傾斜密閉容器内における成層流体の自然対流熱伝達 (成層流体の体積割合と容器の縦横比の影響)
著者 木村 照夫, 竹内 正紀, 田中 数則
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 36
号 1
ページ 151‑160
発行年 1988‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/4259
福 井 大 学 工 学 部 研 究 報 告
第36巻 第1号 昭 和63年 3月
傾 斜 密 閉 容 器 内 に お け る 成層流体の自然対流熱伝達
(成層流体の体積割合と容器の縦横比の影響)
木 村 照 夫 * 竹 内 正 紀 紳 田 中 数 則 判 事
Natural Convection Heat Transfer in an Inclined Rectangular Enclosure with Two Stratified Fluid Layers
( Effect:
… l l T 山 山
ofEach山)
and Aspect Ratio of Enc10sure J
* *
Teruo KIMURA *,阿asanor寸TAKEUCHI‑"andKazunor・iTANAKA料 *
(Received Feb. 6
,
1988)Natura1 convection heat transfer of f1uids with two‑1ayer stratifi‑ cation in an inclined rectangu1ar enc10sure was studied. TL~ experi‑ ments were carried out for stratified f1uids such as spind1e oi1・pure water at the severa1 vo1umetric ratio of each fluid in the enc10sure. And the aspect ratios of the enc10sure H/W were varied in the range of 0.8圃 4. The ve10city and the temperature fie1ds were investigated in detail and the effects of the volumetric ratio of each fluid and the aspect ratio of the enclosure on the heat transfer coefficient were c1eared.
1.緒 百E=‑ヨ
151
密閉容器内における成層流体の熱伝達現象の解明は,熱移動量の調節などに関連した熱移動制御 の新たな方策,あるいは熱交換器への応用に対して興味ある問題であるロ著者らはこの熱伝達現象 に関して一連の研究1)‑4)を行なってきたが,各流体の流れが境界層的となる比較的レーレー数の大 きな範囲においては,成層流体の熱伝達は容器傾斜角に応じて変化する各流体領域の形状に大きく 影響されることを示したtそこでは容器の縦横比および成層流体の体積割合は一定とし容器傾斜 角のみ変化させて考察したが,熱伝達に影響をおよぼす各流体領域の形状は同一傾斜角においても 成層流体の体積割合や容器の縦横比によって異なるD したがって成層流体の熱伝達におよぼす容器
長産業機械工学科 材機械工学科 料*古河アノレミニウム工業側
の傾斜角の影響を論じる場合にはこれらの要因についても考慮する必要があるロそこで本報では傾 斜密閉容器内の成層流体の熱伝達特性を成層流体の体積割合と容器の縦横比の面から考察し,成層 流体を応用した幅広い熱移動制御の方法に示唆を与える。
2.主 な 記 号
A:伝熱面面積
Ar:容器の縦横比=H/W
g 重力の加速度
Grw:グラスホフ数=g s W3(TH‑Tc)/ν2 H:伝熱面長さ
Pr:プラγトル数
Raw:レーレー数=Grw
・
pr T:温 度V:成層流体の体積割合 W :伝熱面間隔
X,Y:全体座標系 X,Y:局所座標系
x,y:無次元座標軸=X/W,Y/W
X,子:無次元座標軸=X/W,Y/W s :体膨脹係数
ν:動粘度
θ:無 次 元 温 度 =(T‑Tc)/(TH‑Tc) ψ:容器傾斜角
添 字
1 ,II :流体領域 1 (上部流体), II (下部流体)
C:冷却面 H:加熱面
3 .実験装置と方法
本報で対象とする系は長方形断面の密閉容器 である。その装置の概略と座標系をそれぞれ図 1,図2に示す。容器の加熱面および冷却面の 裏面にはそれぞれ10剛間隔(H=200mmの場合は20 剛間隔)で分割された電気加熱用カートリッジ
ヒータと冷却水路が設けられ,一様温度に制御 される。流体には上部流体としてスピンドル油 を,下部流体として純水を用いた。容器の傾斜 角はこれらの流体の加熱面上の界面位置が分割
.
f I I
‑・
0‑120 j 140
① Heater ②Cooling water channel ③ Hole for thermocouple probe @ 8akelite plate⑤Gtass wool
⑥ A州 plate ⑦ Hotwall ⑨ Cold wal¥ 図1 実験装置の概略
された加熱面の各ヒータの聞に設けられたベー クライト板(厚さ0.5剛)の上に位置するように 調整した。
図3は長方形断面の容器について,容器傾斜 え 角ψと下部流体の体積割合Vnとの組合わせに よって生じる界面と周囲壁との位置関係を示し 合わせて,本報で実験の対象とした組合わせも プロットしであるD 図に示す様に,成層流体の 体積割合の影響を調べるには,容器の伝熱面長 さH=l00皿,伝熱面間隔W=50mm(Ar=2)と し各伝熱面近傍に生じるメニスカスの存在お よび先述の界面位置の設定方法を考慮して,下
153
Y
x
図2 容器の傾斜と座標系
部流体をvn=0.33,0.53, 0.73の体積割合で成層させた場合について実験した。また,容器の縦 横比の影響を調べるためには,下部流体の体積割合を vn=0.53に固定し, H=100聞で一定とし,
W=25剛(Ar=4),50皿(Ar=2),1
∞ 胴
(Ar=l)と変えた場合,およびW=50聞で一定とし, H=40皿(Ar=0.8),100皿(Ar= 2), 200mm (Ar = 4)と変えた場合について実験した。図3に示す様に,
成層流体では伝熱面が鉛直より傾斜すると,ある傾斜角において各流体領域は一方の伝熱面にしか 接しなくなるが,その傾斜角は成層流体の体積割合Vnと容器の縦横比Arによって変化する。すな わち Vnは0.5より離れるほど,またArは小きくなるほど,各流体領域が共に加熱面と冷却面の両 伝熱面に接する容器の傾斜角の範囲が小さくなるが,本報ではこの各流体が両伝熱面に接する容器 の傾斜角の範囲を考察の対象とした。容器内部の温度は移動装置に取付けた熱電対をX方向には5 凹間隔で,またY方向には界面近傍で、はl醐間隔で,その他の場所では2'"'‑'5皿間隔で移動させて測 定した。また容器内の流体の流動状況の特徴の概略を知るため,チモールプノレー溶液あるいはアル
ミニウム粉末をトレーサとして容器内に注入し流動を可視化した。
なお,実験はaTm(=TH‑Tc)キ42'Cで行ったが,後述する式(2),(3)の定義によるそれぞれの流
1.0
~0.5
30 60 90 120 150 180
ψDeg.
図3 界面位置に及ぼすψとV nの影響
体領域のレーレー数は本報の実験条件では表 l に示す様になるD
3 .実験結果と考察
3. 1 成層流体の体積割合が熱伝達に及ぼす影響 3.1.1 温度場と流れ場
W (園田)
25 50 100
表 1 実 験 条 件
成層流体の熱伝達は容器内の流れ場,温度場と密接な関係がある。そこで先ずスピンドル油と純 水をvn=0.33,0.53, 0.73の体積割合で成層させた場合の温度場と流れ場の様子をψ=48,90,133。 を例に図 4(a)"'‑'(c)に示す。ここに図中の数字は温度場に関するもので,無次元温度 θの値を10倍 し整数化(切捨て)して表したものである。また,矢印は観察された流動状態の概略を模式的に示 したものである。図から解かるように,伝熱面に沿う流れが境界層的になる程度にRawが大きい 領域(単一種流体の鉛直容器ではRaw>4.4x104・(H/W)一14/3で容器内の流れが境界層的になる5))で なされた本実験結果では,容器内の流れ場と温度場の保子は成層流体の体積割合にかかわらず同じ になる。すなわち, ψく90。では上下の各々の流体領域には伝熱面に沿う境界層形の平行四辺形状 の循環流が生じその循環流の上,下の領域では流れは非常に遅いか,淀んだ状態 (以後,この領
(a) t.p =48
・
TH Tc TH Tc
叩=900
(c)ψ=133
・
V 11=0.33 V 11=0.53 V 11=0.73 図4 温度場と流れ場(V nの影響)
域を淀み部と呼ぶ)になる。その循環流の斜め方向 の長さは上部流体領域では冷却面長さで,下部流体 領域では加熱面長さで定まる。したがって,容器傾 斜角が同じであれば,淀み部の大きさと温度場の様 子は成層流体の体積割合にかかわらずほぼ同じにな るが,循環流は体積割合が小さい流体領域ほど偏平 になる。また,伝熱面に占める淀み部の割合も,体 積割合が小さい流体領域ほど大きくなる。淀み部の 無次元温度は上部流体領域では8"'9,下部流体領 域では 0'"'‑'1となり,淀み部では伝熱面と流体との 温度差が小さく,熱伝達が悪くなることを示してい る白また,循環流の内部(コア部)では水平方向の温 度は伝熱面近傍を除いてほぼ一定となり,鉛直方向 に温度成層する。 (ti~90。になると,上下の各々の 流体領域では,その領域の境界に沿う境界層形の循 環流が生じ先述の淀み部は生じなくなる。したがっ て, ψ>900では循環流はそれぞれの領域で台形に なり,上部流体領域では体積割合が小さくなる程,
循環流に接する加熱面面積に対する冷却面面積の割 合が大きくなり,下部流体領域では体積割合が小き くなる程,冷却面面積に対する加熱面面積の割合が 大きくなる。そして,その傾向は傾斜角が大きい程 顕著になる。循環流の内部(コア部)では下部流体は 鉛直方向に温度成層するが上部流体では温度成層が かなり不明確になる。
図5はコア部の温度分布の様子をより明確に示す ために,王=0.5の断面の温度分布を示すD 図より 明らかな様に,この断面における下部流体領域の最 高温度と上部流体領域の最低温度は容器傾斜角と成 層流体の体積割合に関わらず,図中に点線で示す両 流体の界面近傍に生じかっ下部流体の最高温度の 方が上部流体の最低温度より高くなる。したがって,
界面付近では温度こう配が逆転しており,界面で下 部流体より上部流体への熱移動が起きていることを 示している。また,この下部流体の最高温度および 上部流体の最低温度は,容器傾斜角vが900以下で,
かつ小さいほどVlIの影響を大きく受け,そこではVIl が大きくなる程,すなわち両流体の界面位置が高く
155
︑ / 圃
t
一
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・﹃〆司
多 ? 一 / 一
ハu
内ノ﹄
¥::;:.. 1.0
V 11=0.33
一 一 ̲
Boundary surfaceo
O 0.5e
(a) LP =48‑
1.0
2.0
1>‑1.0
O O
(b) LP=90
・
2.0r‑‑‑:::
/、 \~v
付"",;,/'
‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ーーー占ー司司ー、、ーー・・ーーーー V 11=0.53
O O 0.5
6 (c) 叩=133
・
1.0
図5 王=0.5の断面の温度分布
なる程上記温度が高くなる。しかし ({Jが90。より大きくなると,これらの温度はVnによってあま り変わらなくなる。
3.1.2 熱伝達係数
図6は成層流体全体の平均熱伝達係数αHmとψとの関係をaTm毛42'tを例に種々の体積割合につ いて示している。ここでαHmおよび先述のRawJ' Rawuは次式
QH .. ( 1 )
αHm AH
・
aTmg s1W3aTm・Pr,
Raw
, = . ‑ ‑ . "
ー…一一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一(2 )νI g suW3aTm・Pru
Rawn 一一‑‑‑‑‑‑‑‑‑一…一一ー一一‑‑‑‑‑‑‑ー一一一一一一一一一一一一(3 ) νJJ
ここに aTm=TH‑Tc
で定義した。また, α mは各流体領域の平均熱伝達係数αHJ.αHJJを用いると次式で表される。
αHm=4uHI+
今与削
(4).n.H .n.H
QHJ
αHJ= AH1・aTm ー (5 )
QHU
αHU= AHU・aTr口
ー一 (6 )
図6には式(4)の右辺第1項,第2項の値も示してある。図より知られる様に成層流体の体積割合 にかかわらず,成層流体全体の平均熱伝達係数αHmは成層流体を構成する流体がそれぞれ単独に同 一形状の容器内に存在する場合の中間値になり,かつ,一定のψでは,下部流体の体積割合が小き
くなるほどαHmは小さくなる。また,単一種の流
600 │品川
1
体ではαHmはvの増加と共に大きくなるが,成層 V I I a H. で品ー;‑aH r"'A‑" ‑a N 1 1 流体ではαHmはある容器傾斜角で最大になり,そ ( 三= l ‑0‑
何3色~ 500 0.73 ~I
, . .
I ....れを越えてψが大きくなるとαHmは減少する。さ G .53
0.33 ‑0‑¥φ
・
ちに,下部流体の体積割合が小きくなるほど,そ
〈さ輔1《400
。
‑守・のαHrnが最大になる容器傾斜角が小さくなるとと
もに, αHrnが最大値をとる傾斜角の付近でαHmが d 300 余り変わらない容器傾斜角の範囲が狭くなるロす
なわち,下部流体の体積割合が小さくなるほどαHm SE 200 は 容 器 傾 斜 角 に 対 し て 敏 感 に 変 化 し こ の 傾 向 は
ψ>90。において顕著である。また,図6より知
100 られる様に,成層流体全体の平均熱伝達係数αHrn
とvの関係は式(4 )右辺第2項すなわち下部流体
に関する値である (AHnlAH)・αHIIとψの関係に定 OO L 30 60 90 120 150 180 4' Deg.
性 的 に 一 致 し 定 量 的 に も 下 部 流 体 の 体 積 割 合 が
小さくなるほど,それらの差がいくぶん大きくな 図6 平均熱伝達係数(V[Jの影響)
157
るもののかなり一致している。したがって,表1に示したように本報の成層流体の組合わせでは下 部流体のレーレー数Rawnが上部流体のレーレー数RaWIより数倍大きいので,以上に述べた成層流 体全体の平均熱伝達係数に対する下部流体の体積割合が及ぼす影響はレーレー数の大きい方の流体 が及ぼす影響であると考えられる。ここで,成層流体の全体の平均熱伝達係数αHmが成層流体の体 積割合によって,上記のような傾向を示す理由について以下に考察を加えるD
図7.図8はそれぞれ各流体領域の平均熱伝達係数αHI> αHnおよび(AHn/AH)と容器傾斜角ψと の関係を示す。図7から知られる様にαmはα mに較べではるかに小さく,また,先述の様に成層 流体全体の平均熱伝達係数αHmと下部流体の(AHU/AH)
・
α mとはかなり一致しているので,下部 流体の平均熱伝達係数αHnに着目すると,図7に示す様に, ψが90。より大きい範囲でα mはψの 増加と共に急激に減少しその低下の割合は下部流体の体積割合が小さいほど大きくなる。これは ψのこの範囲では各成層流体にそれぞれの領域の境界に沿う単一の循環流が生じかっ同一傾斜角 では,下部流体の体積割合が小さくなるほど下部流体の加熱面の面積に対する冷却面の面積の割合 が小さくなることによる成層流体の形状効果であると考えられる。一方,図 8に示す様に.(AHII/ AH)は幾何学的性質からψの増加と共に単調に増加し 600 同一傾斜角では下部流体の体積割合が小さいほど小
きくなる。したがって,これらの積である(AHn/AH)
・
α mは上記のような傾向を示すものと考えられるロ
3.2 容器の縦横比が熱伝達に及ぼす影響
3.2.1 温度場と流れ場
容器の縦横比が成層流体の温度分布と流れ模様に 及ぼす影響を調べるために,成層流体の体積割合VII を0.53に固定して,伝熱面長さをH=100剛で一定 とし.W=loo剛 (Ar=l),50剛 (Ar=2). 25non (Ar
=4)とした場合の温度場と流れ場の様子の測定例を 図9(a) ‑‑‑‑(c)に,伝熱面間隔をW=50醐で一定と し, H=40剛(Ar=0.8),100胴 (Ar=2)とした場合 の温度場と流れ場の様子の測定例を図
10(a) "‑' (c)に図4と 同 じ 表 現 で 示 す 。 1 .0
これらの図を図4と較べるとq;く90。 :
; 0.8 とψ迄900の そ れ ぞ れ の 場 合 に 現 れ る 容器内の温度場と流れ場の様子はAr主0.6 の値に関わらず,先述の結果と同じで
0.4 ある。詳しくみれば,同ーの容器傾斜 角でかつ同ーの成層流体の体積割合で 比較すると, Arが小さくなるぽと,
q; <90。の場合には各領域に生じる平 行四辺形状の循環流は偏平になり,淀 み部の占める割合が大きくなる。 ψ =
0.2
。 。
n u n u
' u
﹃
︻認 可て 主
国Z
6
VII
さ200
o
o
30 60 90 120 150 180 I.p Deg.図7 個々の流体領域の平均熱伝達係数
30 120 150 180 中 Deg.
60 90
図8 AHIJ/AHとvとの関係(Vnの影響)
90。では各流体領域の循環流の縦横比が小さくなる。さらにψ>90。においては上部流体領域では循 環流に接する加熱面面積に対する冷却面面積の割合が大きくなり,下部流体領域では冷却面面積に 対する加熱面面積の割合が大きくなる。前節と同様に,この様な各領域の加熱面と冷却面との面積 の違いが後述する様に熱伝達を大きく支配する。
3.2.2 熱伝達係数
図 11 と図 12は成層流体全体の平均熱伝達係数 αHm と v との関係を ~Tm 寺 42 'Cを例にそれぞれH=
100胴で一定の場合と W=50剛で一定の場合について種々のAr~こついて示している口 なお,それら の図には式(4 )の右辺第1項,第2項の値も示してある。図11,図12から解るように, ψ=90。の とき, H=一定とした場合にはαHmはArの値によって変わらないが, W =一定とした場合にはαHm はArが小さいほど大きくなる。これは本報の様に流れが境界層的である場合には単一種流体の密
LP =50
・
LP=130
・
Ar=l
LP =48
・
(a) LP<90
・
(b) LP=90o
LP=133
・
(c) LP>90
・
Ar=2
t.p=480
Tc Tc
LP=1350 Ar=4
図9 温度場と流れ場 CArの影響, H=一定)
159
閉容器内の平均熱伝達係数は伝熱面高さを代表寸法とするレーレー数で定まる5)ことに対応してい るo
H=
一定あるいはw=
一定のいずれの場合においても Arを一定にしてψを変化させると, Ar の値にかかわらず αHmは容器傾斜角が90 を挟むある範囲でψの増加と共にゆっくり増加するが,その傾斜角よりも大きくなっても小さくなっても急激に減少する。そして, αHmがψと共にゆっく り増加する傾斜角の範囲は Arが小さくなるほど狭くなる。すなわち, Arが小さいほど αHmは容器 傾斜角に対して敏感に変化すると言える。以上のような αHmとvとの関係は 3.1.2節で述べた場合 と同様に,下部流体の CAHII/AH)
・
αHIIとψの関係と一致しており ψとAHII/AHとの幾何学的関係お よびψとαHIIとの関係の Arによる違いの相乗効果に支配されているといえる。400
Ar α川 一R一"‑a削 一 白 一 州一
1 1
‑ 6 ・ . . .
I ....当 ベ 〉 ① ・
~ 300i
4 T = O ・ ・ ・
国
とj
ミ │ ミ
200d
ψ=65
・
中=65・
100(a) lP < 900 6 Z
E
.•
O 30 60 90 120 150 180 4> 0句・
TH
図
1 1
平均熱伝達係数 CArの影響,H=
一定);: (b)ψ=90。 5E、E 400
A¥
•
A•
。:t:
200 o z
E
100 lP=117
・
LP=115。(c)ψ>90
・
Ar=O.8 Ar=2 OO
L
30 60 90 120 150 180
'‑p Deg.
図10 温度場と流れ場 CArの影響,
w=
一定) 図12 平均熱伝達係数 CArの影響,w=
一定)4.結 言
本報では密閉容器内の成層流体の熱伝達特性を,成層するそれぞれの流体の流れが境界層的にな る比較的レーレー数の大きな場合について,成層流体の体積割合,容器の縦横比および容器傾斜角 を種々変化させた実験結果から考察した。得られた結果を以下に要約する。
(1) 成層流体の体積割合あるいは容器の縦横比に関わらず,それぞれの流体領域には,容器傾斜角 が90。以下の場合は平行四辺形状の循環流と淀み領域が生じ容器傾斜角が90。以上の場合は台形 形状の循環流が生じる。
(2) 成層流体の全体の平均熱伝達係数α H mは成層流体を構成する流体がそれぞれ単独に同一形状の 容器内に存在する場合の中間値になり,各流体領域のレーレー数に本報の様に大きな差がある場 合にはレーレー数の大きな流体領域の体積割合が小きくなるほどα H mは小さくなる。
(3) いずれの場合もレーレー数の大きな流体領域の容器傾斜に伴う加熱面と冷却面との面積比の変 化が容器傾斜角と平均熱伝達係数との関係に対して支配的であり,同一形状容器についてはレー レー数の大きな流体領域の体積割合が小きい程,また体積割合が一定の場合には容器の縦横比が 小きくなるほど成層流体の全体の平均熱伝達係数は容器傾斜角に対して敏感に変化する。
参 考 文 献
1) 木村・ほか3名, 互いに混ざり合わない流体が存在する密閉容器内の自然対流熱伝達"機論,
51‑464, B (昭60),1251.
2) 木村・ほか3名, 異種流体が密閉容器内で成層する場合の自然対流熱伝達現象機論, 52ー 474, B (昭61),617.
3) 木村・ほか2名, 傾斜密閉容器内における成層流体の自然対流熱伝達(第l報,数値計算に よる一考察)" , 日本機械学会東海支部第37期総会講演会講演概要集, (昭63).
4) 木村・ほか2名, 傾斜密閉容器内における成層流体の自然、対流熱伝達(第2報,流れが境界 層的となる場合の実験)"日本機械学会関西支部第63期定時総会講演会講演概要集, (昭63). 5) Bejan, A. and Tien, C. L., Trans. ASME, J. Heat Transfer, 100‑9 (1978),641.