D S D
長崎大学病院 薬剤部*
佐々木 均
*・兒玉幸修
*Advancement of the gene and nucleic acid medicines from a standpoint of healthcare needs
The gene and nucleic acid medicines have attracted attention as novel drugs by advance of molecular biology and genetics. The gene and nucleic acid medicines are used to age-related macular degeneration and spinal muscular atrophy in clinical practice. However, it is not enough for gene and nucleic acid medicines to integrate the information on quality and safety. Their target diseases and administration routes are limited by low bioavailability because of low stability and poor membrane permeability. Clinical development of gene and nucleic acid medicines need to integrate non-clinical and clinical information and create adequate regulation. It is also necessary to develop chemical modification and DDS for the gene and nucleic acid medicines to increase the stability and organ delivery. Many studies have not produced practical DDS for gene and nucleic acid medicines. Safety and biocompatibility of DDS are very important for clinical use.
Most DDS has been developed by the seeds, not healthcare needs. So, we have developed the multi-functional and effective DDSs (Nano-ball) constructed with safe materials of medicines and foods. The spleen targeting Nano-ball have been developed to show its high efficiency as cancer vaccine and infectious vaccine after extensive screenings. siRNA Nano-ball showed therapeutic effect against metastasis of melanoma and peritoneal dissemination of colon cancer in mice. The lung targeting Nano-ball showed a relationship between Nano-ball contents and organ distribution.
Nano-ball was able to be prepared by sterilized mass production. Early clinical use of Nano-ball is expected because of their efficacy and safety. We would like to discuss advancement of the gene and nucleic acid medicines from a standpoint of healthcare needs.
遺伝子・核酸医薬は安定性や膜透過性が低く、精密な標的化が難しいため、対象疾患や投与法が限 定されている。さらなる臨床展開のためには、非臨床・臨床情報を集積し、規制を整備することが重 要である。また、生体内安定性や細胞標的性、臓器選択性を付与できる化学修飾や DDS の開発が強 く望まれる。国内外で、数多くの DDS が研究されてきたが、未だ実用化は難しく、臨床使用を目的 とした安全性や生体適合性を考慮する必要がある。さらにシーズ開発が優先され、臨床ニーズとのマッ チングが不十分である。筆者らは、医薬品や食品などに使用されている安全な素材を用いて、遺伝子・
核酸医薬に適した DDS を構築した。薬理効果や毒性を検討し、その結果を製剤設計へのフィードバッ クを繰り返すことで、多機能で安全な DDS(ナノボール)を開発した。ナノボールは無菌的な大量生 産も可能で汎用性が高い。高い安全性から臨床への早い応用も期待できる。臨床現場や臨床ニーズの 立場から、遺伝子・核酸医薬の開発の課題や展望について考える。
HitoshiSasaki*,YukinobuKodama* Keywords: gene and nucleic acid, DDS, Nano-ball
医療ニーズからみた遺伝子・核酸医薬開発の 現状と展望
核酸・遺伝子医薬およびその DDS 開発研究の課題
1.はじめに
分子生物学・遺伝学の進歩により遺伝子・核酸医 薬が新たな医薬品として注目されている。臨床にお
いても加齢黄斑変性症や脊髄性筋萎縮症に対し核酸 医薬の注射薬が使用されるようになった。しかし、
遺伝子・核酸医薬は品質や安全性の情報が未だ十分 とはいえず、さらに安定性や膜透過性が低く、精密 な標的化が難しいため、対象疾患や投与法が限定さ
表1 承認済みの核酸医薬
Vitravene Macugen Kynamro Defitelio Exondys 51 Spinraza HEPLISAV-B Onpattro 分 類 アンチセンス アプタマー アンチセンス オリゴヌク
レオチド アンチセンス アンチセンス CpGオリゴ siRNA 会 社 Novartis/Ionis Pfizer/Eye Tech Genzyme/Ionis Jazz Sarepta Biogen/Ionis Dynavax
Technologies Alnylam 対 象 サイトメガロウイルス
(CMV)性網膜炎症 加齢黄斑変性症
ホモ接合型 家族性コレステ
ロール血症
肝中心 静脈閉鎖症
デュシェンヌ型
筋ジストロフィー 脊髄性筋萎縮症 B型肝炎
(予防) アミロイドーシス 標 的 CMV IE2 mRNA VEGF165
タンパク質 ApoB100 RNA ― Dystrophin
pre-mRNA SMN2
pre-mRNA TLR9 transthyretin
投与経路 硝子体内 硝子体内 皮下 静脈内 静脈内 髄腔内 筋肉内 静脈内
米国での
上市 1998 2004 2013 2013 2016 2016 2017 2018
他上市国 EU 他 EU 他 ― EU ― EU 他 ― ―
(2018年10月現在)
れている現状である。遺伝子・核酸医薬のさらな る臨床展開のためには、非臨床・臨床情報を集積 し、規制を整備することが重要である。また、生体 内安定性や細胞標的性、臓器選択性を付与できる化 学修飾やドラッグデリバリーシステム(DDS)の開 発が強く望まれる。国内外で、遺伝子・核酸医薬の DDS が数多く研究されてきたが、未だ実用化が難 しく、臨床使用を目的とした安全性や生体適合性を 考慮する必要がある。
本稿では医療ニーズからみた遺伝子・核酸医薬の 現状と展望について、筆者らの研究成果と併せて概 説する。
2.遺伝子・核酸医薬の現状
近年、核酸医薬は、抗体医薬品や低分子化合物で は困難であった RNA を標的とすることができ、治 療法のなかったさまざまな疾患への適用が期待され ている。核酸医薬とは「核酸が十~数十塩基連結し たオリゴ核酸で構築され、タンパク質発現を介さず 直接生体に作用するもので、化学合成により製造 される医薬品」である。核酸医薬は分子量が3000~
15000程度であり、低分子医薬が一般的に分子量 500以下で、バイオ医薬品が分子量15万程度であ ることから、中分子医薬とも称される。遺伝子医薬 も核酸で構成されているが、タンパク質発現を介し て作用する点および生物学的に製造される点で核酸 医薬とは異なっている。
核酸医薬は構造や標的、作用機序の違いからさま ざまな種類が存在する。RNA を標的とする核酸医 薬としては、mRNA に配列特異的に結合・分解す るアンチセンスや siRNA がある。一方、抗体医薬 品と同様に特定のタンパク質を標的とする核酸医薬 としては、アプタマーが広く知られている。また、
デコイは特定のタンパク質(転写因子など)と結合し て転写を阻害する。さらに、Toll様受容体9(TLR9)
に作用して自然免疫を活性化させる CpG オリゴ
(CpGoligodeoxynucleotides)も核酸医薬の1種であ る。
2018年10月現在、医薬品として承認された核酸 医薬は8品目であり、アンチセンス医薬が4品目、
アプタマーが1品目、オリゴヌクレオチドが1品目、
CpG オリゴが1品目、siRNA が1品目である(表1)。
日本においては、アプタマー医薬の Macugen と アンチセンス医薬の Spinraza が承認されている。
Spinraza は脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬である。
脊髄SMA は
SMN1
遺伝子が欠損し、十分な量の 生存運動ニューロンタンパク質がなく、神経細胞が 欠失する。近傍のSMN2
遺伝子が働くが、スプラ イシング抑制因子により10%しか完全タンパク質 がつくられない。Spinraza は SMN2mRNA前駆体 を標的として完全長の機能性SMN タンパク質の産 生を増加させるアンチセンス医薬である。完全長の 機能性SMN タンパク質の不足により運動ニューロ ンの変性・消失が起こるが、Spinraza は完全長の 機能性SMN タンパク質を増加させることでニューロンの変性・消失を防ぐと考えられている(図1)。
1998年にサイトメガロウイルス性網膜炎の治療薬 として Vitravene が世界で最初に承認されて20年 で、核酸医学がまだ8品目というのは当初の期待 よりは少ないと考えられる。また、RNA干渉の発 見以来、非常に期待されていた siRNA に関して は、2018年8月に成人の遺伝性トランスサイレチ ン型(hATTR)アミロイドーシスによる多発性神経 障害の治療薬である Onpattro が、米食品医薬品局
(FDA)から世界初の siRNA医薬として承認された ばかりである。
3.遺伝子・核酸医薬の課題
核酸医薬の課題として有害事象がある。遺伝子・
核酸医薬の有害事象は、①標的分子に作用すること に起因する毒性、②標的分子以外の分子に作用する ことに起因する毒性、③修飾型オリゴヌクレオチド の代謝分解物の毒性がある。標的分子以外の分子に 作用することに起因する毒性としては、RNA標的 核酸医薬のハイブリダイゼーション依存的オフター ゲット効果や核酸による免疫反応があげられる。さ らに遺伝子治療や遺伝子導入には、正常細胞への傷
害可能性、染色体に組み込まれる可能性、発現産物 の危険性、免疫反応など、臨床使用に多くの問題点 が残されている。
遺伝子治療や核酸医薬に関しては、品質あるいは 安全性評価の指標となるガイドラインなどの規制面 についても情報を蓄積しながら整備が進んでいる。
核酸医薬の開発にはナノ医薬品に係る法規制を含め て開発環境を整備する必要があり、レギュラトリー サイエンス研究の重要性も指摘されている。RNA の配列データは核酸医薬の非臨床試験(有効性・安 全性の検証)の結果を解釈する際にも重要であるこ とから、試験動物についても RNA データベース の整備が求められている。標的RNA の発掘にして も、有効性・安全性評価の解釈にしても、包括的な RNA データベースの整備が重要になっている。核 酸医薬に特有のオフターゲット効果をデータベース からインシリコで予測することも可能である。
また、核酸医薬が臨床で機能するためには、天然 の核酸を上回るさまざまな特性が求められる。その ため、多くの核酸医薬には適切な化学修飾が施され ている。さらに、核酸医薬はバイオアベイラビリティ が低いことから、十分な治療効果を得るには標的組 織・細胞の内部へと核酸医薬を送達することのでき
図1 Spinraza の作用機序
脊髄性筋萎縮症(SMA)は survivalofmotorneuron(SMN)1遺伝子が欠損し、十分な量の生存運動ニューロンタンパク質がなく、神経細胞が欠失する。近 傍の SMN2 遺伝子が働くが、スプライシング抑制因子により不完全なタンパク質がつくられる。Spinraza は SMN2 遺伝子の mRNA前駆体のエクソン7下 流のイントロンに結合し、スプライシング抑制因子と置き換わることで、正常な SMN タンパク質の産生を増やす。
SMN1遺伝子
1 2a 2b 3 4 5 6 7 8
1 2a 2b 3 4 5 6 8
1 2a 2b 3 4 5 6 7 8
6 7 8
SMN2遺伝子
スプライシング
翻訳
スプライシング抑制因子
Spinraza
不完全タンパク質
翻訳 正常タンパク質
る DDS開発が必要不可欠である。
核酸医薬は、抗体医薬品と同様に高い特異性と有 効性が期待できるだけでなく、低分子化合物と同様 に化学合成により任意の核酸が合成できるという大 きな利点がある。限られたオリゴ核酸を用い、遺伝 子配列による簡便かつ迅速な医薬設計が可能である ため、創薬期間の短縮が期待され、開発コストの軽 減、新薬開発の効率アップにつながる。しかし、核 酸は血液中では短時間で分解され、組織・細胞移行 性がないため、現在は局所投与の医薬品が主流を占 める。このため、化学修飾や細胞膜透過配列の付加 が必要である。
標的臓器については、現状では全身投与されたオ リゴ核酸が肝臓や腎臓に集積しやすい性質を利用 し、肝臓を標的とする核酸医薬の開発が中心である。
近年、肝臓への標的が可能なリガンドコンジュゲー トとして GalNAc修飾が開発され、臨床試験で実用 化されている。従来の核酸医薬開発では生体内にお ける安定性や有効性に課題があったが、修飾核酸技 術や DDS技術が進展したことで、局所投与のみな らず、全身投与でも高い効果を発揮する医薬品の開 発が期待されている。
また、遺伝子・核酸医薬は負電荷を帯びた高分子 のため、正電荷の脂質や高分子を結合させた正電荷 の微粒子製剤が数多く研究・開発されている。これ らの複合体は遺伝子・核酸医薬を内包して分解を防 ぎ、負電荷の細胞膜に吸着しエンドサイトーシスさ れ、細胞内で高い遺伝子発現や mRNA抑制効果を 表すことが知られている。カチオン性高分子を用い たポリプレックスやカチオン性リポソームを用い たリポプレックスなどが代表的であり、jetPEI や Invivofectamine などの試薬として市販されている。
生体適合性の高いカチオン性ポリマーであるポリリ ジンやポリアルギニンを用いた正電荷微粒子製剤も 開発されている。しかし、正電荷の微粒子製剤は強 い正電荷により細胞毒性や血液毒性を示すことか ら、臨床応用が困難である。遺伝子・核酸医薬に適 した高い標的指向性と安全性をもつ DDS の開発が 強く望まれている。
4.医療現場からの遺伝子・核酸医薬DDS の開発
4―1.負電荷微粒子製剤の開発
医療現場からはアンメットメディカルニーズに対 する遺伝子・核酸医薬開発の要望は強い。一方、核 酸医薬の化学修飾による安定化は、効果増強と副作 用増強のもろ刃の剣にもなりえる。易分解性の遺伝 子・核酸医薬を用いて DDS で安定化させ、さらに 標的化ができれば、配列依存的な選択的薬理作用と 標的化によるダブルターゲティングを実現できる。
生体や環境で分解される材質を用いて DDS を作製 できればさらに安全性を高めることができる。
筆者らは、遺伝子・核酸医薬の物理化学的性質を 調べ、静電的結合、疎水結合、水素結合などに着目 し、特殊な3成分や4成分で構築されたコアシェル 構造の負電荷微粒子製剤(ナノボール)の設計方法を 確立することに成功した。これらの負電荷微粒子は、
無菌的に各成分を工程管理することで、容易に作製 できる。
初期の研究では、モデル遺伝子としてルシフェ ラーゼをコードした pDNA を用い、既存のポリプ レックスやリポプレックスの改良を行った。既存 のポリプレックスとして pDNA にカチオン性高分 子の polyethyleneimine(PEI)を過剰に添加して、
100 nm程度の強い正電荷を有する pDNA―PEI複 合体を構築した。pDNA―PEI複合体を、マウスメ ラノーマ細胞株B16―F10に添加して遺伝子発現を 測定した結果、高いルシフェラーゼ活性を示した。
しかし強い細胞毒性および血液毒性が観察された。
pDNA―PEI複合体の毒性は、微粒子の正電荷表面 と細胞や血球の負電荷表面との強い静電的相互作用 によるものと考えられた。そこで、pDNA―PEI複 合体をもとに、さまざまなアニオン性高分子を比率 を変えて添加し、複合体への影響を調べた。数多く の高分子を検討した結果、いくつかのアニオン性高 分子は、過剰に添加しても微粒子を壊さず pDNA を放出させることなく、約100 nm の負電荷の三元 複合体を調製できることが示された。この三元複合 体に、ヘパリンなどの負電荷高分子を添加した場合、
pDNA―PEI複合体から pDNA の放出が認められた ことから、三元複合体が安定に pDNA を包含して
いることが確認された。負電荷の三元複合体の細胞 毒性や血液毒性を測定した結果、毒性は認められな かった。しかし、B16―F10に対し極めて低い遺伝 子発現しか示されなかった。負電荷の三元複合体の 多くは、細胞や血球との静電的相互作用がなくなり、
効果も毒性も強く抑制されたものと考えられた。さ まざまな三元複合体を調製しスクリーニングした結 果、驚くべきことに表面が負電荷にもかかわらず、
pDNA―PEI複合体に匹敵する高い細胞内取り込み と遺伝子発現を示す三元複合体を見出した(図2)。
pDNA と PEI にγ―polyglutamicacid(γ―PGA)を添 加した三元複合体(γ―PGA ナノボール)である。遺 伝子導入メカニズムについて調べた結果、γ―PGA ナノボールは、γ―PGA に特異的な受容体を介して 細胞と接着し、カベオラ介在性のエンドサイトーシ スにより細胞内へ取り込まれることが明らかとなっ た1)。また、γ―PGA ナノボールは、予測どおり細 胞毒性や血液毒性は示さなかった。さらにさまざま な三元複合体を調製しスクリーニングを続けた結 果、γ―PGA以外にもラウロイルザルコシン2)、グリ チルリチン3)、コンドロイチン硫酸4)などを用いた 三元・四元複合体が高い細胞内取り込みと遺伝子発
現を示すことを見出した。特にラウロイルザルコシ ンの四元複合体では、構成成分の比率をきめ細かに 変化させ、投与後各種臓器での遺伝子発現を測定す ることにより、構成成分の含量と発現量の関係を数 学的に解析し、各臓器における遺伝子発現を定量的 に制御できることを明らかにした。
4―2.メラノーマワクチン5)
γ―PGA ナノボールをマウスに静脈内投与し、各 臓器での遺伝子発現を測定した。その結果、脾臓へ の高い集積性と選択的遺伝子発現を観察した。脾臓 切片の観察の結果、γ―PGA ナノボールは、特に抗 原提示細胞に富む辺縁体に蓄積し、遺伝子を発現し ていることが示された(図3)。また、γ―PGA ナノ ボールを大量に静脈内投与した結果、急性毒性や肝 障害は認められなかった。しかし、既存のポリプレッ クスである pDNA―PEI複合体は、強い急性毒性や 肝障害を示した。これらの結果から、γ―PGA ナノ ボールを脾臓指向性のがんワクチンベクターとして 使用することを発案した。メラノーマは皮膚や粘膜 に存在しているメラニン色素産生細胞ががん化する ことで生じるがんであり、早期に転移を生じやす
図2 ナノボールの細胞取り込みと遺伝子発現
ルシフェラーゼをコードした pDNA とローダミン(Rh)標識した PEI を用いて構築した pDNA―PEI複合体あるいは三元複合体をメラノーマ細胞株へ添加 後24時間における(a)Rh―PEI の取り込みと(b)ルシフェラーゼ活性。
三元複合体は pDNA―PEI複合体と比較して細胞取り込みおよび遺伝子発現が低下したが、pDNA-PEI―γ―PGA複合体(γ―PGA ナノボール)は、pDNA-PEI 複合体に匹敵する高い細胞内取り込みと遺伝子発現効率を示した。
polyA;polyadenylicacid(polyA)、polyIC;polyinosinic–polycytidylicacid、α―PAA;α―polyasparticacid、α―PGA;α―polyglutamicacid、γ―PGA;
Mean ± S.E.(n = 3-6)、 **: < 0.01 vs. pDNA/PEI
P
P
Luciferase activity(RLU/mg protein)
(a)Uptake of Rh-PEI (b)Luciferase activity
105 106 107 108 109 1010 1011
** **
**
**
**
pDNA- PEI- polyA pDNA-
PEI pDNA-
PEI- polyIC
pDNA- PEI- α-PAA
pDNA- PEI- α-PGA
pDNA- PEI- γ-PGA
** **
** **
**
0 1 2 3 4 5 6 7 8
Uptakes of Rh-PEI(μg/mg protein)
pDNA- PEI- polyA pDNA-
PEI pDNA-
PEI- polyIC
pDNA- PEI- α-PAA
pDNA- PEI- α-PGA
pDNA- PEI- γ-PGA
く、化学療法や放射線療法に抵抗性で、悪性度が極 めて高い腫瘍である。一方、メラノーマは免疫に認 識されやすい悪性腫瘍であるため、ワクチンによる 治療が期待されている。そこで、マウスメラノーマ 抗原である glycoprotein100(gp100)と tyrosinase- relatedprotein―2(TRP―2)のユビキチン化エピトー プをコードした pDNA(pUb―M)を、DNA ワクチ ンのモデルとして使用した。この pUb―M に PEI と γ―PGA を混合し、約100 nm の負電荷の pUb―M ナノボールを作製した。pUb―M ナノボールをマウ スに複数回投与し、メラノーマに対する免疫誘導効 果を評価した。この結果、pUb―M ナノボールで免 疫したマウスは、皮内移植した腫瘍の増殖を有意に 抑制した。さらに pUb―M ナノボールはメラノーマ 細胞の肺転移を著明に抑制し、肺転移モデルの生存 期間を延長した。
4―3.マラリアワクチン6)
感染症に対するワクチンベクターとしてγ―PGA ナノボールを適用した。WHO が問題視している 三大感染症の1つであるマラリアは、未だにワク チンのない感染症であり、マラリアワクチンの開 発は世界的にも急務である。マラリア表面抗原に
対するワクチンが第Ⅱ相臨床試験で5割程度の効 果が得られているが、十分な感染抑制のためにさ らに効果的なワクチン開発が望まれている。そこ で、筆者らはγ―PGA ナノボールを用い、長崎大学 熱帯医学研究所と共同でマラリアナノワクチンの 開発を行った。DNA ワクチンは、長崎大学熱帯医 学研究所で開発された merozoitesurfaceprotein1
(MSP―1)をコードした pDNA(pVR1020―MSP―1)
を用いた。この pVR1020―MSP―1に PEI とγ―PGA を混合し、約100 nm の負電荷の MSP―1ナノボー ルを作製した。MSP―1ナノボールをマウスに複 数回投与し、マラリア感染に対する免疫誘導効果 を評価した。pVR1020―MSP―1のみを投与したマ ウスは、マラリアの感染により10日以内に多く のマウスが死亡したのに対し、MSP―1ナノボー ルで免疫したマウスは、30日経過後も全例生存し ていた(図4)。MSP―1ナノボールをマウスに尾静 脈内投与後、MHCclassII の発現、共刺激分子お よびサイトカイン産生を測定し、その作用機序を 調べた。その結果、MSP―1ナノボール投与群は pVR1020―MSP―1のみを投与した群に比べ、脾臓 の樹状細胞比率および MHCclassII の発現が有意 に高かった。また、共刺激分子の CD40も有意に上
図3 ナノボールの静脈内投与後の遺伝子発現
(a)γ―PGA ナノボールをマウス尾静脈内投与後6時間における各臓器(肝臓、腎臓、脾臓、心臓、肺)のルシフェラーゼ活性を測定した結果、脾臓で高い遺 伝子発現を示した。
(b)赤色蛍光タンパク質をコードした pDNA、FITC標識した PEI を用いて構築したγ―PGA ナノボールをマウス尾静脈内投与24時間後に脾臓を摘出した。
組織切片を作製し、組織内分布を観察した結果、抗原提示細胞に富む辺縁体に蓄積し、遺伝子を発現していた。
(ⅰ)ナノボールの局在、(ⅱ)遺伝子発現、(ⅲ)ナノボールの局在と遺伝子発現の融合、(ⅳ)HE染色。
*
Luciferase activity(RLU/g tissue) * 105 106 107 108
Kidney Heart
Liver Spleen Lung
Mean ± S.E.(n = 6-8)、*: < 0.05 vs. commercial vector
(a)Luciferase activity (b)Spleen section
(i)Localization of complex (ii)Gene expression
(iii)Merged picture (iv)HE stain P
文献
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9)Kodama,Y.,etal.,Biol.Pharm.Bull. ,41,342-349(2018)
昇することを確認した。さらに、MSP―1ナノボー ルを投与したマウスの血清中IL―12および IFN―γ 産生は、pVR1020―MSP―1のみを投与したマウス と比較して有意に増加した。したがって、MSP―1 ナノボールは、樹状細胞で選択的に抗原遺伝子を発 現し、CD40を介して免疫を誘導してワクチン効果 を発揮する可能性が示された。
その他、新規マラリア DNA ワクチンのナノボー ル7)、住血吸虫症に対する DNA ワクチンのナノボー ル8)、不活化インフルエンザウイルスのナノボール を開発した。
4―4.siRNA への応用
pDNA を包含したナノボールのデータを基盤に siRNA のナノボールを調製することに成功した。
特に、がんに選択的に取り込まれる負電荷微粒子を 見出し、制がん性核酸医薬の開発を行った。血管
新生に関与するタンパク質や腫瘍増殖に関与する siRNA を内包したナノボールは、メラノーマ担が んマウスのメラノーマ増殖と肺転移を有意に抑制し た。ヒト乳がん転移のヌードマウスモデルでも転移 抑制できることが確認された。また、ヒト卵巣がん 腹膜播種のヌードマウスモデルに対し、播種の抑制 と生存率の延長が示された。臨床への応用を迅速化 する目的で、すでに臨床で用いられている医薬品を 各種組み合わせ、有用性の高い微粒子製剤の開発に 成功した9)。
これらの結果が高く評価され、2018年12月に は国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)によ る研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム
(START)「プロジェクト支援型」に採択された。今 後、遺伝子・核酸医薬を生み出す DDS プラット フォームの構築を目指し、大学発技術の事業化を進 める予定である。
5.おわりに
遺伝子・核酸医薬の開発は世界的に進展してい るが、規制の整備や DDS技術がまだ十分ではない。
化学修飾と同様に DDS による安定化技術は進んで きているが、必要となる DDS や投与法、適応とな る疾患も異なるため、基盤となる情報が未だ不十分 である。特に体内動態に関するデータは乏しく、産 官学連携による科学的規制の整備や体系的情報収集 が求められる。
筆者らが推進している一連の研究は、臨床使用が 期待できる新しいタイプの微粒子デザインである。
また、核酸医薬の封入に静電的相互作用を利用して いるため、原理上、配列が異なるほとんどの核酸医 薬に応用できる。現在、医療における幅広い有用性 の検証を続けている。欧米に比べて開発が遅れてい る日本発の核酸医薬の開発に貢献できるものと期待 している。
図4 マラリア DNA ワクチンナノボールの有効性
マラリア DNA ワクチンを3週間おきに3回投与して免疫賦活させた後 に、マラリア感染赤血球をマウス腹腔内へ投与後の生存率を評価した。
マラリア DNA ワクチンのみを投与されたマウスは感染後10日以内にほ とんどが死亡したのに対し、マラリア DNA ワクチンナノボールを投与 されたマウスは感染後30日以上においてもすべて生存していた。
Malaria . vaccinei.v
C57/BL mice 3 weeks 3 weeks 2 weeks
マラリア感染赤血球
(Parasitemia of )
% of survival
0 20 40 60 80 100 120
0 5 10 15 20 25 30
Day after infection Control
Naked DNA vaccine DNA vaccine nano-ball
P.⦆yoelii 17XL