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<原著>糖尿病性腎症患者の生活習慣の特徴 : 非腎症患者との比較 利用統計を見る

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糖尿病性腎症患者の生活習慣の特徴

−非腎症患者との比較−

Comparison of the Lifestyle Characteristics of Diabetic Nephropathic and

Diabetic Non-nephropathic Patients

西田 頼子 , 中村美知子

NISHIDA Yoriko, NAKAMURA Michiko

要 旨

目的:糖尿病性腎症患者の生活習慣の特徴を明らかにするために,非腎症患者の習慣と比較検討すること。 対象:外来通院中の発症 5 年以上の 2 型糖尿病患者 65 名,腎症発症者(以下,腎症群)19 名,非腎症者(以下, 非腎症群)46 名。 調査内容:対象者の属性,生活習慣は食事(食品群別摂取),飲酒・喫煙,清潔行動の頻度と,活動は身体活 動レベルと運動習慣,心理状態は STAI(状態不安)を用いた。 結果:腎症群は 65.5 ± 12.7 歳,非腎症群 61.4 ± 12.3 歳で,糖尿病罹患歴はそれぞれ 15.3 ± 5.8 年と 13.0 ± 6.4 年であった。腎症群のほうが低値で有意差があったのは,魚類の摂取頻度が 0.7 ± 0.5 回 / 日,身体活動レベ ルは「低い」が 73.7%,1 週間の入浴頻度であった。心理状態では,両群に有意差はなかった。

Purpose: The aim of this study was to clarify the lifestyle characteristics of diabetic nephropathic (DN) patients, and deter mine the dif ferences between the lifestyles in DN patients and diabetic non-nephropathic (DNN) patients.

Subjects: A total of 65 outpatients with type-2 diabetes, including 19 DN patients, participated in this study. The mean ages of the subjects were 65.5±12.7 years (DN) and 61.4±12.3 years (DNN).

Methods: Lifestyle factors, patients’ dietary habits, alcohol intake, smoking status, physical activities, personal hygiene, and mental state were assessed. Measurements of daily nutritional intake (using food groups), physical activity (using the level of physical activity and exercise habits) and anxiety (using the State-Trait Anxiety Inventory) were performed.

Results: Few lifestyle dif ferences were obser ved between the a groups. The following lifestyle characteristics in DN patients were identifi ed: DN patients had lower fi sh intake, lower levels of physical activity, and bathed fewer times per week than DNN patients. However, no signifi cant difference in anxiety was observed between the DN and DNN patients.

キーワード 糖尿病性腎症患者,生活習慣

Key Words Diabetic Nephropathy Patient, Lifestyle

受理日:2011 年 1 月 20 日

山梨大学医学工学総合研究部 基礎・臨床看護学講座: I n t e r d i s c i p l i n a r y G r a d u a t e S c h o o l o f M e d i c i n e a n d Engineering (Clinical Nursing), University of Yamanashi

Ⅰ . はじめに

わが国の糖尿病患者は増加の一途をたどり,厚生労働 省の推計(平成 19 年)によると約 890 万人が糖尿病であ るといわれ,腎症を合併している糖尿病患者は 11.1%で あった1)。透析導入患者の原疾患の 44.5%は糖尿病性腎 症であり,その数は年々増加している2)。糖尿病患者の 増加には生活習慣の変化が関連し,糖尿病性腎症患者の 血糖値や血圧のコントロールにも生活習慣が大きく関係 する。生活習慣は,日々の食事摂取状態や運動量などの 個人的な行動パターンで,健康の維持や病気の発病・増 悪 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 知 ら れ て い る。 森 本3) Breslow の 7 つの健康習慣をもとに日本の成人の生活習

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慣と健康の関連の調査を重ね,毎日の朝食摂取,1 日 7 − 8 時間の睡眠,栄養バランスを考えた食事,喫煙がな い,定期的な運動,過度の飲酒がない,労働時間は 1 日 9 時間以内,自覚的ストレス量が多くない,の 8 つの生 活習慣が良好な健康状態に関連していることを明らかに している。糖尿病患者は,肉類などの摂取過剰や主食の 摂取量低下,果物や菓子類の摂取増加といったバランス の悪い食事,早食いや朝食抜きなどの不規則な食生活, 運動不足,喫煙,ストレスなどの生活習慣の乱れにより 病状が悪化し,糖尿病性腎症の発症につながり4)-8),塩分 やたんぱく質の過剰摂取は糖尿病性腎症を増悪させる9) と指摘されている。糖尿病患者の生活習慣の実態を把握 し,患者への個別の生活指導により腎症への移行を予防 することは,患者の QOL を維持・改善するために重要 であるが,医療者による患者への腎症予防を考慮した個 別の生活指導は十分に行われていない現状がある。

Ⅱ . 目的

糖尿病性腎症に移行した患者の生活習慣の特徴を明ら かにするため,腎症発症者と非腎症者間の生活習慣を比 較し,腎症予防のための生活指導について考察する。

Ⅲ . 用語の操作的定義

糖尿病性腎症患者:外来通院中の発症 5 年以上の 2 型糖 尿病患者で,血清クレアチニン値≧ 1.10mg/dl の男性お よび血清クレアチニン値≧ 0.78mg/dl の女性 生活習慣:健康に関わる日常生活における個人の習慣や 行動様式。食事,飲酒・喫煙,活動,清潔,心理状態を さす。食事は 1 日の食品群別摂取頻度,飲酒は 1 週間の 飲酒回数,喫煙は 1 日の喫煙本数,活動は身体活動レベ ルと運動習慣,清潔は歯磨きや手洗い等の 1 日の実施頻 度, 心 理 状 態 は STATE-TRAIT ANXIETY INVENTORY(以下,STAI)10)の不安状態である。

Ⅳ . 調査方法

1. 対象 外来通院中の発症 5 年以上(合併症は糖尿病発症後数 年から多発のため)の 2 型糖尿病患者で調査の趣旨につ いて説明し,同意が得られた者とした。対象者は,糖尿 病性腎症と主治医より診断された糖尿病性腎症群(血清 クレアチニン値:男性≧ 1.10mg/dl,女性≧ 0.78mg/dl) と非腎症群(血清クレアチニン値:男性 <1.10mg/dl,女 性 <0.78mg/dl)の 2 群に区分した。 2. 調査内容 1) 対象者の属性 (1) 社会的属性:年齢,性別,職業,同居の有無 (2) 身体的属性:血圧値,身長・体重・Body Mass Index(以下,BMI)。血液生化学データは,栄養状 態として,血中たんぱく質濃度(total protein 以下 TP,albumin 以 下 Alb), 血 中 脂 質 濃 度(total cholesterol 以下 T-cho,triglyceride 以下 TG)を, 血糖コントロール状態は血糖値(blood sugar 以下 BS)およびグリコヘモグロビン値(glycohemoglobin 以下 HbA1c)を,腎機能の指標として血清尿素窒素 値(blood urea nitrogen 以下 BUN)および血清クレ アチニン値(creatinine 以下 Cre),貧血状態として ヘモグロビン値(hemoglobin 以下 Hb)・ヘマトク リット値(hematocrit 以下 Ht),血清電解質値(ナト リウム,クロール,カリウム,リン,カルシウム) を調査した。 2) 生活習慣 生活習慣は,「健康日本 21」(厚生労働省)と森本3)「健 康習慣」を参考に抽出した食事,飲酒・喫煙,活動,清潔, 心理状態で構成した。 (1) 食事:食事の規則性(食事回数と間食の有無)と,食 品群(主食,肉類,魚類,豆類,乳製品,野菜類,卵, 塩分)について,1 日に何回摂取したかを問う摂取 頻度を調査した。高橋ら11)の食品群摂取頻度をも とに,標準的な 1 回量を提示した。味噌汁や漬物, 菓子類も合わせて全 11 項目。 (2) 飲酒・喫煙:飲酒は 1 週間に何回飲酒するかの摂 取頻度を,喫煙は喫煙習慣の有無,1 日に吸う煙草 の本数。 (3) 活動:1 日の生活活動時間を「日本人の食事摂取基 準(2005 年版)」に基づき,身体活動レベル低い(Ⅰ): activity factor(以下 Af)1.40 ∼ 1.60 を 1 点,ふつう (Ⅱ):Af1.60 ∼ 1.90 を 2 点,高い(Ⅲ):Af1.90 ∼ 2.20 を 3 点,の 3 段階に分類した。運動習慣は,「週に 2 回以上,1 回 30 分以上の運動」を「していない」0 点, 「継続 1 年未満」1 点,「継続 1-2 年」2 点,「継続 2 年 以上」3 点とし,健康維持のために 1 日の身体活動 頻度を質問した。 (4) 清潔習慣:歯みがき,うがい,手洗い,入浴など についての 1 日(入浴については 1 週間)の実施頻 度。 (5) 心理状態:現在の状況に対する不安について STAI 日本語版の状態不安10)20 項目,4 段階尺度。高得 点の方が心理状態が良くないことを示す。20 項目 中 10 項目は逆転項目である。

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3. 調査手順 A 病院外来診療後,個室にて質問紙を用いた面接調査 を行った。罹患歴,治療内容,合併症の有無と,血液生 化学データは対象者の同意を得て,原則として当日の検 査結果を診療記録より収集した。 4. 倫理的配慮 診療科長・外来主治医の了承を得た後,対象者に調査 の趣旨・内容・手順を説明し,同意の得られた者を対象 とした。調査で得られたデータは,個人を特定できる形 で公表せず,研究以外では用いないこと,診療記録から 血液データ等の情報収集を行うこと,調査への拒否・中 断が可能であること,拒否・中断により療養上の不利益 を被ることがないことを口頭・文書で説明した。同意の 得られたものについては同意書に署名を得た。研究計画 は,山梨大学医学部倫理委員会の承認を得た。 5. 分析 対象を腎症群,非腎症群の 2 群にわけ,年齢,罹患歴 などについては平均値を算出し,2 群間の差の検定には t 検定を用いた。生活習慣は平均値または中央値を算出 し,平均値の差の検定は t 検定,順序データの差の検定 は Mann-Whitney の U 検定,カテゴリー間の比較はχ2 検定を用い,有意確率(p 値)0.05 以下を有意差ありとし た。統計には統計ソフト SPSSver.14.0 を用いた。

Ⅴ . 結果

1. 対象者の属性(表 1) 2 型糖尿病患者は 65 名,内訳は腎症群 19 名,非腎症 群 46 名であった。平均年齢は腎症群 65.5 ± 12.7 歳,非 腎症群 61.4 ± 12.3 歳で,糖尿病罹患歴は腎症群 15.3 ± 5.8 年と非腎症群 13.0 ± 6.4 年であり,2 群間に有意差はな かった。性別では両群とも男性が多かった。 腎 症 群 の BMI は 22.8 ± 3.0, 血 圧 は 収 縮 期 131.7 ± 14.9mmHg,拡張期 70.6 ± 14.0mmHg であり,非腎症 群とともに基準値内で有意差はなかった。血液生化学 デ ー タ で は, 腎 症 群 は BS 値 176.0 ± 70.8mg/dl, HbA1c 値 6.7 ± 1.1%で基準値より高く,非腎症群と有 意差はなかった。TP 値は 6.8 ± 0.8g/dl,Alb 値 3.6 ± 0.6g/dl,Hb 値 11.3 ± 2.0g/dl で,非腎症群と比較し低 値で有意差があった。 表 1 対象者の属性 腎症群(n = 19) 非腎症群(n = 46) 有意差注 1,2) Mean ± SD Mean ± SD 年齢 65.5 ± 12.7 61.4 ± 12.3 性別 男性 16 人(84.2%) 33 人(71.7%) 女性 3 人(15.8%) 13 人(28.3%) 同居者:あり 0 人(0.0%) 45 人(97.8%) 就業:あり 9 人(47.4%) 34 人(73.9%) ** 罹患歴(月) 183.0 ± 69.5 156.0 ± 76.7 (約 15.3 年) (約 13.0 年) 主な合併症:あり 腎症 19 人(100.0%) 0 人(0.0%) 網膜症 11 人(57.9%) 16 人(34.8%) 神経障害 7 人(36.8%) 5 人(10.9%) 身長(cm) 160.9 ± 7.8 161.6 ± 7.9 体重(kg) 59.2 ± 9.6 58.0 ± 8.2 BMI 22.8 ± 3.0 22.2 ± 2.7 血圧(mmHg) 収縮期 131.7 ± 14.9 126.0 ± 16.8 拡張期 70.6 ± 14.0 71.9 ± 10.2 TP(g/dl) 6.8 ± 0.8 7.3 ± 0.4 ** Alb(g/dl) 3.6 ± 0.6 4.3 ± 0.4 ** BUN(mg/dl) 31.2 ± 16.9 20.0 ± 28.1 Cre(mg/dl) 2.7 ± 3.0 0.8 ± 0.2 ** Hb(g/dl) 11.3 ± 2.0 14.7 ± 3.8 ** HbA1c(%) 6.7 ± 1.1 7.1 ± 0.8 BS(mg/dl) 176.0 ± 70.8 157.4 ± 50.9 T-cho(mg/dl) 199.4 ± 71.6 184.3 ± 35.0 * TG(mg/dl) 123.8 ± 75.6 132.2 ± 107.1 注 1)平均値の比較は t 検定,*p<0.05,**p<0.01 注 2)カテゴリー間の比較はχ2 検定,**p<0.01

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2. 生活習慣の腎症群と非腎症群の比較 1) 食事(表 2) 腎症群では全員が主食を 1 日 3 回摂取し,欠食せず規 則的な食事で,間食の習慣のあるものは 6 名(31.6%)で あった。1 日食事摂取量の食品群別摂取頻度状況では, 腎症群は非腎症群と比較し,魚類の摂取は 0.7 ± 0.5 回 / 日で有意に少なかった。腎症群は,野菜は 2.6 ± 0.7 回 / 日で毎食摂取,大豆・大豆製品は 0.8 ± 0.5 回 / 日, 乳製品は 0.8 ± 0.6 回 / 日であり,非腎症群と比較して 有意差がなかった。漬物類の摂取は 0.6 ± 1.0 回 / 日, 醤油等の調味量をかけるは 0.4 ± 0.6 回 / 日であった。 表 2 糖尿病患者の食習慣 ─腎症群と非腎症群の比較─ (回/日) 腎症群(n = 19) 非腎症群(n = 46) 有意差注 1) Mean ± SD Mean ± SD 主食 3.0 ± 0.0 2.9 ± 0.3 野菜 2.6 ± 0.7 2.3 ± 1.0 大豆・大豆製品 0.8 ± 0.5 0.9 ± 0.6 乳製品 0.8 ± 0.6 0.7 ± 0.5 魚類 0.7 ± 0.5 1.1 ± 0.5 * 肉類 0.5 ± 0.4 0.6 ± 0.6 卵類 0.5 ± 0.4 0.5 ± 0.6 菓子類 0.3 ± 0.6 0.5 ± 0.6 漬物類 0.6 ± 1.0 0.9 ± 1.1 醤油やソースをかける 0.4 ± 0.6 0.6 ± 0.8 味噌汁 0.7 ± 0.6 0.8 ± 0.8 人(%) 人(%) 有意差注 2) 食事回数  3 回 / 日 19(100.0) 41(89.1)  2 回 / 日 0(0.0) 5(10.9) 間食習慣  あり 6(31.6) 23(50.0)  なし 13(68.4) 23(50.0) 注 1)t検定,*p<0.05 注 2)χ2 検定 表 3 糖尿病患者の飲酒・喫煙習慣 ─腎症群と非腎症群の比較─ 腎症群(n=19) 非腎症群(n=46) 有意差注 1) 人 ( % ) 人 ( % ) 飲酒 * 0 回 / 週 17( 89.5 ) 24( 52.2 ) 1-2 回 / 週 0( 0.0 ) 5( 10.9 ) 3-5 回 / 週 1( 5.3 ) 4( 8.7 ) 6 回 / 週以上 1( 5.3 ) 13( 28.3 ) 喫煙 0 本 / 日 15( 78.9 ) 30( 65.2 ) 1-5 本 / 日 2( 10.5 ) 2( 4.3 ) 6-10 本 / 日 0( 0.0 ) 2( 4.3 ) 11 本 / 日以上 2( 10.5 ) 12( 26.1 ) 注 1)χ2 検定,*p<0.05 表 4 糖尿病患者の活動習慣 ─腎症群と非腎症群の比較─ 腎症群(n=19) 非腎症群(n=46) 有意差注 1) 人 ( % ) 人 ( % ) 身体活動レベル * 低い 14( 73.7 ) 16( 34.8 ) ふつう 3( 15.8 ) 22( 47.8 ) 高い 2( 10.5 ) 8( 17.4 ) 運動習慣 なし 12( 63.2 ) 22( 47.8 ) 継続 1 年未満 1( 5.3 ) 5( 10.9 ) 継続 1 年以上 6( 31.6 ) 19( 41.3 ) 健康維持のため,体を動かす 0 回 / 日 10( 52.6 ) 17( 37.0 ) 1 回 / 日 4( 21.1 ) 18( 39.1 ) 2 回 / 日 4( 21.1 ) 7( 15.2 ) 3 回 / 日 1( 5.3 ) 4( 8.7 ) 注 1)χ2 検定,*p<0.05 2) 飲酒・喫煙(表 3) 腎症群では飲酒習慣のない人は 17 名(89.5%),喫煙 習慣のない人は 15 名(78.9%)であった。飲酒は,腎症 群は非腎症群より少なく有意差があった。 3) 活動(表 4) 身体活動レベルは腎症群で「低い(Ⅰ)」が 14 名(73.7%) で,非腎症群と比べ有意に低かった。また,運動習慣(週 に 2 回以上 1 回 30 分以上の運動を 1 年以上継続している) のある人は,腎症群で 6 名(31.6%),非腎症群で 19 名 (41.3%)で有意差はなかった。運動習慣がある人の運動 は,散歩などであった。

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表 5 糖尿病患者の清潔習慣 ─腎症群と非腎症群の比較─ 腎症群(n=19) 非腎症群(n=46) 有意差注 1) 人 ( % ) 人 ( % ) 歯みがき 0 回 / 日 1( 5.3 ) 1( 2.2 ) 1 回 / 日 8( 42.1 ) 18( 39.1 ) 2 回 / 日 6( 31.6 ) 15( 32.6 ) 3 回 / 日 4( 21.1 ) 12( 26.1 ) 手洗い 0 回 / 日 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 1-5 回 / 日 6( 31.6 ) 17( 37.0 ) 6-10 回 / 日 5( 26.3 ) 14( 30.4 ) 11 回 / 日以上 8( 42.1 ) 15( 32.6 ) うがい 0 回 / 日 10( 52.6 ) 18( 39.1 ) 1 回 / 日 3( 15.8 ) 10( 21.7 ) 2 回 / 日 3( 15.8 ) 9( 19.6 ) 3 回 / 日以上 3( 15.8 ) 9( 19.6 ) 入浴 * 0-1 回 / 週 0( 0.0 ) 1( 2.2 ) 2-3 回 / 週 4( 21.1 ) 2( 4.3 ) 4-6 回 / 週 6( 31.6 ) 0( 0.0 ) 7 回 / 週以上 9( 47.4 ) 43( 93.5 ) 足浴(入浴以外で) 0 回 / 日 15( 78.9 ) 39( 84.8 ) 1 回 / 日 1( 5.3 ) 1( 2.2 ) 2 回 / 日 1( 5.3 ) 1( 2.2 ) 3 回 / 日以上 2( 10.5 ) 5( 10.9 ) ウォシュレット 使用しない 14( 73.7 ) 26( 56.5 ) たまに使用する 0( 0.0 ) 2( 4.3 ) しばしば使用する 1( 5.3 ) 2( 4.3 ) いつも使用する 4( 21.1 ) 16( 34.8 ) 注 1)χ2 検定,*p<0.05 4) 清潔習慣(表 5) 腎症群では,歯みがきは 1 回 / 日が 8 名(42.1%),2 回 / 日 が 6 名(31.6 %)で, う が い は 0 回 / 日 が 10 名 (52.6%)であった。1 週間の入浴回数では,非腎症群が 毎日入浴する人が 43 名(93.5%)であったのに対し,腎 症 群 で は 2-3 回 / 週 が 4 名(21.1 %),4-6 回 / 週 が 6 名 (31.6%),毎日が 9 名(47.4%)で入浴頻度が有意に少な かった。 5) 心理状態(表 6) 心理状態の STAI 総得点および各項目において両群間 に有意差は見られなかった。「イライラ」や「不安」「後悔」 などは中央値 1.0 で,「全くそうではない」と回答したも のが多かった。「自信」や「ウキウキ」の得点はその他の項 目に比べ中央値がそれぞれ 3.0,4.0 と高値だった。

Ⅵ . 考察

本調査対象の糖尿病性腎症患者は,1 日 3 食の規則的 な食事を摂っており,間食・飲酒・喫煙習慣は少ない者 が多く,非腎症患者も同様であった。日本人の一般的な 60 代の朝食欠食率は男性で 9.1%,女性 7.2%で,喫煙 習慣のある人は男性 33.7%,女性 7.4%,飲酒習慣のな い人は男性で 56.7%,女性 95.2%であり12),同年代の健 常者と比較して飲食等においては節制している状況で あった。糖尿病患者は糖尿病の進行や合併症予防のため, 生活習慣を変えたいと考えている人が 8 割おり13),朝 食を毎日摂取し,間食・夜食や飲酒を制限し,定期的な 運動を実施するなど好ましい生活習慣を実行しているも のが多い14)との報告もあり,本調査の対象も同様な傾 向であったと考えられる。しかし,糖尿病性腎症患者で 定期的な運動を実施しているものは 31.6%であり,同年 代の男性 41.9%,女性 41.3%12)よりも少なく,定期的な 運動の実施についてはさらに指導が必要である。 糖尿病性腎症患者は非腎症患者より魚摂取頻度,活動 量,入浴頻度が少ないことが特徴であり,その他の生活 習慣には有意差がなかった。本調査の糖尿病性腎症患者 の食生活習慣は,糖尿病性腎症生活基準15)の食事基準 に準じており,欠食はなく規則的であり,食品群では魚 類摂取は非腎症患者より少なく,肉類摂取も 0.5 回 / 日 程度でタンパク質や脂質,漬物類・醤油等の塩分摂取量 等は過剰な摂取はなかった。また,血圧(収縮期 131.7 ± 14.9mmHg,拡張期 70.6 ± 14.0mmHg)や BMI(22.8 ± 3.0)も良好にコントロールされていた。本結果は,対 象者が腎症発症までに受けた栄養指導や医療者からの情 報提供,生活指導などにより,すでに生活習慣が獲得で きていたのか,腎症発症をきっかけに改善したのか不明 である。今後は,食習慣について腎症発症までの長期に およぶ追跡調査が必要であると考える。腎疾患の進行に 喫煙が関連する16)と言われていたが,本結果では現在 の喫煙状況と糖尿病腎症との関連はみられていない。ま た,糖尿病性腎症患者は,身体活動レベルが低く,運動 習慣のない人が多かった。過度な激しい運動は腎症を進 行・悪化させる可能性があり,生活指導基準においても 「体力を維持する程度の運動」とされているが,実際の運 動内容は散歩などの軽度の運動であったことから,運動 習慣のある人は適度な運動を実践しているといえる。し かし,糖尿病性腎症患者で定期的運動実施者は少なかっ たため,血糖値等をさらに悪化させないためには継続し た軽い運動が必要であると考える。 糖尿病患者の心理状態と血糖値の変動,特にコント ロール不良と関連があるとの報告17)18)もある。本調査で は,患者の心理状態を状態不安(STAI)でみたところ, 得点は低く,腎症群と非腎症群の 2 群間で有意差はな かった。本対象者の状態不安(STAI 得点)は,既報19) 糖尿病患者よりも低値であり不安状態は強くなかった。 これは,本調査の対象が高齢であることや,腎症群の HbA1c 値 6.7 ± 1.1%等比較的安定していたことも影響 していると考えられる。しかし,腎症群の血中 BS 値

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176.0 ± 70.8mg/dl,BUN 値 31.2 ± 16.9mg/dl と高く, Alb 値 3.6 ± 0.6g/dl は低値なため,糖尿病悪化予防に 着目した指導だけでは充分ではなく,さらに腎機能を維 持・改善していくためのタンパク質や塩分制限に対する 食事指導等,個別の生活指導の強化が課題である。

Ⅶ . 結論

糖尿病性腎症患者の生活習慣の特徴は,非腎症患者と 比較し食事では食品群の中で魚類摂取が少なく,活動が 少なく,入浴習慣は少ないことであった。糖尿病性腎症 患者・非腎症患者ともに,規則的な食習慣であり,間食・ 飲酒・喫煙の習慣があるものは少なかった。また,定期 的運動実施者は少なかったため,血糖値等をさらに悪化 させない継続的な軽い運動が必要であると考える。糖尿 病性腎症・非腎症患者の不安状態は低く,腎症を発した ほうが強いという特徴はなかった。腎症患者には,BS・ HbA1c 値を悪化させない指導にとどまらず,腎機能 (BUN・Alb 値等)の維持・改善のための個別の生活指 導の強化が課題である。

謝辞

本調査にご協力くださった患者様や協力施設の皆様に 感謝申し上げます。なお,本研究は平成 17 ∼ 18 年度科 学研究費補助金若手研究(B)を受けて行った研究の一部 である。 文献 1) 厚生労働省(2008)平成 19 年国民健康・栄養調査結果の概要, http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-5a.html 2) 日本透析医学会(2010)わが国の慢性透析療法の現況.2009 年 12 月 31 日現在,http://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html 3) 森本兼曩(1987)ライフスタイルと健康(1)身体的健康度と精神 的健康度.公衆衛生,51(2):135-143. 4) 村上文代(2005)【耐糖能障害 基礎・臨床研究の最新情報】成因・ 機序 危険因子・環境因子 食生活因子 食品の摂取状況.日 本臨床,63(増刊 2):207-210. 5) 佐藤寿一(2005)【耐糖能障害 基礎・臨床研究の最新情報】成因・ 機序 危険因子・環境因子 食生活因子 食行動.日本臨床, 63(増刊 2):215-219. 6) 入江三枝子,佐々木英夫,伊藤千賀子(2005)【耐糖能障害 基 礎・臨床研究の最新情報】成因・機序 危険因子・環境因子 身 体活動 運動量(余暇運動量など).日本臨床,63(増刊 2): 220-223. 7) 須賀万智(2001)2 型糖尿病患者の細小血管合併症発症を予測す る疫学もデルの検討−「健康危険度予測」の概念を取り入れた糖 尿病患者の教育,指導システムの開発をめざして−.協栄生命 研究助成論文集,ⅩⅦ:41-49. 8) 水谷正一,山田信博(2001)生活習慣病としての糖尿病性腎症. 腎と透析,51:49-53. 9) 松田充宏,四方賢一,槙野博文(2001)糖尿病性腎症の進展因子  前期から早期,顕性期,腎不全期への進展にかかわる因子(総 論).腎と透析,51:317-322. 10)清 水 秀 美, 今 栄 国 晴(1981)STATE-TRAIT ANXIETY INVENTORY の日本語版(大学生用)の作成.教育心理学研究, 29(4):62-67. 11)高橋啓子,吉村幸雄,関元多恵,他(2001)栄養素および食品群 別摂取量調査のための食品群をベースとした食物摂取頻度調査 表の作成および妥当性.栄養学雑誌,59(5):221-232. 12)厚生労働省(2010)平成 21 年国民健康・栄養調査結果の概要に つ い て h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / s t f / h o u d o u / 2r9852000000xtwq.html 13)久永悦子,阿部広幸,栗原正人,他(2001)糖尿病患者の生活習 慣および治療に対する意識の実態調査.福島医学雑誌,51(4): 309-320. 14)野澤明子,大沢功,稲勝理恵,他(2003)糖尿病外来患者の生活 習 慣 − 一 般 内 科 診 療 所 で の 調 査 よ り −. 糖 尿 病,46(2): 表 6 糖尿病患者の心理状態注 1,2)  ─腎症群と非腎症群の比較─ 腎症群(n = 19) 非腎症群(n = 46) 有意差注 3) Me Mean ± SD Me Mean ± SD 総得点 39.7 ± 10.9 40.3 ± 8.8 ウキウキしていない * 4.0 3.6 ± 0.8 4.0 3.5 ± 0.7 自信がない * 3.0 2.5 ± 1.3 3.0 2.5 ± 1.1 安心していない * 2.0 2.0 ± 1.1 2.0 2.3 ± 1.0 気分がよくない * 2.0 2.5 ± 1.2 2.0 2.2 ± 1.0 心配である 2.0 1.9 ± 1.0 2.0 1.9 ± 0.9 後悔している 1.0 1.8 ± 1.2 1.0 1.7 ± 0.9 まずいことが起こりそうで心配である 1.0 1.5 ± 1.0 1.0 1.7 ± 1.0 不安である 1.0 1.9 ± 1.3 1.0 1.7 ± 1.0 イライラしている 1.0 1.6 ± 1.0 1.0 1.6 ± 0.9 注 1)STAI 状態不安の平均得点。項目は一部抜粋。 注 2)*は STAI 日本語版での表現は逆である。得点が高いほど心理状態が良くないことを示す。 注 3)総得点の比較は t 検定,各項目の比較 Mann-Whitney の U 検定。

(7)

155-159.

15)日本糖尿病学会編(2008)糖尿病性腎症.糖尿病治療ガイド.文 光堂,東京,69-72.

16)守山敏樹(2009)どのようなライフスタイルが CKD のリスクな のか? Life Style Medicine,3(1):19-27.

17)朱宮哲明,国政陽子,菱川千鶴,他(2003)糖尿病患者教育にお ける心理調査の有用性.日本農村医学会雑誌,52(4):726-732. 18)任和子,北谷直美,松下勝代,他(2002)2 型糖尿病患者におけ る心理社会的ストレッサー及び抑うつ状態と血糖コントロール の関連.心療内科,6(4):304-307. 19)塚原佐知栄,内潟安子,石堂孝一,他(2009)1 型糖尿病患者に おける摂食障害・食行動異常合併の頻度,心理的背景および臨 床像.糖尿病,52(1):13-21.

表 5 糖尿病患者の清潔習慣 ─腎症群と非腎症群の比較─ 腎症群 (n=19) 非腎症群(n=46) 有意差 注 1) 人 ( % ) 人 ( % ) 歯みがき 0 回 / 日 1( 5.3 ) 1( 2.2 ) 1 回 / 日 8( 42.1 ) 18( 39.1 ) 2 回 / 日 6( 31.6 ) 15( 32.6 ) 3 回 / 日 4( 21.1 ) 12( 26.1 ) 手洗い 0 回 / 日 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 1-5 回 / 日 6( 31.6 ) 17( 37.0 ) 6

参照

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