• 検索結果がありません。

チベット文献研究への道しるべ(2)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "チベット文献研究への道しるべ(2)"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

三、チ、、ヘット佛教学︵ラマ教学︶に関する 文献の研究 既に述べた如く、チベット文献には、チベット大蔵経 と蔵外文献とが現存する。 先ずチベット大蔵経を見ると、それに収められている 佛典の数が漢訳大蔵経のそれより断然多い。というのは 実は密教関係の経や論のチベット訳が多く収められてい るからである。これら密教佛典は、もちろんインド密教 の経論をチ、ヘット語に翻訳したものである。しかもイン ドの後期密教に関するものが大多数を占め、これらは中 国に伝わらず、したがって漢訳大蔵経の中に収録されな かったのである。このインド後期密教の研究には、チ尋ヘ ット大蔵経は多数の資料を提供してくれているにもかか

チベット文献研究への道しる今へ︵二︶

わらず、従来殆んどなされていないといってよい。 次にチベット蔵外文献であるが、それには一層密教関 係のものが多い。これら密教の論害は、チミヘット僧がチ ベット大蔵経に収められている密教の経論を研究し修習 した後に著作したのであるから∼インド密教に由来する ことはもちろんのことである。ところが、その中には、 チ、ヘット古来のポンポ教と習合したものがあり、またチ ベットへ伝来してからチベットの高僧によって研究せら れ、むしろチ尋ヘットで発達したものも数多くある。これ らは、チベット独自の密教、いわゆるラマ教の教学を説 述した諭書となったのである。わが国に伝わっている蔵 外文献の数量は、大谷大学所蔵のものが四一○四点︵大 谷大学図書館発行の西蔵文献目録による︶、東北大学所蔵の ものが二○八三点︵東北大学発行の西蔵撰述佛典目録による︶、

葉正就

50

(2)

東洋文庫所蔵のものは目録が出版されていないので明確 にわからないが、ほぼ前二大学の何れかに匹敵するほど であるようである。ところが、わが国に伝わっていない ものがどれくらいあるか見当がつかないほど沢山あり、 今もなおラマ僧によって著作されつつあるから、まさに 無尽蔵といってよいかもしれない。 さて、蔵外文献の密教に関するものには、密教経典の 註釈、概説、讃頌、時輪、儀軌、成就法、祈願文、請願 文、書翰などがある。これらが、各宗派や学派によって 解釈が多少相違するから益々複雑である。蔵外文献の中 に顕教に関する論害もあるが、その数は少い。しかも単 に顕教を研究した頭だけでそれらを理解してよいかどう か問題であろう。というのは、チ、ヘット佛教にあっては、 顕教は密教へ入る方便であるから、その立場に立って研 究しなければならない。そうすると顕教関係のものの研 究でも密教を知っている必要があることになろう。そう いうことになると、顕教だけを研究して来た者にとって 甚だむつかしい分野であるといわねばならない。事実、 むつかしいからこの分野の研究は、殆んど手がつけられ ていない。全く前人未踏といってもよい分野である。し かも、無尽蔵に近いほどの文献がある以上、これを研究 しなければならない。たといそれを研究して何の益にな るのかと反論する人があるとしても、益になろうがなる まいが、あたかもヒマラヤの連峰がそびえている以上、 命がけでその頂上を征服しようとするのと同じであるゞへ きであろう。 そこで、この分野に挑む人は、もちろんチベット語に 熟達しなければならないし、佛教学の分野に含まれるの であるからサンスクリットも知らねばならないのは、前 述の一の場合と同じである。ところが更に困ったことに は、密教用語が瀕繁に出てくるばかりでなく、チー、ヘット 独特のいわゆる宗学となっているから、特殊な術語が多 い。例えば、わが国の宗学の用語が他宗派の者にはわか らないのと同様に、チー、ヘット独特の宗派の用語は、わが 国の密教専門の学者でも理解に困られることがあると思 う。というのは、わが国に伝わった密教はインドの初期 密教であるが、チベット密教は後期のものを主としてい て、なおその上にチ、ヘットで出来た独特のものがあるか らである。これらチベット密教の術語や文章は、既に出 版されているチベット語の辞書には殆んど載っていない 辞書が駄目だとすると、何によって読むのかということ になるが、事実、全くお手あげの状態である。何の道具 51

(3)

も装備もなくてヒマラヤの高峰へ登ろうとするようなも のである。ではどうすればよいのか。それには先ず道具 や装備を自分で考案しながら、第一歩から登る練習をす るよりほかに方法があるまい。 そこで、第一歩からというと、チ、ヘット密教はインド 密教に由来するから、最初にチベット大蔵経の中に収め られているインド密教佛典よりはじめる、へきである。そ のためには、酒井真典教授著﹁チベット密教教理の研究﹂ がよい手ほどきになる。また同教授の著作に﹁百光遍照 王の解明﹂をはじめ、雑誌論文が沢山あるから、チベッ ト訳本文と対照してチ・ヘット大蔵経の密教用語を会得す るのがよい。 次に、チ。ヘット人が著作した密教佛典の研究に入らね ばならない。それには先ず先輩が既に研究したものより 始めるのが得策であるが、チ等ヘット佛教の最も古いもの を伝えるニンマ派︵園凰口目凹冒︶の教義に対する成果 はまだ発表されていない。また、サキャ派︵蟹のご騨冒︶ の教義に関する研究も皆無である。したがって、これら 両派については、後まわしにした方がよいと思う。 そこで、順序としては少し妥当でないかもしれないが、 国.ぐ.⑦ロ①旨昏①Hの力作を頼りに、むしろカーギュ派 ︵固炭喜局喝且菌︶から始めてはどうであろうか。それ には先ず、第一二世紀末頃の人と思われるリンチエンナ ムギェル︵旧丘沙言算印ロロも四罰旨○曰①︼︺H目色日品輔らの 著作を英訳した餌ぐ.○口①己昏曾”︽︽弓冨目言幽a H3O冨凋az日○冒○灘○a︾后闘・こを読むとよい。 これは、インド密教の高僧ナーローパ︵z胃○富○H z目四目目︾ご岳︲巨g︶の伝記の形式になっているが、 実は史的事実というよりむしろ密教教理が詳しく説かれ ているから、教理の理解のために、よい参考になる。こ のナーロー・︿のもとで学んだチベットのマルパ︵冨胃園 。gめ汽剴匡○鴨○m︺S届︲S弓︶は、その教義を承け継い で故国へ帰ってカーギュ派を創設した。マル・︿の弟子ミ ラレーパ︵旨自由国”園︶の弟子、すなわちマルパの孫弟 子ガムポパ︵荷自己宮も四口言品のも⑳ご国昼①﹄g弓I巨阻︶ の著作︵東北蔵外zo.$圏︶を英訳した国・ぐ.○口の冒昏閏“ ︽︽目三①]①司巴○口]閏口のロ計具5号①叶四式○口.間○国go目︾HCmや︾︾ があるから是非読まねばならない。また○口①ロg胃は ︽︽弓四ヨロ○劃①乏旦旧鴬の.F○且○口︾邑囹“こという成果を 発表しているから、よい参考になるであろう。 さて次には、どうしてもカーダム派︵国丙農魁曽房冨︶ の教義を研究せねばならないが、それにはアティーシャ E 9 J 臼

(4)

︵]○g震眉Pgg日冨8日]目ごP↑拐甲ら農︶の著作を 読まねばならない。何となれば、アティーシャの教えに 基づいて、その弟子ドムトン魯胃○日昇○口︶が創設し たのがカーダム派であるからである。アティーシャの著 作は、デリゲ版チベット大蔵経では最後に﹁アティーシ ャ小部集﹂︵東北目録Z。⑳.仁霞l急電︶としてまとめて収 められている。これはアティーシャの著作とその根源と なった諭書をも含めたもので約百部あるから﹁百部集﹂ とも呼ばれる。北京版ではまとめずに秘密部と中観部の 中に収められている。これらに対する研究は、まだ殆ん ど発表されていないが、最も重要な菩提道灯︵大谷影印北 京版zom認畠I認認︸東北デリゲ版zom.$ミⅡ陰雷︶は、 その自註であろうといわれる菩提道灯細疏︵大谷影印北京 版z○.認瞳︾東北デリゲ版Z。.$院︶を対照して読むと一 応理解することができる。この菩提道灯は、アティーシ ャが一○四二年に入蔵し西チ、ヘットに三年間滞在した間 にチャンチュプオェ︵圃制口呂号冒e王に請われて著 作したもので、アティーシャの教学の基礎を示すもので あり、後述するツォンヵパによって承け継がれることに なるから、是非とも研究しなければならない。詳細に知 ろうと思えば、第一代パンチェンラマの作である﹁菩提 道灯の釈説、卓越笑の賀宴﹂︵大谷西蔵文献目録zo・ぢら・︾ 東北蔵外Z。.g造︶を読む必要がある。また、小部集の 中の顕教に関する短かいものは理解し易いものが多いか ら、顕教より始めて次第に密教の著作を手がけてゆくべ きであろう。 やがてチベット佛教は甚だしい堕落に向うが、そこで 宗教的偉人ツォソカ・︿B前8戸冨冨︾屋ヨー匡邑︶が 出て佛教改革を行なう。かれは、菩提道次第と秘密道次 第との二大著作を完成して、ゲルク派︵ロ鴨旨明圃︶を 創設した。菩提道次第︵大谷影印北京版z○.9s・誤字や 脱落が多い︸大谷西蔵文献目録z○.己呂醇東北蔵外zo・認隠︶ は、当岬チベット佛教が密教の一色をもって覆われてい たのに対して、顕教特に般若中観の重要性を説いたもの であるが、その直接の所依はアティーシャの菩提道灯で あるとする。それ故にこの派を﹁新カーダム派﹂とも呼 ぶのである。この菩提道次第を読むには、その最後の三 分の一である毘鉢舎那章を長尾雅人博士が和訳して﹁西 蔵佛教研究﹂︵一九五四年・岩波書店︶なる立派な成果を出 版していられるから、先ずそれをチ寺ヘット原文と対照し て学ぶ蕊へきである。そしてツォンヵパの文章に馴れてか ら他の章へもどるのが賢明な方法である。一方、秘密道 53

(5)

次第︵大谷影印北京版z○.爲己・誤字や脱落が多い一大谷西蔵 文献目録z○.己g吟東北蔵外z○.圏曽︶は、ツォンカ。︿と しては、顕密両教の兼修合一があるゞへき佛教の姿である として更に密教を中心に著作したものであるが、自明の 理として密教が優位であるから、最も重要なものである。 ところが秘密道次第の研究はまだ誰も手をつけていない ようである。顕密両教の兼修合一がある尋へき姿であると するから、菩提道次第から秘密道次第へ入る寺へき必然性 が秘密道次第の第一章︵序説︶に説かれているが、それ について小川一乗氏の研究︵大谷学報第四七巻二号︶がある。 どうか若い方々がこの秘密道次第の大作にとり組んで解 明していただきたい。 以上、諸先輩の研究成果をたよりに研究を始める順序 を述べた。ところがこれより以外に先輩の成果は殆んど なさそうである。それに反して資料はまさに無尽蔵であ る。例えば、ゲルク派には、歴代ダライラマやパンチェ ンラマの全書、ダルマリンチェン︵両閏四岸呂自己胃目色 回国目①旨︶やカィドゥプ︵旨丙ロ儲四口ご己帯]①甥・も巴 冒自冒︶など高僧の全書等があり、大谷大学や東北大 学の蔵外文献目録を旙けば一見してその老大さに驚かれ るであろう。近年東洋文庫からサキャ派全書が影印版と して出版せられた。ニンマ派全書はわが国にないが、あ るいはどこかの国で出版されるかもしれない。最近イン ドで影印版で各派の資料が続々と出版されつつある。こ れら老大な文献は誰も研究の手をつけていないのである。 いまここに述奪へた研究の道しるゞへは全く各派の入口を遠 くから指さした程度に過ぎない。 しかしながら、文献の数量と教義の難解さに恐れをな していては、いつまでも放置しておかねばならない。た とい先輩の研究成果は少くとも、先ずそれをたよりにチ ベット原文と対照しつつ第一歩から踏み出すより致し方 がない。その間に辞書にない単語をカードに書きとめて 意味をつけておく労を忘れてはならない。そのカードは、 先人未見の文献を読む際に、あたかもヒマラャヘ登ると きの道具や装備のような役目をしてくれるであろう。い いかえれば、自分で辞書をつくりながら進まねばならな い。更にまたチベット人の学者に会う好機があれば、登 山における道案内者を得たことになるから、難解な点を 充分指導してもらうのが最も近道である。このようにあ らゆる努力が必要であるが、不屈の精神をもって研究し ていただくことを念願する。 54

(6)

上に述言へて来た三つの研究分野は、いずれもチ今ヘット Q 語で書かれた文献を対象とする﹁チベット文献学﹂とも いう熱へきものである。それに対してチベット語の言語体 系自体の分析と記述を目標とする﹁チ署ヘット言語学﹂な る分野が存在する。本稿はチベット文献を研究すること に重点をおいて述べるのが目的であるから、少しそれる けれども西田龍雄氏の研究成果によって簡単に記すと、 チベット言語学には次の三分野を考えることができる。 1、記述的研究l現代チ、ヘット語諸方言について、 音韻・文法・語彙の各体系を分析し記述する。 2、歴史的研究lチ、ヘット文語と口語の史的発展を あとづける。 3,比較研究と再構成’数個の方言を比較し、史的 発展を考慮して、共通チベット語形式を再構成する。 ところが、現在の段階では、この中のいずれの分野もよ く研究されているとはいい難いが、近年東洋文庫におい て北村甫氏と西田龍雄氏が、直接チゞヘット人について詳 細な共同研究を進めていられるから、やがて何らかの立 派な成果を発表されるだろう。参考のため既に出版せら 四、チゞヘット言語学の研究 れているものを紹介すると、口語の文法及び辞典として、 ○P.国の匡鋸︽、のH色目目色H具ogさP且巴弓ご鼻P目. 園①﹄温皀﹄目冒員Q同昌武g︺︾﹂④函P︾︺ 。シ、国巴房︽︽同旨哩尉亨目号①首ごog5P目己己旨武○口閏顎 ○湧きロ詳四︼の①oopQ両巳は○口︺得やいつこ がある。これらは著作年代が古く、更に進歩したものが 期待されているが一応の手がかりにはなろう。またラサ 方言の学習害として、 ○①○侭①z・閃○①国。丘陣目の①︲ヰロロぬげ○湧騨国函も面目具呂巳肉 ︾︽一目①×計ず○9門具○巳旨P凰巴目旨g四口︵ロ国]①gg oのロヰ巴目ごg︶・星ご.①牌国①ロ輌己︾胃①、﹃︾︾ 属国目○ロ四口、昏国①ヰ]のロ①津の︾疹冨四国ロ巴aの己○戸①ロ ︻︽ 目弓騨四口︵Fぱゅの四口国房9︶・の①鼻陣のゞ﹄@mP︾︾ 旨①きぐ国.○・○○国の蔚旨陣z四急秒pmz9p四国四︽︽旨○・①昌 のも○戸①ロ目号酔沙口距F面閉四口厨雨具.の①胃匙①ゞご弓・こ がある。またチ・ヘット東北のアムド方言の研究として ○の○侭①の。①両○①ロoロ“︽︽F①勺閏]曾旦①胃︾P目。○.”○日①、 旨@mm・こ があって、口語の研究は次第に緒についてきたように思 われる。 さて、最後に注目す寺へきは、この言語学の分野でも全 55

(7)

く文献を必要としないのではない。その点に着目した 壱○壱①、国四○9は、チベット文法学研究の成果として、 ︽︽旧閉のざ丙尉①H四日目鼻后四口×。①日ロ○日日の四目ワロ○国. 弓目尉︾尼麗・︾﹀を刊行した。この害は、第一八世紀のカ イドゥ・フタム。︿︵旨丙冒の四号3日g︶の著作である ﹁三十・性入本典善説宝鬘﹂の原文とそのフランス訳並 びに詳細な脚註を付した力作である。従来のチベット語 文法書は、印欧語の文法の構成を模倣したものであった が、印欧語と根本的に相違したチ、ヘット語の文法を組み 立てるためにはチベット人自身の手になる古典文法論に まで糊って探究しなければならないことを知らしめた画 期的なものである。 チベットの文法学は、第七世紀の初頃に王の命によっ てトンミサムブホータ︵目5邑冒揖麗目ごロ○画︶がイン ドへ派遣され、文字と文法学を学んで帰国し、チ、ヘット 文字を作り八部の文法書を著わしたと伝えられる。その 中の﹁三十﹂と﹁性入﹂の二部が現存し、この二部を基 として今日に至るまで多くの文法書が著作された。その 文法学の発達の概要は、拙著﹁チ、ヘット語古典文法学﹂ の序論に述べたから、ここには省略する。 そこで古典文法文献を研究しようとする人は、もちろ んトンミの文法言から著作年代順に読んでゆけばよいの であるが、先輩の成果を先に利用するのが得策であると すれば、和訳としては、法賢ep胃日島冒号四︶の﹁シ シ註の講義﹂︵拙著﹁チ、ヘット語古典文法学﹂昭和二九年初版 本に所収、改定版本には省いたが改定版の続篇に更に性入の和 訳も収録する予定︶、及び音成就金剛︵ロウ胃目のo印ロ四口ご 己四宮a○且①︶の﹁三十と性入﹂︵故井原徹山訳・佛教研究第 六巻一号第七巻一号・大東出版社・昭和一七年一八年︶がある から、先ずこれらによって文法術語を知って、次に前掲 の国④09の労作を読むとよくわかるであろう。更に深 く研究しようとすれば、スムリティ命日艮言目鳥胃g の﹁言語の門武器職﹂︵大谷影印北京版zo罰認吟東北デリ ゲ版z○.侭呂︶の中のチ↑、ヘット語文法の部分︵北京版喝弓﹄ ﹃&以下︶をその註︵北京版冒.割閉]デリゲ版Z。.隠語︶ と対照して読むと、主として助辞の用法がよくわかって 面白い。次に法護賢︵。gH日僧旦号ロ昌昌︶の著﹁三十 の註﹂︵東北蔵外Z。.ご国︶と﹁性入を明らかにせる善釈﹂ ︵東北蔵外Z。、ご己︶を読まねばならない。そして最後に は、チベット文法学を大成したシシ︵匹目︶が一七四四 年に完成した大著﹁有雪国の語を正しく綴れる論の部門 たる三十頌と性入との宗典釈・賢者の胸荘厳真珠麗鬘﹂ 56

(8)

以上、チベット文献研究の四分野について述雫へた。な おこれ以外に、文学・因明・暦学・医学薬学などの研究 分野があるが、いずれも殆んど未開拓である。これらに も研究の手を伸ばされんことを望む。 最後に、注意していただきたいことは、上述の四分野 のいずれを選ばれるにしてもチベット文献だけで終始し ては大成しないかもしれないことである。すなわち、第 一と第三の分野であれば、従来行なわれている佛教学を 身につけつつチ書ヘット文献を研究しなければならない。 第二のチ、ヘット史研究の分野であれば東洋史を知らねば ならない。第四のチベット言語学研究の分野であれば、 一般の言語学を研究した上でなければならない。何とな く大谷学報に掲載の予定︶ いきたいと思っている。︵法護賢の﹁三十の註﹂の和訳は近 しは大略読んだので、何とかして少しずつでも発表して らの文献の翻訳や研究はまだ発表されていない。わたく には、特に性入における解釈が相当相異している。これ 組まねばならない。このシシ註と直前の法護賢註との間 ︵大谷西蔵文献目録z○.巨篭野東北蔵外z○.弓雪︶と取り

むすび

れば、既に発達した佛教学・東洋史学。言語学の研究方 法とそれより得た知識をもってチベット文献を読まねば ならないからである。しっかりした研究方法をもって臨 まなければ、学問研究にならず学問的な立派な成果を得 られないことになるであろう。 それでは、チベット学をやるには、例えばチ今ヘット語 だけでは駄目で、印欧語あるいは漢文をマスターしなけ ればならないし、また先人の成果が少いから、苦労が多 くて甚だ損な学問ではないかといわれるかもしれない。 実際のところその通りである。このような道を長年歩い て来たわたくしは、時には闇の中を手さぐりで進んだり、 時にはまわり道をしたり、苦労や損ばかりしている問に、 気がついてみると頭は白髪の方が多くなってしまった。 ふりかえってみると、どう考えても楽して得るところの 多い学問とは思えない。しかしながら、先人未見のチ、ヘ ット文献を苦労しながら読んで、従来学界で未解決とさ れていたことを解明したときの壮快さは何ものにもたと えられない。あたかも高山の頂を征服したような思いが する。たとい苦労が多くとも、このチベット学の分野に 挑戦されるよう望んでやまない。 貝 ワ リ 『

参照

関連したドキュメント

(文献資料との対比として,“非文献資 料”)は,膨大かつ多種多様である.これ

昭和62年から文部省は国立大学に「共同研 究センター」を設置して産官学連携の舞台と

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

いない」と述べている。(『韓国文学の比較文学的研究』、

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

しかし何かを不思議だと思うことは勉強をする最も良い動機だと思うので,興味を 持たれた方は以下の文献リストなどを参考に各自理解を深められたい.少しだけ案

②立正大学所蔵本のうち、現状で未比定のパーリ語(?)文献については先述の『請来資料目録』に 掲載されているが

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o