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気腫性肺嚢胞に発生した肺癌の一切除例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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気腫性肺嚢胞に発生した肺癌の一切除例

国立国際医療センター 呼吸器外科 天野宏 奥脇英人 伊藤秀幸 野村友清 森田敬知 稲垣敬三       要旨  症例は77歳男性。2年前より肺癌検診を受けているが平成11年6月右中肺野の 異常影を指摘された。胸部CTにて右肺中葉の嚢胞壁に沿い1.5cm大の結節影が認めら れた。右B4擦過診にてclass V adenocarcinomaと診断されたため全身検索を行い臨床 病期IAであったため右肺中葉切除、リンパ節郭清術を施行した。病理組織診断は高分化 腺癌でありpT2NOMO stage IBであった。気腫性肺嚢胞に発生した肺癌の一切除例を提 示し若干の文献的考察を加え報告する。        はじめに  以前より気腫性肺嚢胞と肺癌との関連が論じられており、男性の気腫性肺嚢胞の肺癌 の罹患率は気腫性肺嚢胞でない症例の約32倍との報告がある。また肺嚢胞に発生した 肺癌は単純X線のみでは早期発見が困難な場合が多いといわれている。今回我々は気腫 性肺嚢胞に発生した肺癌の一切除例を検討し若干の文献的考察を加え報告する。

患者:77歳男性

主 訴:胸部X線異常影 家族歴、既往歴:特記すべきことなし 喫煙歴:20本/日 50年間 症例 現病歴:平成11年6月の検診にて右中肺野の異常影を指摘され当院受診となった。 現 症:身長168.3cm、体重54.5kg。表在リンパ節を触知せず。胸部聴診上異常を認め     ず。 検査所見:血算、血液生化学、腫瘍マーカーともに異常を認めず。呼吸機能検査では%     VC91.1%、 FEV1.0% 64.0%と閉塞性障害を認めた。 一3一

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入院時胸部X線、(図1):右中肺野に透過性の元進した気腫性嚢胞がありそれに接し1cm     大の結節影を認めた。また全体に気腫性変化を認め、左上肺野には以前より指     摘されている結核腫を認める。 胸部CT(図2):右肺中葉S4に気腫性嚢胞が存在し、嚢胞壁に1.5cm大、不整形、胸     膜陥入像を伴う結節影を認める。 気管支鏡検査:可視範囲に異常を認めず。右B4気管支擦過にてclass・V・adenocarcinoma     と診断されたため全身検索を行い、臨床病期TINOMO stage IAとし右肺中葉     切除、リンパ節郭清術を施行した。 手術所見:胸水、癒着は認めないが全体に気腫性変化が強く、右S4の胸膜直下に不整     形の結節を触知した。胸膜面には白色胸膜肥厚と胸膜陥入を認めた。     sTINOMO、 P1、 EO、 DO、 PMO、 stage IAと診断した。 切除標本(図3):肺実質には強い気腫性変化を認めた。腫瘍は中葉の気腫性嚢胞壁に     存在し、4.8×3.7×2.Ocm大で胸膜陥入を伴っていた。 病理組織所見(図4、5):腫瘍は嚢胞壁に沿って進展しており大部分は乳頭腺管状増殖     をしめす高分化腺癌であるが、一部sohdで低分化な部位を認めた。病理組織     学病期はT2NOMO stage IBであった。術後経過は良好であり現在外来にて経     過観察中である。       考察  肺癌の危険因子として喫煙に加え、気腫性嚢胞があげられこれまでに気腫性嚢胞と肺 癌の合併に関する報告が散見される1)−3)。Venutaら4)は95例の切除された気腫1生嚢胞 を組織学的に検討し4例(4.2%)に潜在癌を認めたと報告している。また上吉原らは気 腫性嚢胞に接した肺癌の本邦報告例の72例を集計しているが、ほとんどが男性で喫煙 指数600以上の重喫煙者であったとしている5)。以上より本症例は肺癌の高危険群であ ることがいえる。  気腫性嚢胞に肺癌が発生する成因として嚢胞内に吸入された物質の長期にわたる停留 刺激、嚢胞壁の内面上皮の扁平上皮化生、嚢胞壁の癩痕からの発癌などが挙げられてい る5−7)。  また気腫性嚢胞に発生する肺癌において早期発見が困難とされるのは胸部X線では腫 瘍陰影が嚢胞陰影と重なり存在診断が難しいことや肺癌に特徴的な悪性所見に乏しいこ とがあげられる。Zuluetaらは気腫性嚢胞を有する患者は肺気腫の進行の評価と肺癌の 早期発見のためにCTをスクリーニングに用いるべきと主張している8)。 一4一

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  本症例は2年前より検診を受けており振り返ってみれば今回指摘された結節影を指摘  することが可能であり(図6)、肺癌の高危険群であることを考慮すれば早期の精査が  望まれるところであった。CTにて悪性が疑われれば気管支鏡下生検を行い結果が陰性  でも安易に経過観察とせず陰影の増大や嚢胞壁の肥厚などの変化を認める場合、CT下  生検または胸腔鏡下生検も考慮すべきと考える。        まとめ  気腫性肺嚢胞に発生した肺癌の一切除例を報告した。  一般に気腫性肺嚢胞に発生した肺癌は単純X線では早期発見が困難な場合が多いが、 嚢胞壁に接する陰影に対しては癌を念頭におき積極的に精査することが望まれる。       文献 1)Stoloff IL, Kanofsky P, Magilner L:The risk of lung cancer in male s with  bullous disease of the 1ung. Arch Environ且ealth 22:163・167、1971 2)浦山博、岩喬、渡辺洋宇、他:巨大気腫性肺嚢胞に合併した肺癌3例の知見.  胸部外科 34:710・714、1981 3)福瀬達郎、奥村典仁、桑原正喜:気腫性肺嚢胞症の嚢胞壁に発生した肺癌の7例.

 日胸47:130・136、1988

4)Venuta F, Rendina EA, Giacomo TD, et al. :Occult lung cancer in patients  with bulou『emphysema. Thorax 52:289・290、1997 5)上吉原光宏、平井利和、川島 修、他:気腫性嚢胞壁に接した原発性肺癌の1手術  例一本邦報告例を加えての検討一肺癌 38:29・35、1998 6)守尾篤、坂口浩三、二川俊郎、他:気腫性肺嚢胞壁に発生した胸壁浸潤肺癌の1  切除例.肺癌 38:37・42、1998 7)吉永康照、岩崎昭憲、松添大助、他:肺嚢胞内・嚢胞壁に発生した肺癌手術症例の  臨床的検討.日呼外会誌 9:486・492、1995 8)Zulueta JJ, Bloom SM, Rozansky MI, et a1.:Lung cancer in patients with bullous  disease. Am J Resph℃rit Care Med 154:519・522、1996 一5一

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図1

図2

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(5)

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図4

−7一

(6)

       図5

図6

−8一

参照

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