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論文要旨

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Academic year: 2021

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論文要旨

中小企業の経営者は、経営環境の変化に対応しながら企業を成長させていかなければな らない。しかし、どんなに優秀な経営者でも一人でできることには限界がある。中小企業 の経営者は自らを補佐する役割を担う「右腕人材」を必要としており、彼らとともに企業 を成長させている。先行研究においても江戸時代の商家制度における番頭人材や現在の大 企業経営者の右腕人材を事例として、右腕人材の役割や要件が指摘されている。これらの 研究は、右腕人材と呼ばれる人材の様々な特徴の中から共通する事項を本質的な要素とし て捉えて解釈しているものが多い。つまり、右腕人材に求められる役割や要件が企業の成 長という動的な時間軸で変化するのではなく、共通要素として静的に捉えられている。

しかし、中小企業各社の企業規模や成長段階は様々である。したがって経営者が求める 右腕人材の役割や要件も多種多様であると考えられる。中小企業の経営者は事業活動の現 場で陣頭指揮にあたることも多く、大企業のように組織化が進んでいないため経営者によ る非公式な役割も見受けられる。中小企業の経営者が求める右腕人材を明らかにするには、

静的な視点で右腕人材を解釈するのではなく、企業の成長段階という動的な視点が必要で あると筆者は考えた。そして「企業の成長段階に応じて経営者が右腕人材に求める役割、

要件は変化する」という仮説を検証するため、中小企業の経営者を対象とした右腕人材に 関するインタビューを実施した。

インタビュー結果の質的分析によって中小企業の成長段階における経営者と右腕人材 のそれぞれの役割や要件が明らかになった。深刻な人材不足に直面している中小企業の経 営者は、企業の成長段階に適した方法で段階的に右腕人材を育成している。経営者は企業 の成長段階に応じて、管理者、実務家右腕人材、企業家右腕人材へと右腕人材を成長させ る。そして、経営者が右腕人材に求める役割や要件は右腕人材の成長段階によって変化す る。右腕人材の成長段階は「創造性による成長」「管理者の誕生」「管理者の成長」「実務 家右腕人材の誕生」「企業家右腕人材の誕生」の5段階である。各成長段階の間には「リ ーダーシップの危機」「実行力の危機」「主体性の危機」「統制の危機」という成長を妨げ る危機が存在する。危機を克服できなければ次の企業成長には繋がらない。各成長段階に は組織的な特徴があるが、右腕人材の成長度に応じて、経営者が自らの役割を任せること が必要となる。そして、右腕人材が経営者の期待に応えて任せられた役割を果たすことで、

経営者は新たな役割を担うことが可能となる。創業時、経営者は右腕人材に事業に関する 経営者の負担を軽減する役割を求める。その後、事業や右腕人材の成長にしたがって、経 営者の決断を補完する役割、経営を補佐する役割、もう一人の経営者としての役割といっ たように事業だけなく経営に関する役割を右腕人材に求めるようになる。人材不足が深刻 な中小企業が成長するには右腕人材の役割の変化が必要不可欠であり、経営者の補佐役で ある右腕人材には、企業の成長段階に応じた様々な役割が経営者から求められる。

本研究は、中小企業の成長段階によって右腕人材の役割や要件が変化することを明らか にしている。そして、その変化は成長の危機に直面した経営者が企業組織を変革し、次の 成長段階に移行することに起因すると考えられる。

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