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氏名 山川やまかわ 学

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Academic year: 2021

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氏 名 山川

やまかわ

さと

所 属 システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 学 位 の 種 類 博士(工学)

学 位 記 番 号 シス博 第 89 号 学位授与の日付 平成 29 年 3 月 25 日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名 前十字靱帯再建術に関する生体力学的検討 -移植腱の変形計測と機能評価-

論 文 審 査 委 員 主査 教授 藤江 裕道 委員 教授 青村 茂 委員 准教授 坂元 尚哉

委員 教授 中田 研(大阪大学)

【論文の内容の要旨】

( 学位論文要旨 )前十字靱帯(ACL)は,膝関節の安定化に寄与する重要な靱帯のひと つである.その損傷頻度は非常に高く,日本国内だけでも年間 3 万件ほどにのぼる.その ため,整形外科領域において ACL 損傷やその治療には多くの関心が寄せられ,重要な研究 対象とされている.ACL 損傷に対する治療では膝周囲に存在するハムストリング腱や膝蓋腱 など ACL の代替組織を取り出し,大腿骨と脛骨に開けた骨孔を通して固定する ACL 再建術 という手術を行うのが一般的である.この再建術は,複雑かつ高度な技術が必要であり,

医師の経験などに左右される部分が多く,術後成績が安定しないという問題がある.また,

ACL 再建膝の術後評価は経過観察に頼ることが多く,定量的な評価が浸透していないことも,

この問題を助長している.そこで,本研究では ACL 再建術の力学的な評価,比較を行って,

現行術式の有用性と問題点を明らかにし,新たな術式を提案することを目的とする.本研 究で行った主な検討および成果は以下のとおりである.

1)ハムストリング腱を用いた ACL 再建術の評価:正常屍体膝関節(n = 11)を生体関節の

多自由度力学試験が可能な関節力学試験ロボットシステムに固定し,膝関節に前後方力を

負荷する前後方試験などの力学試験を行って,正常膝における Laxity(大腿骨に対する脛

骨の変位)を求めた.その後,臨床経験が豊富な整形外科医の助力を得て,ACL 切離膝に対

してハムストリング腱を用いた解剖学的 1 束再建術,同 2 重束再建術,同 3 重束再建術を

行った.それぞれの再建術を施した膝に対して正常膝と同様の力学試験を行い,再建膝の

Laxity および移植腱に生じる張力を求めた.その結果,正常膝と同程度の Laxity を得るた

めに 1 束再建では移植腱固定時の初期張力が 28.2 N 必要であるのに対し,2 重束再建術で

は 6.4 N, 3 重束再建術ではわずか 2.0 N で済むことが明らかとなった.また,膝荷重時に

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おける移植腱張力を比較すると 2 重,3 重束再建術は 1 束再建術より低値であり,特に 3 重 束再建術のグラフト張力変化は正常 ACL のそれに類似していた.以上の結果より,ハムス トリング腱を用いた ACL 多重束再建術は正常 ACL の力学機能の再建において優れており,

特に 3 重束再建術の優位性が明らかとなった.しかし,一方で,どの術式も 60°以上の屈 曲位では Laxity が正常膝に比べて有意に大きく,解剖学的再建術に限界があることも判明 した.このことより,正常 ACL の機能をより忠実に再建するためには,解剖学的特徴の模 擬という観点だけではなく,ACL が持つ力学機能の再建という観点が必要であることが示唆 された.

2)正常 ACL の変形挙動解析:正常 ACL の力学的機能は張力を発揮して,膝関節の相対運動 を適度に拘束することである.よって,その機能評価のためには正常 ACL 内の引張応力分 布を調べることが第一義的に重要である.しかし,生体軟組織である正常 ACL 内の応力分 布は,計測や解析では正確に求めることはできない.そこで本研究では,応力分布に密接 に関係し比較的計測が容易なひずみ分布に着目し,生理的膝荷重下における正常 ACL の変 形挙動解析を行った.画像相関法と三角測量の原理を応用し,正常 ACL の 3 次元形状計測 および表面ひずみ分布解析を行う手法を開発し,この手法を用いて前方力 50 N 負荷時にお けるブタ正常 ACL(n = 8)のひずみ分布を解析した.その結果,正常 ACL のひずみは骨へ の付着部近傍において最大で 8%程度であったのに対し,実質部(長さ方向中央部)では最 大 3%程度であることがわかった.また,付着部近傍では荷重増加に伴い,ひずみが非線形 に増加するのに対し,実質部では線形的に増加した.このことより,正常 ACL の変形挙動 には部位依存性と荷重依存性があることが明らかとなった.

3)再建 ACL の変形挙動解析:ブタ膝に対しハムストリング腱,または膝蓋腱を用いた再建 術を施行し,上記 2)と同様の手法を用いて変形挙動解析を行った.その結果,ハムストリ ング腱では,移植腱全体のひずみが小さく,特に大腿骨孔近傍のひずみが正常 ACL に比べ 有意に小さかった.この理由は,ハムストリング腱は骨組織を含まないため骨開孔部に固 定されず,荷重が伝達されにくいことが原因であると考えられた.1)において屈曲位で再 建膝の Laxity が高まったのはこのためであると推測される.一方,膝蓋腱の場合,移植腱 全体のひずみや大腿骨孔近傍のひずみはハムストリング腱の場合に比べてわずかに高まり,

正常 ACL のひずみに近づいた.この理由は,膝蓋腱は両端に骨組織が付着しているため,

骨開孔部との固定性が高く,荷重伝達が良好であるためと考えられた.荷重伝達が比較的

良好な膝蓋腱を用いた再建のさらなる改善の可能性について検討するため,大腿骨孔の方

向と移植腱走行方向が成す角度(graft bending angle: GBA)について検討した.その結

果,GBA を現行の ACL 再建術と同じ 90°とすると,GBA を 0°とする場合に比べて移植腱の

引張剛性が 80%以下に低下し,ひずみ分布が正常 ACL と異なることが分かった. 以上の検

討より,GBA を現行再建術の 90°よりも低値にすることで,再建膝の力学特性を正常膝に

近づけられる可能性があることが示唆された.このような新たな ACL 再建術を実現させる

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一案として,骨孔を用いずに,ACL の付着部に作った骨溝に膝蓋腱の骨片を固定する方法を 提案した.この方法により,GBA を 0°に近づけることができるうえ,正常 ACL の付着部形 態を模擬することが可能である.この術式であれば,再建 ACL の変形挙動を正常 ACL のそ れに近づけることとなり,正常膝と同等の荷重伝達機能を再現することが可能であると考 えられる.

本論文は 6 章から構成されている.第 1 章は ACL の物性や力学特性と ACL 再建術に関する

基本事項,研究目的など,第 2 章は生体靱帯の機能解析に関する基礎的実験,検討につい

て記述した.第 3 章は先に示した 1)現行 ACL 再建術の評価,第 4 章は 2)正常 ACL の変形

挙動解析,第 5 章は 3)再建 ACL の変形挙動解析について示した.そして,第 6 章ではこれ

らの結果を総合して結論を述べた.

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