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「筆者との対話」によって、読みを深める説明的文章の授業改善 : 「筆者」と対話して自分の考えを深めよう「ウナギのなぞを追って」(光村図書・四年下)

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Academic year: 2021

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  はじめに   ―本研究の提案性について―   説明的文章は、筆者が伝えたい情報を読み手に納得でき るように提示している文章である。そのため、授業では筆 者の論理を考えることが重要となってくる。しかし、接続 語や指示語を形式的に捉えたり、単に内容を要約したりす ることが中心の指導となっていなかっただろうか。それが、 子どもが受け身になった授業となり、読解力が十分に身に 付かない状況を招いていたのではないかと考えている。   「 ウ ナ ギ の な ぞ を 追 っ て 」 は 、 筆 者 で あ る 塚 本 氏 自 ら が ウナギの産卵場所を調査し、研究結果を報告している説明 的文章である。そこで本実践では、説明的文章を形式・内 容からだけ捉えるのではなくて、書き手である「筆者」を 意識して「筆者と対話」する指導に取り組む授業改善を試 みた。子供が「読み手」として「筆者」が伝えようとして い る 内 容 面 を 読 み 取 る だ け に 止 ま ら ず 、「 な ぜ 、 こ の よ う に書いたのか」といっ た「筆者」の述べ方に 着 目 し て 、「 筆 者 と 対 話 」 す る こ と で 、「 筆 者」の論理・表現に着 目しながら、自分の考 えをもつことができる と考える。これらの学 習活動を通して、説明 的文章を読む力の育成 を図る授業改善をして いきたい。

「筆者」と対話して自分の考えを深めよう 「ウナギのなぞを追って」 (光村図書・四年下)

 

 

多加志

    《本実践の主張(イメージ図)》

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し て ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る こ と が あ る 。 例 え ば 、「 筆 者 へ の 意 見 文 を 書 く 」「 筆 者 の 書 き 方 の 工 夫 を 見 つ け よ う 」 な どである。これは、活動をスムーズに行うために、学習活 動の「仕掛け」として「筆者」を位置付けている。これは、 仕組まれた 「 筆者 」 であるため、授業者が意識すべきもので ある。そうすると、やはり②の 「 筆者 」 に子供の意識は向け られるのではないかと考える。   「ウナギのなぞを追って」は、 「 筆者 」 の塚本勝巳さんが文 章に前面的に出てくるという教材の特性がある。塚本さん の人柄やウナギへの情熱といった面も学習活動には大切な 要素となるため、直接出会うことはないが、①の 「 筆者 」 も 考慮する必要があると考える。このことから、本実践にお け る 「 筆 者 」 概 念 と は 、「 原 作 者 」 か 「 想 定 さ れ る 筆 者 」 か と い っ た 狭 義 の 意 味 で は な く 、「 筆 者 」 を 子 供 が 説 明 的 文 章 の読解のための手段として活用していくためのものとして 捉えている。 ②「筆者」を取り上げる上での発達段階と学習の系統性   「 筆者 」 を意識した指導方法は、教材の特性や、発達段階 によってどのように取り扱われるべきか違ってくる。特に 発達段階における配慮は重要である。低学年から 「 筆者 」 の ことを考えていっても、混乱を招くだけである。低学年で は 、「 内 容 ・ こ と が ら 」 を 中 心 に 、 何 が 書 か れ て あ る か と     本実践における「筆者との対話」について ①本実践における「筆者」の概念   「 筆 者 」 と い っ て も 、「 文 章 の 外 に 実 在 す る 筆 者 」( 原 作 者) と子供が 「自分なりに描いた筆者像」 (想定される筆者) は大きく異なるものである。では、説明的文章指導を行う 時には、どんな「筆者」の概念を用いればいいのだろうか。 本実践では、この曖昧である筆者概念の位相を明らかにし て意味付けようとした正木友則の筆者概念に依拠して、 「 筆 者」を捉えたい。正木は、筆者概念の種類を以下のように 分類した。 ①現実に文章を書いた「筆者」   ②読み手が、文章から推論・推察・想定する「筆者」像 ③学習活動の「仕掛け」となる「筆者」   子供は筆者を媒介して説明的文章を読む活動に取り組む ため、実際の授業において①と②を子供に明確に区別させ る必要性はあまりない。そのため、授業者が 「 筆者 」 と用い た と し て も 、 ① と ② の 明 確 な 区 別 は な い が 、「 筆 者 」 の 述 べ方を根拠に内容を読み取っていくので、子供の意識は② の 「 筆者 」 に向いていくと考えられる。③の 「 筆者 」 は、学習 活動を設定する場面において、①でも②でもない 「 筆者 」 と

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材 の 特 性 か ら 、「 な ぜ 、 こ の 表 現 で 伝 え よ う と し て い る の だろうか」といった表現・論理に着目した「筆者」の意図 も考えて読んでいけるのではないかと考えている。   そ こ で 本 実 践 で は 、「 筆 者 」 の 伝 え た い こ と つ い て 、 上 記 のような 「 筆者 」 と 「 読み手 」 の両方の立場から吟味して、塚 本氏が伝えようとしている謎を解明する喜びや、論理的に 問題を解決する楽しさといった人間の生き方について自分 なりの考えをもたせていきたい。   指導の工夫 ①   「 筆者との対話 」 を意識させる読解方略の活用   本学級では、 どのような表現に着目して読んだかを、 「○ ○反応」と名付けることで、読解方略を意識して活用でき るようにしている。例えば、数値表現に着目した「気付き 反 応 」、 段 落 相 互 の 関 係 性 へ の 考 え を 促 す 「 つ な ぎ 反 応 」 等である。その中でも、子供は 「 筆者 」 の論理・表現のよさ を捉えるために、 「はずです」 「のです」といった文末で強 調している表現や、段落相互をまとめる「このように」と いった論理の展開に関する言葉に着目した読解方略を「筆 者強調反応」として位置付けて活用してきた。そこで今回 は 、 発 達 段 階 と 学 習 材 の 特 徴 と の 関 係 か ら 、「 筆 者 」 が 特 に 伝えたいことを強調している表現に着目した「筆者強調反 応」を次のような視点を加えて再設定した。 いう情報を読み取りながら、文章の大意や順序構成のよさ など、説明的文章に特徴的に表れてくる表現に気付かせた り、その働きを吟味させたりすることが大切である。中学 年では、内容理解という基本はおさえながらも、論理の展 開方法や表現方法の工夫に着目して、そのよさを捉えさせ ていくことが必要である。高学年では、それに加えて、論 理の整合性を判断したり、評価したりしながら、述べ方を 根拠に 「 筆者 」 の主張に納得できたかどうか考えていくこと が 重 視 さ れ る 。 つ ま り 、 低 ・ 中 学 年 で は 、「 筆 者 」 の 論 理 や 表現方法に着目して「読み手」の立場から 「 筆者 」 の書きぶ りのよさを共感的に確かめていき、 高学年から後は、 「 筆者」 と 「 読み手 」 の両方の立場に立って相対化・対象化していく ことで、吟味・評価をしていきながら 「 筆者 」 の主張に対し て自分の考えを深めていくという学習の系統性がある。   ウ ナ ギ の な ぞ を 追 っ て 」 は 、「 筆 者 」 で あ る 塚 本 氏 自 ら がウナギの産卵場所を調査し、報告している説明的文章で ある。中学年教材ではあるが、このように 「 筆者 」 が前面に 出 て い る た め 、 中 学 年 の 教 材 で あ り な が ら 、「 な ぜ 筆 者 は このように書いて説明したのだろうか」と「筆者」の立場 を意識して読み進めやすい教材といえる。これまでの学習 のように、どのような調査方法・考え方でウナギの産卵場 所を突き止めたのかという文章の内容を捉える「読み手」 の 立 場 と し て の 学 習 に 加 え 、「 筆 者 」 が 前 面 に 出 て い る 教

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  さらに、本学習材では、単に事実を伝えるのではなく、 「ついにそのしゅんかんは、やってきました」のように、 もともとなくても事実は十分に伝わるのに、敢えて付け加 え て い る 表 現 が あ る 。「 筆 者 」 が 淡 々 と 事 実 を 述 べ ず 、 た まごの発見への期待をもたせる述べ方や、調査への情熱を 感じさせる事実の取り上げ方をしているため、子供は「筆 者」への意識を高めやすくなっている。この特徴を生かし、 調査過程の内容を理解するという「読み手の立場」だけで なく、 主張を伝えるために、 「なぜ、 そのように書いたのか」 という「筆者の立場」にも立ちながら、文章を吟味し、自 分の考えがもてるようにしていきたい。そこで、本実践で は 、「 筆 者 」 に 共 感 的 に 納 得 し な が ら 「 な ぜ 、 そ の よ う な 書き方をしたのだろうか」という「筆者」の立場に立った 読解方略も「筆者強調反応」に加えて活用していくように する。 ②子供の意識に合わせた柔軟な場面の取り上げ方の工夫   本実践では、ウナギの産卵場所を調査する過程を捉えな がら、塚本氏は何を伝えようとしているのか、ということ を 中 心 に 、「 筆 者 」 の 研 究 に 対 す る 姿 勢 や 生 き 方 に 思 い を 巡 ら せ て い く 単 元 構 成 を 考 え て い る 。「 ウ ナ ギ の な ぞ を 追 っ て 」 は 、「 初 め ・ 中 ・ 終 わ り 」 の 典 型 的 な 文 章 構 成 に な っ ている。それらを形式的に取り上げて読み進めるのではな 〈筆者強調反応〉自分の読みの着眼点 ○今まで活用してきた視点(読み手の立場) ・「はずです」 「のです」といった文末で強調している表 現 ・段落相互の関係を表す「このように」などの論理の展 開に関する表現 ◎今回取り入れる視点(筆者の立場) ・「 な ぜ 、 こ の よ う な 書 き 方 を し た の だ ろ う か 」 と 筆 者 の立場になって、表現に立ち止まる。 ・「 こ の 説 明 は 自 分 に と っ て わ か り や す か っ た か 」 と そ の論理に納得できたか考える。   説明的文章には、当然、相手を説得しようとする試みが な さ れ て い る た め 、「 筆 者 は す ご い な ぁ 」 、 と 共 感 す る だ け で な く 、「 な ぜ 、 こ の よ う な 書 き 方 を し た の だ ろ う か 」 と 表 現 に 立 ち 止 ま っ た り 、「 こ の 説 明 は 自 分 に と っ て わ か り やすかったな」とその論理に納得したりする視点も必要に なってくる。これまで「筆者の書きぶりは上手だなぁ」と 「筆者」に共感してきた学習経験を積んだ四年生の三学期 という発達段階においては、このように 「 筆者 」 の論理・表 現を評価したり、自分の納得具合を確かめたりする読解方 略の活用が可能になるのではないかと考える。

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  このように、子供が自分達で学習の進め方を考えること は、主体性を高めることにつながる。主体性が高まった交 流は、子供同士の読みの交流を促すだけでなく、読解方略 を活用した「筆者との対話」を活性化させることにもつな がると考える。   単元の概要 (1)単元名   「 筆者 」 と対話して自分の考えを深めよう 「ウナギのなぞを追って」 (光村図書4年下) (2)学習材について   本 学 習 材 は 、「 ウ ナ ギ の 産 卵 場 所 は ど こ か 」 と い う 謎 を 追い求めて調査を続けた研究者たちが、長い年月をかけて、 小さなレプトセファルスから得られる手がかりをもとに、 産卵場所を見つけるまでの過程をわかりやすく説明した調 査報告文である。ウナギの産卵場所について仮説を立てて 検証していく科学的な調査研究の方法や、気の遠くなるよ うな作業を支える情熱、調査結果・考察を文章・写真・図 表 ・ 地 図 で 説 明 し な が ら 、「 筆 者 」 の 塚 本 勝 巳 氏 が 実 際 に 調 査した過程を情意的な文章で表現している。このような本 文 の 特 徴 と 、「 筆 者 と の 対 話 」 の 視 点 か ら 、 以 下 の よ う な 単元計画を構成した。 く 、 第 一 次 で 、「 問 い 」 と 「 答 え 」 や 文 章 構 成 、 調 査 過 程 の内容やあらすじをおさえることで生まれる「塚本さんは 何を伝えようとしているのだろうか」という子供自身の問 いを大切にしていく。そこから学習課題を作っていくこと で 、 学 習 へ の 見 通 し を も っ て 、「 初 め ・ 中 ・ 終 わ り 」 を 読 んでいけるようにする。このように「伝えたいこと」を柱 にして、子供自身の問いと全体の文章構成から、それぞれ の場面や段落を読む必要感を高めた単元構成にすることで、 子 供 の 主 体 性 を 大 切 に し な が ら 学 習 を 進 め ら れ る よ う に す る 。 ③「筆者との対話」を活性化させるグループ交流の推進   実 際 の 授 業 で は 、「 筆 者 」 と 対 話 し や す い よ う 、 子 供 が 学習の進め方を話し合い、次のように決めて取り組むよう にした。 ・お互いの考えの共通点・相違点をもとに話す。 ・グループ発表は順番にしない。他のグループの意見を きっかけにして、また話し合いをする。 ・相互指名し、次のグループが当たるまでは話し合いを 続け、発表になったらしっかり聞く。 ・話し合いで疑問が出てきたらみんなに紹介して、それ を話し合うかどうか、みんなで決める。

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かむ。   学習課題「塚本さんがどのように調査して語っているか を通して、 本当に伝えたいことをたしかめよう」 第 二 次   ウ ナ ギ の 産 卵 場 所 を 見 つ け る 調 査 過 程 か ら 、「 筆 者」の伝えたいことを確かめる。   第 1 時   「 初 め 」 の ① ② ③ 段 落 で 「 筆 者 」 が 伝 え て い る ことを確かめる。   第2時   「中」の第④⑤⑥⑦段落から、 「筆者」が伝えて いることを確かめる。   第3時   「中」の第⑧⑨⑩⑪⑫段落から、 「筆者」が伝え ていることを確かめる。   第4時   「終わり」の⑬段落と全文をつなげて、 「筆者」 が伝えていることを確かめる。 第三次   「 筆者 」 の伝えたいことをもとに、自分の生き方に ついて考える。   第 1 時   全 文 を 振 り 返 り 、「 筆 者 」 の も の の 見 方 ・ 考 え 方に対しての自分の考えをもつ。   第2時   友達と考えを交流し、問題解決に向かった自分 の経験と重ねる。   指導の実際 【第一次について】   第一次では本文を通読し、塚本氏のプロフィールを紹介 (3)目標 ○「筆者反応」 「気付き反応」 「つなぎ反応」を活用するこ とで、事実と推論、仮説と考察との関係や、調査方法と 図表・数値との関係を捉え、調査方法のすばらしさや研 究者としての情熱を理解することができる。 【知識及び技能】 ○産卵場所の調査を説明する表現や研究に対する思いを、 段 落 相 互 の 関 係 か ら 着 目 し た り 、「 筆 者 」 と 「 読 み 手 」 の 立 場になって捉えたりすることで、身近な疑問を探究し続 ける楽しさや生き方を伝えている筆者の論理・表現につ いて考えることができる。 【思考・判断・表現】 ○ウナギの産卵場所を推論・調査していくすばらしさや研 究 へ の 情 熱 に つ い て 、「 筆 者 」 と 「 読 み 手 」 の 立 場 を 考 え て 交 流 す る こ と を 通 し て 、 「 筆 者 」 の 論 理 や 思 い を 捉 え よ う としている。 【主体的に学習に取り組む態度】 (4)単元計画(全九時間) 第 一 次   「 ウ ナ ギ の な ぞ を 追 っ て 」 を 読 み 、 学 習 課 題 を つ かむ。   第1時   「ウナギのなぞを追って」を通読し、 「筆者」の 人柄や大まかなあらすじを捉える。   第2時   文章構成や「問い」と「答え」を確認する。     第 3 時   「 筆 者 の 伝 え た い こ と 」 を 考 え 、 学 習 課 題 を つ

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に戸惑いをもつ子供 も多くいた。しかし、 「今年もマリアナの 海 に や っ て き ま し た」という書き出し か ら 始 ま り 、「 あ ざ やかなぐんじょう色 の海は、白い船体を 青くそめてしまいそ う で す 。」 と い う 言 葉で一段落目を締め くくっている叙述に 着目することで、文 学的な表現を用いて 読者を引きつけよう としている工夫に気 付くことができた。 このような「読み手」を自分の世界へと誘う効果を期待し たような工夫が「初め」以外の段落でも随所で見受けられ た 。 そ の た め 、 子 供 は 「 筆 者 」 が 自 分 の 研 究 に 対 し て 強 い 熱意をもって語っているという印象をもったようだった。 そ こ で 、「 中 」 や 「 終 わ り 」 で も 「 ど の よ う な 調 査 を し た のか」 「研究にかけている情熱」 「問題を解決していく楽し して「筆者」への意識を高めた。また、大まかな内容を捉 えるために、段落ごとに要約して内容を把握できるように し た 。 そ の 後 、「 初 め 」 の 段 落 を 中 心 に 「 筆 者 」 の 伝 え た い こ と に つ い て 考 え た 。 最 初 は 、「 筆 者 」 が 登 場 し て 自 分 が 調 査 し た 過 程 を 述 べ て い る 点 や 、「 問 い 」 と 「 答 え 」 が 明示されていない点といった、いつもの説明文と違う感じ 挿絵エリア

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や「ウナギを見つける大変さ」を伝えようとしているので はないかと予想して学習を進めた。子どもは、マリアナの 海を示した地図や、調査をしている様子を写した三枚の写 真 と 「 周 り に 島 一 つ な い 」 や 「 今 年 も 」「 毎 年 の よ う に 」 を つ な げ て 、 情 熱 や 大 変 さ を 捉 え て い っ た 。 し か し 、「 あ ざ や か な ぐ ん じ ょ う 色 の 海 」「 白 い 船 体 を 青 く そ め て 」 と いったマリアナの海の様子を、なぜこのような表現で書い て い る の か 疑 問 に 思 う 子 供 が 出 て き た 。 そ こ で 、「 筆 者 強 調 反 応 」 を 想 起 さ せ 、「 筆 者 」 の 立 場 に な っ て 考 え る よ う に促すことで、塚本氏の意図に迫っていけるようにした。 子供は「きれいで美しい表現だから、読み手は行きたくな るし、わくわくすると思う。 」「大変さだけでなく、予想し て探求する楽しさも伝えたいのかもしれない」と「筆者」 が伝えようとしていることをより確かなものにすることが できた。   このように、話し合いの過程で子供から疑問が生じたの は、自分達で決めたグループ交流のやり方に沿いながら話 し合いを進めていたからである。子供同士の対話を活性化 させる学習活動は、 本文の叙述に立ち止まり、 「なぜ 『筆者』 はそのように書いたのだろう」という「筆者との対話」を 促しやすくすることを実感できた。   「 中 」 で は 、 産 卵 場 所 の お よ そ の 見 当 を つ け て い る ④ ~ ⑦段落の「中①」と、予想に基づき調査を繰り返して産卵 さや喜び」といった観点で伝えようとしているのかを探し ていった。 「『筆者』の伝えようとしていること」という全 体を貫く主張点を意識化することで、 「初め・中・終わり」 のそれぞれの場面では、伝えたいことが同じなのか、自分 達で全文をもとに考えることができた。   従来の指導では、形式的に「初め・中・終わり」の段落 を順番に読んでいく事例が多かったのだが、本実践のよう に 、「 筆 者 が 伝 え た い こ と 」 を 子 供 が 意 識 化 す る こ と で 、 それが「初め・中・終わり」のそれぞれにおいて、どのよ うに書かれているのか確かめるという、読みの見通しをも ちやすくしていた。そのため、授業の終わりには、筆者が 研究に対して強い思いをもっていることに気付くことがで きた。ただ、筆者の論理・表現に深く着目はできていない た め 、「 塚 本 さ ん が 伝 え た い こ と は わ か っ て き た 気 が す る けど、本当はどれを伝えたかったのだろうか」という問い が 生 ま れ て き た 。 そ こ で 、「 塚 本 さ ん が ど の よ う に 調 査 し て語っているかを通して、本当に伝えたいことをたしかめ よう」という学習課題を作ることができた。 【第二次について】   第二次では「初め・中・終わり」の段落を調査過程ごと に場面分けして、学習課題について考えていった。   「初め」 では、 第一次で話し合った 「ウナギに対する情熱」

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調査を続けていく情熱・楽し さを分かってもらおうとして いる意味合いが強い。   そこで、 「中①」では、 「調 査 方 法 」「 調 査 か ら 明 ら か に な っ た 事 実 」「 そ の 事 実 か ら 導 き 出 さ れ た 仮 説 」「 検 証 」 といった産卵場所の調査に関 する内容を、作業にかかった 年数や労力も考えながら理解 し て い っ た 。 そ の 際 、「 年 ( 日 )・ 体 長 ・ 場 所 が 、 数 値 で必ず書いてあるから、分か りやすい」といった塚本氏の 説明をきちんと捉えた話し合 いが展開された。その上で、 「なぜ、このように書いてい るのだろうか」といった視点 で 「 筆者 」 の立場に立つ「筆者 強調反応」を読解法略として 意識化したグループ交流を行 う こ と で 、「 塚 本 さ ん が 、 四 十・三十・二十ミリメートル 場所を突き止めた⑧~⑬段落の「中②」の二つの場面にさ らに分けて、塚本氏が伝えたいことについて考えた。   塚本氏の情熱は、四年生がこの文章を読むだけでは簡単 に は 伝 わ ら な い 部 分 も あ る 。 例 え ば 、「 二 十 日 分 の き ょ り を 計 算 し て 海 流 を さ か の ぼ れ ば ・ ・ ・ た ど り 着 け る は ず で す 。」 と 述 べ な が ら 、 そ の 発 見 に は 三 年 も か か っ て い る こ とが、そのことを述べてはいないので、一読しただけでは 読み取りにくい。また、周りに島一つ見えない海の真ん中 で、あみを使って調査をする大変さについての様子を詳し く述べているわけではないので、その労力をイメージする のは難しい。したがって、探求的な過程の事実を的確に伝 えるというより、ウナギの研究における問題解決の視点や、 第二次1時板書 挿絵 挿絵 挿絵 筆者 顔写真

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の伝えたいことへの理解が深められた。   「 中 ② 」 で は 、「 中 ① 」 と つ な げ て 、「 筆 者 」 の 伝 え た い ことを考えた。   レ プ ト セ フ ァ ル ス を 見 つ け た こ と を 「『 中 ① 」 で は 年 号 だけで表現していたのに対し、 「中②」 では年月日に加えて、 月齢や時間帯まで表現されていることに着目した発言が多 かった。また、産卵場所が近づくにつれて、情意的な表現 も 増 え て き た 。 そ こ で 、「 な ぜ 段 々 く わ し く 、 思 い を こ め た表現をしたのだろう」という疑問が子供から出てきたた め 、 塚 本 さ ん の 立 場 に 立 っ て 、「 筆 者 と の 対 話 」 を し な が ら 交 流 を し た 。「 三 十 六 年 間 と い う 長 い 期 間 の 調 査 は 苦 労 も多かったからこそ、発見した卵は『にじ色』に見えたの だと思う。 」「だから、大変さもあるけど、発見するまでの 情熱や、 発見した時の感動から、 探求し続ける楽しさを 『中 ①』とつなげてさらに詳しく表現したんじゃないかな」と いった発言が出てきた。こうした「筆者との対話」の活性 化 に よ り 、「 中 」 の 事 例 で は 、 仮 説 ・ 推 論 ・ 考 察 を 繰 り 返 して調査を進める問題解決の過程のおもしろさや、産卵場 所を突き止めた感動を伝えようとしている塚本さんの思い が段々深まっていることへの理解を深められた。   「 中 」 で 「 筆 者 」 の 伝 え た い こ と へ の 理 解 が 深 ま っ た こ と を 受 け て 、「 終 わ り 」 の 場 面 の 授 業 で は 、「 『 終 わ り 』 は 三文しかないので、考えなくても大丈夫ではないか」と冒 とわざわざ数値で並べて書くことで、読み手はリズムが良 くてワクワクしてくるから、塚本さんが段々うれしくて楽 しくなっている様子が伝わってくる。 」「予想して探求し続 ける楽しさをより強く伝えていると思う」 といった 「筆者」 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 筆者 顔写真

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  すると子供から、 ⑬段落の 「今年も ・・・ 」 の一文から、 「初 め と 終 わ り に な ぜ 二 回 も 同 じ よ う な 文 を 書 い た の か 。」 と い う 疑 問 が 出 て き た 。 そ の 疑 問 を 解 決 し て い く 過 程 で 、 「『 中 』 の 段 落 で 伝 え て い た ウ ナ ギ の 産 卵 場 所 を 調 査 す る 楽しさとは目的が違ってつながらないように思える」とい う 疑 問 が 新 た に 生 ま れ た の で 、「 初 め ・ 中 ・ 終 わ り 」 の つ ながりを話し合った。   子供は次のような交流で考えを深めていった。 C1たまごを産む場所の調査の大変さや楽しさは『中』 で 書 か れ て い た ん だ け ど 、『 終 わ り 』 に は 「 こ れ で ほぼ」と書いてあるので、まだ続けられる楽しみと してつながっていると思う。 C 2 「 今 年 も マ リ ア ナ の 海 に や っ て 来 た の で す 。」 は 、 つながらないように思えたけど、初めと終わりがつ ながることで、研究の第二歩目を踏み出しているこ とがわかった。 C3「初め・中・終わり」がつながることで、塚本さん の伝えたいことがもっと強調されているとわかった。   このようにして、探求し続ける楽しさを「初め・中・終 わり」を通して一貫して伝えているという文章全体の構成 のよさについて自分達で読み深めることができた。 頭で問いかけた。⑬段落の必要性に着目させることで、全 文 を 通 し た 段 落 相 互 の 関 係 か ら 、「 筆 者 」 の 論 理 ・ 表 現 を 捉 え 、「 筆 者 」 が 調 査 過 程 を 通 し て 、 何 を 伝 え よ う と し て い るのかを、全文を通して自分なりに考えられるようにした。 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 挿絵 筆者 顔写真

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  それは「筆者強調反応」という「筆者」と「読み手」の 立場に立った読みの交流をグループで促進したからだと思 わ れ る 。「 筆 者 と の 対 話 」 と い う 目 的 意 識 を も っ た 交 流 を することで「筆者」の書 きぶりへの疑問が生じや すくなった。それが、子 供のまとめに見られるよ うに、疑問をみんなで解 決していくという学習の 過程で読みを創るという 楽しさにつながっていっ たのだと思われる。 グループ交流の様子 挿絵 挿絵 挿絵 筆者 顔写真 挿絵エリア 挿絵エリア

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とのきっかけになり、第二次への学習の見通しをもたせる ことにつながっていくこととなった。第二次のイメージを 子供自身がもつことは、それに合った学習の進め方を考え ることにもなる。自分達で考えた学習活動は、読みの交流 によって生まれた疑問を全体で共有しやすくし、それを受 けてさらに焦点化した問いを生み出しやすくするといった、 主 体 的 ・ 対 話 的 な 学 び に な っ て い た 。 そ こ に 、「 筆 者 と の 対 話 」 を 取 り 入 れ る こ と で 、「 筆 者 」 が 意 図 的 に 表 現 し て いる叙述に着目するための視点が鮮明になり、学習場面を 深める「鍵」となる表現や仕掛けに意図的に働きかけやす くなる。それが「筆者」の文章全体の構成のよさに気付く 深い学びへの促しとなった。   主体的・対話的で深い学びは、ただグループ交流をすれ ば い い も の で は な い 。 第 一 次 で 、 子 供 が 「 何 を 」「 ど の よ うな方法で読むか」という学習の見通しをもつことと、第 二次でそのための読解方略を子供が使いこなして学習課題 に迫る指導が必要である。それが、第三次で自分を振り返 ることにつながる。子供主体という名の下、こうした指導 が疎かにならないように心がけたい。また、本学習材は四 年 生 の 三 学 期 に 位 置 付 け ら れ て い る 。「 筆 者 」 が 前 面 に 出 てくるため、対話を意識させやすかったが、本学習材以外 のもので、どの程度「筆者」を意識させていくのか、発達 段階を踏まえて系統的に整理していく必要がある。併せて、 【第三次について】   第三次では、全文を振り返り、塚本さんの生き方につい て自分なりに考えをもった後、グループでその考えを交流 した。その後、自分の生活と塚本さんの生き方をつなげて 考えたことをまとめる活動を行なった。塚本さんの情熱や、 これからも一つのことを追求し続けていく楽しさと自分の 今取り組んでいることを重ねて、次のような考えをまとめ に書くことができていた。   「 筆 者 」 と 「 読 み 手 」 と い う 二 つ の 立 場 に 立 っ て 考 え て いたことが、自分自身の生活と結びつけて考えを深めるこ とにつながったと思われる。   成果と課題   今回は、 「筆者の伝えたいこと」 を軸に、 「筆者との対話」 を取り入れながら、子供達が考えた学習の進め方に沿って 授 業 を 展 開 し た 。「 筆 者 の 伝 え た い こ と 」 を 第 一 次 の 時 点 でしっかり話し合わせることは、文章構成を捉えていくこ

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高 学 年 以 降 に は 、「 筆 者 と の 対 話 」 の 質 を ど の よ う に 高 め ていくのかも実践が不十分である。理論的なことだけでな く、今後は、発達段階も考慮した「筆者との対話」への実 践的な研究を続けていきたい。 引用・参考文献 植山俊宏( 2018 )「国語科授業研究(第五版) p.150 」教育出版 古 部 翔 太 ( 2013 )「 説 明 的 文 章 指 導 に お け る 『 筆 者 』 概 念 に 関 する一考察」 正 木 友 則 ( 2013 )「 説 明 的 文 章 指 導 に お け る 筆 者 概 念 の 整 理 と 検討   ―学習過程の類型化を中心に―」 長 崎 伸 仁 ・ 吉 川 芳 則 ・ 石 丸 健 一 ( 2013 )「 読 解 と 表 現 を つ な ぐ 文学・説明文の授業」学事出版   (附属小学校教諭)

参照

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