はじめに
グローバル化の進行とともに社会には様々なデータが氾濫している.これらのデータか ら必要なものを検索し,解析し意思決定が行われる.そのため,今日では誰もが目的とす るデータを広く収集し,意味している内容を把握・認識する能力を備えている必要がある. 多くのデータから,それが示している内容を把握する学問が統計学である.統計学を用い ることにより,個人の健康状態から環境,世界経済までも把握することができ,企業や国 の政策をも決定する重要な学問分野となっている. 企業においては,品質管理や営業目標,他社の動向など様々なデータに統計処理を施し, 他社との競争に打ち勝つ戦略を模索している.戦略を構築するときの裏付けとなるのが統 計に基づくデータ解析である.統計解析に従い戦略が提案され決定される.今日のように パソコンなどコンピュータが普及し,どこでもインターネットが利用でき,時空を超えて 様々なデータを入手し処理することができる現代において,統計学は最も重要な学問であ る.社会科学や人文科学,医療福祉分野に携わっている方も統計の知識が必要となってい る.このとき,難しい数式を駆使し統計解析を行うのではなく,むしろデータから何がい えるのかを導出することが大切である. 本書は高度な数式を駆使した統計よりも,統計の内容を理解することを目指している. すなわち,基本的で必要最低限な解析能力を学びデータが意味していることを導出するこ とに主眼を置いている.このため,できる限り身近なデータを取り扱い,内容を把握でき るよう各節に簡単な問題を配置し,また数学が不得意な方でも理解できるように記述した. ICT(情報通信技術)の浸透とともにどこでも統計ソフトが容易に利用できるようになっ てきている.特に,Microsoft社のExcelの普及による貢献が大きい.本書においてもExcel が使える環境にあることを前提として内容を構成しており,Excelを利用できない場合でも 統計の概要を把握できるようにも配慮した. 本書は,大学初年次,短期大学,専門学校における文系・医療福祉分野の教科書として, また,これから統計を学ぼうとしている一般社会人のために執筆したものであり,2部13章 から構成されている.Ⅰ部は,Excelの使い方から統計の基礎概念,基本統計量,ヒストグ ラム,相関,時系列データの分析,正規分布,標本から得られる推定,検定,重回帰分析 から構成されている.Ⅰ部のみで統計の概略を理解することができるよう配慮している. 時間に余裕のない方はⅠ部のみでもかなりの実力がつく.最低Ⅰ部は読破して頂きたい. Ⅱ部は社会調査法,分割表の検定,アンケート調査の分析方法例から構成されている.大 学での講義に用いる場合は,1から5章は各1コマずつ,6から10章は各章2コマ程度を配 していくのが理想である.半期15コマでⅠ部が終了する.その後,さらなる知識や事例を 学びたいときⅡ部に進むのが望ましい.Ⅱ部は少し実践的な内容について記述し,卒論や レポートを作成するのに有効である.特に,第13章のアンケート調査分析事例は実践的な解析について述べた.13章まで読破した方は,アンケートを実践的にまとめる能力を備え ることになる.1頁ずつしっかりと理解しながら読んでいただきたい. 本書執筆に当たり数多くの書籍を参考にさせていただいた.著者の方々に深く謝意を申 し上げる.また,長年のお付き合いの中で執筆の機会を与えて頂いた共立出版㈱営業部長・ 岩下孝男氏と校正から出版に至るまで一貫してご尽力いただいた編集部・山本藍子氏に心 から感謝する. 2011年9月 著 者 iv はじめに