平成 29 年度
卒業論文
光子の伝播のパラドックス実証のための実験的検討
広島大学 理学部 物理科学科 高エネルギー物理学研究室
B142899 本田 達也
指導教員 高橋 徹
主査 飯沼 昌隆
副査 檜垣 浩之
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目次
第1章 序論 ……… 2
1.1 研究背景 ……… 2
1.2 目的 ……… 2
第2章 光子の伝播のパラドックス ……… 3
第3章 ビーム伝播 ……… 5
3.1 ガウシアンビーム ……… 5
3.2 ビーム品質因子
M2……… 6
3.3 ABCD 則 ……… 6
3.4 フーリエ光学 ……… 7
3.5 ナイフエッジ法とビームプロファイラーによる方法 …… 8
3.6 初期ガウスモードの測定 ……… 9
第4章 光学系の設計 ……… 13
4.1 Δx 状態の生成法 ……… 13
4.2 Δp 状態の生成法 ……… 13
4.3 重ね合わせ状態の生成法 ……… 14
4.4 エクスパンダーの設計 ………15
第5章 光学系の構築と測定 ……… 17
5.1 測定結果 ……… 17
5.2 考察 ……… 18
第6章 議論 ……… 23
6.1 強度分布の条件 ……… 23
6.2 位相分布の条件 ……… 24
第7章 まとめと今後の展望 ……… 26
謝辞 ……… 27
参考文献 ……… 28
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第1章 序論
1.1 研究背景
古典力学では粒子の軌道を考えることが普通に行われており、自由空間での軌道は慣性 の法則から直線となる。一方で、量子力学においては不確定性の存在により粒子の位置の 時間発展は位置の確率分布でしか予測できず、統計的な平均値が古典的軌道を描くとされ ている。 このとき量子的な粒子は我々が日常で経験するようにまっすぐに進んでおり、さ まざまな軌道が確率的に測定されているだけなのであろうか?この軌道を肯定する考え方 の代表的なものがボームの隠れた変数の理論であり、量子論は古典論と整合していなけれ ばならないとの観点から、現在でも一部の研究者から支持されている。その一方、現在の 量子力学の主流のコペンハーゲン解釈では量子的粒子の軌道の考え方そのものを否定して おり、現実の物理的現象で軌道を考えてはいけないとされている。実際、外力が働かなく ても一粒子干渉を考えることによって、自由空間であっても粒子が直進しないことをシュ レディンガー方程式から計算で示すことができる。しかしこれまでは軌道の考え方の否定 の立場から、それが物理的にどういう意味なのか、研究対象とはなりえないと考えられて おり、量子的粒子の位置の時間発展を物理現象としてどのように理解すべきかの研究はあ まり活発には行われてこなかった。そのため我々は、量子的な粒子も自由空間では直進す ると想像しがちである。実際、ボームの理論は軌道の考え方を元にした科学理論として確 立することを目指しており、粒子は直進しないというシュレディンガー方程式の結果とも 矛盾しない。粒子がどのように自由空間を運動しているのかという問題は物理学の最も根 幹となる問いかけであるが、現在の研究ではこの基本的な問題について説得力のある答え を出せているとは言えない状況である。
1.2 目的
近年、ホフマンによって、ある特定の条件下で三点の位置分布を比較すると慣性の法則 の破れが実験的に観測可能であることが理論的に指摘された[1]。本研究はこの提案に従 い、慣性の法則の破れを直接的に検証することを目的とする。そのためには、初期状態と してある位置の幅(Δx)をもった状態と、ある運動量幅(Δp)をもった状態との重ね合 わせ状態を用意する必要がある。そこで本研究では、初期重ね合わせ状態を実現するため の光学系の考案および構築を目標とした。本論文では考案した光学系と予備実験の結果に ついて報告する。
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第2章 光子伝播のパラドックス
この章では量子的な粒子が慣性の法則を破ることを検証する実験について説明する。ま ず古典力学で考える。P(L)を t=0 で粒子の x 方向の位置 x(0)が x=0 を中心とする幅 L の 範囲内にある確率とし、P(B)を t=0 で粒子の運動量の x 成分 p(0)が p=0 を中心に運動量 幅 B の範囲内にある確率とする。このとき t=tM の粒子の位置について、
|𝑥(𝑡𝑀)| ⩽ 1
2𝐿 + 2𝑚1 𝐵𝑡𝑀≝𝑀2 (2.1)
が成り立つ。ただし m は粒子の質量である。光子についても質量を考えることが出来る が、そのことについては後で述べる。また、t=0 で粒子が上記のような位置について幅 L 内にありかつ運動量について幅 B 内にある確率を P(L and B)とし、同様に
P(L or B)を定義すると、
𝑃(𝐿 and 𝐵) = 𝑃(𝐿) + 𝑃(𝐵) − 𝑃(𝐿 or 𝐵) ⩾ 𝑃(𝐿) + 𝑃(𝐵) − 1 (2.2) である。t=0 で L and B を満たすとき、t=tM で粒子は必ず(2.1)式で定義した幅 M を通る ので、
𝑃(𝑀) ⩾ 𝑃(𝐿) + 𝑃(𝐵) − 1 (2.3) となる。これが古典力学で成り立つ式であり、
𝑃𝑑𝑒𝑓𝑒𝑐𝑡 ≝ 𝑃(𝐿) + 𝑃(𝐵) − 1 − 𝑃(𝑀) (2.4)
とすると、古典的にはPdefect は0以下の値をとる。しかし、初期状態としてx=0を中心と する幅Lのスリット関数型の状態、
⟨𝑥|𝐿⟩ = {
1
√𝐿 (−𝐿2≤ 𝑥 ≤𝐿2)
0 (𝑒𝑙𝑠𝑒) (2.5) とp=0を中心とする幅Bのスリット関数型の状態、
⟨𝑝|𝐵⟩ = {
1
√𝐵 (−𝐵2≤ 𝑝 ≤𝐵2)
0 (𝑒𝑙𝑠𝑒) (2.6) の重ね合わせ状態である次の状態、
|𝜓⟩ = 1
√2(1+⟨𝐿|𝐵⟩)
(|𝐿⟩ + |𝐵⟩) (2.7)
を選び、𝐵𝐿 ≈ 0.048𝜋ℏとなるようにBとLを決めると、
𝑃𝑑𝑒𝑓𝑒𝑐𝑡 ⩾ 0.072 (2.8)
となることが示される。また、P(L)、P(M)、P(B)はそれぞれt=0、t=tM 、t=∞での粒子の 位置の測定で得られるので、(2.3)式の破れを実験的に検証することが可能である。この実
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験でのポイントは、Bの状態とLの状態の重ね合わせ状態をどのように実現するか、にあ る。
ところで、光子は質量ゼロである。しかし、伝搬方向に垂直な成分の運動については、
光速よりも遅い速度での運動となるので質量を考えることは可能である。例えば、図2.1 の光子の場合、θを微小角とすると光子のx方向の速さは c θ ≪ c であり、このときの質 量mは、 m =ℏ𝑘
𝑐 であると考えることができる。
図 2.1 z 軸から微小角θの向きに伝搬する光子。
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第3章 ビーム伝播
この章では光学系の設計およびビーム径の測定に必要な概念について説明する。
3.1 ガウシアンビーム
本実験ではレーザーを用いるので、レーザー光の伝播について知る必要がある。通常、
レーザーの発振モードは最低次のガウスモードである。z 方向に伝搬する、波長λ、波数 k の最低次のガウシアンビームの電場 E は次のように表される[2]。
E(r, z) = 𝐸0 𝜔0
𝜔(𝑧)𝑒𝑥𝑝 {−𝑖[𝑘𝑧 − 𝜂(𝑧)] − 𝑟2[𝜔21(𝑧)+2𝑅(𝑧)𝑖𝑘 ]} (3.1) ω(z) = 𝜔0√1 + 𝑧2
𝑧02 (3.2) R(z) = z (1 +𝑧02
𝑧2) , 𝜂(𝑧) = 𝑡𝑎𝑛−1(𝑧
𝑧0) (3.3) 𝑧0≡𝜋𝜔02𝑛
𝜆 (3.4)
ただし、r はビームの中心軸からの距離である。(3.1)式より、ω(z)は電場振幅が 1/e とな る中心軸からの距離を表しており、ビーム半径の目安となる。ω(z)はスポットサイズと呼 ばれる。(3.2)式より、ω0 は最小のスポットサイズを表していることがわかる。ω0 の大き さはウェストサイズ、ω0 の位置はビームウェストと呼ばれる。(3.2)式は、ビームウェス トが z=0 にある場合の表式となっている。また、z0 はスポットサイズが √2 倍になる距離 を表しており、z0 の2倍の値はレイリー長と呼ばれる。
z が十分に大きく、 z ≫ 𝑧0 を満たす領域で(3.2)式は、
ω(z) ≈𝑧𝑧
0
(3.5)
となり、ビームは直線的に広がる。この直線の z 軸からの角度をθとすると、
tanθ=𝜔(𝑧)𝑧 =𝜋𝜔𝜆
0
(3.6) である。θはビームの角度広がり、広がり半角などと呼ばれる。
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3.2 ビーム品質因子 M
2実際のレーザーは、ビーム品質の劣化により、同じ角度広がりθのビームであればウェ ストサイズが理想ガウシアンビームのものよりも大きくなる。そこで、理想ガウシアンビ ームのウェストサイズを ω0 、実際のウェストサイズを Ω0 としたとき、Ω0 = M2 ω0 とな るように M2 を定義し、ビーム品質の指標とする[3]。ビームが理想的な場合は M2 =1 で、ビームの品質が劣化するほど M の値は大きくなる。
3.3 ABCD 則
一般に、光の伝播は行列で表すことができる。z 方向に伝播するビームの、z 軸からの距 離を x 、傾きを x’ とし、光学要素がビームに与える効果を表した行列を G とすれば、ビ ームの伝播は次の式で表現できる。
[𝑥𝑜𝑢𝑡
𝑥𝑜𝑢𝑡′] = 𝐺 [𝑥𝑖𝑛
𝑥𝑖𝑛′] (3.7) 厚み d の並行平板 G = [1 𝑑
0 1] (3.8) 焦点距離 f の薄肉レンズ G = [1 0
−1
𝑓 1] (3.9)
ただし、空気の屈折率を 1 とした。ここで、ガウシアンビームの q 値というものを次式で 表す。
1
𝑞(𝑧)
=
1𝑅(𝑧)
− 𝑖
𝜆𝜋𝑛𝜔2(𝑧) (3.10) n は媒質の屈折率である。このとき、次の式が成り立つ[2]。
𝑞𝑜𝑢𝑡 =𝐴𝑞𝑖𝑛+𝐵
𝐶𝑞𝑖𝑛+𝐷 (3.11) G = [𝐴 𝐵
𝐶 𝐷] (3.12)
(3.10)、(3.11)式より、光学要素を通過した後のビームの曲率半径 R とスポットサイズω を求めることができる。また、複数の光学要素 G1 、G2 、G3 … Gn を次々と通過したとき の行列 Gtotal は次のように表せる。
𝐺𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙= 𝐺𝑛⋯ 𝐺3𝐺2𝐺1 (3.13)
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3.4 フーリエ光学
レンズの前方の距離 d の位置(入力面)にある振幅 Ein の入射光は、電磁光学からレン ズの後ろ側焦点面で次のような振幅 Eout になる[4]。
𝐸𝑜𝑢𝑡=𝑖𝜆𝑓1 𝑒𝑥𝑝 [𝑖2𝑓𝑘 (1 −𝑑𝑓) (𝑢2+ 𝑣2)] ∬−∞∞ 𝐸𝑖𝑛𝑒𝑥𝑝 [−𝑖2𝜋𝜆𝑓(𝜉𝑢 + 𝜂𝑣)] 𝑑𝜉𝑑𝜂 (3.14) ただし、f はレンズの焦点距離、λは真空中での光の波長、ξとη、u と v はそれぞれ入 力面、後ろ側焦点面内での座標を表す。参考となる図を、図 3.1 に示す。
(3.14)式で d=f である場合、係数部分の位相因子がなくなり、厳密なフーリエ変換の関 係が成り立つ。さらに、𝑢
𝑓≡ 𝑡𝑎𝑛𝜃 ≈ 𝑠𝑖𝑛𝜃 , 𝑣
𝑓≡ 𝑡𝑎𝑛𝜑 ≈ 𝑠𝑖𝑛𝜑 が成り立つとき、p =ℎ
𝜆の関係
式を用いて(3.14)式は、
𝐸𝑜𝑢𝑡=𝑖𝜆𝑓1 ∬−∞∞ 𝐸𝑖𝑛𝑒𝑥𝑝 [−𝑖(𝑝𝜉𝜉+𝑝ℏ 𝜂𝜂)] 𝑑𝜉𝑑𝜂 ( d = f ) (3.15) となる。(3.14)式と(3.15)式を比べることによって、入力面での面に平行な運動量成分 と、焦点面での面に平行な座標成分との関係は次式のようになる。
𝑝𝜉 = ℎ𝑢
𝜆𝑓 (3.16)
図 3.1 レンズによるフーリエ変換の様子。
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3.5 ナイフエッジ法 とビームプロファイラーによる方法
ビームのスポットサイズを測定する方法として、本実験ではナイフエッジ法とプロファ イラーによる方法を用いた。ナイフエッジ法とは、ビーム断面の強度分布がガウス関数で ある場合に有効な方法であり、ビームの一部を遮蔽した状態での強度測定を遮蔽領域を変 化させながら行い、測定結果に対するフィッティングからスポットサイズを求めることが できる。図 3.2 にナイフエッジ法の様子を示す。
図 3.2 に示したように、ビームの一部を x 方向に動かせる遮蔽板で遮蔽し、通過したビー ムの強度を測定する。ある位置 z で、x 方向に-∞からある距離 x までを遮蔽したとき の、通過したビームの強度 I(z,x)は C を定数として次のように書ける。
I(z, x) = C ∫ 𝑒𝑥𝑝 [−2(𝑡−𝑡0)2
𝜔(𝑧)2 ] 𝑑𝑡 =
𝑥
−∞ 𝐶𝜔(𝑧)
2 √𝜋2{1 + 𝐸𝑟𝑓 [ √2
𝜔(𝑧)(𝑥 − 𝑡0)]} (3.17)
ただし、Erf(x)は誤差関数と呼ばれるもので、次式で定義される。
Erf(𝑥) = 2
√𝜋∫ 𝑒0𝑥 −𝑡2𝑑𝑡 (3.18)
また、遮蔽板は x、z 軸に垂直な y 方向について十分な大きさがあるものとする。遮蔽範囲 x を変化させながら強度を測定し、測定結果をω(z) 、t0 、C をフィッティングパラメータ ーとして(3.17)式でフィッティングすることでスポットサイズが求まる。バックグラウン ドを考慮する場合は(3.17)式に適当な定数を加える。
もう一つの方法として、プロファイラーによる方法がある。プロファイラーとは、レー ザービーム横方向空間分布を解析する測定機器である。本実験で使用したプロファイラー BP100 では、ビーム直径、楕円率、位置、重心、疑似 3D プロファイル等が計算、出力さ れる。また、強度分布のガウシアン近似を表示させることができる。
図 3.2 ビームを俯瞰した図。ナイフエッジ法では、ガウス関数の積分が誤差関数となることを用いる。
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3.6 初期ガウスモードの測定
光学系を設計するためにはビームの伝播の様子を知る必要がある。そこで、まず使用予 定の既存のレーザー光のスポットサイズの距離依存性を調べた。光源は中心波長 810 nm の TiSa レーザーである。レーザー媒質である TiSa 結晶の温度が熱平衡に達するまではレ ーザーの強度が安定しないので、レーザーの立ち上げから 60 分以上待ってから測定を行 うようにした。また、レーザー光の強度がそのままでは強すぎて不便であったため、ND フィルターで強度を落としてから測定した。ナイフエッジ法による測定を、日時を変えて 複数回行った結果を図 3.3 に示す。
図 3.3 に示したように、日時によってスポットサイズが変化しているという結果が得ら れた。
図 3.3 スポットサイズωと、レーザーの出射口からの距離 z の関係。ナイフエッジ法の測定誤差を
求めるのは非常に手間がかかるため、誤差は求めていない。測定は全て 2017 年に行った。
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次に、10 月 17 日の測定からビーム品質因子
M
2を求めた解析結果を図 3.4 に示す。図 3.4 では、ナイフエッジ法による測定結果を青色 の丸、測定結果に対するフィッティ ング曲線を赤線で表した。フィッティングパラメーターはウェストサイズ、ウェスト位 置、M2 の3つである。この結果から、M の値が 1 よりも大きく、理想的な最低次のガウ シアンビームからのずれがあることがわかった。また、図 3.4 より、ビームウェストの位 置がレーザーの出射口よりも外側にあることがわかる。しかし通常、このビームウェスト は出射口より内側にあることが多い。以上のことから、レーザー発振器に問題がある可能 性が考えられたのでレーザー調整を行った。レーザー調整後のスポットサイズの測定およ び解析結果を図 3.5 に示す。
図 3.4 10 月 17 日に行った測定の解析結果。レーザーの出射口を z=0 とする。ビームクオリティ の指標となる M
2をパラメーターに含めたフィッティングを行い M の値を求めた結果、M=1.25 で あった。
M=1.25
図 3.5 レーザー調整後に行っ た測定の解析結果。M=1.51 となり、調整前よりもビーム クオリティは低下したようで ある。
M=1.51
フィッティング結果
フィッティング結果
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図 3.5 に示したように、レーザー調整後も最低次のガウシアンビームからのずれが見ら れたため、レーザー光をシングルモードファイバーに通すことでモード整形することを考 えた。そこで、Thorlabs 社の 50-850-FC を使うことにした。この製品はシングルモード ファイバーの一端に GRIN レンズがついたもので、出射光が平行光線に近い形にコリメー トされる。これにより、モード整形後の光学系の設計やアライメントが容易になる。ただ し、50-850-FC は波長 850 nm 用に設計されているため、本実験で用いた 810 nm のレー ザー光では GRIN レンズの効果は小さくなる。また、50-850-FC の動作保証された入射光 強度の上限は 300 mW であり、強度 1 W を超える TiSa レーザーをそのまま入射するは出 来ない。実験装置の設置スペースも考慮し、ファイバーより上流側にビームスプリッター を設置することにした。概略図を図 3.6 に示す。
図 3.6 モード整形するための光学系の概略図。アライメントの結果、ファイバーへの入射光強度が
163.4 mW に対して GRIN レンズからの出射光の強度が 105.0 mW となり、ファイバー透過率は
64.3 % になった。
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次に、モード整形後のスポットサイズの測定結果を図 3.7 に示す。
図 3.7 で示した測定結果から、ファイバー通過後のビームクオリティは M=1.05 であ り、モード整形により理想的なガウシアンビームに近い状態を得られたことが確認でき た。
図 3.7 スポットサイズの距離依存性。横軸は GRIN レンズ端面からの距離。M=1.05 であった。
M=1.05
フィッティング結果
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第4章 光学系の設計
4.1 Δx 状態の生成法
第2章で示した状態 |𝐿⟩ を作ることを考える。位置幅 L の状態を作るには、幅 L のスリ ットにビームを通せばよい。また、径が十分に大きなビームをスリットに通せば、空間的 にほぼ一定の強度分布を得ることができ、ビームのウェストの位置にスリットを設置すれ ば空間的に位相も一定の分布になる。そこで、レーザー光のビーム径を、ビームエクスパ ンダーを使って拡大し、ビームウェストの位置にスリットを設置する光学系を考えた。図 4.1 に光学系の概略図を示す。
4.2 Δp 状態の生成法
第2章で示した状態 |𝐵⟩ を作ることを考える。目標となる状態は運動量空間で強度分布 と位相が一定のスリット関数型の状態である。そのため、レンズによるフーリエ変換を利 用して位置の分布と運動量の分布を対応させることを考えた。まず、ビームエクスパンダ ーでビームを拡大し、ウェスト位置に設置した幅 d のスリットを通過させる。これにより 位置空間で幅 d のスリット関数型の状態が得られる。その位相は空間的には一定であり、
強度分布もほぼ一定となる。次に、焦点距離 f の凸レンズをスリットから下流側に距離 f 離して設置する。このレンズによってスリット位置で得られた位置の分布は、レンズの後 ろ側焦点面での運動量分布とフーリエ逆変換の関係となる。(3.16)式より、スリット幅 d を、
d =𝜆𝑓𝐵
ℎ (4.1)
とすると、凸レンズの後ろ側焦点面で状態 |𝐵⟩ を得ることができる。ここで、λはレー
図 4.1 Δx 状態を作る光学系。
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ザー光の波長、h はプランク定数である。ここで考えた光学系の概略図を図 4.2 に示す。
4.3 重ね合わせ状態の生成法
状態 |𝐿⟩ と状態 |𝐵⟩ の重ね合わせ状態を作ることを考える。これにはレンズによる像転 送を用いる。像転送は状態を変化させないので、4.1、4.2 で設計した状態を像転送して同 じ場所に重ね合わせる。本実験では、状態 |𝐵⟩ が実現する位置にビームスプリッターを設 置し、状態 |𝐿⟩ を凸レンズによりビームスプリッター位置まで像転送することで、状態 |𝐿⟩
と状態 |𝐵⟩ の重ね合わせ状態を作る光学系を考えた。概略図を図 4.3 に示す。
図 4.2 Δp 状態を作る光学系。
図 4.3 重ね合わせ状態を作る光学系。上の経路で状態 |𝐿⟩ を作り、
下の経路で状態 |𝐵⟩ を作ってビームスプリッター上で重ね合わせる。
ビームスプリッター
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4.4 ビームエクスパンダーの設計
ここでは、図 3.7 で示したビームプロファイルに基づき、ビームエクスパンダーを設計 した結果について述べる。まず、ビームエクスパンダーには大きく分けて2種類あり、凹 レンズと凸レンズを組み合わせるガリレオ式と、凸レンズのみで構成されるケプラー式が ある。2種類のエクスパンダーの概略図を図 4.4 に示す。
ケプラー式はビームを一度集光させる必要があり、高エネルギーレーザーでは強度分布が 崩れてしまうが、ガリレオ式にはその問題はない。また、ガリレオ式の特徴として、比較 的短い全長で大きなビーム径を得ることが出来る。これらを踏まえて、本実験ではガリレ オ式ビームエクスパンダーを採用することにした。
さて、ビームエクスパンダーでビーム径を拡大する理由は、スリット通過時の強度分布 をほぼ一定とするためである。そこで、エクスパンダーで拡大したビーム径がスリット幅 よりも十分に大きくなるよう、ビームエクスパンダーを設計する。そこで、ビーム直径は スリット幅の 100 倍程度を目安に設計することにした。また、スリット通過時の位相が一 定となるように、ビームウェストの位置にスリットを置くことになる。そのため、ビーム ウェストが現実的な位置になければならない。さらに、レンズに入射するビーム径はレン ズの直径よりも十分に小さい必要があるので、レンズの位置でのビームの直径はレンズ直 径の 1/5 程度を目安とすることにした。以上の条件を満たす範囲で、エクスパンダー通過 後のウェストサイズが最大となるようにフィッティングを実行することで設計を行った。
フィッティングは2回に分けて行い、1回目のフィッティングでのフィッティングパラメ ーターは4つで、GRIN レンズから凹レンズまでの距離 d1 、凹レンズから凸レンズまでの 距離 d2 、凹レンズの焦点距離 f1 、凸レンズの距離 f2 である。ただし、各パラメーターに は上下限を設けた。距離については、光学素子どうしの距離が 40 mm 以上で、GRIN レン ズから凸レンズまでの距離の上限を 500 mm 程度とした。また、レンズは市販のものを用 いることを考えて、製品カタログより焦点距離の上下限が決まった。1回目のフィッティ ングにより焦点距離の最適な値が求まるので、この最適値に近い焦点距離をもつレンズを 市販品から探し、2回のフィッティング を d1 、d2 をフィッティングパラメーターとして 行う。上で述べた条件を満たす解が得られなかった場合は、他の焦点距離を使ってフィッ
図 4.4 2種類のビームエクスパンダー。
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ティングを繰り返した。このようにして、ビームエクスパンダーを設計した。設計図を図 4.5 に、エクスパンダーによるスポットサイズの変化を理論計算した結果を図 4.6 に示す。
設計では各点でのスポットサイズω(z)をフィッティングの条件として用いた。ここで、
ω(z)の計算方法について具体的に説明しておく。例として、エクスパンダーの凸レンズの 位置でのスポットサイズを計算する。まず、図 3.7 より凹レンズ位置でのスポットサイズ ωがわかるので、(3.4)式、(3.3)式より凹レンズ位置での曲率半径 R を計算する。ω、R より凹レンズ位置での q 値(q1 とする)が求まる。次に、焦点距離 f の凹レンズと、凹レ ンズと凸レンズ間(距離 d とする)の伝播を表す行列は、(3.8)、(3.9)、(3.13)式より、
G = [1 𝑑 0 1] [
1 0
−1 𝑓 1]
である。この行列 G と q1 を(3.11)式に代入することにより、凸レンズ位置での q 値(q2 とする)が計算できる。最後に、q2 の虚部よりスポットサイズが求まる。
図 4.6 エクスパンダーによるスポ ットサイズの変化。レンズの厚さを 無視する近似を用いて、第3章で示 したビーム伝播の ABCD 則を用い て計算した。凸レンズ以降のスポッ トサイズはほぼ一定で、レイリー長 は 147.6 m である。
図 4.5 エクスパンダーの設計図。ビームの直径の値として、2ωの値を示してある。この図の縮尺は
正確ではないことに注意してほしい。レンズの各パラメーターはカタログ値を記載してある。
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第5章 光学系の構築と測定
5.1 測定結果
前章で設計したエクスパンダーを組み立て、エクスパンダーより下流でスポットサイズ を測定した結果を図 5.1 に示す。
図 5.1 に示したように、エクスパンダーにより得られたビームのスポットサイズは、設計 段階で求めた理論計算の値よりも約 1.2 mm 小さい。また、予想されるスポットサイズは 1 m にわたってほぼ一定の値を取るが、得られたデータは僅かながら単調減少しているの が見て取れる。x 方向と y 方向でビーム径が多少異なるが、この差はエクスパンダーを構 成する2枚のレンズのアライメントと、測定時のプロファイラーのビームに対する角度の 垂直からのずれによるものと考えられる。しかし、x 方向と y 方向でのスポットサイズの 差は約 0.3 mm で、この差のスポットサイズに対する大きさは約 6.8 % であり、ビーム断 面はほぼ円形と言えるだろう。プロファイラーで取得したビームの断面の画像を図 5.2 に 示しておく。
図 5.1 エクスパンダーを構成する凸レンズより下流でのスポットサイズの測定結果。ω_x 、ω_y
はそれぞれプロファイラーでの x 方向、y 方向の断面測定であり、x 方向は地面と平行、y 方向は
地面に垂直な向きである。ナイフエッジ法による測定は x 方向断面の測定を行っている。
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プロファイラーによる測定は、ナイフエッジ法による測定よりも精度が良いと考えられ るが、実験当初はプロファイラーが使用できなかったため、エクスパンダーの設計は図 4.4 で示したナイフエッジ法による測定に基づいて行った。だが図 5.1 を見ると、ナイフエ ッジ法による測定結果が、プロファイラーによる x 方向の測定結果とよく一致している。
このことから、ナイフエッジ法による測定も信頼して良さそうである。よって、設計で使 用した図 3.7 のデータも正確な値であると考えられる。
5.2 考察
測定されたスポットサイズが設計段階で予想した値からずれた原因として、設計で用い たレンズの厚みを無視した計算による近似が考えられる。エクスパンダーに使用したレン ズの厚みを図 5.3 に示す。
図 5.3
ビームエクスパンダーで使用した 凹レンズと凸レンズの厚み。
図 5.2 プロファイラーにより得られたビーム断面の強度分布の2次元画像。エクスパンダー通過
後、凸レンズから 1448 mm 下流での測定。
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凸レンズは焦点距離が 170 mm と長いが、厚みが 8.3 mm もある。一方、凹レンズの厚 みは 1.5 mm 程度だが焦点距離が – 6 mm と非常に短く、ビームを急激に曲げるので、近 似によるずれも大きくなるだろう。
レンズの厚みを考慮した計算を用いてエクスパンダーを設計し直すのが確実であるが、
別の方法で設計し直してみた。その方法と結果について述べておく。引き続き、計算では 厚みを無視する近似を使う。まず、設計計算上のレンズの焦点距離の値を適当に補正する ことで、レンズの厚みを考慮した場合と同様の結果が得られるのではないかと考えた。そ こで、図 5.1 で示した設計段階での予想値が実測値と一致するように、レンズの焦点距離 をフィッティングパラメーターとしてフィッティングした。結果として図 5.1 は次の図 5.4 のように変化する。
このフィッティングにより、凹レンズ、凸レンズの焦点距離はそれぞれ – 7.581 mm 、 170.49 mm と求まった。この焦点距離の値を用いて、エクスパンダーを設計し直した。設 計図を図 5.5 に、理論計算の結果を図 5.6 に示す。
図 5.4 凹レンズと凸レンズの焦点距離のみをフィッティングパラメーターとして、実測値と一致
するように予想地を変化させた。アライメントによる誤差が少ないと考えられる y 方向の測定に対
してフィッティングしてある。
20
図 5.5 に基づきビームエクスパンダーを組み直し、エクスパンダー通過後のスポットサ イズを測定した結果を図 5.7 に示す。
図 5.5 再設計したビームエクスパンダー。焦点距離の値はカタログスペックを記載してある。
図 5.6 再設計したビームエクスパンダーの理論計算の結果。修正前のエクスパンダーとほぼ同じ ビーム径となるように設計した。
図 5.7 再設計したビームエクスパンダーを通過した後のスポットサイズ。再設計する前と同様
で、スポットサイズの値が予想される値よりも小さい。
21
再設計するまえの測定結果との比較を図 5.8 に示す。
図 5.7 に示したように、焦点距離を修正することでレンズの厚みを考慮したことにする という試みは上手く行かなかった。この結果から、厚みを無視した近似の影響は、単に焦 点距離を変化させるようなものではないことが伺える。
焦点距離の波長依存性についても考えておく。図 4.4 で示したエクスパンダーの設計で 用いた焦点距離の値は、各製品の設計波長でのカタログ値であり、本実験で使った 810 nm のレーザー光に対する焦点距離とは多少なりとも異なる。レンズの波長ごとの焦点距 離は、セルマイヤーの分散式からレンズの屈折率を計算し、焦点距離の定義式に屈折率を 代入することで得られる。分散式の計算に必要な実験定数は、レンズを購入した各社のウ ェブサイトで公開されていたものを用いた。ちなみに、実験で使用した凹レンズは Thorlabs 社の LC2969、凸レンズはシグマ光機製の SLB-60-170P である。焦点距離の計 算結果は、凹レンズの焦点距離が – 6.15 mm 、 凸レンズの焦点距離が 172.80 mm となっ た。ここで求めた焦点距離の値を用いた場合のスポットサイズの予想値と、図 5.1 で示し た測定結果とを比較したグラフを図 5.9 に示す。
図 5.8 2つのビームエクスパンダーの比較。再設計によりスポットサイズが約 0.3 mm 大きくな
ったが、期待したほどは変化しなかった。
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図 5.9 と図 5.1 を比べると、焦点距離の波長依存性を考慮することで、実測値との一致 がむしろ悪くなったことがわかる。このことから、他の要因の影響の方が大きいことが伺 える。ただし、セルマイヤーの分散式は正確な値を与えるものではないことに注意した い。
図 5.9 焦点距離の波長依存性を考慮した場合の予想値と、実際に測定された値との比較。
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第6章 議論
5章で設計、構築したビームエクスパンダーは予想通りの結果を出さなかった。しかし ながら、予想とはずれていても、エクスパンダーの本来の目的は達成されている可能性も ある。この章では、現状のエクスパンダーで実験が可能かを議論する。
6.1 強度分布の条件
現時点でのビームエクスパンダーは図 5.12 の状態にあり、エクスパンド後のスポットサ イズの実測値は図 5.14 で示した通りである。この実測値に対するフィッティングから、エ クスパンド後のビームウェストの大きさと位置を求めた。フィッティングの様子を図 6.1 に示す。
フィッティング結果より、ビームウェストの大きさは 1073.7 μm 、 ウェストの位置はエ クスパンダーを構成する凸レンズより 21.3 m 下流側と求まった。このとき、ウェストサ イズの2倍の値であるビーム直径は、スリット幅の 40 μm に対して 53.7 倍の大きさとな る。スリットによって切り取られる強度分布を図 6.2 に示す。
図 6.1 実測値に対するフィッティング の様子。アライメントによる誤差が小 さいと考えられる y 方向の測定値に対 してフィッティングした。
図 6.2 幅 40 μm のスリット上で実現すると予想されるレーザー光の強度分布。レーザーは最低次の ガウスモードと仮定し、ガウス関数の係数は 1 とした。右の図は、左の図を拡大したものである。
フィッティング
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図 6.2 に示した強度分布における最小値と最大値の差の、最小値に対する比は 0.07 %で ある。(2.8)で示したように、理想的な条件では 𝑃𝑑𝑒𝑓𝑒𝑐𝑡 ⩾ 0.072 であるが、強度分布の差
が𝑃𝑑𝑒𝑓𝑒𝑐𝑡 に及ぼす影響は 0.001 のオーダーだと考えられる。よって、ウェストの大きさが
設計段階での予想値より幾分小さくなったが、ほぼ一定の強度分布を得るという目的は達 成できていると見做しても良さそうである。
6.2 位相分布の条件
まず、ビームウェストの位置にスリットを設置可能かどうか検討する。上で述べたよう に、ウェストの位置はエクスパンダーを構成する凸レンズより 21.3 m 後方にある。本実 験での光学系は除震台の上に構築されており、最大で 165 cm の直線距離を確保できる状 態にある。ミラーでレーザー光を反射することで 21.3 m の経路を除震台上に作成する場 合、ミラーで 13 回反射させることになる。このような光学系の概略図を図 6.3 に示す。
図 6.3 のような光学系を構築すれば、ビームウェストの位置にスリットを設置すること は不可能ではない。しかし、使用する光学素子の数が増えるほどに、光学系は不安定にな ってしまう。そのため、図 6.3 で示した方法は現実的でないと思われる。
今度は、ビームウェストの位置にスリットを設置することはやめて、図 5.12 のエクスパ ンダーの設計図通りに、エクスパンダーを構成する凸レンズより後方 177.1 mm の位置に スリットを設置した場合を考える。このとき、スリット上で実現すると予想される状態の 位相について、ビーム中心の位相との差θをプロットしたものを図 6.4 に示す。
図 6.3 エクスパンダー通過後の
レーザー光をミラーで何度も反射
させて距離を稼ぎ、ウェスト位置
にスリットを設置する光学系の概
略図。
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図 6.4 に示したように、スリット上での位相差は最大でも 2×10-7π 程度である。位相
差が 𝑃𝑑𝑒𝑓𝑒𝑐𝑡 に与える影響を sinθ程度だと考えると、その大きさは sinθ~10-6 のオーダ
ーと見積もれる。よって、位相差は存在するが、ほぼ位相が一定の状態であり、(2.3)式の 破れを測定するのに必要な条件が満たされている可能性は高いと思われる。
図 6.4 ビームの中心の位相に対する、中心から距離 r 離れた位置での位相の進みを表している。縦軸
は π を単位とする。
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第7章 まとめと今後の展望
これまでに、重ね合わせ状態を作るための光学系の設計方法の考案と、ビームエクスパ ンダーの設計および構築を行った。エクスパンダー通過後のビームプロファイルが、設計 段階での予想と異なるこという測定結果になったが、現状のエクスパンダーでも実験に必 要な条件は満たしている可能性が高いことがわかった。時間が許せば、エクスパンダーの 性能向上を試みたいと思う。
今後の展望としては、エクスパンダーの是非を決定した後、位置状態 |𝐿⟩ の作成に取り 掛かる予定である。しかし、今回のエクスパンダーの経験から、薄肉レンズを仮定した近 似計算では正確さが十分ではないという心配がある。この近似を用いた場合、今後レンズ でフーリエ変換や像転送を行うときに問題が生じる可能性が考えられる。そこで、まずは レンズの厚みを考慮した計算方法について調べたいと考えている。
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謝辞
論文作成に当たり、この場を借りて感謝を示したいと思います。指導教員である高橋徹 先生と飯沼昌隆先生には大変お世話になりました。特に、飯沼先生には実験装置の扱い方 から理論の話まで、卒業研究期間を通して多くのことを指導していただき、大変感謝して います。また、お二人の先生を通じて最先端の研究の一端を知ることができ、そのことは 研究を続ける上での励みとなりました。研究室の先輩である石川さん、宮園さん、渡壁さ ん、野口さんにも多くの面で支えてもらい、本当に感謝しています。同期の松山君、荒本 君には卒業研究意外の面でも頼らせてもらいました。ありがとう。また、ホフマン先生を 中心とした量子光学物性研究室の方々には理論的な知見を与えてもらい、この経験は大学 院に進んでからも大いに役立ちそうで、感謝しています。最後に、大学で学ぶ機会を喜ん で与えてくれている両親に、心からの感謝を示したいと思います。ありがとうございまし た。
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参考文献
[1] H. F. Hofmann, Phys. Rev. A vol. 96, 010101( R ), 2017
[2] Amnon Yariv 光エレクトロニクス 基礎編 原書5版 丸善株式会社(2000) [3] 中島 洋 Excel でできる光学設計 第3版 アドコム・メディア株式会社(2015) [4] Joseph W. Goodman フーリエ光学 第3版 森北出版株式会社(2012)