仮性小児コレラに関する研究 第2編実験的研究
金沢大学医学部小児科学教室(主任 佐川一郎教授)
川 村 昭 二
(昭和34年6月26日受付)
緒 論
昭和33年日本小児科学会総会で嘔吐および白色下痢 便を主徴とする「仮性小児コレラの本態について種々 討議された.本症は明治43年伊東1)により「離乳二四 に母乳栄養児において,嘔吐および白色下痢便を主徴 とする予後良好なる疾患」として発表され,その後出 田,無主2・3・4)により詳細に研究されて,本症は患児下 痢便中にみられる腸球菌による乳魔感染症と断定され た.つづいて弘,富田両氏5)により熊本市本荘乳児院 で本症が収容児14入中11人に発症し,インフルエンザ・
ウイルスによるものと発表され,その後加藤 ゆ,鈴 木8),皆川9),笠原10), 坂本11)および田坂12)等も乳児院 集団発生を発表した.以後本症の本態について集団発 生例および院内感染例等をあげて,ウイルスによる感
染であることが強調されてきた5・7・11・13・14・i5・16・17・18).
他方寒冷刺戟による自律神経障碍を主張する遠城寺19)
がある.
私は昭和32年及び昭和33年に金沢市内の乳児院に2 年連続して冬期に本症の集団発生を経験13・1 ・16)した.
この集団発生患児の典型的白色下痢便のSeitz・EK濾 液を幼若モルモットの十二指腸内に注入し,次にこの 動物の肝臓Seitz・EK濾液および血清を別のモルモ
ットの腹腔内に継代的に注入し,この動物の脳,心臓,
肺臓,肝臓,胆嚢,膵臓,脾臓,副腎,腸間膜根淋巴 腺および消化管で病理組織学的検討を試み,仮性小児 コレラ患児の剖検例11・20・21・22)と比較し,本症の本態 について,いささかの知見を得たので報告する.
実 験 材 料
高原糞便濾液・生後1年1ヵ月の患児(昭和32年集団 発生例)より得たものである.3日前より軽度に咳噺を 認めたが,食思および機嫌は良く,他の収容児と普通に
遊んでいた.発病前日より食思やや不振となり,就眠 時に不機嫌で寝付きが悪かった.発病当日朝に突然嘔 吐し,同時に白色下痢便を認めた.大便は酸臭強く,
血液とか膿を混じないが少量の粘液を混じた水様ない し泥状で6回の排便をみた.培養により腸球菌を認め た.発病4日目に三冠さらに顔面にチアノーゼと軽度 の鼻翼呼吸があり,脈搏は微弱となり,全身状態は悪 くなったが,胸部は打,聴診上に異常所見は認めなか った.発病8日目より全身状態が改善された.本患児 の発病当日の白色下痢便を約40%に含むように生理食 塩水に混合,振出後一30。Cで凍結し,ついで融解す ること3回行った後に.遠心して,その上清をSeitz−EK で濾過し,その濾液にStreptomycin 10mgを1ccに
混じた.
伊:東糞便濾液:生後11カ月の訳詞(昭和33年度集団 発生)より得たものである.数日前より夜間に軽度の 咳徽あり,2日前より少量の粘液を混じた不消化軟便 を1日に2回あり,気温の低下が甚だしく降雪をみた 12月30日に突然嘔吐があり,白色下痢便となった.体 温は37.5。Cで比較的元気であり,腹部に軽度にグル音 を触知した.6回の白色下痢便と1回の黄色下痢便を 認めた.膿および血液は認めなかった,発病9日目に 全治した.本患児の発病日の白色下痢便を高原糞便濾:
液と同様に処理して使用した.
中島糞便濾液:生後1年3カ月の患児より得たもので ある.2臼前より鼻閉と扁桃腺の発赤腫脹があり,前日 より咳轍があった.発病当日朝より嘔吐5・回,泥状便 13回となり,不機嫌で睡眠は障碍されていた.発病4日 目に白色泥状便を工0回認めた.発病10日目で本症は軽 快した.患児糞便よりグラム陽性の球菌を純培養のよ うに証明した.本患児の白色下痢便を高原糞便濾液と 同様に処理して使用した. (昭和31年12.月に入院した 患児)
AStudy of Pseudocholera infantum, Part]I Experimental study. Shoji:Kawa:mura D・p鍵tm・nt・f P・di・t・ics,(Direct…P・・n. S・g・w・), S・h・・1・f M。di,鵬University。f
Kanazawa
72 ノーー
武糞便濾液=生後11カ月の面差より得たものであ る.昨日より嘔吐1回と少量の粘液を混じた白色泥状 便があり,今朝より38。Cの発熱を認め,嘔吐と白色下 痢便が頻回となり,夜10時頃に外来を訪れた.全身倦 怠が強く,意気消沈し,脱水症状を軽度に認め,心悸 昂進とグル音を認めた.翌日より嘔吐と白色便は消槌 し,3日目に軽快した.本患児の白色下痢便を高原糞 便濾液と同様に処理して使用した
なおウイロサイトは最高,高原8.0%,伊藤3.0%,
中島3.0%,武2.0%に認めた.
実 験 動 物
1009前後の体重の幼若モルモットで白血球増加症 特に好中球増加症,リンパ球増加症およびウイロサイ
トの有無を2回下血してから用に供した.
実 験 方 法
動物を背面に固定して,胸腹部を剃毛して後にマー キュロクロムおよびアルコールで消毒する.勢刀で中 心線よりやや右方に1・5から2.Ocmの切開を縦に入れ る.時に側腹の動脈また静脈をみるがこれを避けるよ うにして腹膜を残す.切開創を3等分するように2本 の糸を通して,糸を弛ませて切開野より外方に出して おく.腹膜を切開して胃の幽門部より1cmから2cm の部位に砿または%注射針で濾液を動物の体重1009に 1ccの割合に十二指腸内に注入する.遠野にPenicillin を撒布する,先に通した糸で縫合する.高原および伊 藤糞便濾液を上述のように十二指腸内に注入したモル モットを14日に心臓から採血して出血死させて,その 肝臓の一部を一30。Cで凍結させ,磨砕後に20%の割合 に生理的食塩水で混合,さらに一300C凍結,融解した 後遠心してその上清をSeitz−EK濾液として1ccにStrep・
tmycin 10mgを入れて次回の注入液とした.この注 入液を腹腔内に注入して,その動物の肝臓の一部から さらに前述のようにして注入液を作り,継代を行った.
患児糞便濾液を十二指腸内へ注入した動物の14日目 の心臓から採血した血液の血清を分離し,1ccにStrept・
mycin 10mgを混入し一30。Cに保存し,用に臨み肝 臓濾液と同様に腹腔内に注入した.その動物の14日目 の心臓血液を同様に処理して注入液とした.以上のよ うに高原および伊藤糞便濾:液は第1図に示すように肝 臓濾液および血清を腹壁の消毒した動物体重100gに 1ccの割合で%〜%注射針で腹腔内に注射して4代に わたり継代した.1代に動物を2または3匹使用した.
中島糞便濾液を前述のように十二指腸内に注入後14 日目に心臓採血して,その動物の盲腸内糞便を患児糞
村
営 1 図
1
∬
皿 Iv
高原・伊藤,白色下痢便濾液 を十二指腸内に注入 1 ↓
分離した血清を 腹腔内に注入 ↓ 同 上 ↓ 同 上 ↓ 同 上
第 2 図
↓ 肝臓濾液を腹腔 内に注入 ↓ 同 上 ↓ 同 上 ↓ 同 上
中島白色下痢便濾液を 十二指腸内に注入 1 ↓
分離した血清を 腹腔内に注入
三十 糞の の物入 内動注 上←腸骨に← 盲願事 同 のを腸 物液指 動濾二
便と同様に処理し,濾液として注入液とした.これを 健康動物の十二指腸内へ体重1009に1ccの割合で 注入し,またその動物の盲腸糞便濾液を同様に十二指 腸内に注入した.他方心臓から採血した血液の血清を 腹腔内に注入した.以上第2図に示す通りである.
武糞便濾液は動物の十二指腸内に体重1009に1cc の割合に注入した.しかし継代はしなかった.生理 食塩水を腹腔内または十二指腸内に体重100gに1cc の割合に注入したものを対照とした.
上記の患児糞便濾液,肝臓濾液,血清および生理食 塩水等の被接種動物の白血球数,淋巴球数およびウイ
ロサイト数を注入日を0日として3,7,10,14日と 検索し,接種3日前,1日前と比較した.
病理組織標本は被接種動物の脳,心臓,肺臓,肝 臓,胆嚢,膵臓,脾臓,腎臓,副腎,腸間膜根淋巴腺 および消化管を取り,型の如くフォルマリン固定,パ ラフィン包埋をしてヘマトキシリン・エオジン染色を した.他にズダン皿染色とメチルグリーン・ピロニン 染色を肺臓,肝臓,膵臓,脾臓および腎臓に行った.
実 験 成 績
白血球数と淋巴球数の変遷とウイロサイトの出現に
ついて :
患児白色下痢便濾液を十二指腸内へ注入した動物に ついて第1表に.示すように,白血球数は注入3日目に 11例中9例に.500〜2,600の増加があり,増加の傾向 を示すが注入7日目以後では増減500以上の例数は少 なく注入前と大差はない.淋巴球数の増減500以上に
ついてみると,注入3日目に増加2例,減少6例で淋巴 球数の減少の傾向があり,注入7日目に増加4例,減 少3例で,注入10日目に増加4例,減少1例,14日目 に増加2例,減少4例で注入前と7日以後は大差はな い.ウイロサイトは7日目に総数152〜315の出現を5 例,10日目に総数108〜275の出現4例あるが半数以下
である.
肝臓濾液を腹腔内に注入した動物について第2表に 示すように,白血球数は注入3日目に11例中9例に 1,000〜4,000の増加があり, 7日目に7例に500〜
3,500の減少,10日目に6例に500〜3,200コの減少で 注入3日目に増加の傾向があり,注入7,10日目に減 少の傾向があり,14日目は大差はない.淋巴球i数500 以上の増加についてみると注入3日目に増加4例,減
少3例,注入7日目に増加6例,減少1例,注入10日 目に増加4例,減少3例,注入14日目に増加3例,減 少2例で7日目にやや増加の傾向がある.ウイロサイ トは注入7日目に総数33〜250出現を7例,注入10日目 に55〜160の出現を4例で7日目に出現傾向がある.
血清を腹腔内に注射した動物について第3表に示す ように白血球数は注入3日目に14例中11例に500〜
4,900の増加があり,7日目以後に増減の変化は少な い.淋巴丁数についてみるに,注入3日目に増加2 例,減少3例,注入14日目に増加1例,減少4例で7
日目にやや増加の傾向がある.
中島糞便濾液を十二指腸内へ注入した動物の旨腸内 糞便濾液を別の動物の十二指腸内へ注入した場合には 第4表に示すように,白血球数は注入3日目に4例の
第 1 表 患児白色下痢便Seitz−EK濾液を十二指腸内に注入した群
株陣物1
1−31−11・
3 7 10 14武
中島高原
伊
藤 a
b
a
b
C
a
b
C
a
b
C
数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ寸意ウ 数数数 ト三焦イ サ血巴ロ イ白楽ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ戯言ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白馬ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ二巴ロ イ白月ウ 数数数 ト野球イ サ血忌ロ イ白淋ウ
5,500 2,750 0 8,000 4,200 0 4,300 2,712 0 7,200 2,844 0 9,200 6,900 0 6,000 3,180 0 6,400 2,560 0
OKり001002U
︻りΩ4
7,600 3,952 0 3,300 1,683 0 6,600 3,936 0
5,800 3,045 0 7,600 3,686 0 3,500 2,695 0 8,000 2,920 0 8,500 4,548 0 5,800 3,219 0 6,800 2,856 0 5,400 2,430 0 7,600 3,420 0 3,300 1,749
0 7,300 3,796 0
注入日
同 上 同 上
同
上
同
上
同上同
上
同
上
同
上
同
上
同
上
6,900 2,415 0 10,000 6,500
0
4,000 2,720 0 9,000 2,295 0 6,300 3,465
63
7,000 2,240 0 8,000 2,080
40
7,300 1,971
0 7,000 3,150 0 5,900 2,596 0 8,000 3,686 0
7,500 5,025 0 8,000 5,920 0 3,500 2,450 0 6,000 2,200 0 9,000 5,580 315 5,700 3,192 0
000
00霞UOOOり召声UΩ4
6,200 3,100 186 5,400 2,880 162 4,800 2,736 0 6,000 1,260 210
6,500 3,250 0 5,600 3,976 0 3,800 2,418 0 5,000 2,700 0 11,000 5,610
275
8,000 4,560 0 6,000 2,220 120 6,000 3,180 0 5,400 4,050 108 6,300 5,040 0 7,000 1,530
140
00000ρU只りΩ4
ほ〜00
010
04引14QU農U
4,500 2,160 0 7,500 2,888 0 8,500 3,655 0 8,700 4,450 0 7,000 1,995 0 7,000 2,942 0 6,500 3,315 0 2,800 1,428 0 9,200 1,840 0
74 ノーー
村
うち3例に1,000以上の増加があり,7日目以後は注 入前と大差ない,淋巴丁数について注入7日目に4例
中2例に700〜1,300の増加がある.ウイロサイトは1 例に7日目に認める.
生理食塩水を腹腔内ま九は十二指腸内に注入した動 物については第5表に示すように白血球数は500〜
1,000と3例中2例増加を注入3日目にしているが,
淋巴引数には大差なく,ウイロサイトは1例もない.
病理組織標本
乳児院集団発生のときの患児の高原と伊藤および当 科入院三児中島,外来上肉武らの白色下痢便濾液を十 二指腸内へ注入した動物,肝臓濾液を継代して腹腔内 へ注入した動物,血清を継代して腹腔内に注入した動 物,一三糞便濾液を注入した動物の盲腸内糞便濾液で
継代して十二指腸内に注入した動物の4者に分けて動 物の病理組織所見を記載する.
1)患児糞便濾液を十二指腸内に注入した動物 脳:極く少数例に軽度の充血を脳膜に認める.全 例に.細胞浸潤,変性,壊死巣等の異常はない.
心騰筋層に小円形細胞浸潤を歩く軽度に少数例に.
認めるが,変性,筋断裂,壊死等はない.
肺臓:褐赤色ないし桃赤色を呈して充血が強く褐白 色の斑が散在している.触診上多少抵抗がある.肺浮 游試験で浮上する.肉眼的に出血および壊死はない.
顕微鏡的には全例に気管:支,肺胞内に滲出液または細 胞浸潤等を認めないが,肺胞胞隔に充血,大単核細胞浸 潤,細胞増生による胞隔の変化が主である.胞隔の著 明の充血が減じて行くに従ってピロニン好染性大単核 細胞が増加している.この細胞は離見能が強く,赤血 第2表肝臓Seitz・EK:濾液を腹腔内に継代注入した群
釧代醐 1−31−1・i・ 3 7 10 14
高
原
伊
藤
1
皿
皿
IV
1
皿
唐
国
a
a
b
a
b
a
a
b
a
a
a
数数数 ト球球イ サ血出撃 イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ皇国ロ イ全盤ウ 数数数 ト歯学イ サ血巴ロ イ全野ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 地球数 ト球数イ サ血巴ロ イ白亜ウ 数数数 ト球球イ サ血腫ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球帯イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ鉢活ロ イ白磁ウ
8,000 3,040 0 6,500 4,875 0 6,800 3,536 0 7,500 1,950
0
000
0ρ041ぼりΩ4 0ρunUO4ρ00
ρ09召
5,200 2,080 0 4,800 1,920 0 7,800 3,900 0 8,500 4,165 0 7,800 1,794 0
8,500 3,410 0 6,700 4,824 0 6,500 3,055 0
ハUρ000000ー
ワ﹂り甜 04豆00鑑り厚〜民U
ρ09召
7,000 2,590 0 4,800 1β24 0 5,000 2,100 0 7,500 2,300 0 8,000 3,840 0
OnOOOワ800Kり0004 注入日同上同上同上同上同上同上同上同上同上同上
7,000 4,550 0
0﹂40004匿り
00Ω4
5,900 3,127 0 6,500 1,560 0
OKUOnU9召ワ5■4
qU9召
8,800 4,048 0
OAUAUOρ009耐ρ01
7,000 1,750 0
0慶UO︵U﹂4屡01晶0000
12,000 5,254
0
11,000 3,300
0
5,000 4,000 250 4,800 3,456
96
6,200 4,898 186 4,800 2,064
96
7,200 3,240 0 7,500 3,450 0 3,300 2,327
33=Uり召 00ーユ ハUり封
000
7,000 3,500 140 8,000 4,800 0 7,000 3,500 140
8,000 3,280 160 6,500 2,700 0 6,500 4,686 130 3,800 1,596 114 7,000 2,450 0 3,800 1,2正9
0 4,400 3,212 0 5,500 2,750
55
6,800 2,924 0 7,500 4,950 0 6,300 3,780 0
8,500 3,400 0 7,000 2,940 0 6,700 4,046 0 8,600 3,096 0 7,100 2,698 0 5,800 1,450 0
AリハbnUO75400
﹃004
5,300 2,385 0 7,500 3,825 0 7,300 3,869 0 7,000 3,180 0
球の負二二を散見する.充血がほとんどなくなり,胞 隔が2層さらに4層と亀甲状に重層し,大単核細胞の 浸潤と旧く少数の多核白血球の浸潤のある胞隔炎の像 を示す(写真2・3・4,5,6,7).間質に.おける血管 と気管支周囲に小円形細胞を主体とした細胞浸潤を呈 した例が1例あった(写真8).全例に好中球または好 酸球の反応は強くなく,化膿巣または壊死巣はない.
肝臓:赤褐色で硬度は中等度で,割面は細血管充盈 を認めるが,肉眼的に出血巣および化膿巣はなく,点状 に白褐色の変性部と思われる部分があった.顕微鏡的 には中心静脈め血管充盈が中等度にあり,肝細胞索の 異常はないが,索間に軽度の赤血球充盈と,Sinusoid の軽度の拡大があり,血管内皮細胞と星芒細胞の肥大 増生がある.細胞胞体は円形状にSudan皿で染まる
.第3表血清を腹腔内に継代注入した守
株1代閾 ト3卜1・[・ 3 7 10 14
高
原
伊
藤
中島
1
﹈1
皿
IV
1
五
皿
IV
1 a
b
a
b
a
b
a
a
b
a
b
a
a
a
数数数 ト球球イ サ三巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト湿球イ サ三巴ロ イ白魚ウ 数数数 ト球球イ サ二巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト湿球イ サ二巴ロ イ二品ウ 数数数 ト球心イ サ二巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血島上 イ白魚ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白上ウ 数数数 ト門守イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白淋ウ
6,500 2,795 0 7,500 3,525 0
000
0慶UOO18沼張5,500 2,750 0 5,400 2,160 0 3,800 1,026 0 3,500 1,575 0 4,000 1,880
0 3,400 1,598 0 6,500 2,730 0 4,800 2,472 0 5,200 2,496 0 8,900 3,382 0 7,000 3,395 0
6,500 2,990 0 7,600 3,572 0 8,500 3,655 0 5,300 2,703 0 6,700 2,881 0 4,200 1,680
0 3,200 1,248 0 4,200 1,974
0 3,400 1,666 0 6,700 2,781 0 5,000 2,525 0 5,600 2,520 0
00nUOOO84
QりqU
6,700 3,216 0
注入日同上同上同上同上同上同上同上同上同上同上同上同上同上
6,000 1,200 0 6,000 2,040 0 9,000 1,620 0 6,000 1,980 0 4,800 2,400 0 8,700 5,046 174 6,200 1,426 0 5,500 1,705 0 4,900 1,519 147 8,000 2,600 0
0000000貿UO乙
膏Uり召
7,500 3,075 0 14,000 4,200
0
8,300 2,905
42
5,000 2,250
425
輸4,000 1,320
80
7,800 3,978 234 5,000 2,250 150
000
ハUlQUOOO9召
4,500 2,385 0 3,000 2,0玉0
90
3,800 2,584
76
6,300 2,772
63
6,000 3,900
90
5,300 2,226 0 5,100 3,060
77
10,000 4,200
200
5,800 3,770 145
6,000 2,こ86
90
6,400 3,968 0 7,000 4,130 0 7,000 2,450
70
5,000 2,000 0 4,800 1,344 0 4,200 1,512
0 6,000 3,200 0 7,200 1,944 0
00η404βU
厚σ民Uρ04
4,500 1,958 0 6,300 2,040 0 8,700 3,741
87
AU﹃09召0ハOqUOO4nOO◎
7,000 2,800 0 7,000 2,660 0 8,400 2,646 0 6,800 2,176 0 6,100 2,806 0 5,000 1,350
0 4,200 1,134 0 5,000 2,700 0 6,000 1,860 0 6,500 2,925 0 5,000 2,475 0 5,800 2,030 0 9,000 3,870 0
ハUOOO︵U厚JQUー
ワ500
76 ﹂ーー
村
脂肪変性部位のあるもの,空胞変性と思われりるもの を認めた.数十で二十状に類壊死または壊死となり,
核崩壊像と胞体のピロニン染色性の低下がある.2 例にグリソン上鞘に軽度の円形細胞の浸潤があった.
結節形成,化膿巣および壊死部の周囲の細胞浸潤はな く,好中球の反応もない(写真9,10,11,12)・
脾臓:褐紅色をなし,小さくやや硬くふれる.割面 は濾胞分明で軽度に充血している,顕微鏡的には濾胞 の周囲に軽度の充血があり,濾胞中心は細網細胞の増 生により淡明である.また濾胞周囲の充血なく濾胞中 心の淡明部が拡大して濾胞が崩壊しているようになっ ている.赤色髄は軽度から中等度に充血し,細網細胞 の増生が甚だしく,負喰能は昂進し,喰細胞化したピ ロニン好染性の大単核細胞の出現がある.好中球,好 酸球の浸潤はなく,化膿巣,変性また壊死巣は認めな い(写真13,14,15,16).
膵臓:淡紅色をなし,全般に充血が強く脆い感じを 与える.肉眼的に出血巣,化膿巣および壊死巣はない.
顕微鏡的には実質細胞が小葉葉全体に壊死また類壊死 の状態となり,細胞胞体のピロニン染色性の低下と核 染色重合度の低下を認める.この部の周囲に細胞浸潤 はなく,健全部と接している.ラングハンス島は崩壊
により減少している.脂肪変性を起しているところも あるが細胞浸潤は旧く軽度である.好中球の反応はな い(写真19,20,21).
腎臓:紫赤色を呈し,割面で両質境界分明にして充 血は軽度にあるが化膿巣,変性部位はない.顕微鏡的 に細血管充盈がある.糸毬体内の赤血球充盈は軽度で ある.細尿管上皮細胞のピロニン染色性と核染色重合 度の軽度の低下のある部分もあるがほとんど正常であ る.全例に化膿巣,壊死巣および細胞浸潤はない(写 真22,23).
副腎:皮髄質の境界は分明である.皮質細胞に空胞 変性のあるものがある.髄質に小出血がある.化膿 巣,壊死巣および細胞浸潤は認めない(写真27).
胃及び腸管:胃粘膜に充血,出血はなく,また粘膜 十七も肉眼的所見はない.小腸上部の粘膜は軽度から 中等度に充血と浮腫を認めることが多い.盲腸と大腸 は異常を認めない.顕微鏡的に胃粘膜下組織に円形細 胞の浸潤像を認めた例はあるが大多数例に認めない
(写真23).全例に軽度の細血管充盈を認める.小腸で は孤立淋巴小節及びPeyer氏板の髄様の腫脹が著明 である.細網細胞の増生が甚だしく淋巴装置内の淡明 部が散在する.この腫脹部において小円形細胞浸潤が 第 4 表 動物盲腸内糞便Seitz−EK濾:液を十二指腸内に継代丁丁した群
代品物[ 1−3卜1i・ 3 7 10 14
1 a
b
皿
a
b
数数数 ト球球イ サ二巴ロ イ白雪ウ 数数数 ト球心イ サ血虚根 イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ白鳳ウ 数数数 ト球球イ サ血巴ロ イ味淋ウ 0滞り00Ω4ワ50Kりり召
8,200 2,829 0 7,300 3,030 0
000
044Kuρ015,300 1,643 0
0800nδにUO
ワ8Ω0
8,300 2,998 0 6,700 2,345 0
注入日同上同上同上
6,500 1,658 0
0Ω400匿りρ09召
QU9召
6,800 2,414 0 8,000 2,040 0
5,900 1,800 0 8,000 4,360 120 8,200 3,116 0 7,300 3,029 0
5,000 1,825 0 7,800 2,808 0
000
0000800 OQUOO4800nOO乙 0ワ800β05nOぼり一 0000ρUO1800
7,800 2,769 0 6,500 2,340 0 第5表生理食塩水を腹腔内また十二指腸内に注入した群
1−31−11・
3 7 10 14腸内十二指 腹腔丙 a
b
数数数 ト野球イ サ血巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト気球イ サ三巴ロ イ白淋ウ 数数数 ト球球イ サ血忌ロ イ白湯ウ
5,800 2,813 0 6,500 2,568 0 6,500 2,373 0
6,200 2,790 0 6,300 2,583 0 7,000 2,835 0
注入日同上同上
7,000 3,045 0 6,900 2.415 0 7,300 2,343 0
000
000n◎9召ρ000
6,800 2,745 0 6,5UO 2,763 0
6,300 2,741 0 6,800 2,890 0 7,000 2,800 0
6,300 2,804 0 6,500 2,568 0 6,500 2,470 0
強い.また粘膜上皮は類壊死様になって剥離している 例もある.大腸と盲腸は病的所見がなかった.
腸間膜根淋巴腺 米粒大から大豆大に腫脹して軸心 部は凹漏して紅色を呈して,割面においても出血巣が ある.顕微病的には全例に洞出血がある.細網上皮細 胞の増生とピロニン好染性の大単核細胞の増生があ る.濾胞は細網細胞の増生により淡明となっている
(写真17,18).
胆嚢及び胆管 異常所見はない,
経時的観察:
高原,伊藤糞便濾液を十二指腸内に経時的に注入し た。注入日を0日として3,7,10,14,21日と肺 臓,肝臓,脾臓,腸管,淋巴腺および胆嚢について病 理組織学的検索を行った.
肺臓・
3日 胞隔に軽度の充血があるが肺胞内に滲出液は ない.気管支周囲に軽度の小円形細胞浸潤がある.ピ ロニン好染性の胞体を有する大単核細胞は極く少数に 胞二品にある.
7日 胞隔に中等度から強度の充血があり,小円形 細胞,大単核山脚の浸潤がある.大単核細胞は三二能 が昂進している.肺胞内に滲出液および細胞浸潤はな い(写真2,4).
10日 肺胞胞隔の充血が軽快しているが,大単核細 胞の浸潤が強く,負喰能が昂進して肺胞内,胞二二に 鳥喰像を認める.二流が2層になって厚くなってい る.気管支,肺胞内に滲出液はない.好中球の反応な く化膿巣はない,壊死巣もない(写真5).
14日 肺胞二品細胞が増殖して2層から4層とな り,肺胞が小さくなっている.充血はほとんどなく,
大単核細胞の浸潤が軽度である,気管支,血管周囲に 細胞浸潤はない.肺胞内に滲出液はなく,化膿巣,壊 死巣もない(写真6,7).
21日 胞隔性肺炎はなお存在するが細胞浸潤はな く,胞核細胞核のクロマチンが粗になっているところ がある.
肝 臓3
3日 肝細胞索は正常である.星芒細胞と血管内皮 細胞は軽度に肥大増生している.肝細胞は穎粒状に変 性して核は大小不同がある.空胞変性,脂肪変性はな
く,類壊死,壊死巣もみない.細胞浸潤はない.
7日 中心静脈の血管充盈がある.細胞索は乱れて いないが細胞瞬間のSinusoidはやや拡大している.
血管内皮細胞と星芒細胞は肥大増生している.肝細胞 は空胞変性または脂肪変性を認め,核の大小不同と軽 度の核融解像がある.細胞浸潤はグリソン畑谷に極く
軽度にある.好中球の反応はなく,化膿巣ジ結節,壊 死はない.
10日 肝細胞が島歯状に類壊死また壊死の部をみる が健全組織との界に細胞浸潤はない.肝細胞はピロニ ン染色性が低下して胞体に空胞また脂肪変性の像が強 い.核は大小不同と核の崩壊像がある,星芒細胞と血 管内皮細胞は肥大増生している.好中球の反応はない.
14日 核の崩壊像が10日より強く上面状に類壊死像 も増加している,Simusoidの拡大は明らかで,血管 内皮細胞,星芒細胞の肥大増生がある.細胞浸潤と化 膿巣の像はない(写真9,10,11).
21日 細血管充盈なく,肝細胞索の異常なく,Sinu・
soidの拡大もない.胞体は頼粒状であり,空胞また 脂肪変性部がある.
脾 臓:
3日 濾胞中心部は軽度の細網細胞の増生あり,や や拡大して淡明となっている.赤色髄の充血は軽度に ある.大単核細胞の食油能は昂進して赤血球の貧虚像 を僅かにみる.
7日 濾胞周囲の充血が強く,濾胞中心部の細網細 胞増多症も3日より強くなり,淋巴球の崩壊とともに 淡明部の拡大が明らかである.濾胞全体は一見拡大し てみえる.赤色髄も細網細胞増多症が強く,ピロニン 好心性の大単核細胞は昂進している(写真13).
10日 濾胞周囲の充血が減少して細網細胞の増生に より濾胞中心部は不明瞭となり,濾胞の崩壊の傾向が ある.貧血細胞化した細網上皮は赤血球または核幽境 産物を負:心している像が多い.
14日 濾胞周囲の充血はなく,濾胞の崩壊像を示す ものが多いが,他方に縮小した濾胞で中心部のないも のを散見する.細網細胞,大単核細胞は貧喰能を昂進
して,赤血球等の食喰像が赤色髄にある(写真14,15,
16).
21日 縮小した濾胞が多く,細網細胞の増生は窪く 軽度である.赤色髄の充血も幽く軽度である.
腸間膜根淋巴腺:
3日 淋巴洞に軽度の出血がある.ピロニン好染の 大単核細胞も軽度にある,細網細胞増生が軽度にあ
り,濾胞中心部はやや拡大して淡明である.
7日 細網細胞の増生が強くなり,濾胞中心部は拡 大して淡明である.濾胞周辺の充血は軽度にある.淋 巴洞の出血が強くなり,寅喰能の強い大単核細胞の貧 血像が多い(写真17).
10日 細網細胞は増生甚だしく,大患細胞化してい る.特に濾胞間の洞内皮細胞が増生し,食喰能も強く 昂進して赤血球または崩壊産物を貧出している.濾胞
78 川
の中心部は細網細胞の増生により淡明となって拡大し ている(写真18).
14日 細網細胞の増生と大単核細胞の貧二二があ る.濾胞中心部は拡大して淡明となり,周囲に軽度に 円形細胞がとりまいている.洞出血はほとんどない.
21日 細網細胞の増生は弱く,食詰像も少ない.濾 胞中心部は拡大して淡明なものと縮小した濾胞とが混 在している.
腸 管=
3日 と7日軽度の細血管充盈を認め,筋層に軽度 の単核細胞浸潤があり,淋巴小節,Peyer氏板の腫脹 が軽度にある.
10日と14日 粘膜上皮が類壊死になり剥離脱落して 粘膜と粘膜下層に小円形細胞浸潤が強い小腸部があ
、 る.孤立淋巴小節,Peyer氏板は髄様に腫脹して細網 細胞の増生により淡明となっている部分がある.脾臓 及び腸間膜根淋巴腺の像と類似している(写真2,26)
隔日 粘膜に異常なく,淋巴装置の腫脹は減じて細 網細胞の増生も軽度である.
胆嚢全経過を通じて異常所見はない.
1[)肝臓濾液を腹腔内に継代して注入した動物の病 理組織学的所見
脳:脳膜に軽度の細血管充盈があるが,脳実質の充 血,細胞浸潤,変性および化膿此等はない.
肺:胞隔に充血が中等度で,ピロニン好染性の大単 核細胞は赤血球を胞隔内または肺胞内に貧心してい る.充血が軽度で胞隔は2層から4層と厚くなり,大単 島細胞と小円形細胞の浸潤を軽度に認める.気管支内,
肺胞内に滲出液はなく,気管支粘膜の異常もない.間 質の細胞浸潤もほとんどない.継代数が進むにつれて 変化が弱く,特に3代,4代では溶出の充血が中等度 で大単核細胞の浸潤も弱く,晶晶細胞の増生がない (写真2,3,4,5,6).
心臓3異常なし.
肝臓=中心静脈の血管充盈は軽度にある.肝細胞索 は正常であるが索聞は軽度に拡大して星芒細胞,血管,
内皮細胞の増生肥大がある.肝細胞の核は大小不同と 核の融解像がある.一部では胞体は頼粒状になり,空 胞また脂肪変性により核は一方に偏している.この変 性が強く言忌状になって類壊死の像を認める.グリソ ン氏鞘に小円形細胞の浸潤が軽度にある.継代数が進 むとこの類壊死をみることが少なく,特に3代,4代 にはない(写真9,10).
脾臓:濾胞周囲に充血がある.細網細胞の増生によ り濾胞の中心部は拡大して淡明である.細網細胞の食 喰能が昂進している.濾胞周囲の充血がなく,濾胞の
村
中心部は甚だしく拡大している.各藩に反応の強弱は あるが細網細胞の増生と濾胞の変化はある(写真13・
14, 15, 16).
膵臓:腺組織の一部は脂肪変性を起している.また 小葉全体類壊死をみることが多い,ラングハンス島は 少なくなっている.細胞浸潤および化膿巣はない(写
真19).
腎臓:細尿管上皮に軽度に空胞変性があるが化膿 巣,細胞浸潤および壊死巣はない(写真22).
副腎:異常所見なし.
胃:粘膜に冠血管充盈が軽度にある.出血,潰瘍,
粘膜変性はない.筋層に小円形細胞と少数の多核白血 球の細胞浸潤がある(写真24).
小腸:粘膜の充血は上部に近いほど強く,粘膜が類 壊死状になり,絨毛上皮の脱落をみる,孤立淋巴小節 とPeyer氏板は髄様に腫脹して細網細胞の増生によ り淋巴装置内は淡明となっている.この部の粘膜下組 織,腺組織に小円形細胞の浸潤がある(写真25,26)・
大腸と盲腸=軽度に分泌昂進の像がある.充血,出 血,変性および化膿巣はない.
腸間膜根淋巴腺 洞出血がある.洞に大単核細胞の 浸潤が強く,特に濾胞間の洞内皮細胞の増生が強い.
細網細胞が増生し,大単核細胞と同じく貧喰能が昂進 している.特に濾胞中心部は拡大して淡明になってい る(写真17,18).
E)血清を腹腔内に注入して継代した動物の病理組 織学的所見
脳:脳膜に軽度の血管充盈があるが,脳実質に変 性,化膿巣,細胞浸潤および充血等はない.
心臓:心筋の断裂,変性なく,極めて軽度の細胞浸 潤が一部にある.
肺臓・肺胞内に滲出液,細胞遊出はない.肺胞隔の 充血は軽度で,ピロニン好染の大単核細胞と小円形細 胞浸潤があり,特に大単核細胞は負喰能が昂進してい る.胞島細胞は2層から4層と亀甲状になって心隔が 肥厚している.気管支に小量の滲出液があり,粘膜の 変性,細胞浸潤はない.継代数が進み3代,4代では 胞隔の充血と軽度の大単核細胞の浸潤があり,胞隔細 胞の増生による肥厚を示す像はない.各代とも胞隔に 変化がある(写真2,3,4,5,6,7).
肝臓 中心静脈,毛細管の血管充盈は軽度である.
細胞索は正常,核の大小不同と核融解像があり,胞体 は穎粒状になり,空胞変性により核が偏在している.
変性が強くなり類壊死状となった部が島嬢状に散在す る.Sinusoidに軽度の拡大かあり,内皮細胞,星芒 細胞の肥大増生がある.グリソン氏鞘には軽度の円形
細胞の浸潤がある.継代数が進むと島嘆状の類壊死像 はなく,変化は軽度である(写真9,10,11).
脾臓:濾胞周囲に軽度から中等度の充血があり,細 網細胞の増生と貧喰能の昂進がある.特に濾胞中心部 は拡大して淡明である ピロニン好望性の大単核細胞 は赤血球また崩壊産物を貧心している.また濾胞周囲 の充血がなく細網細胞の増生が強く,特に濾胞中心が 拡大して淡明となり,その周囲に軽度の淋巴球があ
り,濾胞が崩壊様の像を示す.継代数を重ねるととも に変化が減弱している(写真13,14,15,16).
膵臓:腺組織小葉及び間質組織に軽度の脂肪変性ま た類壊死像がある.細胞浸潤,化膿巣はない.
腎臓:細血管充盈を軽度に認め,細尿管上皮のピロ ニン染色性の低下部があるが,細胞浸潤,化膿巣,空 胞また脂肪変性はない.
副腎3異常なし.
胃:粘膜に軽度の細血管充盈がある.軽度の円形細 胞浸潤は筋層にある.変性および潰瘍像はない.
小腸:絨毛の細血管充盈がある.小腸上部の粘膜上 皮が類壊死状に脱落している部もある.粘膜下淋巴装 置は髄様に腫脹している.細網細胞の増生により淋巴 装置中心部は淡明になっている.この腫脹部では腺間 組織に小円形細胞の浸潤がある.
盲腸と大腸=充血,出血,細胞浸潤および変性等の 変化なく,臨く軽度の分泌昂進の像がある.
腸間膜根淋巴腺:洞出血があり,細網細胞の増生と 食喰能が昂進し,濾胞間において洞内皮細胞が増生し て洞カタルの像を示す.負喰能の強い大単核細胞の浸 潤がある.濾胞の中心部は拡大して淡明である.
皿)動物の盲腸内糞便濾:液を他の動物の十二指腸内 に注入した場合め所見
脳:脳膜の細血管充盈は軽度にある.脳実質に細胞一 浸潤,充血および変性等はない.
心臓=心筋の断裂,変性および細胞浸潤等の病的所 見はない.
出盛肺胞,気管幌内に滲出液なく,間質の気管支,
細血管周囲に細胞浸潤はない.肺胞胞隔に軽度の充血 はあるが,細胞浸潤,大単核細胞の負討論もない.ま た立直細胞の増生による肥厚もない.
肝臓:中心静脈に軽度の血管充盈がある.細胞索は 正常で,核の大小不同はあるが融解像なく,胞体は頼 粒状になっているが空胞変性は少なく,島興状の類壊 死を示さない.細胞間は軽度に拡大しているがSinu・
soidを示さない.内皮細胞,星芒細胞は軽度に肥大 している.グリソン初心に細胞浸潤はない.
脾臓:赤色髄の充血は軽度にあるが,濾胞の周囲の
充血なく,細網細胞の増生が軽度にある.濾胞中心部 はやや拡大している.貧感能の昂進像は少なく,極く 少数に大単核細胞は赤血球を寅適している.
膵臓:脂肪変性,類壊死像はなく血管充盈のみ軽度 にある.
胃・粘膜に軽度の細血管充盈があり,細胞浸潤,ま たは変性はない.
小腸:細血管充盈が軽度にあり,孤立淋巴小節,
Peyer鉛板の腫脹はないが,細網細胞の増生により淡 明部がある.細胞浸潤,類壊死,上皮剥離等はない.
盲腸と大腸:全く変化なし.
腎臓:細血管充盈が軽度にある以外に異常なし.
副腎;異常なし.
胆嚢:異常なし.
IV)生理食塩水を十二指腸内また腹腔内に注入した 動物の病理組織所見
諸臓器に細血管充盈がみられるくらいで変化なく,
動物の盲腸内糞便濾:液を他の動物の十二指腸内へ注入 した病理所見とほぼ同様である,
総括と考按
昭和32年と昭和33年の冬期に同じ乳児院で仮性小児 コレラの集団発生を経験した.初期には大多数霊化ま たは鼻汁等の上気道感染症状を示し,嘔吐と甘酒用下 痢便が主徴であった.この集団発生の患児と当科入院,
外来患児の白色下痢便を40%の割合に生理食塩水に混 合して一30。Cに凍結後に融解して遠心上清のSeitz・EK:
濾液として幼若モルモットを開腹し,十二指腸内へ体 重1009に1ccの割合に砥〜%の注射針で注入した.
その後3,7,10,14日に面謝をして,心臓採血によ り屠殺した.その臓器(脳,肺臓,心臓,肝臓,脾臓,
膵臓,腎臓,副腎,消化管,胆嚢,腸間膜根淋巴腺)
をホルマリンまたはアルコールで固定し,ヘマトキシ リン・エオジン,メチルグリーン・ピ1コニン,ズダン 皿の染色により組織標本を検した.さらに上記濾液を 注入した動物から採取した肝臓濾液と血清を他のモル モット腹腔内に注入して4代継代した.また上記濾液 を十二指腸内に注入された動物の盲腸内の糞便から濾 液を作り,これを別の動物の十二指腸内へ注入し,こ れを反覆した.生理食塩水を腹腔内または十二指腸内 へ注入して対照とした.これら動物の臓器を同様にし て病理組織標本を検した.
毒血により注入3日目に白血球数がやや増加してい るが対照でも増加している.注入7日目に比較的また 軽度の絶対的淋巴球の増多症がある.泉23)のいうウイ
ロサイトは半数近くに低率に出現している.対照例で は少数ではあるがウイロサイトをみない.日比野24)は