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唱歌が心 と身体に及ぼす影響

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Academic year: 2022

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(1)

唱歌が心 と身体に及ぼす影響

一音 楽 に対 す る情 動 反応 と生 理 的反 応 に 関す る実 験 一

作 田

由美子 ( 岡山大学大学院教育学研究科) 奥 忍 ( 岡山大学教育学部)

音楽が心身に及ぼす影響を探 るために,情動反応 と生理学的測定の2つの指標 を用いて実験を行った。情動反 応はチェックリス トを中心 とした質問紙 を使い,生理学的測定は精神性発汗を用いた。実験曲として文部唱歌で ある 「ふ るさと」の歌詞つきと歌詞な し,それに類似 した自作メロデ ィー

,

「こいのぼ り」の

4曲を取 り上げ,

反応の比較を行 ったo

実験の結果,曲による反応の相違が現れ,音楽は心身に影響を及ぼ していることが確認できた。特に 「ふるさ と歌詞つき」に関 しては質問舵では 「なっか しい」 と過去を想起する人が多く,発汗量の変化 も他の

3

曲に比べ 有意に差があった。また,個人の特性(性差,噂好度,音楽経験など)は音楽聴取に対 して心身 ともに大きな影響 を及ぼ していることが明 らかになった。

キー ワー ド:文部省唱歌

,

「ふるさと」,情動反応,生理的反応,精神性発汗

I

. は じめに

音楽が心身に及 ぼす影響 を利用 して,障害児 ・者 や心身症者,高齢者な どを対象 とした音楽療法が普 及 してい る。しか し,実態 をみ ると,まだ経験的に「音 楽が心身によい」とい うだけで,主観的な判断にとど ま り,音楽療法の効果が科学的に確認 できていない 段階にある。そのよ うな状態を受けて,現在では音 楽療法の科学的根拠つま り

EBM ( e vi de nc e bas e d med i c i ne )

が強 く求められている。

そ こで本研究では,.日本人にな じみ深 く子 どもか らお年 よりまで幅広 く親 しみのある文部唱歌を取 り 上げ,音楽 と心 と体の関係 について明 らかに したい と考 えた。方法 としてまず,不随意的な生理学的測 定について精神性発汗量の測定を行 った。

精神性発 汗 は精神 的緊張や情動 の変化 に よって 発生 し,手掌 ・足底で認 め られ る。大橋 ら

1 ) 1 993

に よると,精神性発汗は①衝動活動の生物的学指標,

②脊髄の発汗 中枢か ら汗腺に至るまでのコリン作動 性交感神経節後線維の活動状態 を評価す る指標,③ 手掌部汗腺の活動状態の評価指標, として路床応用 できるもの と予測 され ている。また, 自律神経の中 枢機能の評価指標 として有効であるとされている。

こ うした生理学的事実 か ら精神性発汗量の測定は定 量的な 自律神経機能検査,心理的負荷 の定量的評価 の有力な手段にな り得ると予測できる。

この研究 で精神性発 汗 を生理学的 な指標 として

用いた理 由は,心臓 の速 さ (脈拍),呼吸の速 さ,秤 吸の深 さな どの指標 と比較す ると,瞬時に しかも微 量で相動的な分泌 を呈 し,比較的実験が行いやす く (被験者‑の負担が少ない等),指標がわか りやすい

といわれているか らである。

次 に精神性発 汗畳 と主観的 な情動 変化 の関係 を 明 らかにす るために,チェック リス トによる質問紙 を用 いた。情動反応 は

.Eag l e2 ) 1 97

1 に よる と,

「個々人によって認知 され うる,また言葉によって 示 され うる ・・(中略)‑ 比較的一過性 の状態の反 応」である。音楽によって生 じる気分 を測定す る手 段 としては,言語による記述方法が多 く用い られて いる。方法 として,①形容詞のチェック リス ト②意 味差判別法

( SD

法)③ さま ざまな種類の測定尺度 の 中か ら今回は

,Far ns wo r t , h8 ) 1 95 4

による形容詞 リ ス トを参考に した。予備実験でこの形容詞 リス トに よる聴取反応 を調べ,本実験ではその結果 をもとに

「懐か しい

「しんみ りした」な どの形容詞 を取 り入れ て リス トを作 り直 し,短時間で答 えやす くわか りや すいものに している。

Ⅱ.

先行研究

音楽の生理学的反応 に関す る先駆的な研究 として, 音楽の呼吸や脈拍 に及 ぼす影響 については

,El l

i

s

,

D.

a

.

Br ig hho us e,G. 4 )1 95 2

が挙げ られ る。彼 ら

は大学生を被験者にクラシック曲数曲を聞かせ,呼

(2)

吸 と脈拍の変化 をみる実験を行った。その結果,音楽 聴取時には,その前 と比較 して呼吸数は増加するもの の,脈拍には特別の変化を兄いだす ことができなかっ た。一九

Fr a nc e s

,

氏.5 ) 1 9 5 8

は音楽に対する情緒反 応 を

GSR

とポ リグラムを用いて調べ,その結果,バ ッハのフーガでは,主題再現時に

GS R

に大きな反応 が顕れることを兄いだ した。彼はまた音楽的経験 ・素 養 と

GSR

反応 との対応関係 も兄いだ している

He nk i n. R. Ⅰ . 6 ) 1 9 5 7

は,因子分析 と予備実験の結果 に基づいて,メロデ ィに対する

GSR

反応が時間 と共 に電気抵抗を減 じ, リズムに対 しては,時間 とともに 反応が増大するのではないかとい う仮説 を立て,被験 者 に数種類の音楽を聞かせる実験 を行 った。その結果, 彼の仮説は大体において支持 された。

Zi mmyG. H

tと

We i de nf el l e r , E. W

.7)

1 96 2

は,静か な音楽は

GSR

を減少 させ,興奮的な音楽はそれを増 大 させる,とい うこれまでの結果が,子 どもの場合に はもっと顕著に顕れるだろ うと考え,実験を行った。

その結果,明 らかに興奮的な音楽は

GSR

反応 を増大 させ,静かな音楽は減少 させていたが,発達的な差違 は見 られなかった。

日本では,桜林 と坂本

8 ) 1 9 5 8

が,呼吸時

GSR

にあ らわれた音楽的反応を研究 している。彼 らは,楽曲に マーチJ ジャズ,オペラを選び,メ トロノームをコン トロール として用いた。その結果,マーチが最 もメ ト ロノームに対する反応に近 く,ジャズや電子音楽につ いては後半より前半の方に強い反応が示 されたのに対 し,クラシックやオペラでは,全面にわたって適 当な 興奮分布が分散 して現れ ることが判明 した。

今井 と奥

9 ) 1 9 7 0

は,大学生を被験者にス トラビンス キーの 「春の祭典」の中か ら 『いけにえの踊 り』 を聴 かせ,呼吸数 と

GSR

反応 をみる実験を行った。その 結果,呼吸数に関 しては,音楽が始まると呼吸数の増 加が見 られるものの,音楽の即時的な変化 と照応 させ るのは困難なことが判明 した。一方

, GSR

については, その反応 と音楽のモチーフ,ダイナ ミック,オーケス

トレーシ ョンの変化 との間に照応関係が見 られること が分かった。

今井 と奥

1 0 ) 1 97

1はさらに, ドビュッシーの 「花火」

を大学生に聴かせて

GS R

とプ レステ イモグラム (筋 電図)によって音楽 と情緒 との関係 を明 らかにする実 験を行 った。その結果

,GSR

については,音楽で新 し いモチーフが出現す ると

GS R

反応が変化す ること, またダイナ ミックスの増大するところで

GSR

反応 も 増大することが判明 した。また,プ レステイモグラム

については,モチーフの出現やダイナ ミックスの増大 な どとの直接的な関係が見 られないことが判明 した。

河晴 ら

1 1 ) 1 9 9 8

によると精神性発汗による音楽鑑賞 時の感動状態の定量的評価指標の試み として,女子学 坐,教師(

l

o奄)を対象に曲の好み と親近性の差が精神 性発汗に及ぼす影響を調べ,噂好度が高 く親近性の高 い曲に関 しては集 中して聴き,安静に近い状態になる

とい う指摘をしている。

以上の先行研究に見 られ るように,研究は少なから ず存在するものの散発的であるために,それ らの生理 作用 と音楽的情動 との関係が未だ明 らかになっている とは言い難い。研究の深化 ・発展が阻害 されている要 因 として,①音楽の芸術性,②被験者の個別性に関す る点に影響があることの

2

点が指摘 されている12)0

そこでこれ ら

2

点の問題点を今回の実験では排除す べ く,実験の聴取曲には複雑な構成 をもつ芸術作品で はなく被験者に親 しみのある唱歌を用いることにした。

また,音楽に対する反応 と被験者の個別性 との相関関 係 をみるために質問紙法による調査も行い,実験結果 と対照させて,実験結果を重層的に分析できるように 試みた。 さらに,実験に,比較的多 くの被験者を対象 とすることによって,質問紙の回答によるクロス集計 ができるように した。

Ⅱ.

予備美島

本実験に入る前に下記の予備実験を

1 0

人の被験 者(本実験 とは別の対象者)を対象に行 った。

① 装置の操作方法を習得する,実験環境をととのえ る,測定値に影響がでる要因を探 し取 り除くことを 目的に被験者の精神性発汗量を測定 した。

② 聴取音楽を選択するために,被験者に曲目,歌 手,曲の速度,調の違った音楽を聴取 して質問続に 回答を求め,主 旨にあった聴取音楽を決定 した。

③ 気分反応の形容詞チェック リス トを作るため に,被験者に曲の印象を記述形式で回答を求めた。

この結果を基に質問紙の形容詞 リス トを作成 した。

Ⅳ.本美故の仮説

1

音楽聴取時 と聴取前後のインターバル(間)時で は,精神性発汗量,情動反応に変化がおこる。

2

な じみのある曲とな じみのない曲では精神性発 汗量,情動反応に相違がある。

3

「歌詞つき」の方が 「歌詞な し」より精神性発 汗量が多 く,情動反応に変化がおこる。

4

個人の特性 (性差,曲の噂好度)が精神性発汗

‑ 3 0‑

(3)

量,情動反応の変化に影響 を及ぼすo

V.

実験方法

Ⅴ.1

破壊者 と臭族期間

自主的に参加 した大学生,大学院生の計

3 0

名。

内訳は男性

1 3

人 女性

1 7

人。音楽専攻生

7

人 その 他の学部生

23

。1 8

〜3 6

歳(平均年齢

: 23

歳)であ

。20 0 2

7

月中に実験を行 った。

V. 2

聴取音楽 (甜例

A‑D )

男子大学院生による以下の4種の歌唱(ピアノ伴奏 つき,約

30

秒)。曲は

M

D録音の上 聴取曲順による 影響 を考慮 してラン ドマイズさせてカセ ッ トテープに 編集 したものを

4

種作成。被験者はその中のどれか

1

種を聴取 した。

A r

ふ るさと

」 1

番歌詞つき歌唱

F ・ dur

B

「ふるさと」 歌詞な しラララ歌唱

F・ d t l r Cr

ふるさと」に類似 した自作 メロデ ィー

F・ d u r

ラララ歌唱

D

「こいのぼ り

」 1

番歌詞つき歌唱

F‑ d u r

常例

A‑ D

)

r お い し か の ヤ * こ ぶ TL り し か の か

サ ウ ナサウ ナサ ウ ナサ ウ ナ ナナ チワワ ヲ ナウ

サ ー わ は い ‑*LI わ ー < ‑ り ‑ て わ す れ が た e i.ろさ と

ヲ ブ タ クサ チ ク タク ナ ナ サケ ク ナナ チ クタ

チタ ク ワヲ ウ ク テクサ ウナ サ

ケ サ

ク ラ チタチ クタ ク テク

い‑ら‑かの な‑み‑ く‑tJ‑■な み か ‑さ‑ILろ IL‑み I‑ LL‑か1‑そら e

たちrlIL か‑ お‑ る あさ‑かV に た か く お‑よ‑ Cや こい‑のLl ‑)

Ⅴ. 3

実旗の手続き

室温

2 4

12 5

℃,湿度

65 %‑7 5 %

に調節 された防音 効果の高い部屋で,被験者

1

人,実験者

1

人によって 次の

3の手順で行った。なお,実験の所用時間は一 人およそ

3 0

〜45

分である。

1 実験室 1で実験内容の説明を うけ,質問紙 A を行

う。

2

実験室

2

で精神性発汗量の測定を行 う0

3

実験室

3

で測定後,質問

耗 Bを行 う。

Ⅴ. 4

茸問紙について :内容は質問

戟 A, B

参照。

Ⅴ. 5

精神性発汗量の測定について

実験曲

4

曲聴取時 と聴取前後のイ ンターバル時

( 5

回)の精神性発汗量の変位を測定 した。測定方法は,局 所発汗量連続記録装置

( Ke n 2 ;Pe r s p i

r

o , OSS・ 1 0

0.

(樵)スズケン製)の発汗量検出プローブを被験者の母指 腹側部に装着 し測定 した。軸定は装置を母指装着後, 発汗波形が安定するまで時間をおき,安定したことを 確認 したのち,音楽聴取をはじめた。聴取後

,3 0

秒の インターバルをおき,次の曲を聴取するとい う手順を 繰 り返 し行った。測定データは,音楽聴取の

3 0

秒前 か ら全曲聴取後の

3 0

秒まで とし,測定結果は

RS・ 23 2 0

ケーブルでパー ソナル コンピューターに接続 し,デジ タル信号 として記録 した。

Ⅴ. 6

喪鹸 プロセスは次の図の通 りである。

I ‑ 0 M 1 I ‑ 1 M

2

2 M3 I 3 M4 I . 5

〜 3 0 3 0 3 0 3 0 s c

Ⅰ : インターバル時 ,M: 音楽聴取時 図 1

実験プロセス

Ⅴ. 7

測定結果の整理

精神性発汗量(以下発汗量 と略す)は

1ミリ秒間隔で

バイナ リーデータとして記録 されたものをテキス トフ ァイルに変換することによって数値データを得た。被 験者

3 0

人について,音楽聴取時(4曲)と各音楽聴取前 後のインターバル時

( 5

回)のそれぞれの発汗量を測定 した。発汗量は個人によって差があるため,比較する ために実験時の総発汗量に対するそれぞれの時間の発 汗量の割合%を用いた。

(4)

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1

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大船 Fe

Jr?I ■l、 大交tlヽ lわも ( )恥 ヽ

)やろ く HLP b)との上)に■じ士巾 ヽ■当ナ与榊 に〇七つけてくださlヽ 榔 旬 ) ■九な く )れ8い ( )う書)eした ( ) 赫 ( )やさしい ( )■かな ( ) しんみりした.( )tu 、 ( )抄 とした ( C)モの■ tdじたことeBdにお書き下さlヽ

8‑3)rメFlfイー」 について L)二側 ですれ

)さ的 ・な ( )払 ヽ ( )■■な ))ららかな ( )帥 ・u 、( )え8ようrJ )iiii‑yIJ: ( )わくわくした その■( )

大仰 e JTe ふっI ■い 大仙 ヽ 6 4つの中・でとJIJL一書蜘 こ■ち■さ*したカヽ

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I‑A)rこしd LJJ について dこの脚 ヽ

)き柵 、な く )tい く)■■ヒ ))ちらかな ( )なつかしい ( )井上も上)な )蒜 yLL ( )わくわくした tl〉■( )

大王好さ 肝き ふつう ■い 大仰 ■、

tllとのよ)に暮じtすれ tm する紺 ■=〇七つけてくださtヽ 【枇 F■D

( ) ■丸な ( )qるい ( )うさ)さした ( )さわやかな ( )tい ( )■■な ( ) 赫 ( )やさしい ( )■かな ( )うららかな ( )紬 .しい ( )ホえる上ケIL ( ) しんみりした く )eLい く )t則■々とした く )■土的な ( )わくわくした tの■( 〉 C)その■.わなたJtdじたこと

t 白

■にお■さ下さlヽ

‑ 32 ‑

(5)

Ⅵ.結果 と考察

Ⅵ . 1

聴取順による発汗量の比較 (図

2 )

卜O M‑

1[

1

M‑2卜2 M‑3I‑3 M‑4卜4

図 2 聴取順による発汗量の比故

発汗量は曲に関係 なく時間的経過に応 じて,聴取時 もイ ンターバル時 も減少 していた。また発汗量の割合 を聴取時 とイ ンターバル時で比較す ると,音楽を聴取 す ることで発汗量の変位が見 られる。有意な差が認め られたものは,「

I ‑ 0‑ M・ 1」 ( p<0. 0 4, d f =29

,t

2. l

l

)

,

「 M

‑1・

I ・ 1」( p<0. 0

0

,d f =29

. t

借 3, 82) , 「 M‑ 41 I ‑ 4」

( p<0. 09.df =29

, t値

1. 7

1

)

であったO これは,特に

1

曲 目は予期せぬ音楽で刺激が強まるため発汗量が増 え

,2

曲 目か ら慣化の影響 もあ り発汗量が減少 してい ると考えられ る。 曲終了後の発汗量の減少が顕著なの は,実験終了を意赦 し,緊張が とれ安堵 した心理的な 影響 もあると考 えられ る。

Ⅵ . 2

聴取時.インターバル時の発汗量の比較 (図

3 )

125 120 115 110 105 100 95 90

歌詞つき こいのぼり メロディー 歌詞なし 図 3 聴取時 と由後イ ンターバル時の発汗量の比故

発汗量は聴取時の方がインターバル時より多い。 こ れまでに渡辺,天野

1 8 ) 1 993によって,意志の表出が

できない遷延性意織障害患者の精神性発汗量 を測定 し た際に, ピアノ曲に対 して発汗が認 められたことが明

らかにされている。 このことを本実験に照応すると, 音楽が刺激 とな り心身の反応 を促 しているといえよう。

なお,音楽聴取時 と曲後イ ンターバル時を比較 した と ころ

,

「歌詞つき」については聴取後の発汗量は他の曲

聴取後 よ り減少する割合が高 く,

有意な差があった。(

p<0. 0

1

,d f =29

, t

2. 68)

。ま た

,

「こいのぼ り」についても,聴取後の発汗量は減 り, 有意な傾 向があった(

p<0. 09,df =29

, t値

2. 82 )

Ⅵ. 3

各曲聴取前後のインターバル時発汗量の比較

ll.5

ll.0

10.5

l o b

9.5

歌伺つき こいのぼり メロディ一 歌伺flL

4

曲前後のイ ンタ‑パル時発汗量の比故

音楽によって心身の影響が異なることはさまざま な先行研究によって指摘 されている。今回,有意な差 が認め られたものは

,

「歌詞つき」前後のインターバル

( p<0. 0

1

,d f =29

, t値

3. 63 )

.「

こいのぼ り」前後の インターバル(

p<0. 0

1

,d f =29

, t値

2. 44 )

であった。

本実験により曲ごとの精神性発汗量に変化があったこ とで,曲によって身体に及ぼす影響の差がみ られた。

特に 「歌詞つきJと 「こいのぼ り

J

とい う親 しみのあ る曲の聴取前後では特に差が顕著であ り,他の曲より 身体‑の影響が大きいのではないか と推察 され る。

Ⅵ. 4

音楽聴取前 (

I ‑ 0 )

と聴取後 (

I ‑4)

の発汗量の比較

音楽聴取前(

II 0 )

と聴取後(

I・ 4 )

では有意な差がみ られた(

p<0. 0

0

,d f =29

, t

5. 62 )

。また.28人が音 楽聴取前 より,聴取後の発汗量が減少 していた。 この 現象 を質問舵 による回答 と対照 させ ると,聴取後の感 想に「楽 しくなった」「眠 くなった」「落ち着いた」「な つか しくなった」な ど十の変化 を感 じた人が

23人い

た。 これは,音楽による情緒安定や リラックス効果が 大きく影響 していると思われる。なお,音楽聴取後の 発汗量が減少 しなかった

2

名についてこの部分の回答 を見ると

,

「音楽聴取後嫌な気持ちになった

「最後の 曲は リズムにのって体 を少 し動か した」 と記 されてお り,実験に対する気分の影響が大きかったのではない か と思われ る。

(6)

Ⅵ.5提示順序別グループ間の発汗量の比較 (表 1)

衰 1 提示順別グルー プ間の発汗量の比故

グル ー プ 別 比 較

詞 歌詞 歌

詞 メ

ロ い

普 な し

7イ

7

の 揺

(*:有意差あり)

後 後

I

I り

ABCD BCDA *

ABCD CDAB * * *

ABCD DBAC * * *

BCDA CI ) AB * * *

BCDA CDAB *

CDAB D王 i AC * * *

Ⅵ.6性別による発汗量の比較 (図 5)

曲の提示順による影響 を探るため,被験者を提示順 に よって

4

つの グループに分 け

( ABCD ・BCDA ・ CDA B ・DBAC)

,多重分析 を行 った。表

1

は,その結 果をあらわ したものである。

卜0

Ⅰ・ 4

を見ると, どのグループにおいても有 意な差は見 られなかった。 したがって,全体的には提 示順の影響はなかった と考えられ る。 しか し,M・1‑

M・ 4

卜1 ‑ Ⅰ・ 3

を個別にばらして比較 してみると,

CDA

B グループは他のグループに対 して有意差を示 す反応が多 くみ られた(表 1)。その原因はこのグループ の被験者 に とって最初の聴取曲は聴いた ことがない

「メロデ

ィー」であったため,実験曲に対 して過敏に

なったのではないか と考えられる。

背 部

JW

背 m草 L

穿fiPlf1

E) T‑ ,( ‑

囲 5 男女別の発汗量の比故

男女別による発汗量の割合 を比較すると全ての曲で 反応の違いがみ られる。特に 「歌詞つき」聴取時は有 意な差が認 められた。(

p<0. 03,d f =28

, t

備 o. 34 )

。 また

,

「メロデ ィー」聴取時も有意な傾向が認められた

( p<0. 07,d f =28

, t

2. 43 )

。男性の方

ゝE

=T

I

‑ 辞

HL

ノa )F的 L) H Lノa )r川 LJ 辞

が,曲ごとによる発汗量の変位が大きく,また,聴取 時 とイ ンター バ ル 時 の変化 の差 も大 き か った。

Eys e nc k

ら(

1 976 ), L e B

l

a

n

k( 1 987),Ra wl ing s

( 1 995 )

の研究にもあるよ うに14),音楽の噂好の要因や 音楽の受け止め方は性差の影響が大きい。 この実験に おいても性差が見 られた。

‑ 3 4

(7)

Ⅵ.7音楽経鼓の長い人と短い人の発汗量の比較 く図 6)

1 3 . 0

1 2 . 5 1 2 . 0

l

l . 5 l l . 0 1 0 . 5 1 0 . 0 9 . 5 9 . 0

% :

U

W J

W 辞 弊 P ttj :L 辞

E) T‑ 1 ‑ k E

]T‑I‑梓

図 6 音楽准故が長い人 と短い人の発汗量の比故

音楽の聴き方 と音楽経験の関係は音楽的要素の認知, 情報処理により相違があることが指摘 されている 15)0 そこで本実験では音楽経験年数について尋ねた質問紙 (A・8)の回答 より,次のように点数化 した。学校教育以 外の音楽経験の年数 を合算 し,経験がない者は o息

ピアノ歴

20

年,吹奏楽歴

10

年の場合は

30

点 とした(負 低点 0点,最高点

30

点)。次に

1 5

点以上

( 1

1名)を上 位群, 1点以下(9名)を下位群にわけて比較 した。

その結果,音楽経験の上位群 と下位群に違いが見 ら れた。特に

,

「歌詞つ き」聴取時に,有意な差が見/られ

( p<0. 0

0

,d f =18

, t値

1. 19)

O経験の短い人は音楽

H Lノ

8rZL) HL

ノa )

一川LJ

経験の長い人 より音楽聴取時の発汗量が多く,聴取時 の反応が大きく出ていると考えられ る。また,感想の 中で,音楽経験の長い人は 「歌い方 (発声,音程,罪 育,テンポ,)な どが気になる

」と曲についての感想 より歌い方に対する批評が多かった。また,初めて聴 く 「メロディー」に関 して,旋律線の進行を予想 しな が ら聴いた り,ふるさとのメロディーとの比較をする な ど,分析的に聴いていた人が多かった。谷 口16)

1989

は音楽経験が長い人は分析的な聴き方をし,経験年数 が短い人は音楽を全体的に処理するとしている。 この ことを,本実鮫の結果か らも確認することができた。

Ⅵ.8普段の音楽聴取時に心と身体に変化を感 じやすい人と感 じに くい人との発汗量の比較 (図

7 )

1 3 . 0 1 2 . 5 1 2 . 0

l

l . 5

l

l . 0 1 0 . 5 1 0 . 0 9 . 5

9 . 0 I‑

i T‑

:

%

T

⊂ 〉

弾 勘 ∪

弾剖 U

W痔

弊WJ:L

付L痔

□ 」 ヽ ‑

□ T‑ 義 ‖ LIP )f

ZLJ HL

〇) (仙

L)

図 7 音楽聴取時に心身の変化を感 じやすい人 と感 じに くい人の発汗量の比故

音楽聴取時の心身‑の感 じ方について尋ねた項 目

( A‑ 9 , 10 )

の回答について,次のように点数化 した。い

(8)

つ も感 じる

5点, ときどき感 じる4

点,たまに3点, めったにない

2

点,全 くない 0点 とし,心身の変化は それぞれの得点を合算 して

10

点満点 とした(最低点

3点,最高点 9

点)。その結果,それぞれの平均点は, 心の変化は

,4. 1

点,身体の変化は

,2. 8

点,心身の変 化は

6. 9

点であった。次に

8

点以上

( 1 2

名)を上位群 (感 じやすいグループ)

,6点以下 ( 1 0名) を下位群

(感 じにくいグループ)に分け比較 した。

両群の曲ごとの発汗量を比較 した ところ

,

「歌詞つ き」聴取時は有意な差があ り

( p<0. 03, d f =20

,t

1. 89 )

,

「歌詞な し」聴取時にも有意傾 向が見 られ

( p<0. 05

,

df =20

, t値

1. 5) , 2

曲とも感 じやすい人の方が発汗 量は多かった。なお,感 じやすいグループは聴取時 と インターバル時の変化が大きいのに対 して,感 じにく いグループは 「こいのぼり」以外あま り差がない。 こ れは

,

「こいのぼ り」は拍節的でテンポがとりやす く, 心身の高揚をもた らしやすい曲であるため,反応が活 発になった と推察 される。

このことか ら

,

「感 じやすい群」では心 と体の変化が 一致 していることが判明 した。

VL9

曲のFE好度 と発汗量の比較

各曲の噂好度を尋ねた質問紙(

A・ 8)

の回答 より,大 変好き

5

点,好き

4

点,ふつ う

3

点,嫌い

2

点,大変 嫌い

1

点 として点数化 した。なお,各曲の平均点は 「歌 詞つき

」3. 9

,

「歌詞な し

」3

.4点

,

「メロディー

」3. 0

,

「こいのぼ り

」3. 3

点であった。

次に噂好度の得点 と人数にばらつきがあった 「歌詞つ き」について,噂好度 と発汗量の関係を調べた。なお, 大変好き

( 5

点)と答えた

8

名 を上位群,ふつ う

( 3

点)と 答えた

1 0

名を下位群にわけ比較 した(表

2)

。なお

,

「嫌

い 」

「大変嫌い」 と回答 した者はいなかった。

2

「 歌詞つき」が大変好きな人 とふつ うの人の先汗主の比故 上位群 下位群 聴取時発汗量平 均 ( %) 1 2. 03

l

l. 04

曲後インターバル時発汗量平均( %) 9. 86 1 0. 71

両群 を比較 した結果,聴取時は上位群の方が下位 群に比べ発汗量が多 く,有意な傾向が見 られた

( P〈O. 06

,

d f =1 6

. t値

1. 1 4 )

。また曲後インターバル時は下位群 の方が上位群に比べ発汗量が多 く,有意な差が見 られ

( p<0.

01

.d f =1 6

, tlG

1. 97 ) .

噂好度の高い曲は,聴取時は発汗量は増えるが,聴 取後は聴取前に比べ減る割合が大きく,変化が激 しい。

St a t t o n&Za l ano ws l d1 7 ) 1 984

は音楽に対する好みが, 音楽聴取によるリラクゼーションにおける最 も重要な 要因であると指摘 しているように,好きな曲を聴いて いる時は,反応が活発にな り,聴取後は リラックスす るのではないか と考えられる。

Ⅵ.1 0

曲の印象

Ⅵ. 1 0 . 1

形容詞群チェック リス トによる曲の印象 各曲の印象を尋ねた質問紙(B・8)の回答か ら,各曲の 印象の違いを比較 した(図8)。

なつかしい

L・一 一歌詞つき 暮 ・歌詞 な し

‑・・‑A‑・‑・1‑メロディー Ⅹ

‑ こいのぼ り

図 8 曲別による印象の違 い

この図をみると,曲による印象の違いが明確に現れ ている。 「歌詞つき」と「歌詞な し」は同じ曲であるが, 被験者は歌詞がついているほ うにより鮮明な印象をも っていた。 「歌詞つき」と 「こいのぼ り」では特に印象 の違いが明確であった。

Ⅵ.1 0. 2

自由記述による曲の印象

3

は自由記述による各曲に対する印象を整理 し たものである。

‑ 36 ‑

(9)

表 3

日由記述による曲の印象

「ふるさと」歌詞つき

・聞き慣れていて自分も歌 うことができるので落ち 着く

・音楽会でみんなで大合唱したことを思い出す○

・近所の建物から夕方いつも流れてくるので,身近 で親 しみを感 じる.

・なつか しさがこみあげ,昔のことをぼんや りと恩 い出し,少 しの間そこに浸れたような感 じが した○

・小学校の教科書の挿 し絵を思い出した○

・合唱団が歌っていてとてもきれいなハーモニーだ つたことを思い出した○

・老人ホームを訪問 したときに歌い,お年寄 りが大 変喜んで下さった思い出等々o

「ふるさと」歌嗣なし

・歌い方が一昔ずつきれていて,曲のイメージにあ わなかつた.

・歌詞がないと曲にのれず,音をとるだけだと耳障 りだった○

・歌詞がないと落ち着かなかった○

・低い音程のラララの発声法が地声で気になったo

「メロディー」

・はじめてきくので記憶に残 らない

・先のメロディーを自分で予想 し予想通 りだと気分 がよかつたo

・はじめての曲で,特に興味や印象がない○

・違和感を感 じ,「あれっ」と思っている間に終わつ て しまったo

・「ふるさと」のハモ リのバー トだと思ったo

「こいのぼり」

・楽 しい気分になった○

・小さいとき,おばあちゃんが歌ってくれたことを 思い出した○

リズムがはずむような感 じで明るかつたo

・今の自分の気持ちとあわず,少 し疲れたo

「歌詞つ き」では 「なつか しい」 とい う感情が誘発 されやす く,24名 が過去 を振 り返 るエ ピソー ドを記入 していた。初 めて聴 く 「メロデ ィー 」については,何 も感 じない と答 えた人が多かった。 この ことによ り, 曲の印象 は過去の 自分 の思い出,経験,またその時の 聴 く人 の感情 とが大 き く関係 してい ると考 え られ る。

Ⅵ .

l l

「歌詞 つ き

「歌詞 な し」の比較

同 じ曲で も,歌詞 がついてい るもの とついていない ものでは違いがあるのか,歌詞 が及 ぼす影響 を探 るた めに

,

「歌詞 つ き」と 「歌詞 な し」時の印象の違い を比

較 した。表

4

はこれ らについての 自由記述 を整理 した ものである。

4 自由記述による「歌桐つきJr歌詞なし」の印象

「ふるさと」歌詞つき

・イメージをわかせやすい。

・歌詞の内容 と曲調があっていて心にひび く。

・ゆった りとしたメロディーに歌詞の内容がうまく 入 り込み,状況を思い描きやすかった。

・なっかしさが増すQ

・歌詞をしっか りきくQ

・スムーズに耳に入る。

・一緒に口ず さめるQ(歌詞を思い出す)

・メロディーのみだと,ラララの歌い方が気になる ため,歌詞があったほうが歌に集中できる。

・よく歌って歌詞を覚えていたため,歌詞を追いや すかった。

「ふるさと」歌詞なし

「歌詞なし」がききやすく,落ち着いたと答えた人 は

4

人いた。

・雑念がなく純粋にメロディーをきけたから

・詩がない時の方が自分の中にはいってきゃすかっ たo

・歌詞つきやこいのぼりは一緒に頭の中で歌って し まい,落ち着けなかった。

・歌詞がないので余計なことを考えずにいられた。

これ らの記述 によれ ば,曲の印象 は個人差があるも のの,感情 の高ま りや情動の変化 は

,

「歌詞つ き」の方 が 「歌詞 な し」 よ りも大き くみ られ た。 この ことは発 汗量測定結果 に合致 し,身体‑ の変化 も顕著 に現れて いた。現代 日本人 の 日常生活では,本来 は歌詞 をもつ 曲で も歌詞 な しで

BGM

と して 聞 き流 され て い る。

「歌詞 な し」 についての 自由記述 に も

BGM

的な とら え方 が見受 け られ る。

Ⅶ.

ま とめ

今 回の実験 では,音楽聴 取が心身 に影響 を及 ぼ してい ることについて,生理的指標 として も精神性発汗量 と, 質 問紙法 による情動反応 の調査 によって確認す ること ができた。特 に 「ふ る さと歌詞つ き」は,被験者 の 中に も

,

「過去 を想起 させ なっか しい と感 じる」人 が多 く, また,他 の

3

曲 と異 なる反応がみ られ,心の変化 だけ でな く,身体 にも影響 をもた らしていた。得 られ た結 果 は,一般的 に 「日本人 にな じみの深い唱歌」が聴取 者 の心身 に影響 を及 ぼす こ とを示唆 してい る とい える。

音楽 に対す る生理的反応 と情動反応 においては,普

(10)

楽の特質それ 自体を越 えた多 くの要因(噂好,気分,坐 活経験な ど)が複雑に絡み合 っている。本実験では,個 人差が音楽聴取に対 して大きな影響 をもた らしている ことも判 明 した。本実験の結果は,受動的音楽療法で 用いる音楽の扱い方に応用できると考 えている。 これ か らは具体的に実践の場で,個々人に応 じた音楽療法 のあ り方,使用す る音楽の検討 を深 めていきたい。

【謝辞 】

本実幹をすすめるにあた り,岡山学院大学教授の河 崎雅人先生,岡山大学工学部教授の高島征助先生に多 大なご指導を頂きま した。また,岡山大学の学生の皆 様 にも実験に協力 していただきま した。 ここに記 して 心 よ り感謝の意 を表 します。

引用 ・参考文献

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1 997

‑ 38 ‑

参照

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