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第 56 回アメリカ生物物理学会 Biophysical Society 56th Annual Meeting

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Academic year: 2021

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─ 368 ─

(  ) 東医大誌 70 (3) : 368

-

369, 2012

学会参加記

第 56 回アメリカ生物物理学会 Biophysical Society 56 th Annual Meeting

田 代 倫 子 Michiko TASHIRO

東京医科大学細胞生理学講座

1   2012 年 2 月 25 日より 2 月 29 日までアメリカ合 衆国カリフォルニア州サンデイエゴで開催された Biophysical Society 56

th

Annual Meeting に参加しまし たのでご報告いたします。

 生物物理学会は医学部の先生方にとっては身近で ないかもしれませんが、細胞生理学の研究者にとっ ては非常に興味深い学会です。細胞内蛋白構造、膜 輸送、蛍光シグナリング、分子生物学、生物工学な どプログラムは多岐に渡り、朝 8 時から夜 10 時ま でワークショップが続きます。ポスター会場も盛況 で、示説時間以外でもポスターを見て歩いていると 若いポスドクがすぐに寄って来て説明してくれま す。9400 人以上の学会員のうち 35% はアメリカ以 外の研究者だそうで、アジア圏からの参加者も目立 ちます。中国、インドからの参加者などは、英語が 母国語でなくても、ポスターの前で積極的に説明し

たり質問したりと、彼らの勢いには頭が下がります。

この学会では、研究の手法、発想、やる気など多く の刺激を受けるだけでなく、アメリカの、つまりは 世界の研究の動向も窺えます。今年は、細胞内では よりミクロに進む傾向が見られ、 1 分子( single

-

mol-

ecule ) 蛍光分析法を用いた分子間相互作用の研究が

多く発表されていました。一方で、脳科学の分野な どはよりマクロに統合的な制御系の解明が進んでい るように感じました。

 私は「心室筋細胞における生理的 Mg イオン流入 経路」と題したポスター(共同演者 : 細胞生理学講 座 小西真人主任教授、井上華講師)を発表しまし た。細胞内 Mg ホメオスタシス維持機構を検討する ために、ラット心室筋単離細胞に蛍光色素法を適用 し、細胞内遊離 Mg イオン濃度([ Mg

2+

i

)を測定 します。細胞内への Mg の取り込みはとてもゆっく りで、汲み出しを抑えて細部外液の Mg 濃度を 20 倍にしても、 1 時間で 0.2 mM 程度しか上昇しませ ん。ところが、予め細胞内濃度を低くしておくと、

[ Mg

2+

i

が急激に元に戻ります。この時の Mg 流入 による[Mg

2+

i

上昇の過程を、時間に対する指数関 数で近似し、時間 0 の時の微分値を Mg 流入速度と して見積りました。 Mg 流入速度は、[ Mg

2+

i

が低 い と き は 速 く、 細 胞 膜 の 脱 分 極 で は 遅 く な り、

2

-

APB ( 2

-

aminoethoxydiphenylborate )、 spermine で 濃度依存性に阻害されました。Mg 流入時に観られ たこれらの性質は、哺乳類細胞における Mg

2+

流入 経路の候補分子の一つである TRPM7 チャネルの性 質と一致している可能性を示唆しました。TRP チャ

写真 1 会場から見たサンディエゴ湾

(2)

第 56 回アメリカ生物物理学会 ─ 369 ─ 2012 年 7 月

(  ) ネルの制御については本学会でも注目されているの で、演題も多く出ていました。論文を読んで知って いる Dr. J.A. Kozak と実際に会い、彼の発表につい て質問したり、自分の仕事について紹介したりしま した。ポスター会場は特に質問し易い上に、仕事熱 心な有名な先生ほど好意的で、ポスターの傍にいる ことが多いと思います。米国留学中のボス (Dr.

Joshua R. Berlin ) もそうした熱心な先生です。小西 教授の親友のお一人ですが、ワークショップの合間 に軽いデ

ナーを摂りながら、実際のデータを丁寧 に見て下さいました。そしていつも通り、多くの助 言を下さいました。海外の一流の研究者に直接会っ て、自分の仕事について討論できることは、学会参 加の一番の収穫だと思います。

 サンディエゴはカリフォルニア州の南端に位置す る、海軍基地の街です。2 月でも日差しは柔らかく 降り注ぎ、海からの風が心地よい気候です。学会が 多く招聘されるためか、街は分かり易く整備され、

人は学会の客を持て成すのに慣れていて安心感があ ります。目貫通りや学会周辺の海辺にはレストラン が並びます。メキシコ料理やシーフードが特に美味 しく、コロナビールとカリフォルニアワインが自然 と進んでしまいました。今回は一人旅で 2 年ぶりの 米国でもあり、出発前はやや緊張していましたが、

日本からの参加者や米国に留学中の日本人に会い、

楽しく過ごせました。最終日には順天堂大や京大の 先生方と 5 人でトロリーバスに 40 分位乗り、メキ シコ国境まで足を延ばしました。海軍の軍艦や戦闘 機を車窓から眺めながら、席が隣になった現地のお じさんに「メキシコは殺人、窃盗など怖い所だ。」

と脅され、躊躇しながらも初めてメキシコに足を踏 み入れました。遅めのランチを食べて、はしたない ほど値切って素敵なポンチョを買ってきました。

 最後に、今回発表した研究と学会参加には、東京 医科大学科研費フォローアップ助成金を使わせて頂 きました。このような機会を与えて下さいました東 京医科大学関係者の皆様、細胞生理学講座の教室員 の方々に深く感謝申し上げます。今回得たものを、

研究、教育に生かせるよう精進して参りますので、

今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げま す。

写真 2 発表したポスター

2

参照

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