芳香族エーテル化反応の検討
‑相間移動触媒の種類と反応率との関係一
伊 藤 俊 彦 ・長 崎 孝 美* 村 木 雅 晴牢
Research in the Preparation of. Aromatic Ether
‑The Relationship between Structures of Phase Transfer Catalyst and Products‑
Toshihiko ITO, Takayoshi NAGASAKI and Masaharu MURAKI
(1993年10月初日受理)
‑45 ‑
The catalytic effects o{ quaternary flmmonium and phosphonium ions on the reaction o{ [3] with higher alcohols in a two phase system have been determined. We obtained interesting results in suitable catalysts between lower alcohols 1) and bigher alcohols.
1.鰭 言
芳香族エーテル誘導体の合成には,脂肪族ハロゲ ン化合物[1]あるいは芳香族ハロゲン誘導体[2]を原 料とする工程が考えられる。[1]からエーテルを得 る工程は、 WilIiamsonの方法としてよく知られてい る。一方[2]からエーテJレを合成する反応は,芳香 環に直結したハロゲンの反応性が低いため.Wil..
Iiamsonの方法では目的のエーテルは低収率でしか 得られない。したがって[2]のエーテル化について
は相関移動触媒 (PTC)を用いた不均一系での反応、
が検討されている。
芳香族ハロゲン化合物[3]のエーテル化について は.PTCを使用して低級アルコールとの反応につい てDinoNISATOらの報告けがあるが,水に難浴な 高級アJレコーJレとの反応については未検討である。
本研究では[3]と炭素数12のラウリルアルコールお よび16のセチJレアルコールとのエーテル化反応につ いて, 9種類のPTCと目的のエーテル[4)の反応率と の関係について検討した。
R ‑ X
[ 1 ]
+ HOQ.~
R O
‑Q
。 x + H O ‑ R ~
[ 2 ] N 0 2
R. R'=a l k y l Sche.e 1
tグ 、 R ‑ O H
q
子C O N H C4H9,C~
[ 3 ] R四 CIZHz5. C16H33
Sche
・
e2申 秋田高専卒業生
平成 6~手 2 月
x =
h a 10 g e n eN02
< ( 子CONHC4H9
‑
、、O R[4 ]
伊藤俊彦・長崎孝美・材木維晴
2.結果および考察
2. 1 PTCの種類と反応率との関係
臼]とラウリルアルコールおよびセチJレアルコー Jレとの反応について,反応溶媒をベンゼン,反応温 度を60t.反応時間を60min. [3]に対するアルコー ルおよび水酸化ナトリウムのモル比を固定し.9種 類のPTCと目的のエーテJレ[4Jの反応率との関係を 検討した。反応惑は高速液体クロマトグラフィーで 分析した。使用したPTCの構造と略記号は表ー1の通
りである。
表1PCTの術進と記号
記 号 構 造 式
A(CH3)4NBr
B C l o H 2
I(C H 3 ) 3 N B r C ( C 4 H 9 ) 4 N B r
nu
一
"MU
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一
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UH
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b‑ pu r‑
‑I 1‑
しn
‑n L‑ I1
‑I 1
(1) PTCの種類とラウリJレエーテルの反応率との関係 結呆を愛情2に示した。反応、率はPTCがテトラデシ Jレアンモニウムブロマイド (1)の場合に最も高<.
触媒を使用しない反応およびGとHの場合に低いこ とがわかる。GとHはホスホニウム塩であるが,同 じホスホニウム塩のDが特に低い反応率ではないこ とから,反応、率が低いのはホスホニウム塩によるも のではないことがわかる。PTCが有効に働くには多
くの要因が考えられるが、そのーっとしてスキーム 3に示したようにPTCのアニオンとアルコキシアニ オンとの交換が必要である。化合物[5]は水溶性の ためベンゼン相に溶解している[3]とは界面での反 応しか期待できない。一方,アニオンを交換した[6] は有機溶媒相にも溶解するため,ペンゼン相に運ば れて[3]と反応しエーテル化が進行すると考えられ ている。相関移動触媒のGとHで反応、E容が低いのは,
ともにヘテロ原子Pの回りをかき高いフェニJレ基3 つ以上で閉まれているため,アニオン交換がスムー ズに行われないためではないかと推定している。
さらにGとHを除いて残りのPTCはいずれもヘテ ロ原子に脂肪族の置換基が結合し,その中でも1(テ トラデシJレアンモニウムブロマイド)が最も炭素数 が多く,脂溶性が高いと推定される。このことから PTCの炭素数と反応率との関係をみると,本反応条 件によるラウリJレエーテJレ合成ではPTCの脂溶性と 反応率とは関連がありそうである。
表2 PCTの種類とラウりルエーテルの反応率
P T C 収 量 (g) 純 度 (
~) 純 品 (
g ) 1) 反 応 率 (
~)
2 )A 4.52 53.5 2 . 4 2 59.5 B 4.37 54.8 2.40 59.0 C 4.43 53 . 9 2.39 58.7 4 . 3 5 56.9 2.47 6 0 . 7 E 4.41 6 1 . 4 2.71 66.6 F
4.5 0 63.4 2.85 70.0
G4.62 6.8 o . 3 1 7 . 6 H 4 . 5 7 1 2 . 2 0 . 5 6 13.8
4.45 83.5 3.72 9 1 . 4
な し 4.64 7 . 3 0.34 8.4
1 ) : 純 品 換 算 量 2 ) :理論収量4.07gか ら 算 出
‑47 ‑ 芳香族エーテル化反応、の検討
C H
ト
+ N a+O [5 C ] lzH 25く 7 C H
争
ω HZ 5+
N a B r + ーSche
・
e 3(2) PTCの種類とセチJレエーテルの反応率との関係 結果を表‑3に示した。PTCを使用しない実験と比 較すると、セチJレエーテルの反応率は向上している が,反応、率はどのPTCでも50%以下である。表・2の 結泉と比較していずれのPTCでも反応率は低く,本 実験条件下では使用した9種類のPTCはセチルエー テル合成にあまり適切ではないことがわかる。9種 類の中ではテトラプチルアンモニウムハイドロジェ ンサルフェート (E)およびペンジルトリプチルア ンモニウムブロマイド (F)が比較的反応準が高く,
本実験の固定した反応条件に検討を加えれば、反応 率向上の可能性はあると考えられる。一方,ラウリ JレエーテJレの場合と同じように.Gおよび日では反
応、E容はよがらなかった。
2. 2 ラウリルエーテル合成における反応時間の
・
2・
ラウリJレエーテJレμ]の反応率はPTCがIの場合に 高
< 9
1.4%の結果が得られた。この反応、E容は翻定さ れた反応条件下で得られたので,条件検討によって さらに向上の可能性があるかどうか実験した。PTC としてIを使用し.2.1項で実htした条件の中から反 応時間だけを変化させて反応率との関係を調べた。 実験結呆を表‑4lこ示した。反応、率は反応時間を長くすることによってほとん ど向上しないことがわかった。20minの反応で反応
表3 PCTの種類とセチルエーテルの反応率
P T C
収 量( g )
純 度 ( 見 ) 純 品 (g )
1 )反 応 率 (~ ) 2 ) A5 . 2 9 1 5 . 2 0 . 8 1 1 7 . 2
B5 . 1 9 3
1.8
1.6 5 3 5 . 7 C 4 . 8 7 3 7 . 9
1.8 5 4 0 . 0 5 . 1 2 3 5 . 8
1.8 4 3 9 . 7 E 5 . 0 0 4 3 . 4 2 . 1 7 47.0 F 5 . 2 0 4 2 . 8 2 . 2 3 48.2
G
5 . 2 6 5 . 2 0 . 2 7 5 . 9 5 . 2 6 2 . 5 0 . 0 2 0 . 5 5 . 2 0 3 0 . 9
1.6 1 3 4 . 8
な し
5 . 1 7
1.8 0 . 0 9 2 . 0 1 )
: 純 品 換 算 量2 )
:理論収量4.62g
か ら 算 出平成6年2月
伊藤俊彦、長崎孝美・村木維哨
率は約80%に逮し, 60minでほぼ平衡に達している ことからラウリJレエーテJレが短時間で生成している ことがわかる。1切minの反応で反応率が少し低下 しているが,これは長時間の反応で生成物が分解し たためかどうか不明である。 本実験結果から反応、率 向上のためには反応時間以外の条件を変えて検討す る必要があることがわかった。
2. 3 セチルエーテル合成とアルカリ滋度との関係 変ー3の結泉は水酸化ナトリウムの漫度を40%に固 定した実験である。 PTCを用いたエーテル化反応で は, 一般にアJレカリ濃度は波い方がよい結果を与え る場合が多いが,本実験においてどのような影響が あるか調べた。PTCは表ー3の結果から最も反応E容が 高かったFを使用した。
結集を表‑5に示した。
表‑5によれば反応率はアJレカリ濃度の影響を受 け,低濃度では反応率は大きく低下した。30%と 40%ではあまり差はなかったが,いずれにしてもア ルカリ漁度は濃い方がよい結果が得られることを確 認したことになる。なお, 50%濃度の実験は行わな かった。
これまでの実験ではセチ1レエーテlレの反応率はど のPTCでも50%以下と低く, しかもラウリJレエーテ ルの実験結果 (表ー2)と大きな差がある。したがっ て今後は溶媒の種類,PTC濃度,反応混度など各種 の条件を変えて反応、準の向上を計る予定である。
本研究のこれまでの実験では反応条件の検討が不 十分な段階であるが, Dino NISATOらの報告1)に よれば, [3)と水浴性のプロパルギJレアルコールと
表4 反応時間と反応率
時 間 ( m i n ) 収 量 ( g ) 純 度 ( % ) 純 品 ( g )
1) 反 応 率 ( % )
2 )20 4 . 89 65.0 3.18 78.1 40 4.52 78.4 3.54 87 . 0 60 4.45 83.5 3.72 9 1 . 4 100 4.72 79.3 3.74 9
1.9 180 5.72 6 1 . 9 3.54 87 . 0 1 ) : 純 品 換 算 量 2 ) :理論収量 4 . 07g か ら 算 出
表5 アルカリ濠度と反応率
NaOH( 目)量( g ) 純 度 (
% )純 品 ( g )
1)反応率(目)
2 )1 0 5 . 1 4 32.8 1 . 68 36.5 2 0 5 . 1 6 3 3 . 3 1 . 7 2 3 7 . 2 3 0 5.09 42.2 2.14 46.5 4 0 5.20 42.8 2.23 48.2 1 ) : 純 品 換 算 量 2 ) :理論収量 4.62g か ら 算 出
の反応では.Cが最も適切な相聞移動触媒であり,
セチJレトリプチJレホスホニウムブロマイドなどのホ スホニウム塩化合物も高い触媒効柴を発郷してい る。これらは本研究の結果と大きく異なるものであ り.高級アルコールのエーテJレを高い反応率で得る には詳細な条件検討を必要とすることが明らかと なった。
3.実 験
3. 1 反応率および物性の測定
(1)別途合成した[4)の純品ラウリルエーテルとセ チルエーテルを用い,キノリンを内部標準に使用し て,高速液体クロマトグラフィー(目立L‑6
∞
0)で検量線を作成して,合成品の純度を求め反応率を
‑49 ‑ 芳香族エーテル化反応の検討
算出した。カラムは30cmのODSカラムを使い,ヘ キサンー酢酸エチル (60:1)を溶媒にして分析した。
'H‑NMRスペクトルは盤クロロホルム溶液でTMSを 内部標準とし,日本電子α・5∞型で測定した。薬品 類および溶媒は市販の特級品を使用した。
(2)純品の物性
(a) 2・ラウリルオキシ・5・ニトローN‑プチJレペンズア ミド
無 色 針 状 結 品 (メタノーJレ), mp75.6‑76.1t 'H‑NMR(8):0.90(t.3H.CH,). 1.∞(t.3H,CH3), 1.20 ‑1.50 (b.20H), 1.90 (m.2H.CH 2), 3.49 (t.2H.CH2), 4.25(t.2H.CHz). 7.04(d.lH), 7.75 (s.lH.NH), 8.30(m,1H), 9.11(d,1H)
(b)会セチルオキシー5・ニトローN‑プチJレベンズアミ ド
無色針状結品(メタノーJレ)、 mp77.0‑78.0t, I H‑NMR (8) :0.75 (t.3H. CH 3), 0.95 (t.3H,CH 3), 1.25‑1.55(m,28H), 1.60(m,2H,CH2), 1.92 (m .2H .CH2). 3.5 (m .2H ,CH 2), 4.25 (t.2H .CHz), 7.05(d.lH), 7.75(s,lH,NH), 8.30(d.lH), 9.10
(s ,lH)
3. 2 [3]の合成2)
2‑クロロ・5・ニトロ安息呑酸1∞gに塩化チオニJレ を80mt加え3時間加熱還流した。反応終了後,過 剰の塩化チオニJレを減圧下に留去し,残さにベンゼ ンを加えて溶解した後,再びベンゼンを留去した。
この操作をもう一度行いできるだけ塩化チオニルを 除いた。得られた粗製の2‑クロロー5‑ニトロ安息香 酸クロライドをそのままつぎの反応に用いた。
粗製の酸クロライドをクロロホルム200m
e
~こ溶 解して‑lOtに冷却した。この中へあらかじめnーブ平成6年2月
チルアミン80gとクロロホJレム5∞mtで調製した溶 液を、ー5一 寸otで少しずつ滴下した。滴下終了後,
室温に戻してかくはんを続けた。つぎに0‑ー5tに 冷却しながらN‑塩酸を加えて中和した。結晶をろ 過しろ液からクロロホJレム浴液を分間監した後,クロ ロホルムを留去した。この残さと結晶をそれぞれ水 洗した後、メタノールから再結晶しての2・クロロー5・ ニトローN‑プチルペンズアミドを得た。収量96.3g、 収率75.0%,mp136.4‑137.0t
3. 3 [4]の合成
反応フラスコに40%水酸化ナトリウム水溶液1.5g (15mmo e),所定のアルコーJレ11.5mmoe ,所 定 のPTCをO.lmmot, [3]2.6g (lOmmo e)およびベ ンゼン15m
e
を加え, 60tで60min反応させた。反応終了後、溶媒を減圧下に留去し,残さを水洗して ろ過し乾燥した。得られた図形物について高速液体 クロマトグラフィーで純度求め反応率を算出した。
本研究は三井東圧化学(株)の奨学寄付金の援助 によって実施したものであり深く感謝の意を表しま す。NMRおよび各種物性の測定,解析をしていた だいた三弁東圧化学 (株)総合研究所に深く感謝の 意を表します。
‑ 考 文 献
1) Dino NlSATO, Marco FRIGERIO etal., Synthesis, pl081.1982
2)ディノ・ニサト,フラピオ・ダニエリ,
特関昭 53‑82746