EU共通通商政策の構造と発展過程-GATT/WTOとの関
連を中心に-著者
齋藤 智美
号
53
発行年
1999
URL
http://hdl.handle.net/10097/14701
曲
齋
8
藤
蕊
智
み
美
学 位 の 種 類
博
士(経 済学)
学 位 記 番 号
経 博 第53号
学位授与年月 日
平成12年3月31日
学位授与の要件
学位 規則第4条 第1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
学 位 論 文 題 目
論 文 審 査 委 員
東北大学大学院経済学研究科(博 士課程後期3年 の課程)
経済学専攻
EU共
通通商政策の構造 と発展過程
一GATT/WTOと
の関連 を中心 に一
(主査)
教
授
田
中
素
香
教
授
佐
藤
秀
夫
論
文
内
容
要
旨
本 論 で はEU(欧 州 連 合)の 共 通 通 商 政 策 を取 り上 げ、1970年 代 の そ の 形 成 過 程 、1980年 代 の 共 通 化 以 降 の 発 展 過 程 に っ い て 、EUと 域 外 諸 国 と の貿 易 摩 擦 やGATT/WTOな ど、 域 外 と の 関 連 を 中 心 に 考 察 す る。 ま ず1970年 代 の 共 通 通 商 政 策 の形 成 は、 域 外 諸 国 との 経 済 的 な 競 争 圧 力 に よ り 促 進 さ れ た こ とを 明 らか にす る。 次 に1980年 代 、EUの 通 商 政 策 の 決 定 ・実 施 過 程 は共 同 体 化 さ れ た も の の 、 実 態 に は政 府 間 主 義 的 性 格 が 強 く残 さ れ て お り、 そ の 原 因 は 通 商 政 策 決 定 過 程 の 制 度 的 特 徴 に あ っ た こ とを 指 摘 す る。 そ して 決 定 過 程 が 変 化 した こ と に よ りEU通 商 政 策 の 転 換 が もた ら さ れ た こ と を 、UR(ウ ル グ ア イ ・ラ ウ ン ド)農 産 物 貿 易 交 渉 を 中 心 に分 析 す る。UR合 意 は、EU の 通 商 政 策 決 定 過 程 が 変 化 し共 通 通 商 政 策 の一 層 の共 同 体 化 が な され た 結 果 を反 映 す る こ と を指 摘 す る。 以 下 で は各 章 で 分 析 す る 内 容 を ま と め る。第1章 で はEU共 通 通 商 政 策 が 、 域 外 諸 国 との 通 商 関 係 の 中 で 形 成 され た 過 程 を 分 析 す る。1970 年 代 、 欧 州 統 合 は一 般 的 に 停 滞 して い た と評 価 さ れ る。 通 商 政 策 分 野 で も、 本 来 な さ れ る べ き統 合 は進 展 せ ず 、 実 際 に は構 成 国 側 が 政 策 主 権 を 維 持 して い た。 関 税 同 盟 形 成 後 の1970年 代 にEC構 成 諸 国 の通 商 政 策 を 共 通 化 し、ECに 通 商 政 策 権 限 を 委 譲 す る こ と は、ECの 憲 法 と も い うべ きEEC 条 約 に 掲 げ られ て い る。 しか しEEC条 約 に よ ってECに 排 他 的 な通 商 政 策 権 限 が 与 え られ て い た に も関 わ らず 、 構 成 国 の抵 抗 に あ い、 通 商 政 策 の共 通 化 は実 現 しえ な か っ た 。 構 成 国 が 域 外 に対 し
て 独 自 の通 商 政 策 を と って い た こ とを 示 す もの と して 、 以 下 の3点 を 取 り上 げ た。 1)対 日通 商 協 定 は 構 成 国 の 不 協 和 音 に よ り、ECレ ベ ル で 統 一 さ れ な か った こ と。 2)対 日貿 易 摩 擦 に つ い て 各 構 成 国 毎 の 二 国 間 輸 出 自主 規 制 が認 め られ た こ と。 3)GATT・ 東 京 ラ ウ ン ドに対 す るECの 具 体 的 な共 通 方 針 も、 構 成 国 間 の利 害 対 立 を 反 映 して 形 成 で き な か っ た こ と。 しか しな が ら1970年 代 前 半 で は進 展 が 見 られ な か った 通 商 政 策 分 野 に お け る構 成 国 か らECへ の 政 策 主 権 の 委 譲 は、1970年 代 後 半 に達 成 さ れ た 。 そ れ を 示 す もの と して 、 以 下 の3点 を分 析 した。 1)日EC間 で 生 じた 貿 易 摩 擦 解 決 策 と して 、 輸 出 自主 規 制 の 交 渉 主 体 にECを 代 表 してEC委 員
会 が 参 加 した こ と。 2)東 京 ラ ウ ン ドに お い てEC共 通 の 方 針 をEC委 員 会 が ま と め る こ と に成 功 した こ と。 3)東 京 ラ ウ ン ドコ ー ドの大 半 をECが 単 独 で 調 印 した こ と。 こ れ ら はEC委 員 会 が 通 商 交 渉 の 代 表 権 を 大 幅 に獲 得 で き る よ うに な っ た こ とを 意 味 して い る。 政 策 主 権 が 委 譲 され た原 因 は 、ECの 国 際 競 争 力 の 低 下 と と も に 激 化 した 貿 易 摩 擦 、 と りわ け 対 日 貿 易 摩 擦 で 明 らか に な った よ う に、EC構 成 諸 国 が 個 別 に 貿 易 摩 擦 へ 対 処 す る これ ま で の方 法 で は、 ECの 交 渉 力 が 弱 め られ る こ とで あ っ た。 加 え て 構 成 国 毎 に異 な る通 商 協 定 は 、 将 来 のEC産 業 の 繁 栄 に ダ メ ー ジ を与 え る よ う な共 同 市 場 の 国 家 的 な 分 割 を 導 く結 果 とな っ た こ とが 認 識 され る よ う に な っ た。 こ の よ う に域 外 か らの 経 済 的 競 争 圧 力 に効 果 的 に対 応 す る た め構 成 諸 国 は通 商 政 策 分 野 で 統 合 を 進 あ る必 要 性 を 認 あ 、1970年 代 後 半 に共 通 通 商 政 策 が 形 成 さ れ た の で あ る。 さ らに こ の動 き は、EC機 関 で あ るEC裁 判 所 に よ っ て も促 進 さ れ た 。EC裁 判 所 は1970年 代 後 半 の一 連 の判 例 に よ って 、 共 通 通 商 政 策 の範 囲 を 明 確 に し、 通 商 政 策 分 野 に お い てECが 排 他 的 権 限 を 行 使 す る こ と を 促 進 す る 役 割 を 果 た した 。ECが 非 関 税 障 壁 に関 す る東 京 ラ ウ ン ドコ ー ドの 大 半 を 構 成 国 の 参 加 な しに単 独 で 調 印 で き た の は 、EC裁 判 所 の 判 例 を 理 事 会 や 構 成 国 が 考 慮 した た め で あ っ た 。 対 外 通 商 交 渉 に お け る代 表 権 の 獲 得 、EC共 通 の 交 渉 方 針 の 採 用 。 こ れ らに よ ってEC委 員 会 は 通 商 政 策 権 限 を 構 成 国 か ら委 譲 され た とい え る。 こ の よ う に第1章 で は1970年 代 、GATT・ 東 京 ラ ウ ン ドと い う域 外 諸 国 と の関 連 の 中 で 、 構 成 国 か らECへ 通 商 政 策 主 権 が 委 譲 され た 過 程 を 分 析 した 。 第2章 、 第3章 で は通 商 政 策 分 野 に お け る 政 策 主 権 委 譲 後 の 課 題 と して 、 政 策 決 定 過 程 が 内 包 した制 度 的 問 題 を 扱 う。 こ の 問 題 は 、EUの 通 商 政 策 が 特 定 部 門 の利 害 に左 右 されEU全 体 の 利 害 が 反 映 され な い こ とで あ っ た 。 確 か に1970年 代 後 半 以 降 、 通 商 政 策 は共 通 化 され 、 通 商 政 策 主 権 が 構 成 国 か らEUへ 委 譲 さ れ た の に 伴 い政 策 決 定 ・ 実 施 過 程 も共 同 体 化 した。 しか しな が ら通 商 政 策 の 実 態 に は共 通 化 した と は い え な い 部 分 が 存 在 し て お り、 政 府 間 的 性 格 が 残 さ れ て い た。 そ の 原 因 と してEU通 商 政 策 決 定 過 程 に お け る制 度 的 な問 題 が 存 在 し、URに お け るEUの 交 渉 方 針 が 決 定 過 程 か らの 影 響 を 強 く受 け て い た こ とを 、 農 産 物 貿 易 交 渉 を 中 心 に 分 析 す る。 第2章 で 取 り上 げ るEUの 通 商 政 策 決 定 構 造 に お け る制 度 的 問 題 は 、 以 下 の3点 で あ る。 1)分 野 別 政 策 決 定 構 造:決 定 過 程 に お け る分 野 別 構 造 と は、 政 策 決 定 に 関 わ る機 関 が 政 策 領 域 毎
に 召 集 さ れ る こ と で あ る。 そ の た め 機 関 が 担 当 す る分 野 の 「部 門 特 殊(sectorspecific)利 益 」 を代 弁 す る傾 向 を 持 っ 。 しか も部 門 特 殊 利 益 を 主 張 す る 政 策 がEU全 体 の 利 益 に 照 ら して 調 整 さ れ な い構 造 に な って い る。 2)全 会 一 致 の 決 定 慣 行:全 会 一 致 の決 定 慣 行 は特 に 閣 僚 理 事 会 の 決 定 に お い て 見 られ る が 、 そ の た め に決 定 に至 る まで 時 間 を要 し、 行 動 が 硬 直 的 に な る。 さ ら に これ に よ り欧 州 委 員 会 の 提 案 は、 EU全 体 の利 益 を 代 弁 で き な くな って い た 。 3)重 層 的 で 複 雑 な 決 定 構 造:通 商 政 策 に関 してEUの 決 定 構 造 は重 層 的 で 複 雑 で あ り、 対 外 通 商 交 渉 に あ た る欧 州 委 員 会 の 自 由裁 量 を狭 め て い る。 提 案 が 閣 僚 理 事 会 で 決 定 され る ま で 欧 州 委 員 会 は構 成 国 と交 渉 しな け れ ば な らな い が 、 国 際 交 渉 の 場 に お い て も構 成 国 は113条 委 員 会 を 通 し て 交 渉 を 監 視 す る。 そ の た め に交 渉 に お け るEUの 行 動 は柔 軟 性 を 保 ち え な い。 URに お け るEUの 交 渉 態 度 は この よ う な通 商 政 策 決 定 過 程 の 制 度 的 要 因 に よ っ て説 明 で き る。 UR妥 結 を 目指 し たGATT・ ブ リュ ッセ ル 閣 僚 会 議 は、 農 産 物 貿 易 分 野 で の 交 渉 決 裂 の た め に合 意 に 達 す る こ とが 出 来 な か っ た。 農 産 物 貿 易 分 野 で の 決 裂 の 原 因 は妥 協 を 拒 ん だEUで あ る と批 判 され た が 、 そ れ は農 業 とい う一 分 野 の 特 殊 利 害 がEUで 優 先 さ れ た結 果 で あ っ た。 この よ うに 特 殊 利 害 がEU通 商 政 策 の 方 針 を 規 定 す る原 因 は、 上 述 のEU政 策 決 定 過 程 め 制 度 的 特 質 に存 在 す る。 決 定 構 造 が 分 野 別 で あ る とい う こ と は通 商 政 策 決 定 に関 与 す る機 関 が 農 業 担 当 機 関 で 占 あ られ 、 農 産 物 貿 易 交 渉 を支 配 す る の が 農 業 利 益 の み に な る こ と に つ な が る 。 さ らに 欧 州 委 員 会 の 権 限 は 弱 め られ て お り、 通 商 政 策 全 体 をEUの 利 益 に 沿 った もの に調 整 す る 独 立 した 機 関 が 存 在 しな い と い う 決 定 過 程 の制 度 的特 徴 か ら、 この よ う な特 殊 利 害 が 通 商 政 策 に大 き な影 響 を与 え る傾 向 がEUで は 見 られ て い た 。 よ って この 時 点 で は、EUの 通 商 政 策 は共 通 化 さ れ た もの の 、 そ の 実 態 に は 共 同 体 化 さ れ た と は い え な い 部 分 が か な り残 っ て い た 。 第3章 で は、 第2章 で取 り上 げ たEUの 通 商 政 策 決 定 過 程 の 問 題 が どの よ うに 変 化 し、 問 題 と な っ て い た部 門 別 利 害 に 依 拠 す る 各 々 の 主 張 の抑 制 に 結 び っ き、EUのUR交 渉 方 針 に影 響 を 及 ぼ した の か を分 析 し た。 第2章 で 指 摘 したEU通 商 政 策 決 定 過 程 の制 度 面 で の 特 質 は 、1980年 代 半 ば に市 場 統 合 へ 機 運 の高 ま り と と も に、 変 化 を 見 せ た。1980年 代 以 降 のEUの 政 策 課 題 と な っ た1992年 末 を 期 限 とす る域 内 単 一 市 場 形 成 の た あ に決 定 の迅 速 化 が 要 請 され 、 そ の た め に機 構 改 革 の 必 要 性 が 認 識 さ れ る よ うに な った 。 全 会 一 致 の 決 定 方 式 に固 着 した 閣 僚 理 事 会 は、 全 会 一 致 制 が 構 成 国 に 与 え る 拒 否 権 の た め に、 構 成 国 の 国 益 が か らむ 重 要 な 問 題 に関 して 決 定 を 下 せ な くな っ た 。 機 能 不 全 に 陥 った 閣 僚 理 事 会 に 代 わ り、 欧 州 委 員 会 、 欧 州 理 事 会 が そ の 権 限 を拡 大 させ 、 決 定 に 関 し重 要 な 役 割 を担 うよ うに な っ た。 こ の よ うに 決 定 過 程 に参 加 す る機 関 が 増 え た た め、 部 門 別 で あ っ た 政 策 決 定 構 造 は よ り広 範 な 利 害 の 主 張 が 可 能 と な って い っ た。 同 時 に 迅 速 な 決 定 を 阻 害 す る全 会 一 致 の 決 定 慣行 は 閣 僚 理 事 会 で 放 棄 さ れ 、 特 定 多 数 決 に よ る決 定 が 増 加 した こ と に よ り、 欧 州 委 員 会 の 発 議 権 が 強 化 され た。 これ らの 決 定 構 造 変 化 の結 果 、 通 商 政 策 決 定 の 中心 がEU機 関 と は い え 国 家 間 的 性 格 を 有 す る閣 僚 理 事 会 か ら、 よ り超 国 家 的 機 関 で あ る欧 州 委 員 会 や 欧 州 理 事 会 に分 散 した こ と に よ って 、 政 策 形 成 が よ り共 同 体 化 して い った。 これ ら に加 え 、1980年 代 か ら1990年 代 に か け て の
EU統 合 の 新 た な 展 開 は 、 財 政 問 題 を 通 じてCAP改 革 の 必 要 性 を 構 成 国 に 認 識 させ る こ と と な っ た 。1980年 代 以 降、 域 内 市 場 統 合 や 中 ・東 欧 諸 国 へ の 拡 大 準 備 と い った 新 た なEU統 合 課 題 に よ り、 CAPに 予 算 の 大 半 を投 じて い たEU財 政 の 見 直 しが 迫 られ る よ う に な っ た 。 よ っ て こ れ ま で の よ う に 農 業 利 益 が 優 先 さ れ え な い状 況 が 生 み 出 され 、 そ の結 果 、1992年 にCAP改 革 が 合 意 に 達 した の で あ る。 前 述 の 政 策 決 定 過 程 の 変 化 に加 え 、CAP改 革 を 含 むEU統 合 の 進 展 を 背 景 と して 欧 州 委 員 会 は対 外 交 渉 に お け る裁 量 を 獲 得 し、 そ れ がUR合 意 を 導 い た の で あ る。 この よ う に 第3章 で は 、UR合 意 に は、EUの 通 商 政 策 決 定 過 程 が 変 化 し、 共 通 通 商 政 策 の 一 層 の 共 同 体 化 が な さ れ た結 果 が 反 映 され て い る こ と を指 摘 した。 本 論 で はEUの 共 通 通 商 政 策 の 形 成 ・発 展 を 促 進 させ た 要 因 を分 析 し た。 そ して 通 商 政 策 の 共 同 体 化 は 、EU域 外 諸 国 と の通 商 関 係 と域 内 で のEU統 合 の動 き と の 相 互 作 用 を通 じて 進 展 して き た こ と を 指 摘 した 。 こ の よ う にEUは 域 外 と の通 商 交 渉 に お い てEUに 自 由化 を 迫 る外 圧 を 利 用 す る 形 で 、 域 内 の 改 革 を 実 現 して きた 。 今 後 もEUはWTOと の 関 係 を 通 して 共 通 通 商 政 策 を よ り一 層 共 同 体 化 し、 統 合 を 進 展 さ せ て い く こ とが 期 待 さ れ る。
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
本 論 文 は、EU(欧 州 連 合)の 共 通 通 商 政 策 の 形 成 と今 日ま で の 発 展 を 政 策 形 成 の 制 度 面 の 変 化 と関 連 さ せ て 明 らか に しよ う と す る もの で あ る。 形 成 ・発 展 過 程 は 、GATT東 京 ラ ウ ン ド及 び 同 ウル グ ア イ ・ラ ウ ン ドに お け るEUの 政 策 的 対 応 を 個 別 に 分 析 し、 そ の 内 容 あ る い は 性 格 の変 化 を 抽 出 して 、 形 成 ・発 展 段 階 を 画 す る と い う方 法 が と られ て い る。 は しが き で は 、 本 論 文 の 研 究 課 題 と構 成 に っ い て 述 べ て い る 。EUの 共 通 通 商 政 策 はEEC条 約 第113条 の規 定 に も か か わ らず 、 構 成 国 が 通 商 政 策 を 自 ら の手 か ら離 そ う と しな い た め に 形 成 さ れ な か っ た。 しか しGATT東 京 ラ ウ ン ド、 日EC貿 易 摩 擦 、GATTウ ル グ ア イ ・ラ ウ ン ドに対 応 す る過 程 で 、 共 通 通 商 政 策 が 形 成 され 、 発 展 す る こ と に な った 。 そ れ は、 一 方 で 域 外(と り わ け米 国 と 日本)に 対 す る効 率 的 な対 応 の 必 要 性 と、 そ れ に応 じた:域内 で の 共 通 政 策 形 成 の制 度 の 転 換 に よ る も の で あ り、 本 論 で 現 実 に 即 して 明 らか に され る。 第1章 「1970年代 に お け るECの 共 通 通 商 政 策 形 成 過 程 一 通 商 協 定 交 渉 に お け る政 策 権 限 委 譲 を 中 心 に 一」 で は、 第U3条 の規 定 に もか か わ らず 、 構 成 国 の抵 抗 に よ って 実 現 して い な か っ た共 通 通 商 政 策 が 日EC貿 易 摩 擦 及 び 東 京 ラ ウ ン ドに お け るECの 貿 易 政 策 代 表 権 の 明 確 化 の 要 求 と交 渉 の効 率 を 高 め る 必 要 性 か ら、1970年 代 末 に至 っ て 第113条 に沿 った 共 通 通 商 政 策 が 形 成 さ れ た過 程 を詳 細 に跡 づ け て 、 これ 以 後EC構 成 国 の 貿 易 政 策 を あ ぐ る対 立 はECレ ベ ル の 政 策 形 成 過 程 で 行 わ れ る よ う に な った と述 べ る。 第2章 「共 通 通 商 政 策 形 成 後 のEU通 商 政 策 の 特 質 と問 題 点 」 は・ 共 通 通 商 政 策 は 形 成 さ れ た もの の 、EUに は な お 、 分 野 別 の 政 策 決 定 構 造 、 全 会 一 致 の 決 定 慣 行 、 共 通 通 商 政 策 の 重 層 的 で 複 雑 な 決 定 構 造 と い う制 度 上 の 問 題 が 残 存 して い た こ と を1980年 代 の 事 例を 中心 に 説 明 し、 そ れ が 主 た る障 害 と な っ て1990年 のGATTブ リュ ッ セ ル 閣 僚 会 議 が 挫 折 した こ と を説 明 す る。 第3章 「ウ ル グ ア イ ・ラ ウ ン ド農 産 物 交 渉 とEU通 商 政 策 決 定 構 造 の 変 化 」 で は、 第2章 で 取 り上 げ られ た3つ の 特 質 が 、 全 会 一 致 制 に よ る閣 僚 理 事 会 が 構 成 国 の 対 立 に よ って 方 針 を打 ち 出 せ な くな る とい う限 界 を 露 呈 し、 欧 州 委 員 会 一 欧 州 理 事 会 に よ る 「全EU的 立 場 」 か らの 介 入 を 必 要 にす る な ど、 部 門特 殊 的 利 害 に よ る政 策 形 成 が 不 可 能 とな っ た点 が 、92年 の 共 通 農…業 政 策 の 改 革(マ ク シ ャ ー リー改 革)と 並 ん で 、 共 通 通 商 政 策 の 「共 同 体 化 」 に貢 献 した こ と を 、 多 く の 文 献 に よ っ て 明 らか に し て い る。 「お わ り に 」 で は、 ウ ル グ ア イ ・ ラ ウ ン ドの 合 意 の う ち 、 GATSとTRIPsに つ い てEUの 排 他 的 権 限 を 欧 州 司 法 裁 判 所 が 認 め な か っ た 判 例 を取 り上 げ、 こ
れ はWTOへ の 移 行 に対 応 す る も の で あ っ て 、 形 成 さ れ たWTOで はWTO協 定 す べ て に つ い て EUの 排 他 的 権 限 が 認 め られ る可 能 性 が あ る との 学 説 を紹 介 して、 自説 を 補 強 して い る。 本 論 文 は 共 通 通 商 政 策 の 形 成 と今 日 まで の 発 展 に 関 す るわ が 国 で初 の ま と ま っ た研 究 で あ る。 事 実 の 発 見 を 系 統 的 に丹 念 に 行 って い る の で 主 張 に説 得 力 が あ る。EU構 成 国 とEUの 制 度 レベ ル の 動 き を 詳 細 に分 析 して 、 構 成 国 レベ ル で の 政 策 形 成 → 共 通 政 策 の 形 成(し か し政 府 間 主 義 の 残 存) → 政 策 形 成 の 「共 同 体 化 」 とい う シ ェー マ に そ って 整 理 した こ とで 、 今 後 の こ の 分 野 の 研 究 に一 っ の 指 標 を提 供 した と い う こ とが で き る。 ま た 共 通 通 商 政 策 に 関 す るEUレ ベ ル の 知 識 は い う ま で も な く、GATTの 諸 条 項 やGATTの 諸 ラ ウ ン ドにっ い て も細 か な 専 門 的 知 識 を 十 分 に持 って い る こ とが 示 さ れ て お り、 論 文 の 説 得 力 を 高 め て い る。 も っ と も、90年 のGATTブ リュ ッ セ ル 会 議 の 破 綻 か ら92年 の ブ レア ハ ウ ス 合 意 に至 る 過 程 で の EU産 業 界 の 関 与 や 構 成 国 の 間 の 貿 易 政 策 ス タ ンス の 相 違 な ど、 重 要 な ポ イ ン トが 十 分 に 描 か れ て い る と は言 い難 い。 主 張 に 沿 って で き るだ け 明 快 に 論 旨を 展 開 しよ う と す る あ ま り、 複 雑 な 現 実 を 単純 化 しす ぎて い る箇 所 も見 受 け られ る。 した が っ て な お議 論 の 余 地 が と りわ け 第3章 に 残 って い る。 しか しこ う した コ メ ン トは、 本 論 文 がEUの 共 通 通 商 政 策 の 形 成 と発 展 の研 究 に新 しい貢 献 を行 っ た こ とを い さ さ か も否 定 す る もの で は な い 。 よ って 本 論 文 は 、 博 士 論 文(経 済 学)と して 合 格 と判 定 さ れ る。