*東北女子大学 1.はじめに
近年、食物アレルギーの有病率は増加傾向にあ り、文部科学省の平成 25 年の調査によると小学 生の場合 4.5%の有病率となっている
1)。弘前市 では平成 25 年度より、小中学校での学校給食ア レルギー食対応事業が開始された。この学校給食 アレルギー食対応事業は、食物アレルギーのある 児童生徒に対しても、他の児童生徒と同じような 学校給食を提供することで、本人や保護者が感じ る不安や負担の解消を目的として始められたもの である。
しかしながら、食物アレルギーの有病率は、乳 幼児期に最も多く、5〜 10%に上る
2)。食物ア レルギーが多い乳幼児期の給食におけるアレル ギー対応はどうなっているのだろうか。給食セン ターで一括管理することの多い小中学校と異な り、個々の施設で調理する園がほとんどである幼 稚園、保育所では、アレルギー対応は困難な状況 ではないかと推察される。
そこで本研究は、弘前市内の保育所及び幼稚園 の給食事情を調査し、その実情を明らかにするこ とを目的とした。
福士 章子
*・諸岡みどり
*Corresponding Realities of Pre-school Lunch for Children with Food Allergies in Hirosaki City.
Ayako FUKUSHI
*・Midori MOROOKA
*Key words : 食物アレルギー food Allergy 給食 School Lunch 幼稚園、保育所 Pre-school
弘前市内の幼稚園・保育所の給食における 食物アレルギー対応の実態について
2.調査方法
調査対象:弘前市内の保育所(幼保連携型認定こ ども園・保育所型認定こども園幼稚園を含む)59 か所、幼稚園(幼稚園型認定こども園を含む)合 計 11 か所を対象とし、保育所 50 か所、幼稚園 10 か所の合計 60 か所(85.7%)から回答を得られた。
調査期間:平成 27 年 10 月1日〜 15 日(保育所)
平成 29 年7月4日〜 13 日(幼稚園)
調査方法:選択肢式と自由記述式を併用した無記 名の質問紙郵送調査票で実施した。回答者は園長 とし、給食担当者や関係職員から園の現状を聞き、
回答するように依頼した。
調査内容 :園の運営形態、園児数、給食運営形態、
給食調理担当者の資格、保護者と園との話し合 い、食物アレルギーの対応方法など 10 項目と自 由記述。
分析方法:「幼稚園(幼稚園型認定こども園を含 む)」と「保育所(幼保連携型認定こども園・保 育所型認定こども園を含む)」でクロス集計を行 い、χ
2検定を行った。統計解析は SPSS16.0 J for windows を用いた。なお、有意水準は5%とした。
3.結果
給食の運営形態については、幼稚園4園(6.7%)
が外部委託でのおかず給食(米飯のみ各自持参)
だったが、その他は園内で調理する直営での運営 形態だった。給食調理担当者の資格は、栄養士と 調理師がどちらもいる園が 40.0%、栄養士のみが 35.0%、調理師のみが 18.3%、どちらもいない園 が 6.7%だった(図1)。園児の食物アレルギーに ついての配慮の窓口になっている職員は、クラス 担 任 が 一 番 多 く 85.0 %、 次 い で 給 食 担 当 者 が 70.0%、園長が 24.0%だった(表1)。
給食における食物アレルギーへの配慮を開始す る際に、医師の診断書や生活管理指導票を必要と する園は 77.3%だった(図2)。この項目は、保 育所(保育所型認定こども園、幼保連携型認定こ ども園を含む)では 80.0%だったのに対し、幼稚
図1.給食調理担当者の資格 図2.医師の診断書や生活管理指導票の 提出が必要か
表1.アレルギー対応の窓口となっている職員
(複数回答)
クラス担当 85.0%
給食担当職員 70.0%
園 長 24.0%
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表2.給食のアレルギー対応の仕方(複数回答)
毎日弁当を持参させる 0 園 0%
アレルゲン食品除去などの対応が困難な場
合のみ弁当を持参させる 1 園 1.7%
アレルゲン食品の除去の給食を提供する 33 園 55.0%
アレルゲン食品を除去し、除去した食品を
別の食品で補完する(栄養価は考慮しない) 43 園 71.7%
アレルゲン食品を除去し、除去したことに
より失われる栄養価を別の食品で代替する 27 園 45.0%
園(幼稚園型認定こども園を含む)では、40.0%
で有意な差がみられた。(p< 0.05)
食物アレルギーのある園児の給食の対応の仕方
(複数回答)は、毎日弁当を持参させると回答した 園はなく、アレルゲン食品除去などの対応が困難 な場合のみ弁当持参1園、アレルゲン食品の除去 の給食を提供するという園は 33 園(55.0%)、除 去した食品を別な食品で補完する(栄養価は考慮 しない)が 43 園(71.7%)、アレルゲン食品を除 去し、除去することによって失われる栄養価を別 な食品で代替するという園は 27 園(45.0%)だっ た(表2)。
食物アレルギー対応をする際、厚生労働省の「保
育所におけるアレルギー対応ガイドライン」を参 考にしていると回答した園は 44 園(73.3%)だっ た(図3)。幼稚園でも、このガイドラインを参 考にしている園が 70%あった。また、その他に 園独自にガイドラインやマニュアルを作成してい る園も 19 園(31.7%)みられた。
自由記述への回答は、42 園(70.0%)から得ら れた。そのうち 25 件(35.7%)が代替食調理に 関することだった。
4.考察
弘前市の小中学校における学校給食アレルギー 食対応事業では、アレルギー食を希望する際は、
保護者との面談や医師に記入してもらう生活管理 指導票の提出が必須である。厚生労働省が平成 23 年に作成した「保育所におけるアレルギー対応 ガイドライン」においても医師の指導に基づいて アレルゲンの除去がおこなわれなければならない とされている
3)(資料1参照)。今回の調査で「医 師の診断書や生活管理指導表が必要」とする園は 保育所の方に多かったのは、このガイドラインに 従っているのだと考えられる。
もともと「保育所におけるアレルギー対応マ ニュアル」は、平成 23 年に財団法人日本学校保 健会によって作成された「学校のアレルギー疾患
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図3. 「保育所におけるアレルギーガイドライン」
を参考にしているか
に対する取り組みガイドライン」に準じて作られ たので、食物アレルギーへの対応は、アレルゲン の完全除去給食を基本としており、その対応申請 には、医師の診断と指示が必要とされている。食 物アレルギーは、個人差が大きく、口にした時の 反応の度合いも様々であり、少量でもアナフィラ キシーショックを起こす者もいるので、学校や保 育所では、事故を防ぐために完全除去を原則とし ている。例えば、鶏卵がアレルゲンの場合、少し なら食べても症状が出ない者も多く、卵はハン バーグや揚げ物のつなぎなどで少量使われること も多く、保護者の立場としては、「このくらいな ら食べさせてほしい」などの要望は多い。しかし、
集団給食においては、個人の要望に合わせていれ ば手間もかかるし、万が一の事故にもつながりか ねないので、ガイドラインにおいては完全除去が 原則なのである。しかし、今回の調査では調べな かったが、小中学校と違い、保育所は小規模なの で、完全除去ではなく、幼児のアレルギーの状況 に応じて、「卵焼きは無理だが、フライのつなぎ 程度ならOK」など保護者の要望に合わせてアレ ルギー対応を実施している園もあるということが、
その後の聞き取りでわかった。
乳幼児の食物アレルギーは、3歳で約 60%、
6歳で約 90%が改善するため
4)、年を重ねるご とに食べても症状が現れなくなることが多い。現 在の食物アレルギーの標準的な診療方針は、食べ ることで症状が誘発される必要最小限の原因物質 を除去して、症状を起こさないように日常生活を 送ることである。つまり、アナフィラキシーショッ クを起こしたことのあるような重いアレルギーの 場合は別として、症状が軽い場合は、園での給食 は除去食にし、家庭で少しずつ食べさせて症状が 出ないか確認し、徐々に許容範囲を広げていくの が良いと思われる。普段は食べても症状が出ない 場合でも体調が悪い時は症状が出てしまう場合も あるので、長い期間で様子を見て、一定量食べさ せても症状が起きないレベルにまで改善したら、
保護者と園で話し合いをして、除去を解除してい
くことが重要である。
資料1.保育所におけるアレルギー疾患生活管理表
食物アレルギーがあり、医師に生活管理指導表 を記入してもらう場合、原因食物・除去根拠の欄 に検査結果等を書かなくてはならない。アレル ギーの検査は、血液検査(特異的 IgE 抗体の測定)
が一般的であるが、血液検査はサンプルに限界が あり、対応していない食材もある。また、抗体値 が高い場合でも、症状が出ない場合もある。一番 分かり易いのは、実際に医療機関でその食べ物を 食べてみて症状が起きるかどうかを検査する食物 経口負荷試験であるが、食物経口負荷試験を実施 していない医療機関もあるのが現状である。普段 からかかりつけの小児科医を決めておき、アレル ギー症状が起こったときに診察してもらっておく と、カルテに食物アレルギーの記録が残るため、
除去の根拠の欄に「明らかな症状の既往」と書い てもらえるので、少しの症状でも診察を受けてお くことが大切である。
本調査の結果で驚いたことは、調査に回答して くれた保育所、幼稚園の7割以上が代替食を提供 していることである。2〜3名の調理担当職員で 代替食を提供するのは、大変なことだと思うが、
保護者にとっては本当にありがたい対応である。
しかし、自由記述欄には、「手間がかかる」 「人手 が足りない」 「代替食がいつも同じになってしま う」 「卵や小麦など複数のアレルギーがある場合、
代替食が困難」など、代替食に関する記述が多く 見られたことから、調理担当者の大変さが伝わっ てきた。もっと担当者が楽に対応できるように、
代替食品を業者から安価で入手できるようなシス テムの構築と自治体からの予算補助などの対策が 必要だと感じた。
また、自由記述欄に「できるだけ他の子と見た 目が同じようになるような代替食を作っている」
という回答もあった。園児はみんなと同じ方が喜
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