関係は契約によって形成される関係にあっても,労働者の 人格の平等性を否定することは許されないのであり,労使の近代的社会関係 が確立されるべきことを目的として,前近代的な労使関係を排除し,労働者 の市民的平等を保障しようとするものである。さら|こ,労基法3条の法的意 (27)

義は,使用者の労働者に対する差別は,労働者の生存権や労働権を侵害する

(18)

結果をもたらす認識が,労基法における均等待遇条項の現代的意義をもつと

(28)

いうべきである。

ちなみに労働法の分野において,労基法3条と密接な関係をもつ均等条項 として,職安法3条,労組法5条2項4号,同法7条1号などがある。職安 法3条は,労働者の職業紹介,職業指導などについて,差別的取扱を受ける ことはないと規定している。この差別的取扱の理由は,「人種,国籍,信条,

性別,社会的身分,門地,従前の職業,労働組合の組合員であること等」に および,その範囲は労基法3条と比較してはるかに広範囲である。これは一 見,職業紹介の場合の方が,労働条件に関する場合の差別待遇よりも重要な 結果をもたらす認識にたっているようにみられる。しかし職安法3条は,労 働力の合理的な充足配置のため,職業紹介は国のみが行う原則に基づき,業 務を担当する行政機関の取扱について,均等待遇を徹底せしめる趣旨であり,

違反に対して罰則規定がおかれていない。これに対して労基法3条は,対使 用者に向けられたものであり,その違反行為に対して刑事罰が課せられ,ま た違反行為は民事上無効とされる。したがって職安法3条と本条とは基本的 に労働者の均等待遇を確保しようとする趣旨に軽重はなく,規定の名宛人が 異なるにすぎないとする解釈力iみられる。 (29)

しかし,国際基準を実現するために国内法の立法整備として判例を変更し,

または憲法14条を対比させ,労基法3条の差別禁止範囲にかかわる規定の見 直しは,司法権,立法権の領域にかかわる問題である。例えば,前者の可能 性について労働法の分野における判例の変更については,公務員の争議行為 をめぐる全逓中郵事件(最高裁大法昭和41.10.26判),都教組事件(最高裁大 法昭和44.4.2判),全農林警職法事件(最高裁大法昭和48.4.25判)にみられる ように,判例を変更した顕著な事例もあるが,一般的に最高裁が判断を改め るときは`慎重な態度をとり,時代が変化し先例が事態に適合しなくなった場 合,また先例に誤りがある以外,自らの判例を変更するためには,大法廷に おいて過半数の同意をえなければならないのであり,通常は困難であるので,

自らの先例を変更した例はきわめて少ない点カヌ指摘されている。そこで立法 (30)

(19)

均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討(木下)211

機関による法の変動に着目した場合,社会の思想を反映する立法の内容は,

国会において慎重な審議を通して確立されるのであるが,事実上形式的に審 議を経ないで国会を通過させる法案もあり,また重要法案については審議が 力の対決となったり,多数党が採決で意見を通すことがしばしば行われてき た。それゆえ,もはや現実の社会状況や思想状況とかけはなれた立法が,い かなる目的をもって制定されたとしても,国民から批判をうけ,改廃,変更 される闘争の契機を含んでいる。このような法の変更要因を十分認識し,国 (31)

際労働基準である111号条約の批准を促進するために,国内法のレベルにお いて私人間の均等待遇を実現するにあたり,労基法3条の均等待遇の禁止範 囲を拡大する立法の見直しとして,憲法14条1項後段の法文を基調に,労働 基準法案の審議(昭和22年3月衆議院労働基準法案委員会議録第9号速記 録),職業安定法案の審議(昭和22年8月衆議院労働委員会議録第8号),さ

らに労組法の改正審議(昭和24年6月官報号外)なども比較再検討した結果,

労基法の均等条項に関して法文を修正審議した経緯がなく,憲章部分に属す る現行労基法3条の構想試案として,「使用者は,労働者の国籍,信条,性 別,身分,門地を理由に労働条件について差別的取扱をしてはならない」法 文に改正することによって,ILO111号条約の批准を可能ならしめるために 必要であり,立法府は前記条項の改正に積極的に取組みされることを要求す

(32) る。

(21)HoursofworklndustryConvention,1919(No.1)

(22)FreedomofAssociationandprotectionoftheRighttoorganiseConven‐

tion,1948(No.87)

(23)AsoflJunel998,ConventionNo29hadbeenratifiedbyl46States,

andConvontionNol05byl30States.

(24)NValticos,Internationallabourstandardsandhumanrights:Approach‐

ingtheyear2000,InternationalLabourReview,voL137,(NC,2,1998),P、140.

(25)中山和久「教機国際労働法」81頁。

(26)田口精一「法の下の平等の原理」憲法講座2巻80~82頁。

(27)林迪広「均等待遇」新労働法講座7巻41頁。

(28)沼田稲次郎「労働法論」上270頁。

(20)

(29)林迪広「前掲」42頁。

(30)五十嵐清「法学入門」60頁。

中野次雄編「判例とその読み方」75頁,我妻栄「私法原論」69頁。

(31)井上・福田・渡辺編「法律学概論」現代法律学全集1巻113頁で指摘されてい るように,時代と社会の思想を反映する法律が誰によって,どのようにしてつく られるかということを改めて考えると,法律の内容は議会の公開の審議を通して 国民の納得のいくように討議されて確定されるべきものであるにもかかわらず,

実質的審議はおこなわれず,あらかじめ定められたとおりに国会を通過させるだ けである。ほとんどの人が無関心のあいだに大量の法規がつくられ改められてい るという状態がある。国民の関心の強い重要法案について,国会は審議の場でな く,力の衝突・対立の場となり,多数党が意見を押し通すという状態がある。現 実の社会的状況や思想状況とかけはなれた法律は,いかにその目的がかざられよ うとも,その実際的社会の機能によって人々から判断され批判され,変更・改廃 のプロセスを歩む法思想と法の変動に着目する必要がある。

(31)98年の通常国会についで,本年145国会で成立した条約と主要な法律は87%に 達しているが(99.8.12日朝日朝刊),ILO条約に関する限り批准条約は皆無であり,

政府は反ILO的な政策に固執しているようにうけとめられる。とりわけわが国は,

ひとつでも多く国際労働基準を実行するために,国内法を整備し,条約の批准に よって国際的地位を回復することが急務である。

むすび

本稿は1996年83回ILO総会において,すでに採択されてきた雇用および

職業についての差別待遇111号条約(1958年)について,ILO加盟国政府が

憲章19条,22条の規定に基づき,提出した資料および報告,条約・勧告適用

専門家委員会の報告に対する審議資料の一部を要約記述した項に加え,111

号条約の批准を促進するにあたり,国内法上問題となっている労基法の均等

条項の見直し構想を素描したのである。周知のようにわが国は,1971年に

ILOで採択された企業における労働者代表に与えられる保護および便宜に

関する135号条約も批准しておらない状況にあり,国際労働基準を促進する

立法構想について,後曰検討することにする。

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