高
信
撰
﹃
六
大
無
碍
義
抄
﹄
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検
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袂 袒 明 恵 門 下 に お け る 密 教 の 一 様 相 袂 袒小
宮
俊
海
一
は
じ
め
に
洛 北 栂 尾 山 高 山 寺 は ︑ 鎌 倉 時 代 初 期 を 代 表 す る 学 僧 ︑ 明 恵 房 高 弁 ( 一 一 七 三 ~ 一 二 三 二 ) ( 以 下 ︑ 明 恵 ) の 開 山 で 知 ら れ る 古 刹 で あ る ︒ 明 恵 の 思 想 ま た は 教 学 は ︑ 華 厳 と 真 言 の 兼 修 と さ れ ︑ 従 来 か ら そ の 独 自 性 が 指 摘 さ れ て き た( ) ︒ ま た 近 年 ︑ 明 恵 門 下 の 弟 子 た ち が い か に そ の 華 厳 な ら び に 真 言 の 両 教 学 を 高 山 寺 や そ の 他 の 寺 院 へ 継 承 し て い た の か と い っ た 研 究 が 進 め ら れ ︑ 後 世 の 華 厳 教 学 や 真 言 教 学 へ の 影 響 が 少 し く 解 明 さ れ つ つ あ る( ) ︒ 順 性 房 高 信 ( 一 一 九 三 ~ 一 二 六 四 ) ( 以 下 ︑ 高 信 ) は ︑ 明 恵 の 二 十 歳 年 少 に あ た る 高 足 の 一 人 で ︑ ﹃ 解 脱 門 義 聴 集 記 ﹄ や ﹃ 光 明 真 言 句 義 釈 聴 集 記( ) ﹄ な ど 明 恵 の 講 説( ) に 対 す る 聞 書 の 編 纂 や ︑ ﹃ 明 恵 上 人 歌 集 ﹄ や ﹃ 高 山 寺 明 恵 上 人 行 状 ﹄ と い っ た 文 学 作 品 や 伝 記 資 料 の 類 聚 に 努 め た 人 物 で あ る ︒ 主 に 高 信 は ︑ 明 恵 の 華 厳 教 学 の 継 承 者 と し て 高 く 評 価 さ れ て い る が ︑ 晩 年 は 丹 州 神 尾 山 寺 ( 現 京 都 府 亀 岡 市 ) を 中 興 開 山 し ︑ 高 山 寺 と の 往 来 を 繰 り 返 し な が ら 精 力 的 に 著 述 活 動 に 従 事 し て い る( ) ︒ な か で も ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 二 巻 は ︑ 空 海 撰 ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ に 対 す る 注 釈 書 の 一 つ で ︑ そ の 書 名 か ら も 了 解 す る ご と く 冒 頭 所 説 の ﹁ 六 大 無 碍 常 瑜 伽 ﹂ 以 下 に 続 く い わ ゆ る 二 頌 八 句 の 各 句 に 注 釈 を 施 す も の で あ る ︒ 高 山 寺 に 関 わ る 学 僧 の 中 で は 空 海 の 著 作 に 対 す る 注 釈 書 と し て 貴 重 な 資 料 で あ り ︑ 高 山 寺 に 継 承 さ れ る 真 言 密 教 を 解 明 す る 上 で 看 過 す る こ と の で き な い も の と い え る ︒ − 129 −本 書 の 構 成 は ︑ 上 下 二 巻 よ り な り ︑ 巻 上 に お い て は 二 頌 八 句 の 各 句 に 対 し て 逐 文 的 に 解 釈 さ れ ︑ 巻 下 に お い て は ︑ そ れ ら の 内 容 を も と に 即 身 成 仏 に 対 し て 教 学 的 解 釈 に つ い て の 議 論 を 展 開 し て い る ︒ 既 に い く つ か の 先 行 研 究 に よ り 各 所 に 所 蔵 さ れ る ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ の 所 在 な ら び に 内 容 に つ い て は 紹 介 が な さ れ て い る ︒ し か し ︑ そ の 重 要 性 に つ い て は 指 摘 さ れ て い な が ら も ︑ 資 料 的 制 約 等 に よ り 内 容 研 究 に つ い て は あ ま り 進 展 し て い な い の が 現 状 で あ る ︒ 本 稿 で は ︑ そ れ ら 先 行 研 究 に 依 拠 し な が ら も 今 後 ︑ 上 下 二 巻 全 文 の 翻 刻 校 訂 ︑ 注 釈 研 究 の 提 示 を 目 標 に こ こ で は 巻 上 を 中 心 に 本 文 読 解 の 一 助 に い く つ か の 内 容 に つ い て 紹 介 し た い ︒
二
資
料
と
先
行
研
究
( ) 資 料 に つ い て 『 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に つ い て は ︑ す で に 諸 氏 に よ り 各 所 に お け る 所 蔵 写 本 の 情 報 に つ い て い く つ か の 報 告 が な さ れ て い る ︒ そ れ ら を も と に 現 在 ︑ 確 認 で き る も の に は 以 下 の も の を あ げ る こ と が で き る ︒ ① 【 唐 招 提 寺 蔵 】 巻 上 ・ 下 二 帖 ( 以 下 ︑ 唐 招 提 寺 本 ) ② 【 京 都 大 学 附 属 図 書 館 蔵 】 巻 上 ・ 下 二 帖 ( 日 蔵 未 刊 四 〇 五 ) ( 以 下 ︑ 京 大 本 ) ③ 【 大 須 観 音 真 福 寺 文 庫 蔵 】 巻 下 一 巻 ( 五 八 四 袞 一 九 ︑ 七 三 函 ) ( 以 下 ︑ 真 福 寺 本 ) ④ 【 高 山 寺 蔵 ① 】 巻 上 ・ 下 二 帖 ( 聖 教 類 第 二 部 二 四 号 ) ( 以 下 ︑ 高 山 寺 本 ① ) ⑤ 【 高 山 寺 蔵 ② 】 巻 下 一 冊 ( 聖 教 類 第 四 部 第 一 二 六 函 四 八 号 ) ( 以 下 ︑ 高 山 寺 本 ② ) 以 上 ︑ 五 種 の 写 本 が 現 在 確 認 さ れ て い る が ︑ う ち 唐 招 提 寺 本 に つ い て は ︑ 花 野 憲 道 [ 一 九 九 二( ) ] ︑ [ 一 九 九 三 ] に よ り 巻 上 ・ 下 と も に 全 冊 の 影 印 を 確 認 す る こ と が で き る ︒ ま た こ の 度 ︑ 唐 招 提 寺 御 当 局 の 許 可 に よ り 全 冊 の 実 見 調 査 な ら び に 撮 影 の 機 会 を 得 た( ) ︒ 本 写 本 は ︑ 明 恵 の 直 弟 子 で あ る 空 達 房 定 真 ( 一 一 七 三 ~ 一 二 五 〇 ) を 開 基 と す る 高 山 寺 内 に お い て も 最 − 130 −初 期 に 成 立 し た と さ れ る 中 心 的 な 子 院 で あ る 方 便 智 院 の 印 記 が 巻 上 ・ 下 そ れ ぞ れ 首 題 下 に 捺 さ れ ︑ 朱 点 ・ 返 点 ・ 仮 名 等 の 明 瞭 な 善 本 で あ る ︒ 以 下 ︑ 本 稿 で は 唐 招 提 寺 本 を 底 本 と し て 用 い ︑ 原 文 に 付 さ れ る 訓 点 や 読 点 は 本 写 本 に 依 り ︑ 表 記 を 通 用 の 字 体 に 改 め ︑ 文 意 に 応 じ 適 宜 改 行 し て 本 文 引 用 を 行 い ︑ そ の 後 に 私 に 訓 読 を 施 し 提 示 し た ︒ 京 大 本 は ︑ 筆 の 質 か ら 近 代 の 写 本 と 思 わ れ ︑ 請 求 番 号 か ら 推 察 す る に 日 本 大 蔵 経 に 収 録 す る こ と を 目 的 と し て ︑ 各 寺 院 聖 教 蔵 よ り 集 成 さ れ た 写 本 を 書 写 し た 際 の 一 つ と 考 え ら れ る ︒ 本 写 本 に つ い て は ︑ 野 呂 靖 [ 二 〇 〇 七 B ] に よ り 巻 上 の み で は あ る も の の 翻 刻 が な さ れ て い る ︒ 本 文 や 訓 点 に 関 し て 唐 招 提 寺 本 と の 異 同 が 多 少 認 め ら れ る た め 今 後 ︑ 校 訂 作 業 を 要 す る ︒ 本 稿 に お け る 引 用 箇 所 に 見 受 け ら れ る 校 勘 に 関 し て は 文 末 脚 注 に 示 し た ︒ 真 福 寺 本 に 関 し て は 巻 下 の み 現 存 し て お り ︑ 装 丁 は 軸 無 の 巻 子 本 で あ る ︒ 稿 者 未 見 で あ る が ︑ マ イ ク ロ フ ィ ル ム 画 像 の 複 写 申 請 を す る こ と に よ り 本 文 閲 覧 は 可 能 で あ る が 虫 損 が 多 少 見 受 け ら れ る ︒ し か し ︑ 本 写 本 は 他 所 蔵 写 本 に は 見 ら れ な い 奥 書 を 有 し て い る こ と か ら 以 前 よ り 注 目 さ れ て い る ︒ 最 後 に 高 山 寺 本 ① ︑ 高 山 寺 本 ② に 関 し て は ︑ 末 木 文 美 士 [ 二 〇 〇 六 ] に お い て 紹 介 さ れ ︑ 高 山 寺 本 ① の 一 部 翻 刻 が 掲 載 さ れ る も の の 全 文 の 公 開 に は 至 っ て い な い ︒ そ こ で 稿 者 が 以 前 ︑ 高 山 寺 本 ① ・ ② の 実 見 調 査 を 行 っ た 際( ) ︑ 高 山 寺 本 ① と 京 大 本 の 本 文 と 校 勘 を 確 認 し た と こ ろ ︑ 京 大 本 の 文 字 の 補 入 や 誤 記 の 出 入 ︑ 前 後 入 替 の 注 記 等 か ら 高 山 寺 本 ① は 京 大 本 の 親 本 と 考 え ら れ る ︒ そ の た め ︑ 高 山 寺 本 ② も 含 め 校 訂 本 文 作 成 に む け て 改 め て 実 見 調 査 が 必 要 と 考 え ら れ る が ︑ 今 後 の 課 題 で あ る ︒ こ こ で ︑ 各 写 本 の 奥 書 を 確 認 す る こ と に よ り ︑ 本 書 の 成 立 事 情 を 確 認 し て お き た い ︒ ○ 諸 写 本 奥 書 ( す べ て 下 巻 の み ) 【 唐 招 提 寺 本 ・ 京 大 本 ・ 真 福 寺 本 ・ 高 山 寺 本 ① ・ ② 】( 日 時 ︑ 場 所 等 全 て 共 通 ) 寛 元 五 年 〈 丁 未 〉 二 月 二 日 子 剋 於 高 山 寺 東 / 谷 禅 庵 依 一 人 懇 請 卒 爾 草 之 畢 / 東 谷 隠 士 高 信 / 元 是 仮 名 也 彼 草 於 高 山 寺 林 師 令 一 見 信 了 其 後 依 同 侶 勧 進 成 真 名 畢 了 矣 / − 131 −
建 長 四 年 〈 壬 子 〉 二 月 廿 八 日 於 丹 州 神 尾 山 / 北 谷 草 室 聊 加 点 畢 遂 可 再 治 之 也 矣 / 山 中 非 人 高 信 / / 【 真 福 寺 本 】 建 長 四 年 卯 月 十 七 日 於 神 護 寺 地 蔵 院 写 之 此 書 順 正 房 被 / 選 出 即 身 成 仏 趣 同 宗 无 委 建 立 以 先 宗 為 其 教 相 華 厳 宗 教 相 可 / 為 地 盤 被 載 彼 宗 義 尤 至 要 々 々 愚 僧 閉 眼 之 後 彼 本 坊 信 恵 / 御 房 可 送 之 [ ] 金 剛 資 隆 詮 記 之 / 康 元 二 年 二 月 十 八 日 於 高 野 山 禅 定 院 申 請 僧 都 御 房 御 本 / 写 之 雖 為 他 宗 人 之 制 作 真 言 宗 義 誠 有 味 矣 / 愚 僧 殊 才 心 / 々 々 / 就 中 被 覧 此 書 不 知 作 者 残 不 審 之 処 夢 中 有 僧 告 云 明 恵 上 人 之 / 弟 子 造 〈 云 々 〉 弥 感 心 々 々 矣 / 求 菩 提 沙 門 豪 信 入 寺 〈 生 年 / 卅 二 〉 / 同 廿 三 日 未 刻 移 点 畢 / / 【 高 山 寺 本 ① 】 ( 附 箋 ) 私 云 如 此 当 寺 ニ 一 部 去 本 候 奥 書 ニ 候 間 写 歟 遂 之 [ ] 弁 ( 花 押 ) / / 【 高 山 寺 本 ② 】 右 之 抄 上 巻 古 本 少 々 書 加 之 / 猶 下 巻 全 不 足 故 此 度 補 之 / 也 / 沙 門 永 弁 〈 六 十 / 七 才 〉 / 于 時 元 禄 五 〈 壬 申 〉 年 正 月 九 日 / / 以 上 の よ う に ︑ も と は 高 信 が 寛 元 五 年 ( 一 二 四 七 ) 二 月 二 日 ︑ 一 人 の 僧 に 請 わ れ て 取 り 急 ぎ 仮 名 書 き に よ り 撰 述 し た ︒ そ れ を 明 恵 の 高 足 で あ る 義 林 房 喜 海 ( 一 一 七 八 ~ 一 二 五 〇 ) に よ り 確 認 が な さ れ ︑ そ の 後 に 勧 進 し て 漢 文 体 に 改 め た も の を 建 長 四 年 ( 一 二 五 二 ) 二 月 二 十 八 日 に 神 尾 山 寺 に て 加 点 ・ 再 治 が 施 さ れ た も の で あ る こ と が わ か る ︒ 更 に ︑ 真 福 寺 本 に お い て は 康 元 二 年 ( 一 二 五 七 ) 二 月 十 八 日 に 高 野 山 禅 定 院 に て 俊 音 房 頼 瑜 ( 当 時 ︑ 豪 信 ) ( 一 二 二 六 ~ 一 三 〇 四 ) ( 以 下 ︑ 頼 瑜 ) に よ っ て 書 写 さ れ た 情 報 が 記 載 さ れ て い る ︒ こ の こ と が 以 前 か ら 注 目 さ れ て い る ︒ ( ) 先 行 研 究 続 い て ︑ 先 行 研 究 に つ い て 少 し く 整 理 を 試 み ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ の 特 徴 に つ い て 考 え て み た い ︒ ま ず ︑ 納 富 常 天 [ 一 九 − 132 −
九 五 B ] に よ り ︑ 高 信 の 著 作 全 体 に つ い て 整 理 が 行 わ れ て お り ︑ 本 書 の 存 在 は 指 摘 さ れ て い る も の の ︑ そ の 所 在 は 不 明 と さ れ る ︒ し か し ︑ 真 福 寺 本 の 奥 書 に つ い て 触 れ ら れ て お り ︑ 頼 瑜 の 評 価 を も と に 高 信 の 密 教 思 想 の 重 要 性 に つ い て 述 べ ら れ て い る( ) ︒ ま た ︑ 花 野 憲 道 [ 一 九 九 三 ] に お い て ︑ 本 文 内 容 に 真 言 宗 と 他 宗 と の 見 解 の 相 違 を 述 べ る 記 述 を 見 出 す こ と が 可 能 で あ り ︑ 高 信 独 自 の 密 教 思 想 が 説 か れ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る( ) ︒10 唯 一 ︑ 高 山 寺 本 ① の 一 部 翻 刻 を 収 載 す る 末 木 文 美 士 [ 二 〇 〇 六 ] に お い て は ︑ 巻 下 の 記 述 を あ げ て ︑ ﹁ 先 師 和 尚 云 ﹂ や ﹁ 和 尚 云 ﹂ と い っ た 明 恵 の 教 説 と 思 わ れ る 用 例 二 例 に 対 し て 考 察 が 加 え ら れ て い る ︒ そ し て ︑ 本 書 が 明 恵 の 思 想 を 継 承 す る 重 要 な 資 料 で あ る と 評 価 し て い る( ) ︒11 そ し て ︑ 髙 橋 秀 城 [ 二 〇 〇 八 ] は ︑ 頼 瑜 の 著 述 活 動 と 夢 と い う 文 学 的 視 点 か ら 考 察 が な さ れ ︑ 真 福 寺 本 の 奥 書 か ら 頼 瑜 と 明 恵 の 関 係 性 に つ い て 論 じ て お り ︑ 頼 瑜 が 明 恵 を 尊 敬 し て い た と す る 証 左 と な る 資 料 と し て 用 い て い る( ) ︒12 更 に 近 年 ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ の 内 容 研 究 に お い て 注 目 さ れ る も の に 野 呂 靖 [ 二 〇 〇 七 A ] [ 二 〇 〇 七 B ] [ 二 〇 一 五( ) ] の 一 連 の 研 13 究 が あ る ︒ こ れ ら は ︑ 本 書 と 頼 瑜 撰 ﹃ 即 身 成 仏 義 顕 得 鈔 ﹄ を 比 較 精 査 し ︑ 本 文 の 一 致 す る 部 分 を 見 出 す こ と が で き る と さ れ て い る ︒ こ れ に よ り 本 書 が 頼 瑜 教 学 に 与 え た 影 響 に つ い て 指 摘 さ れ て い る( ) ︒ ま た ︑ 本 書 巻 下 に お い て 圭 峯 宗 密 ( 七 14 八 〇 ~ 八 四 一 ) や 李 通 玄 ( 六 三 五 ~ 七 三 〇 ) と い っ た 明 恵 の 重 視 し た 華 厳 教 学 の 祖 師 の 教 説 を 依 用 す る も の の ︑ 明 恵 の 華 厳 学 理 解 と は 異 な る 見 解 を 示 す 箇 所 が 見 出 さ れ る こ と が 指 摘 さ れ て い る( ) ︒15 以 上 の よ う に ︑ 各 所 蔵 写 本 の 紹 介 と と も に 各 先 行 研 究 に お い て 種 々 の 立 場 か ら 考 察 が な さ れ て お り ︑ 多 面 的 な 性 質 を 有 し た 著 作 と い う こ と が で き よ う ︒ し か し ︑ 空 海 教 学 や 即 身 成 仏 解 釈 ︑ 真 言 密 教 教 理 に お け る 位 置 付 け な ど 未 だ 内 容 検 討 を 進 め る 必 要 が あ る も の と 考 え ら れ る ︒ − 133 −
三
『
六
大
無
碍
義
抄
﹄
の
内
容
検
討
さ て ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ の 本 文 を 確 認 す る 際 に 今 一 度 ︑ 空 海 撰 ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ 冒 頭 に お け る 二 頌 八 句 の 各 句 本 文 を 確 認 し て お き た い ︒ 【 本 文 】 依 ㆓テ 如 ㆑ク 是 ノ 等 ノ 教 理 証 文 ㆒ニ 成 ㆓ 立 ス 此 ノ 義 ㆒ヲ ︒ 如 ㆑ノ 是 ノ 経 論 ノ 字 義 差 別 云 何 ン ︒ 頌 ニ 曰 六 大 無 碍 ニ シ テ 常 ニ 瑜 伽 ナ リ 〈 体 〉 四 種 曼 荼 各 々 不 ㆑ 離 レ 〈 相 〉 三 密 加 持 ス レ ハ 速 疾 ニ 顕 ル 〈 用 〉 重 重 帝 網 ナ ル ヲ 名 ㆓ク 即 身 ㆒ト 〈 無 碍 〉 法 然 ニ 具 ㆓ 足 シ テ 薩 般 若 ㆒ヲ 心 数 心 王 過 ㆓タ リ 刹 塵 ㆒ニ 各 々 具 ㆓ス 五 智 無 際 智 ㆒ヲ 円 鏡 力 ノ 故 ニ 実 覚 智 ナ リ 〈 成 仏 〉 釈 シ テ 曰 ︒ 此 ノ 二 頌 八 句 以 テ 歎 ㆓ス 即 身 成 仏 ノ 四 字 ㆒ヲ ︒ 【 訓 読 】 是 の 如 き 等 の 教 理 証 文 に 依 り て 此 の 義 を 成 立 す ︒ 是 の 如 く の 経 論 の 字 義 差 別 云 何 ん ︒ 頌 曰 く ︒ 六 大 無 碍 に し て 常 に 瑜 伽 な り ︑ 〈 体 〉 四 種 曼 荼 各 お の 離 れ ず ︑ 〈 相 〉 三 密 加 持 す れ ば 速 疾 に 顕 は る ︑ 〈 用 〉 重 重 帝 網 な る を 即 身 と 名 く ︒ 〈 無 碍 〉 法 然 に 薩 般 若 を 具 足 し て ︑ 心 数 心 王 刹 塵 に 過 ぎ た り ︑ 各 お の 五 智 無 際 智 を 具 す ︑ 円 鏡 力 の 故 に 実 覚 智 な り ︒ 〈 成 仏 〉 釈 し て 曰 く ︑ 此 の 二 頌 八 句 を 以 て 即 身 成 仏 の 四 字 を 歎 ず( ) ︒16 こ の よ う に 真 言 密 教 に お け る 成 仏 論 で あ る 即 身 成 仏 の 構 造 を 六 大 ・ 四 曼 ・ 三 密 と い う 側 面 に 分 け ︑ こ れ ら を 体 ・ 相 ・ 用 の 三 大 と し て 位 置 付 け て い る ︒ そ し て ︑ そ れ ら が 融 通 無 碍 な る 関 係 と な る こ と を 示 し ︑ そ の 状 態 が そ の ま ま 成 仏 し て − 134 −い る 状 態 で あ る と 説 明 す る 四 句 が 続 い て い る ︒ こ れ ら 合 計 八 句 か ら な る 二 頌 に よ り 構 成 さ れ て い る ︒ 『 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ で は ︑ こ れ ら 八 句 を 一 句 ず つ に 区 切 り 解 説 を 施 し て い く わ け で あ る が ︑ 巻 上 に お い て は ︑ ま ず 八 句 各 句 に 対 し ︑ 随 文 的 に 解 釈 を 施 し ︑ 巻 下 に お い て そ れ ら を も と に 諸 師 の 説 を 引 用 す る な ど し て 教 義 的 解 釈 を 展 開 し て い る ︒ 巻 上 で は 主 に 前 半 の 六 大 ・ 四 曼 ・ 三 密 の 句 を 集 中 的 に 注 釈 し ︑ そ れ ら の 融 通 無 碍 な る 関 係 を 示 す 重 々 帝 網 論 に 収 斂 さ せ て い て く と い っ た か た ち で 成 立 し て い る ︒ そ こ で 本 稿 で は 紙 幅 の 都 合 上 ︑ 本 文 に 説 か れ る も の の う ち 顕 密 観 や 明 恵 説 の 受 容 ︑ 即 身 成 仏 を 具 体 的 に 体 現 す る 可 能 性 な ど と い っ た 問 題 に つ い て 特 徴 的 記 述 を と り あ げ て み た い ︒ ( ) 顕 密 観 に つ い て ま ず ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に お け る 顕 密 観 を 考 え る に あ た り ︑ 高 信 は 本 文 の 中 で ︑ 即 身 成 仏 を 標 榜 す る 真 言 密 教 の 立 場 を ﹁ 自 宗 ﹂ や ﹁ 我 宗 ﹂ と 称 し て お り ︑ 華 厳 等 の 一 乗 教 を ﹁ 顕 家 ﹂ と 称 し て い る ︒ ま た 同 時 に 法 相 宗 や 円 教 と い っ た 顕 教 の 立 場 を そ れ ぞ れ 示 し て い る ︒ た と え ば ︑ 以 下 の よ う に ﹁ 心 数 心 王 過 刹 塵 ﹂ の 句 に つ い て の 箇 所 に 法 相 や 華 厳 と 真 言 密 教 の 立 場 を そ れ ぞ れ 対 峙 さ せ て い る ︒ 【 本 文 】 法 相 宗 ニ ハ 立 ツ 八 識 心 王 ︑ 五 十 一 ノ 心 所 ㆒ヲ 円 教 ニ 立 ル コ ト 心 ㆒ヲ 等 ナ リ 縁 起 法 界 ノ 数 量 ㆒ニ 以 テ 縁 起 ノ 法 界 ㆒ヲ 為 ス ル カ 所 縁 ㆒ト 故 ニ 能 縁 ト 心 ノ 之 数 量 モ 随 テ 無 量 ナ リ 也 ︒ 〈 云 々 〉 真 言 ノ 中 ニ 又 立 無 量 ノ 心 ㆒ヲ 即 テ 心 数 心 王 過 刹 塵 等 ︒ 〈 云 々 〉 雖 ㆘ト モ 有 ㆗ト 如 ノ 此 ㆒ノ 不 同 ㆖ 於 テ モ 何 ノ 教 ㆒ニ 以 テ 八 識 ㆒ヲ 通 シ テ 名 ル ハ 心 王 ㆒ト 常 途 ノ 性 相 ナ リ 也 ︒ 而 ヲ 三 種 ノ 即 身 義 ニ 毘 盧 遮 那 心 王 余 尊 心 数 ト ︒ 〈 云 云 〉 別 本 即 身 義 ニ ハ ︑ 法 界 体( ) 性 智 ヲ 為 ナ リ 心 王 ㆒ト 余 ノ 四 智 ヲ 云 フ 心 数 ト ︒ 此 ノ 心 王 心 数 ノ 建 立 ハ 即 テ 非 ス 常 途 ノ 説 相 ㆒ニ 17 既 ニ 転 テ 八 識 ㆒ヲ 得 ウ 四 智 ㆒ヲ 五 智 皆 ナ 是 応 ヘ テ 心 王 ㆒ナ ル 故 十 住 心 論 云 ク ︑ 五 仏 則 心 王 余 尊 則 心 数 〈 云 々 〉 【 訓 読 】 法 相 宗 に は 八 識 心 王 ︑ 五 十 一 の 心 所 を 立 つ ︒ 円 教 に 心 を 立 つ る こ と ︑ 縁 起 法 界 の 数 量 に 等 し き な り ︒ 縁 起 の 法 界 − 135 −
を 以 て 所 縁 と 為 す る が 故 に 能 縁 と 心 の 数 量 随 ひ て 無 量 な り と 〈 云 々 〉 ︒ 真 言 の 中 に 又 た 無 量 の 心 を 立 て 即 し て ﹁ 心 数 心 王 過 刹 塵 ﹂ 等 と 〈 云 々 〉 ︒ 此 の 如 く の 不 同 有 り と 雖 も 何 の 教 に 於 て も 八 識 を 以 て 通 じ て 心 王 と 名 く る は 常 途 の 説 相 な り ︒ 而 も 三 種 の ﹃ 即 身 義 ﹄ に ﹁ 毘 盧 遮 那 を 心 王 ︑ 余 尊 を 心 数( ) ﹂ と 〈 云 々 〉 ︒ 別 本 ﹃ 即 身 義 ﹄ に は ︑ ﹁ 法 界 体 性 智 を 18 心 王 と 為 す な り ︑ 余 尊 の 四 智 を 心 数( ) ﹂ と 云 ふ ︒ 此 の 心 王 心 数 の 建 立 は 即 し て 常 途 の 説 相 に あ ら ず ︒ 既 に 八 識 を 転 じ 19 て 四 智 を 得 ︑ 五 智 皆 な 是 れ 応 に 心 王 な る べ し ︒ 故 に ﹃ 十 住 心 論 ﹄ に 云 く ︑ ﹁ 五 仏 則 ち 心 王 ︑ 余 尊 則 ち 心 数( ) ﹂ と 〈 云 20 々( ) 〉 ︒ 21 こ の よ う に ︑ 法 相 教 学 に お い て は 眼 識 よ り 阿 頼 耶 識 ま で の 八 識 を 心 王 と し ︑ 心 数 を 五 十 一 種 の 心 所 法 に 位 置 付 け る の に 対 し ︑ 法 界 縁 起 説 に 基 づ く 華 厳 教 学 で は ︑ 能 縁 と 所 縁 の 関 係 に お い て 一 心 に 法 界 を 含 み ︑ 法 界 が 無 数 に 出 現 す る 一 即 多 多 即 一 の 世 界 観 に 基 づ く た め ︑ 心 王 な ら び 心 数 は 同 時 に 無 量 無 数 と な る と 考 え ら れ て い る ︒ こ れ ら 顕 教 の 説 に 対 し ︑ 真 言 密 教 に お い て は ﹁ 心 王 心 数 過 刹 塵 ﹂ を い か に 解 釈 す る か と い っ た 問 題 を 扱 っ て い る ︒ 確 か に 偈 頌 に あ る よ う に 真 言 密 教 に お い て も 華 厳 教 学 の よ う に 無 量 無 数 の 心 王 心 数 を 想 定 し て い る が ︑ こ こ で は 心 王 を 具 体 的 に 中 尊 大 日 如 来 と 捉 え ︑ 心 数 を 他 の 曼 荼 羅 諸 尊 と 位 置 付 け る 曼 荼 羅 と い う 独 自 の 世 界 観 を 保 有 し て い る と す る ︒ 法 相 に お い て は 通 常 ︑ 八 識 を 転 識 得 智 し て 四 智 を 得 る と 考 え ら れ る が ︑ 真 言 密 教 で は さ ら に そ れ ら を 包 括 す る 法 界 体 性 智 を 設 定 す る こ と で 顕 教 を 超 克 し た 五 智 の 完 成 と い う 立 場 を 提 示 し て い る ︒ 続 い て ︑ ﹁ 円 鏡 力 故 実 覚 智 ﹂ の 句 に つ い て 解 釈 す る 中 で ︑ 真 言 密 教 に お け る 即 身 成 仏 と 顕 教 に お け る 初 発 心 時 便 成 正 覚 と の 差 異 に つ い て 言 及 し て い る ︒ 【 本 文 】 問 爾 ラ 者 ハ 如 ク 実 ㆒ノ 知 ル 阿 字 不 生 ノ 義 ㆒ヲ 為 セ ハ 究 竟 即 身 成 仏 ㆒ト ︒ 何 ソ 云 五フ 浄 心 ノ 初 字 五 字 未 タ 具 ㆒セ 不 ㆕ス ト 足 ㆔ラ ︒ 為 ㆓ニ 顕 得 ㆒ト 乎 ヤ ︒ 答 ︒ 真 言 一 宗 以 テ 即 身 成 仏 ㆒ヲ 為 ス 規 模 ㆒ト ︒ 顕 得 ノ 義 ︑ 若 シ 限 ラ 最 初 浄 心 ㆒ニ 者 ハ 顕 家 ノ 初 発 心 時 便 成 正 覚 ノ 義 ト 有 ラ ム 何 ノ − 136 −
差 異 カ 乎 ヤ ︒ 故 顕 得 唯 果 位 ハ 是 レ 古 来 ノ 義 ナ リ ︒ 我 レ 足 レ リ 信 受 ㆒ス ル ニ 也 ︒ 問( ) 非 ス 遮 ス ル ニ 汝 カ 之 信 受 ㆒ヲ 破 シ 文 ㆒ヲ 得 エ ム 理 ㆒ヲ 22 誰 カ 不 ラ ム 信 セ 之 ︒ 【 訓 読 】 問 ふ ︒ 爾 ば 実 の 如 く 阿 字 不 生 の 義 を 知 る を ば 究 竟 即 身 成 仏 と 為 せ ば ︑ 何 ぞ 浄 心 の 初 字 に 五 字 未 だ 具 せ ざ る を 顕 得 と 為 す に 足 ら ず と 云 ふ や ︒ 答 ふ ︒ 真 言 一 宗 は 即 身 成 仏 を 以 て 規 模 と 為 す ︒ 顕 得 の 義 ︑ 若 し 最 初 浄 心 に 限 ら ば 顕 家 の 初 発 心 時 便 成 正 覚 の 義 と 何 ぞ 差 異 か 有 ら む や ︒ 故 に 顕 得 唯 だ 果 位 は 是 れ 古 来 の 義 な り ︒ 我 れ 信 受 す る に 足 れ り ︒ 問 ひ は 汝 が 之 の 信 受 を 遮 す に あ ら ず ︒ 文 を 破 し 理 を 得 む は 誰 か 之 を 信 ぜ ざ ら む( ) ︒23 こ こ で は ︑ も し 阿 字 本 不 生 の 義 を 如 実 に 知 る こ と が 究 極 的 な 即 身 成 仏 と す る な ら ば ︑ 阿 字 に 長 母 音 等 を 順 次 加 え ︑ 発 心 ・ 修 行 ・ 菩 提 ・ 涅 槃 ・ 方 便 究 竟 に 展 開 さ せ る 五 転 の 阿 字 に お け る 最 初 の 発 心 で あ る 阿 字 に 顕 得 成 仏 が 備 わ っ て い な い の か と い っ た 議 論 で あ る ︒ 顕 得 と は 伝 空 海 ﹃ 異 本 即 身 成 仏 義 ﹄ 所 説 の 理 具 ・ 加 持 ・ 顕 得 の 三 種 即 身 成 仏( ) に お け る 顕 得 成 24 仏 を 指 し て い る ︒ こ れ に 対 し ︑ こ こ で い う 顕 得 成 仏 は あ く ま で も 果 位 の 即 身 成 仏 を 意 味 す る こ と は 古 来 よ り 定 め ら れ て い る こ と で あ り ︑ 五 転 の 阿 字 に お け る 最 初 の 阿 字 に 顕 得 成 仏 を 認 め て し ま え ば ︑ 顕 教 の 初 発 心 時 便 成 正 覚 と の 差 異 が な く な っ て し ま う た め に 区 別 す べ き で あ る と 考 え て い る こ と が わ か る ︒ 以 上 の よ う に ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 に お い て は ︑ 法 相 や 華 厳 な ど の 顕 教 の 立 場 を 受 け な が ら も 従 来 の 真 言 密 教 の 立 場 を 明 確 に 示 し て い る こ と が わ か る ︒ ( ) 明 恵 説 の 受 容 に つ い て 次 に ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に お い て 高 信 は ︑ 師 で あ る 明 恵 の 教 説 を い か に 受 容 し て い た か ︑ そ の 態 度 に つ い て み て み た い ︒ 先 に 末 木 文 美 士 [ 二 〇 〇 六 ] や 野 呂 靖 [ 二 〇 〇 七 ] と い っ た 諸 氏 に よ り 明 恵 説 の 継 承 と い う 立 場 と 直 ち に 明 恵 説 と の 一 致 − 137 −
を み な い 立 場 が あ る と さ れ る が ︑ い く つ か の 記 述 を 検 討 し て み た い ︒ 明 恵 の 教 説 と の 対 比 を 試 み る 前 に ま ず ︑ ﹁ 四 種 曼 荼 各 々 不 離 ﹂ の 句 に つ い て の 箇 所 に お い て ︑ 四 種 曼 荼 羅 と 空 解 釈 と の 関 係 を 示 す 箇 所 を み て み た い ︒ 【 本 文 】 問 同 虚 空 ノ 義 雖 ト モ 聞 ト 先 ノ 説 ㆒ヲ 愚 昧 尚 ナ ヲ 難 シ 解 サ ト リ 請 フ 重 テ 示 セ 之 ヲ ︒ 答 且 ク 四 種 曼 荼( ) 羅 ト 与 空 ノ 義 ㆒ト 相 望 シ テ 一 -往 可 シ 成 ス 其 義 ㆒ヲ 一 ニ ハ 四 種 曼 荼 羅 ト 与 空 ㆒ト 相 違 ノ 義 ︑ 謂 ク 空 ノ 中 ニ ハ 不 ス 可 ラ 25 有 ル 四 曼 ノ 義 ㆒ 四 曼 前 ニ ハ 不 ス 可 ラ 立 ス 空 ノ 義 ㆒ 既 ニ 四 曼 ト 与 空 ㆒ト 相 違 ス ル カ 故 互 ニ 有 レ ハ 互 ニ 亡 ナ リ 也 ︒ 二 ニ ハ 不 ル 相 ア ヒ 碍 ㆒サ ヘ 義 ︑ 四 曼 悉 ク 不 生 法 ヲ 為 ス ル カ 体 ㆒ト 故 ニ 不 ス 碍 ヘ 空 ㆒ヲ 空 亦 真 空 ナ ル カ 故 ニ 不 ス 妨 タ ケ 有 コ ト ヲ 四 曼 ㆒ 三 ニ ハ 四 曼 ト 与 空 ㆒ト 互 ニ 相 作 ノ 義 ︑ 色 即 空 ナ レ ハ 還 テ 得 有 ㆒ヲ ︒ 空 又 即 テ 色 ナ レ ハ 方 ニ 是 レ 可 シ 真 空 ㆒ナ ル ︒ 然 レ ハ 則 チ 四 曼 ハ 是 レ 真 空 カ 之 四 曼 ︒ 真 空 ハ 是 四 曼 之 真 空 ナ リ 也 ︒ 無 障 無 碍 ニ シ テ 一 一 ノ 四 曼 ︑ 同 ス 真 空 ㆒ニ 故 ニ 量 等 シ キ 虚 空 ㆒ニ 也 ︒ 【 訓 読 】 問 ふ ︒ 同 虚 空 の 義 ︑ 先 の 説 を 聞 く と 雖 も 愚 昧 尚 ほ 解さ と り 難 し ︒ 重 ね て 請 ふ ︑ 之 を 示 せ ︒ 答 ふ ︒ 且 く 四 種 曼 荼 羅 と 空 の 義 と 相 望 し て 一 往 に 其 の 義 成 ず べ し ︒ 一 に は 四 種 曼 荼 羅 と 空 と 相 違 の 義 ︑ 謂 く 空 の 中 に は 四 曼 の 義 有 る べ か ら ず ︒ 四 曼 の 前 に は 空 の 義 を 立 つ べ か ら ず ︒ 既 に 四 曼 と 空 と 相 違 す る が 故 に 互 ひ に 有 れ ば 互 ひ に 亡 き な り ︒ 二 に は 相 ひ 碍 は ざ る 義 ︑ 四 曼 悉 く 不 生 法 を 体 と 為 す る が 故 に 空 を 碍 へ ず 空 も 亦 た 真 空 な る が 故 に 四 曼 有 る こ と を 妨 け ず ︒ 三 に は 四 曼 と 空 と 互 ひ に 相 作 の 義 ︑ 色 即 空 な れ ば 還 て 有 を 得 ︒ 空 又 た 即 し て 色 な れ ば 方 に 是 れ 真 空 な る べ し ︒ 然 れ ば 則 ち 四 曼 は 是 れ 真 空 の 四 曼 ︒ 真 空 は 是 れ 四 曼 の 真 空 な り ︒ 無 障 無 碍 に し て 一 々 の 四 曼 ︑ 真 空 に 同 ず が 故 に 量 虚 空 に 等 し き な り( ) ︒26 こ こ は ︑ 既 に 注 釈 を 施 し た ﹁ 六 大 無 碍 常 瑜 伽 ﹂ の 句 に お い て ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ に 引 用 さ れ る ﹃ 大 日 経 ﹄ ﹁ 阿 闍 梨 真 実 智 品 ﹂ 第 十 六 所 説 の ﹁ 同 虚 空( ) ﹂ の 解 釈 と い か に 対 応 す る の か と い う 問 題 に つ い て 論 じ ら れ て い る ︒ こ れ は ︑ 空 性 の 境 地 に 27 − 138 −
至 る か ら 六 大 が 融 通 無 碍 の 関 係 が 成 立 す る の に 対 し ︑ い か に 曼 荼 羅 と い う 実 相 が 存 在 す る の か と い う 設 問 で あ ろ う ︒ こ こ に ︑ 曼 荼 羅 を 捉 え る の に 三 種 の 見 方 が あ る と い う ︒ そ れ は ︑ ① 相 違 ︑ ② 相 碍 ︑ ③ 相 作 の 三 種 で あ る ︒ こ れ ら を 言 い 換 え る な ら ば ① 相 反 ︑ ② 融 通 ︑ ③ 共 存 と い う 関 係 を 示 し て い る と い え る ︒ 最 終 的 に は 色 即 是 空 の 真 空 の 境 地 に 至 れ ば 無 障 無 碍 に し て 共 存 可 能 と な る た め ︑ ﹁ 同 虚 空 ﹂ と の 記 述 に 矛 盾 を き た す こ と は な い と 考 え ら れ て い る の で あ る ︒ さ て ︑ 次 に ﹁ 法 然 具 足 薩 般 若 ﹂ の 句 を 解 釈 す る 箇 所 に お い て ︑ 先 の 顕 教 と の 対 比 や 空 解 釈 に つ い て の 言 及 を み る こ と が で き る ︒ 【 本 文 】 汝 設 ヒ 欲 ㆔シ テ 賞 ㆓セ ム 我 宗 ノ 六 大 四 曼 ︒ 三 密 具 徳 ︑ 法 然 本 有 ノ 義 ㆒ヲ 住( ) シ テ 悉 離 於 因 果 ︑ 遠 離 於 因 縁 等 ノ 文 言 ︒ ㆒ 不 ス 委 セ 其 ノ 28 深 旨 ㆒ヲ 随 テ 己( ) カ 情 執 ノ 之 分 別 ㆒ニ 撥 シ テ 因 果 之 理 ㆒ヲ 成 セ ハ 法 爾 天 然 ノ 之 義 ㆒ヲ 恐 ク ハ 反 ヘ テ 欲 ㆔ス ル カ 向 ㆓ナ ン ト 外 道 自 然 之 邪 計 ㆒ニ 乎 29 ヤ ︒ 答 又 離 ナ リ 四 謗 ㆒ヲ 立 ル 四 義 ㆒ヲ 等 者 ハ 是 レ 顕 宗 ノ 之 談 也 ︒ 何 ソ 謂 ハ 依 ㆓ 用 セ ム ト 之 ㆒ヲ ︒ 請 コ フ 離 ㆘ナ リ 如 ノ 上 ㆒ノ 之 義 ㆖ヲ 揀 ㆓㆐ 異 シ テ 于 外 道 ノ 自 性 自 然 等 ㆒ニ 成 立 セ ヨ 真 言 一 宗( ) ノ 法 然 本 有 ノ 義 ㆒ヲ 若 与 法 印( ) ㆒ト 合 セ ハ 誰 カ 又 タ 遮 サ ム 之 ㆒ヲ ︒ 何 ニ 況 ヤ 以 テ 三 諦 義 ︑ 四 謗 30 31 章 等 ㆒ヲ 盛 ニ 成 立 ル ヲ ヤ 秘 宗 之 義 相 ㆒ヲ 不 ラ ス 遑 マ 毛 挙 ㆒ニ 而 已 ノ ミ 【 訓 読 】 汝 設 ひ 我 宗 の 六 大 四 曼 ︑ 三 密 具 徳 ︑ 法 然 本 有 の 義 を 賞 せ む と 欲 し て ﹁ 悉 離 於 因 果 ﹂ ﹁ 遠 離 於 因 縁 ﹂ 等 の 文 言 に 住 し て ︑ 其 の 深 旨 を 委く わ く せ ず ︒ 己お の が 情 執 の 分 別 に 随 ひ て ︑ 因 果 の 理 を 撥 し て 法 爾 天 然 の 義 を 成 ぜ ば ︑ 恐 く は 反か え り て 外 道 自 然 の 邪 計 に 向 は む と 欲 す る や ︒ 答 ふ ︒ 又 た 四 謗 を 離 る な り ︒ 四 義 を 立 つ る 等 は ︑ 是 れ 顕 宗 の 談 な り ︒ 何 ぞ 之 れ を 依 用 せ む と 謂 ふ は ︑ 請 ふ ︑ 上 の 如 く の 義 を 離 る な り ︒ 外 道 の 自 性 自 然 等 に 揀け ん 異い し て ︑ 真 言 一 宗 の 法 然 本 有 の 義 を 成 立 せ よ ︒ 若 し 法 印 と 合 せ ば 誰 が 又 た 之 れ を 遮 さ む ︒ 何 に 況 や 三 諦 義 ︑ 四 謗 章 等 を 以 て 盛 む に 秘 宗 の 義 相 を 成 立 す る を や ︒ 毛 挙 に 遑 ま あ ら ず ︑ 而 已( ) ︒32 − 139 −
こ の よ う に ︑ 即 身 成 仏 し て い る 状 態 に つ い て ︑ 衆 生 が 本 来 的 に 仏 と し て の 智 慧 を 具 有 し て い る ゆ え に 可 能 で あ る と す る 法 爾 自 然 の 立 場 を 説 明 す る 箇 所 に お い て ︑ 高 信 は 真 言 密 教 の 立 場 を 明 確 に ﹁ 我 宗 ﹂ ﹁ 秘 宗 ﹂ 等 と 称 し ︑ 顕 教 の 立 場 で あ る 顕 家 と 対 峙 さ せ て い る こ と が わ か る ︒ そ し て ︑ 顕 教 由 来 の 教 義 で あ る 空 ・ 仮 ・ 中 の 三 諦 義 や 空 性 理 解 に お け る 四 種 の 障 り で あ る 四 謗 な ど を 積 極 的 に 用 い て 即 身 成 仏 の 立 場 で あ る 法 爾 自 然 と の 差 異 を 示 し て い る ︒ こ こ で 高 信 の 主 張 に つ い て 考 え る に あ た り ︑ 明 恵 の 著 作 で 注 目 す べ き 記 述 を 見 出 す こ と が で き る ︒ 明 恵 は そ の 密 教 観 の 特 徴 と し て 光 明 真 言 信 仰 の 重 用 を あ げ る こ と が で き ︑ 後 世 の 真 言 教 学 に 多 大 な 影 響 を 及 ぼ し た が ︑ そ の 萌 芽 的 著 作 と し て 位 置 付 け ら れ る 著 作 に ﹃ 華 厳 仏 光 三 昧 観 秘 宝 蔵 ﹄ が あ る ︒ そ の 中 に 以 下 の よ う な 記 述 が あ る ︒ 【 本 文 】 是 故 諸 法 離 ㆓ 増 益 有 ︒ ㆒ 離 ㆓ 損 減 無 ︒ ㆒ 離 ㆓ 有 無 相 違 ︒ ㆒ 離 ㆓ 非 二 戯 論 ︒ ㆒ 是 故 本 不 生 之 言 ︒ 空 ㆓ 増 益 有 ㆒ 離 ㆓ 余 三 謗 ㆒ 也 ︒ 離 ㆓ 此 四 謗 ㆒ 四 義 皆 立 ︒ 是 故 亜 字 因 義 者 ︒ 謂 心 性 離 ㆓ 此 四 謗 ︒ ㆒ 即 一 切 如 来 菩 提 心 ︒ 又 是 不 共 真 如 妙 体 也 ︒ 是 故 有 ㆓ 自 性 清 淨 心 ㆒ 〈 有 義 立 也 〉 此 心 性 本 自 不 生 〈 無 義 立 也 〉 性 相 互 立 〈 亦 有 亦 無 義 立 也 〉 相 望 非 ㆓ 有 無 ㆒ 〈 非 有 非 無 義 立 也 〉 【 訓 読 】 是 の 故 に 諸 法 の 増 益 の 有 を 離 れ ︑ 損 滅 の 無 を 離 る ︒ 有 無 の 相 違 を 離 れ て ︑ 非 二 の 戯 論 を 離 る ︒ 是 の 故 に 本 不 生 の 言 ︑ 増 益 の 有 を 空 じ て 余 の 三 謗 を 離 る な り ︒ 此 の 四 謗 を 離 れ て 四 義 皆 な 立 つ ︒ 是 の 故 に 娃 字 の 因 義 と は ︑ 謂 く 心 性 此 の 四 謗 を 離 れ て ︑ 即 ち 一 切 如 来 の 菩 提 心 と す ︒ 又 た 是 れ 不 共 の 真 如 妙 体 な り ︒ 是 の 故 に 自 性 清 浄 心 有 り 〈 有 義 を 立 つ な り 〉 此 の 心 性 は 本 自 り 不 生 な り 〈 無 義 を 立 つ な り 〉 性 相 互 ひ に 立 つ 〈 亦 有 亦 無 義 を 立 つ な り 〉 相 望 し て 有 無 に あ ら ず 〈 非 有 非 無 義 を 立 つ な り( ) 〉33 こ こ に は ︑ 自 性 清 浄 心 で あ る 一 切 如 来 の 菩 提 心 が 本 不 生 で あ る と い う こ と を 説 明 す る に あ た り ︑ ① 増 益 の 有 ︑ ② 損 減 の 無 ︑ ③ 相 違 の 有 無 ︑ ④ 非 二 の 戯 論 と い っ た 四 謗 を 離 れ て ︑ ① 有 義 ︑ ② 無 義 ︑ ③ 亦 有 亦 無 義 ︑ ④ 非 有 非 無 義 と い う 四 句 分 別 を 超 え て い る こ と が 本 不 生 で あ る と の 説 明 を 加 え て い る ︒ こ れ ら の 明 恵 の 解 釈 方 法 を 高 信 は 受 容 し ︑ 自 身 の 真 言 密 − 140 −
教 理 解 に 援 用 し て い る の で は な い か と い う こ と が 考 え ら れ る ︒ し か し ︑ こ こ で 注 意 し た い の は ︑ 高 信 は 四 謗 を 離 れ て 四 義 を 立 て る 立 場 を 顕 宗 の 談 と 断 じ て い る の で あ る ︒ 自 身 の 真 言 密 教 の 立 場 は あ く ま で も 法 然 本 有 の 義 で あ り ︑ 本 不 生 に 四 義 を 立 て る 解 釈 と は 相 違 す る 立 場 を 示 し て い る の で は な い か と 考 え ら れ る の で あ る ︒ こ の よ う に 明 恵 の 真 言 密 教 理 解 の 立 場 を 受 け つ つ も 自 身 と の 相 違 点 を 提 示 す る か た ち と な っ て い る ︒ ま た ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に は ︑ 明 恵 の 教 説 を ﹁ 已 上 師 口 也 ﹂ と し て 以 下 の よ う に 示 す 箇 所 が あ る ︒ こ の 記 述 は ︑ 頼 瑜 撰 ﹃ 即 身 成 仏 義 顕 得 鈔 ﹄ に 同 文 が 認 め ら れ ︑ 冒 頭 に ﹁ 栂 尾 上 人 曰 ﹂ と し て 引 用 さ れ て い る こ と か ら ︑ 早 く か ら 明 恵 の 教 説 と し て 流 布 し て い た こ と が わ か る( ) ︒34 【 本 文 】 次 ニ 阿 字 本 不 生 ノ 性 ヲ 為 ス 菩 提 心 ノ 大 地 ㆒ト 大 地 ハ 必 ス 有 リ 湿 性 ㆒ 従 リ 此 本 不 生 ノ 大 地 ㆒ 生 ス 大 悲 湿 性 ノ 水 ㆒ヲ 従 リ 此 大 悲 湿 潤 ノ 阿 字 門 万 徳 由 生 ス ︒ 其 ノ 性 本 自 ㆒ 清 浄 ニ シ テ 離 タ リ 諸 ノ 塵 染 ㆒ヲ 是 レ 樺 字 ノ 智 火 ナ リ 也 ︒ 以 テ 上 ノ 本 不 生 相 応 ノ 之 悲 智 ヲ 所 ノ 成 ㆒ス ル 諸 行 ハ ︑ 大 般 涅 槃 ノ 因 業 ナ リ 也 ︒ 是 レ 即 チ 為 ス 騎 字 門 風 大 ノ 義 ト ︒ 此 業 悉 帰 ス 大 空 性 ㆒ニ 故 ニ 一 切 諸 法 ︑ 有 無 局 碍 ︑ 性 相 清 浄 ニ シ テ ︑ 万 性 皆 備 ハ レ リ ︒ 故 ニ 悲 智 万 行 ︑ 同 シ テ 於 法 界 ㆒ニ 平 等 平 等 ナ ル ヲ 為 ス 亥 字 等 空 ノ 義 ㆒ト ︒ 〈 已 上 師( ) 口 也 / 更 35 問 〉 【 訓 読 】 次 に 阿 字 本 不 生 の 性 を 菩 提 心 の 大 地 と 為 す ︒ 大 地 は 必 ず 湿 性 有 り ︒ 此 の 本 不 生 の 大 地 従 り 大 悲 湿 性 の 水 を 生 ず ︒ 此 の 大 悲 湿 潤 の 阿 字 門 従 り 万 徳 由 て 生 ず ︒ 其 の 性 本 自 り 清 浄 に し て 諸 の 塵 染 を 離 た り ︒ 是 れ 樺 字 の 智 火 な り ︒ 上 の 本 不 生 相 応 の 悲 智 を 成 ず る 所 の 以 て 諸 行 は ︑ 大 般 涅 槃 の 因 業 な り ︒ 是 れ 即 ち 騎 字 門 風 大 の 義 と 為 す ︒ 此 の 業 悉 く 大 空 性 に 帰 す ︒ 故 に 一 切 諸 法 は 有 無 局 碍 ︑ 性 相 清 浄 に し て ︑ 万 性 皆 な 備 は れ り ︒ 故 に 悲 智 万 行 ︑ 法 界 に 同 じ て 平 等 平 等 な る を 亥 字 等 空 の 義 と 為 す ︒ 〈 已 上 師 口 な り ︑ 更 に 問 へ( ) 〉 ︒ 36 こ の 文 は ︑ 地 水 火 風 空 の 五 大 の 種 子 で あ る 阿 阿 樺 騎 亥 の 字 義 の 関 係 性 を 示 す 箇 所 で あ る が ︑ こ れ ら が 融 通 無 碍 で あ る − 141 −
こ と に よ り ︑ 識 大 を 加 え た 六 大 が 円 融 と 考 え る こ と が で き る と さ れ る ︒ こ こ に 実 際 の 大 地 が 水 分 を 含 ん で い る こ と に よ っ て 大 悲 と し て の 水 大 が 出 生 す る と い っ た 現 実 的 な 譬 喩 を 用 い て 教 義 解 釈 を 進 め る 姿 勢 は 田 中 久 夫 [ 一 九 八 二 A( ) ] に よ る 37 と 明 恵 の 講 説 に お い て し ば し ば 見 ら れ る こ と で あ る ︒ 末 木 文 美 士 [ 二 〇 〇 六 ] に お い て も 指 摘 さ れ て い る が ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 下 に お い て も 以 下 の よ う な 譬 喩 表 現 が 見 受 け ら れ る ︒ 【 本 文 】 先 師 和 尚 ノ 云 ク ︑ 凡 夫 ノ 之 恋 ト 者 イ フ ハ 見 所 断 ノ 分 別 ノ 我 見 ヲ 為 ス 体 ト ︒ 又 云 ク 無 明 癡 ハ 愛 ヲ 為 ト 体 ト ︒ 無 明 違 シ テ 平 等 ノ 理 ㆒ニ 自 他 彼 -此 強 ク 隔 ツ ︒ 愛 ト 者 イ フ ハ 極 メ テ 而 湿 シ メ レ ル 性 ナ リ 也 ︒ 故 ニ 恋 ト 云 フ 事 コ ト モ 出 テ 来 タ ル 也 ナ リ ︒ 【 訓 読 】 先 師 和 尚 の 云 く ︑ 凡 夫 の 恋 と い ふ は 見 所 断 の 分 別 を 体 と 為 す ︒ 又 た 云 く ︑ 無 明 の 癡 は 愛 を 体 と 為 す ︒ 無 明 平 等 の 理 に 違 し て 自 他 彼 此 強 く 隔 つ ︒ 愛 と い ふ は 極 め て 而 も 湿 れ る 性 な り ︒ 故 に 恋 と 云 ふ 事 も 出 て 来 た る な り( ) ︒38 こ の よ う に 生 々 し く 現 実 世 界 の 恋 愛 を 用 い て 凡 夫 の 無 明 に つ い て 講 説 す る 姿 を 看 て 取 る こ と が で き る の で あ る ︒ ま た ︑ 田 中 久 夫 [ 一 九 八 二 B( ) ] の 指 摘 に よ れ ば ︑ 大 悲 と 大 智 を 万 行 し ︑ 空 性 に 帰 入 し ︑ 大 般 涅 槃 を 示 す と い う 構 造 も 他 39 の 明 恵 の 講 説 聞 書 類 か ら も 見 出 す こ と が で き る の で あ る ︒ 【 本 文 】( 原 文 仮 名 交 じ り 文 ) 智 ナ キ 悲 ハ ︑ 妻 子 イ ト ヲ シ キ 思 フ ホ ド ナ リ ︒ 是 ハ 我 執 ノ 前 ノ 悲 ナ リ ︒ 大 智 人 法 二 執 ヲ 空 ジ テ ︑ 自 他 彼 此 ノ 分 別 無 ク シ テ ︑ 同 体 ノ 悲 ヲ 起 ス 時 キ ︑ 一 切 衆 生 ヲ 平 等 ニ イ ト ヲ シ キ 思 ヘ バ ︑ 悲 心 深 キ 也 ︒ 二 乗 ハ ワ ヅ カ ニ 人 空 ヲ 証 シ テ ︑ 法 空 ヲ 不 ㆑カ 知 故 ニ ︑ 生 死 涅 槃 ヲ 一 ト 不 ㆑ス 知 ラ ︑ 苦 楽 ナ ヲ 差 別 ス ル ガ 故 ニ ︑ 生 死 ノ 苦 ヲ 厭 ヒ 涅 槃 ノ 楽 ヲ 求 メ テ ︑ イ ソ ギ テ 独 リ 出 離 ス ル ナ リ ︒ 菩 薩 ハ 法 空 ノ 大 智 一 理 ヲ 照 シ テ ︑ 平 等 ノ 慈 悲 ヲ 仗 コ シ テ ︑ 衆 生 ヲ 愍ア ハ ムレ 故 ニ ︑ 果 位 ニ 至 リ テ 悲 智 ノ 徳 開 ケ テ ︑ 報 化 二 身 ヲ 示 シ テ ︑ 衆 生 ヲ 利 益 ス 云 云( ) ︒40 こ の よ う に ︑ 大 悲 と 大 智 を 万 行 し て 人 法 二 空 の 境 地 に 至 り 涅 槃 に 向 か う こ と を 強 調 し て い る ︒ し か し ︑ こ こ で は あ く − 142 −
ま で 大 乗 菩 薩 の 問 題 と し て 扱 っ て い る こ と を 注 意 さ れ た い ︒ 以 上 の よ う に ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に お い て は ︑ 明 恵 の 教 説 と し て 四 謗 や 四 句 分 別 ︑ 現 実 に 即 し た 譬 喩 ︑ 大 悲 大 智 や 空 性 の 強 調 と い っ た 点 に お い て 積 極 的 に 明 恵 の 教 説 を 受 容 し て い る こ と が わ か る ︒ し か し ︑ こ れ ら に つ い て の 態 度 は 慎 重 で ︑ 真 言 密 教 と し て の 立 場 を 精 査 し た 上 で 評 価 を 下 し て い る よ う に 見 受 け ら れ る ︒ ( ) 即 身 成 仏 の 可 能 性 『 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ は ︑ 実 際 に 行 者 が 即 身 成 仏 を 成 し 遂 げ た 状 態 は い か な る も の で あ る の か と い っ た 現 実 的 な 問 題 に つ い て 議 論 さ れ て い る 箇 所 を い く つ か あ げ る こ と が で き る ︒ た と え ば ︑ ﹁ 三 密 加 持 速 疾 顕 ﹂ の 句 に つ い て 解 釈 す る 部 分 を み る と 以 下 の よ う に あ る ︒ 【 本 文 】 然 ハ 則 チ 行 者 三 密 相 応 シ テ 観 -察 ス ル ニ 此 義 ㆒ヲ 成 -就 ス 本 尊 ㆒ヲ ︒ 於 己( ) 身 ニ 速 疾 ノ 之 教 益 ︑ 以 テ 如 シ 此 ㆒ノ 不 ル 可 ラ 論 ス 成 不 成 ㆒ヲ 41 也 ︒ 若 シ 勤 修 セ ム 三 平 等 観 ㆒ヲ 其 ノ 益 不 ス ト 虚 ㆒カ ラ 云 者 イ フ ハ ︑ 其 ノ 益 ト 者 イ フ ハ ︑ 即 チ 是 レ 成 仏 ノ 之 大 益 ナ リ 也 ︒ 若 シ 雖 ト モ 一 分 ㆒ト 許 サ ハ 有 リ 得 ル 成 仏 ノ 益 ㆒ヲ 之 義 以 テ 行 者 ㆒ヲ 為 即 身 成 仏 ノ 之 人 証 ㆒ト 故 ニ 於 テ 今 ノ 即 身 義 ノ 前 後 出 テ 速 疾 ノ 教 益 ㆒ヲ 更 ニ 不 ル 出 人 証 ㆒ヲ 也 ︒ 三 密 加 持 速 疾 顕 ノ 義 ︑ 以 テ 可 シ 知 ヌ 之 ㆒ヲ 矣 ︒ 【 訓 読 】 然 れ ば 則 ち 行 者 三 密 相 応 し て 此 の 義 を 観 察 す る に ︑ 本 尊 を 成 就 す ︒ 己こ 身し ん に 於 て 速 疾 の 教 益 ︑ 此 の 如 し を 以 て 成 不 成 を 論 ず べ か ら ざ る な り ︒ 若 し 三 平 等 観 を 勤 修 せ む 其 の 益 虚 か ら ず と 云 ふ は ︑ 其 の 益 と い ふ は ︑ 即 ち 是 れ 成 仏 の 大 益 な り ︒ 若 し 一 分 と 雖 も 成 仏 の 益 を 得 る こ と 有 り と 許 さ ば ︑ 之 の 義 行 者 を 以 て 即 身 成 仏 の 人 証 と 為 す ︒ 故 に 今 の ﹃ 即 身 義 ﹄ の 前 後 に 於 て 速 疾 の 教 益 を 出 て ︑ 更 に 人 証 を 出 さ ざ る な り ︒ ﹁ 三 密 加 持 速 疾 顕 ﹂ の 義 ︑ 以 て 之 を 知 ぬ 可 し( ) ︒42 こ こ に は ︑ 行 者 が 実 際 に 三 密 行 を 修 行 し た 場 合 ︑ 自 身 が 成 仏 す る 速 度 の 問 題 に お い て は ︑ 成 仏 す る か し な い か と い っ − 143 −
た 問 題 は 別 問 題 で あ り ︑ 行 者 自 身 そ の も の が 即 身 成 仏 の 人 的 証 拠 と な る と い う ︒ 身 口 意 の 三 平 等 観 を 修 し ︑ 三 密 加 持 さ れ た 状 態 に よ り 自 身 に 本 尊 が 成 就 さ れ る こ と が 成 仏 の 大 益 と な る と 考 え ら れ る ︒ 続 い て ︑ ﹁ 重 々 帝 網 名 即 身 ﹂ の 句 を 解 釈 す る 箇 所 を み る と ︑ 成 仏 の 人 証 で あ る 行 者 の 機 根 に つ い て 取 り 上 げ ら れ ︑ 修 行 の 行 果 に つ い て の 議 論 が 繰 り 広 げ ら れ て い る ︒ 【 本 文 】 問 我 ハ 顧 ミ 機 ノ 下 劣 ㆒ヲ 為 メ ニ 顕 ム カ 教 ノ 深 奥 ㆒ヲ 即 身 成 仏 ハ 謂 フ 不 ス ト 我 等 カ 分 ㆒ニ 汝 ハ 執 シ テ 過 分 ノ 即 身 成 仏 ㆒ 雖 ト モ 談 ス ト 頓( ) 成43 ノ 旨 ㆒ヲ 出 レ ハ 堂 場 ㆒ヲ 又 起 カ 貪 嗔 癡 等 ㆒ヲ 故 成 仏 ノ 言 似 タ リ 戯 論 ㆒ニ 誰 カ 信 受 セ ム 之 ヲ ︒ 我 元 ヨ リ 非 ス 謂 ニ ハ 於 テ 三 密 ノ 教 ㆒ニ 都 テ 無 利 益 ㆒ 也 ︒ 唯 タ 今 マ 所 ロ 論 ㆒ス ル 者 ハ ︑ 如 ノ 我 等 ㆒カ 者 ノ 修 行 ス ル ニ 此 教 ㆒ヲ 有 リ 即 身 成 仏 ノ 義 ︑ 否 ㆒ヤ 也 ナ リ ︒ 答 許 ㆘サ ハ 有 ㆗ト 於 テ 三 密 三 平 等 ノ 行 ㆒ニ 即 身 頓 成 ノ 深 旨 ㆖ 若 シ 以 テ 得 ル ナ リ 三 密 加 持 ㆒ヲ 人 ヲ 等 シ ト 仏 ㆒ニ 云 者 ハ ︑ 即 シ テ 凡 ㆒ニ 則 テ 見 ル ナ リ 〈 仏 ㆒ニ 〉 是 重 々 帝 網 名 即 身( ) ノ 義 ナ リ 也 ︒ 若 亡 シ テ 行 者 ㆒ヲ 唯 タ 成 セ ハ 仏 身 ㆒ヲ ノ ミ 対 シ テ カ 何 ニ 有 重 々 帝 網 義( ) ㆒ 乎 ヤ ︒ 須( ) ㆘ク 聞 44 45 46 テ ハ 三 密 平 等 ノ 教 ㆒ヲ 懐 ㆗ク 等 シ キ 果 位 ㆒ニ 喜 ㆖ヒ ヲ 何 ソ 徒 ニ 論 シ テ 顕 家 超 勝 之 差 異 ㆒ヲ 空 ク 欲 ス ル 譲 ラ ム ト 教 益 ヲ 於 上 根 上 智 ㆒ 〈 爾 乃 義 〉 乎 ヤ ︒ 汝 等 既 ニ 労 フ 即 身 成 仏 ノ 人 証 ㆒ニ 其 上 根 上 智 者 ハ ︑ 為 ム 誰 人 ㆒ト カ 乎 ヤ ︒ 是 レ 偏 ニ 依 ㆘テ 催 ヲ サ レ 我 法 分 別 之 ノ 凡 心 ㆒ニ 疎 ㆗ナ ル ニ 三 密 平 等 ノ 観 念 ㆖ニ 唯 タ 以 テ 眼 耳 ノ 転 変 ㆒ヲ 欲 ス ル 為 サ ム ト 仏 ㆒ト 故 ヘ 也 ︒ 【 訓 読 】 問 ふ ︒ 我 は 機 の 下 劣 を 顧 み ︑ 教 の 深 奥 を 顕 さ む が 為 に 即 身 成 仏 は 我 等 が 分 に あ ら ず と 謂 ふ ︒ 汝 は 過 分 の 即 身 成 仏 に 執 し て 頓 成 の 旨 を 談 ず と 雖 も 堂 場 を 出 れ ば ︑ 又 た 貪 嗔 癡 等 を 起 す が 故 に 成 仏 の 言 ︑ 戯 論 に 似 た り ︒ 誰 が 之 れ を 信 受 せ む ︒ 我 元 よ り 三 密 の 教 に 於 て 謂 ふ に は あ ら ず ︒ 都す べ て 利 益 無 き な り ︒ 唯 だ 今 論 ず る 所 は ︑ 我 等 が 如 く の 者 の 此 の 教 を 修 行 す る に ︑ 即 身 成 仏 の 義 有 り や ︑ 否 や な り ︒ 答 ふ ︒ 三 密 三 平 等 の 行 に 於 て 即 身 頓 成 の 深 旨 有 り と 許 さ ば ︑ 若 し 三 密 加 持 を 以 て 得 る な り ︒ 人 を 仏 に 等 し と 云 ふ は ︑ 凡 に 即 し て ︑ 則 ち 仏 に 見 る な り ︒ 是 れ ﹁ 重 重 帝 網 名 即 身 ﹂ の 義 な り( ) ︒ 若 し 行 者 を 亡 じ て 唯 だ 仏 身 を 成 ぜ ば ︑ 何 47 − 144 −
に 対 し て か ﹁ 重 重 帝 網 ﹂ の 義 有 る や ︒ 須 ら く 三 密 平 等 の 教 を 聞 き て は ︑ 果 位 に 等 し き 喜 び を 懐 く べ し ︒ 何 ぞ 徒い た らず に 顕 家 超 勝 の 差 異 を 論 じ て ︑ 空 し く 教 益 を 上 根 上 智 に 譲 ら む と 欲 す る や ︒ 〈 爾 乃 義 〉 汝 等 既 に 即 身 成 仏 の 人 証 に 労 ふ ︒ 其 の 上 根 上 智 と は ︑ 誰 人 と か 為 さ む や ︒ 是 れ 偏 に 我 法 分 別 の 凡 心 に 催 さ れ ︑ 三 密 平 等 の 観 念 に 疎お ろ かそ な る に 依 り て ︑ 唯 だ 眼 耳 の 転 変 を 以 て 仏 と 為 さ む と 欲 す る 故 な り( ) ︒48 こ こ で は ︑ 機 根 の 劣 っ た 者 が 即 身 成 仏 と い っ て 頓 成 の 義 を 唱 え て も 堂 場 ( 道 場 ) を 出 て 三 毒 を ま た 起 こ し て し ま え ば 戯 論 と 化 し て し ま う ︒ こ の よ う な 機 根 の 低 い 者 に も 即 身 成 仏 は 可 能 で あ る の か と い う 問 題 に つ い て で あ る ︒ こ れ に つ い て ︑ 顕 教 と の 優 劣 を 議 論 し て ︑ 目 に 見 え る 形 で の 成 仏 の み に 固 執 し て 三 密 行 を 疎 か に し て い る 限 り は 不 可 能 で あ り ︑ 自 身 が 既 に 即 身 成 仏 の 人 証 で あ る こ と に 気 付 い て い な い こ と を 諫 め て い る ︒ 仏 と 衆 生 の 関 係 は 因 陀 羅 網 の 珠 鏡 の 反 映 の よ う に 無 障 無 碍 で あ る の で ︑ た と え 機 根 が 劣 っ た 者 で あ っ て も 三 密 行 を 修﹅ 行﹅ す﹅ れ﹅ ば﹅ ︑ 頓 成 の 義 と し て の 即 身 成 仏 が 成 立 す る と す る の で あ る ︒ こ こ で 指 摘 し て お き た い の は ﹁ 三 密 行 を 修 行 す れ ば ﹂ と い う 条 件 を 付 し て い る こ と で あ ろ う ︒ こ れ に よ り 三 密 行 の 強 調 を 示 す の で あ る ︒ 以 上 の よ う に 真 言 密 教 の 根 幹 で あ る 即 身 成 仏 に つ い て ︑ そ の 可 能 性 を 機 根 や 成 仏 の 遅 速 と い っ た 問 題 か ら 議 論 し て お り ︑ そ れ ら に つ い て の 解 答 を 得 る こ と が で き る ︒ そ こ に は 行 者 自 身 を 人 証 と し ︑ 三 密 行 を 実 際 に 修 行 す る こ と に よ り 既 に 成 仏 の 利 益 が 備 わ っ て い る こ と を 示 し て い る こ と が わ か る ︒
四
ま
と
め
以 上 ︑ 明 恵 の 弟 子 で あ る 高 信 が 著 し た ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ に 対 す る 注 釈 書 で あ る ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に つ い て 少 し く 検 討 を 加 え て き た ︒ ま ず 本 書 は ︑ 独 自 の 密 教 観 を 示 し た と さ れ る 明 恵 の 亡 き 後 ︑ 高 山 寺 の 学 僧 た ち に お い て ︑ そ の 教 説 が い か に 継 承 さ れ て き た の か ︑ ま た 彼 ら の 真 言 密 教 が い か な る も の で あ っ た の か を 考 え る 上 で 重 要 な 資 料 で あ る と い え る ︒ ま た ︑ そ れ ら を 明 ら か に す る 上 で も 唐 招 提 寺 や 高 山 寺 を は じ め 現 在 各 所 に 所 蔵 さ れ て い る い く つ か の 諸 写 本 の 翻 刻 校 訂 ︑ − 145 −訳 注 研 究 が 俟 た れ る も の で あ る ︒ 既 に 先 行 研 究 に お い て い く つ か の 重 要 な 指 摘 が な さ れ て い る が ︑ そ れ ら は 未 だ 個 別 的 で あ り ︑ 資 料 全 体 を 総 括 す る に は 至 っ て い る と は い え な い ︒ そ こ で 本 稿 は そ れ ら 各 写 本 の 特 徴 ︑ 先 行 研 究 の 整 理 を 行 い ︑ 巻 上 を 中 心 に 具 体 的 記 述 に つ い て い く つ か の 検 討 を 加 え た ︒ そ れ ら か ら 概 観 で き る も の は ︑ 従 来 か ら 指 摘 さ れ る よ う に 高 信 は ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ を あ く ま で も 真 言 密 教 の 立 場 か ら 著 し て い る も の の ︑ 明 恵 の 教 説 を 積 極 的 に 受 容 し て い る こ と が わ か る ︒ そ れ ら は 顕 教 と の 対 峙 と い う 側 面 に お い て ︑ そ の 解 釈 に 関 し て 重 要 な 位 置 を 示 し て い る と い う こ と が で き よ う ︒ 具 体 的 に は ︑ 顕 教 に お け る ﹁ 初 発 心 時 便 成 正 覚 ﹂ と 真 言 密 教 と し て の 究 竟 な る 成 仏 と し て の 果 位 は 明 確 に 区 別 さ れ て い る と い う こ と が で き ︑ そ れ を 三 種 即 身 成 仏 説 に お け る 顕 得 成 仏 に 位 置 付 け て い る ︒ ま た ︑ 空 性 理 解 に お い て 四 謗 や 四 句 分 別 を 用 い て 理 解 す る 方 法 を あ げ る な ど 明 恵 の ﹃ 華 厳 仏 光 三 昧 観 秘 宝 蔵 ﹄ か ら の 影 響 も 考 え る こ と が で き る ︒ し か し ︑ こ れ ら は 明 恵 の 教 説 と し て 積 極 的 に 用 い て い る と 考 え ら れ る が ︑ そ れ は あ く ま で 顕 教 の 立 場 と し て の 活 用 法 に 止 ま っ て い る と い え る ︒ ま た ︑ 現 実 的 な 譬 喩 を 用 い て 教 義 解 釈 す る 方 法 な ど ︑ 後 世 の 真 言 の 学 匠 で あ る 頼 瑜 が ﹃ 即 身 成 仏 義 顕 得 鈔 ﹄ に お い て 明 恵 の 説 を 用 い て い る こ と か ら ︑ 明 恵 没 後 早 い 段 階 に お い て ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ を 活 用 す る 価 値 が 見 出 さ れ て い た こ と が わ か る ︒ 今 後 の 課 題 と し て は ︑ 引 き 続 き 各 写 本 に 基 づ く 本 文 の 翻 刻 校 訂 ︑ 訳 注 研 究 を 進 め ︑ 他 の 真 言 の 学 匠 た ち が 著 し た ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ の 注 釈 書 と の 比 較 検 討 を す る こ と に よ り ︑ さ ら に 高 山 寺 出 身 の 学 僧 た ち が い か に 真 言 密 教 を 解 釈 し て い た の か と い っ た 問 題 を 解 明 す る こ と が 可 能 と 考 え ら れ る ︒ 註 ( ) 坂 本 幸 男 [ 一 九 五 六 ] ﹁ 明 恵 上 人 の 華 厳 思 想 ﹂ ﹃ 華 厳 教 学 の 研 究 ﹄ 平 楽 寺 書 店 ︑ 末 木 文 美 士 [ 一 九 九 八 ] ﹁ 明 恵 と そ の 周 辺 ﹂ − 146 −
﹃ 鎌 倉 仏 教 形 成 論 袞 思 想 史 の 立 場 か ら 袞 ﹄ 法 蔵 館 等 参 照 ︒ ( ) 野 呂 靖 [ 二 〇 一 四 ] ﹁ 明 恵 門 下 に お け る 教 学 と 実 践 の 継 承 ﹂ ﹃ 日 本 仏 教 学 会 年 報 ﹄ 七 九 号 ︑ 前 川 健 一 [ 二 〇 一 四 ] ﹁ 明 恵 晩 年 の 思 想 : ﹃ 観 智 記 ﹄ を 中 心 に ﹂ ﹃ 智 山 学 報 ﹄ 六 三 輯 等 参 照 ︒ ( ) 納 富 常 天 [ 一 九 九 五 A ] ﹁ 高 山 寺 教 学 の 展 開 袞 丹 州 神 尾 山 寺 を 中 心 と し て 袞 ﹂ ﹃ 金 沢 文 庫 資 料 の 研 究 稀 d 資 料 篇 ﹄ 法 蔵 館 ︑ 四 三 ~ 六 二 頁 な ら び に 土 井 光 祐 [ 一 九 九 五 ] ﹁ 高 山 寺 関 係 聞 書 類 の 資 料 的 性 格 と 学 統 袞 講 説 聞 書 と 伝 授 聞 書 と を め ぐ っ て 袞 ﹂ ﹃ 訓 点 語 と 訓 点 資 料 ﹄ 九 五 輯 で は 高 信 撰 と 比 定 し て い る ︒ ( ) 明 恵 の 弟 子 た ち が 編 纂 し た 聞 書 類 に つ い て は 土 井 光 祐 [ 一 九 九 五 ] に 詳 し い ︒ そ の 中 ( 六 九 頁 下 ) に お い て ︑ 教 相 の 講 義 に 関 す る も の を 講 説 聞 書 ︑ 事 相 伝 授 に 関 す る も の を 伝 授 聞 書 と 二 つ に 大 別 し ︑ こ れ ら を 総 称 し て 法 談 聞 書 と し て い る ︒ ( ) 納 富 常 天 [ 一 九 九 五 A ] ︑ 土 井 光 祐 [ 一 九 九 五 ] 等 参 照 ︒ ( ) 花 野 憲 道 [ 一 九 九 二 ] ﹁ 唐 招 提 寺 蔵 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 二 帖 ( 一 ) 袞 上 帖 影 印 並 び に 書 誌 的 解 説 袞 ﹂ ﹃ 鎌 倉 時 代 語 研 究 ﹄ 十 五 輯 ︒ ( ) 二 〇 一 六 年 十 一 月 十 日 ( 木 ) 於 唐 招 提 寺 に 実 見 調 査 お よ び 全 冊 撮 影 を 行 っ た ︒ ( ) 二 〇 〇 九 年 九 月 二 十 一 日 ( 月 ) 於 高 山 寺 法 鼓 台 道 場 に 実 見 調 査 を 行 っ た ︒ ( ) 「 ま た ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に つ い て は ﹃ 方 便 智 院 聖 教 目 録 ﹄ に ﹁ 六 大 無 碍 義 二 帖 〈 上 下 順 性 上 人 作 〉 と あ る が ︑ い ま は 所 在 不 明 で あ る ︒ し か し 頼 瑜 ( 一 二 二 六 袞 一 三 〇 四 ) 著 ﹃ 釈 摩 訶 衍 論 開 解 鈔 』 ( 真 福 寺 本 ) 奥 書 に ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に ふ れ ︑ ﹁ ( 真 福 寺 本 奥 書 同 文 ) ﹂ と あ っ て ︑ 豪 信 ( 頼 瑜 の は じ め の 名 ) が 三 十 三 歳 の と き に 書 写 し て い る の み な ら ず ︑ 高 く 評 価 し て い る ︒ こ れ は 高 信 が 密 教 思 想 に つ い て も 深 い 造 詣 が あ っ た こ と を 示 す も の で あ る ︒ 」 納 富 常 天 [ 一 九 九 五 B ] ﹁ 解 脱 門 義 聴 集 記 ﹂ ﹃ 金 沢 文 庫 資 料 の 研 究 袞 稀 d 資 料 篇 袞 ﹄ 法 蔵 館 ︑ 五 五 五 頁 ︒ 上 掲 書 に こ の よ う に 指 摘 さ れ る こ の 奥 書 は ︑ 真 福 寺 本 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 奥 書 と 内 容 的 に 一 致 し て い る ︒ 現 在 ︑ 真 福 寺 所 蔵 資 料 の 奥 書 を 確 認 で き る も の と し て 黒 板 勝 美 編 [ 一 九 三 六 ] ﹃ 真 福 寺 善 本 目 録 ﹄ 続 輯 や 智 山 伝 法 院 編 [ 一 九 九 七 ・ 一 九 九 八 ] ﹃ 大 須 観 音 真 福 寺 文 庫 撮 影 目 録 ﹄ 上 ・ 下 巻 を あ げ る こ と が で き る が ︑ そ れ ら を 確 認 し た と ろ こ ろ 真 福 寺 所 蔵 ﹃ 釈 摩 訶 衍 論 開 解 鈔 ﹄ に は 上 記 奥 書 を 管 見 で は 見 出 す こ と が で き な い ︒ こ れ に つ い て ︑ 頼 瑜 が 正 嘉 元 年 ( 一 二 五 七 ) 前 後 ︑ 高 信 と 名 乗 っ て い た 時 期 の 本 奥 書 を 有 す る ﹃ 釈 論 開 解 鈔 ﹄ 十 八 帖 ( 黒 板 勝 美 編 [ 一 九 三 六 ] 六 四 頁 ) や 四 帖 ( 黒 板 勝 美 編 [ 一 九 三 六 ] 六 八 頁 ) 等 が 真 福 寺 所 蔵 と さ れ ︑ こ れ ら と の 混 同 も 考 え ら れ 不 審 で あ る ︒ 今 後 ︑ こ の − 147 −
他 の 真 福 寺 所 蔵 資 料 に つ い て も 精 査 す る 必 要 が あ ろ う ︒ ( ) 「 斯 様 に ︑ 明 ら か に 高 信 の 属 し て い る 宗 派 と そ れ 以 外 の 宗 派 と を 区 別 し て ︑ 対 比 し て と ら え て い る こ と が わ か る ︒ 高 信 は 10 広 沢 流 を 明 恵 よ り ︑ 勧 修 寺 流 を 定 真 よ り 受 け ︑ 更 に 文 暦 二 〈 一 二 三 五 〉 年 に は 高 山 寺 阿 弥 陀 堂 に 於 て 行 遍 を 阿 闍 梨 と し て 伝 法 灌 頂 を 受 け て い る ︒ 高 信 は 真 言 密 教 の 二 相 を 双 修 し た 已 達 で あ っ た の で あ る ︒ そ れ は ︑ 高 信 の 教 相 ( こ こ で は 即 身 成 仏 義 の 解 釈 に 関 し て ) が 既 存 の 宗 派 の 教 相 と 異 な る こ と を 示 し て お り ︑ 更 に 加 え て 高 山 寺 の 教 学 も そ の よ う で あ っ た ろ う と 推 察 で き る の で あ る ︒ 」 花 野 憲 道 [ 一 九 九 三 ] ﹁ 唐 招 提 寺 蔵 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 二 帖 ( 二 ) 袞 下 帖 影 印 並 び に 内 容 解 説 袞 ﹂ ﹃ 鎌 倉 時 代 語 研 究 ﹄ 十 六 輯 ︑ 三 五 二 頁 ︒ ( ) 「 こ の よ う に ︑ 高 信 は 密 教 に 深 く 入 り な が ら も ︑ 明 恵 の 説 を 重 ん じ て お り ︑ そ こ に 明 恵 教 団 の 独 自 の 密 教 の 立 場 を 見 る こ 11 と が で き る ︒ ま た ︑ そ こ に 引 か れ た 明 恵 の 言 葉 は ︑ そ の 思 想 か ら 見 て 十 分 に 明 恵 の も の と 認 め ら れ ︑ し か も 単 に 思 想 と い う だ け で な く ︑ 明 恵 の 人 柄 を 彷 彿 と さ れ る も の で あ る ︒ 」 末 木 文 美 士 [ 二 〇 〇 六 ] ﹁ 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ に み え る 明 恵 の 話 ﹂ 平 成 十 七 年 度 ﹃ 高 山 寺 典 籍 文 書 綜 合 調 査 団 研 究 報 告 論 集 ﹄ ︑ 二 一 六 頁 ︒ ( ) 「 ⑫ に は ︑ 明 恵 の 弟 子 で あ る 高 信 ・ 隆 詮 ︑ そ し て 豪 信 と 名 乗 っ て い た 頃 の 頼 瑜 の 名 が 見 ら れ る ︒ 波 線 部 に あ る よ う に ﹃ 六 12 大 無 碍 義 抄 ﹄ の 作 者 が 明 恵 の 弟 子 で あ る と 告 げ ら れ ︑ 深 く 感 心 し た こ と が 奥 書 に 記 さ れ て い る ︒ こ こ か ら 若 き 日 の 頼 瑜 が 明 恵 に 対 し て 尊 敬 の 念 を 抱 い て い た こ と が 知 ら れ よ う ︒ 」 髙 橋 秀 城 [ 二 〇 〇 八 ] ﹁ 頼 瑜 の 夢 想 ﹂ ﹃ 智 山 学 報 ﹄ 五 七 輯 ︑ 九 二 ~ 九 三 頁 ︒ ( ) 野 呂 靖 ﹁ 真 言 宗 義 ま こ と に 味 わ い あ り 袞 頼 瑜 が 依 拠 し た 明 恵 上 人 門 下 の 思 想 袞 ﹂ 国 際 仏 教 学 大 学 院 大 学 日 本 古 写 経 研 究 所 ︑ 13 二 〇 一 五 年 度 第 一 回 公 開 研 究 会 配 布 資 料 ( 二 〇 一 五 年 五 月 九 日 ( 土 ) 於 国 際 仏 教 学 大 学 院 大 学 発 表 ) ︒ な お ︑ 当 発 表 を も と に 二 〇 一 六 年 三 月 に 唐 招 提 寺 本 巻 下 の 全 文 翻 刻 を 掲 載 刊 行 予 定 で あ る と 発 表 者 野 呂 靖 氏 よ り 伺 っ て い る ︒ ( ) 「 と こ ろ が ﹃ 顕 得 鈔 ﹄ で は 構 成 を 巧 み に 改 変 す る こ と で 四 法 界 説 の 配 釈 の み を 削 除 し て い る ︒ つ ま り 頼 瑜 は ︑ ﹃ 義 抄 ﹄ の 特 14 色 で あ る 華 厳 教 義 を 用 い た 解 釈 を 意 図 的 に 除 い た 上 で 転 用 し て い る と 考 え ら れ る ︒ 」 ま た ︑ 以 下 の よ う に も 述 べ ら れ て い る ︒ ﹁ 上 述 の 本 文 的 一 致 に よ り ︑ ﹃ 顕 得 鈔 ﹄ は 直 接 的 に は 明 恵 門 下 に お け る ﹃ 即 身 義 ﹄ 解 釈 を 参 照 し ︑ ﹁ 下 敷 き ﹂ と す る こ と で 形 成 さ れ て い る 箇 所 が 認 め ら れ る ︒ 注 目 さ れ る の は ︑ ﹃ 義 抄 ﹄ の 依 用 態 度 が 諸 師 の 注 釈 を 用 い る 際 に 典 拠 を 明 記 す る 態 度 と は − 148 −
異 な り ︑ 多 く の 用 例 に お い て ﹁ 自 説 ﹂ と 区 別 さ れ て い な い 点 で あ る ︒ 」 野 呂 靖 [ 二 〇 〇 七 A ] ﹁ 順 性 房 高 信 と 頼 瑜 袞 頼 瑜 教 学 に 与 え た 高 山 寺 系 密 教 の 影 響 袞 ﹂ ﹃ 印 度 学 仏 教 学 研 究 ﹄ 五 五 巻 二 号 ︑ 六 六 五 ( 一 五 三 ) 頁 下 ~ 六 六 六 ( 一 五 四 ) 頁 上 ︒ ( ) 「 と こ ろ で ﹃ 義 抄 ﹄ で は ︑ 即 身 成 仏 の ﹁ 一 生 ・ 隔 生 ﹂ の 論 議 に 言 及 し て い る 箇 所 が あ り 注 目 さ れ る ︒ ( 中 略 ) こ こ で は ︑ 顕 15 教 に お け る 龍 女 成 仏 ・ 善 財 童 子 の ﹁ 現 身 成 仏 ﹂ は ︑ あ く ま で 前 世 の ﹁ 見 聞 世 ﹂ に お け る 因 業 に 基 づ く も の で あ り ︑ 一 生 一 身 で は な い と 厳 し く 批 判 し て い る ︒ こ の こ と か ら ︑ ﹁ 隔 生 説 ﹂ の 立 場 に 基 づ け ば ﹁ 顕 家 ﹂ と 同 じ る こ と に な る と す る の で あ る ︒ ( 改 行 ) 高 信 は 明 恵 の 聞 書 や 伝 記 を 整 理 ・ 編 纂 す る な ど 喜 海 に 次 い で 重 要 な 門 下 の 一 人 で あ る が ︑ 重 要 な 点 で 師 説 と や や 異 な っ た 見 解 が み ら れ る ︒ 高 信 は 真 言 宗 に つ い て ﹁ 我 宗 ﹂ と 述 べ て お り ︑ 華 厳 と 密 教 と の 一 致 と い う 点 に つ い て は た ち い ら な い ︒ 」 野 呂 靖 [ 二 〇 〇 七 B ] ﹁ 明 恵 門 下 に お け る ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ 解 釈 袞 高 信 撰 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 上 巻 翻 刻 袞 ﹂ ﹃ 仏 教 学 研 究 ﹄ 六 二 ・ 六 三 号 ︑ 三 三 頁 ︒ ( ) 空 海 ﹃ 即 身 成 仏 義 』 ( ﹃ 弘 大 全 ﹄ 一 輯 ︑ 五 〇 七 ~ 五 〇 八 頁 ) 16 ( ) 京 大 本 は ﹁ 体 ﹂ を ﹁ 諸 ﹂ と す る ︒ 17 ( ) 伝 空 海 ﹃ 真 言 宗 即 身 成 仏 義 ﹄ 一 巻 ( 異 本 即 身 義 三 : ﹃ 弘 大 全 ﹄ 四 輯 ︑ 二 六 頁 ) ︑ 伝 空 海 ﹃ 即 身 成 仏 義 〈 異 本 〉 』 ( 異 本 即 身 義 18 四 : ﹃ 弘 大 全 ﹄ 四 輯 ︑ 四 七 頁 取 意 ) ︑ 伝 空 海 ﹃ 異 本 即 身 成 仏 義 』 ( 異 本 即 身 義 五 : ﹃ 弘 大 全 ﹄ 四 輯 ︑ 六 七 頁 取 意 ) ( ) 伝 空 海 ﹃ 真 言 宗 即 身 成 仏 義 ﹄ 一 巻 〈 本 書 / 問 答 〉 ( 異 本 即 身 義 一 : ﹃ 弘 大 全 ﹄ 四 輯 ︑ 七 頁 ) 19 ( ) 空 海 ﹃ 秘 密 曼 荼 羅 十 住 心 論 ﹄ 巻 十 ( ﹃ 弘 大 全 ﹄ 一 輯 ︑ 四 〇 〇 頁 ) 20 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 三 四 丁 裏 ~ 三 五 丁 表 ︑ 京 大 本 : 二 四 丁 裏 ) 21 ( ) 京 大 本 は ﹁ 問 ﹂ を ﹁ 内 ﹂ と す る ︒ 22 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 四 四 丁 裏 ~ 四 五 丁 表 ︑ 京 大 本 : 三 一 丁 表 ~ 裏 ) 23 ( ) 伝 空 海 ﹃ 真 言 宗 即 身 成 仏 義 ﹄ 一 巻 ( 異 本 即 身 義 三 : ﹃ 弘 大 全 ﹄ 四 輯 ︑ 十 六 頁 ) 等 ︒ 24 ( ) 京 大 本 は ﹁ 荼 ﹂ を ﹁ 陀 ﹂ と す る ︒ 25 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 二 二 丁 裏 ~ 二 三 丁 表 ︑ 京 大 本 : 一 六 丁 表 ~ 裏 ) 26 ( ) 空 海 ﹃ 即 身 成 仏 義 』 ( ﹃ 弘 大 全 ﹄ 一 輯 ︑ 五 〇 九 頁 ) ︑ ﹃ 大 日 経 ﹄ 巻 五 ( ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 十 八 巻 ︑ 三 八 頁 中 ) 27 − 149 −
( ) 京 大 本 は ﹁ 住 ﹂ を ﹁ 任 ﹂ と す る ︒ 28 ( ) 京 大 本 は ﹁ 己 ﹂ を ﹁ 已 ﹂ と す る ︒ 29 ( ) 京 大 本 は ﹁ 宗 ﹂ を ﹁ 家 ﹂ と す る ︒ 30 ( ) 京 大 本 は ﹁ 印 ﹂ を ﹁ 即 ﹂ と す る ︒ 31 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 三 二 丁 裏 ~ 三 三 丁 表 ︑ 京 大 本 : 二 三 丁 表 ~ 裏 ) 32 ( ) 明 恵 ﹃ 華 厳 仏 光 三 昧 観 秘 宝 蔵 ﹄ 巻 下 ( ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 七 二 巻 ︑ 九 五 頁 上 段 ) 33 ( ) 頼 瑜 ﹃ 即 身 成 仏 義 顕 得 鈔 ﹄ 巻 中 ( ﹃ 真 言 全 ﹄ 十 三 巻 ︑ 三 五 頁 下 ~ 三 六 頁 上 ) 34 ( ) 京 大 本 は ﹁ 師 ﹂ を ﹁ 所 ﹂ と す る ︒ 35 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 六 丁 表 ~ 裏 ︑ 京 大 本 : 四 丁 裏 ~ 五 丁 表 ) 36 ( ) 田 中 久 夫 [ 一 九 八 二 A ] ﹁ 明 恵 上 人 の 講 義 の 聞 書 に み え る 譬 喩 ﹂ ﹃ 鎌 倉 仏 教 雑 考 ﹄ 思 文 閣 ︑ 四 三 二 ~ 四 六 三 頁 ︒ こ こ に ︑ 文 37 机 や 脇 足 な ど の 身 近 な 事 物 ︑ 赤 子 や 舵 取 な ど の 人 ︑ 動 物 や 海 ・ 川 な ど の 譬 喩 の 用 例 を 整 理 さ れ て い る ︒ ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 下 ( 唐 招 提 寺 本 : 四 六 丁 表 ︑ 京 大 本 : 三 三 丁 表 ~ 裏 ︑ 真 福 寺 本 : マ イ ク ロ 紙 焼 四 〇 枚 目 ︑ 高 山 寺 38 本 ① : 四 八 丁 裏 ~ 四 九 丁 表 ) ( ) 田 中 久 夫 [ 一 九 八 二 B ] ﹁ 講 義 聞 書 に み ら れ る 明 恵 上 人 の 思 想 ﹂ ﹃ 鎌 倉 仏 教 雑 考 ﹄ 思 文 閣 ︑ 三 六 七 ~ 四 三 一 頁 ︒ 39 ( ) 不 詳 ﹃ 華 厳 信 種 義 聞 集 記 ﹄ 巻 三 ( 木 村 清 孝 校 訂 [ 一 九 七 五 ] ﹃ 金 沢 文 庫 資 料 全 書 ﹄ 二 巻 ・ 華 厳 篇 ︑ 二 三 八 頁 ) 40 ( ) 京 大 本 は ﹁ 己 ﹂ を ﹁ 已 ﹂ と す る ︒ 41 ( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 二 八 丁 表 ~ 裏 ︑ 京 大 本 : 二 〇 丁 表 ~ 裏 ) 42 ( ) 京 大 本 は ﹁ 頓 ﹂ を ﹁ 顕 ﹂ と す る ︒ 43 ( ) 京 大 本 は ﹁ 名 即 身 ﹂ な し ︒ 44 ( ) 京 大 本 は ﹁ 義 ﹂ な し ︒ 45 ( ) 京 大 本 は ﹁ 須 ﹂ を ﹁ 頂 ﹂ と す る ︒ 46 ( ) 引 用 本 文 の う ち ︑ こ こ ま で 頼 瑜 ﹃ 即 身 成 仏 義 顕 得 鈔 ﹄ 巻 中 ( ﹃ 真 言 全 ﹄ 十 三 巻 ︑ 七 五 頁 上 ~ 下 ) に 同 文 が あ る ︒ 47 − 150 −
( ) 高 信 ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 巻 上 ( 唐 招 提 寺 本 : 五 七 丁 表 ~ 五 八 丁 表 ︑ 京 大 本 : 四 〇 丁 表 ~ 裏 ) 48 【 附 記 】 『 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ 各 写 本 資 料 の 閲 覧 ・ 撮 影 ・ 複 写 等 を ご 許 可 ︑ ご 提 供 頂 い た 唐 招 提 寺 御 当 局 ︑ 高 山 寺 御 当 局 ︑ 大 須 観 音 真 福 寺 御 当 局 ︑ 京 都 大 学 附 属 図 書 館 各 位 に 衷 心 よ り 記 し て 深 謝 申 し 上 げ ま す ︒ ま た ︑ 龍 谷 大 学 専 任 講 師 野 呂 靖 氏 に は 参 考 資 料 の 提 供 等 ︑ 各 別 な る ご 指 導 頂 き ま し た こ と を 合 わ せ て 御 礼 申 し 上 げ ま す ︒ 〈 キ ー ワ ー ド 〉 高 山 寺 ︑ 明 恵 ︑ 高 信 ︑ 空 海 ︑ 頼 瑜 ︑ ﹃ 即 身 成 仏 義 ﹄ ︑ ﹃ 六 大 無 碍 義 抄 ﹄ − 151 −