アスカリドールに關する研究
第2報 アスカリドールの変質に関する研究
(日本特産株式会杜)
1.緒 言
アメリカアリタ草よりヘノポチ油を水蒸気蒸溜又は
べソゼソで抽出を行う場合、或は抽出したヘノポチ油
を保存する時、或は抽出油を減圧下に精製する時及び
精溜した物を保存する時、その有効成分であるアスカ
リドールが日時の経過と共に如何なる速度で変質する
か、その変質はpHや酸化鉄、電解鉄に依つて如何程
促進されるかについて実験を行つた。実験目的は製造
間、保存聞におけるアスカリドPtル純分の低下を防ぎ
牧率をよくする爲である。アスカリドール中の有効成
分の測定はポーラログラフ法を使用した。
2.酸性及びアルカリ性溶液との接触に依る
アスカリドールの純度低下
アスカリドールは水溶液と接触する時その溶液が酸
性かアルカリ性かに依つて変質の量を異にする事が想
像される。その定量関係を求める爲に家の実験を行つ
た。
(A) 常温放置変質量
使用したアスカリドー・−Lルは第一報記載と同様ネルソ
ソ法純度86%沃素法に依る純度87.1%のものである。
実験方法は、上記アスカリドール試料を約0.1gを正確
に測定し、90%(vo1)エタノールで10c・c・に稀釈す
る。この溶液O.5c.c.緩衝溶液を2ユc.c.をとり90%
ぐvo1)エタノ・・ルを加えて10c.c.とし之を実験試料と
した。緩衝溶液はクラPク、ルツブス氏の処法に從つ
て調製した。上記調製液を直にポーラログラフに依り
分析し先づアスカリドールの現有含有量を測定し、次
に之を0∼36時間電解瓶申に常温放置して、各時間に
おける液中のアスカリドールの含有量を測定した。そ
の結果はFig 1の如くである。
猶波高と濃高との関係はpHユ、2、3、10について実
験しその結果はFig 2の如く殆んど直線的関係を示し、
波高の変化に依り変質量を測定し得る事を確めた。
Fig 1の結果からpH 1、3、10の溶液で常温放置
の場合は此の程度の時間ではアスカリド・・ルの変質量
は大した事がない事が分かつた。
(B)加熱に依る変質量
5
武内次夫
吉村広
小野田潔
Fig.1 電解瓶中の放置時間と波高との関係
だ
きa
負
竺㌧1
’0
8
7
5
\
0 /0 20 30 4り 《聴)
時間
Fig.2 各種pH水溶液中の波高と濃度との関係
f3
12
11
10
波9
高
竺
↑ ∠
ノヅ
㍗.
∠乙___
0/234567 タ
ー・→ 濃度(x/0−4%c
常温放置40時間程度ではアスカリドールのi変質量は
大した物でない事が分つたので、次には調製溶液を還
流冷却器を附して1時間沸騰}伏態で加熱し、冷却後ポ
{ラログラフで波高を測定してその変質量を測定し
た。その結果はFig 3の如くである。
pH 3、4、5、6、7、8、10は何れも変質量は10%以
下で大したこともないが、pH 1は最も大きく約71%
吹にpH 2が約46%変質をした。即ちpH 3以上では酸
性度が増加すると変質が甚だしい事が予想される。
(C)各種pH電解液中におけるアスカリドPルの
ポPteラログラフ波形
昭和29年7月
山梨大学工学部研究報告
第 5 号
Fig.3 各種pH液と1時間沸騰状態で
加熱後の変質量
80
11:
熟
芦
誓
723456ケ891b
−pN
アスカリドPtルを上記の如き電解液で測定した際の
波形は緩衝液のpHに依つてかなり変化する。測定し
た結果を示すとFig 4の如くである。
電
流
↑
Fig.4 pHと波形との関係
Q4一α8 −t2 ・工6 voec
→カo電圧
電
甲3
流
↑
駕、
’04−q8イ.2 一16
磁
→加電凪
電 pH5
流
↑
一44 一α8 白12 イ6 ’oz倉
電
流
↑
→カo電伍
PH 7
一餌一48イ2寸6脇
→加雷伍
電
流
↑
.‘n・4−O,8プ2−1.6 Vaec
→加電圧
電
流
↑
pH 4
一〇,4−e.9−Z2 ゾ6 Veth
電
流
↑
→加電駈
pH8
−a.8 プ2 イ6腋
一・加電圧
3.酸化鐵及び電解鐵との接触に依るアスカ
リドールの純度低下
アメリカアリタ草からヘノポチ油を製造する時、鉄
製容器やパイプを使用する場合が考へられる。叉アス
カリドPtルを工業的に製造して保存する時の容器も鉄
6
電
流
↑
噺’o.8一ρ一t6 Vb6t イ∼4−28一ズ2−1.‘V’女
→加電圧
電
流
↑
噸4−a9−12プ6微
’→加電圧
製の場合がある。從つて酸化鉄及び電解鉄のヘノポナ
油に対する安定度を実験する必要がある。実験は試
料約1gを正確にとり、これに酸化鉄及び電解鉄約
0・05gを加えて逆流冷却機を附し約1時間湯煎上で加
熱を続けた後、遠心分離機にかけてアスカリドールを
分離し、そのアルカリドール約0.1gを正確に秤り之
に90%(vol)エタノPtルを加へて10c.c.に稀釈し、こ
の溶液O.5c.c.をとり無関係塩として1N塩化アンモ
ソ溶液1.Oc.c.、90%(vo1)エタノール8・Oc.c.水を加
へて10c.c.にする。この調製溶液をポPtラログラフの
電解液として濃度を測定する。
酸化鉄と共に加熱した時処理前のアスカリドールと
処理後の測定値から変質度を算出すると12・7%とな
る。次に酸化鉄と共に上と同様約1時間湯煎上で加
熱し後14日間放置後濃度を測定してみると変質度は
342%を示した。叉電解鉄と共に1時間湯煎上で加熱
後上と同檬に変質度を測定すると197%であつ1た。吹
に電解鉄と共に上と同様約1時間湯煎上で熱後14日間
放置しておくと変質度は425%であつた。
この実顯では電解鉄の方が酸化鉄よりも変質度が若
干大きい値を示した。之はアスカリドールが過酸化物
である点に基因すると思はれる。
4.結 言
アメリカアリタ草よりヘノポチ油を製造する際或は
更に精製して純度の高いアスカリドPtルを製造する
際、及び是等を保存する際に少しでも変質量を少くす
る爲にアスカリドールの各種pH液との接触に依る純
度低一ド、並に電解鉄、酸化鉄との接触に依る純度低下
について実験した。純度測定はポ{ラログラフ法に依
つた。使用した試料はネルソソ法で純度86%、沃素法
で87.1%のものである。その結果は…fKの如くである。
アスカリドールに関する研究
(1)PH 1、3、10の溶液と常温接触故置では20∼
40時間で殆んど変質しない。 ・
(2)次に還流冷却器を附して1時間沸騰状態で加
熱すると、pH 1ではその約71%、 pH 2はその約40%
が変質したが、pH 3、4、5、6、7、8、10では約
10%以下であつた。pH 1及び2では変質が甚しい。
(3)酸化鉄と接触して約1時間湯煎上で加熱の際
は、変質量は約13%、加熱後約14日常温放置した際の
変質量は約34%であつた。
(4)電解鉄と接触して約1時間湯煎上で加熱した
際の変質量は約20%で、加熱後14日間放置した際の変
質量は約43%であ?た。
(5)酸化鉄接触より電解鉄接触の方がアスカリド
ールの変質量が大きいのは、アスカリドールが過酸化
物であるのに依るのではないかと推定したo
試料の分譲並に種々工場操業の現況の読明をいたぱ
いた那須物産株式会杜本野晃氏に感謝する。
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